積層構造体およびその製造方法
【課題】多孔質体どうしを接合した積層構造体において、多孔質体の材質によらず接合性に優れるものを提供すること。
【解決手段】第1の多孔質体11と、前記第1の多孔質体11に積層された第2の多孔質体12と、前記第1の多孔質体11と前記第2の多孔質体12との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材13とを有する積層構造体1であって、前記第1の多孔質体11と前記第2の多孔質体12との間には、両多孔質体間を連通させる連通部14が形成され、かつ前記接合材13の少なくとも表面部が金属材料からなるもの。
【解決手段】第1の多孔質体11と、前記第1の多孔質体11に積層された第2の多孔質体12と、前記第1の多孔質体11と前記第2の多孔質体12との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材13とを有する積層構造体1であって、前記第1の多孔質体11と前記第2の多孔質体12との間には、両多孔質体間を連通させる連通部14が形成され、かつ前記接合材13の少なくとも表面部が金属材料からなるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体およびその製造方法に係り、特に多孔質材料が接合材を介して接合される積層構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9〜11に一般的な多孔質材料の構造を示す。多孔質材料は3種類のタイプに大別される。第1のタイプは、焼結型多孔質材料で、例えば図9に示すように固体粒子31が粒子接点で結合固化してできたもので、固体粒子31の間隙が気孔32となるものである。第2のタイプは、発泡型多孔質材料で、例えば図10に示すように固体材料で形成される隔壁33によって気孔34が形成されるものである。第3のタイプは、焼結・発泡混相型多孔質材料で、例えば図11に示すように焼結型多孔質材料と発泡型多孔質材料との混相であり、上記した第1のタイプと第2のタイプとの両者の形態の気孔を有するものである。このような多孔質材料は、気相・液相に係わらず、各種流体のフィルタ、断熱材、吸音材、衝撃緩衝材等、広範囲の用途に使用されている。
【0003】
多孔質材料の特性は、孔径、孔径分布、孔形状等により決定され、多くの用途において複数種の多孔質材料が組み合わされて使用されている。例えば、異物分離を目的とするフィルタでは、孔径の大きいものから小さいものを順に積層したものが使用されている。
【0004】
水の浄化目的に使用されるセラミックスフィルタでは、孔径がサブミクロンオーダーの微細な多孔質膜と、数〜数百ミクロンオーダーの孔径を有する多孔質基材とから構成されている。この例では、全体がセラミックス系の概略同質材料とされるために、一体焼結することができ、製造プロセスも確立されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、金属多孔質材料とセラミックス多孔質材料とを組み合わせる場合、機械的な組み合わせ以外に一体化することは困難となっている。
【0005】
また、固体酸化物型燃料電池や高温水蒸気電解セルでは、集電/給電材料として金属多孔質材料が使用されている。しかしながら、固体酸化物型燃料電池の電解質層はジルコニア等のセラミックスからなるために、金属多孔質材料の一体化はプロセス上困難であり、機械的な圧接構造とする例がほとんどである。このため、繰り返し使用した場合に接触抵抗が増大するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−261465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、複数の多孔質材料が積層される積層構造体において、多孔質材料の材質によらず接合性に優れる積層構造体を提供すること目的としている。また、本発明は、このような積層構造体を得るための製造方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層構造体は、第1の多孔質体と、この第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、これら第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有するものであって、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間には、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ接合材の少なくとも表面部が金属材料からなることを特徴とする。接合材の少なくとも表面部を構成する金属材料は、金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなることが好ましい。
【0009】
接合材は、例えば上記した金属材料から構成され、かつ粒状のものである。この粒状接合材は、例えばほぼ等間隔で散点状となるように複数配置されている。また、この粒状接合材は、例えば第1の多孔質体および第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に設けられる凹部内に配置されている。このような粒状接合材は、例えば粒状接合材となるスラリーをインクジェットにより第1の多孔質体および第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に付着させて形成されるものであり、また例えば金属膜の熱処理による凝集を利用して形成されるものである。
【0010】
また、接合材は、例えば少なくとも表面部が上記した金属材料から構成される複数の短繊維からなるものであってもよい。このような短繊維は、例えばセラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に金属層が形成されたものである。
【0011】
さらに、接合材は、例えば上記したような金属材料から構成される粒状の接合材と、少なくとも表面部が上記した金属材料から構成される複数の短繊維からなる接合材とからなるものであってもよい。
【0012】
第1の多孔質体、第2の多孔質体は、例えば微細結晶もしくは非晶質相、または金属粒子により骨材粒子が部分的に接合され、かつ積層方向に連通する気孔が形成されているものである。また、第1の多孔質体、第2の多孔質体は、例えば気孔に接する面に導電層が形成されているものである。
【0013】
本発明の積層構造体は、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)または高温水蒸気電解(HTE)セルの電極と集電体との積層構造体として用いられる。
【0014】
本発明の積層構造体の製造方法は、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部に金属材料を有する接合材料を前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置する工程と、この接合材料が配置された第1の多孔質体と第2の多孔質体とを熱処理し、第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材料によって接合する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材により接合した積層構造体において、第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間に、両多孔質体間を連通させる連通部を形成すると共に、接合材の少なくとも表面部を金属材料からなるものとすることで、第1の多孔質体と第2の多孔質体との材質や微構造の組み合わせによらず、接合性に優れる積層構造体とすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部が金属材料からなる接合材料を第1の多孔質体と第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置した後、これを熱処理して第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材料によって接合するものとすることで、接合性に優れる積層構造体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の積層構造体の一例を示す断面図。
【図2】図1に示す積層構造体の平面図。
【図3】図1に示す積層構造体の変形例を示す断面図。
【図4】積層構造体における多孔質体の一例を示す断面図。
【図5】積層構造体における多孔質体の他の例を示す断面図。
【図6】積層構造体における多孔質体のさらに他の例を示す断面図。
【図7】本発明の積層構造体の他の例を示す断面図。
【図8】本発明の積層構造体のさらに他の例を示す断面図。
【図9】従来の一般的な焼結型多孔質材料を示す断面図。
【図10】従来の一般的な発泡型多孔質材料を示す断面図。
【図11】従来の一般的な焼結・発泡混相型多孔質材料を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の積層構造体は、第1の多孔質体と、この第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、これら第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有するものであって、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ接合材の少なくとも表面部が金属材料から構成されるものである。
【0019】
ここで、連通部は、少なくとも第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に流体を透過させることができるものである。すなわち、このような連通部が形成されるとは、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間が接合材によって完全に遮断されないことを意味する。このような連通部としては、例えば接合材が部分的に形成されるときには、この接合材が形成されていない部分とすることができ、また例えば接合材自体が空隙部を有する場合には、この空隙部とすることができる。
【0020】
また、接合材の表面部には、積層方向における表面部分だけでなく、連通部に露出する表面部分が含まれる。例えば接合材が部分的に形成されるときには、この部分的に形成される個々の接合材の表面部分が含まれ、また例えば接合材自体が空隙部を有する場合には、この空隙部に露出する表面部分が含まれる。以下、本発明の積層構造体について、具体例を示して説明する。
【0021】
図1、2は、本発明の積層構造体の一例を示す断面図、平面図であり、接合材を金属材料から構成される粒状のものとした例を示すものである。
【0022】
積層構造体1は、図1に示すように第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とが金属材料から構成される粒状の接合材13(以下、単に粒状接合材13という)よって接合されている。また、隣接する粒状接合材13どうしの間が、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間を連通させる連通部14となっている。粒状接合材13は、例えばほぼ等間隔で散点状となるように配置され、具体的には図2に示すように個々の平面形状が円形とされ、全体が等間隔の升目状となるように配置されている。
【0023】
このように金属材料から構成される粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合することで、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との材質や構造が異なる組み合わせ、例えば一方がセラミックス材料からなり、他方が金属材料からなる組み合わせや、双方の孔径、孔径分布、または孔形状が異なる組み合わせにおいても、接合性に優れるものとすることができる。
【0024】
また、粒状接合材13の形状、配置を調整することで、連通部14の形状、配置も調整することができ、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に有効に流体を透過させることができる。さらに、粒状接合材13を金属材料から構成されるものとすることで、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に十分な導電性を付与することもできる。
【0025】
これにより、例えば第1の多孔質体11を電極として用い、第2の多孔質体12を集電体として用い、粒状接合材13をこれら電極と集電体とを電気的に接続する接続導電材として用いることで、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、高温水蒸気電解(HTE)セル等として好適に用いることができる。
【0026】
また、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12として気孔の表面に導電経路となる表面導電層を形成したものを用いることで、例えば静電気の蓄電が抑制され、目詰まりが発生しにくいフィルタとして用いることができ、また例えば熱伝導が高く、熱交換率に優れる熱交換材料として用いることができる。
【0027】
粒状接合材13を構成する金属材料は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合できるものであれば特に限定されるものではないが、積層構造体1を高温状態で使用する観点から、貴金属、およびこの合金からなるものとすることが好ましく、例えば金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなるものとすることが好ましい。
【0028】
また、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合でき、また第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に流体を有効に透過させることができるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは大きさ(面方向の大きさ)、間隔(面方向の中心間距離)のそれぞれが、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の中でより気孔が大きくなるものの方の気孔の大きさよりも大きくなっていることが好ましい。
【0029】
粒状接合材13の大きさ、間隔をこのようなものとすることで、例えば粒状接合材13を第1の多孔質体11を構成する粒子と第2の多孔質体12を構成する粒子とに確実に接触させて接合させることができ、また粒状接合材13が第1の多孔質体11や第2の多孔質体12の全ての気孔を塞ぐことを抑制し、これらの間に流体を有効に透過させることができる。
【0030】
通常、粒状接合材13の大きさ(面方向の平均径)は10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、粒状接合材13どうしの間隔(面方向の平均中心間距離)は50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。
【0031】
また、粒状接合材13の厚さ(積層方向の平均厚さ)は、30μm以上600μm以下であることが好ましく、60μm以上300μm以下であることがより好ましい。粒状接合材13が薄すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがあり、また粒状接合材13が厚すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が低下するおそれがある。
【0032】
粒状接合材13は、例えば図3に示すように第1の多孔質体11の接合面に設けられる凹部11aに配置されていることが好ましい。このように第1の多孔質体11の凹部11aに粒状接合材13を配置するものとすることで、粒状接合材13を例えば図2に示すような升目状等に配置しやすく、またアンカー効果により第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度も向上させやすい。
【0033】
凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔は、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔に合わせて適宜決定される。言い換えれば、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔が所望のものとなるように、凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔が決定される。
【0034】
すなわち、凹部11aに粒状接合材13を形成する場合、例えば焼成により第1の多孔質体11となる未焼成の第1の多孔質体11に凹部11aを形成し、この凹部11aに焼成して粒状接合材13となる未焼成の粒状接合材13を形成し、全体を焼成して凹部11aに粒状接合材13を形成する。従って、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔が所望のものとなるように凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔を決定することで、所望の形状、間隔の粒状接合材13を得ることができる。
【0035】
このような、凹部については、図3に示すように第1の多孔質体11に設ける他、図示しないが例えば第2の多孔質体12に設けてもよく、また例えば第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との双方に設けてもよい。
【0036】
第1の多孔質体11、第2の多孔質体12(以下、これらをまとめて多孔質体11、12という)は、それぞれ積層方向に貫通する気孔を有するものであれば特に材質や構造については限定されるものではなく、例えば一方をセラミックス材料とし、他方を金属材料とする組み合わせとしてもよいし、双方の孔径、孔径分布、または孔形状が異なる組み合わせとしてもよい。
【0037】
多孔質体11、12を構成する金属材料としては、例えばステンレス鋼、フェライト系合金、アルミニウム、Ni系金属材料、Cr系金属材料が好適なものとして挙げられる。また、多孔質体11、12を構成するセラミックス材料としては、例えばAl、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zr、La、Sr、Gd、およびMnの中から選択される元素の酸化物、窒化物、または炭化物が好適なものとして挙げられる。
【0038】
多孔質体11、12の少なくとも一方は、気孔に接する面に導電層を有するものであることが好ましい。このようなものとすることで、例えばこの気孔に接する面に導電層を有するものを電極や集電体として用い、全体として固体酸化物型燃料電池(SOFC)あるいは高温水蒸気電解(HTE)セルとして用いることができ、また例えば静電気の蓄電が抑制され、目詰まりが発生しにくいフィルタや、熱伝導が高く、熱交換率に優れる熱交換材料として用いることができる。
【0039】
図4は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12の一例を示す断面図であり、骨材粒子21と、これを結合する微細結晶もしくは非晶質相から構成される結合部22とからなり、骨材粒子21の表面に導電層23が形成されたものを示すものである。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが接触することにより、全体として導電性を有するものとなっている。
【0040】
骨材粒子21は、上記した金属材料またはセラミックス材料からなるものとすることができる。また、導電層23は、金属層、導電性酸化物層、具体的には各種の金属材料、良電導性酸化物といわれる酸化物化合物からなるものとすることができ、例えばメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により形成することができる。導電性酸化物層については、特にその酸化物化合物の成分を有する何種類かの溶液を骨材粒子21と混合、乾燥(酸化)させることにより容易に形成することができる。
【0041】
良電導性酸化物といわれる酸化物化合物は、例えばNaCl型と呼ばれるTiO、VO、EuO1−X、スピネル型と呼ばれるLiTi2O4、Fe3O4、ペロブスカイト型と呼ばれるReO2、MxWO3(Mは金属一般)、LaTiO3、SrVO3、CaCrO3、SrCrO3、La1−XSrMnO3、SrFeO3、SrCoO3、La1−xSrxCoO3、LaNiO3、CaRuO3、SrRuO3、SrIrO3、BaPbO3、BaPb1−xBixO3、(Ba,Ca,Sr)TiO3−x、コランダム型と呼ばれるV2O3、Ti2O3、ルチル型と呼ばれるVO2、CrO2、MoO2、WO2、β−ReO2、RuO2、VnO2n−1、TinO2n−1、SnO2−x、パイロクロア型と呼ばれるPb2Ru2O7−x、Bi2Ru2O7−x、その他にTl2O2−x、Tl1−xF、MxV2O2−x(Mは金属一般)等が挙げられる。
【0042】
この多孔質体11、12は、上記方法により予め表面に導電層23を形成した骨材粒子21をアルコキシド溶液と混合し、所定の形状に成形、乾燥した後、加水分解処理として熱処理を行うことにより、アルコキシド溶液から微細結晶または非晶質相からなる結合部22を生成させ、この結合部22により骨材粒子21を結合することにより得ることができる。この際、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0043】
この際、アルコキシド溶液としては、骨材粒子21の主成分原子を含有するアルコキシド材と分散媒とを混合したものを用いることが好ましく、50℃以上で熱処理することが好ましい。熱処理温度を50℃以上とすることで加水分解処理を有効に進めることができる。熱処理温度は、高いほど微細結晶または非晶質相を安定させることができるが、高すぎると骨材粒子21の機械的特性を低下させるおそれがあるため、500℃以下とすることが好ましい。
【0044】
図5は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12の他の例を示す断面図であり、骨材粒子21と、これを結合する結合部22とからなるものであって、骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23が形成されたものを示したものである。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23が形成されることで、全体として導電性を有するものとなっている。
【0045】
この多孔質体11、12は、まず図4に示す多孔質体11、12のところで説明した方法において、予め導電層23が形成された骨材粒子21を用いる代わりに、導電層23が形成されていない骨材粒子21を用いる以外は同様にして多孔質体11、12(導電層23が形成されていないもの)を製造した後、全体に無電解メッキ等のメッキ処理を行うことにより骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23を形成することにより得ることができる。
【0046】
図6は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12のさらに他の例を示す断面図であり、導電層23が形成された骨材粒子21と、これを接合する金属粒子24とからなるものを示したものである。この多孔質体11、12は、図4に示す多孔質体11、12とは、導電層23が形成された骨材粒子21を結合するものが金属材料からなる金属粒子24である点が異なっている。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが直接接触することにより、また金属粒子24を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有するものとなっている。
【0047】
この多孔質体11、12は、予め導電層23が形成された骨材粒子21と、金属粒子24とをアルコール等の溶媒と共に混合し、所定の形状に成形、乾燥した後、高温で熱処理することにより、導電層23が形成された骨材粒子21と金属粒子24とを融着により結合させることにより得ることができる。この際、骨材粒子21の導電層23どうしが直接接触することにより、また金属粒子24を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0048】
この積層構造体1は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、粒状接合材13を形成するためのスラリーを調製する。スラリーは、例えば粒状接合材13となる金属微粒子と、溶媒、バインダー等とを混合することにより得ることができる。なお、ここで用いる金属微粒子は、最終的に融着により粒状接合材13となるものであり、例えば平均粒径が0.2μm以上30μm以下のものが好ましく、0.2μm以上10μm以下のものがより好ましい。
【0049】
このスラリーを、例えば第1の多孔質体11の接合面にインクジェットスプレーを用いて塗布することにより、最終的に焼成して粒状接合材13となる未焼成の粒状接合材13を得る。この際、未焼成の粒状接合材13の形状、配置を調整することで、最終的に得られる粒状接合材13の形状、配置を調整することができる。ここで、第1の多孔質体11としては、それ自体が単独で存在するものはもちろんのこと、既に他の部材と接合されているもの、例えば固体酸化物型燃料電池の電解質と電極との接合体における電極等であってもよい。なお、この場合には第2の多孔質体12が集電体となる。
【0050】
その後、必要に応じて熱処理することにより溶媒およびバインダーを除去し、未焼成の粒状接合材13を介して第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することで、未焼成の粒状接合材13中の金属微粒子を融着させて粒状接合材13を形成すると共に、この粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0051】
第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合するための熱処理は、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上150分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が十分でなくなるおそれがある。一方、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0052】
また、上記方法に代えて、以下のような方法により粒状接合材13を形成してもよい。すなわち、焼成により第1の多孔質体11となる未焼成の第1の多孔質体11を製造する際に、この未焼成の第1の多孔質体11の接合面に凹部11aを形成する。凹部11aの形成は、例えば凸部を有するもの、具体的には複数の球状体等を接合面に押し当てるようにして窪ませることにより形成することができる。
【0053】
そして、この凹部11aを含めた接合面全体にスラリーを塗布した後、この接合面に塗布されたスラリーを凹部に掻き集めるようにして充填し、必要に応じて熱処理することにより溶媒およびバインダーを除去し、未焼成の粒状接合材13を得る。その後、全体を焼成することにより、第1の多孔質体11を得ると同時に、凹部11aに粒状接合材13を形成する。このような方法とすることで、比較的容易に所望とする形状、配置の粒状接合材13を得ることができる。また、このように第1の多孔質体11を得ると同時に凹部11aに粒状接合材13を形成することで、よりアンカー効果も得やすくなる。
【0054】
このようにして凹部11aに粒状接合材13が形成された第1の多孔質体11には、粒状接合材13を介するようにして第2の多孔質体12を重ね合わせて熱処理することで、この粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0055】
また、上記したスラリーを用いる方法の他、例えば金属膜を熱処理したときに凝集する性質を利用して粒状接合材13を形成してもよい。例えば、第1の多孔質体11の接合面の全体に粒状接合材13の構成成分からなる金属膜を形成した後、これを熱処理することで金属膜を分離させつつ、粒子状に凝集させて粒状接合材13を形成してもよい。
【0056】
金属膜は、例えばメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により形成することができる。また、金属膜の分離、凝集についても熱処理により容易に行うことができ、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上720分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、金属膜の分離、凝集が十分でなく、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0057】
次に、本発明の積層構造体1の他の例について説明する。
図7は、本発明の積層構造体1の他の例を示す断面図である。この積層構造体1は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とが、少なくとも表面部が金属材料から構成される複数の短繊維15cからなる接合材15(以下、単に繊維接合材15という)によって接合されている。また、繊維接合材15における短繊維15cどうしの間の空隙部が第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間を連通させる連通部14となっている。
【0058】
このような繊維接合材15によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合した場合についても、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合することができる。特に、短繊維15cからなるものとすることで、その端部を第1の多孔質体11や第2の多孔質体12に食い込ませることができ、より第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合性に優れたものとすることができる。
【0059】
また、短繊維15cどうしの間には連通部14が形成されるため、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に有効に流体を透過させることができる。さらに、個々の短繊維15cの少なくとも表面部が金属材料から構成されているために、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に十分な導電性を付与することができる。
【0060】
このような繊維接合材15については、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間の面方向の全体に配置してもよいし、また部分的に配置してもよい。繊維接合材15については、短繊維15cどうしの間に連通部14が形成されるため、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間の面方向の全体に配置しても有効に流体を透過させることができる。
【0061】
短繊維15cの少なくとも表面部を構成する金属材料は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合することができるものであれば特に限定されるものではないが、積層構造体1を高温状態で使用する観点から、貴金属、およびこの合金からなるものが好ましく、例えば金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなるものが好ましい。
【0062】
短繊維15cは、少なくとも表面部が上記した金属材料からなるものであればよく、金属繊維そのものの他、例えばセラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に上記した金属材料からなる金属層を形成したものであってもよい。また、例えば、有機繊維の表面に金属層を形成したものを熱処理し、有機繊維を除去して得られる中空の金属繊維であってもよい。
【0063】
金属層を設ける場合、その厚さは0.05μm以上2μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。金属層が薄すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがあり、金属層が厚すぎると短繊維15cの生産性等が低下するおそれがある。
【0064】
短繊維15cは、平均繊維長が20μm以上1000μm以下であることが好ましく、50μm以上500μm以下であることがより好ましい。また、アスペクト比(繊維長/繊維径)が5以上200以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。平均繊維長やアスペクト比が上記範囲外となる場合、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがある。
【0065】
また、繊維接合材15の厚さは、30μm以上600μm以下であることが好ましく、30μm以上300μm以下であることがより好ましい。接合材13の厚さが上記範囲を外れると、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が低下するおそれがある。
【0066】
この積層構造体1は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、短繊維15cと、溶媒、バインダー等とを混合し、繊維接合材15を形成するためのスラリーを調製する。短繊維15cの調製は、例えば各種の繊維の表面にメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により金属層を設けた後、必要に応じて所定の繊維長に切断することで行うことができる。
【0067】
このスラリーを、例えば第1の多孔質体11の接合面の略全面に塗布し、熱処理により溶媒およびバインダーを除去し、焼成により繊維接合材15となる未焼成の繊維接合材15を形成する。その後、未焼成の繊維接合材15を介するようにして第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することで、表面部の金属材料を融着させて短繊維15cどうしを結合して繊維接合材15を形成すると共に、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを短繊維15cにより接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0068】
第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合するための熱処理は、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上150分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、短繊維15cどうし、または短繊維15cと第1の多孔質体11もしくは第2の多孔質体12とを融着させることができず、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が十分でなくなるおそれがある。一方、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0069】
次に、本発明の積層構造体1のさらに他の例について説明する。
図8は、本発明の積層構造体1の他の例を示す断面図である。この積層構造体1は、図1に示すような粒状接合材13と、図7に示すような繊維接合材15との双方から構成されることを特長としている。
【0070】
このように粒状接合材13と繊維接合材15とは併用することができ、この場合には粒状接合材13どうしの間に配置される繊維接合材15の連通部が実質的な連通部14となる。このようなものについては、粒状接合材13と繊維接合材15とを単独で用いた場合の効果を合わせて得ることができる。なお、粒状接合材13と繊維接合材15とは、重なるように配置されていてもよいし、重ならないように配置されていてもよい。
【0071】
このような積層構造体1は、例えば既に説明したような方法で第1の多孔質体11の接合面に粒状接合材13または未焼成の粒状接合材13を形成した後、この粒状接合材13または未焼成の粒状接合材13を含めた第1の多孔質体11の接合面の所望とする部分に既に説明したような短繊維15cを含むスラリーを塗布し、その後に第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することにより得ることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。
【0073】
(実施例1)
積層構造体として、接合材を金属材料から構成される粒状のものとしたものを製造した。まず、第1の多孔質体として、SOFCセルの集電体となるものを製造した。すなわち、骨材粒子となる平均粒径が15μmの球状ジルコニア粒子に無電解メッキにより約0.2μmの厚さのPdメッキ層を形成し、さらに約0.2μmの厚さのAgメッキ層を形成した。
【0074】
このAgメッキ層が形成された球状ジルコニア粒子に、Ag微粒子、溶媒、および有機バインダーを加えて混合し、ドクターブレード法により0.2mmの厚さのシート状に成形した。なお、Ag微粒子は、球状ジルコニア粒子100質量部に対して20質量部添加した。その後、大気中700℃で1時間の熱処理を行い、脱バインダと焼結とを行って集電体を得た。
【0075】
また、第2の多孔質体としてSOFCセルを用意した。セルの構成は表1に示す通りであり、緻密な電解質膜イットリア安定ジルコニア(8YSZ)の一方の主面に第2の多孔質体に相当する酸素極としてのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.803 and 20mol%Sm−CeO2(LSCF−SDC)多孔体が形成され、他方の主面に水素極としてのNiO and 20mol% Sm−CeO2 cermet(Ni−SDC)多孔体が形成されたものである。
【0076】
【表1】
【0077】
一方、接合材を形成するためのスラリーとして、平均粒径0.6μmのAg微粒子に溶剤および有機バインダーを加えたものを調製した。そして、このスラリーをSOFCセルの酸素極の表面に直径約120μmの大きさでピッチが500μmとなるように升目状にインクジェットスプレーを用いて塗布した。その後、このSOFCセルの酸素極に先に製造した集電体を載せ、700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを複数の粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0078】
このような積層構造体については、酸素極と集電体とが粒状の接合材により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0079】
(実施例2)
実施例1の積層構造体において、接合材を少なくとも表面部が金属材料から構成される複数の短繊維からなるものとしたものを製造した。まず、接合材を構成する短繊維は、Ag被覆ポリエステル繊維(三菱マテリアル社製、商品名;シルファイバー、繊維径;17μm)の表面に無電解メッキにより厚さ約0.2μmの厚さのPdメッキ層、および約0.2μmの厚さのAgメッキ層を順に形成したものを約500μmの長さに切断し、大気中400℃まで加熱することによりポリエステル繊維を除去して中空状とした中空金属繊維とした。この中空金属繊維に溶剤および有機バインダーを加え、中空金属繊維の含有量が5質量%のスラリーを調製した。
【0080】
このスラリーを実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面全体に塗布し、大気中400℃まで加熱することにより溶剤および有機バインダーを除去した。その後、SOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを接合材における中空金属繊維で接合して積層構造体とした。
【0081】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とが接合材における中空金属繊維により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0082】
(実施例3)
実施例1の積層構造体において、粒状の接合材を金属膜の熱処理からなるものとしたものを製造した。すなわち、実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面全体にスパッタリング法により0.5μmの厚さのAg膜を形成した。その後、このAg膜を900℃に加熱することによりAg膜を分離、分散させつつ、粒状に凝集させ、粒状の接合材としての多数のAg塊を形成した。なお、このとき得られたAg塊の大きさは、1μm程度から3μm程度までであった。その後、SOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とをAg塊により接合して積層構造体とした。
【0083】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とがAg塊により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0084】
(実施例4)
実施例1の積層構造体において、集電体の凹部に粒状の接合材が形成されたものを製造した。すなわち、実施例1で作製した集電体となるシート状の成形体の接合面に粒径300μmのジルコニアビーズを均一に敷き詰め、約3kg/cm2の荷重を10時間加えた後、ジルコニアビーズを払い落としてシート状の成形体に多数の凹部を形成した。
【0085】
また、粒状の接合材を形成するためのスラリーとして、平均粒径0.6μmのAg微粒子に水および分散剤を加えたものを調製した。このスラリーを先に製造したシート状の成形体の凹部が形成された接合面に塗布し、凹部にスラリーを集めて乾燥させた。そして、大気中700℃で1時間の熱処理を行い、凹部に粒状の接合材が形成された集電体を得た。その後、この集電体を実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極に載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを凹部における粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0086】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とが凹部における粒状の接合材により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0087】
(比較例1)
実施例1の積層構造体において、粒状の接合材をガラス粒子からなるものとしたものを製造した。すなわち、実施例1の積層構造体の製造において、スラリーとして、平均粒径1.1μmのガラス微粒子に溶剤および有機バインダーを加えたものを調製した。そして、このスラリーを実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面に直径約280μmの大きさでピッチが1mmとなるように升目状にスプレーした。その後、このSOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、940℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とをガラス粒子からなる粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0088】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とを粒状の接合材におけるガラス粒子により接合することができたが、900℃までの加熱と冷却とを2回繰り返して行うと界面で剥離し、接合信頼性に劣ることが認められた。また、このような積層構造体については、酸素極と集電体との電気抵抗が増え、導電性にも劣ることが認められた。
【0089】
(比較例2)
実施例1の積層構造体において、特に接合材を設けないものを製造した。すなわち、実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を直接載せ、700℃で熱処理を行った。このような積層構造体についても、酸素極と集電体とを接合することができたが、900℃までの加熱と冷却とを10回繰り返して行うと界面で剥離し、接合信頼性に劣ることが認められた。
【符号の説明】
【0090】
1…積層構造体、11…第1の多孔質体、11a…凹部、12…第2の多孔質体、13…粒状接合材、14…連通部、15…短繊維からなる接合材、21…骨材粒子、22…微細結晶もしくは非晶質相からなる結合部、23…導電層、24…金属粒子
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層構造体およびその製造方法に係り、特に多孔質材料が接合材を介して接合される積層構造体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図9〜11に一般的な多孔質材料の構造を示す。多孔質材料は3種類のタイプに大別される。第1のタイプは、焼結型多孔質材料で、例えば図9に示すように固体粒子31が粒子接点で結合固化してできたもので、固体粒子31の間隙が気孔32となるものである。第2のタイプは、発泡型多孔質材料で、例えば図10に示すように固体材料で形成される隔壁33によって気孔34が形成されるものである。第3のタイプは、焼結・発泡混相型多孔質材料で、例えば図11に示すように焼結型多孔質材料と発泡型多孔質材料との混相であり、上記した第1のタイプと第2のタイプとの両者の形態の気孔を有するものである。このような多孔質材料は、気相・液相に係わらず、各種流体のフィルタ、断熱材、吸音材、衝撃緩衝材等、広範囲の用途に使用されている。
【0003】
多孔質材料の特性は、孔径、孔径分布、孔形状等により決定され、多くの用途において複数種の多孔質材料が組み合わされて使用されている。例えば、異物分離を目的とするフィルタでは、孔径の大きいものから小さいものを順に積層したものが使用されている。
【0004】
水の浄化目的に使用されるセラミックスフィルタでは、孔径がサブミクロンオーダーの微細な多孔質膜と、数〜数百ミクロンオーダーの孔径を有する多孔質基材とから構成されている。この例では、全体がセラミックス系の概略同質材料とされるために、一体焼結することができ、製造プロセスも確立されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、金属多孔質材料とセラミックス多孔質材料とを組み合わせる場合、機械的な組み合わせ以外に一体化することは困難となっている。
【0005】
また、固体酸化物型燃料電池や高温水蒸気電解セルでは、集電/給電材料として金属多孔質材料が使用されている。しかしながら、固体酸化物型燃料電池の電解質層はジルコニア等のセラミックスからなるために、金属多孔質材料の一体化はプロセス上困難であり、機械的な圧接構造とする例がほとんどである。このため、繰り返し使用した場合に接触抵抗が増大するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−261465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、複数の多孔質材料が積層される積層構造体において、多孔質材料の材質によらず接合性に優れる積層構造体を提供すること目的としている。また、本発明は、このような積層構造体を得るための製造方法を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積層構造体は、第1の多孔質体と、この第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、これら第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有するものであって、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間には、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ接合材の少なくとも表面部が金属材料からなることを特徴とする。接合材の少なくとも表面部を構成する金属材料は、金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなることが好ましい。
【0009】
接合材は、例えば上記した金属材料から構成され、かつ粒状のものである。この粒状接合材は、例えばほぼ等間隔で散点状となるように複数配置されている。また、この粒状接合材は、例えば第1の多孔質体および第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に設けられる凹部内に配置されている。このような粒状接合材は、例えば粒状接合材となるスラリーをインクジェットにより第1の多孔質体および第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に付着させて形成されるものであり、また例えば金属膜の熱処理による凝集を利用して形成されるものである。
【0010】
また、接合材は、例えば少なくとも表面部が上記した金属材料から構成される複数の短繊維からなるものであってもよい。このような短繊維は、例えばセラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に金属層が形成されたものである。
【0011】
さらに、接合材は、例えば上記したような金属材料から構成される粒状の接合材と、少なくとも表面部が上記した金属材料から構成される複数の短繊維からなる接合材とからなるものであってもよい。
【0012】
第1の多孔質体、第2の多孔質体は、例えば微細結晶もしくは非晶質相、または金属粒子により骨材粒子が部分的に接合され、かつ積層方向に連通する気孔が形成されているものである。また、第1の多孔質体、第2の多孔質体は、例えば気孔に接する面に導電層が形成されているものである。
【0013】
本発明の積層構造体は、例えば固体酸化物型燃料電池(SOFC)または高温水蒸気電解(HTE)セルの電極と集電体との積層構造体として用いられる。
【0014】
本発明の積層構造体の製造方法は、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部に金属材料を有する接合材料を前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置する工程と、この接合材料が配置された第1の多孔質体と第2の多孔質体とを熱処理し、第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材料によって接合する工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材により接合した積層構造体において、第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間に、両多孔質体間を連通させる連通部を形成すると共に、接合材の少なくとも表面部を金属材料からなるものとすることで、第1の多孔質体と第2の多孔質体との材質や微構造の組み合わせによらず、接合性に優れる積層構造体とすることができる。
【0016】
また、本発明によれば、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部が金属材料からなる接合材料を第1の多孔質体と第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置した後、これを熱処理して第1の多孔質体と第2の多孔質体とを接合材料によって接合するものとすることで、接合性に優れる積層構造体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の積層構造体の一例を示す断面図。
【図2】図1に示す積層構造体の平面図。
【図3】図1に示す積層構造体の変形例を示す断面図。
【図4】積層構造体における多孔質体の一例を示す断面図。
【図5】積層構造体における多孔質体の他の例を示す断面図。
【図6】積層構造体における多孔質体のさらに他の例を示す断面図。
【図7】本発明の積層構造体の他の例を示す断面図。
【図8】本発明の積層構造体のさらに他の例を示す断面図。
【図9】従来の一般的な焼結型多孔質材料を示す断面図。
【図10】従来の一般的な発泡型多孔質材料を示す断面図。
【図11】従来の一般的な焼結・発泡混相型多孔質材料を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の積層構造体は、第1の多孔質体と、この第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、これら第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有するものであって、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ接合材の少なくとも表面部が金属材料から構成されるものである。
【0019】
ここで、連通部は、少なくとも第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に流体を透過させることができるものである。すなわち、このような連通部が形成されるとは、第1の多孔質体と第2の多孔質体との間が接合材によって完全に遮断されないことを意味する。このような連通部としては、例えば接合材が部分的に形成されるときには、この接合材が形成されていない部分とすることができ、また例えば接合材自体が空隙部を有する場合には、この空隙部とすることができる。
【0020】
また、接合材の表面部には、積層方向における表面部分だけでなく、連通部に露出する表面部分が含まれる。例えば接合材が部分的に形成されるときには、この部分的に形成される個々の接合材の表面部分が含まれ、また例えば接合材自体が空隙部を有する場合には、この空隙部に露出する表面部分が含まれる。以下、本発明の積層構造体について、具体例を示して説明する。
【0021】
図1、2は、本発明の積層構造体の一例を示す断面図、平面図であり、接合材を金属材料から構成される粒状のものとした例を示すものである。
【0022】
積層構造体1は、図1に示すように第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とが金属材料から構成される粒状の接合材13(以下、単に粒状接合材13という)よって接合されている。また、隣接する粒状接合材13どうしの間が、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間を連通させる連通部14となっている。粒状接合材13は、例えばほぼ等間隔で散点状となるように配置され、具体的には図2に示すように個々の平面形状が円形とされ、全体が等間隔の升目状となるように配置されている。
【0023】
このように金属材料から構成される粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合することで、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との材質や構造が異なる組み合わせ、例えば一方がセラミックス材料からなり、他方が金属材料からなる組み合わせや、双方の孔径、孔径分布、または孔形状が異なる組み合わせにおいても、接合性に優れるものとすることができる。
【0024】
また、粒状接合材13の形状、配置を調整することで、連通部14の形状、配置も調整することができ、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に有効に流体を透過させることができる。さらに、粒状接合材13を金属材料から構成されるものとすることで、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に十分な導電性を付与することもできる。
【0025】
これにより、例えば第1の多孔質体11を電極として用い、第2の多孔質体12を集電体として用い、粒状接合材13をこれら電極と集電体とを電気的に接続する接続導電材として用いることで、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、高温水蒸気電解(HTE)セル等として好適に用いることができる。
【0026】
また、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12として気孔の表面に導電経路となる表面導電層を形成したものを用いることで、例えば静電気の蓄電が抑制され、目詰まりが発生しにくいフィルタとして用いることができ、また例えば熱伝導が高く、熱交換率に優れる熱交換材料として用いることができる。
【0027】
粒状接合材13を構成する金属材料は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合できるものであれば特に限定されるものではないが、積層構造体1を高温状態で使用する観点から、貴金属、およびこの合金からなるものとすることが好ましく、例えば金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなるものとすることが好ましい。
【0028】
また、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合でき、また第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に流体を有効に透過させることができるものであれば特に限定されるものではないが、好ましくは大きさ(面方向の大きさ)、間隔(面方向の中心間距離)のそれぞれが、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の中でより気孔が大きくなるものの方の気孔の大きさよりも大きくなっていることが好ましい。
【0029】
粒状接合材13の大きさ、間隔をこのようなものとすることで、例えば粒状接合材13を第1の多孔質体11を構成する粒子と第2の多孔質体12を構成する粒子とに確実に接触させて接合させることができ、また粒状接合材13が第1の多孔質体11や第2の多孔質体12の全ての気孔を塞ぐことを抑制し、これらの間に流体を有効に透過させることができる。
【0030】
通常、粒状接合材13の大きさ(面方向の平均径)は10μm以上200μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、粒状接合材13どうしの間隔(面方向の平均中心間距離)は50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。
【0031】
また、粒状接合材13の厚さ(積層方向の平均厚さ)は、30μm以上600μm以下であることが好ましく、60μm以上300μm以下であることがより好ましい。粒状接合材13が薄すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがあり、また粒状接合材13が厚すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が低下するおそれがある。
【0032】
粒状接合材13は、例えば図3に示すように第1の多孔質体11の接合面に設けられる凹部11aに配置されていることが好ましい。このように第1の多孔質体11の凹部11aに粒状接合材13を配置するものとすることで、粒状接合材13を例えば図2に示すような升目状等に配置しやすく、またアンカー効果により第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度も向上させやすい。
【0033】
凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔は、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔に合わせて適宜決定される。言い換えれば、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔が所望のものとなるように、凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔が決定される。
【0034】
すなわち、凹部11aに粒状接合材13を形成する場合、例えば焼成により第1の多孔質体11となる未焼成の第1の多孔質体11に凹部11aを形成し、この凹部11aに焼成して粒状接合材13となる未焼成の粒状接合材13を形成し、全体を焼成して凹部11aに粒状接合材13を形成する。従って、粒状接合材13の形状、粒状接合材13どうしの間隔が所望のものとなるように凹部11aの形状、凹部11aどうしの間隔を決定することで、所望の形状、間隔の粒状接合材13を得ることができる。
【0035】
このような、凹部については、図3に示すように第1の多孔質体11に設ける他、図示しないが例えば第2の多孔質体12に設けてもよく、また例えば第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との双方に設けてもよい。
【0036】
第1の多孔質体11、第2の多孔質体12(以下、これらをまとめて多孔質体11、12という)は、それぞれ積層方向に貫通する気孔を有するものであれば特に材質や構造については限定されるものではなく、例えば一方をセラミックス材料とし、他方を金属材料とする組み合わせとしてもよいし、双方の孔径、孔径分布、または孔形状が異なる組み合わせとしてもよい。
【0037】
多孔質体11、12を構成する金属材料としては、例えばステンレス鋼、フェライト系合金、アルミニウム、Ni系金属材料、Cr系金属材料が好適なものとして挙げられる。また、多孔質体11、12を構成するセラミックス材料としては、例えばAl、Si、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Zr、La、Sr、Gd、およびMnの中から選択される元素の酸化物、窒化物、または炭化物が好適なものとして挙げられる。
【0038】
多孔質体11、12の少なくとも一方は、気孔に接する面に導電層を有するものであることが好ましい。このようなものとすることで、例えばこの気孔に接する面に導電層を有するものを電極や集電体として用い、全体として固体酸化物型燃料電池(SOFC)あるいは高温水蒸気電解(HTE)セルとして用いることができ、また例えば静電気の蓄電が抑制され、目詰まりが発生しにくいフィルタや、熱伝導が高く、熱交換率に優れる熱交換材料として用いることができる。
【0039】
図4は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12の一例を示す断面図であり、骨材粒子21と、これを結合する微細結晶もしくは非晶質相から構成される結合部22とからなり、骨材粒子21の表面に導電層23が形成されたものを示すものである。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが接触することにより、全体として導電性を有するものとなっている。
【0040】
骨材粒子21は、上記した金属材料またはセラミックス材料からなるものとすることができる。また、導電層23は、金属層、導電性酸化物層、具体的には各種の金属材料、良電導性酸化物といわれる酸化物化合物からなるものとすることができ、例えばメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により形成することができる。導電性酸化物層については、特にその酸化物化合物の成分を有する何種類かの溶液を骨材粒子21と混合、乾燥(酸化)させることにより容易に形成することができる。
【0041】
良電導性酸化物といわれる酸化物化合物は、例えばNaCl型と呼ばれるTiO、VO、EuO1−X、スピネル型と呼ばれるLiTi2O4、Fe3O4、ペロブスカイト型と呼ばれるReO2、MxWO3(Mは金属一般)、LaTiO3、SrVO3、CaCrO3、SrCrO3、La1−XSrMnO3、SrFeO3、SrCoO3、La1−xSrxCoO3、LaNiO3、CaRuO3、SrRuO3、SrIrO3、BaPbO3、BaPb1−xBixO3、(Ba,Ca,Sr)TiO3−x、コランダム型と呼ばれるV2O3、Ti2O3、ルチル型と呼ばれるVO2、CrO2、MoO2、WO2、β−ReO2、RuO2、VnO2n−1、TinO2n−1、SnO2−x、パイロクロア型と呼ばれるPb2Ru2O7−x、Bi2Ru2O7−x、その他にTl2O2−x、Tl1−xF、MxV2O2−x(Mは金属一般)等が挙げられる。
【0042】
この多孔質体11、12は、上記方法により予め表面に導電層23を形成した骨材粒子21をアルコキシド溶液と混合し、所定の形状に成形、乾燥した後、加水分解処理として熱処理を行うことにより、アルコキシド溶液から微細結晶または非晶質相からなる結合部22を生成させ、この結合部22により骨材粒子21を結合することにより得ることができる。この際、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0043】
この際、アルコキシド溶液としては、骨材粒子21の主成分原子を含有するアルコキシド材と分散媒とを混合したものを用いることが好ましく、50℃以上で熱処理することが好ましい。熱処理温度を50℃以上とすることで加水分解処理を有効に進めることができる。熱処理温度は、高いほど微細結晶または非晶質相を安定させることができるが、高すぎると骨材粒子21の機械的特性を低下させるおそれがあるため、500℃以下とすることが好ましい。
【0044】
図5は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12の他の例を示す断面図であり、骨材粒子21と、これを結合する結合部22とからなるものであって、骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23が形成されたものを示したものである。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23が形成されることで、全体として導電性を有するものとなっている。
【0045】
この多孔質体11、12は、まず図4に示す多孔質体11、12のところで説明した方法において、予め導電層23が形成された骨材粒子21を用いる代わりに、導電層23が形成されていない骨材粒子21を用いる以外は同様にして多孔質体11、12(導電層23が形成されていないもの)を製造した後、全体に無電解メッキ等のメッキ処理を行うことにより骨材粒子21、結合部22のそれぞれの表面に導電層23を形成することにより得ることができる。
【0046】
図6は、気孔に接する面に導電層を有する多孔質体11、12のさらに他の例を示す断面図であり、導電層23が形成された骨材粒子21と、これを接合する金属粒子24とからなるものを示したものである。この多孔質体11、12は、図4に示す多孔質体11、12とは、導電層23が形成された骨材粒子21を結合するものが金属材料からなる金属粒子24である点が異なっている。この多孔質体11、12では、隣接する骨材粒子21の導電層23どうしが直接接触することにより、また金属粒子24を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有するものとなっている。
【0047】
この多孔質体11、12は、予め導電層23が形成された骨材粒子21と、金属粒子24とをアルコール等の溶媒と共に混合し、所定の形状に成形、乾燥した後、高温で熱処理することにより、導電層23が形成された骨材粒子21と金属粒子24とを融着により結合させることにより得ることができる。この際、骨材粒子21の導電層23どうしが直接接触することにより、また金属粒子24を介して間接的に接触することにより、全体として導電性を有するものとなる。
【0048】
この積層構造体1は、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、粒状接合材13を形成するためのスラリーを調製する。スラリーは、例えば粒状接合材13となる金属微粒子と、溶媒、バインダー等とを混合することにより得ることができる。なお、ここで用いる金属微粒子は、最終的に融着により粒状接合材13となるものであり、例えば平均粒径が0.2μm以上30μm以下のものが好ましく、0.2μm以上10μm以下のものがより好ましい。
【0049】
このスラリーを、例えば第1の多孔質体11の接合面にインクジェットスプレーを用いて塗布することにより、最終的に焼成して粒状接合材13となる未焼成の粒状接合材13を得る。この際、未焼成の粒状接合材13の形状、配置を調整することで、最終的に得られる粒状接合材13の形状、配置を調整することができる。ここで、第1の多孔質体11としては、それ自体が単独で存在するものはもちろんのこと、既に他の部材と接合されているもの、例えば固体酸化物型燃料電池の電解質と電極との接合体における電極等であってもよい。なお、この場合には第2の多孔質体12が集電体となる。
【0050】
その後、必要に応じて熱処理することにより溶媒およびバインダーを除去し、未焼成の粒状接合材13を介して第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することで、未焼成の粒状接合材13中の金属微粒子を融着させて粒状接合材13を形成すると共に、この粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0051】
第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合するための熱処理は、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上150分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が十分でなくなるおそれがある。一方、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0052】
また、上記方法に代えて、以下のような方法により粒状接合材13を形成してもよい。すなわち、焼成により第1の多孔質体11となる未焼成の第1の多孔質体11を製造する際に、この未焼成の第1の多孔質体11の接合面に凹部11aを形成する。凹部11aの形成は、例えば凸部を有するもの、具体的には複数の球状体等を接合面に押し当てるようにして窪ませることにより形成することができる。
【0053】
そして、この凹部11aを含めた接合面全体にスラリーを塗布した後、この接合面に塗布されたスラリーを凹部に掻き集めるようにして充填し、必要に応じて熱処理することにより溶媒およびバインダーを除去し、未焼成の粒状接合材13を得る。その後、全体を焼成することにより、第1の多孔質体11を得ると同時に、凹部11aに粒状接合材13を形成する。このような方法とすることで、比較的容易に所望とする形状、配置の粒状接合材13を得ることができる。また、このように第1の多孔質体11を得ると同時に凹部11aに粒状接合材13を形成することで、よりアンカー効果も得やすくなる。
【0054】
このようにして凹部11aに粒状接合材13が形成された第1の多孔質体11には、粒状接合材13を介するようにして第2の多孔質体12を重ね合わせて熱処理することで、この粒状接合材13によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0055】
また、上記したスラリーを用いる方法の他、例えば金属膜を熱処理したときに凝集する性質を利用して粒状接合材13を形成してもよい。例えば、第1の多孔質体11の接合面の全体に粒状接合材13の構成成分からなる金属膜を形成した後、これを熱処理することで金属膜を分離させつつ、粒子状に凝集させて粒状接合材13を形成してもよい。
【0056】
金属膜は、例えばメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により形成することができる。また、金属膜の分離、凝集についても熱処理により容易に行うことができ、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上720分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、金属膜の分離、凝集が十分でなく、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0057】
次に、本発明の積層構造体1の他の例について説明する。
図7は、本発明の積層構造体1の他の例を示す断面図である。この積層構造体1は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とが、少なくとも表面部が金属材料から構成される複数の短繊維15cからなる接合材15(以下、単に繊維接合材15という)によって接合されている。また、繊維接合材15における短繊維15cどうしの間の空隙部が第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間を連通させる連通部14となっている。
【0058】
このような繊維接合材15によって第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合した場合についても、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合することができる。特に、短繊維15cからなるものとすることで、その端部を第1の多孔質体11や第2の多孔質体12に食い込ませることができ、より第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合性に優れたものとすることができる。
【0059】
また、短繊維15cどうしの間には連通部14が形成されるため、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に有効に流体を透過させることができる。さらに、個々の短繊維15cの少なくとも表面部が金属材料から構成されているために、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間に十分な導電性を付与することができる。
【0060】
このような繊維接合材15については、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間の面方向の全体に配置してもよいし、また部分的に配置してもよい。繊維接合材15については、短繊維15cどうしの間に連通部14が形成されるため、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との間の面方向の全体に配置しても有効に流体を透過させることができる。
【0061】
短繊維15cの少なくとも表面部を構成する金属材料は、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを有効に接合することができるものであれば特に限定されるものではないが、積層構造体1を高温状態で使用する観点から、貴金属、およびこの合金からなるものが好ましく、例えば金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなるものが好ましい。
【0062】
短繊維15cは、少なくとも表面部が上記した金属材料からなるものであればよく、金属繊維そのものの他、例えばセラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に上記した金属材料からなる金属層を形成したものであってもよい。また、例えば、有機繊維の表面に金属層を形成したものを熱処理し、有機繊維を除去して得られる中空の金属繊維であってもよい。
【0063】
金属層を設ける場合、その厚さは0.05μm以上2μm以下が好ましく、0.1μm以上1μm以下がより好ましい。金属層が薄すぎると第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがあり、金属層が厚すぎると短繊維15cの生産性等が低下するおそれがある。
【0064】
短繊維15cは、平均繊維長が20μm以上1000μm以下であることが好ましく、50μm以上500μm以下であることがより好ましい。また、アスペクト比(繊維長/繊維径)が5以上200以下であることが好ましく、20μm以上100μm以下であることがより好ましい。平均繊維長やアスペクト比が上記範囲外となる場合、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを十分に接合することができないおそれがある。
【0065】
また、繊維接合材15の厚さは、30μm以上600μm以下であることが好ましく、30μm以上300μm以下であることがより好ましい。接合材13の厚さが上記範囲を外れると、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が低下するおそれがある。
【0066】
この積層構造体1は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、短繊維15cと、溶媒、バインダー等とを混合し、繊維接合材15を形成するためのスラリーを調製する。短繊維15cの調製は、例えば各種の繊維の表面にメッキ法、イオンプレーティング法、化学蒸着法、物理蒸着法、電気泳動法、ゾルゲル法、溶液析出法等により金属層を設けた後、必要に応じて所定の繊維長に切断することで行うことができる。
【0067】
このスラリーを、例えば第1の多孔質体11の接合面の略全面に塗布し、熱処理により溶媒およびバインダーを除去し、焼成により繊維接合材15となる未焼成の繊維接合材15を形成する。その後、未焼成の繊維接合材15を介するようにして第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することで、表面部の金属材料を融着させて短繊維15cどうしを結合して繊維接合材15を形成すると共に、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを短繊維15cにより接合し、積層構造体1を得ることができる。
【0068】
第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを接合するための熱処理は、例えば500℃以上1200℃以下の温度で、20分以上150分以下行うことが好ましい。熱処理温度が低すぎる場合または熱処理時間が短すぎる場合、短繊維15cどうし、または短繊維15cと第1の多孔質体11もしくは第2の多孔質体12とを融着させることができず、第1の多孔質体11と第2の多孔質体12との接合強度が十分でなくなるおそれがある。一方、熱処理温度が高すぎる場合または熱処理時間が長すぎる場合、第1の多孔質体11、第2の多孔質体12の機械的特性等が低下するおそれがある。
【0069】
次に、本発明の積層構造体1のさらに他の例について説明する。
図8は、本発明の積層構造体1の他の例を示す断面図である。この積層構造体1は、図1に示すような粒状接合材13と、図7に示すような繊維接合材15との双方から構成されることを特長としている。
【0070】
このように粒状接合材13と繊維接合材15とは併用することができ、この場合には粒状接合材13どうしの間に配置される繊維接合材15の連通部が実質的な連通部14となる。このようなものについては、粒状接合材13と繊維接合材15とを単独で用いた場合の効果を合わせて得ることができる。なお、粒状接合材13と繊維接合材15とは、重なるように配置されていてもよいし、重ならないように配置されていてもよい。
【0071】
このような積層構造体1は、例えば既に説明したような方法で第1の多孔質体11の接合面に粒状接合材13または未焼成の粒状接合材13を形成した後、この粒状接合材13または未焼成の粒状接合材13を含めた第1の多孔質体11の接合面の所望とする部分に既に説明したような短繊維15cを含むスラリーを塗布し、その後に第1の多孔質体11と第2の多孔質体12とを重ね合わせて熱処理することにより得ることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。
【0073】
(実施例1)
積層構造体として、接合材を金属材料から構成される粒状のものとしたものを製造した。まず、第1の多孔質体として、SOFCセルの集電体となるものを製造した。すなわち、骨材粒子となる平均粒径が15μmの球状ジルコニア粒子に無電解メッキにより約0.2μmの厚さのPdメッキ層を形成し、さらに約0.2μmの厚さのAgメッキ層を形成した。
【0074】
このAgメッキ層が形成された球状ジルコニア粒子に、Ag微粒子、溶媒、および有機バインダーを加えて混合し、ドクターブレード法により0.2mmの厚さのシート状に成形した。なお、Ag微粒子は、球状ジルコニア粒子100質量部に対して20質量部添加した。その後、大気中700℃で1時間の熱処理を行い、脱バインダと焼結とを行って集電体を得た。
【0075】
また、第2の多孔質体としてSOFCセルを用意した。セルの構成は表1に示す通りであり、緻密な電解質膜イットリア安定ジルコニア(8YSZ)の一方の主面に第2の多孔質体に相当する酸素極としてのLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.803 and 20mol%Sm−CeO2(LSCF−SDC)多孔体が形成され、他方の主面に水素極としてのNiO and 20mol% Sm−CeO2 cermet(Ni−SDC)多孔体が形成されたものである。
【0076】
【表1】
【0077】
一方、接合材を形成するためのスラリーとして、平均粒径0.6μmのAg微粒子に溶剤および有機バインダーを加えたものを調製した。そして、このスラリーをSOFCセルの酸素極の表面に直径約120μmの大きさでピッチが500μmとなるように升目状にインクジェットスプレーを用いて塗布した。その後、このSOFCセルの酸素極に先に製造した集電体を載せ、700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを複数の粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0078】
このような積層構造体については、酸素極と集電体とが粒状の接合材により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0079】
(実施例2)
実施例1の積層構造体において、接合材を少なくとも表面部が金属材料から構成される複数の短繊維からなるものとしたものを製造した。まず、接合材を構成する短繊維は、Ag被覆ポリエステル繊維(三菱マテリアル社製、商品名;シルファイバー、繊維径;17μm)の表面に無電解メッキにより厚さ約0.2μmの厚さのPdメッキ層、および約0.2μmの厚さのAgメッキ層を順に形成したものを約500μmの長さに切断し、大気中400℃まで加熱することによりポリエステル繊維を除去して中空状とした中空金属繊維とした。この中空金属繊維に溶剤および有機バインダーを加え、中空金属繊維の含有量が5質量%のスラリーを調製した。
【0080】
このスラリーを実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面全体に塗布し、大気中400℃まで加熱することにより溶剤および有機バインダーを除去した。その後、SOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを接合材における中空金属繊維で接合して積層構造体とした。
【0081】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とが接合材における中空金属繊維により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0082】
(実施例3)
実施例1の積層構造体において、粒状の接合材を金属膜の熱処理からなるものとしたものを製造した。すなわち、実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面全体にスパッタリング法により0.5μmの厚さのAg膜を形成した。その後、このAg膜を900℃に加熱することによりAg膜を分離、分散させつつ、粒状に凝集させ、粒状の接合材としての多数のAg塊を形成した。なお、このとき得られたAg塊の大きさは、1μm程度から3μm程度までであった。その後、SOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とをAg塊により接合して積層構造体とした。
【0083】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とがAg塊により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0084】
(実施例4)
実施例1の積層構造体において、集電体の凹部に粒状の接合材が形成されたものを製造した。すなわち、実施例1で作製した集電体となるシート状の成形体の接合面に粒径300μmのジルコニアビーズを均一に敷き詰め、約3kg/cm2の荷重を10時間加えた後、ジルコニアビーズを払い落としてシート状の成形体に多数の凹部を形成した。
【0085】
また、粒状の接合材を形成するためのスラリーとして、平均粒径0.6μmのAg微粒子に水および分散剤を加えたものを調製した。このスラリーを先に製造したシート状の成形体の凹部が形成された接合面に塗布し、凹部にスラリーを集めて乾燥させた。そして、大気中700℃で1時間の熱処理を行い、凹部に粒状の接合材が形成された集電体を得た。その後、この集電体を実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極に載せ、実施例1と同様に700℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とを凹部における粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0086】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とが凹部における粒状の接合材により良好に接合され、900℃までの加熱と冷却とを少なくとも20回繰り返して行っても界面で剥離することがなく、接合信頼性に優れることが認められた。また、流体透過性や導電性についても十分であることが認められた。
【0087】
(比較例1)
実施例1の積層構造体において、粒状の接合材をガラス粒子からなるものとしたものを製造した。すなわち、実施例1の積層構造体の製造において、スラリーとして、平均粒径1.1μmのガラス微粒子に溶剤および有機バインダーを加えたものを調製した。そして、このスラリーを実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極の表面に直径約280μmの大きさでピッチが1mmとなるように升目状にスプレーした。その後、このSOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を載せ、940℃で熱処理を行うことにより酸素極と集電体とをガラス粒子からなる粒状の接合材で接合して積層構造体とした。
【0088】
このような積層構造体についても、酸素極と集電体とを粒状の接合材におけるガラス粒子により接合することができたが、900℃までの加熱と冷却とを2回繰り返して行うと界面で剥離し、接合信頼性に劣ることが認められた。また、このような積層構造体については、酸素極と集電体との電気抵抗が増え、導電性にも劣ることが認められた。
【0089】
(比較例2)
実施例1の積層構造体において、特に接合材を設けないものを製造した。すなわち、実施例1で用いたものと同様のSOFCセルの酸素極に実施例1で用いたものと同様の集電体を直接載せ、700℃で熱処理を行った。このような積層構造体についても、酸素極と集電体とを接合することができたが、900℃までの加熱と冷却とを10回繰り返して行うと界面で剥離し、接合信頼性に劣ることが認められた。
【符号の説明】
【0090】
1…積層構造体、11…第1の多孔質体、11a…凹部、12…第2の多孔質体、13…粒状接合材、14…連通部、15…短繊維からなる接合材、21…骨材粒子、22…微細結晶もしくは非晶質相からなる結合部、23…導電層、24…金属粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の多孔質体と、前記第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有する積層構造体であって、
前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間には、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ前記接合材の少なくとも表面部が金属材料からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
請求項1記載の積層構造体において、
前記金属材料は、金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項3】
請求項1または2記載の積層構造体において、
前記接合材は、前記金属材料から構成され、かつ粒状であることを特徴とする積層構造体。
【請求項4】
請求項3記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、ほぼ等間隔で散点状となるように複数配置されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項5】
請求項3または4記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に設けられる凹部内に配置されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、前記粒状接合材となるスラリーをインクジェットにより前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に付着させて形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、金属膜の熱処理による凝集を利用して形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項8】
請求項1記載の積層構造体において、
前記接合材は、少なくとも表面部が前記金属材料から構成される複数の短繊維からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項9】
請求項8記載の積層構造体において、
前記短繊維は、セラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に金属層が形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項10】
請求項1または2記載の積層構造体において、
前記接合材は、前記金属材料から構成される粒状の接合材と、少なくとも表面部が前記金属材料から構成される複数の短繊維からなる接合材とからなることを特徴とする積層構造体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体から選ばれる少なくとも一方が、微細結晶もしくは非晶質相、または金属粒子により骨材粒子が部分的に接合され、かつ積層方向に連通する気孔が形成されているものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体から選ばれる少なくとも一方が、気孔に接する面に導電層が形成されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の積層構造体において、
固体酸化物型燃料電池(SOFC)または高温水蒸気電解(HTE)セルの電極と集電体との積層構造体として用いられることを特徴とする積層構造体。
【請求項14】
第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部に金属材料を有する接合材料を前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置する工程と、
前記接合材料が配置された前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とを熱処理し、前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とを前記接合材料によって接合する工程と
を有することを特徴とする積層構造体の製造方法。
【請求項1】
第1の多孔質体と、前記第1の多孔質体に積層された第2の多孔質体と、前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間に介在して両多孔質体間を接合する接合材とを有する積層構造体であって、
前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体との間には、両多孔質体間を連通させる連通部が形成され、かつ前記接合材の少なくとも表面部が金属材料からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
請求項1記載の積層構造体において、
前記金属材料は、金、銀、白金、パラジウム、およびロジウムの中から選ばれる少なくとも1種の金属からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項3】
請求項1または2記載の積層構造体において、
前記接合材は、前記金属材料から構成され、かつ粒状であることを特徴とする積層構造体。
【請求項4】
請求項3記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、ほぼ等間隔で散点状となるように複数配置されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項5】
請求項3または4記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に設けられる凹部内に配置されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、前記粒状接合材となるスラリーをインクジェットにより前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体の中から選ばれる少なくとも一方の多孔質体の接合面に付着させて形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記粒状接合材は、金属膜の熱処理による凝集を利用して形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項8】
請求項1記載の積層構造体において、
前記接合材は、少なくとも表面部が前記金属材料から構成される複数の短繊維からなることを特徴とする積層構造体。
【請求項9】
請求項8記載の積層構造体において、
前記短繊維は、セラミックス繊維、金属繊維、および有機繊維の中から選ばれる少なくとも1種の繊維の表面に金属層が形成されたものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項10】
請求項1または2記載の積層構造体において、
前記接合材は、前記金属材料から構成される粒状の接合材と、少なくとも表面部が前記金属材料から構成される複数の短繊維からなる接合材とからなることを特徴とする積層構造体。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体から選ばれる少なくとも一方が、微細結晶もしくは非晶質相、または金属粒子により骨材粒子が部分的に接合され、かつ積層方向に連通する気孔が形成されているものであることを特徴とする積層構造体。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか1項記載の積層構造体において、
前記第1の多孔質体および前記第2の多孔質体から選ばれる少なくとも一方が、気孔に接する面に導電層が形成されていることを特徴とする積層構造体。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項記載の積層構造体において、
固体酸化物型燃料電池(SOFC)または高温水蒸気電解(HTE)セルの電極と集電体との積層構造体として用いられることを特徴とする積層構造体。
【請求項14】
第1の多孔質体と第2の多孔質体との間に、少なくとも表面部に金属材料を有する接合材料を前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とに連通する連通部が形成されるように配置する工程と、
前記接合材料が配置された前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とを熱処理し、前記第1の多孔質体と前記第2の多孔質体とを前記接合材料によって接合する工程と
を有することを特徴とする積層構造体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−180104(P2010−180104A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25638(P2009−25638)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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