説明

積層板の接着加工方法

【課題】積層板の耐熱性及び生産性に優れる、積層板の接着加工方法を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂化粧板の基材に沿って折り曲げられる箇所から5mmは非反応性ホットメルト接着剤を塗布し、残りの平面部にはポリウレタン反応性ホットメルト接着剤を塗布する。次に基材を重ね合わせ、ピンチローラーで圧締することによって、平貼り体を得る。さらに側面部にポリウレタン反応性ホットメルト接着剤を塗布し、熱硬化性樹脂化粧板をヒーターで加熱しつつピンチローラーで折り曲げて圧締する。裏面部も同様に折り曲げ加工を行い、基材を熱硬化性樹脂化粧板でコの字状に被覆した積層板を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材を熱硬化性樹脂化粧板で一連に被覆した積層板における、耐熱性及び生産性に優れた接着加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂化粧板を基材の形状に沿って一連に被覆した積層板は、表面硬度や耐熱性に優れ、意匠性にも富むため、各種カウンターや、キッチンの扉等に広く用いられている。このような積層板の製造方法として、基材と熱硬化性樹脂化粧板の平面部を貼り合わせた後、基材の側面部に沿うように熱硬化性樹脂化粧板を折り曲げつつ貼り合わせ、さらに、必要に応じて基材の裏面部に沿うように熱硬化性樹脂化粧板を折り曲げつつ貼り合わせることにより、基材を熱硬化性樹脂化粧板でL字状やコの字状に被覆した積層板を得る方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
従来、基材と熱硬化性樹脂化粧板の曲面部の貼り合わせには初期接着力に優れたホットメルト接着剤が用いられており、生産性には優れているものの、積層板の耐熱性の点で改良の余地があった。一方、耐熱性に優れる反応型接着剤を用いた場合、初期接着力に劣るため基材と熱硬化性樹脂化粧板を貼り合わせてから曲げるまでに一定の養生時間が必要となり、生産性が低下したり仕掛品ができる等の問題があった。
【特許文献1】特開2004−358873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、積層板の耐熱性及び生産性に優れる、積層板の接着加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材を熱硬化性樹脂化粧板で一連に被覆した積層板の製造方法であって、ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤及び非反応性ホットメルト接着剤が併用されることを特徴とする積層板の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法によれば、基材と熱硬化性樹脂化粧板を貼り合わせてからすぐに曲げ加工を行うことができるため、生産性に優れる。また、本発明の製造方法によって製造された積層板は耐熱性に優れるため、各種カウンターや、キッチンの扉に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】熱硬化性樹脂化粧板にポリウレタン反応性ホットメルト接着剤を塗布した状態を示す斜視図である。
【図2】熱硬化性樹脂化粧板と基材を平貼りした状態を示す側面図である。
【図3】基材を熱硬化性樹脂化粧板でコの字状に被覆した積層板を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明における積層板とは、基材を熱硬化性樹脂化粧板で一連に被覆したものである。基材としては、単板、合板、集成材、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード等が挙げられる。熱硬化性樹脂化粧板としては、メラミン、フェノール、ジアリルフタレート、ポリエステル等の熱硬化性樹脂を化粧紙やコア紙に含浸し熱圧硬化させたもの、化粧紙にコートし常温硬化させた化粧板等が挙げられる。
【0009】
ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤は、ポリオール等の活性水素基含有化合物と多価イソシアネート化合物を反応させたものであり、常温で固形状の接着剤である。ポリオールとして結晶性、非晶性、液状の各種ポリオールを組み合わせたり、さらに分子量や融点を調整することにより、常温では固形状であり、加熱することにより液状となるよう調製したものである。ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤の具体的な組成は特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0010】
ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤は加熱溶融状態で塗布され、被着体との接触や空気中で冷却されて固形状に戻ることによって初期接着力を発現するとともに、ウレタン反応の進行により耐熱性等の最終接着性能にも優れるものである。しかしながら、本発明においてポリウレタン反応性ホットメルト接着剤のみを用いて積層板を製造する場合、平面部を貼り合わせた直後に熱硬化性樹脂化粧板の曲げ加工を行おうとすると、熱硬化性樹脂化粧板に加えた熱がポリウレタン反応性ホットメルト接着剤層にも伝わるため、ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤が軟化することにより基材と熱硬化性樹脂化粧板がはく離してしまう問題がある。そこで、以下の非反応性ホットメルト接着剤を併用することが必要である。
【0011】
非反応性ホットメルト接着剤は熱可塑性樹脂をベースとした接着剤であり、具体的にはスチレン系ブロック共重合体、ブチルゴム、粘着付与樹脂、石油樹脂、無機充填材等を配合したものである。加熱溶融して塗布され、被着体との接触や空気中で冷却されて固形状に戻ることによって接着力を発現する。反応性ホットメルト接着剤と比較して最終接着性能は劣るものの、溶融温度が高いことから、被着体の貼り合わせ直後に再加熱されても軟化しにくい性質を有する。そこで、本願発明においては、熱硬化性樹脂化粧板が基材に沿って折り曲げられる箇所から少なくとも5mm以内、好ましくは10mm以内については、非反応性ホットメルト接着剤を用いる。
【0012】
積層板の製造方法としては、平面部に接着剤に塗布して貼り合わせた後、側面部に接着剤を塗布して熱硬化性樹脂化粧板を基材に沿うように曲げつつ貼り合わせ、さらに必要に応じて裏面部に接着剤を塗布して熱硬化性樹脂化粧板を基材に沿うように曲げつつ貼り合わせる方法が挙げられるが、各面の貼り合わせの順序や、接着剤を塗布するタイミング、接着剤を塗布する面は特に制限されない。平面部、側面部、裏面部とは、コの字状の積層体を得る場合の基材の各面を便宜的に称したものであり、基材の形状は特に限定されない。また、熱硬化性樹脂化粧板を曲げやすくするため、曲げ加工時に加熱することが好ましい。さらに、極小の曲げ半径を得るために基材や熱硬化性樹脂化粧板を切削してもよい。
【0013】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0014】
熱硬化性樹脂化粧板と基材を平貼りするため、図1に示すように熱硬化性樹脂化粧板1の基材に沿って折り曲げられる箇所から12mm空けて、ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤2を塗布した。また、基材4の端部から12mmの範囲に非反応性ホットメルト接着剤3を塗布した。熱硬化性樹脂化粧板1と基材4を重ね合わせ、ピンチローラーで圧締することによって、図2に示す平貼り体を得た。さらに側面部に非反応性ホットメルト接着剤3を塗布し、熱硬化性樹脂化粧板1をヒーターで加熱しつつピンチローラーで折り曲げて圧締した。裏面部も同様に折り曲げ加工を行い、図3に示すような、基材を熱硬化性樹脂化粧板でコの字状に被覆した積層板を得た。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明の製造方法によれば、基材と熱硬化性樹脂化粧板を貼り合わせてからすぐに曲げ加工を行っても浮きが発生しないため、短時間で生産することが可能であり、仕掛品が発生しない。また、平面部にはポリウレタン反応性ホットメルト接着剤が使用されるため、熱した調理器具や食器が置かれる可能性があるカウンター面は、高い耐熱性を有する。
【符号の説明】
【0016】
1 熱硬化性樹脂化粧板
2 ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤
3 非反応性ホットメルト接着剤
4 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を熱硬化性樹脂化粧板で一連に被覆した積層板の製造方法であって、ポリウレタン反応性ホットメルト接着剤及び非反応性ホットメルト接着剤が併用されることを特徴とする積層板の製造方法。
【請求項2】
熱硬化性樹脂化粧板が基材に沿って折り曲げられる箇所から少なくとも5mm以内は非反応性ホットメルト接着剤が使用されていることを特徴とする請求項1記載の積層板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−228311(P2010−228311A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78900(P2009−78900)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】