説明

空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤ

【課題】インナーライナゴム部材を有し、ゴムの酸化劣化に起因する耐久性の低下を抑制した空気入りタイヤを効率よく作製する。
【解決手段】空気入りタイヤの作製方法は、ブチルゴムを用いてインナーライナゴム部材を作製する第1工程と、前記インナーライナゴム部材を用いて、未加硫タイヤを成形する第2工程と、前記未加硫タイヤを加硫する第3工程と、前記第2工程前の前記インナーライナゴム部材あるいは、前記第3工程後の加硫済みタイヤのインナーライナゴム部材に含まれるオイルを除去する第4工程を有する。これにより、空気入りタイヤのインナーライナゴム部材におけるJIS K6229におけるアセトン抽出量が、10重量%未満に調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナゴム部材を有する空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの耐久性は、車両の安全性を確保する上で重要な要素である。例えば、空気入りタイヤでは、走行中に交差ベルト層等がお互いに剥離するベルトセパレーションが生じてタイヤが破損することがないように、交差ベルト層に用いるベルトコートゴム等のゴム部材の特性の劣化(例えば、破断強度の劣化)を抑制することが望まれている。
ゴム特性の劣化の原因の1つとして、タイヤ空洞領域内に充填された空気の酸素がインナーライナゴム部材を透過して、コーティングゴム層等のゴムを酸化してゴム部材のゴム特性を劣化させる。また、インナーライナゴム部材を透過した酸素がビード部に配される各ゴム部材を酸化し、ゴム特性を劣化させる。
このため、インナーライナゴム部材には、空気の透過率が低いブチルゴムあるいは熱可塑性エラストマーが用いられる。インナーライナゴム部材にブチルゴムが用いられる場合、インナーライナゴム部材として用いられる前のゴムシート部材を作製する段階で、加工性を確保するためにオイルが充填される。
【0003】
例えば、再生ゴムを利用して、加工性、加硫後のガスバリヤー性、破断特性などの特性に優れた、タイヤのインナーライナゴム部材を形成するのに有用なゴム組成物、さらには、上記ゴム組成物において、JIS K6229によるアセトン抽出量が15重量%以下であるインナーライナ用ゴム組成物も知られている(特許文献1)。JIS K6229によるアセトン抽出量を15重量%以下とすることで、インナーライナ用ゴム組成物の空気透過性の増大が抑制される、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、JIS K6229によるアセトン抽出量が15重量%以下、例えば、11〜12重量%であるインナーライナ用ゴム組成物をインナーライナゴム部材に用いた場合、ゴム部材としての加工性を満足しつつ、空気透過性をある程度満足するが、必ずしも空気入りタイヤの耐久性が向上しない場合もある。
【0006】
そこで、本発明は、インナーライナゴム部材を有し、ゴムの酸化劣化に起因する耐久性の低下を抑制した空気入りタイヤを効率よく作製することができる空気入りタイヤの作製方法、およびゴムの酸化劣化に起因する耐久性の低下を抑制した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、空気入りタイヤを製造する方法である。当該方法は、
ブチルゴムを用いてインナーライナゴム部材を作製する第1工程と、
前記インナーライナゴム部材を用いて、未加硫タイヤを成形する第2工程と、
前記未加硫タイヤを加硫する第3工程と、
前記第2工程前の前記インナーライナゴム部材あるいは、前記第3工程後の加硫済みタイヤのインナーライナゴム部材に含まれるオイルを除去する第4工程を有する。
【0008】
前記第3工程後の加硫済みタイヤのインナーライナゴム部材に含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、前記加硫済みタイヤの空洞領域に不活性ガスを充填して前記加硫済みタイヤをタイヤ空洞領域の側から200kPa〜1500kPaの範囲で加圧する工程を含む、ことが好ましい。
【0009】
さらに、前記加硫済みタイヤを加圧するとき、0℃〜70℃の範囲雰囲気で加熱処理を行う、ことが好ましい。
【0010】
また、前記第2工程前の前記インナーライナゴムに含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、0℃〜70℃の範囲内で加熱処理を行う工程を含む、ことが好ましい。
【0011】
さらに、前記第2工程前の前記インナーライナゴムに含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、脱脂作用を持つ液体に浸すことにより、オイルを除去する工程を含む、ことが好ましい。
【0012】
本発明の他の一態様は、上述した空気入りタイヤの製造方法を用いて製造された空気入りタイヤであって、前記インナーライナゴム部材からオイルが除去されることにより、前記加硫済みタイヤの前記インナーライナゴム部材の、JIS K6229におけるアセトン抽出量が、前記インナーライナゴム部材において10重量%未満に調整されている。
【発明の効果】
【0013】
上述の態様の空気入りタイヤの作製方法によれば、インナーライナゴム部材を有し、ゴムの酸化劣化に起因する耐久性の低下を抑制した空気入りタイヤを効率よく作製することができる。また、上述の態様の空気入りタイヤは、ゴムの酸化劣化に起因する耐久性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのタイヤセンターラインから右半分のタイヤ断面を示すタイヤ半断面図である。
【図2】第1インナーライナゴム部材におけるアセトン抽出量とタイヤの空気圧低下率(%/月)の関係の一例を示す図である。
【図3】本実施形態の空気入りタイヤの製造方法の一例のフローを示すフローチャートである。
【図4】図3に示すフローのうち、インナーライナゴム部材のオイル除去の一例を説明する図である。
【図5】本実施形態の空気入りタイヤの製造方法の他の例のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1は、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのタイヤセンターラインCLから右半分のタイヤ断面を示すタイヤ半断面図である。
タイヤ10の「重荷重用」とは、JATMA YEAR BOOK 2008(日本自動車タイヤ協会規格)のC章に定められるタイヤをいう。本実施形態は、重荷重用空気入りタイヤであるが、JATMA YEAR BOOK 2008(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められる乗用車用タイヤあるいはB章に定められる小型トラック用タイヤであってもよい。
【0016】
タイヤ10は、図1に示されるように、スチールベルト部材12、カーカス部材14、ビード部材16を構造材として含み、トレッドゴム部材18、サイドゴム部材20、ビードフィラーゴム部材22、インナーライナゴム部材24、リムクッションゴム部材26が配されている。この他に、タイヤ10は、有機繊維あるいはスチールコードを有するビード補強材28、ベルトエッジ補強材30、ベルトエッジゴム部材32等を有する。
タイヤ10は、4枚のスチールベルト部材12が積層されているが、4枚のスチールベルト部材12に限定されない。例えば、3枚のスチールベルト部材が用いられてもよい。
これらの部材は、インナーライナゴム部材24を除き、公知の材料の部材が用いられる。
【0017】
インナーライナゴム部材24は、第1インナーライナゴム部材24aおよび第2インナーライナゴム部材24bを有する。
第1インナーライナゴム部材24aおよび第2インナーライナゴム部材24bは、いずれもブチルゴムを主に含む。第1インナーライナゴム部材24aは、例えば、臭素化ブチルゴム(日本ブチル社製:Bromobutyl2255、Bromobutyl2244)、塩素化ブチルゴム(日本ブチル製Chlobuty1066)、ブチルゴム(日本ブチル社製:Butyl268)等が好適に用いられる。空気透過率を抑えるためにJIS K6229におけるアセトン抽出量が、第1インナーライナゴム部材24aにおいて10重量%未満に調整されている。一方、第2インナーライナゴム部材24bは、他のゴム部材とインナーライナゴム部材24の接着性の向上のために設けられ、例えば臭素化ブチルゴム(日本ブチル社製:Bromobutyl2255、Bromobutyl2244)または塩素化ブチルゴムと天然ゴム(例えば、タイTSR社製STR20)との混合組成物等が好適に用いられる。
【0018】
本実施形態では、第1インナーライナゴム部材24aおよび第2インナーライナゴム部材24bの2層がインナーライナゴム部材24として用いられるが、1層のインナーライナゴム部材が用いられてもよい。この場合、インナーライナゴム部材は、JIS K6229におけるアセトン抽出量が10重量%未満に調整されている。以下、第1インナーライナゴム部材24aのアセトン抽出量を代表して説明するが、第2インナーライナゴム部材24bのアセトン抽出量についても、10重量%未満に調整されている。
【0019】
第1インナーライナゴム部材24aにおけるアセトン抽出量を測定するために切り出される試験片の位置は、特に限定されない。トレッド部分、サイド部分、あるいはビード部分に位置する第1インナーライナゴム部材24aの領域から切り出される。
アセトン抽出量は、第1インナーライナゴム部材24aから切り出された試験片を一定時間アセトン中に浸したとき、試験片に含まれるオイルがアセトンに溶融する。このオイルを含んだアセトンを留去することにより、オイルを抽出し、オイルの重量を計測する。
このように、アセトンを用いてオイルを抽出するが、第1インナーライナゴム部材24aには、比較的多くのオイルが含まれている。これは、主に、第1インナーライナゴム部材24aがゴムシート形状に加工されるときの加工性向上のために、オイルを含有させるからである。オイルとして、例えばプロセスオイル(富士興産社製P−100)が用いられる。
【0020】
また、第1インナーライナゴム部材24aには、加硫剤として硫黄(細川化学社製粉末硫黄)、およびノクセラーDM(大内新興化学工業社製)等の加硫促進剤、あるいは、ステアリン酸等の加工助剤(例えば、日本油脂社工業用ステアリン酸)も含まれる。しかし、これらの量は加工性を高めるためのオイルに比べて極めて少なく、アセトンにより抽出される成分は、加工性を高めるためのオイルが支配的である。このようなオイルは、上述したように、ブチルゴムの酸素透過率を低下させる。したがって、タイヤ10のベルトコートゴム等のゴムの酸素劣化を抑制するためには、第1インナーライナゴム部材24aのアセトン抽出量は低いことが好ましい。
本実施形態では、JIS K6229におけるアセトン抽出量が10重量%未満に調整されている。この点については、後述する。
【0021】
タイヤ10として用いられる第1インナーライナゴム部材24aは、例えば、タイヤ10が未加硫タイヤである時点で上記アセトン抽出量が10重量%未満になるように脱脂処理が施されてもよいし、タイヤ加硫後のタイヤ10の作製後、第1インナーライナゴム部材24aのオイルを除去するように処理が施されてもよい。
【0022】
図2は、第1インナーライナゴム部材24aのJIS K6229におけるアセトン抽出量(重量部)とタイヤの空気圧低下率(%/月)の関係の一例を示す図である。この例では、臭素化ブチルのゴム部材を第1インナーライナゴム部材24aとして用いて図1に示すようなタイヤ10(タイヤサイズ11R22.5)を試作して空気圧低下量を調べた結果である。
【0023】
第1インナーライナゴム部材24aに、富士興産製P−100のオイルを加工性向上のために含有させ、さらに、加硫剤として硫黄(細川化学社製粉末硫黄)、加硫促進剤としてノクセラーDM(大内新興化学工業社製)等を、また加工助剤としてステアリン酸を含有させた。タイヤを適正なリムに組みつけた後、タイヤ空気圧として700(kPa)となるように空気を充填した。空気圧低下量は、雰囲気温度70℃、大気圧の条件でタイヤ10を1ヶ月間放置したときの空気圧の低下量を示す。
【0024】
図2に示すように、アセトン抽出量は、10重量%未満に調整されることにより、空気圧低下量は6.5%未満となる。空気圧低下量6.5%(%/月)は、タイヤ10の耐久性の低下が抑制される許容限界である。したがって、アセトン抽出量は、10重量%未満に調整される。
特に、アセトン抽出量が3重量%以下であることがより好ましい。アセトン抽出量が3%以下になると、空気圧低下率は略5%(%/月)以下となり、しかも、空気の透過が大幅に抑制される。これにより、タイヤ10の耐久性の低下が大幅に抑制される。
したがって、第1インナーライナゴム部材24aのアセトン抽出量が、10重量%未満に調整されることにより、より好ましくは、3重量%以下に調整されることにより、タイヤ空洞領域に充填された空気が第1インナーライナゴム部材24を透過してベルトコートゴムやビード部のゴム部材等を酸化劣化させる機会は少なくなり、タイヤ10の耐久性の低下は抑制され得る。
【0025】
図3は、上述したタイヤ10を作製する方法の一例のフローを示すフローチャートである。
まず、臭素化ブチルゴムを用いたインナーライナゴム部材が作製される(ステップS10)。例えば、インナーライナゴム部材は、臭素化ブチルゴムに、補強剤や加硫促進助剤としてカーボンブラック(東海カーボン社製シーストV等)や酸化亜鉛(正同化学工業社製酸化亜鉛3種等)を、また加工性向上のためにプロセスオイル(富士興産製P−100)等が含有され、更に前記加硫剤や加硫促進剤および加工助剤を含有した臭素化ブチルゴム組成物が混錬された後、ローラにて圧延されて所定の寸法のシート状のインナーライナゴム部材が作製される。なお、加工性の向上とは、ゴムの分散不良、温度によるインナーライナゴム部材の収縮による目標寸法に対するずれ、シート部材の厚さのばらつき等が低減されることをいう。
【0026】
次に、インナーライナゴム部材中のオイルが除去される(ステップS20)。例えば、加熱処理が行われる。加熱処理では、例えば恒温槽においてインナーライナゴム部材を、例えば0〜70℃の温度範囲で、例えば3分〜2時間(加熱時間)程度放置されることにより、加熱処理が施される。加熱温度および加熱時間は、含まれるオイルの量および希望する脱脂量によって適宜設定される。
【0027】
加熱処理の代わりに、化学的処理によりオイルの除去が行われてもよい。例えば、図4に示すように、圧延工程のローラから搬送されるシート状のインナーライナゴム部材Iが、アルカリ水、アセトン、あるいはヘキサン等の脱脂効果を有する液体42を備えた脱脂槽40を通して、液体42中に浸された後、温風ファン44で乾燥されて、ロール状に巻き取られて、成形工程に搬送される。なお、脱脂層40では、脱脂効果を有する液体を加圧することが、インナーライナゴム部材Iの脱脂効果をより発揮させる点で好ましい。
インナーライナゴム部材中のオイルが除去されることにより、JIS K6229におけるアセトン抽出量が10重量%未満に調整される。オイルの除去は、脱脂槽40の通過時間や加圧の程度によって調整され得る。
【0028】
次に、上記インナーライナゴム部材を用いて未加流タイヤが成形される(ステップS30)。成形は、タイヤ成形装置を用いて行われる。具体的には、インナーライナゴム部材Iが第1インナーライナゴム部材24aとしてタイヤ成形装置のドラム上に巻きつけられた後、別途用意された第2インナーライナゴム部材24bが第1インナーライナゴム部材24aの上層に巻きつけられる。この後、第2インナーライナゴム部材24bが設けられたドラム上にカーカス部材14、ビード部材16、ビードフィラーゴム部材22、サイドゴム部材20等が順次配されて、未加硫タイヤ本体部が形成される。この後、別途作製されて積層したスチールベルト部材12と未加流タイヤ本体部とが接合され、最後にトレッドゴム部材18が貼り付けられて未加硫タイヤが所定の形状に作製される。
【0029】
最後に、成形された未加硫タイヤが加硫される(ステップS40)。加硫は、加硫装置を用いて、金型でタイヤ形状が確保されながら、タイヤ内周面側から所定の圧力と熱が加えられて加硫される。
こうして、第1インナーライナゴム部材24aにおける、アセトン抽出量が10重量%未満に調整されたタイヤ10が作製される。
【0030】
図5は、上述したタイヤ10を作製する方法の他の例のフローを示すフローチャートである。
まず、臭素化ブチルゴムを用いた第1インナーライナゴム部材が作製される(ステップS50)。例えば、臭素化ブチルゴムに、加工性を向上させるための富士興産製P−100等のプロセスオイル、加硫促進剤、あるいは加工助剤等が含有されて臭素化ブチルゴム組成物が混錬された後、ローラにて圧延されて所定の寸法のシート状の第1インナーライナゴム部材が作製される。更に、第1インナーライナゴム部材同様に、臭素化ブチルゴムまたは塩素化ブチルゴムと天然ゴムを用いた第2インナーライナゴム部材が作製される(ステップS50)。なお、加工性の向上とは、ゴムの分散不良、温度によるインナーライナゴム部材の収縮による目標寸法に対するずれ、シート部材の厚さのばらつき等が低減されることをいう。
【0031】
次に、上記インナーライナゴム部材を用いて未加流タイヤが成形される(ステップS60)。成形は、タイヤ成形装置を用いて行われる。具体的には、インナーライナゴム部材Iが第1インナーライナゴム部材24aとしてタイヤ成形装置のドラム上に巻きつけられた後、別途用意された第2インナーライナゴム部材24bが第1インナーライナゴム部材24aの上層に巻きつけられる。この後、第2インナーライナゴム部材24bが設けられたドラム上にカーカス部材14、ビード部材16、ビードフィラーゴム部材22、サイドゴム部材20等が順次配され、未加硫タイヤ本体部が形成される。この後、別途作製されて積層したスチールベルト部材12と未加流タイヤ本体部とが接合され、最後にトレッドゴム部材18が貼り付けられて未加硫タイヤが所定の形状に作製される。
【0032】
次に、成形された未加硫タイヤが加硫される(ステップS70)。加硫は、加硫装置を用いて、金型でタイヤ形状が確保されながら、タイヤ内周面側から所定の圧力と熱が加えられて加硫される。
【0033】
加硫後、第1インナーライナゴム部材24aのオイルが除去される(ステップS80)。具体的には、ステップS70で作製された加硫済みタイヤを適正なリムに組み、タイヤ空洞領域に不活性ガスを充填して加硫済みタイヤをタイヤ空洞領域の側から200kPa〜1500kPaの範囲で加圧する。加硫済みタイヤを加圧するとき、0℃〜70℃の範囲雰囲気で加熱処理を行うことが好ましい。オイル除去の処理は、3分〜2時間行われる。この処理時間および加熱温度は、第1インナーライナゴム部材24aに含まれるオイルの量および希望する脱脂量によって適宜設定される。
不活性ガスは、例えば、窒素ガスが用いられる。アルゴンガス等の長周期表第18族のガスが用いられてもよい。
加硫後のタイヤは、適正なリムに組まれて、タイヤ空洞領域に充填された不活性ガスが、タイヤ空洞領域の内周面側から200kPa〜1500kPaの範囲で加圧することにより、第1インナーライナゴム部材24aに含まれるオイルが、トレッド部等のタイヤ外周面に染み出して、第1インナーライナゴム部材24aに含まれるオイルが除去される。特に、加熱処理をすることで、より効果的にオイルが除去され得る。なお、本実施形態では、第1インナーライナゴム部材24aを代表して説明したが、第2インナーライナゴム部材24bについても、同様のオイルの除去をすることができる。
【0034】
このように、本実施形態では、第1インナーライナゴム部材24aのオイルの除去は、未加流タイヤの成形前のゴム部材の状態で行うことができる他、加硫後のタイヤ10の状態で行うこともできる。
したがって、インナーライナゴム部材の加工性を確保しつつ、タイヤ10における空気透過性を低く抑えることができ、ゴムの酸化劣化に起因するタイヤ10の耐久性の低下を抑制することができる。
【0035】
以上、本発明の空気入りタイヤの製造方法および空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0036】
10 空気入りタイヤ
12 スチールベルト部材
14 カーカス部材
16 ビード部材
18 トレッドゴム部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 インナーライナゴム部材
26 リムクッションゴム部材
28 ビード補強材
30 ベルトエッジ補強材
32 ベルトエッジゴム部材
40 脱脂槽
42 液体
44 温風ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤを製造する方法であって、
ブチルゴムを用いてインナーライナゴム部材を作製する第1工程と、
前記インナーライナゴム部材を用いて、未加硫タイヤを作製する第2工程と、
前記未加硫タイヤを加硫する第3工程と、
前記第2工程前の前記インナーライナゴム部材あるいは、前記第3工程後の加硫済みタイヤのインナーライナゴム部材に含まれるオイルを除去する第4工程を有する、ことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第3工程後の加硫済みタイヤのインナーライナゴム部材に含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、前記加硫済みタイヤの空洞領域に不活性ガスを充填して前記加硫済みタイヤをタイヤ空洞領域の側から200kPa〜1500kPaの範囲で加圧する工程を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記加硫済みタイヤを加圧するとき、0℃〜70℃の範囲雰囲気で加熱処理を行う、請求項2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第2工程前の前記インナーライナゴムに含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、0℃〜70℃の範囲内で加熱処理を行う工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記第2工程前の前記インナーライナゴムに含まれるオイルを除去するとき、前記第4工程は、脱脂作用を持つ液体に浸すことにより、オイルを除去する工程を含む、請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法を用いて製造された空気入りタイヤであって、前記インナーライナゴム部材からオイルが除去されることにより、前記加硫済みタイヤの前記インナーライナゴム部材の、JIS K6229におけるアセトン抽出量が、前記インナーライナゴム部材において10重量%未満に調整されたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−24977(P2012−24977A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163933(P2010−163933)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】