説明

積層材およびその製造方法

【課題】金属板とセラミック板との間の界面剥離を防止することができるし、製造コストの低減を図ることができ、更に、放熱特性を向上させることができる積層材を提供する。
【解決手段】積層材1は、セラミック板4の一方の片面4aにCuまたはCu合金からなるCu板2が、セラミック板4の他方の片面4aにAlまたはAl合金からなるAl板3が、放電プラズマ焼結法によりそれぞれ接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層材およびその製造方法に関し、たとえばLEDやパワーデバイスなどの半導体素子の冷却を行うのに用いられる積層材およびその製造方法に関する。
【0002】
この明細書において、元素記号で表現された材料は純材料を意味するが、不可避の不純物を含有する工業的な純材料も含むものとする。
【0003】
また、この明細書および特許請求の範囲において、放電プラズマ焼結法とは、実際に粉末を焼結する方法に限定されるものではなく、放電プラズマ焼結の原理を利用した方法を意味するものとする。
【0004】
さらに、この明細書および特許請求の範囲において、「融点」という用語は、合金の場合には、固相線温度を意味するものとする。
【背景技術】
【0005】
近年、電力の送変電、鉄道車両の駆動制御、自動車のエンジン制御やインバータ駆動、エアコンや太陽光発電用インバータなどに、電力を変換制御するパワーデバイスが用いられている。
【0006】
このパワーデバイスはスイッチング時の発熱が大きく、そのため、パワーデバイスの冷却効率を向上させることは、その機能を維持するためにきわめて重要な課題となっている。
【0007】
パワーデバイスの冷却のために放熱器が用いられる。パワーデバイスと放熱器とを備えたパワーモジュールでは、パワーデバイスと放熱器との間に、互いに積層状に配置されたセラミック板と金属板とを含む積層材が配置されている。この積層材は、熱的には伝導体であるが電気的には絶縁体として機能する性質を有するものであり、すなわち熱伝導性絶縁基板として用いられている。
【0008】
この積層材を製造する従来技術として、特開2004−328012号公報(特許文献1)や特開2000−256081号公報(特許文献2)に示すように、金属板とセラミック板との接合を行う場合、金属板とセラミック板との間の界面にAgやTi等の活性金属を含んだろう材を配置するか(Cu、Al接合)、Al−Si合金のろう材を配置する(Al接合)ことが知られている。金属板としては、Al板やCu板が用いられている。
【0009】
さらに、セラミック板の両面にそれぞれAl板が接合されてなる積層材では、パワーデバイスをはんだ付けにより実装する前に、積層材のAl板の表面に選択的にNi層をコートする、例えばNiめっき層を形成することで、はんだ接合性を向上させている。例えば、特開2009−147123号公報(特許文献3)では、半導体素子の電極に電気的配線または冷却部材としての金属部品をはんだ付けにて接合する場合、はんだ層と電極との間に金属保護膜としてNiめっき膜を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−328012号公報
【特許文献2】特開2000−256081号公報
【特許文献3】特開2009−147123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記方法では、金属板とセラミック板との間の接合界面にろう材層が形成されるため接合界面の接合信頼性を損なう恐れがある。例えば、Al板とセラミック板との接合を行うためには、接合界面にAl−Si合金のろう材層が形成されるが、Al−Si合金はAl板のAlよりも硬いため、高温−低温の冷熱サイクルに伴う接合界面に働く応力が非常に大きなものとなる。その結果、界面付近で材料破壊が発生してAl板とセラミック板とが剥離する。
【0012】
また、Al板表面にNiめっき層を形成するためには、たとえばAl板表面の粗さが小さいことなどの制約があり、この制約のためにAl板表面に対して機械的・化学的前処理を施さなければならず、その結果、Al板表面にNi層を形成するコストが高くなる問題があった。
【0013】
さらに、Al板表面に部分的にまたはある面だけを選択的にNi層を形成したいときは、Niめっきではマスキング工程が必須となり、製造コストが高くなる問題もあった。
【0014】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、金属板とセラミック板との間の界面剥離を防止することができるし、製造コストの低減を図ることができ、更に、放熱特性を向上させることができる積層材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の手段を提供する。
【0016】
[1] セラミック板の一方の片面にCuまたはCu合金からなるCu板が、セラミック板の他方の片面にAlまたはAl合金からなるAl板が、放電プラズマ焼結法によりそれぞれ接合されていることを特徴とする積層材。
【0017】
[2] セラミック板の一方の片面にCu板が、セラミック板とCu板との間の接合界面にろう材を介さないで、直接的に接合されている前項1記載の積層材。
【0018】
[3] セラミック板の他方の片面にAl板が、セラミック板とAl板との間の接合界面にろう材を介さないで、直接的に接合されている前項1又は2記載の積層材。
【0019】
[4] セラミック板が、AlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる前項1〜3のうちのいずれかに記載の積層材。
【0020】
[5] セラミック板と、CuまたはCu合金からなるCu板とを、セラミック板の一方の片面上にCu板が配置されるように積層する第1積層工程と、
セラミック板とCu板との第1積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する第1積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、第1積層体のセラミック板とCu板とを接合する第1接合工程と、
第1接合工程により得られたセラミック板とCu板との接合体と、AlまたはAl合金からなるAl板とを、接合体のセラミック板の他方の片面上にAl板が配置されるように積層する第2積層工程と、
接合体とAl板との第2積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する第2積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、第2積層体のセラミック板とAl板とを接合する第2接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
【0021】
[6] 第1接合工程では、接合を、Cu板の融点よりも低い温度で行うとともに、
第2接合工程では、接合を、Al板の融点よりも低い温度で行う前項5記載の積層材の製造方法。
【0022】
[7] 第1接合工程では、接合を、第1積層体をその積層方向の両側から10〜100MPaで加圧しながら行うとともに、
第2接合工程では、接合を、第2積層体をその積層方向の両側から10〜100MPaで加圧しながら行う前項5または6記載の積層材の製造方法。
【0023】
[8] 第1接合工程では、接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行うとともに、
第2接合工程では、接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行う前項5〜7のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
[1]〜[3]の積層材によれば、放電プラズマ焼結法によりセラミック板の所定の面にそれぞれCu板およびAl板が接合されているので、セラミック板と金属板(即ちCu板、Al板)との間の接合界面に、AgやTi等の活性金属を含むろう材を配置する必要なく、即ち直接接合が可能となる。そのため、冷熱サイクルに伴うセラミック板と金属板との間の界面剥離が抑制され、もって接合信頼性が向上する。さらに、ろう材を使用しないので、積層材の製造コストの低減を図ることができる。
【0025】
さらに、[1]〜[3]の積層材によれば、セラミック板の一方の片面にCu板が接合されることで、放熱特性が向上するとともに、Cu板に直接的にはんだ付けができるので、Al板では必須となっていたはんだ接合性を向上させるためのNiめっき工程を必要としない。これにより、製造コストの更なる低減を図ることができる。しかも、セラミック板の他方の片面にAl板が接合されているので、例えば、AlやAl合金製ヒートシンクなどの放熱部材をろう付けなどの金属的な接合によりAl板に貼り付けることができ、その結果、軽量で且つ放熱特性が向上したパワーデバイス冷却部材(パワーモジュール用ベース)を得ることができる。
【0026】
[4]の積層材によれば、セラミック板がAlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなるので、Cu板を配線層として利用することができるし、セラミック板を電気絶縁性能に優れた電気絶縁層として利用することができる。したがって、例えば、積層材のAl板の表面にAlやAl合金製ヒートシンクなどの放熱部材をろう付けすることにより、半導体モジュール用ベースとしてたとえばパワーモジュール用ベースを形成することができる。そして、このベースの積層材のCu板に半導体素子としてたとえばパワーデバイスを実装することで半導体モジュールとしてパワーモジュールを製造することができる。このパワーモジュールによれば、パワーデバイスと放熱部材との間には、Cu板、セラミック板およびAl板が配置されているだけなので、パワーデバイスから放熱部材までの熱伝導の経路が短くなり、パワーデバイスから発せられる熱の放熱性能が向上する。また、金属板(即ちCu板、Al板)とセラミック板との間には熱伝導率の低いろう材を介在させる必要はなく、両金属板とセラミック板との間の熱伝導性が優れたものになる。
【0027】
[5]の積層材の製造方法によれば、[1]〜[4]の積層材をろう材を用いなくても製造することができ、そのため、温度変化によるセラミックと金属板(即ちCu板、Al板)との間の接合界面の接合信頼性を高めることができる。さらに、ろう材を使用しないので、積層材を安価に製造することができる。
【0028】
[6]の積層材の製造方法によれば、第1接合工程での接合時に、Cu板の部分的な溶融などによる変形を防止することができるし、第2接合工程での接合時に、Al板の部分的な溶融などによる変形を防止することができる。
【0029】
ここで、第1接合工程では、接合温度は、933〜1073℃(好ましくは950〜1000℃)の範囲内に設定されるのが良い。第2接合工程では、接合温度は510〜650℃(好ましくは520〜600℃)の範囲内に設定されるのが良い。
【0030】
[7]の積層材の製造方法によれば、Cu板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができるし、Al板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【0031】
[8]の積層材の製造方法によれば、Cu板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができるし、Al板とセラミック板との間での接合欠陥の発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の積層材を示す垂直断面図である。
【図2】図2は、同積層材の製造過程における第1接合工程を示す垂直断面図である。
【図3】図3は、第1接合工程により得られた接合体を示す垂直断面図である。
【図4】図4は、同積層材の製造過程における第2接合工程を示す垂直断面図である。
【図5】図5は、比較例1の積層材を示す垂直断面図である。
【図6】図6は、比較例2の積層材を示す垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0034】
なお、以下の説明において、各図面の上下を上下というものとする。また、全図面を通じて同一部分および同一物には同一符号を付して重複する説明を省略する。
実施形態1
図1〜4は、本発明の一実施形態の積層材およびその製造方法を説明するための図である。本実施形態は、積層材が、半導体素子(例:パワーデバイス)が実装される絶縁基板として利用可能なものである場合について示している。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の積層材(1)は、少なくとも1枚のセラミック板(4)と、セラミック板(4)の一方の片側に配置された少なくとも1枚のCuまたはCu合金からなるCu板(2)と、セラミック板(4)の他方の片側に配置された少なくとも1枚のAlまたはAl合金からなるAl板(3)とが、積層されたものである。
【0036】
この積層材(1)では、セラミック板(4)は水平状に配置されている。Cu板(2)はセラミック板(4)の上面(4a)上にセラミック板(4)と隣接して配置されている。Al板(3)はセラミック板(4)の下面(4a)上にセラミック板(4)と隣接して配置されている。そして、互いに隣り合う板どうし(2,4)(4,3)が放電プラズマ焼結法により接合されている。したがって、Cu板(2)は積層材(1)の上側の最外側に配置されており、セラミック板(4)はCu板(2)とAl板(3)との間に配置されており、Al板(3)は積層材(1)の下側の最外側に配置されている。セラミック板(4)とCu板(2)とが放電プラズマ焼結法により接合されているので、セラミック板(4)の上面(4a)にCu板(2)が、セラミック板(4)とCu板(2)との間にろう材を介することなく、すなわち直接的に接合されている。また同じく、セラミック板(4)とAl板(3)とが放電プラズマ焼結法により接合されているので、セラミック板(4)の下面(4a)にAl板(3)が、セラミック板(4)とAl板(3)との間にろう材を介することなく、すなわち直接的に接合されている。
【0037】
ここでは、1枚のセラミック板(4)が1枚のCu板(2)と1枚のAl板(3)との間に位置するように積層されるとともに、互いに隣り合うCu板(2)とセラミック板(4)およびセラミック板(4)とAl板(3)とが放電プラズマ焼結法により順次(段階的に)接合されたものである。また、この積層材(1)は三層構造である。
【0038】
積層材(1)の上下両面、すなわちCu板(2)の上面およびAl板(3)の下面の平面度は、それぞれ100μm以下である。
【0039】
Cu板(2)は、上述したようにCuまたはCu合金からなる。Al板(3)は、上述したようにAlまたはAl合金からなる。因みに、Cu板(2)およびAl板(3)を構成する材料の融点は、それぞれ、Cu:1083℃、Al:660℃であり、Cu合金およびAl合金の融点は、通常、それぞれ、CuおよびAlの融点よりも低い。
【0040】
Cu板(2)およびAl板(3)の厚みは3mm以下(好ましくは200μm以上)であることが良い。Cu板(2)およびAl板(3)は、公知の適当な方法で形成される。
【0041】
セラミック板(4)は、AlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の電気絶縁性材料からなる。セラミック板(4)の厚みは1mm以下(好ましくは300μm以上)であることが好ましい。セラミック板(4)は、たとえば、AlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を、適当な焼結助剤を用いて放電プラズマ焼結法により焼結することにより形成される。また、セラミック板(4)は、AlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料の粉末を用いて熱間静水圧プレス(HIP)することにより形成されていてもよい。
【0042】
ここで、各セラミック材料の融点または分解点は、AlN:2200℃、Al:2050℃、Si:1900℃、SiC:2000℃、Y:2400℃、CaO:2570℃、BN:3000℃、BeO:2570℃であり、Cu板(2)およびAl板(3)を構成する材料の融点よりも高くなっている。
【0043】
Cu板(2)、Al板(3)およびセラミック板(4)の形状は、それぞれ平面視で例えば四角形状である。ただし本発明では、Cu板(2)、Al板(3)およびセラミック板(4)は、平面視で四角形状であることに限定されるものではなく、その他に、多角形状、円形状、楕円形状、または、任意の曲線で囲まれた形状であっても良い。さらに、これらの板(2)(3)(4)は、同一形状であっても良いし、相似形状であっても良いし、異形形状であっても良い。
【0044】
セラミック板(4)の上面(4a)および下面(4a)の外形寸法は、それぞれCu板(2)の下面およびAl板(3)の上面の外形寸法よりも少し大きくなっている。
【0045】
そして、セラミック板(4)におけるCu板(2)と接合された側の面(即ち、セラミック板(4)の上面(4a))の外周縁(4z)よりも内側に、Cu板(2)のセラミック板(4)との接合面(2a)(即ち、Cu板(2)の下面)が位置している。さらに、セラミック板(4)におけるAl板(3)と接合された側の面(即ち、セラミック板(4)の下面(4a))の外周縁(4z)よりも内側に、Al板(3)のセラミック板(4)との接合面(3a)(即ち、Al板(3)の下面)が位置している。
【0046】
本実施形態の積層材(1)では、セラミック板(4)におけるCu板(2)と接合された側の面は、セラミック板(4)の上面(4a)である。セラミック板(4)におけるAl板(3)と接合された側の面は、セラミック板(4)の下面(4a)である。さらに、セラミック板(4)の上面(4a)はCu板(2)との隣接面でもあり、またセラミック板(4)の下面(4a)はAl板(3)との隣接面でもある。また、Cu板(2)のセラミック板(4)との接合面(2a)は、Cu板(2)の下面である。Al板(3)のセラミック板(4)との接合面(3a)は、Al板(3)の上面である。
【0047】
図1に示すように、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)からCu板(2)の接合面(2a)までの距離dは、0.5mm以上であることが望ましく、また同じく、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)からAl板(3)の接合面(3a)までの距離dは、0.5mm以上であることが望ましい。こうすることにより、Cu板(2)の外周縁部からの漏電を確実に防止することができる。なお、距離dの上限は特に限定されるものではなく、通常2.0mm位である。
【0048】
図示は省略したが、積層材(1)の一応用例(用途例)を以下にあげる。
【0049】
積層材(1)は、例えば、電気鉄道車両などの電動機の電力変換装置に使用されるMOSFET、IGBTおよびダイオードなどの半導体素子が実装される基板あるいは冷却部材に用いられる。半導体素子としては、電力の送変電制御装置、鉄道車両の駆動制御装置、自動車のエンジン制御装置、インバータ駆動装置、家庭用エアコン制御装置、太陽光発電用制御装置などに用いられるパワーデバイスが、作動の際のスイッチング時の発熱が大きいために好適に挙げられる。パワーデバイスの冷却には放熱器が使用される。パワーデバイスと放熱器とを備えたパワーモジュールでは、一般に、パワーデバイスと放熱器との間に、熱的には伝導体であるが電気的には絶縁体として機能する性質を有する積層材が配置されている。この積層材として、本実施形態の積層材(1)が好適に用いられる。具体的には、積層材(1)は、Cu板(2)を備えているので、直接はんだ付けが可能な配線層を有する熱伝導性絶縁基板として好適に用いられる。さらに、積層材(1)は、Cu板(2)が半導体素子と隣接するので、半導体素子から発せられる熱を効率的に拡散することができ、そのため、放熱特性が良い配線層を有する絶縁基板としても用いられる。さらに、積層材(1)は、Cu板(2)の配置側とは反対側にAl板(3)を備えているので、軽量で放熱性の良いAlまたはAl合金製ヒートシンクをろう付けなどの金属的な接合によりAl板(3)に貼り付けることができる。これにより、半導体素子から発せられる熱を効率良くヒートシンクに伝えて放熱しうる放熱部材を構成することができる。
【0050】
次に、積層材(1)の製造方法について、図2〜4を参照して説明する。
【0051】
すなわち、CuまたはCu合金からなり、かつ一般的な製法で作製されたCu板(2)と、AlまたはAl合金からなり、かつ一般的な製法で作製されたAl板(3)と、AlN、Al、Si、SiC、Y、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなり、かつ一般的な製法で作製されたセラミック板(4)とを用意する。
【0052】
ここで、Cu板(2)およびAl板(3)の表面粗さは、それぞれ算術平均粗さ(Ra)で1.0μm以下であることが好ましく、厚みは3mm以下であることが好ましい。セラミック板(4)の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で1.5μm以下であることが好ましく、厚みは1mm以下であることが好ましい。
【0053】
ついで、放電プラズマ焼結装置の導電性を有する筒状の黒鉛製焼結用ダイ(10)内に、セラミック板(4)とCu板(2)とを、セラミック板(4)の上面(4a)上にCu板(2)がセラミック板(4)と隣接して配置されるように、且つ、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)よりも内側にCu板(2)の下面からなる接合予定面(2b)が位置するように積層して配置する。このように、セラミック板(4)とCu板(2)とが積層されることで第1積層体(60)が形成される。互いに隣り合う板どうし(2,4)は面接触している。ダイ(10)の上下方向の高さは、Cu板(2)およびセラミック板(4)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(10)の上下両端部は、Cu板(2)およびセラミック板(4)よりも上下方向外側に突出している。ついで、ダイ(10)内におけるCu板(2)およびセラミック板(4)からなる第1積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0054】
なお本発明では、第1積層体(60)は、積層構造が保たれていれば積層順番が上下逆転しても良い。さらに、第1積層体(60)を複数個、ダイ(10)内に上下方向に重ねるように配置しても良い。この場合、隣り合う第1積層体(60)どうしの間には、ダイ(10)と同等な材料で作製された板材をスペーサーとして設置することが望ましい。さらに、両電極(13)(14)間には、第1積層体(60)を1つ以上含んだダイ(10)と両パンチ(11)(12)とからなる群を、複数個並列に並べて配置しても良い。
【0055】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、第1積層体(60)を上下両パンチ(11)(12)または両電極(13)(14)により上下両方向、すなわち第1積層体(60)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、Cu板(2)の融点よりも低い温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、これによりセラミック板(4)とCu板(2)とを接合する。この工程を放電プラズマ焼結法による「第1接合工程」という。こうして、図3に示した二層構造の接合体(61)が得られる。
【0056】
なお、第1積層体(60)を複数個、ダイ(10)内に重ねるように配置した場合、接合体(61)は複数個同時に製造される。また、両電極(13)(14)間に、第1積層体(60)を含んだダイ(10)と両パンチ(11)(12)とからなる群を、複数個並列に並べて配置した場合、接合体(61)は複数個同時に製造される。
【0057】
上述した第1接合工程での接合条件は、Cu板(2)およびセラミック板(4)の材料や寸法に応じて異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度933〜1073℃(好ましくは950〜1000℃)、接合温度保持時間1〜30minである。
【0058】
図3に示した第1接合体(61)では、セラミック板(4)の上面(4a)にCu板(2)が、セラミック板(4)とCu板(2)との間の接合界面にろう材を介することなく、すなわち直接的に接合されている。さらに、Cu板(2)のセラミック面(4)との接合面(2a)は、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)よりも内側に位置している。
【0059】
ついで、図4に示すように、放電プラズマ焼結装置の黒鉛製焼結用ダイ(10)内に、接合体(61)とAl板(3)とを、接合体(61)のセラミック板(4)の下面(4a)上にAl板(3)が配置されるように、且つ、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)よりも内側にAl板(3)の上面からなる接合予定面(3b)が位置するように積層して配置する。このように、接合体(61)とAl板(3)とが積層されることで第2積層体(62)が形成される。互いに隣り合う板どうし(61,3)は面接触している。ダイ(10)の上下方向の高さは、接合体(61)およびAl板(3)の厚みの合計よりも高くなっており、ダイ(10)の上下両端部は、接合体(61)のCu板(2)およびAl板(3)よりも上下方向外側に突出している。ついで、ダイ(10)内における接合体(61)およびAl板(3)からなる第2積層体(62)の上下両側に黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させる。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0060】
なお本発明では、第2積層体(62)は、積層構造が保たれていれば積層順番が上下逆転しても良い。さらに、第2積層体(62)を複数個、ダイ(10)内に上下方向に重ねるように配置しても良い。この場合、隣り合う第2積層体(62)どうしの間には、ダイ(10)と同等な材料で作製された板材をスペーサーとして設置することが望ましい。さらに、両電極(13)(14)間には、第2積層体(62)を1つ以上含んだダイ(10)と両パンチ(11)(12)とからなる群を、複数個並列に並べて配置しても良い。
【0061】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において、第2積層体(62)を上下両パンチ(11)(12)または両電極(13)(14)により上下両方向、すなわち第2積層体(62)の積層方向の両側から加圧しつつ、両電極(13)(14)間にパルス電流を通電することにより、Al板(3)の融点よりも低い温度に加熱昇温するとともに、当該温度に所定時間保持し、これにより第2積層体(62)のセラミック板(4)とAl板(3)とを接合する。この工程を放電プラズマ焼結法による「第2接合工程」という。こうして、図1に示した所望する積層材(1)が製造される。
【0062】
なお、第2積層体(62)を複数個、ダイ(10)内に重ねるように配置した場合、積層材(1)は複数個同時に製造される。また、両電極(13)(14)間に、第2積層体(62)を含んだダイ(10)と両パンチ(11)(12)とからなる群を、複数個並列に並べて配置した場合、積層材(1)は複数個同時に製造される。
【0063】
上述した第2接合工程での接合条件は、接合体(61)のセラミック板(4)およびAl板(3)の材料や寸法に応じて異なるが、たとえば通電するパルス電流1000〜30000A、加圧力10〜100MPa、接合温度510〜650℃(好ましくは520〜600℃)、接合温度保持時間1〜30minである。
【0064】
ここで、Al板(3)の融点は一般にCu板(2)の融点よりも低いことから、本実施形態のようにAl板(3)とセラミック板(4)との接合をCu(2)とセラミック板(4)との接合の後で行うことにより、Cu板(2)とセラミック板(4)との接合の際にAl板(3)が溶融するのを回避することができ、これにより、接合状態が良好な所望する三層構造(Cu/セラミック/Al)の積層材(1)を確実に得ることができる。
【0065】
なお、Cu板(2)およびAl板(3)とセラミック板(4)とが接合されるメカニズムは明確ではないが、次の通りであると考えられる。
【0066】
すなわち、金属板(即ちCu板(2)、Al板(3))とセラミック板(4)との積層体を積層方向の両側から加圧すると、金属板が降伏することにより、金属板を構成する材料がセラミック板(4)表面の微小な凹部に入り込み、金属板とセラミック板(4)との接触面積が大きくなる。この状態で、放電プラズマ焼結装置の両電極(13)(14)間にパルス電流を通電し、金属板を加熱すると、金属板が軟化して金属板とセラミック板(4)との接触面積が一層大きくなる。このとき、金属板表面とセラミック板(4)表面との接触部付近において放電プラズマが放射されると、金属板表面の酸化皮膜が破壊、除去されるので、活性な表面が露出する。この金属板の活性面がセラミック板(4)の表面と接触すると、物質拡散により金属板とセラミック板(4)とが接合されると考えられる。
【0067】
以上で本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々に変更可能である。
【実施例】
【0068】
以下、この発明による積層材の具体的実施例について、比較例とともに説明する。
【0069】
<実施例1>
この実施例の積層材は、上記実施形態の積層材(1)である。
【0070】
純度99.5質量%のCuからなりかつ縦32mm、横26mm、厚み0.6mmの1枚のCu板(2)と、純度99.99質量%のAlからなりかつ縦32mm、横26mm、厚み0.6mの1枚のAl板(3)と、縦34mm、横28mm、厚み0.635mmの1枚のAlN製セラミック板(4)とを用意した。そして、Cu板(2)、Al板(3)およびセラミック板(4)の表面に、有機溶剤を用いて脱脂処理を施した。なお、酸化皮膜の除去処理は施していない。Cu板(2)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa1.1μmm、Al板(3)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.9μm、セラミック板(4)の両面の表面粗さは、算術平均粗さでRa0.8μmであった。Raは、JIS(日本工業規格) B 0601:1994に準拠して測定した。
【0071】
ついで、図2に示すように、焼結用ダイ(10)内に、セラミック板(4)とCu板(2)とを、セラミック板(4)の上面(4a)上にCu板(2)がセラミック板(4)と隣接して配置されるように、且つ、セラミック板(4)の上面(4a)の外周縁(4z)よりも内側にCu板(2)の下面からなる接合予定面(2b)が位置するように積層して配置した。このとき、セラミック板(4)の重心位置とCu板(2)の重心位置とが厚さ方向に一致するようにこれらの板(4)(2)を配置した。そして、ダイ(10)内におけるCu板(2)およびセラミック板(4)からなる第1積層体(60)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0072】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、第1積層体(60)を上下両パンチ(11)(12)により上下両側から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大2500Aのパルス電流を通電することにより第1積層体(60)を室温から25分間かけて950℃まで加熱するとともに、950℃で5分間保持し、これにより、Cu板(2)とセラミック板(4)とを接合した[第1接合工程]。ついで、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより、図3に示した二層構造の接合体(61)を製造した。
【0073】
ついで、同じく図4に示すように、焼結用ダイ(10)内に、接合体(61)とAl板とを、接合体(61)のセラミック板(4)の下面(4a)上にAl板(3)がセラミック板(4)と隣接して配置されるように、且つ、セラミック板(4)の下面(4a)の外周縁(4z)よりも内側にAl板(3)の接合予定面(3b)が位置するように積層して配置した。そして、ダイ(10)内における接合体(61)およびAl板(3)からなる第2積層体(62)の上下両側にそれぞれ黒鉛製パンチ(11)(12)を配置するとともに、上パンチ(11)の上面および下パンチ(12)の下面にそれぞれ電極(13)(14)を電気的に接触させた。この状態では、両パンチ(11)(12)およびダイ(10)によって両電極(13)(14)間の導通が確保される。
【0074】
ついで、1〜10Paの真空雰囲気中において、第2積層体(62)を上下両パンチ(11)(12)により上下両側から20MPaの圧力で加圧しつつ、両電極(13)(14)間に最大1500Aのパルス電流を通電することにより第2積層体(62)を室温から10分間かけて550℃まで加熱するとともに、550℃で5分間保持し、これにより、第2積層体(62)のセラミック板(4)とAl板(3)とを接合した[第2接合工程]。ついで、両電極(13)(14)間の通電を停止した後、冷却することにより、図1に示した所望する三層構造の積層材(1)を製造した。
【0075】
製造された積層材(1)では、Cu板(2)とセラミック板(4)との接合、および、Al板(3)とセラミック板(4)との接合を、いずれも放電プラズマ焼結法により行っているので、ろう材を用いる必要がなく、そのため、積層材(1)の製造コストを低減できた。
【0076】
また、積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、70μmであった。さらに、積層材(1)におけるCu板(2)とセラミック板(4)との接合状態およびAl板(3)とセラミック板(4)との接合状態を確認するため、積層材(1)の断面観察を行ったところ、接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
【0077】
また、積層材(1)について、−40℃⇔125℃、1000サイクルという試験条件の冷熱サイクル試験を行った。そして、Cu板(2)とセラミック板(4)との間の接合界面、および、Al板(3)とセラミック板(4)との間の接合界面における剥離の有無を調べた。その結果を表1中の「剥離」欄に示す。同欄に示すように、それぞれの接合界面に剥離は発生していなかった。
【0078】
また、積層材(1)のAl板(3)の表面にAl製水冷式シートシンクをろう付けし、次いで積層材(1)のCu板(2)の表面に半導体素子をはんだ付けした。そして、積層材(1)の放熱性能として熱抵抗を調べた。その結果を表1中の「放熱性能」欄に示す。同欄に示すように、半導体素子直下にAlよりも熱伝導率が2倍程度大きいCu板(2)が配置されているので、放熱性能が高く、半導体素子から発する熱を効率的に放熱することができた。さらに、この積層材(1)では、半導体素子をはんだ付けする前にNiめっきを施す必要がないので、積層材(1)の製造コストを更に低減できた。さらに、積層材(1)のAl板(3)の表面にシートシンクをろう付けする際においては、積層材(1)とヒートシンクとを金属的に接合することができた。
【0079】
<実施例2>
両電極(13)(14)間でのパルス電流の通電を窒素からなる不活性ガス雰囲気中で行ったことを除いては、実施例1と同様にして三層構造の積層材(1)を製造した。
【0080】
製造された積層材(1)の両面の平面度を測定したところ、72μmであった。さらに、積層材(1)におけるCu板(2)とセラミック板(4)との接合状態およびAl板(3)とセラミック板(4)との接合状態を確認するため、積層材(1)の断面観察を行ったところ、接合界面には欠陥が見られず、良好な接合が行われていた。
【0081】
また、積層材(1)について、実施例1の冷熱サイクル試験と同じ試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、Cu板(2)とセラミック板(4)との間の接合界面、および、Al板(3)とセラミック板(4)との間の接合界面における剥離の有無を調べた。その結果を表1中の「剥離」欄に示す。同欄に示すように、それぞれの接合界面に剥離は発生しなかった。
【0082】
また、積層材(1)のAl板(3)の表面にAl製水冷式シートシンクをろう付けし、次いで積層材(1)のCu板(2)の表面に半導体素子をはんだ付けした。そして、積層材(1)の放熱性能(熱抵抗)を調べた。その結果を表1中の「放熱性能」欄に示す。同欄に示すように、実施例2の積層材(1)でも放熱性能が高く、半導体素子から発する熱を効率的に放熱することができた。さらに、この積層材(1)では、半導体素子をはんだ付けする前にNiめっきを施す必要がないので、積層材(1)の製造コストを更に低減できた。さらに、積層材(1)のAl板(3)の表面にシートシンクをろう付けする際においては、積層材(1)とヒートシンクとを金属的に接合することができた。
【0083】
<比較例1>
図5に示した三層構造の積層材(101A)を次のように製造した。
【0084】
実施例1で用いたAl板(3)およびセラミック板(4)と同じ材料・形状からなる2枚のAl板(103)および1枚のセラミック板(104)を用意した。すなわち、Al板(103)は、純度99.99質量%のAlからなりかつその形状が縦32mm、横26mm、厚み0.6mmである。セラミック板(104)は、AlNからなりかつその形状が縦34mm、横28mm、厚み0.635mmである。そして、セラミック板(104)の両面にそれぞれAl板(103)を、各Al板(103)とセラミック板(104)との間に介在させたAl−Si合金からなるろう材によりろう付けし、これにより、図5に示した積層材(101A)を製造した。
【0085】
製造された積層材(101A)について、実施例1の冷熱サイクル試験と同じ試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、各Al板(103)とセラミック板(104)との間の接合界面における剥離の有無を調べた。その結果を表1中の「剥離」欄に示す。同欄に示すように、それぞれの接合界面に剥離が発生した。
【0086】
また、積層材(101A)の一方のAl板(103)の表面にAl製水冷式シートシンクをろう付けし、次いで積層材(101A)の他方のAl板(103)の表面にNiめっきを施してNiめっき層を形成し、その後、Niめっき層の表面に半導体素子をはんだ付けした。そして、積層材(101A)の放熱性能(熱抵抗)を調べた。その結果を表1中の「放熱性能」欄に示す。同欄に示すように、積層材(101A)の放熱性能が実施例1および2の積層材(1)よりも悪かった。さらに、この積層材(101A)では、半導体素子をはんだ付けする前にNiめっきを施す必要があったので、積層材(101A)の製造コストを増加した。
【0087】
<比較例2>
図6に示した三層構造の積層材(101B)を次のように製造した。
【0088】
実施例1で用いたCu板(2)およびセラミック板(4)と同じ材料・形状からなる2枚のCu板(102)および1枚のセラミック板(104)を用意した。すなわち、Cu板(102)は、純度99.5質量%のCuからなりかつその形状が縦32mm、横26mm、厚み0.6mmである。セラミック板(104)は、AlNからなりかつその形状が縦34mm、横28mm、厚み0.635mmである。そして、セラミック板(104)の両面にそれぞれCu板(102)を、各Cu板(102)とセラミック板(104)との間に介在させたTiとAgからなる活性金属を含んだろう材によりろう付けし、これにより、図6に示した積層材(101B)を製造した。
【0089】
製造された積層材(101B)について、実施例1の冷熱サイクル試験と同じ試験条件で冷熱サイクル試験を行った。そして、各Cu板(102)とセラミック板(104)との間の接合界面における剥離の有無を調べた。その結果を表1中の「剥離」欄に示す。同欄に示すように、それぞれの接合界面に剥離が発生した。
【0090】
また、積層材(101B)の一方のCu板(102)の表面にAl製水冷式シートシンクを熱伝導グリースで接着し、次いで積層材(101B)の他方のCu板(102)の表面に半導体素子をはんだ付けした。そして、積層材(101B)の放熱性能(熱抵抗)を調べた。その結果を表1中の「放熱性能」欄に示す。同欄に示すように、積層材(101B)の放熱性能が実施例1および2の積層材(1)よりも悪かった。
【0091】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明による積層材は、たとえばパワーデバイスなどの半導体素子を冷却するのに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0093】
(1):積層材
(2):Cu板
(3):Al板
(4):セラミック板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板の一方の片面にCuまたはCu合金からなるCu板が、セラミック板の他方の片面にAlまたはAl合金からなるAl板が、放電プラズマ焼結法によりそれぞれ接合されていることを特徴とする積層材。
【請求項2】
セラミック板の一方の片面にCu板が、セラミック板とCu板との間の接合界面にろう材を介さないで、直接的に接合されている請求項1記載の積層材。
【請求項3】
セラミック板の他方の片面にAl板が、セラミック板とAl板との間の接合界面にろう材を介さないで、直接的に接合されている請求項1又は2記載の積層材。
【請求項4】
セラミック板が、AlN、Al23、Si34、SiC、Y23、CaO、BNおよびBeOよりなる群から選ばれた1種の材料からなる請求項1〜3のうちのいずれかに記載の積層材。
【請求項5】
セラミック板と、CuまたはCu合金からなるCu板とを、セラミック板の一方の片面上にCu板が配置されるように積層する第1積層工程と、
セラミック板とCu板との第1積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する第1積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、第1積層体のセラミック板とCu板とを接合する第1接合工程と、
第1接合工程により得られたセラミック板とCu板との接合体と、AlまたはAl合金からなるAl板とを、接合体のセラミック板の他方の片面上にAl板が配置されるように積層する第2積層工程と、
接合体とAl板との第2積層体を1対の放電プラズマ焼結用電極間に配置する第2積層体配置工程と、
両電極間の導通を確保した状態で、両電極間にパルス電流を通電することにより、第2積層体のセラミック板とAl板とを接合する第2接合工程と、を含むことを特徴とする積層材の製造方法。
【請求項6】
第1接合工程では、接合を、Cu板の融点よりも低い温度で行うとともに、
第2接合工程では、接合を、Al板の融点よりも低い温度で行う請求項5記載の積層材の製造方法。
【請求項7】
第1接合工程では、接合を、第1積層体をその積層方向の両側から10〜100MPaで加圧しながら行うとともに、
第2接合工程では、接合を、第2積層体をその積層方向の両側から10〜100MPaで加圧しながら行う請求項5または6記載の積層材の製造方法。
【請求項8】
第1接合工程では、接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行うとともに、
第2接合工程では、接合を、不活性ガス雰囲気中または真空雰囲気中で行う請求項5〜7のうちのいずれかに記載の積層材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−183798(P2011−183798A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18288(P2011−18288)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】