説明

空気入りタイヤ及びその製造方法

【課題】生産コストの上昇及び質量の増加を抑えつつ、剛性向上を達成しうる、空気入りタイヤの製造方法の提供。
【解決手段】この製造方法は、その曲率半径Rが700mm以下のトレッドを有する空気入りタイヤを対象とする。この製造方法は、複数のコード42とトッピングゴム44とからなり、これらコード42が幅方向に並んで配置されており、その一端46aからこの一端46aに最も近い一のコード42aの中心までの幅方向距離DAがその他端46bからこの他端46bに最も近い他のコード42cの中心までの幅方向距離DCよりも大きく、この幅方向距離DAとこの幅方向距離DCとの和(DA+DC)が隣り合うコード42の中心間距離DBよりも大きい、リボン40が得られる工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、様々な部材を組み合わせて構成される。この部材のひとつに、バンドがある。バンドは、トレッドとカーカスとの間に設けられる。
【0003】
バンドは、リボンを用いて形成される。図5に示されているのが、このリボン2である。リボン2は、複数のコード4とトッピングゴム6とからなる。図示されているように、このリボン2には3本のコード4が含まれている。各コード4は、リボン2の長さ方向に延在している。
【0004】
図6には、加硫工程前にあるバンド8の断面が示されている。バンド8は、リボン2を実質的に周方向に延在させつつ、カーカスの外面(図中、二点鎖線OL)に沿って螺旋状に巻回して形成される。前述したように、コード4はリボン2の長さ方向に延在している。このため、バンド8におけるコード4は、実質的に周方向に延在しつつ、螺旋状に巻回されている。このようなコード4は、ジョイントレスコードとも称される。
【0005】
タイヤにおいて、バンド8は高速走行時の直進安定性に寄与しうる。このバンド8を備えたタイヤが、特開2008−6892公報、特開平4−355121号公報、特開平8−132822号公報及び特開2003−260906公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−6892公報
【特許文献2】特開平4−355121号公報
【特許文献3】特開平8−132822号公報
【特許文献4】特開2003−260906公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示されているのは、リボン2の断面である。3本のコード4は、リボン2の幅方向に並んで配置されている。これらコード4は、右から順に第一コード4a、第二コード4b及び第三コード4cと称される。リボン2の一端10aに最も近いのが、第一コード4aである。リボン2の他端10bに最も近いのが、第三コード4cである。
【0008】
図7において、両矢印DAで示されているのはリボン2の一端10aから第一コード4aの中心までの幅方向距離である。両矢印DB1で示されているのは、第一コード4aの中心から第二コード4bの中心までの幅方向距離である。両矢印DB2で示されているのは、第二コード4bの中心から第三コード4cの中心までの幅方向距離である。両矢印DCで示されているのは、第三コード4cの中心からリボン2の他端10bまでの幅方向距離である。
【0009】
図6に示されているように、バンド8は、その断面において、隣り合うコード4の断面の間隔が一定となるように構成される。このため、リボン2においては、各コード4は、距離DAと距離DCとが同等であり、距離DB1と距離DB2とが同等であり、距離DAと距離DCとの和が距離DB1及び距離DB2のそれぞれと同等となるように配置される。
【0010】
このリボン2においては、距離DB1と距離DB2とが同等であるので、第一コード4a、第二コード4b及び第三コード4cで構成されるコード群の中心(図7中の符号P0)は、第二コード4の中心と一致している。さらに距離DAが距離DCと同等であるので、このコード群の中心P0は幅方向におけるリボン2の中心(図7中の一点鎖線C0)と一致している。
【0011】
上記リボン2を用いてバンド8を形成する場合、コード4にテンションがかかりにくいという問題がある。この場合、バンド8による締め付け力が不足し、走行中にタイヤがよれることがある。このようなタイヤは、操縦安定性に劣る。この傾向は、そのトレッドが小さな曲率半径を有するタイヤにおいて顕著である。
【0012】
操縦安定性の向上の観点から、部材を追加して、タイヤのトレッドの部分の剛性が高められることがある。部材の追加は、生産コストの上昇、タイヤ質量の増加等の別の問題を招来する。
【0013】
本発明の目的は、生産コストの上昇及び質量の増加を抑えつつ、剛性向上を達成しうる、空気入りタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る製造方法は、その曲率半径Rが700mm以下のトレッドを有する空気入りタイヤを対象としている。この製造方法は、
(1)複数のコードとトッピングゴムとからなり、これらコードが幅方向に並んで配置されており、その一端からこの一端に最も近い一のコードの中心までの幅方向距離DAがその他端からこの他端に最も近い他のコードの中心までの幅方向距離DCよりも大きく、この幅方向距離DAとこの幅方向距離DCとの和(DA+DC)が隣り合うコードの中心間距離DBよりも大きい、リボンが得られる工程、
(2)このリボンを実質的に周方向に螺旋状に巻回してバンドを形成して、ローカバーが得られる工程
及び
(3)このローカバーが、モールド内で加圧及び加熱される工程
を含む。
【0015】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記コードの中心間距離DBは3.3mm以下である。
【0016】
好ましくは、この空気入りタイヤの製造方法では、上記リボンに含まれるコードの本数は2本以上6本以下である。
【0017】
本発明に係る空気入りタイヤは、その曲率半径Rが700mm以下のトレッドと、それぞれがこのトレッドの半径方向内側に位置する一対のビードと、このトレッドの半径方向内側において一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このトレッドとこのカーカスとの間に位置するバンドとを備えている。このバンドは、リボンを実質的に周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されている。このリボンは、複数のコードとトッピングゴムとからなる。これらコードは、幅方向に並んで配置されている。このリボンの一端からこの一端に最も近い一のコードの中心までの幅方向距離DAは、このリボンの他端からこの他端に最も近い他のコードの中心までの幅方向距離DCよりも大きい。この幅方向距離DAとこの幅方向距離DCとの和(DA+DC)は、隣り合うコードの中心間距離DBよりも大きい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る製造方法によれば、生産コストの上昇及び質量の増加を抑えつつ、剛性向上が達成された空気入りタイヤが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
【図2】図2は、図1に示されたタイヤのバンドの一部が示された断面図である。
【図3】図3は、図2に示されたバンドの形成に用いられたリボンの一部が示された斜視図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、従来タイヤのバンドの形成に用いられるリボンの一部が示された斜視図である。
【図6】図6は、図5のリボンを用いて形成されたバンドの一部が示された断面図である。
【図7】図7は、図5のVII−VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0021】
図1に示されたタイヤ12は、トレッド14、サイドウォール16、ビード18、カーカス20、バンド22、インナーライナー24及びチェーファー26を備えている。このタイヤ12は、チューブレスタイプである。このタイヤ12は、二輪自動車に装着される。この図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ12は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ12の赤道面を表す。
【0022】
トレッド14は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。トレッド14は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド14は、トレッド面28を備えている。トレッド面28は、路面と接地する。
【0023】
図1において、符号Rで示されているのは、このトレッド14の曲率半径である。このタイヤ12では、このトレッド14の曲率半径Rは700mm以下である。このトレッド14は、小さな曲率半径Rを有する。このタイヤ12では、直進走行時には、トレッド14の赤道面の部分(クラウン領域)が主として接地する。旋回走行時には、このクラウン領域よりも軸方向外側の領域、換言すれば、サイドウォール16に近いトレッド14の部分(ショルダー領域)が主として接地する。なお、本明細書では、この曲率半径Rは、このタイヤ12の製造に用いられるモールド(図示されず)のキャビティ面における、トレッド面28の曲率半径で表される。トレッド面28に溝が刻まれている場合は、この溝がないと仮定した仮想トレッド面の曲率半径が、曲率半径Rとされる。この曲率半径Rの中心は、赤道面上にある。
【0024】
サイドウォール16は、トレッド14の端30から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール16は、架橋ゴムからなる。サイドウォール16は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール16は、カーカス20の外傷を防止する。
【0025】
ビード18は、サイドウォール16よりも半径方向略内側に位置している。ビード18は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32は、リング状である。コア32は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア32にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス34は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0026】
カーカス20は、第一カーカスプライ36a及び第二カーカスプライ36bからなる。第一カーカスプライ36a及び第二カーカスプライ36bは、両側のビード18の間に架け渡されており、トレッド14及びサイドウォール16の内側に沿っている。第一カーカスプライ36a及び第二カーカスプライ36bは、コア32の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。
【0027】
図示されていないが、第一カーカスプライ36a及び第二カーカスプライ36bは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス20はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。バイアス構造のカーカス20が採用されてもよい。
【0028】
バンド22は、トレッド14とカーカス20との間に位置している。バンド22は、半径方向においてカーカス20の外側に積層されている。このタイヤ12では、バンド22の端38はトレッド14の端30の近傍に位置している。このバンド22は、トレッド14の内側に沿ってこのトレッド14の一端30aから他端(図示されず)に向かって延在している。
【0029】
図示されていないが、バンド22は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このコードの繊度は、500dtex以上2100dtexである。なお、その材質がスチールとされたコードが用いられてもよい。この場合、コードの線径は、0.15mm以上0.45mmである。
【0030】
図2に示されているのは、加硫工程前にあるバンド22の断面である。この図2において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。図2中、二点鎖線OLで示されているのはカーカス20の外面である。
【0031】
このタイヤ12では、バンド22は、リボン40を実質的に周方向に延在させつつ、螺旋状に巻回して形成される。図示されているように、バンド22の断面には多数のリボン40の断面が含まれている。このバンド22においては、一のリボン40の断面と、この一のリボン40の断面の隣に位置する他のリボン40の断面との間には隙間は設けられていない。このバンド22は、リボン40が密に巻回されることにより形成されている。
【0032】
図3には、リボン40が示されている。リボン40は、複数のコード42とトッピングゴム44とからなる。図示されているように、このタイヤ12のリボン40には3本のコード42が含まれている。前述したように、バンド22はリボン40を実質的に周方向に延在させつつ、螺旋状に巻回して形成される。リボン40に含まれるコード42はそれぞれ、リボン40の長さ方向に延在している。このため、バンド22に含まれるコード42は、実質的に周方向に延びており、螺旋状に巻かれている。このコード42は、ジョイントレスコードと称される。
【0033】
このタイヤ12では、コード42が赤道面に対してなす角度の絶対値は、5°以下、特には2°以下である。本発明では、赤道面に対してなす角度の絶対値が5.0°以下である方向は、「実質的な周方向」とされる。このバンド22は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このバンド22は、タイヤ12の半径方向の剛性に寄与しうる。このタイヤ12では、走行時に作用する遠心力の影響が抑制されている。
【0034】
図4には、リボン40の断面が示されている。3本のコード42は、このリボン40の幅方向に並んで配置されている。これらコード42は、右から順に第一コード42a、第二コード42b及び第三コード42cと称される。リボン40の一端46aに最も近いのが、第一コード42aである。リボン40の他端46bに最も近いのが、第三コード42cである。
【0035】
図4において、符号Paで示されているのは第一コード42aの中心である。符号Pbで示されているのは、第二コード42bの中心である。符号Pcで示されているのは、第三コード42cの中心である。両矢印DAで示されているのはリボン40の一端46aから第一コード42aの中心Paまでの幅方向距離である。両矢印DB1で示されているのは、第一コード42aの中心Paから第二コード42bの中心Pbまでの幅方向距離である。この幅方向距離DB1は、隣り合うコード42の中心間距離である。両矢印DB2で示されているのは、第二コード42bの中心Pbから第三コード42cの中心Pcまでの幅方向距離である。この幅方向距離DB2は、隣り合うコード42の中心間距離である。両矢印DCで示されているのは、第三コード42cの中心Pcからリボン40の他端46bまでの幅方向距離である。そして、一点鎖線C0はこのリボン40の幅方向における中心を表している。
【0036】
このタイヤ12では、中心間距離DB1と中心間距離DB2とは同等である。このため、第一コード42a、第二コード42b及び第三コード42cからなるコード群の幅方向における中心は、第二コード42bの中心Pbと一致する。
【0037】
このタイヤ12では、幅方向距離DAは幅方向距離DCよりも大きい。換言すれば、この幅方向距離DAと幅方向距離DCとは同等ではない。このため、コード群の中心Pbの位置はリボン40の幅方向中心C0から他端46bの側にずれている。このリボン40においては、コード群は、他端46bの側に偏って配置されている。
【0038】
このタイヤ12は、次のようにして製造される。複数のコード42がトッピングゴム44とともに押し出され、リボン40が得られる。このリボン40は、カーカスプライ36、ビード18、トレッド14等の部材とともに、フォーマー(図示されず)に供給される。このフォーマーでは、カーカスプライ36は巻回され、筒状とされる。筒状とされたカーカスプライ36に、ビード18が組み合わされる。ビード18が所定の位置に到達すると、このビード18を構成するエイペックス34が押し倒される。カーカスプライ36が、コア32の周りで折り返される。リボン40が、バンド22の他端(図示されず)に相当する位置からからその一端38aに相当する位置に向かってカーカスプライ36に沿って巻回される。これにより、バンド22が形成される。トレッド14等の部材がさらに組み合わされ、ローカバー(未架橋タイヤとも称される)が得られる。
【0039】
この製造方法では、リボン40が、バンド22の一端38aに相当する位置からその他端(図示されず)に相当する位置に向かって巻回されて、このバンド22が形成されてもよい。2本のリボン40をそれぞれ、タイヤ12の赤道に相当する位置からバンド22の端38に相当する位置に向かって巻回すことにより、このバンド22が形成されてもよい。
【0040】
ローカバーは、開かれたモールド(図示されず)に投入される。投入のとき、ブラダー(図示されず)は収縮している。投入により、ブラダーはローカバーの内側に位置する。ガスの充填により、ブラダーが膨張する。この膨張により、ローカバーは変形する。モールドが締められて、ブラダーの内圧が高められる。ローカバーは、モールドのキャビティ面とブラダーの外面とに挟まれて、加圧される。ローカバーは、ブラダー及びモールドからの熱伝導により、加熱される。ローカバーのゴム組成物は、加圧と加熱とにより流動する。加熱により、ゴム組成物が架橋反応を起こして、タイヤ12が得られる。
【0041】
前述したように、このタイヤ12のトレッド14は小さな曲率半径Rを有する。この製造方法では、バンド22は、コード群の中心Pbがその中心C0からずれたリボン40を用いて形成される。コード群が幅方向に偏在しているので、トレッド14の曲率半径Rが小さいにもかかわらず、このバンド22の形成に際して、コード42にテンションがかかりやすい。このタイヤ12では、従来の、コード群の中心がリボンの中心と一致しているリボンから形成されたバンドに比して、バンド22による締め付け力が向上しうる。このバンド22は、タイヤ12のトレッド14の部分の剛性を向上しうる。このタイヤ12は、走行中によれにくい。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。
【0042】
この製造方法では、幅方向距離DAと幅方向距離DCとの和(DA+DC)が中心間距離DB1よりも大きくなるように、リボン40における各コード42の配置が調整されている。このリボン40においては、中心間距離DB1は過大でない。この製造方法によれば、コード群がバンド22による締め付け力の向上に効果的に寄与しうる。このバンド22は、トレッド14の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。
【0043】
この製造方法では、幅方向距離DAと幅方向距離DCとの和(DA+DC)が中心間距離DB2よりも大きくなるように、リボン40における各コード42の配置が調整されている。このリボン40においては、中心間距離DB2は過大でない。この製造方法によれば、コード群がバンド22による締め付け力の向上に効果的に寄与しうる。このバンド22は、トレッド14の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。
【0044】
この製造方法では、トレッド14の剛性を向上させるために、他の部材の追加は要しない。この製造方法によれば、生産コストの上昇及び質量の増加を抑えつつ、剛性向上が達成されたタイヤ12が得られうる。
【0045】
この製造方法では、中心間距離DB1は3.3mm以下が好ましい。この距離DB1が3.3mm以下に設定されることにより、リボン40の剛性が適切に維持されうる。このリボン40の幅は、過大でない。このリボン40では、その端にシワが生じにくいので、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうる。この製造方法は、高品質なタイヤ12の安定生産に寄与しうる。ルースの発生防止の観点から、この中心間距離DB1は0.02mm以上が好ましい。
【0046】
この製造方法では、中心間距離DB2は3.3mm以下が好ましい。この距離DB2が3.3mm以下に設定されることにより、リボン40の剛性が適切に維持されうる。このリボン40の幅は、過大でない。このリボン40では、その端にシワが生じにくいので、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうる。この製造方法は、高品質なタイヤ12の安定生産に寄与しうる。ルースの発生防止の観点から、この中心間距離DB2は0.02mm以上が好ましい。
【0047】
この製造方法では、上記幅方向距離DAと幅方向距離DCとの和(DA+DC)の、上記中心間距離DB1に対する比率は、1.1以上3.0以下が好ましい。この比率が1.1以上に設定されることにより、コード群がバンド22による締め付け力の向上に効果的に寄与しうる。このバンド22は、トレッド14の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率は1.3以上がより好ましい。この比率が3.0以下に設定されることにより、リボン40の剛性が適切に維持されうる。このリボン40の幅は、過大でない。このリボン40では、その端にシワが生じにくいので、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうる。この観点から、この比率は2.0以下がより好ましい。
【0048】
この製造方法では、上記幅方向距離DAと幅方向距離DCとの和(DA+DC)の、上記中心間距離DB2に対する比率は、1.1以上3.0以下が好ましい。この比率が1.1以上に設定されることにより、コード群がバンド22による締め付け力の向上に効果的に寄与しうる。このバンド22は、トレッド14の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率は1.3以上がより好ましい。この比率が3.0以下に設定されることにより、リボン40の剛性が適切に維持されうる。このリボン40の幅は、過大でない。このリボン40では、その端にシワが生じにくいので、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうる。この観点から、この比率は2.0以下がより好ましい。
【0049】
上記幅方向距離DAの上記幅方向距離DCに対する比率は、1.5以上7以下が好ましい。この比率が1.5以上に設定されることにより、リボン40のコード群が幅方向に偏って配置される。このため、コード群がバンド22による締め付け力の向上に効果的に寄与しうる。このバンド22は、トレッド14の部分の剛性に効果的に寄与しうる。このタイヤ12は、操縦安定性に優れる。この観点から、この比率は1.6以上がより好ましい。この比率が7以下に設定されることにより、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうる。この観点から、この比率は、4.5以下がより好ましい。
【0050】
この製造方法では、バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうるという観点から、軸方向距離DAは10mm以下が好ましい。コード42が露出することなくリボン40が安定に生産されうるという観点から、軸方向距離DCは0.25mm以上が好ましい。
【0051】
この製造方法では、タイヤ12のバンド22が剛性に適切に寄与しうるという観点から、リボン40に含まれるコード42の本数は2本以上が好ましい。生産コストの上昇及び質量の増加が抑制されうるという観点から、このリボン40に含まれるコード42の本数は6本以下が好ましい。
【0052】
図4において、両矢印Wはリボン40の幅を表している。この製造方法では、リボン40の巻回しが容易という観点から、この幅Wは3.5mm以上が好ましい。バンド22の形成時におけるエア残り等のトラブルの発生が防止されうるという観点から、この幅Wは15mm以下が好ましい。
【0053】
本発明では、タイヤ12の各部材の寸法及び角度は、タイヤ12が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ12に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ12には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ12が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ12が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0055】
[実施例1]
図1に示された構造を備えた二輪自動車用タイヤを製作した。このタイヤのサイズは、「160/60ZR17」である。この製作に際しては、3本のコードとトッピングゴムとからなるリボンが準備された。このリボンを実質的に周方向に螺旋状に巻回して、バンドを形成し、ローカバーが準備された。このローカバーが、モールド内で加圧及び加熱された。なお、バンドの形成に用いたリボンの軸方向距離DAは1.5mmであり、軸方向距離DCは0.5mmであり、隣り合うコードの中心間距離DBは1.5mmである。したがって、このリボンにおいては、軸方向距離DAが軸方向距離DCよりも大きく、この軸方向距離DAと軸方向距離DCとの和(DA+DC)が中心間距離DBよりも大きくなるように、各コードが配置されている。このタイヤのトレッドの曲率半径Rは、100mmである。
【0056】
[比較例1及び3−6]
幅方向距離DA、幅方向距離DC及び中心間距離DB並びにコードの本数を下記表1の通りとした他実施例1と同様にして、比較例1及び3−6のタイヤを得た。
【0057】
[比較例2]
バンドとカーカスとの間にベルトをさらに設けた他は比較例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。このベルトは、内側層及び外側層からなる。内側層及び外側層のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、17°である。内側層のコードの傾斜方向は、外側層のコードの傾斜方向とは逆である。このコードは、ナイロン繊維からなる。
【0058】
[実施例2−6及び比較例7]
曲率半径Rを下記表2の通りとした他実施例1と同様にして、実施例2−6及び比較例7のタイヤを得た。
【0059】
[比較例8]
幅方向距離DA、幅方向距離DC及び曲率半径Rを下記表2の通りとした他実施例1と同様にして、比較例8のタイヤを得た。
【0060】
[実施例7−11及び比較例10]
コードの本数を下記表3の通りとした他実施例1と同様にして、実施例7−11及び比較例10のタイヤを得た。
【0061】
[比較例9]
幅方向距離DA、幅方向距離DC及びコードの本数を下記表3の通りとした他実施例1と同様にして、比較例9のタイヤを得た。
【0062】
[実施例12−14]
幅方向距離DA、幅方向距離DC及び中心間距離DBを下記表4の通りとした他実施例1と同様にして、実施例12−14のタイヤを得た。
【0063】
[実施例15−19]
幅方向距離DA、幅方向距離DC及び中心間距離DBを下記表4の通りとした他実施例1と同様にして、実施例15−19のタイヤを得た。
【0064】
[実施例20−23]
幅方向距離DA及び幅方向距離DCを下記表5の通りとした他実施例1と同様にして、実施例20−23のタイヤを得た。
【0065】
[縦剛性の評価]
下記の条件にて、タイヤの縦バネ定数を測定した。
使用リム:MT4.50
内圧:250kPa
荷重:1.3kN
比較例1のタイヤのバネ定数を100としたときの指数が、下記の表1、表2、表3、表4及び表5に示されている。数値が大きいほど、剛性が高いことを表している。
【0066】
[生産コストの評価]
タイヤ1本あたりの生産コストを算出した。比較例1の生産コストを100としたときの指数が、下記の表1、表2、表3、表4及び表5に示されている。数値が大きいほど、生産コストが高いことを表している。
【0067】
[質量の評価]
タイヤの質量を測定した。比較例1のタイヤの質量を100としたときの指数が、下記の表1、表2、表3、表4及び表5に示されている。数値が大きいほど、質量が大きいことを表している。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】

【0073】
表1、表2、表3、表4及び表5に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明された方法は、種々のタイヤの製造にも適用されうる。
【符号の説明】
【0075】
2、40・・・リボン
4、4a、4b、4c、42、42a、42b、42c・・・コード
6、44・・・トッピングゴム
8・・・バンド
10a、10b、46a、46b・・・端
12・・・タイヤ
14・・・トレッド
16・・・サイドウォール
18・・・ビード
20・・・カーカス
22・・・バンド
28・・・トレッド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その曲率半径Rが700mm以下のトレッドを有する空気入りタイヤの製造方法であって、
複数のコードとトッピングゴムとからなり、これらコードが幅方向に並んで配置されており、その一端からこの一端に最も近い一のコードの中心までの幅方向距離DAがその他端からこの他端に最も近い他のコードの中心までの幅方向距離DCよりも大きく、この幅方向距離DAとこの幅方向距離DCとの和(DA+DC)が隣り合うコードの中心間距離DBよりも大きい、リボンが得られる工程と、
このリボンを実質的に周方向に螺旋状に巻回してバンドを形成して、ローカバーが得られる工程と、
このローカバーが、モールド内で加圧及び加熱される工程と
を含む、空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
上記コードの中心間距離DBが、3.3mm以下である請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
上記リボンに含まれるコードの本数が、2本以上6本以下である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
その曲率半径Rが700mm以下のトレッドと、それぞれがこのトレッドの半径方向内側に位置する一対のビードと、このトレッドの半径方向内側において一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、このトレッドとこのカーカスとの間に位置するバンドとを備えており、
このバンドが、リボンを実質的に周方向に螺旋状に巻回すことにより形成されており、
このリボンが、複数のコードとトッピングゴムとからなり、
これらコードが、幅方向に並んで配置されており、
このリボンの一端からこの一端に最も近い一のコードの中心までの幅方向距離DAが、このリボンの他端からこの他端に最も近い他のコードの中心までの幅方向距離DCよりも大きく、
この幅方向距離DAとこの幅方向距離DCとの和(DA+DC)が、隣り合うコードの中心間距離DBよりも大きい、空気入りタイヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−131184(P2012−131184A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286872(P2010−286872)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】