説明

空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法

【課題】自動運転される空冷式オイルフリーコンプレッサの寒冷地における潤滑水の凍結を防止するための簡便で確実な空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法を提供する。
【解決手段】自動運転停止時において、コンプレッサ本体の吐出温度が5℃以下になった場合に強制暖気運転を行い、5℃以上になった場合にはこの強制暖気運転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転空冷式オイルフリーコンプレッサの寒冷地等における潤滑水の凍結防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑水として水を使用するオイルフリーコンプレッサにおいては、コンプレッサの冷却用として水冷式のものと空冷式のものとがあるが、後者の場合は外気の温度低下により自動運転停止時において低温の外気によりコンプレッサが冷却され、潤滑水が凍結するという問題点が生じる。
【0003】
図3及び図4は、自動運転空冷式のオイルフリーコンプレッサ100の概要構造を示すものである。即ち、図4に示すように、オイルフリーコンプレッサ100はコンプレッサ本体1と、これを囲むケース2と、オプション仕様であるがダクト3等を有するものからなる。コンプレッサ本体1には、吸気部や圧縮空気吐出部や潤滑水の吸出部やその他の機器(図略)が設けられている。一方、ケース2には、冷却空気の導入部2aや使用済み冷却空気の出口部2bが設けられ、その出口部2bにはダクト3が着脱可能に取り付けられている。
以上の構造により、通常の自動運転時においてはコンプレッサ本体1に潤滑水が循環し、所望の圧縮空気が使用側に吐出され、コンプレッサ本体1は空冷用の空気により適温に冷却される。この冷却空気はコンプレッサ本体1等から熱を吸収し、出口部2bからダクト3を介して外部に吐出される。
【0004】
一方、自動運転を停止した場合、コンプレッサ本体1は停止し、次第にそれ自体が温度低下するが、空冷用の空気は依然として、導入口2aから入りダクト3から外部に吐出される。この空気の流れにより、コンプレッサ本体1は冷却される。このため、寒冷地等においては、自動運転を停止すると前記の空冷用の空気によりコンプレッサ本体1が冷却され、その結果、潤滑水が凍結するという問題点が生ずる。
以上のような寒冷地における凍結防止方法としては各種の従来技術があるが、例えば、「特許文献1」の如きものがある。
【特許文献1】特開平7−218181(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
「特許文献1」の「特開平7−218181」の「水配管の凍結防止装置」は、本発明のようにコンプレッサに関連するものではなく、本発明とは相違するものであるが、その凍結防止手段としては高温の排気を取り込んで凍結を防止するものである。また、開示はされてないが、その他の凍結防止手段としてはいずれからの暖気等を用いて凍結防止をするものが殆どである。
【0006】
一方、本発明に係る前記構造の空冷式オイルフリーコンプレッサ100の場合には、従来では次のような凍結防止方法を採用していた。即ち、図5に示すように寒冷地において自動運転を停止した場合には、ダクト3を取り外し、ケース2の導入部2aや出口部2bの箇所にカバー4やカバー5を取り付け、空冷用の空気の入出を阻止することでコンプレッサ本体1等の冷却を防止するようにしていた。
【0007】
しかしながら、自動運転停止時においてダクト3を取り外し、カバー4やカバー5を取り付けるといった作業は極めて面倒であり、ユーザ側からその改善が強く要請されていた。
【0008】
本発明は、以上の要請に鑑みて発明されたものであり、ダクトの取り外しやカバーの取り付け等の面倒な作業を必要とせずに、空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結を簡便に、かつ有効に防止できるようにした空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、自動運転空冷式オイルフリーコンプレッサの自動運転停止時における凍結防止方法であって、該方法は、自動運転停止時におけるコンプレッサの圧縮空気の吐出温度が5℃以下になった場合に強制暖気運転を開始し、前記吐出温度が5℃を越えた場合に前記強制暖気運転を停止することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記方法は、コンプレッサに設置してある操作パネルの寒冷地仕様設定の入力によってのみ動作されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法によれば、寒冷地等において自動運転が停止した場合に、ある温度、ここでは5℃(必ずしも5℃でなくてもよい)以下に吐出温度がなった場合に暖気運転が強制的に行われる。これにより、コンプレッサ本体の潤滑水の凍結が防止される。また、この暖気運転の結果、コンプレッサ本体が加熱されて吐出温度が5℃以上になった場合には、潤滑水の凍結の心配がなくなるため、暖気運転を停止して無駄な運転をしないようにし、電力等の浪費を防止するようにしている。
【0012】
また、請求項2の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法によれば、本発明の動作が寒冷地においてのみ動作するようにして、不必要な場合の動作を防止し、安全性の向上や経費の節減を図るようにしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法の実施の形態を図面を参照して詳述する。
図1は、本発明の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法を実施するためのコンプレッサ本体1まわりの概要構造を示す。
図示のように、コンプレッサ本体1を駆動するモータ6にはコントローラ7が連結され、このコントローラ7は操作パネル8の寒冷地仕様設定スイッチ9からの信号が入力されるように形成される。また、圧縮空気の吐出温度を検出するセンサ10がコントローラ7に連結される。以上の構成により、寒冷地仕様設定スイッチ9がONの場合には、センサ10で検出した吐出温度がコントローラ7に入力される。コントローラ7は、吐出温度が5℃以下の場合に、モータ6を作動してコンプレッサ本体1を強制暖気運転するように動作し、吐出温度が5℃以上になるとモータ6を停止し、コンプレッサ本体1の強制暖気運転を停止するように構成されている。
【0014】
図2は、本発明の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法の動作のフローチャートを示すものである。前記のように、このフローチャートによる動作は、図1の操作パネル8の寒冷地仕様設定スイッチ9がONの場合にのみ行われる。
まず、コンプレッサ本体1の自動運転が停止する(ステップ100)。ここで、吐出温度が5℃以下であるか否かが検出される(ステップ101)。吐出温度が5℃以下の場合(YESの場合)には、コンプレッサ本体1の強制暖気運転が開始される(ステップ102)。一方、吐出温度が5℃以下でない場合(NOの場合)にはステップ100に戻る。
強制暖気運転が開始し、コンプレッサ本体1が暖められると吐出温度が上昇し、前記センサ10により吐出温度が5℃以上(実際には7〜8℃)になったか否かが検出される(ステップ103)。この温度差は検出温度におけるON、OFFのチャタリングを防止するためである。そして、吐出温度が5℃以上の場合(YESの場合)には、強制暖気運転は停止する(ステップ104)。吐出温度が5℃以下の場合(NOの場合)には、ステップ102に戻る。以下、同様の動作を繰返し行う。
【0015】
以上により、潤滑水の凍結する5℃を境として強制暖気運転の開始/停止が自動的に行われるため、潤滑水の凍結が完全に防止される。また、このような動作は寒冷地仕様設定スイッチによってのみ行われるものであり、不用意に誤って動作が行われることはない。よって、安全性を確保できると共に無駄な動作を排除することができる。
【0016】
以上の説明においては、吐出温度の5℃を境界として各動作を行うようにしたが、これは5℃が凍結の可能性があると判断(実証)したためであり、環境の差によっては5℃に限定するものではない。また、図1の概要構成は説明上の都合を基にした模式的なものであり、勿論この構成に限定するものではなく、同一技術的範疇のものが適用される。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、自動運転空冷式オイルフリーコンプレッサに適用されたものであるが、オイルフリーコンプレッサのすべてに適用されると共に、水冷却される他の形式のものにも適用が可能であり、その利用範囲は広い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法を行うためのコンプレッサ本体まわりの構成要素の概要を示す模式的構成図。
【図2】本発明の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法の動作を示すフローチャート。
【図3】本発明の適用されるオイルフリーコンプレッサの模式的外観図。
【図4】図3の内部構成を示す模式図。
【図5】従来装置の凍結防止方法を示す模式図。
【符号の説明】
【0019】
1 コンプレッサ本体
2 ケース
2a 導入部
2b 出口部
3 ダクト
4 カバー
5 カバー
6 モータ
7 コントローラ
8 操作パネル
9 寒冷地仕様設定スイッチ
10 吐出温度検出のセンサ
100 オイルフリーコンプレッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転空冷式オイルフリーコンプレッサの自動運転停止時における凍結防止方法であって、該方法は、自動運転停止時におけるコンプレッサの圧縮空気の吐出温度が5℃以下になった場合に強制暖気運転を開始し、前記吐出温度が5℃を越えた場合に前記強制暖気運転を停止することを特徴とする空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法。
【請求項2】
前記方法は、コンプレッサに設置してある操作パネルの寒冷地仕様設定の入力によってのみ動作されることを特徴とする請求項1に記載の空冷式オイルフリーコンプレッサの凍結防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−68368(P2009−68368A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235459(P2007−235459)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000174987)三井精機工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】