説明

積層板の検査装置及び検査方法

【課題】積層板の色調を問わず、目視によらないでボイドや金属異物の有無を自動的に検査することができる積層板の検査装置を提供する。
【解決手段】積層板の検査装置に関する。積層板1にX線を照射するX線発生部2と、受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像を得る撮像部3と、原画像を平滑化処理して平滑化画像を得ると共に、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取る減算処理を行って差分画像を得た後、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得る画像処理部4と、この2値化画像を基に積層板1中の欠陥6の有無を判定する判定部5と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板中にボイドや金属異物などの欠陥がないか確認するのに用いられる積層板の検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の材料として用いられる金属張積層板などの積層板については、製造後にボイドや金属異物などの欠陥がないか確認するために検査が行われている(例えば、特許文献1参照。)。通常この検査は、光透過性の検査台上に積層板を置くと共にこの検査台の下方から照明を当て、検査員が拡大鏡などを用いて積層板を上方から観察することによって行われている。
【特許文献1】特開2000−97882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような目視による検査にあっては、検査員の能力や体調などにより、細かい欠陥や積層板の表面から深い位置にある欠陥などは見落としてしまうおそれがある。
【0004】
また、積層板の色調によっては欠陥を識別するのが困難な場合がある。すなわち、積層板が白系の色調であるとボイドを識別するのが困難であり、また積層板が黒系の色調であると金属異物を識別するのが困難である。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、積層板の色調を問わず、目視によらないでボイドや金属異物の有無を自動的に検査することができる積層板の検査装置及び検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る積層板の検査装置は、積層板1にX線を照射するX線発生部2と、受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像を得る撮像部3と、原画像を平滑化処理して平滑化画像を得ると共に、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取る減算処理を行って差分画像を得た後、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得る画像処理部4と、この2値化画像を基に積層板1中の欠陥6の有無を判定する判定部5と、を具備して成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る積層板の検査方法は、積層板1にX線を照射して受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像を得た後、この原画像を平滑化処理して平滑化画像を得ると共に、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取る減算処理を行って差分画像を得た後、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得ると共に、この2値化画像を基に積層板1中の欠陥6の有無を判定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る積層板の検査装置によれば、積層板の色調を問わず、目視によらないでボイドや金属異物の有無を自動的に検査することができるものである。
【0009】
本発明の請求項2に係る積層板の検査方法によれば、積層板の色調を問わず、目視によらないでボイドや金属異物の有無を自動的に検査することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、積層板の検査装置は、移動式検査台7と、X線発生部2と、撮像部3と、画像処理部4と、判定部5と、モニター部8と、を具備して形成されている。
【0012】
移動式検査台7は、検査対象である積層板1を載置するためのものであり、水平面内において相互に直交するX−Y軸方向に任意に移動可能に形成されている。
【0013】
またX線発生部2は、移動式検査台7上に載置された積層板1に軟X線などのX線を照射するためのものであり、移動式検査台7の下方に設置してある。
【0014】
また撮像部3は、移動式検査台7上に載置された積層板1について受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像(デジタル画像)を得るためのものであり、移動式検査台7の上方に設置してある。
【0015】
また画像処理部4は、撮像部3と電気的に接続されており、撮像部3で得られた積層板1の原画像を用いて、平滑化処理、減算処理、2値化処理を順次コンピュータ上で行うものである。
【0016】
また判定部5は、画像処理部4と電気的に接続されており、画像処理部4で最終的に得られた2値化画像を基にして、積層板1中のボイドや金属異物などの欠陥6の有無をコンピュータ上で判定するものである。
【0017】
またモニター部8は、画像処理部4及び判定部5と電気的に接続されており、積層板1の原画像や各種処理後の画像を表示したり、判定部5による判定結果を表示したりするものである。
【0018】
このようにして積層板の検査装置が形成されており、検査対象となる積層板1としては、特に限定されるものではないが、例えば、CEM−3(セムスリー)等の金属張積層板を用いることができる。
【0019】
そして積層板1の検査は、上記検査装置を用いて次のようにして行うことができる。まず積層板1を移動式検査台7上に載置すると共に、X線発生部2によって移動式検査台7の下方から積層板1に軟X線などのX線を照射する。このとき移動式検査台7をX−Y軸方向に適宜移動させて積層板1の全体にX線が照射されるようにする。そして撮像部3によって受光X線量に応じた濃淡値を持つ積層板1の原画像(0〜255階調、0:黒、255:白)を得る。図2はこの原画像の一例を示すものである。その後、画像処理部4によってこの原画像を平滑化処理して平滑化画像を得る。平滑化処理は、原画像の濃淡を一様にするものであり、収縮・膨張処理からなる。本発明において収縮処理とは、縦横3×3画素の画像において、中心画素の輝度を、中心画素とこの周囲の8個の画素を合わせた合計9個の画素の中での最小輝度に置き換える処理のことをいい、また膨張処理とは、縦横3×3画素の画像において、中心画素の輝度を、中心画素とこの周囲の8個の画素を合わせた合計9個の画素の中での最大輝度に置き換える処理のことをいう。そして図2の原画像に対して収縮処理を行うと図3のような収縮画像を得ることができ、引き続きこの収縮画像に対して膨張処理を行うと図4のような膨張画像、つまり、平滑化画像を得ることができる。実際には不要なノイズを十分に除去するため、収縮・膨張処理は5〜10回繰り返して行っているが、ボイドや金属異物などの欠陥部分は通常10画素程度の大きさであるのでこのような平滑化処理では除去されない。そしてさらに画像処理部4によって、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取って差分画像を得る。図5はこの差分画像の一例を示すものである。このように減算処理を行うことによって、積層板1を構成するガラスクロスなどの糸目の影響を小さくして、ボイドや金属異物などの欠陥部分のみを強調することができるものである。その後さらに画像処理部4によって、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得る。このとき差分画像では欠陥部分のみが強調されているので、最適の閾値を容易に求めることができる。また、原画像を直接2値化処理するのではなく、差分画像を2値化処理する方が欠陥部分の大きさを崩すことなく、その大きさを正確に認識することができるものである。そして最後に判定部5によって、この2値化画像を基に積層板1中の欠陥6の有無を判定する。この判定は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、欠陥部分を白色とし、欠陥6以外の部分を黒色とすれば、白色部分の有無を調べることによって積層板1中の欠陥6の有無を判定することができ、また白色部分の面積を調べることによって欠陥6の大きさを判定することができるものである。
【0020】
このように本発明によれば、X線を用いるので積層板1の色調を問わずに検査をすることができるものであり、また撮像部3、画像処理部4、判定部5によって、目視によらないでボイドや金属異物の有無を自動的に検査することができるものである。
【0021】
なお、積層板1の検査は通常1枚ずつ行っているが、検査視野が狭い場合には、積層板1を半分にして2枚重ねで検査を行うようにすれば検査時間を半分に短縮することができる。例えば、積層板1の面積が400mm×400mm、検査視野が20mm×20mm、各検査視野の検査時間が3秒である場合には、検査時間は全体で20分となるが、積層板1の面積を400mm×200mmにして2枚重ねで検査を行うようにすれば検査時間は全体で10分となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、積層板の検査装置の一例を示す概略図である。
【図2】原画像の一例を示すものである。
【図3】収縮画像の一例を示すものである。
【図4】膨張画像(平滑化画像)の一例を示すものである。
【図5】差分画像の一例を示すものである。
【符号の説明】
【0023】
1 積層板
2 X線発生部
3 撮像部
4 画像処理部
5 判定部
6 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層板にX線を照射するX線発生部と、受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像を得る撮像部と、原画像を平滑化処理して平滑化画像を得ると共に、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取る減算処理を行って差分画像を得た後、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得る画像処理部と、この2値化画像を基に積層板中の欠陥の有無を判定する判定部と、を具備して成ることを特徴とする積層板の検査装置。
【請求項2】
積層板にX線を照射して受光X線量に応じた濃淡値を持つ原画像を得た後、この原画像を平滑化処理して平滑化画像を得ると共に、原画像と平滑化画像との間で画素単位で差分を取る減算処理を行って差分画像を得た後、この差分画像を2値化処理して2値化画像を得ると共に、この2値化画像を基に積層板中の欠陥の有無を判定することを特徴とする積層板の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−128323(P2009−128323A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306597(P2007−306597)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】