説明

積層構造体、その製造方法、及びそれを含む電子素子

【課題】電界発光素子の駆動電圧を低く、消費電力を小さくすることが可能な積層構造体を提供すること。
【解決手段】電極と、該電極上に配置された高分子結合層と、該高分子結合層上に配置された導電性有機材料層とを備え、
前記高分子結合層が、下記式(I):
【化1】


(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)
で表される構造を有し且つポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上1×10以下である芳香族高分子化合物により構成され、
前記高分子結合層は、前記芳香族高分子化合物と前記電極表面との化学結合を介して前記電極に接合され、
前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下である、積層構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界発光素子や光電変換素子等に用いられる積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層構造体を含む電界発光素子の特性を向上させるため、導電性有機材料層と電極との間に、電極表面と化学結合した芳香族有機化合物の結合層を挿入することが検討されている。例えば、陽極と導電性有機材料層の間に、陽極表面に存在する反応性基との化学結合が可能な基を有するトリフェニルアミン骨格やチオフェン骨格を有する結合層を挿入した積層構造体が知られている(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
しかしながら、これらの芳香族有機化合物は、いずれもポリスチレン換算の数平均分子量が1000未満の低分子化合物又はオリゴマー化合物であり、その分子鎖長は5nm以下であった。このように重合度の小さい化合物を用いた場合では、電極表面に化学結合した結合層を作製する際、化合物が結晶化してしまうため、再現性良く、均一な結合層を作製することは困難であり、電界発光素子の駆動電圧が高く、消費電力が大きいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−310469号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.、2005年、127巻、10058〜10062頁
【非特許文献2】J.Mater.Chem.、2003年、13巻、38〜43頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、電界発光素子の駆動電圧を低く、消費電力を小さくすることが可能な積層構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、積層構造体中の電極と導電性有機材料層との間に、特定の数平均分子量を有し且つ前記電極の表面と化学結合することが可能な芳香族高分子化合物により構成される高分子結合層を挿入することによって、このような積層構造体が電界発光素子、光電変換素子の特性を向上させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の積層構造体は、電極と、該電極上に配置された高分子結合層と、該高分子結合層上に配置された導電性有機材料層とを備え、
前記高分子結合層が、下記式(I):
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)
で表される構造を有し且つポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上1×10以下である芳香族高分子化合物により構成され、
前記高分子結合層は、前記芳香族高分子化合物と前記電極表面との化学結合を介して前記電極に接合され、
前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下であるものである。
【0011】
本発明の積層構造体においては、前記高分子結合層の膜厚が0.1nm〜100μmであり、前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層の膜厚が0.1nm〜1cmであることが好ましい。
【0012】
また、前記芳香族高分子化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーが−4.0eV以上−0.5eV以下、及び/又は前記芳香族高分子化合物の最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーが−6.0eV以上−4.0eV以下であることが好ましく、前記芳香族高分子化合物のLUMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のLUMOの軌道エネルギーとの差が−2.5eV以上+2.5eV以下、及び/又は前記芳香族高分子化合物のHOMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のHOMOの軌道エネルギーとの差が−1.5eV以上+1.5eV以下であることも好ましい。
【0013】
本発明の積層構造体においては、前記芳香族高分子化合物の末端基が前記電極表面に存在する反応性基と化学結合していることが好ましく、前記電極としては、卑金属、貴金属及びこれらの酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の電気伝導性化合物を含むものであることが好ましい。
【0014】
前記高分子結合層としては、下記式(II):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xは末端基であり、rは1以上10以下の整数であり、n及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、rが2以上である場合、存在する複数のEは同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、存在する複数のArは同一であっても異なっていてもよく、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基である。)
で表される共役高分子を0.0001質量%以上の濃度で含有する溶液に電極を浸漬すること、及び/又は前記溶液を電極に塗布することにより形成されるものであることが好ましい。
【0017】
また、前記高分子結合層としては、溶液中、表面に下記式(III):
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xはハロゲン原子又は−SO(ここにQはアルキル基又はアリール基を表し、前記アルキル基及び前記アリールは置換基を有していてもよい。)で示される基であり、rは1以上10以下の整数であり、pは1以上の整数であり、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との化学結合により形成される結合基である。)
で表される基が結合した電極の存在下で、下記式(IV):
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Mは、ハロゲン原子、水素原子、−B(OQ(ここにQはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であるか、互いに結合して形成された環を表し、前記アルキル及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。)、−Si(Q(ここにQはアルキル基又はアルコキシ基であり、前記アルキル基及び前記アルコキシ基は置換基を有していてもよい。)、−Sn(Q(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基である)、−SO(ここにQはアルキル基又はアリール基であり、前記アルキル基及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。)で示される基、又は−Z(Z(ここにZは金属原子又は金属イオンであり、Zはカウンターアニオンである)であり、2個存在するMは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される芳香族化合物を、重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることにより形成されるものであることも好ましい。
【0022】
また、前記高分子結合層としては、下記式(V):
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xは末端基であり、rは1以上10以下の整数であり、n及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、rが2以上である場合、存在する複数のEは同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、存在する複数のArは同一であっても異なっていてもよく、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との化学結合により形成される結合基である。)
で表される構造を有するものであることも好ましい。
【0025】
前記式(V)中の結合基Eとしては、前記1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との共有結合、配位結合、水素結合及びイオン結合からなる群から選ばれる少なくとも1種により形成された結合基であることが好ましく、前記1価の基としては、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基及びクロロスルホン酸基からなる群から選ばれる1価の基であることが好ましい。
【0026】
前記式(V)中のGとしては、置換基を有していてもよい単環、置換基を有していてもよい縮合環、置換基を有していてもよい環集合及び置換基を有していてもよい有橋多環からなる群から選ばれる少なくとも一種のr+p価の基であることが好ましく、前記r+p価の基としては、下記式(1)〜(16):
【0027】
【化6】

【0028】
で表される複素環及び芳香環のうちの少なくとも1個を含むものであることがより好ましく、前記式(5)で表される複素環を1個含むものであることが特に好ましい。
【0029】
本発明の積層構造体においては、前記式(V)中のrは1以上3以下の整数(但し、前記式(V)中のGが単環性芳香環構造であって該環構造を構成する炭素原子が2個の場合にはrは1であり、前記炭素原子が3個の場合にはrは1又は2である。)であることが好ましい。
【0030】
前記式(V)中のArとしては、下記式(VI):
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アリールアルキル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、イミド残基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基又はシアノ基であり、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールオキシ基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルコキシ基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記カルバモイル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、複数存在するR、Rは同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基であるR及びRがそれぞれ複数存在する場合には互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有し、及び/又は下記式(VII):
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、Rは前記式(VI)中のRと同義である。)
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有するものであることが好ましい。
【0035】
本発明の積層構造体においては、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の合計に対して、前記式(VI)で表される繰り返し単位のモル百分率と前記式(VII)で表される繰り返し単位のモル百分率との合計が、10モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の積層構造体の製造方法は、電極上に、下記式(I):
【0037】
【化9】

【0038】
(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)
で表される構造を有し且つポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上1×10以下である芳香族高分子化合物により構成され、該芳香族高分子化合物が前記電極表面に化学結合している高分子結合層を形成する工程と、
前記高分子結合層上にポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下である導電性有機材料により構成される層を形成する工程と、
を含む方法である。
【0039】
本発明の電子素子は、本発明の積層構造体を含むものであり、例えば、電界発光素子や光電変換素子に用いられるものである。
【0040】
本発明の共役高分子は、下記式(VIII):
【0041】
【化10】

【0042】
(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Xは末端基であり、nは1以上の整数であり、Ar15は芳香環を有するi+p価の基であり、i及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、i+pは2以上20以下であり、Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基又はエチニレン基であり、jは0又は1であり、Rは水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、シリル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、2個のRは同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
で表されるものであり、本発明の積層構造体における高分子結合層を形成するために好適に用いることができるものである。
【0043】
また、本発明の共役化合物は、下記式(IX):
【0044】
【化11】

【0045】
(式中、Ar15は芳香環を有するi+p価の基であり、i及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、i+pは2以上20以下であり、Xはハロゲン原子又は−SO(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)で示される基であり、Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基又はエチニレン基であり、jは0又は1であり、Rは水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、シリル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、2個のRは同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)。
で表されるものであり、本発明の積層構造体における高分子結合層を形成するために好適に用いることができ、特に、前記式(II)で表される共役高分子の原料物質として用いることが有効であり、また、前記式(IX)で表される共役化合物を電極表面に結合させ、これを出発点として前記式(IV)で表される芳香族化合物を、重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることも有効である。
【発明の効果】
【0046】
本発明の積層構造体を用いることにより、駆動電圧が低く、消費電力が少ない電界発光素子が得られる。また、本発明の共役高分子又は共役化合物を用いることにより、このような積層構造体を構成する高分子結合層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0048】
先ず、本発明の積層構造体について説明する。本発明の積層構造体は、電極と、該電極上に配置され、特定の分子量を有する芳香族高分子化合物により構成され、この芳香族高分子化合物と電極表面との化学結合により接合された高分子結合層と、この高分子結合層上に配置された特定の分子量を有する導電性有機材料からなる層とを備えるものである。
【0049】
<電極>
本発明に用いられる電極としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物等の電気伝導性化合物を含むものが挙げられる。前記金属としては、卑金属、貴金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられ、前記合金としては、これらの金属を1種類以上含む合金が挙げられ、前記金属酸化物、金属硫化物、金属ハロゲン化物としては、これらの金属の酸化物、炭酸化物、複合酸化物、硫化物、ハロゲン化物等が挙げられる。これらの電気伝導性化合物は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
中でも、卑金属、貴金属及びこれらの酸化物が好ましく、アルミニウム、クロム、銅、金、銀、白金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛、酸化モリブデン、酸化アルミニウムがより好ましく、アルミニウム、銀、酸化インジウムスズ(ITO)が更に好ましい。また、前記電極は、これら材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0050】
<導電性有機材料層>
本発明に用いられる導電性有機材料層としては、後述する正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層、電子輸送層、正孔ブロック層、電子注入層、電子供与性化合物を含む層、及び電子受容性化合物を含む層等が挙げられる。このような導電性有機材料層は、導電性有機材料から構成されるものである。
【0051】
このような導電性有機材料としては、下記式(X):
【0052】
【化12】

【0053】
で表される構造を有する芳香族高分子化合物が挙げられる。本発明の積層構造体において、前記導電性有機材料層は、この導電性有機材料の1種又は2種以上を含む単層構造のものでもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造のものでもよい。
【0054】
前記式(X)中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Xは末端基であり、2個存在するXは同一であっても異なっていてもよく、nは1以上の整数であり、好ましくは1以上1×10以下の整数であり、より好ましくは1以上1×10以下の整数である。また、前記XはAr中の芳香環を構成する炭素原子に結合している。このようなXとしては、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。)で示される基、置換基を有していてもよいアルキル基、及び置換基を有していてもよいアリール基等が挙げられる。
【0055】
本発明の積層構造体において、前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下である。この数平均分子量が前記下限未満になると導電性有機材料の結晶性が高くなり、再現性良く、均一な層を形成することが困難となる。他方、前記上限を超えると導電性有機材料が有機溶媒に溶解しにくくなり、取り扱いにくくなる。本発明においては、このような観点から、前記導電性有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量は5×10以上1×10以下であることが好ましく、1×10以上1×10以下であることがより好ましい。
【0056】
なお、本発明において、「前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層」とは、前記導電性有機材料層が単層構造である場合にはその層自体を意味し、多層構造である場合には前記導電性有機材料層の中で高分子結合層に最も近い位置に配置されている層を意味する。
【0057】
また、前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層の膜厚は、用いる材料に応じて最適な膜厚を採用することができ、例えば、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択することができる。具体的な膜厚としては、0.1nm〜1cmが好ましく、1nm〜100μmがより好ましく、5nm〜10μmが特に好ましい。導電性有機材料層の膜厚が前記下限未満になるとピンホールが発生しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると素子の駆動電圧が高くなる傾向にある。なお、前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層の膜厚は、高精度微細形状測定機(例えば、株式会社小阪研究所製、商品名:Surfcorder ET3000)を用いて求めた平均値である。
【0058】
<高分子結合層>
本発明に用いられる高分子結合層は、前記電極と前記導電性有機材料層との間に配置された層であり、下記式(I):
【0059】
【化13】

【0060】
(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数であり、好ましくは1以上1×10以下の整数であり、より好ましくは1以上1×10以下の整数であり、更に好ましくは1以上1×10以下の整数である。)
で表される構造を有する芳香族高分子化合物により構成されるものである。また、本発明の積層構造体においては、前記高分子結合層はこの芳香族高分子化合物(好ましくはその末端基)と前記電極表面(好ましくはそれに存在する反応性基)との化学結合を介して前記電極に接合されている。
【0061】
本発明において、前記芳香族高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は1×10以上1×10以下である。この数平均分子量が前記下限未満になると再現性良く高分子結合層を形成することが困難となり、他方、前記上限を超えると芳香族高分子化合物が有機溶媒に溶解しにくくなり、取り扱いにくくなる。本発明においては、このような観点から、前記芳香族高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量は1×10以上1×10以下が好ましく、2×10以上1×10以下がより好ましく、4×10以上1×10以下が特に好ましい。
【0062】
なお、本発明に用いられる高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量とは、前記高分子結合層が、前記式(II)で表される共役高分子を0.0001質量%以上の濃度で含有する溶液に電極を浸漬すること、及び/又は前記溶液を電極に塗布することにより形成されるものである場合には、前記共役高分子を0.0001質量%以上の濃度で含有する溶液についてゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いてポリスチレン換算の分子量を測定し、数平均した値であり、他方、前記高分子結合層が、溶液中、表面に前記式(III)で表される基が結合した電極の存在下で、前記式(IV)で表される芳香族化合物を重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることにより形成されるものである場合には、前記電極上に形成された高分子結合層を適切な溶媒に浸し、この溶媒に高分子結合層を構成する芳香族化合物が溶解したのを確認した後、この溶液について蛍光検出器(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:Agilent1100 Series)を取り付けたGPC(株式会社島津製作所製:LC−10シリーズ)を用いて溶出時間を測定し、ポリスチレン換算の分子量が既知の高分子による検量線から算出した値である。
【0063】
また、前記高分子結合層の膜厚は、製造容易性及び構造体の機能性の観点から、通常、0.1nm〜100μmであることが好ましく、0.2nm〜10μmであることがより好ましく、0.2nm〜1μmであることが更に好ましく、0.2nm〜500nmであることが特に好ましい。
【0064】
なお、前記高分子結合層の膜厚は高精度微細形状測定機(株式会社小阪研究所製、商品名:Surfcorder ET3000)を用いて求めた電極表面の位置から高分子結合層の最も高い位置までの厚さである。
【0065】
本発明の積層構造体においては、電極から高分子結合層又は高分子結合層から導電性有機材料層への電荷の供給性の観点から、前記芳香族高分子化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーは−4.0eV以上−0.5eV以下であることが好ましく、−3.7eV以上−0.5eV以下であることがより好ましく、−3.5eV以上−0.5eV以下であることが特に好ましい。また、前記芳香族高分子化合物の最高非占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーは−6.0eV以上−4.0eV以下であることが好ましく、−5.7eV以上−4.0eV以下であることがより好ましく、−5.5eV以上−4.0eV以下であることが特に好ましい。本発明においては、前記芳香族高分子化合物のLUMO及びHOMOの少なくとも一方の軌道エネルギーが前記範囲内にあることが好ましく、LUMO及びHOMOの両方の軌道エネルギーが前記範囲内にあることが特に好ましい。
【0066】
また、本発明の積層構造体においては、高分子結合層から導電性有機材料層への電荷の供給性の観点から、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物のLUMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のLUMOの軌道エネルギーの差は−2.5eV以上+2.5eV以下であることが好ましく、−2.3eV以上+2.3eV以下であることがより好ましく、−2.0eV以上+2.0eV以下であることが更に好ましい。また、前記芳香族高分子化合物のHOMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のHOMOの軌道エネルギーの差は−1.5eV以上+1.5eV以下であることが好ましく、−1.3eV以上+1.3eV以下であることがより好ましく、−1.2eV以上+1.2eV以下であることが更に好ましい。
【0067】
なお、本発明においては、前記芳香族高分子化合物及び前記導電性有機材料のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーの値は類似高分子を用いた、理論化学的手法により算出することができる。本発明における類似高分子とは、前記式(V)、(X)中のArが同一の構造式で表される高分子化合物である。
【0068】
理論化学的手法とは、B3LYP密度汎関数と6−31G基底関数を組み合わせたものである(以下、「B3LYP/6−31G法」という)。上記手法を用いて類似高分子の安定分子構造と分子軌道エネルギーを計算した(Chem.Phys.Lett.2007,439,35〜39頁参照)。計算は、Gaussian03等の量子化学計算プログラムを用いて実行可能である。
【0069】
例えば、下記式:
【0070】
【化14】

【0071】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される高分子化合物において、類似高分子は前記式(V)、(X)中のArが同一の構造式である下記式:
【0072】
【化15】

【0073】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される化合物である。
【0074】
この類似高分子に関してB3LYP/6−31G法を用いて類似高分子の安定分子構造と分子軌道エネルギーを計算し、LUMO及びHOMOの軌道エネルギーを算出したところ、それぞれ、−1.70eV及び−4.97eVであった。また、表1には、他の類似高分子についてのLUMOの軌道エネルギー及びHOMOの軌道エネルギーを示す。なお、表1の構造式中のmは重合度を表す。
【0075】
【表1】

【0076】
<芳香族高分子化合物>
本発明に用いられる芳香族高分子化合物は、前記式(I)で表される構造を有するものである。前記式(I)中のArである芳香環を有する2価の基としては、下記式(C−1)〜(C−22)、(D−1)〜(D−24)、(E−1)〜(E−26)、(G−1)〜(G−8)、(J−1)〜(J−22)で表される2価の基が挙げられる。
【0077】
【化16】

【0078】
【化17】

【0079】
【化18】

【0080】
【化19】

【0081】
【化20】

【0082】
【化21】

【0083】
【化22】

【0084】
【化23】

【0085】
中でも、安定性、合成の容易さの観点から、前記式(C−1)〜(C−20)、(D−1)〜(D−20)、(E−1)〜(E〜2)、(E−7)〜(E−13)、(E−15)〜(E−20)、(E−22)〜(E−26)、(G−1)〜(G−8)、(J−1)〜(J−3)、(J−5)〜(J−14)、(J−18)〜(J−22)で表される2価の基が好ましく、前記式(C−1)〜(C−6)、(C−10)、(C−11)、(C−15)、(D−16)〜(D−20)、(E−17)〜(E−20)、(G−1)〜(G−8)、(J−1)〜(J−3)で表される2価の基がより好ましく、前記式(C−1)〜(C−3)、(C−10)、(C−11)、(C−15)、(D−16)〜(D−19)、(E−17)〜(E−20)、(G−1)〜(G−6)で表される2価の基が更に好ましく、前記式(C−1)、(C−11)、(C−15)、(D−16)、(E−20)、(G−1)、(G−2)で表される2価の基が特に好ましい。
【0086】
前記式中のRは、水素原子又は置換基を表し、共重合体の安定性や合成のしやすさの観点から、好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、イミド残基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基であり、より好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基であり、更に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基及び置換カルボキシル基であり、特に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基及び置換基を有していてもよいアリール基であり、とりわけ好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基である。また、前記式中に複数存在するRは、同一であっても異なっていてもよい。
【0087】
ここで、置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20であり、好ましくは1〜15であり、より好ましくは1〜10であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ラウリル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基等が挙げられ、素子特性、合成の行いやすさ等の観点と耐熱性とのバランスからは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基が好ましい。置換基を有していてもよいアルキル基であるRが複数存在する場合には、2個のアルキル基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0088】
置換基を有していてもよいアルコキシ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20であり、好ましくは1〜15であり、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、パーフルオロブトキシ基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、メトキシメチルオキシ基、2−メトキシエチルオキシ基、2−エトキシエチルオキシ基等が挙げられ、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさ等の観点と耐熱性とのバランスからは、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基が好ましい。
【0089】
置換基を有していてもよいアルキルチオ基は、直鎖、分岐又は環状のいずれでもよく、炭素数が通常1〜20であり、好ましくは3〜20である。また、前記置換基としては、アルコキシ基等が挙げられる。
【0090】
置換基を有していてもよいアリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環をもつ基、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン基等を介して結合した基も含まれる。アリール基は、全炭素数が通常6〜60であり、好ましくは7〜48であり、その具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられ、これらは更にアルキル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、置換アミノ基等の置換基を有していてもよい。これらの有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさ等の観点からは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基及びアルキルオキシカルボニル基からなる群から選ばれる置換基を1個以上有するフェニル基が好ましい。その具体例としては、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、メシチル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−s−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ペンチルフェニル基、4−イソアミルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、2,6−ジメチル−4−t−ブチルフェニル基、4−ヘプチルフェニル基、4−オクチルフェニル基、4−ノニルフェニル基、4−デシルフェニル基、4−ドデシルフェニル基、3−メチルオキシフェニル基、4−メチルオキシフェニル基、3,5−ジメチルオキシフェニル基、4−プロピルオキシフェニル基、4−イソプロピルオキシフェニル基、4−ブチルオキシフェニル基、4−イソブチルオキシフェニル基、4−s−ブチルオキシフェニル基、4−t−ブチルオキシフェニル基、4−ヘキシルオキシフェニル基、3,5−ジヘキシルオキシフェニル基、4−ヘプチルオキシフェニル基、4−オクチルオキシフェニル基、4−ノニルオキシフェニル基、4−(メトキシメトキシ)フェニル基、3−(メトキシメトキシ)フェニル基、4−(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3−(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3,5−ビス(2−エトキシ−エトキシ)フェニル基、3−メトキシカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、3,5−ジメトキシカルボニルフェニル基、3−エトキシカルボニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−メトキシフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−エトキシフェニル基、3−エチルオキシカルボニル−4−ヘキシルオキシフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基が挙げられる。
【0091】
置換基を有していてもよいアリールオキシ基は、炭素数が通常6〜60であり、好ましくは7〜48であり、その具体例としては、フェノキシ基、C〜C12アルコキシフェノキシ基(C〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、C〜C12アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、有機溶媒への溶解性、合成の行いやすさの観点からは、C〜C12アルコキシフェノキシ基、C〜C12アルキルフェノキシ基が好ましい。
【0092】
置換基を有していてもよいアリールチオ基は、炭素数が通常6〜60であり、その具体例としては、フェニルチオ基、C〜C12アルコキシフェニルチオ基、C〜C12アルキルフェニルチオ基、1−ナフチルチオ基、2−ナフチルチオ基、ペンタフルオロフェニルチオ基が挙げられる。
【0093】
置換基を有していてもよいアリールアルキル基は、炭素数が通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基、1−ナフチル−C〜C12アルキル基、2−ナフチル−C〜C12アルキル基が挙げられ、有機溶媒への溶解性、素子特性、合成の行いやすさの観点からは、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル基が好ましい。
【0094】
置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基は、炭素数が通常7〜60であり、好ましくは7〜48であり、その具体例としては、フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基、フェニルブトキシ基、フェニルペンチロキシ基、フェニルヘキシロキシ基、フェニルヘプチロキシ基、フェニルオクチロキシ基等のフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルコキシ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルコキシ基、1−ナフチル−C〜C12アルコキシ基、2−ナフチル−C〜C12アルコキシ基が挙げられる。
【0095】
置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基は、炭素数が通常7〜60であり、好ましくは7〜48である。また、前記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0096】
置換基を有していてもよいアリールアルケニル基は、炭素数が通常8〜60であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルケニル基(「C〜C12アルケニル」は、アルケニル部分の炭素数が2〜12であることを意味する。以下、同様である。)、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルケニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルケニル基、1−ナフチル−C〜C12アルケニル基、2−ナフチル−C〜C12アルケニル基が挙げられる。
【0097】
置換基を有していてもよいアリールアルキニル基は、炭素数が通常8〜60であり、その具体例としては、フェニル−C〜C12アルキニル基(「C〜C12アルキニル」は、アルキニル部分の炭素数が2〜12であることを意味する。以下、同様である。)、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキニル基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキニル基、1−ナフチル−C〜C12アルキニル基、2−ナフチル−C〜C12アルキニル基が挙げられる。
【0098】
置換アミノ基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1又は2個の基で置換されたアミノ基が挙げられ、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基は置換基を有していてもよい。置換アミノ基の炭素数は該置換基の炭素数を含めないで通常1〜60であり、好ましくは2〜48である。具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジプロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、ラウリルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ピロリジル基、ピペリジル基、ジトリフルオロメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル)アミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基、ペンタフルオロフェニルアミノ基、ピリジルアミノ基、ピリダジニルアミノ基、ピリミジルアミノ基、ピラジルアミノ基、トリアジルアミノ基フェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキルアミノ基、ジ(C〜C12アルコキシフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、ジ(C〜C12アルキルフェニル−C〜C12アルキル)アミノ基、1−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基、2−ナフチル−C〜C12アルキルアミノ基等が挙げられる。
【0099】
置換シリル基としては、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び1価の複素環基から選ばれる1、2又は3個の基で置換されたシリル基が挙げられる。置換シリル基の炭素数は通常1〜60であり、好ましくは3〜48である。なお、該アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、1価の複素環基は置換基を有していてもよい。
【0100】
置換基を有していてもよいアシル基は、炭素数が通常2〜20であり、好ましくは炭素数2〜18であり、その具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、トリフルオロアセチル基、ペンタフルオロベンゾイル基が挙げられる。また、前記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0101】
置換基を有していてもよいアシルオキシ基は、炭素数が通常2〜20であり、好ましくは炭素数2〜18であり、その具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基、イソブチリルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ペンタフルオロベンゾイルオキシ基が挙げられる。また、前記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0102】
置換基を有していてもよいカルバモイル基は、炭素数が通常2〜20であり、好ましくは炭素数2〜18であり、その具体例としては、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基が挙げられる。また、前記置換基としては、アルキル基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0103】
置換基を有していてもよい1価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子1個を除いた残りの原子団をいい、炭素数は通常4〜60であり、好ましくは4〜20である。なお、前記1価の複素環基の炭素数には、複素環に置換した置換基の炭素数は含まれない。ここに複素環式化合物とは、環式構造をもつ有機化合物のうち、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、燐、硼素等のヘテロ原子を環内に含むものをいう。具体的には、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられ、チエニル基、C〜C12アルキルチエニル基、ピリジル基、C〜C12アルキルピリジル基が好ましい。
【0104】
<高分子結合層の形成方法>
本発明に用いられる高分子結合層としては、例えば、下記式(XI):
【0105】
【化24】

【0106】
で表される構造を有するものが挙げられる。
【0107】
前記式(XI)中のGはs+u+1価の基、原子、カチオン、アニオン、又は単結合であり、中でも、周期表の第14族に属する原子、周期表の第13族に属する原子から生じたアニオン、周期表の第15族に属する原子から生じたカチオン、4価のアダマンチル基、又は単結合であることが好ましく、炭素原子、ケイ素原子、ホウ素アニオン、窒素カチオン、4価のアダマンチル基、又は単結合であることがより好ましく、炭素原子、ケイ素原子、又は単結合であることが特に好ましい。Gはq+1価の基、又は単結合であり、中でも、置換基を有していてもよい芳香環を有するq+1価の基又は単結合であることが好ましい。Gはt+p価の基であり、中でも、置換基を有していてもよい芳香環を有するt+p価の基が好ましい。R17は前記Rと同様に定義される基であり、好ましい範囲も同様である。
【0108】
前記式(XI)中のqは1以上の整数であり、好ましくは1以上10以下の整数であり、より好ましくは1以上5以下の整数であり、更に好ましくは1以上3以下の整数であり、特に好ましくは1又は2である。sは1以上の整数であり、好ましくは1以上10以下の整数であり、より好ましくは1以上5以下の整数であり、更に好ましくは1以上3以下の整数であり、特に好ましくは1又は2である。uは0以上の整数であり、好ましくは0以上5以下の整数であり、より好ましくは0以上2以下の整数であり、更に好ましくは0である。tは1以上の整数であり、好ましくは1以上10以下の整数であり、より好ましくは1以上5以下の整数であり、更に好ましくは1以上3以下の整数であり、特に好ましくは1又は2である。Gが周期表の第14族に属する原子、周期表の第13族に属する原子から生じたアニオン、周期表の第15族に属する原子から生じたカチオン又は4価のアダマンチル基である場合、s+u=3であり、Gが単結合である場合、s=1且つu=0である。Gが単結合である場合、q=1である。なお、前記式(XI)中のE、Ar、X、p及びnついては、後述する<共役高分子を結合させる方法(A)>において併せて説明する。
【0109】
このような前記式(XI)で表される構造を有する高分子結合層のうち、下記式(V):
【0110】
【化25】

【0111】
で表される構造を有するものが好ましい。ここで、r=q×s×tであり、Gは下記式(XII):
【0112】
【化26】

【0113】
で表される構造となる。前記式(XII)中のG、G、G、p、q、s及びtは前記式(XI)中のG、G、G、p、q、s及びtと同義である。*はE又はArとの結合部位を表す。なお、前記式(XII)中、Gに結合したR17は省略する。
【0114】
このような高分子結合層の形成方法は、前記電極上に前記高分子結合層を形成できる方法であればよく、例えば、後述する共役高分子を電極表面に化学結合させる方法〔方法(A)〕や、電極表面に存在する官能基に芳香族化合物を重縮合させる方法〔方法(B)〕が挙げられる。
【0115】
<共役高分子を結合させる方法(A)>
まず、共役高分子を結合させる方法(A)について、前記式(V)で表される高分子結合層を形成する場合を例に説明する。この方法(A)は、下記式(II):
【0116】
【化27】

【0117】
で表される共役高分子の種類及び分子量にもよるが、気相、液相、又は固相で行うことができ、取り扱いの容易さの観点から、液相で行うことが好ましい。気相で行う場合は、蒸着等の方法によって真空中で清浄な電極上に堆積させて形成することができる。固相で行う場合は、前記式(II)で表される共役高分子を清浄な電極上に擦りつけて形成することができる。液相で行う場合は、前記式(II)で表される共役高分子を0.0001質量%以上の濃度で含有する溶液に前記電極を浸漬したり、この溶液を前記電極に塗布したり、あるいはこの溶液に前記電極を浸漬した後にこの溶液を更に上に塗布することによって、前記電極上に前記高分子結合層を形成することができる。なお、前記式(II)の詳細については後述する。
【0118】
また、いずれの方法においても電極の表面を洗浄しておくことが好ましい。電極表面に汚れ、ゴミ等が付着していると高分子結合層に欠陥が生じる場合がある。そのため、電極を洗浄した後、直ちに電極上に高分子結合層を形成する工程に入ることが好ましい。洗浄方法は電極の種類に応じて選択することができ、それぞれの電極について公知の方法を用いることができる。欠陥の少ない高分子結合層を形成するためには、洗浄の最終工程で、オゾン、プラズマ等で処理することが好ましく、オゾン、酸素プラズマ等の活性酸素種で処理することが更に好ましく、簡便さの観点から、オゾンで処理することが特に好ましい。
【0119】
前記式(II)で表される共役高分子を含む溶液の濃度は、前記式(I)で表される構造を有する芳香族高分子化合物により構成される高分子結合層を安定に得るという観点からは、0.0001〜50質量%が好ましく、0.001〜10質量%がより好ましく、0.005〜1質量%が特に好ましい。また、浸漬により高分子結合層を形成する場合の浸漬時間は、前記共役高分子の種類によって異なるが、通常100時間以内である。
【0120】
また、前記溶液は、不純物を極力除去したものを用いることが好ましい。特に、ゴミ、電極表面に吸着する性質の他の分子が前記溶液に混入していると、得られる高分子結合層に欠陥が生じる場合がある。このようにして形成された前記高分子結合層は、前記(V)で表される構造を有するものである。
【0121】
前記式(II)、(V)及び(XI)中のArは前記式(I)中のArと同義である。Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xは末端基であり、rは1以上10以下の整数であり、n及びpはそれぞれ独立に1以上の整数である。rが2以上である場合、存在する複数のEやEは同一であっても異なっていてもよい。nが2以上である場合、存在する複数のArは同一であっても異なっていてもよい。pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよい。また、前記Xは、Ar中の芳香環を構成する炭素原子に結合している。
【0122】
前記式(II)、(V)及び(XI)中の末端基Xとしては、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、−SO(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)で示される基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよいアシルオキシ基、カルバモイル基、イミド残基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホン酸基、シアノ基、リン酸基及びメルカプト基等が挙げられ、好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、ハロゲン原子、スルホン酸基であり、より好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。末端基Xが複数存在する場合には、それらは同じであっても互いに異なっていてもよい。
【0123】
前記式(II)中のEとしては、好ましくは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基(−COCl)、クロロホスホン酸基(−POCl)、クロロスルホン酸基(−SOCl)、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基であり、より好ましくはメルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基及びクロロスルホン酸基からなる群から選ばれる1価の基であり、更に好ましくはメルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基及びクロロスルホン酸基からなる群から選ばれる1価の基であり、特に好ましくはメルカプト基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる1価の基である。なお、置換ジスルフィド基は2個のメルカプト基がしばしば結合して生じるが、メルカプト基と同様に共有結合、配位結合、水素結合及びイオン結合からなる群から選ばれる少なくとも一種の相互作用を引き起こす機能を有するものである。
【0124】
ここで置換ジスルフィド基とは−SS−Rで表される基であり、Rはアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基であることが好ましく、アルキル基、アリール基であることがより好ましい。
【0125】
前記式(V)及び(XI)中のEは、前記式(II)中のEが電極表面に存在する反応性基と化学結合して生じる基であり、好ましくは、前記式(II)中のEが電極表面に存在する反応性基と反応して共有結合、配位結合、水素結合及びイオン結合からなる群から選ばれる少なくとも一種の相互作用により形成された結合基である。このような結合基Eを形成するEとしては、前記式(II)のEとして例示した1価の基が挙げられる。
【0126】
なお、前記式(V)及び(XI)中の結合基Eの状態、すなわち、Eと電極表面に存在する反応性基との結合状態は明らかではないが、前記式(II)中のEがメルカプト基(−SH)の場合を例に説明する。メルカプト基が電極表面に存在する反応性基と共有結合を形成する場合は、メルカプト基の水素原子が電極表面上の原子に置換された構造で表すことができる。メルカプト基が電極表面に存在する反応性基と配位結合を形成する場合、メルカプト基の硫黄原子上の非共有電子対が電極表面上の原子に供与され結合した状態で表すことができる。メルカプト基が電極表面に存在する反応性基と水素結合を形成する場合、メルカプト基の水素原子又は硫黄原子が電極表面上の原子と水素結合した状態で表すことができる。メルカプト基が電極表面に存在する反応性基とイオン結合する場合、メルカプト基の水素原子がプトロンとして脱離し生成したメルカプチドイオンと電極表面上のカチオン種とが静電的相互作用した状態で表すことができる。
【0127】
電極表面に存在する反応性基とは、前記式(II)中のEと反応しうる電極表面の原子および原子団を示す。例えば、電極がアルミニウムである場合には、その表面に存在するアルミニウム原子やそれから生じるアルミニウムイオンが反応性基であり、電極が銀である場合には、その表面に存在する銀原子やそれから生じる銀イオンが反応性基である。また、このような金属電極の表面が酸化されている場合には、その表面に存在する酸素原子、酸素イオン、ヒドロキシ基などの原子団、金属原子および金属イオンが反応性基である。例えば、電極がITOなどの酸化物からなる場合には、その表面に存在する酸素原子、酸素イオン、ヒドロキシ基などの原子団、金属原子および金属イオンが反応性基である。このような反応性基は電極表面に存在するものであり、洗浄処理や活性化処理などにより電極と前記式(II)中のEとの反応性を向上させることができる。
【0128】
前記式(II)及び(V)中のGは、芳香環を有するr+p価の基である。したがって、前記式(XI)(ただし、r=q×s×tである。)においてG、G、Gのうちの少なくとも1個は芳香環を有する基である。また、前記式(II)及び(V)中のGは、単環、縮合環、環集合又は有橋多環のr+p価の基であることが好ましい。また、前記r+p価の基は、下記式(1)〜(16):
【0129】
【化28】

【0130】
で表される複素環及び芳香環のうちの少なくとも1個を含む単環、縮合環、環集合又は有橋多環であることが好ましく、前記式(5)で表される複素環を1個含む単環、縮合環、環集合又は有橋多環であることがより好ましい。前記単環、前記縮合環、前記環集合及び前記有橋多環は置換基を有していてもよい。なお、前記式(1)〜(16)は、結合部位及び置換基を省略したものである。また、本発明において「芳香環を有する基」とは、芳香族炭素水素基及び複素環式芳香族炭化水素基を包含する。前記式(V)中のGが単環、縮合環、環集合又は有橋多環のr+p価の基である場合、前記式(XI)(ただし、r=q×s×tである。)中のG及びGはともに単結合であり、GはGであり、q=1、s=1、t=r、u=0である。
【0131】
このような芳香環を有する基としては、例えば、ベンゼン環、ピリジン環、1,2−ジアジン環、1,3−ジアジン環、1,4−ジアジン環、1,3,5−トリアジン環、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、アザジアゾール環の単環性芳香環;該単環性芳香環の中から互いに独立に選んだ2個以上が縮環した縮環性芳香環;該単環性芳香環及び/又は該縮合多環性芳香環の中から互いに独立に選んだ2個以上の環を、単結合、メチレン基、エチレン基、エテニレン基、エチニレン基、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、カルボニル基、スルホニル基等の2価の原子又は基で連結した芳香環集合;該縮合多環性芳香環又は該芳香環集合の隣り合う2個の芳香環をメチレン基、エチレン基、カルボニル基、スルホニル基等の2価の基で橋架けした架橋を1以上有する有橋多環式芳香環を挙げることができる。また、前記縮環性芳香環において縮環する単環性芳香環の数としては2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2が更に好ましい。前記芳香環集合において連結する単環性芳香環及び/又は縮環性芳香環の数としては2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2が更に好ましい。前記有橋多環式芳香環において橋かけされる単環性芳香環及び/又は縮環性芳香環の数としては2〜4が好ましく、2〜3がより好ましく、2が更に好ましい。
【0132】
以下に、このような芳香環を有する基の具体例を、その基本構造(即ち、非置換状態のもの)で示す。なお、以下の化学式は、結合部位を省略したものである。前記単環性芳香環としては、例えば、
【0133】
【化29】

【0134】
が挙げられる。
【0135】
縮合性芳香環としては、例えば、
【0136】
【化30】

【0137】
が挙げられる。
【0138】
芳香環集合としては、例えば、
【0139】
【化31】

【0140】
が挙げられる。
【0141】
有橋多環式芳香環としては、例えば、
【0142】
【化32】

【0143】
が挙げられる。
【0144】
これらの芳香環を有する基の中でも、前記式20、21、23、24、25、26、29、30、33、34、50、51、53、54、56、58、66、67、72、75、76、80、81、82、90、91、92、93、94、96、97、98、99、100、101、106、107、108、109、110、111、112、120、124、129、130で表される芳香環を有する基が好ましく、前記式20、21、23、24、25、26、50、53、80、82、90、91、92、93、94、96、97、106、107、108、109、110、111、120、124で表される芳香環を有する基がより好ましく、前記式20、21、23、24、25、26、80、90、94、96、97、107、111、120、124で表される芳香環を有する基が更に好ましく、前記式20、21、25、26、90、97、120、124で表される芳香環を有する基が特に好ましく、前記式20、25、90、97、120で表される芳香環を有する基がとりわけ好ましい。
【0145】
また、本発明において、前記芳香環を有する基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子のみからなることが好ましく、水素原子、炭素原子、窒素原子のみからなることがより好ましい。
【0146】
前記芳香環を有する基は、それを構成する炭素原子に結合した水素原子が、ヒドロキシ基、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、炭化水素二置換アミノ基、アルキルチオ基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素二置換アミノカルボニル基、炭化水素スルホニル基により置換されてもよい。中でも、置換基としては、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、炭化水素二置換アミノ基、アルキルチオ基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基がより好ましく、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、炭化水素二置換アミノ基が更に好ましい。また、芳香環を構成する窒素原子に結合した水素原子が、炭化水素基で置換されてもよい。更に、このような炭素原子上の置換基及び/又は窒素原子上の置換基が2個以上存在する場合には、それらから選ばれる2個の置換基が互いに結合して環を形成してもよい。
【0147】
前記の炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素スルホニル基とは、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルホニル基のそれぞれについて前記炭化水素基が1個結合した基である。炭化水素二置換アミノ基、炭化水素二置換アミノカルボニル基とは、アミノ基、アミノカルボニル基のそれぞれについて前記炭化水素基が2個結合した基である。
【0148】
前記芳香環を有する基が2官能性以上の有機基である場合には、前記芳香環を有する基の炭素原子上の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、炭化水素二置換アミノ基、アルキルチオ基、炭化水素カルボニル基、炭化水素オキシカルボニル基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、炭化水素二置換アミノ基がより好ましく、アルキル基、アルコキシ基が更に好ましい。また、窒素原子上の置換基としては、アルキル基が好ましい。
【0149】
前記式(II)、(V)及び(XI)中のnは1以上の整数であり、好ましくは1以上1×10以下の整数であり、より好ましくは1以上1×10以下の整数であり、更に好ましくは1以上1×10以下の整数である。また、前記式(II)及び(V)中のrは1以上10以下の整数であり、1以上5以下の整数であることが好ましく、1以上3以下の整数であることがより好ましく、1又は2であることが特に好ましい。但し、前記式(II)及び(V)中のGが単環性芳香環構造であって該環構造を構成する炭素原子が2個の場合(例えば、前記式11、12及び15)には、rは1であり、前記炭素原子が3個の場合(例えば、前記式5、8〜10及び13)にはrは1又は2である。
【0150】
前記式(II)、(V)及び(XI)中のpは1以上の整数であり、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましく、1以上3以下の整数であることが特に好ましく、1又は2であることがとりわけ好ましい。但し、前記式(II)及び(V)中のGが単環性芳香環構造であって該環構造を構成する炭素原子が2個の場合(例えば、前記式11、12及び15)には、pは1であり、前記炭素原子が3個の場合(例えば、前記式5、8〜10及び13)にはpは1又は2である。
【0151】
また、前記式(II)及び(V)において、Gの価数であるr+pは2以上20以下の整数であることが好ましく、2以上10以下の整数であることがより好ましく、2以上5以下の整数であることが更に好ましく、2又は3であることが特に好ましい。
【0152】
本発明においては、前記式(II)、(V)及び(XI)中のArは、下記式(VI):
【0153】
【化33】

【0154】
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有し、及び/又は、下記式(VII):
【0155】
【化34】

【0156】
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有することが好ましい。前記式(VI)で表される繰り返し単位の含有率は1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また、前記式(VII)で表される繰り返し単位の含有率は1質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。
【0157】
また、本発明の積層構造体においては、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の合計に対して、前記式(VI)で表される繰り返し単位のモル百分率と前記式(VII)で表される繰り返し単位のモル百分率との合計が、10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、15モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、20モル%以上100モル%以下であることが更に好ましい。
【0158】
前記式(VI)中のRは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基であり、複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。
また、共重合体の安定性や合成のしやすさ等の観点から、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基であることが好ましく、より好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基であり、更に好ましくは置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基である。置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であるRが複数存在する場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0159】
前記式(VI)及び(VII)中のRは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、イミド残基、置換基を有していてもよい1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基又はシアノ基であり、複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。また、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換アミノ基、置換シリル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換カルボキシル基及びシアノ基が好ましく、より好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルコキシ基、置換カルボキシル基であり、更に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアリール基であり、特に好ましくは水素原子、アルキル基である。置換基を有していてもよいアルキル基であるRが複数存在する場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
【0160】
また、本発明の積層構造体に用いられる芳香族高分子化合物としては、下記式(VIII):
【0161】
【化35】

【0162】
で表される共役高分子も好ましい。
【0163】
前記式(VIII)中のArは前記式(I)及び(II)中のArと同義であり、X、n及びpはそれぞれ前記式(II)中のX、n及びpと同義である。また、iは1以上の整数であり、1以上10以下の整数であることが好ましく、1以上5以下の整数であることがより好ましく、1以上3以下の整数であることが特に好ましく、1又は2であることがとりわけ好ましい。i+pは2以上20以下の整数であり、好ましくは2以上10以下の整数であり、より好ましくは2以上5以下の整数であり、特に好ましくは2又は3である。iが2以上の場合には複数存在するY及びRは同一であっても異なっていてもよい。また、pが2以上の場合には複数存在するXは同一であっても異なっていてもよい。
【0164】
前記式(VIII)中のAr15は、芳香環を有するi+p価の基であり、単環、縮合環、環集合又は有橋多環のr+p価の基であることが好ましい。また、前記r+p価の基は、前記式(1)〜(16)で表される複素環及び芳香環のうちの少なくとも1個を含む単環、縮合環、環集合又は有橋多環であることが好ましい。前記単環、前記縮合環、前記環集合及び前記有橋多環は置換基を有していてもよい。このような芳香環を有する基の基本構造(非置換状態のもの)の具体例としては前記式20〜133で表されるもの(結合部位を省略)が挙げられる。
【0165】
これらの芳香環を有する基の中でも、前記式20、21、23〜26、50、51、80、82、90〜94、96、97、106〜111、120、124で表されるものが好ましく、前記式20、21、23、24、26、51、80、90、94、96、97、107、111、120、124で表されるものがより好ましく、前記式20、21、23、51、90、120、124で表されるものが更に好ましく、前記式20、90、120で表されるものが特に好ましい。
【0166】
前記式(VIII)中のjは0又は1であり、0が好ましい。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基又はエチニレン基である。前記置換イミノ基は、−N(Q)−(ここで、Qは置換基を表す)で示される基であり、Qとしては、置換基を有していてもよいアルキル基が挙げられ、その具体例としては前記例示と同じものが挙げられる。前記置換エテニレン基は、−C(Q)=C(Q)−(ここで、Q及びQはそれぞれ独立に水素原子又は置換基であるが、Q及びQの少なくとも1個は置換基である。)で示される基である。置換基であるQ及びQとしては、アルキル基が挙げられる。アルキル基の具体例としては前記例示と同じものが挙げられる。このようなYとしては、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エチニレン基が好ましく、酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基がより好ましく、酸素原子、イミノ基が更に好ましい。
【0167】
前記式(VIII)中のRは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールアルケニル基、置換基を有していてもよいアリールアルキニル基、シリル基、置換シリル基、置換基を有していてもよいアシル基、置換基を有していてもよい1価の複素環基であり、複数存在するRは同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。このようなRのうち、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールアルキル基、シリル基、置換シリル基、置換基を有していてもよいアシル基が好ましく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換シリル基、置換基を有していてもよいアシル基がより好ましい。なお、これらの基の具体例としては、前記例示と同じものが挙げられる。
【0168】
本発明の積層構造体を製造する際、前記式(VIII)で表される共役高分子のうち、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基であるものについては、そのまま、前記高分子結合層の形成に使用することができるが、Rがこれら以外の基であるものについては、Rを、PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,THEODORA W.GREENE,PETER G.M.WUTS,WILEY−INTERSCIENCE,454−493頁に記載の方法をはじめ、J.Am.Chem.Soc.,1949,1253−1257頁に記載されている金属ナトリウムを使用する反応、J.Am.Chem.Soc.,2005,8036−8043頁に記載されているヨウ素を使用する反応等により水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基に変換することによって、前記高分子結合層の形成に使用することが可能となる。
【0169】
また、前記式(VIII)で表される共役高分子を製造する過程で、Rが水素原子に変換される場合があり、この場合は水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基への変換を省略することができる。
【0170】
従って、前記式(VIII)で表される共役高分子のうち、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基であるものについてはそのままのものが、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基以外の基であるものについてはRを水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基に変換した後のものが、前記式(II)においてGが下記式(XIII):
【0171】
【化36】

【0172】
で表される構造であり、EがR−S(ただし、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基である)であり、r=2×iである共役高分子に相当する。なお、前記式(XIII)中のY、Ar15、i、jはそれぞれ前記式(VIII)中のY、Ar15、i、jと同義であり、*はE又はArとの結合部位を表す。
【0173】
このような前記式(II)で表される共役高分子の好ましい具体例を以下に示す。
【0174】
【化37】

【0175】
ここで、Eは前記式(II)中のEと同義であり、Ar16は−(Ar−Xであり、Arは前記式(I)及び(II)中のArと同義であり、X及びnはそれぞれ前記式(II)中のX及びnと同義である。
【0176】
これらのうち、前記式(L−2)〜(L−4)、(L−6)、(L−9)、(L−10)、(L−11)で表される共役高分子がより好ましく、前記式(L−4)、(L−9)、(L−10)で表される共役高分子が特に好ましい。
【0177】
(共役高分子の製造方法)
本発明に用いられる共役高分子の製造方法を、前記式(II)で表される共役高分子を例に説明する。前記式(II)で表される共役高分子は、下記式(XIV):
【0178】
【化38】

【0179】
で表される共役化合物と、下記式(IV):
【0180】
【化39】

【0181】
で表される芳香族化合物を、重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることによって製造することができる。
【0182】
前記式(XIV)中のG、r及びpは前記式(II)中のG、r及びpと同義であり、前記式(IV)中のArは前記式(II)中のArと同義である。また、前記式(IV)中のMは、後述する<芳香族化合物を重縮合させる方法(B)>において説明する式(IV)中のMと同義である。更に、重合触媒、当量反応剤及び重縮合条件については後述する芳香族化合物を重縮合させる方法(B)における場合と同様である。
【0183】
前記式(XIV)中のEは、前記式(II)中のE、及び/又は、前記式(II)中のEに変換することができる基である。このようなEとしては、例えば、Eがメルカプト基又は置換ジスルフィド基である場合には前記式(VIII)中の−S−Rとして例示したものが挙げられる。また、Eがカルボキシル基である場合には置換基を有していてもよいアルキル基Rとのエステル結合を含む原子団−C(O)O−Rが挙げられる。
【0184】
前記式(XIV)中のXは、ハロゲン原子又は−SO(ここに、Qは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)で示される基である。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。前記−SOで示される基としては、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が好ましい。
【0185】
これらのうち、Xとしては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基が更に好ましく、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
【0186】
前記式(II)で表される共役高分子として前記式(VIII)で表される本発明の共役高分子を製造する場合には、前記式(IV)で表される芳香族化合物を重縮合させる際に、下記式(IX):
【0187】
【化40】

【0188】
で表される共役化合物を添加することが好ましい。前記式(IX)の添加量は目的とする高分子の分子量により調整すればよいが、通常、式(IX)の添加量は0.00001モル%以上50モル%以下であり、好ましくは0.0001モル%以上30モル%以下であり、より好ましくは0.0001モル%以上20モル%以下である。なお、前記式(IX)中のR、Y、Ar15、i及びjは前記式(VIII)中のR、Y、Ar15、i及びjと同義である、また、前記式(IX)中のXは前記式(XIV)中のXと同義である。
【0189】
このようにして重縮合反応により形成された前記式(II)で表される共役高分子は、pが1である場合には直鎖状の芳香族高分子化合物により構成されたものであり、また、pが2以上である場合には、Gにおいて直鎖状ポリマー鎖がp本に分岐した芳香族高分子化合物により構成されたものであり、これらのいずれにおいても、その片末端に電極と化学結合し得る基を有するものである。
【0190】
<芳香族化合物を重縮合させる方法(B)>
本発明に用いられる高分子結合層は、以下のように、電極上で芳香族化合物を重縮合させる方法(B)によっても形成することができる。ここでは、前記式(V)で表される高分子結合層を形成する場合を例に説明する。この方法(B)は、溶液中、表面に下記式(III):
【0191】
【化41】

【0192】
で表される基が結合した電極の存在下で、下記式(IV):
【0193】
【化42】

【0194】
で表される芳香族化合物を、重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることによって前記電極上に前記高分子結合層を形成する方法である。このようにして形成された前記高分子結合層は、前記式(V)で表される構造を有するものである。
【0195】
前記式(IV)中のArは前記式(II)のArと同義である。前記式(IV)中のMは、水素原子、ハロゲン原子、−B(OQ、−Si(Q、−Sn(Q、−SOで示される基、又は−Z(Zを表し、2個存在するMは同一であっても異なっていてもよい。
【0196】
前記−B(OQにおけるQは、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であり、また、互いに結合して環を形成してもよい。Qとしては置換基を有していてもよいアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が更に好ましい。環を形成する場合には、2個のQからなる二官能性の炭化水素基として、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基、1,2−フェニレン基が好ましい。
【0197】
前記−Si(QにおけるQは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアルコキシ基であり、Qとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基がより好ましい。
【0198】
前記−Sn(QにおけるQは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基がより好ましい。
【0199】
前記−SOにおけるQは、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基である。−SOで示される基としては、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が好ましい。
【0200】
前記−Z(ZにおけるZは金属原子又は金属イオン、Zはカウンターアニオン、mは0以上の整数である。Zとしては、例えば、Li、Na、K,Rb、Cs、Be,Mg,Ca,Sr,Ba、Al,Ga,In,Tl,Pb、Sc、Ti、V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Ag,Cd,La,Ce,Sm,Eu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg等の原子又はイオンを挙げることができる。好ましくはLi、Na、K,Rb、Cs、Be,Mg,Ca,Sr,Ba、Al,Ga,In,Tl,Pb、Sc、Ti、Cu,Zn,Y,Zr,Ag,Hgであり、より好ましくはLi、Na、K,Rb、Cs、Be,Mg,Ca,In,Tl,Pb、Cu,Zn,Zr,Ag,Hgであり、更に好ましくはLi、Na、K,Mg,Ca,Cu,Znである。
【0201】
としては、通常、ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキサイドイオン、エトキサイドイオン等が挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、より好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオンであり、更に好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンである。
【0202】
Mが−Z(Zの場合、mは前記式(IV)で表される芳香族化合物が電気的に中性となるように決定される。すなわち、前記式(IV)で表される芳香族化合物がZ(Z−Ar−Mで表される場合においては、Z(Z部分を+1価として、Ar−M部分を−1価としてみなし、Z(Z部分とAr−M部分がイオン結合しているものが好ましい。
【0203】
前記式(IV)中のMとしては、ハロゲン原子、ホウ素原子、ケイ素原子、スズ原子、金属原子を含む原子団、及び−SOで示される基であることが好ましく、ハロゲン原子、ホウ素原子、スズ原子、マグネシウム原子、亜鉛原子を含む原子団、及び−SOで示される基であることがより好ましく、ハロゲン原子、ホウ素原子を含む原子団であることが特に好ましい。
【0204】
前記式(IV)における2種のMが同一の場合、重縮合反応における具体的な組み合わせとしては、ジハロゲン化化合物のみの組み合わせ;ビス(アルキルスルホネート)化合物のみの組み合わせ;ジハロゲン化化合物及びビス(アリールアルキルスルホネート)化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、ジホウ酸化合物及びジホウ酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種との組み合わせ等が挙げられる。
【0205】
また、2種のMが異なる場合、再現性良く高分子結合層を形成できるという観点からは、前記芳香族化合物としては、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールスルホネート−ホウ酸化合物、アリールスルホネート−ホウ酸エステル化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸化合物、アリールアルキルスルホネート−ホウ酸エステル化合物が好ましく、ハロゲン−ホウ酸化合物、ハロゲン−ホウ酸エステル化合物が更に好ましい。
【0206】
前記式(III)中のE、G、r及びpは前記式(V)中のE、G、r及びpと同義であり、前記式(III)中のXはハロゲン原子又は−SO(ここに、Qは置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す)で示される基である。
【0207】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。前記−SOで示される基としては、メタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が好ましい。
【0208】
これらのうち、Xとしては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、p−トルエンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基が更に好ましく、臭素原子、ヨウ素原子が特に好ましい。
【0209】
前記式(III)で表される基は、下記式(XV):
【0210】
【化43】

【0211】
(式(XV)中のEは前記式(II)中のEと同義であり、式(XV)中のG、X、r及びpは、前記式(III)中のG、X、r及びpと同義である。)
で表される共役化合物を含む溶液に電極を浸漬したり、前記溶液を電極に塗布することにより電極表面に形成することができる。
【0212】
また、前記式(III)で表される基は、下記式(IX):
【0213】
【化44】

【0214】
(式(IX)中のR、Y、Ar15、i、j及びpは前記式(VIII)中のR、Y、Ar15、i、j及びpと同義であり、前記式(IX)中のXは前記式(III)中のXと同義である。)
で表される本発明の共役化合物を用いて電極表面に形成することもできる。
【0215】
本発明の積層構造体を製造する際、前記式(IX)で表される共役化合物のうち、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基であるものについては、そのまま、前記高分子結合層の形成に使用することができるが、Rがこれら以外の基であるものについては、Rを、PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS THIRD EDITION,THEODORA W.GREENE,PETER G.M.WUTS,WILEY−INTERSCIENCE,454−493頁に記載の方法をはじめ、Chem.Commun.,2007,1355−1357頁のESI(Electronic supplementary information)S3に記載されているt−BuSNaを使用する反応、J.Am.Chem.Soc.,2005,8036−8043頁に記載されているヨウ素を使用する反応等により水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基に変換することによって、前記高分子結合層の形成に使用することが可能となる。
【0216】
従って、前記式(IX)で表される共役高分子のうち、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基であるものについてはそのままのものが、Rが水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基以外の基であるものについてはRを水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基に変換した後のものが、前記式(XV)においてGが下記式(XIII):
【0217】
【化45】

【0218】
で表される構造であり、EがR−S(ただし、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基又は置換基を有していてもよいアリールアルキルチオ基である)であり、r=2×iである共役化合物に相当する。なお、前記式(XIII)中のY、Ar15、i、jはそれぞれ前記式(VIII)中のY、Ar15、i、jと同義であり、*は結合部位を表す。
【0219】
本発明における前記式(III)で表される基の具体例としては、以下のものが挙げられ、芳香環を構成している元素に結合した水素原子を1個以上Eに置き換えた構造であってもよい。なお、下記式中のEは前記式(V)中のEと同義である。
【0220】
【化46】

【0221】
【化47】

【0222】
【化48】

【0223】
【化49】

【0224】
【化50】

【0225】
【化51】

【0226】
【化52】

【0227】
これらの基のうち、下記式(M−1)〜(M−14)で表される基が好ましく、下記式(M−2)〜(M−4)、(M−6)、(M−9)、(M−10)、(M−11)で表される基がより好ましく、下記式(M−4)、(M−9)、(M−10)で表される基が特に好ましい。
【0228】
【化53】

【0229】
前記共役高分子の製造方法及び前記方法(B)における重縮合反応の条件としては、Chem.Rev.102,1359(2002)及び、Bull.Chem.Soc.Jpn.,72,621(1999)、並びにそれらの参照文献に記載されている、重合触媒としてパラジウム錯体やニッケル錯体を用いる種々の芳香族カップリングの反応条件を採用することができる。また、Chem.Lett.,153(1988)に記載されている、Ni(0)化合物のような当量反応剤を用いる反応条件も採用することができる。この当量反応剤についてNi(0)化合物を一例として説明すると、前記式(IV)中のMがともにハロゲン原子である場合、Ni(0)化合物との反応によりAr−Arカップリング反応が進行し、副生成物としてNi(II)化合物が生成する。このNi(II)化合物が還元されず触媒として作用しない場合、このNi(0)化合物は当量反応剤として作用する。これら芳香族カップリング反応の中でも、重縮合反応の条件としてSuzukiカップリング反応が好ましい。
【0230】
また、前記共役高分子の製造方法及び前記方法(B)において用いられる溶媒としては、用いる化合物や反応に応じて、一般に副反応を抑制するために十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましく、前記重縮合反応中は、このような有機溶媒を用いて不活性雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。また、前記有機溶媒においては、前記脱酸素処理と同様に脱水処理を行うことが好ましい。但し、Suzukiカップリング反応のような水との2相系での反応の場合にはその限りではない。更に、前記方法(B)においては、使用される電極が不溶であり、また電極が損なわれることのない有機溶媒を選択することが好ましい。
【0231】
このような溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭素水素;へプタン、シクロヘキサン等の鎖状及び環状の脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾ二トリル等の二トリル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール等のアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;水が挙げられる。反応溶媒としては、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素、二トリル類、エーテル類、ニトロ化合物類又は水が好ましい。これらの反応溶媒は、1種単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
【0232】
前記溶液中の前記式(IV)で表される芳香族化合物の濃度は、前記芳香族化合物の種類によって異なるが、前記芳香族化合物を安定に溶解させることができる濃度範囲で調製することが好ましい。具体的には、本発明に用いられる共役高分子及び高分子結合層を安定に形成するという観点から前記芳香族化合物の濃度は、前記芳香族化合物を安定に溶解させることができる濃度であって、且つ0.001〜1000g/Lであることが好ましく、0.01〜100g/Lであることがより好ましく、0.01〜30g/Lであることが特に好ましい。
【0233】
また、前記重縮合反応においては、式(IV)で表される芳香族化合物を反応させるために塩基や適当な触媒、又は当量反応剤を添加することが好ましい。このような塩基、触媒、当量反応剤は、採用する重合方法等に応じて選択することができる。このような塩基、触媒、当量反応剤としては、反応に用いる溶媒に十分に溶解するものが好ましい。また、前記塩基、触媒、当量反応剤を混合する方法としては、反応液をアルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で攪拌しながら徐々に前記塩基、触媒、当量反応剤の溶液や固体等を添加するか、前記塩基、触媒、当量反応剤の溶液や懸濁液に反応液を徐々に添加する方法が挙げられる。
【0234】
本発明における塩基の具体例としては、カウンターカチオンがリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン及びテトラアルキルアンモニウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも1種である、水酸化物塩、炭酸塩、リン酸塩、フッ化物塩が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムが好ましい。
【0235】
前記塩基の使用量は、前記式(IV)で表される芳香族化合物に対して、好ましくは0.01〜1000モル倍量であり、より好ましくは0.1〜100モル倍量であり、更に好ましくは1〜30モル倍量である。
【0236】
前記重縮合の反応温度は、通常、−100℃〜200℃であり、好ましくは−50℃〜150℃であり、より好ましくは−20℃〜100℃である。該反応の時間は、通常、0.1分間〜1,000時間であり、好ましくは1分間〜500時間であり、より好ましくは5分間〜200時間である。
【0237】
方法(B)としてより好ましい方法として、特開2009−19186号公報に記載された方法が挙げられる。すなわち、前記式(III)で表される基が結合した電極をPd(Pt−Buのトルエン溶液に接触させて電極表面にパラジウム錯体を担持させ、この電極を前記式(IV)で表される芳香族化合物、塩基、及び溶媒の混合物に接触させることで、重縮合を進行させる方法である。
【0238】
このようにして重縮合反応により形成された前記式(V)で表される構造を有する高分子結合層は、pが1である場合には直鎖状の芳香族高分子化合物により構成されたものであり、また、pが2以上である場合にはGにおいて直鎖状ポリマー鎖がp本に分岐した芳香族高分子化合物により構成されたものであり、これらのいずれにおいても、その片末端において前記電極と化学結合している。
【0239】
(共役化合物の製造方法)
本発明に用いられる共役化合物の製造方法を、前記式(IX)で表される本発明の共役化合物を例に説明する。前記式(IX)で表される共役化合物は、例えば、まず、下記式(XVI):
【0240】
【化54】

【0241】
(式(XVI)中のAr15、X、i及びpは前記式(IX)中のAr15、X、i及びpと同義である。)
で表される化合物と、下記式(XVII):
【0242】
【化55】

【0243】
(式(XVII)中のXbはR−S基に変換可能な基であり、XはXと反応してY又は単結合を形成し得る基である。)
で表されるシアヌル酸誘導体とを反応させて下記式(XVIII):
【0244】
【化56】

【0245】
(式(XVIII)中のAr15、X、Y、i及びpは前記式(IX)中のAr15、X、Y、i及びpと同義であり、式(XVIII)中のXは前記式(XVII)中のXbと同義である。)
で表される化合物を得る。
【0246】
ここで、式(XVII)及び式(XVIII)中のXbとしては、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基等が挙げられ、式(XVII)中のXとしては、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、一置換アミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基、エチニレン基等が挙げられる。
【0247】
その後、前記式(XVIII)で表される化合物のXをR−Sに変換することによって前記式(IX)で表される共役化合物を得ることができる。例えば、前記式(XVIII)で表される化合物とチオ尿酸を反応させることによって前記式(XVIII)中のXがメルカプト基(−SH)に変換され、Rが水素原子である前記式(IX)で表される共役化合物が得られる。また、このメルカプト基に置換メルカプタンR−SH(Rは前記式(IX)のRと同義(水素原子を除く)である。)を反応させることによってRが水素原子以外の基である前記式(IX)で表される共役化合物が得られる。
【0248】
このような前記式(IX)で表される共役化合物の好ましい具体例を以下に示す。
【0249】
【化57】

【0250】
これらのうち、前記式(K−3)、(K−6)〜(K−9)、(K−13)、(K−15)、(K−18)、(K−20)、(K−22)で表される共役化合物がより好ましく、前記式(K−3)、(K−7)、(K−8)、(K−18)、(K−20)で表される共役化合物が更に好ましく、前記式(K−8)、(K−18)、(K−20)で表される共役化合物が特に好ましい。
【0251】
<積層構造体>
次に、本発明の積層構造体について説明する。本発明の積層構造体は、前記電極と、該電極上に配置された前記高分子結合層と、この高分子結合層上に配置された前記導電性有機材料層とを備えるものである。このような積層構造体は、導電性有機材料層を有しているため、電界発光素子、光電変換素子等に用いることができる。
【0252】
前記導電性有機材料層の形成方法としては、例えば、導電性有機材料を含む溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0253】
本発明に用いられる芳香族高分子化合物は、結合基が電極と結合しているため、本発明の積層構造体を電界発光素子に用いた場合には高輝度で発光する素子が得られる。また、本発明の積層構造体を光電変換素子に用いた場合には変換効率が高い素子が得られる。更に、本発明の積層構造体を構成する高分子結合層は、芳香族高分子化合物の結合基が電極と化学結合しており、スピンコート法等による成膜操作を施しても電極上から簡単に除かれない程度の安定性を有する。
【0254】
<電界発光素子>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、電極(陰極又は陽極)と、該電極上に配置された前記高分子結合層と、この高分子結合層上に配置された前記導電性有機材料層とを備えるものである。このような電界発光素子は、通常、任意の構成要素として基板及び第二電極をさら備えることができ、前記積層構造体の電極側に基板を、前記導電性有機材料層側に第二電極及び必要に応じてその他の任意の構成要素を設けることができる。
【0255】
電界発光素子における導電性有機材料層とは、以下に記載の正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層、電子輸送層、正孔ブロック層及び電子注入層のうちの少なくとも1層からなるものである。この導電性有機材料層は、これらの層を構成する導電性有機材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0256】
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子の一態様としては、基板上に陽極が設けられ、その上層に高分子結合層が配置され、その上層に導電性有機材料層が配置され、更にその上層に陰極が配置されたものが挙げられる。また、他の一態様としては、陰極を基板上に設け、その上層に高分子結合層が配置され、その上層に導電性有機材料層が配置され、更にその上に陽極が配置されたものが挙げられる。更に、他の態様としては、基板側から採光するボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光するトップエミッションタイプ、又は両面採光型等の電界発光素子も挙げられる。また、他の態様としては、任意の保護膜、バッファー膜、反射層等の他の機能を有する層が更に設けられたものも挙げられる。なお、電界発光素子の構成については、下記にて別途詳述する。電界発光素子には、更に封止膜又は封止基板が覆い被せられ、電界発光素子が外気と遮断された発光装置が形成される。
【0257】
本発明に用いられる高分子結合層は、電界発光素子における陰極と発光層との間の層又は陽極と発光層との間の層等として用いることができ、電荷注入層又は電荷輸送層等として用いられる。
【0258】
通常、電界発光素子は、陰極及び陽極、導電性有機材料層を有し、更に他の構成要素を備えている。例えば、陽極と発光層との間には正孔注入層、インターレイヤー、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。正孔注入層が存在する場合は、発光層と正孔注入層との間にインターレイヤー、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。一方、陰極と有機発光層との間には電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層のうちの1層以上を有することができる。電子注入層が存在する場合は、有機発光層と電子注入層との間に電子輸送層、正孔ブロック層のうちの1層以上を有することができる。
【0259】
本発明に用いられる高分子結合層は、このような正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層等に用いることができる。高分子結合層を正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤーとして用いる場合、該電極は陽極となり、第二電極は陰極となる。高分子結合層を電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層として用いる場合、該電極は陰極となり、第二電極は陽極となる。
【0260】
ここで、陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等に正孔を供給するものであり、陰極は、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、発光層等に電子を供給するものである。
【0261】
発光層とは、電界を印加した際に、陽極側に隣接する層より正孔を受け取り、陰極側に隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能を有する層をいう。
【0262】
電子注入層及び電子輸送層とは、陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。また、正孔ブロック層とは、主に陽極から注入された正孔を障壁する機能を有し、更に必要に応じて陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能のいずれかを有する層をいう。
【0263】
正孔注入層及び正孔輸送層とは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有する層をいう。また、インターレイヤーとは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子を障壁する機能の少なくとも1以上を有し、通常、発光層に隣接して配置され、発光層と陽極、又は発光層と正孔注入層若しくは正孔輸送層とを隔離する役割をもつ。
【0264】
なお、電子輸送層と正孔輸送層を総称して電荷輸送層と呼ぶ。また、電子注入層と正孔注入層を総称して電荷注入層と呼ぶ。
【0265】
すなわち、本発明の電界発光素子は下記の層構成(a)を有することができ、又は、層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(a)において、本発明に用いられる高分子結合層は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層及び正孔ブロック層からなる群から選ばれる1以上の層として用いることができる。
【0266】
(a)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)−電子注入層−陰極
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
【0267】
「(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)」は、正孔輸送層のみからなる層、インターレイヤーのみからなる層、正孔輸送層−インターレイヤーの層構成、インターレイヤー−正孔輸送層の層構成、又はその他の、正孔輸送層及びインターレイヤーをそれぞれ1層以上含む任意の層構成を示す。
【0268】
「(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)」は、正孔ブロック層のみからなる層、電子輸送層のみからなる層、正孔ブロック層−電子輸送層の層構成、電子輸送層−正孔ブロック層の層構成、又はその他の、正孔ブロック層及び電子輸送層をそれぞれ1層以上含む任意の層構成を示す。以下の層構成の説明においても同様である。
【0269】
更に、本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、1個の積層構造中に2層の発光層を有することができる。この場合、電界発光素子は下記の層構成(b)を有することができ、又は、層構成(b)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(b)において、本発明に用いられる高分子結合層は、陽極と陽極に最も近い発光層との間に存在し、電極と結合している層として用いられるか、陰極と陰極に最も近い発光層との間に存在し、陰極と結合している層として用いられる。
【0270】
(b)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)−電子注入層−電極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)−電子注入層−陰極
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
【0271】
更に、本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、1個の積層構造中に3層以上の発光層を有することができる。この場合、電界発光素子は下記の層構成(c)を有することができ、又は、層構成(c)から、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、電極の1層以上を省略した層構成を有することもできる。層構成(c)において、本発明に用いられる高分子結合層は、陽極と陽極に最も近い発光層との間に存在し、陽極と結合している層として用いられるか、陰極と陰極に最も近い発光層との間に存在し陰極と結合している層として用いられる。
【0272】
(c)陽極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)−電子注入層−繰返し単位A−繰返し単位A・・・−陰極
ここで、「繰返し単位A」は、電極−正孔注入層−(正孔輸送層及び/又はインターレイヤー)−発光層−(正孔ブロック層及び/又は電子輸送層)−電子注入層の層構成の単位を示す。
【0273】
本発明の電界発光素子の層構成の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
下記層構成において、本発明に用いられる高分子結合層は、正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー、電子注入層、電子輸送層及び正孔ブロック層からなる群から選ばれる1以上の層として用いることができる。
(d)陽極−正孔輸送層−発光層−陰極
(e)陽極−発光層−電子輸送層−陰極
(f)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
【0274】
またこれら構造の各一について、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤーを設ける構造も挙げられる。すなわち、以下の(d’)〜(g’)の構造が挙げられる。
(d’)陽極−インターレイヤー−発光層−陰極
(e’)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー−発光層−陰極
(f’)陽極−インターレイヤー−発光層−電子輸送層−陰極
(g’)陽極−正孔輸送層−インターレイヤー−発光層−電子輸送層−陰極
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
【0275】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた電界発光素子としては、陰極に隣接して電荷注入層を設けた電界発光素子、陽極に隣接して電荷注入層を設けた電界発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下の(h)〜(s)の構造が挙げられる。
(h)陽極−電荷注入層−発光層−陰極
(i)陽極−発光層−電荷注入層−陰極
(j)陽極−電荷注入層−発光層−電荷注入層−陰極
(k)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(l)陽極−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(m)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電荷注入層−陰極
(n)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−陰極
(o)陽極−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(p)陽極−電荷注入層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(q)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(r)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
(s)陽極−電荷注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電荷注入層−陰極
ここで、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを示す。
【0276】
また(d’)〜(g’)に類似して、これら構造の各一について、発光層と陽極との間に、発光層に隣接してインターレイヤーを設ける構造も挙げられる。なお、この場合、インターレイヤーが正孔注入層及び/又は正孔輸送層を兼ねてもよい。
【0277】
本発明に用いられる高分子結合層は、電界発光素子において、電子注入層又は正孔注入層であることが好ましい。
【0278】
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、更に電極との密着性向上や電極からの電荷(即ち正孔又は電子)の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(即ち正孔輸送層又は電子輸送層)又は発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、及び各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して用いることができる。
【0279】
次に、本発明の電界発光素子を構成する各層の材料及び形成方法について、より具体的に説明する。
【0280】
<基板>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子を構成する基板は、電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えばガラス、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン、これらを積層したもの等が用いられる。前記基板としては、市販のものが入手可能であり、又は公知の方法により製造することができる。
【0281】
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子がディスプレイ装置の画素を構成する際には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)がRa<10nmを満たすことが好ましい。なお、Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基づいて、JIS−B0651からJIS−B0656及びJIS−B0671−1等を参考に計測できる。
【0282】
<陽極>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子を構成する陽極は、導電性有機材料層又は高分子結合層への正孔供給性の観点から、かかる陽極の高分子結合層又は導電性有機材料層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。
【0283】
陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物等の電気伝導性化合物、又はこれらの混合物等を用いることが出来る。具体的には、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、又は、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、更にこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。前記陽極は、これら材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を高分子結合層又は導電性有機材料層の最表面層に用いることがより好ましい。
【0284】
陽極の作製方法としては、公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0285】
陽極の膜厚は、通常10nm〜10μmであり、好ましくは50nm〜500nmである。また、短絡等の電気的接続の不良を防止する観点から、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)はRa<10nmを満たすことが望ましく、より好ましくはRa<5nmである。
【0286】
更に、該陽極は上記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン等の電子受容性化合物を含む溶液等で表面処理を施される場合がある。表面処理によって該陽極に接する有機層との電気的接続が改善される。
【0287】
本発明の電界発光素子において陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層を組み合わせた多層構造が好ましい。
【0288】
このような陽極の具体的な構成例としては、
(i) Ag−MoO
(ii)(Ag−Pd−Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iii)(Al−Nd合金)−(ITO及び/又はIZO)
(iv)(Mo−Cr合金)−(ITO及び/又はIZO)
(v) (Ag−Pd−Cu合金)−(ITO及び/又はIZO)−MoO
等が挙げられる。十分な光反射率を得る為に、Al、Ag、Al合金、Ag合金、Cr合金等の高光反射性金属層の膜厚は50nm以上であることが好ましく、より好ましくは80nm以上である。ITO、IZO、MoO等の高仕事関数材料層の膜厚は通常、5nm〜500nmの範囲である。
【0289】
<陰極>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子において、陰極は、導電性有機材料層又は高分子結合層に隣接して、これらの層へ電子を供給する機能を有するものである。該陰極は、単一の材料又は複数の材料からなる単層構造であってもよいし、複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合、第1陰極層とカバー陰極層の2層構造若しくは第1陰極層、第2陰極層及びカバー陰極層の3層構造が好ましい。ここで、第1陰極層は、陰極の中で最も導電性有機材料層又は高分子結合層側にある層をいい、カバー陰極層は2層構造の場合は第1陰極層を、3層構造の場合は第1陰極層と第2陰極層を覆う層をいう。電子供給能の観点からは、第1陰極層の材料の仕事関数が3.5eV以下であることが好ましい。また、仕事関数が3.5eV以下の金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物、複合酸化物等も第1陰極層材料として好適に用いられる。カバー陰極層の材料には、抵抗率が低く、水分への耐腐食性が高い金属、金属酸化物等が好適に用いられる。
【0290】
第1陰極層材料の具体例としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属、前記金属を1種類以上含む合金、前記金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物、及びこれらの混合物等が挙げられる。アルカリ金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、モリブデン酸カリウム、チタン酸カリウム、タングステン酸カリウム、モリブデン酸セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属又はその酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸化バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属を1種類以上含む合金の例としては、Li−Al合金、Mg−Ag合金、Al−Ba合金、Mg−Ba合金、Ba−Ag合金、Ca−Bi−Pb−Sn合金、等が挙げられる。また、第1陰極層材料として列記した材料と電子注入層を構成する材料として列記した材料との組成物も第1陰極層に使用できる。第2陰極層の材料としては、第1陰極層の材料と同様の材料が例示される。
【0291】
カバー陰極層材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン、等の低抵抗金属及びこれらを含む合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、更にこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
【0292】
陰極が多層構造である場合の例としては、Mg/Al、Ca/Al、Ba/Al、NaF/Al、KF/Al、RbF/Al、CsF/Al、NaCO/Al、KCO/Al、CsCO/Al等の第1陰極層とカバー陰極層の2層構造、LiF/Ca/Al、NaF/Ca/Al、KF/Ca/Al、RbF/Ca/Al、CsF/Ca/Al、Ba/Al/Ag、KF/Al/Ag、KF/Ca/Ag、KCO/Ca/Ag等の第1陰極層、第2陰極層及びカバー陰極層の3層構造挙げられる(ここで、符号「/」は各層が隣接していることを示す)。なお、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有することが好ましい。ここで、材料間の還元作用の有無・程度は、例えば、化合物間の結合解離エネルギー(ΔrH°)から見積もることができる。即ち、第2陰極層を構成する材料による、第1陰極層を構成する材料に対する還元反応において、結合解離エネルギーが正であるような組み合わせである場合、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有するといえる。結合解離エネルギーは、例えば「電気化学便覧第5版」(丸善、2000年発行)、「熱力学データベースMALT」(科学技術社、1992年発行)等で参照できる。
【0293】
陰極の作製方法は公知の種々の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が例示される。金属、金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物を用いる場合は真空蒸着法が多用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物や酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物を用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が多用される。異種材料との組成物を成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が用いられる。特に、低分子有機物と金属又は金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物との組成物を成膜する場合には共蒸着法が適する。
【0294】
陰極の膜厚は用いる材料、層構造によって最適値が異なり、駆動電圧、発光効率、素子寿命が適度な値となるように選択すればよい。通常、第1陰極層の膜厚は0.5nm〜20nmの範囲であり、カバー陰極層の膜厚は10nm〜1μmの範囲である。例えば、第1陰極層にBa又はCa、カバー陰極層にAlを用いる場合、Ba又はCaの膜厚は2nm〜10nm、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましく、第1陰極層にNaF又はKF、カバー陰極層にAlを用いる場合、NaF又はKFの膜厚は1nm〜8nm、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましい。
【0295】
<正孔注入層>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる共役高分子化合物以外の正孔注入層を形成する材料としては、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらを含む重合体が挙げられる。また、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物、ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー、ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれらを含む重合体、アモルファスカーボンを挙げることができる。更に、テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物、オクタデシルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等も好適に使用できる。
【0296】
前記材料は単一の成分で用いても複数の成分からなる組成物として用いてもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔輸送層あるいはインターレイヤーで用いることができる材料として列記する材料も正孔注入層で用いることができる。
【0297】
正孔注入層の作製方法としては、公知の種々の方法が利用できる。無機化合物材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写等の転写法、溶液からの成膜による方法(高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。また、高分子有機材料では、溶液からの成膜による方法が例示される。
【0298】
正孔注入材料が、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を形成することができる。
【0299】
また、高分子化合物バインダーと前記低分子正孔注入材料を分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜することもできる。混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。具体的には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)及びその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が例示される。
【0300】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、正孔注入材料を溶解させるものであればよい。該溶媒として、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の含塩素溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒等が例示される。
【0301】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法等のコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法やノズルコート法が好ましい。
【0302】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層、インターレイヤー、発光層等の有機化合物層を形成する場合、特に、両方の層を塗布法によって形成する場合には、先に塗布した層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作製できなくなることがある。
この場合には、下層を溶媒不溶にする方法を用いることができる。溶媒不溶にする方法としては、高分子化合物に架橋基を付け、架橋させて不溶化する方法、芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、下層を紫外光に感光させて架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、下層を加熱して架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法等が挙げられる。下層を加熱する場合の加熱の温度は通常100℃〜300℃であり、時間は通常1分〜1時間である。
【0303】
また、架橋以外で下層を溶解させずに積層するその他の方法として、隣り合った層の製造に異なる極性の溶液を用いる方法があり、例えば、下層に水溶性の高分子化合物を用い、上層に油溶性の高分子化合物を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法等がある。
【0304】
<正孔輸送層及びインターレイヤー>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる芳香族高分子化合物以外の正孔輸送層及びインターレイヤーを構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの構造を含む重合体が挙げられる。また、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子及びオリゴマー、ポリピロール等の有機導電性材料も挙げることができる。
【0305】
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔輸送層及びインターレイヤーは、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、正孔注入層で用いることができる材料として列記する材料も正孔輸送層で用いることができる。
【0306】
具体的には、特開昭63−70257、特開昭63−175860、特開平2−135359、特開平2−135361、特開平2−209988、特開平3−37992、特開平3−152184、特開平5−263073、特開平6−1972、WO2005/52027、特開2006−295203、等に開示される化合物が正孔輸送層及びインターレイヤーの材料として使用できる。中でも、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む重合体が、好適に用いられる。
【0307】
2価の芳香族アミン残基としては、式(XIX)で表される基が挙げられる。
【0308】
【化58】

【0309】
式中、Ar、Ar、Ar10及びAr11は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリーレン基又は置換基を有していてもよい2価の複素環基を表し、Ar12、Ar13及びAr14は置換基を有していてもよいアリール基又は置換基を有していてもよい1価の複素環基を表し、n12及びmは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0310】
前記アリーレン基、アリール基、2価の複素環基、1価の複素環基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルオキシ基、アリールアルキルチオ基、アルケニル基、アルキニル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、酸イミド基、イミン残基、置換アミノ基、置換シリル基、置換シリルオキシ基、置換シリルチオ基、置換シリルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、1価の複素環基、ヘテロアリールオキシ基、ヘテロアリールチオ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリールアルキルオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基及びカルボキシル基等が挙げられる。該置換基は、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、小員環(シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、又はシロキサン誘導体の構造を含有する基等の架橋基であってもよい。n12が0の場合、ArとAr10が直接又は−O−、−S−等の2価の基を介して結合していてもよいアリーレン基としては、フェニレン基等が挙げられ、2価の複素環基としては、ピリジンジイル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、1価の複素環基としては、ピリジル基等が挙げられる。
【0311】
繰り返し単位として2価の芳香族アミンを含む重合体は、更に他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、フェニレン基、フルオレンジイル基等のアリーレン基等が挙げられる。なお、この重合体の中では、架橋基を含んでいるものがより好ましい。
【0312】
正孔輸送層及びインターレイヤーの成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、前記したスピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0313】
正孔輸送層及びインターレイヤーに続いて、発光層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入材料を溶解させるものであればよい。正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0314】
<発光層>
本発明の電界発光素子において、導電性有機材料層が発光層を有する場合、発光層としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン等の発光材料化合物を好適に用いることができる。
【0315】
また、これら発光層は、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素等の高分子系色素化合物や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子色素化合物を含有してもよい。また、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン及びその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム等の燐光を発光する金属錯体を含有してもよい。
【0316】
また、本発明の電界発光素子が有する発光層は、非共役高分子化合物と前記有機色素や前記金属錯体等の発光性有機化合物との組成物から構成されてもよい。非共役高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂が挙げられる。前記の非共役高分子化合物は側鎖にカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン化合物、及び有機シラン誘導体からなる群から選ばれる1種以上の誘導体若しくは化合物で表される構造を有していてもよい。
【0317】
発光層が低分子化合物を含む場合、該低分子化合物としては、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、カルバゾール、キナクリドン等の低分子色素化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系、インジゴ系等の色素類、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、フタロシアニン及びその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、又はテトラフェニルブタジエン及びその誘導体等が挙げられる。
【0318】
発光層が燐光を発光する金属錯体を含む場合、該金属錯体としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、チエニルピリジン配位子含有イリジウム錯体、フェニルキノリン配位子含有イリジウム錯体、トリアザシクロノナン骨格含有テルビウム錯体等が挙げられる。
【0319】
発光層に用いられる発光材料化合物の具体例としては、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9−111233、特開平10−324870、特開平2000−80167、特開2001−123156、特開2004−168999、特開2007−162009、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体が例示される。
【0320】
また、低分子化合物の具体例としては、例えば、特開昭57−51781、「有機薄膜仕事関数データ集[第2版]」(シーエムシー出版、2006年発行)、「有機EL素子の開発と構成材料」(シーエムシー出版、2006年発行)等に記載されている化合物が例示される。
【0321】
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記発光層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0322】
発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0323】
発光層に続いて、電子輸送層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0324】
<電子輸送層及び正孔ブロック層>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子において、電子輸送層及び正孔ブロック層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体、8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体等が挙げられる。これらのうち、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン及びその誘導体の金属錯体、ポリキノリン及びその誘導体、ポリキノキサリン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体が好ましい。
【0325】
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子輸送層及び正孔ブロック層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層で用いることができる材料として列記する材料も電子輸送層及び正孔ブロック層で用いることができる。
【0326】
電子輸送層及び正孔ブロック層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0327】
電子輸送層及び正孔ブロック層に続いて、電子注入層等の有機化合物層を塗布法にて形成する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0328】
<電子注入層>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子において、電子注入層としては、公知のものが使用でき、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン及びその誘導体、ナフトキノン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン及びその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン及びその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、有機シラン誘導体等が挙げられる。
【0329】
前記材料は単成分であってもあるいは複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子注入層は、前記材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子輸送層及び正孔ブロック層で用いることができる材料として列記する材料も電子注入層で用いることができる。
【0330】
電子注入層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェットプリント法等の前記塗布法及び印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0331】
<絶縁層>
本発明の電界発光素子が任意に有しうる膜厚5nm以下の絶縁層は、電極との密着性向上、電極からの電荷(即ち正孔又は電子)注入改善、隣接層との混合防止等の機能を有するものである。上記絶縁層の材料としては、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレート等)等が挙げられる。膜厚5nm以下の絶縁層を設けた電界発光素子としては、陰極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたもの、陽極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたものが挙げられる。
【0332】
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子の製造方法は、例えば、基板上に各層を順次積層することにより製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層、インターレイヤー等の層を必要に応じて設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を必要に応じて設け、更にその上に、陰極を積層することにより製造するか、又は、基板上に陰極を設け、その上に電子注入層、電子輸送層、インターレイヤー等の層を必要に応じて設け、その上に正孔輸送層、正孔注入層等の層を必要に応じて設け、更にその上に陽極を積層することにより製造することができる。
【0333】
本発明の電界発光素子を用いてディスプレイ装置を製造することができる。該ディスプレイ装置は、電界発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列の態様は、テレビ等のディスプレイ装置で通常採られる配列、例えば、多数の画素が共通の基板上に配列された態様とすることができる。本発明の装置において、基板上に配列される画素は、必要に応じて、バンクで規定される画素領域内に形成することができる。
【0334】
前記装置は、更に必要に応じて、発光層等を挟んで基板と反対側に、封止部材を有することができる。また、更に必要に応じて、カラーフィルター又は蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な回路及び配線等の、ディスプレイ装置を構成するための任意の構成要素を有することができる。
【0335】
本発明の積層構造体において、電極、結合基E、芳香環を有するr+p価の基G、及びArの好適な組み合わせとしては、以下のものが挙げられる。本発明の積層構造体の電極を陽極として機能させる場合、電極としては金、銀、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛が好ましく、EとしてはEがメルカプト基、カルボキシル基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基である場合に形成される結合基が好ましく、Gとしては前記式(L−4)、(L−9)、(L−10)で表される共役高分子を構成する基が好ましく、ArとしてはHOMOの軌道エネルギーが−5.5eV以上−4.0eV以下のものが好ましい。本発明の積層構造体の電極を陰極として機能させる場合、電極としてはアルミニウム、銀が好ましく、E及びGとしては積層構造体の電極を陽極として機能させる場合の上記の例と同様のものが好ましく、ArとしてはLUMOの軌道エネルギーが−3.5eV以上−0.5eV以下のものが好ましい。
【0336】
次に、本発明の積層構造体を用いて製造することができる光電変換素子について説明する。本発明の積層構造体を用いた光電変換素子は、電極と、導電性有機材料層との間に高分子結合層を有するものである。
【0337】
本発明の光電変換素子の導電性有機材料層には、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。電子供与性化合物としては、共役高分子化合物が挙げられ、具体的には、チオフェンジイル基を含む高分子化合物、フルオレンジイル基を含む高分子化合物等が挙げられる。また、電子受容性化合物としては、フラーレン及びフラーレン誘導体等が挙げられる。
【0338】
本発明の積層構造体を用いた光電変換素子は、通常は支持基板上に形成される。支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければよく、第二電極、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板、プラスチック基板も用いることができる。陽極と導電性有機材料層との間に高分子結合層を有する場合、該電極は陽極であり、第二電極が陰極であり、高分子結合層は正孔輸送層等として用いられる。陰極と導電性有機材料層との間に高分子結合層を有する場合、該電極は陰極であり、第二電極が陽極であり、高分子結合層は電子輸送層等として用いられる。
【0339】
本発明の光電変換素子は、公知の方法、例えば、Synth.Met.,102,982(1999)に記載の方法やScience,270,1789(1995)に記載の方法により製造することができる。
【実施例】
【0340】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0341】
重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)(東ソー株式会社製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて、ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量として求めた。また、測定する試料は、約0.5質量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、GPCに50μL注入する。更に、GPCの移動相としてはテトラヒドロフランを用い、0.5mL/分の流速で流した。重合体及び化合物の構造分析はVarian社製300MHzNMRスペクトロメータ−を用いた、H−NMR解析によって行った。測定は、20mg/mLの濃度になるように試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。積層構造体及び高分子膜の電流−電圧測定時の電極の面積は4mmとした。
【0342】
<実施例1>−化合物Hの合成−
反応容器にマグネシウム10.4gとTHF120mLを加え、これにp−ジブロモベンゼン93.0gとTHF160mLの混合溶液を滴下した(混合液1とする)。別の反応容器に塩化シアヌル72.0gとトルエン720mLを加えて0℃に冷却し、これに混合液1を滴下して1時間撹拌し、次いで塩化アンモニウム水溶液を加えてクロロホルムで分液して有機層を濃縮した。得られた粗生成物を再結晶により精製し、化合物Jを77.2g得た。この化合物JのNMR分析の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,rt)
δ 7.68(2H),8.38(2H)
この結果から、前記化合物Jは、下記式:
【0343】
【化59】

【0344】
で表されるものであることが確認された。
【0345】
次に、反応容器に前記化合物Jを15.0g、アセトンを188mL、チオ尿素を7.5g加えて1時間加熱還流し、0℃に冷却して炭酸ナトリウムを滴下して撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液に塩酸を加えて酸性とし、析出物をろ取して粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物Hを6.8g得た。この化合物HのNMR分析の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,DMSO−d,rt)
δ 3.17(1H),7.78(2H),8.05(2H),13.87(1H)
この結果から、前記化合物Hは、下記式:
【0346】
【化60】

【0347】
で表されるものであることが確認された。
【0348】
<実施例2>−化合物Cの合成−
反応容器にイソプロパノール138mLと金属ナトリウム2.3gを加えて加熱還流し、次いでt−ブチルメルカプタン9.8gを加えて室温まで冷却した。これに前記化合物Hを15.0g添加して2時間還流し、次いで水と水酸化ナトリウム水溶液を加え、t−ブチルメチルエーテルで分液して有機層を濃縮した。粗生成物を石油エーテルで洗浄し、化合物Cを8.1g得た。この化合物CのNMR分析の結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl,rt)
δ 1.67(18H),7.62(2H),8.28(2H)
この結果から、前記化合物Cは、下記式:
【0349】
【化61】

【0350】
で表されるものであることが確認された。
【0351】
<実施例3>−組成物Aの合成−
25mL二口フラスコに下記式:
【0352】
【化62】

【0353】
で表される化合物Bを250mg(0.43mmol)と下記式:
【0354】
【化63】

【0355】
で表される化合物Cを14.0mg(0.034mmol)仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、トルエン9mLを仕込み、45℃で5分間攪拌した。次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.58mg(0.0006mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.80mg(0.0051mmol)を加え45℃で10分間攪拌し、33質量%炭酸セシウム水溶液2.0mLを加えた後、45℃で5分間攪拌した。次いで、110℃で2時間攪拌し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.58mg(0.0006mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.80mg(0.0051mmol)を加えて、更に2時間攪拌し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.58mg(0.0006mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.80mg(0.0051mmol)を加えて、更に2時間攪拌した。
【0356】
次いで、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン92.8mg(0.43mmol)及びトルエン2mLを加え、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.58mg(0.0006mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.80mg(0.0051mmol)、33質量%炭酸セシウム水溶液1.1mLを加え、110℃にて2時間攪拌した後、更に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム6.0mg(0.0065mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン18.0mg(0.051mmol)を加え8時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール120mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、黄色固体を得た。この黄色固体をトルエン20mLに溶解させ、シリカゲルと活性アルミナのカラムクロマトグラフィーを行い、濃縮乾固した。得られた固体をトルエンに溶解させ、メタノールへ溶液を滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、組成物Aを150mg得た。
【0357】
NMR分析の結果から、前記組成物Aは、下記式:
【0358】
【化64】

【0359】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される重合体1と、下記式:
【0360】
【化65】

【0361】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される重合体2とを、38:62のモル比で含有する組成物であった。また、組成物Aのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは7.9×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.7×10であった。重合中に−S−(t−Bu)部分が−SHに変換されたため、脱保護工程は省略した。
【0362】
<実施例4>−組成物Dの合成−
25mL二口フラスコに下記式:
【0363】
【化66】

【0364】
で表される化合物Eを250mg(0.47mmol)と下記式:
【0365】
【化67】

【0366】
で表される化合物Cを15.4mg(0.037mmol)仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、トルエン9mLを仕込み、45℃で5分間攪拌した。次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.64mg(0.0007mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.98mg(0.0056mmol)を加え45℃で10分間攪拌し、33質量%炭酸セシウム水溶液2.2mLを加えた後、45℃で5分間攪拌した。次いで、110℃で2時間攪拌し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.64mg(0.0007mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.98mg(0.0056mmol)を加えて、更に2時間攪拌し、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.64mg(0.0007mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.98mg(0.0056mmol)を加えて、更に2時間攪拌した。
【0367】
次いで、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン102.1mg(0.47mmol)及びトルエン2mLを加え、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.64mg(0.0007mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン1.98mg(0.0056mmol)、33質量%炭酸セシウム水溶液1.1mLを加え、110℃にて2時間攪拌した後、更に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム6.0mg(0.0065mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン18.0mg(0.051mmol)を加え7時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール120mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、黄色固体を得た。この黄色固体をトルエン11mLに溶解させ、シリカゲルと活性アルミナのカラムクロマトグラフィーを行い、濃縮乾固した。得られた固体をトルエンに溶解させ、メタノールへ溶液を滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、組成物Dを103mg得た。
【0368】
NMR分析の結果から、前記組成物Dは、下記式:
【0369】
【化68】

【0370】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される重合体3と、下記式:
【0371】
【化69】



【0372】
(式中、mは重合度を表す。)
で表される重合体4とを、27:73のモル比で含有する組成物であった。また、組成物Dのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは5.2×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは9.8×10であった。重合中に−S−(t−Bu)部分が−SHに変換されたため、脱保護工程は省略した。
【0373】
<合成例1>−重合体Fの合成−
25mL二口フラスコに下記式:
【0374】
【化70】

【0375】
で表される化合物Bを500mg(0.85mmol)と4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン3.9mg(0.018mmol)、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、トルエン18mLを仕込み、45℃で5分間攪拌した。次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム1.17mg(0.0013mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.6mg(0.0102mmol)を加え45℃で10分間攪拌し、33質量%炭酸セシウム水溶液3.9mLを加えた後、45℃で5分間攪拌した。次いで、110℃で3時間攪拌し、次いで、4−t−ブチルブロモベンゼン108.8mg(0.51mmol)及びトルエン4mLを加え、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム1.17mg(0.0013mmol)及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン3.6mg(0.0102mmol)、33質量%炭酸セシウム水溶液2.2mLを加え、110℃にて1.5時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノール240mLに滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、黄色固体を得た。この黄色固体をトルエン33mLに溶解させ、シリカゲルと活性アルミナのカラムクロマトグラフィーを行い、濃縮乾固した。得られた固体をトルエンに溶解させ、メタノールへ溶液を滴下して沈殿を析出させ、該沈殿を濾過、乾燥し、重合体Fを267mg得た。
【0376】
重合体Fのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは6.6×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.6×10であった。
【0377】
<合成例2>−重合体Gの合成−
反応容器に下記式:
【0378】
【化71】

【0379】
で表される化合物Bを1.10g(1.9mmol)仕込み、フラスコ内をアルゴンガスで置換した。そこに、4−t−ブチルブロモベンゼン8.4mg(0.04mmol)及びトルエン39.5mLを仕込み、Arバブリングした後、45℃で5分間攪拌した。
次いで、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム2.6mg(0.003mmol)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン7.9mg(0.02mmol)及びトルエン4.0mLを加え、45℃で10分間攪拌した後、33質量%炭酸セシウム水溶液8.5mLを加え、114℃で30分間攪拌した。更に、4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)トルエン0.24g(1.1mmol)及びトルエン8.5mLを加え、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム1.5mg(0.002mmol)、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン4.6mg(0.01mmol)、トルエン2.0mL及び33質量%炭酸セシウム水溶液5.0mLを加え、114℃にて2時間攪拌した。その後、室温まで冷却した後、反応溶液の有機層と水層とを分離し、該有機層をメタノールに滴下して得られた沈殿を濾過で回収して黄色固体を得た。この黄色固体をトルエンに溶解させ、シリカゲルと活性アルミナのカラムクロマトグラフィーを行い、溶出液を濃縮した。得られた濃縮液をメタノールに滴下し、析出した沈殿を濾過で回収して乾燥し、重合体Gを0.64g得た。
【0380】
重合体Gのポリスチレン換算の数平均分子量Mnは3.7×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは7.7×10であった。
【0381】
<合成例3>−ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムの合成−
ビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムを、J.Am.Chem.Soc.98,5850−5857(1976)に記載の方法で合成した。
【0382】
<実施例5>−積層構造体1を用いた電界発光素子の作製(方法(A))−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板を重合体1を含む前記組成物AのTHF溶液(2.3g/L)に浸し、1日間静置した後に引き上げ、THFを吹きかけて洗浄し、Arガスを吹きかけて乾燥することによって、ポリスチレン換算の数平均分子量が7.9×10の芳香族高分子化合物により構成された高分子結合層を作製した。このとき、前記高分子結合層の膜厚は62nmであり、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される高分子結合層を構成する重合体1のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−1.70eV及び−4.97eVであった。更に、この膜上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料を膜厚が約125nmになるようにスピンコートした後、金を67nm蒸着させ、得られた積層構造体1の電流−電圧測定を行った。その結果、+4Vの電圧をかけた時に9.02×10−6Aの電流が流れた。得られた結果を表2に示す。
【0383】
<実施例6>−積層構造体2を用いた電界発光素子の作製(方法(A))−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板を重合体3を含む前記組成物DのTHF溶液(2.3g/L)に浸し、1日間静置した後に引き上げ、THFを吹きかけて洗浄し、Arガスを吹きかけて乾燥することによって、ポリスチレン換算の数平均分子量が5.2×10の芳香族高分子化合物により構成された高分子結合層を作製した。このとき、前記高分子結合層の膜厚は61nmであり、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される高分子結合層を構成する重合体3のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−0.89eV及び−4.37eVであった。更に、この膜上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料をこの膜上に重合体Fを膜厚が約125nmになるようにスピンコートした後、金を78nm蒸着させ、得られた積層構造体2の電流―電圧測定を行った。その結果、+4Vの電圧をかけた時に1.22×10−4Aの電流が流れた。得られた結果を表2に示す。
【0384】
<実施例7>−積層構造体3を用いた電界発光素子の作製(方法(A))−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板を重合体1を含む前記組成物Aを膜厚が約10nmになるようにスピンコートすることによって、ポリスチレン換算の数平均分子量が7.9×10の芳香族高分子化合物により構成された高分子結合層を作製した。前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される高分子結合層を構成する重合体1のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−1.70eV及び−4.97eVであった。更に、この膜上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料を膜厚が約125nmになるようにスピンコートした後、金を66nm蒸着させ、得られた積層構造体3の電流−電圧測定を行った。その結果、+4Vの電圧をかけた時に9.16×10−7Aの電流が流れた。得られた結果を表1に示す。
【0385】
<比較例1>−(積層構造体ではない)比較用高分子膜1からなる電界発光素子の作製−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板上に前記手法のB3LYP/6−31G法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料を膜厚が約125nmになるようにスピンコートした後、金を67nm蒸着させ、得られた比較用高分子膜1の電流−電圧測定を行った。
その結果、+4Vの電圧をかけた時に7.90×10−8Aの電流が流れた。得られた結果を表2に示す。
【0386】
【表2】

【0387】
<評価>
表2に示した結果から明らかなように、本発明の積層構造体は、積層構造体ではない比較用高分子膜に比べ、電流を多く流していることが分かる。
【0388】
<実施例8>−積層構造体4を用いた電界発光素子の作製(方法(A))−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板上にアルミニウムを92nm蒸着させ、この基板を前記組成物AのTHF溶液(2.3g/L)に浸し、4日間静置した後に引き上げ、THFを吹きかけて洗浄し、Arガスを吹きかけて乾燥することによって、ポリスチレン換算の数平均分子量が7.9×10の芳香族高分子化合物により構成された高分子結合層を作製した。このとき、前記高分子結合層の膜厚は57nmであり、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される高分子結合層を構成する重合体1のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−1.70eV及び−4.97eVである。更に、この膜上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料を膜厚が約85nmになるようにスピンコートした後、アルミニウムを84nm蒸着させ、得られた積層構造体4の電流−電圧測定を行った。その結果、+8Vの電圧をかけた時に3.31×10−6Aの電流が流れた。得られた結果を表3に示す。
【0389】
<比較例2>−(積層構造体ではない)比較用高分子膜2からなる電界発光素子の作製−
ITO基板をクロロホルム、メタノール、アルカリ性洗剤の水溶液、蒸留水及びアセトンで洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。このITO基板上にアルミニウムを86nm蒸着させ、この基板上に前記手法のB3LYP/6−31G法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Fからなる導電性有機材料を膜厚が約85nmになるようにスピンコートした後、アルミニウムを94nm蒸着させ、得られた比較用高分子膜2の電流−電圧測定を行った。その結果、+8Vの電圧をかけた時に1.20×10−6Aの電流が流れた。得られた結果を表3に示す。
【0390】
【表3】

【0391】
<評価>
表3に示した結果から明らかなように、本発明の積層構造体は、積層構造体ではない比較用高分子膜に比べ、電流を多く流していることが分かる。
【0392】
<実施例9>−積層構造体5を用いた電界発光素子の作製(方法(B))−
ITO基板2枚をそれぞれ水酸化ナトリウム水溶液、塩酸、水で洗浄した後にオゾンガスに1分間曝露させることで、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。これらのITO基板をそれぞれ下記式:
【0393】
【化72】

【0394】
で表される化合物Hのエタノール溶液(4mM)に浸した後に引き上げ、エタノールで洗浄して乾燥させた。次いで、これらの基板をビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムのトルエン溶液(15mM)に浸し、70℃で2時間加熱した後に引き上げ、トルエンで洗浄して乾燥させた。次いで、これらの基板を、下記式:
【0395】
【化73】

【0396】
で表される化合物IのTHF溶液(25mM)と炭酸ナトリウム水溶液(2M)とを2:1(体積比)で混合した溶液に浸し、この混合溶液を室温で2時間撹拌した。その後、基板を引き上げ、トルエン、メタノール、蒸留水で洗浄して乾燥させ、ITO基板上に高分子結合層を作製した。この高分子結合層の膜厚は236nmであった。
【0397】
高分子結合層を作製した2枚の基板のうち1枚について、クロロホルムをかけ流してITO基板上の高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物を回収した。この回収操作は、基板にUVランプを照射して前記芳香族高分子化合物に由来する発光が確認できなくなるまで繰り返した。回収した洗液を濃縮し、得られた芳香族高分子化合物の分子量を蛍光検出器(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:Agilent1100 Series)を取り付けたゲルパーミエーションクロマトグラフィ−(GPC)(株式会社島津製作所製:LC−10シリーズ)を用いて分析したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは5.5×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは9.9×10であった。また、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される前記芳香族高分子化合物のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−1.70eV及び−4.97eVであった。
【0398】
次に、もう1枚の基板の高分子結合層上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Gからなる導電性有機材料を膜厚が約500nmになるようにスピンコートした後、金を100nm蒸着させ、得られた積層構造体5の電流−電圧測定を行った。その結果、+3Vの電圧をかけた時に1.1×10−8A、+6Vでは1.0×10−7Aの電流が流れた。得られた結果を表4に示す。
【0399】
<比較例3>−(積層構造体ではない)比較用高分子膜3からなる電界発光素子の作製−
ITO基板をオゾンガスに1分間暴露させ、ITO基板の表面の付着物を取り除いた。
このITO基板上に前記手法のB3LYP/6−31G法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Gからなる導電性有機材料を膜厚が約500nmになるようにスピンコートした後、金を約100nm蒸着させ、得られた比較用高分子膜3の電流−電圧測定を行った。その結果、+3Vの電圧をかけた時に1.3×10−10A、+6Vでは2.0×10−10Aの電流が流れた。得られた結果を表4に示す。
【0400】
【表4】

【0401】
<評価>
表4に示した結果から明らかなように、本発明の積層構造体は、積層構造体ではない比較用高分子膜に比べ、電流を多く流していることが分かる。
【0402】
<実施例10>−積層構造体6を用いた電界発光素子の作製(方法(B))−
銀基板2枚をそれぞれ下記式:
【0403】
【化74】

【0404】
で表される化合物Hのエタノール溶液(4mM)に浸した後に引き上げ、エタノールで洗浄して乾燥させた。次いで、これらの基板をビス(トリt−ブチルホスフィン)パラジウムのトルエン溶液(15mM)に浸し、70℃で2時間加熱した後に引き上げ、トルエンで洗浄して乾燥させた。次いで、これらの基板を、下記式:
【0405】
【化75】

【0406】
で表される化合物IのTHF溶液(25mM)と炭酸ナトリウム水溶液(2M)とを2:1(体積比)で混合した溶液に浸し、この混合溶液を室温で2時間撹拌した。その後、基板を引き上げ、トルエン、メタノール、蒸留水で洗浄して乾燥させ、銀基板上に高分子結合層を作製した。この高分子結合層の膜厚は152nmであった。
【0407】
高分子結合層を作製した2枚の基板のうち1枚について、クロロホルムをかけ流して銀基板上の高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物を回収した。この回収操作は、基板にUVランプを照射して前記芳香族高分子化合物に由来する発光が確認できなくなるまで繰り返した。回収した洗液を濃縮し、得られた芳香族高分子化合物の分子量を蛍光検出器(アジレント・テクノロジー株式会社製、商品名:Agilent1100 Series)を取り付けたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)(株式会社島津製作所製:LC−10シリーズ)を用いて分析したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量Mnは8.5×10であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.57×10であった。また、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出される前記芳香族高分子化合物のLUMO及びHOMOの軌道エネルギーは−1.70eV及び−4.97eVであった。
【0408】
次に、もう1枚の基板の高分子結合層上に上記手法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Gからなる導電性有機材料を膜厚が約500nmになるようにスピンコートした後、アルミニウムを約200nm蒸着し、得られた積層構造体6の電流−電圧測定を行った。その結果、−4Vの電圧をかけた時に4.8×10−10Aの電流が流れた。得られた結果を表5に示す。
【0409】
<比較例4>−(積層構造体ではない)比較用高分子膜4からなる電界発光素子の作製−
銀基板上に、前記手法のB3LYP/6−31G法で算出されるLUMO及びHOMOの軌道エネルギーがそれぞれ−1.70eV及び−4.97eVである重合体Gからなる導電性有機材料を膜厚が約500nmになるようにスピンコートした後、アルミニウムを約200nm蒸着させ、得られた比較用高分子膜4の電流−電圧測定を行った。その結果、−4Vの電圧をかけた時に1.1×10−11Aの電流が流れた。得られた結果を表5に示す。
【0410】
【表5】

【0411】
<評価>
表5に示した結果から明らかなように、本発明の積層構造体は、積層構造体ではない比較用高分子膜に比べ、電流を多く流していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0412】
以上説明したように、本発明の化合物によれば、電極から効率よく電気が流れる高分子結合層を形成することができ、また、本発明の積層構造体によれば、電極に結合している芳香族高分子化合物の結合部を通して電極から高分子結合層に効率よく電気を流すことができ、更に、芳香族高分子化合物の末端部を通して高分子結合層から導電性有機材料層へ効率よく電気を流すことが可能となる。
【0413】
したがって、本発明の積層構造体は、駆動電圧が低く、消費電力が少ない電界発光素子として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、該電極上に配置された高分子結合層と、該高分子結合層上に配置された導電性有機材料層とを備え、
前記高分子結合層が、下記式(I):
【化1】

(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)
で表される構造を有し且つポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上1×10以下である芳香族高分子化合物により構成され、
前記高分子結合層は、前記芳香族高分子化合物と前記電極表面との化学結合を介して前記電極に接合され、
前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下である、
積層構造体。
【請求項2】
前記高分子結合層の膜厚が0.1nm〜100μmであり、前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層の膜厚が0.1nm〜1cmである、請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
前記芳香族高分子化合物の最低非占有分子軌道(LUMO)の軌道エネルギーが−4.0eV以上−0.5eV以下、及び/又は前記芳香族高分子化合物の最高占有分子軌道(HOMO)の軌道エネルギーが−6.0eV以上−4.0eV以下である請求項1又は2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記芳香族高分子化合物のLUMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のLUMOの軌道エネルギーとの差が−2.5eV以上+2.5eV以下、及び/又は前記芳香族高分子化合物のHOMOの軌道エネルギーと前記導電性有機材料層中の前記高分子結合層に隣接する層を構成する導電性有機材料のHOMOの軌道エネルギーとの差が−1.5eV以上+1.5eV以下である請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記芳香族高分子化合物の末端基が前記電極表面に存在する反応性基と化学結合している請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記電極が、卑金属、貴金属及びこれらの酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の電気伝導性化合物を含むものである請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項7】
前記高分子結合層が、下記式(II):
【化2】

(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xは末端基であり、rは1以上10以下の整数であり、n及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、rが2以上である場合、存在する複数のEは同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、存在する複数のArは同一であっても異なっていてもよく、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基である。)
で表される共役高分子を0.0001質量%以上の濃度で含有する溶液に電極を浸漬すること、及び/又は前記溶液を電極に塗布することにより形成されるものである請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項8】
前記高分子結合層が、溶液中、表面に下記式(III):
【化3】

(式中、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xはハロゲン原子又は−SO(ここにQはアルキル基又はアリール基を表し、前記アルキル基及び前記アリールは置換基を有していてもよい。)で示される基であり、rは1以上10以下の整数であり、pは1以上の整数であり、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との化学結合により形成される結合基である。)
で表される基が結合した電極の存在下で、下記式(IV):
【化4】

(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Mは、ハロゲン原子、水素原子、−B(OQ(ここにQはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基又はアリール基であるか、互いに結合して形成された環を表し、前記アルキル及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。)、−Si(Q(ここにQはアルキル基又はアルコキシ基であり、前記アルキル基及び前記アルコキシ基は置換基を有していてもよい。)、−Sn(Q(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基である)、−SO(ここにQはアルキル基又はアリール基であり、前記アルキル基及び前記アリール基は置換基を有していてもよい。)で示される基、又は−Z(Z(ここにZは金属原子又は金属イオンであり、Zはカウンターアニオンである)であり、2個存在するMは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される芳香族化合物を、重合触媒又は当量反応剤を用いて重縮合させることにより形成されるものである請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項9】
前記高分子結合層が、下記式(V):
【化5】

(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Gは芳香環を有するr+p価の基であり、Xは末端基であり、rは1以上10以下の整数であり、n及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、rが2以上である場合、存在する複数のEは同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、存在する複数のArは同一であっても異なっていてもよく、pが2以上である場合、存在する複数のXは同一であっても異なっていてもよく、Eは、メルカプト基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、トリアルコキシシリル基、トリヒドロキシシリル基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基、クロロスルホン酸基、シアナト基、イソシアナト基、アミノ基、置換アミノ基及び置換ジスルフィド基からなる群から選ばれる1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との化学結合により形成される結合基である。)
で表される構造を有するものである請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項10】
前記式(V)中の結合基Eが、前記1価の基と前記電極表面に存在する反応性基との共有結合、配位結合、水素結合及びイオン結合からなる群から選ばれる少なくとも1種により形成された結合基である請求項9に記載の積層構造体。
【請求項11】
前記1価の基が、メルカプト基、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、クロロカルボニル基、クロロホスホン酸基及びクロロスルホン酸基からなる群から選ばれる1価の基である請求項9又は10に記載の積層構造体。
【請求項12】
前記式(V)中のGが、置換基を有していてもよい単環、置換基を有していてもよい縮合環、置換基を有していてもよい環集合及び置換基を有していてもよい有橋多環からなる群から選ばれる少なくとも一種のr+p価の基である請求項9〜11のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項13】
前記r+p価の基が、下記式(1)〜(16):
【化6】

で表される複素環及び芳香環のうちの少なくとも1種を含むものである請求項12に記載の積層構造体。
【請求項14】
前記r+p価の基が、前記式(5)で表される複素環を1個含むものである請求項13に記載の積層構造体。
【請求項15】
前記式(V)中のrが1以上3以下の整数(但し、前記式(V)中のGが単環性芳香環構造であって該環構造を構成する炭素原子が2個の場合にはrは1であり、前記炭素原子が3個の場合にはrは1又は2である。)である請求項9〜14のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項16】
前記式(V)中のArが、下記式(VI):
【化7】

(式中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アリール基、前記アリールアルキル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、Rは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、イミド残基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基又はシアノ基であり、前記アルキル基、前記アルコキシ基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールオキシ基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルコキシ基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基、前記アシルオキシ基、前記カルバモイル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、複数存在するR、Rは同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよいアルキル基であるR及びRがそれぞれ複数存在する場合には互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有し、及び/又は下記式(VII):
【化8】

(式中、Rは前記式(VI)中のRと同義である。)
で表される繰り返し単位を、前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の数の合計質量に対して0.1質量%以上含有するものである請求項9〜15のうちのいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項17】
前記高分子結合層を構成する芳香族高分子化合物中の全繰り返し単位の合計に対して、前記式(VI)で表される繰り返し単位のモル百分率と前記式(VII)で表される繰り返し単位のモル百分率との合計が、10モル%以上100モル%以下である請求項16に記載の積層構造体。
【請求項18】
電極上に、下記式(I):
【化9】

(式中、Arは、置換基を有していてもよい共役系の2価の基であり、複数存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよく、nは1以上の整数である。)
で表される構造を有し且つポリスチレン換算の数平均分子量が1×10以上1×10以下である芳香族高分子化合物により構成され、該芳香族高分子化合物が前記電極表面に 化学結合している高分子結合層を形成する工程と、
前記高分子結合層上にポリスチレン換算の数平均分子量が3×10以上1×10以下である導電性有機材料により構成される層を形成する工程と、
を含む積層構造体の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜17のうちのいずれか一項に記載の積層構造体を含む電子素子。
【請求項20】
発光素子である請求項19に記載の電子素子。
【請求項21】
光電変換素子である請求項19に記載の電子素子。
【請求項22】
下記式(VIII):
【化10】

(式中、Arは芳香環を有する2価の基であり、Xは末端基であり、nは1以上の整数であり、Ar15は芳香環を有するi+p価の基であり、i及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、i+pは2以上20以下であり、Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基又はエチニレン基であり、jは0又は1であり、Rは水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、シリル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、2個のRは同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
で表される共役高分子。
【請求項23】
下記式(IX):
【化11】

(式中、Ar15は芳香環を有するi+p価の基であり、i及びpはそれぞれ独立に1以上の整数であり、i+pは2以上20以下であり、Xはハロゲン原子又は−SO(ここにQは置換基を有していてもよいアルキル基を表す。)で示される基であり、Yは酸素原子、硫黄原子、イミノ基、置換イミノ基、エテニレン基、置換エテニレン基又はエチニレン基であり、jは0又は1であり、Rは水素原子、アルキル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、シリル基、置換シリル基、アシル基又は1価の複素環基であり、前記アルキル基、前記アルキルチオ基、前記アリール基、前記アリールチオ基、前記アリールアルキル基、前記アリールアルキルチオ基、前記アリールアルケニル基、前記アリールアルキニル基、前記アシル基及び前記1価の複素環基は置換基を有していてもよく、2個のRは同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
で表される共役化合物。

【公開番号】特開2011−29366(P2011−29366A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172943(P2009−172943)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】