空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法
【課題】被塗装ワークについて空気溜りの発生を解析するにあたり、液体と空気の境界を滑らかなものとして導き出し、実際の浸漬塗装に即したシミュレーションを行うことができる空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法を提供する。
【解決手段】浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、入力された被塗装ワークの表面の形状データに複数の節点を配置し、複数の節点同士の隣接関係を定めた後に複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある液体の属性情報を付与された節点と空気の属性情報を付与された節点とを比較して液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより、空気溜まりの発生の有無の解析を行う。
【解決手段】浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、入力された被塗装ワークの表面の形状データに複数の節点を配置し、複数の節点同士の隣接関係を定めた後に複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある液体の属性情報を付与された節点と空気の属性情報を付与された節点とを比較して液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより、空気溜まりの発生の有無の解析を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装ワーク上に配置した節点の高さを比較することによって空気溜まりが発生するか否かの解析を行う空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両の車体等を電着液で満たされた電着槽に浸漬させて行う電着塗装は、塗膜を略均一に形成することができ、被電着物の溶接部分にも塗装を行うことができる等の利点がある。この反面、車体のフード内面、ルーフ内面及びフロア下面等の凸部にエアーポケットと呼ばれる空気溜まりが生じ、空気溜まりが発生した部分に塗膜を形成することができないという欠点がある。
【0003】
そこで、被塗装物(被塗装ワーク)を電着槽に浸漬させた際に、空気溜まりが発生するか否かを判定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この手法では、まず、被塗装ワークの各表面をその頂点座標データに基づいて任意数の三角ポリゴン(三角形の要素)に分割し、各々の三角ポリゴン(三角形の要素)について、被塗装ワークを入槽角の姿勢にて浸漬槽に模擬浸漬した際に空気溜まりとなりうる表面部位であるか否かの判定をするものである。
【特許文献1】特開2000−51750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかる手法によっては、複数に分割された三角ポリゴン(三角形の要素)ごとに空気と浸漬槽内の塗料との状態変化を時々刻々と計算する必要があり、演算が複雑となる。そのため、コンピュータにかかる負荷が大きくなり、演算に膨大な時間が必要となってしまう。そのため、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを用いて演算を行うには限界があり、実用性に欠ける問題がある。また、かかる手法は、解析対象である被塗装ワークの形状が単純である場合には有効であるが、被塗装ワークの死角となる部分の形状が複雑である場合には、正確な解析結果が得られない場合があるという問題点もある。
【0006】
また、かかる手法を用いて解析を行った場合において、図5に示すような不均一な三角ポリゴン(三角形の要素)を用いた場合、空気溜まりと判断される領域と液体と判断される領域の点線で示す境界線L3の凹凸が急峻になり、実際の浸漬塗装の際に生じる界面と乖離したものとなり、実際の浸漬塗装に即した解析が困難となる。
【0007】
そして、これらの問題は電着塗装に限らず、浸漬塗装一般において生じているものであった。
【0008】
本発明の課題は、被塗装ワークについて空気溜りの発生を解析するにあたり、液体と空気の境界を滑らかなものとして導き出し、実際の浸漬塗装に即したシミュレーションを行うことができる空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置は、浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う入力手段と、前記入力手段により入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、を特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、を特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段による浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示する表示手段が備えられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法は、浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、を特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、を特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1又は請求項7に記載の発明によれば、空気溜まりが発生するか否かの解析を容易に行うことが可能であり、被塗装ワークに空気溜まりが発生していると判断された場合には、液体と空気の境界を滑らかなものとして空気溜まりを導き出すことができ、このように液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことで、空気溜まりの容積の定法により正確に求めることができる。そして、正確な空気溜まりの容積を求めておくことで、重力方向を変えた場合、即ち、被塗装ワークの塗料槽内における姿勢を変えた場合に生じ得る空気溜まりの容積を正確に導き出すことが可能となる。
【0022】
また、請求項1又は請求項7に記載の発明によれば、解析を行うにあたっては節点の属性情報等に限られることとなるのでシミュレーションに必要なデータは少ないため、演算量が少なくなり、コンピュータにかかる負荷が小さくなる。その結果、従来と比較してより迅速にシミュレーション結果を得ることができる。また、演算量が少ないため、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを用いた計算が可能となり実用的である。
【0023】
請求項2又は請求項8に記載の発明によれば、従来の方法と比較して液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことができる。
【0024】
請求項3又は請求項9に記載の発明によれば、所定の基準の下に初期節点の追加するか否かの判断を行った上で初期節点の追加を行う為、さらに滑らかな境界面を導き出すことができる。
【0025】
請求項4又は請求項10に記載の発明によれば、所定の基準の下に初期節点の削除するか否かの判断を行った上で初期節点の削除を行う為、さらに滑らかな境界面を導き出すことができる。
【0026】
請求項5又は請求項11に記載の発明によれば、属性情報を液体と設定された初期節点と属性情報を空気と設定された初期節点の中間の位置に境界点を配置し、その境界点を結線して液体と空気との境界線を導き出すので、境界点を滑らかなものとして導き出すことができる。
【0027】
請求項6又は請求項12に記載の発明によれば、被塗装ワークのシミュレーション解析過程を確認することができると共に、被塗装ワークのどの位置に空気溜まり又は液溜まりが発生した場合にはその位置を視認することができるため、その後の設計作業等の効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第一の実施形態)
以下において、図を参照しながら第一の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係る発明は、図示例に限定されるものではない。
【0029】
図1はこの被塗装ワークについて浸漬塗装解析を実行するための空気溜まり発生シミュレーション装置1の実施形態を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の空気溜まり発生シミュレーション装置1は、CPU2、CPU2の記憶領域或いはワークエリア等として機能するROM3及び例えば、本実施の形態に係る発明を実行する為の各種プログラム及び解析対象のデータ等が記憶されているRAM4からなる制御手段としての制御部5と、入力手段としてのキーボード6と、キーボード6を制御するキーボードコントローラ9と、表示手段としてのディスプレイ10と、ディスプレイ10を制御するディスプレイコントローラ11と、ハードディスクドライブ(HDD)12と、フレキシブルディスクドライブ(FDD)13と、HDD12及びFDD13を制御するディスクコントローラ14と、ネットワーク15との接続のためのネットワークインターフェースコントローラ16とが、システムバス19を介して互いに通信可能に接続されて構成されている。
【0031】
CPU2は、ROM3或いはハードディスクドライブ12に記憶されたソフトウェア、或いはフレキシブルディスクドライブ13より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス19に接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU2は、所定の処理シーケンスに従って処理プログラムを、ROM3、或いはハードディスクドライブ12、或いはフレキシブルディスクドライブ13から読み出して実行することで、本実施形態の被塗装ワークを解析する空気溜まり発生シミュレーション装置1の動作を実現するための制御を行う。
【0032】
被塗装ワークは、具体的には、図2に示すように、溶接等により複数の車体パネルを互いに接合して構成される自動車の車体ボディ20等であり、空気溜まり発生シミュレーション装置1は、車体ボディ20の電着塗装時における電着液及び空気の分布を数値解析し、空気溜まりの発生をシミュレーションする。ここで、車体ボディの塗装ラインについて、図2を用いて簡単に説明する。
【0033】
車体ボディ20は、搬送装置21のハンガに搭載された状態で塗装ラインにて略水平方向へ搬送される。塗装ラインでは、電着塗装の前処理として、車体パネルに脱脂、水洗、表面調整、皮膜化成、水洗等の処理が施される。これらの処理の後、車体ボディ20は電着槽22に向かって降下し、電着液23に浸漬された状態で略水平に移動する。この状態で、車体ボディ20と電着槽22内の電極(図示せず)に電圧を加えることにより、車体パネルに塗料が析出するようになっている。この後、搬送装置21により車体ボディ20は電着槽22から引き上げられ、水洗により車体パネルに電着せずに付着している電着液23が除去される。
【0034】
制御部5は、解析対象である被塗装ワークの形状データをハードディスクドライブ12から読み出して、三次元の数値計算モデルを構築するようになっている。本実施の形態においては、図3に示すような内部に断面が矩形状の部材を備えている断面が矩形状であって、開口Hが設けられた被塗装ワークαを用いる。
【0035】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に複数の節点を配置するようになっている(以下「初期節点a」という)。初期節点aは、被塗装ワークαの表面に節点が全く配置されていない状態において最初に配置される節点である。被塗装ワークαの表面に配置する方法に特に限定はなく、任意の方法により配置することができる。被塗装ワークαの表面に節点を配置する方法としては、例えば、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割した後に、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法がある。なお、ここで、分割する要素の形状に特に限定はなく、三角形や四角形であってもよい。
【0036】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置された各初期節点aのX,Y,Z座標値を抽出し、抽出した各初期節点aのX,Y,Z座標値を例えば、ハードディスクドライブ12に記憶させるようになっている。
【0037】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点aに連続番号を付するようになっている。連続番号を付する方法に特に制限はないが、例えば、ハードディスクドライブ12に記憶されている各初期節点aのX,Y,Z座標値を用いて所定の基準により各初期節点aに連続番号を付することとしてもよい。
【0038】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士の隣接関係の設定を行うようになっている。隣接関係とは、初期節点aの属性情報を決定するにあたり比較対象となることになる関係をいい、隣接関係にない節点同士の比較対象を行うことはない。いかなる初期節点a同士が隣接関係にあるとするかについては特に限定はない。前述のように、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割した後に、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法を用いて節点を配置した場合には、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定されるようになっている。
【0039】
また、制御部5は、解析を行う際の重力方向Gの決定を行うようになっている。
【0040】
また、制御部5は、初期節点aの初期条件の設定、即ち、各初期節点aに属性情報を付与するようになっている。例えば、図3に示すような姿勢で被塗装ワークαが塗料槽βに浸漬される場合に、被塗装ワークαをその周囲より水平より上側の視線で眺めた場合に死角となる範囲に位置する初期節点aの属性情報を空気と、即ち物理量ε=0と設定する。また、死角とならない範囲に位置する初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量ε=1と決定する。
【0041】
各初期節点aに属性情報を付与する他の手法としては、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点aの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定する手法がある。なお、フリーエッジとは、被塗装ワークαの縁の部分、即ち、被塗装ワークαの端部及び被塗装ワークαに形成された穴の縁の部分を意味する。
【0042】
また、制御部5は、属性情報を液体と、即ち物理量がε=1と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気、即ち、物理量がε=0と設定された初期節点aの重力方向と反対方向の位置を高さとして比較を行うようになっている。属性情報が液体である初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報が空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、ε=1に決定される。
【0043】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報が空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報が空気と設定された初期節点aの属性情報は空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0044】
なお、属性情報を空気と設定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を液体と決定されている初期節点aが複数ある場合、それら全ての初期節点aと比較する。そして、それらの初期節点aのうちに属性情報が空気とされた初期節点aよりも1つでも高い又は等しいと判断される属性情報が液体と決定されている初期節点aがあった場合は、属性情報を空気とされた初期節点aの属性情報を液体に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量をε=1に決定する。
【0045】
また、制御部5は、属性情報が液体と決定された初期節点aと属性情報が空気と設定された初期節点aとの比較は、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定するまで繰り返されるようになっている。
【0046】
また、前述のように属性情報が液体と決定された初期節点aと属性情報が空気と判断された初期節点aを比較し、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが、属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報が空気と判断された初期節点aの属性情報を液体に変更して、その属性情報を液体に決定する等の判断を行うのは、液体の比重が空気の比重よりも大きいことによる。
【0047】
また、制御部5は、液体と空気の境界面を確定するようになっている。液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、図4に示すように、属性情報を液体と決定された黒丸で示す初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と決定された白丸で示す初期節点aを結ぶ線L1上の所定の位置に内部に斜線が引かれた境界点Jを配置する。境界点Jを配置する位置に特に制限はないが、例えば、属性情報を液体と決定された節点から境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5又は6:4になるように境界点Jを配置する。そして、境界点J同士を結んで、点線で示す等値線L2を引く。制御部5は、等値線L2が液体と空気の境界であると認識し、L2より属性情報が液体であると判断された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報が空気であると判断された初期節点aの存在する側の領域を空気であると、即ち、浸漬塗装が施されず空気溜まりが発生している領域であると判断するようになっている。
【0048】
このように、等値線L2を引くことで、図5に示すような属性情報を空気と決定された節点と隣接関係にある属性情報を液体と決定された節点同士を結線して導き出した点線で示す境界線L3よりも、境界線に凹凸がなく滑らかになり、実際の塗装における液体と空気の境界線に近似して境界線が得られるようになっている。
【0049】
本実施の形態においては、キーボード6を操作することにより必要なデータが入力されるようになっているが、必要なデータを入力する為にマウス、スキャナ及び外部接続端子等を用いることとしてもよい。
【0050】
ディスプレイ10には、被塗装ワークαについてのシミュレーション解析過程及び解析結果が表示されるようになっている。
【0051】
ハードディスクドライブ12には、解析に必要なデータが格納されている。ここで、解析に必要なデータとは、例えば、各接点の、X,Y,Z座標値、物理量εの大きさ、重力方向G、及び解析領域内に定義される被塗装ワークαの形状データが挙げられる。
【0052】
なお、ハードディスクドライブ12は、空気溜まり発生シミュレーション装置1の外部に設けたハードディスク装置、光磁気ディスク装置又はフラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性記録媒体をハードディスクドライブ12として用いることとしてもよい。
【0053】
また、被塗装ワークαの形状データは、キーボード6を介して直接入力してもよく、外部接続端子に、図示しないLAN等の通信手段を介して接続された、他のコンピュータに備えられている記憶装置(図示せず)から読み込むようにしてもよい。
【0054】
以下において、図6のフローチャートを参照して本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0055】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS1)。
【0056】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS2)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。次いで、各初期節点aのX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS3)、各初期節点a,a・・・の座標値を基準に各初期節点a,a・・・に連続番号を付する(ステップS4)。
【0057】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS5)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定する。そして、重力方向Gを決定する(ステップS6)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0058】
次いで、初期節点aの初期条件の設定を行う(ステップS7)。初期条件の設定、即ち、初期節点aの属性情報の設定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の節点の属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0059】
次いで、制御部5は属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を開始する(ステップS8)。
【0060】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点aのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体に決定する。
【0061】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0062】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS9)。全ての初期節点aについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を空気と設定され、属性情報の決定が行われていない初期節点aのうち最も小さい番号を付されている初期節点aと属性情報を液体と決定された初期節点aとの比較を行う(ステップS8)。
【0063】
属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報の決定が行われたと判断した場合には(YES)、比較を終了し、制御部5は、ポスト処理の一部として、液体と空気の境界面を確定する(ステップS10)。
【0064】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、図4に示すように、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と決定された初期節点aを結ぶ線L1上の所定の位置に境界点Jを配置する。境界点Jは、属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5になるように配置する。そして、図4に示すように、境界点J同士を結んで点線で示す等値線L2を引く。制御部5は、等値線L2が液体と空気の境界であると認識し、等値線L2より属性情報が液体であると決定された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報を空気であると決定された初期節点aの存在する側の領域を空気、即ち、空気溜まりが発生している領域であると判断する。そして、シミュレーション解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る発明によれば、被塗装ワークαに空気溜まりが発生するか否かの解析を容易に行うことができる。
【0066】
また、図4に示す等値線L2は、図5に示す属性情報を空気と決定された初期節点aに隣接関係にある属性情報を液体と決定された初期節点a同士を結線して導き出した境界線L3と比較して凹凸が滑らかである。即ち、図4に示す等値線L2を境界線とすることで実際の塗装における液体と空気の境界線に近似した境界線が得られるようになっている。
【0067】
なお、本実施の形態に係る発明を実施することにより得られた空気溜まりのシミュレーション解析結果に基づいて、定法により空気溜まりの空気容積を求めることとしてもよい。その際、上述のように液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことで、正確な空気溜まりの容積を導き出すことが可能となる。
【0068】
また、そのように正確な空気溜まりの容積を求めておくことで、重力方向を変えた場合、即ち、被塗装ワークの塗料槽内における姿勢を変えた場合に生じ得る空気溜まりの容積を正確に導き出すことが可能となる。このことは、以下の実施形態においても同様である。
【0069】
(第二の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第二の実施形態について説明する。なお、第二の実施形態については、第一の実施形態との共通部分についての説明は省略し、第一の実施形態と異なる部分について詳述するものとする。
【0070】
制御部5は、初期節点aの追加又は削除を行うようになっている。初期節点aの追加又は削除を行う手法について制限はない。初期節点aを追加する手法としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、本実施の形態における「節点」とは初期節点aを意味し、共通節点X、第1接続節点A、第2接続節点B、節点C、第三接続節点D及び第四接続節点Eもそれぞれ初期節点aである。
【0071】
この手法においては、まず、図7(a)に示すように、共通の節点X(以下「共通節点X」という)及び共通節点Xに接続されている、即ち、隣接関係にある二つの節点を抽出する(以下、共通節点Xに接続されている上記の二つの節点をそれぞれ「第一接続節点A」、「第二接続節点B」という)。そして、第一接続節点Aと第二接続節点Bの間の領域には共通節点Xの隣接関係にある節点が存在しない関係にある。
【0072】
そして、図7(a)に示すように、共通節点Xと第一接続節点Aとの結線XAと共通節点Xと第二接続節点Bの結線XBの為す角θABについて、角θABが閾値θ1より大きいか否かの判断を行う。角θABが閾値θ1より大きいと判断した場合は、第一接続節点Aと第二接続節点Bの中間に節点Cを新たに配置する。この際、共通節点Xと節点Cとの結線XCが角θABを二等分する位置に節点Cは配置されるものであって、節点Cは共通節点Xとの隣接関係にある節点とされる。
【0073】
角θABが閾値θ1よりも小さいと判断した場合は、角θABを閾値θ2と比較する。角θABが閾値θ2よりも小さいと判断した場合には、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除を行うようになっている。
【0074】
初期節点aを削除する手法としては、例えば、図7(b)に示すように、共通節点Xに接続されていると共に、第二接続節点Bよりも第一接続節点Aに近く、その節点と第一接続節点Aの間の領域には共通節点Xと隣接関係にある初期節点aが無い節点D(以下「第三接続節点D」という)と共通節点Xとの結線XDと結線XAの為す角θADの計測を行う。
【0075】
次いで、共通節点Xに接続されていると共に、第一接続節点Aよりも第一接続節点Bに近く、その節点と第二接続節点Bの間の領域には共通節点Xと隣接関係にある初期節点aが無い節点E(以下「第四接続節点E」という)と共通節点Xとの結線XEと結線XBの為す角θBEの計測を行う。
【0076】
そして、角θADと角θBEの大きさを比較し、第一接続節点Aおよび第二接続節点Bのうち小さい角度を為す結線を形成しているいずれかの節点を削除する。図7(b)において、例えば、角θBEの方が小さい場合は第二接続節点Bの削除を行うようになっている。
【0077】
そして、制御部5はかかる作業を被塗装ワークα上に配置された全ての節点について行うようになっており、全ての節点について追加又は削除の必要がないと判断するまで初期節点aの追加又は削除の作業を行うようになっている。
【0078】
なお、閾値θ1及び閾値θ2は、それぞれ任意の値であって、閾値θ2が閾値θ1の2分の1以下の値であること以外には閾値θ1及び閾値θ2に特に制限はない。
【0079】
以下において、図8及び図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0080】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS11)。
【0081】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS12)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。
【0082】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS13)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定する。そして、重力方向Gを決定する(ステップS14)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0083】
そして、初期節点aの追加条件が成立したか否かの判断を行う(ステップS15)。初期節点aを追加するか否かの判断を行うにあたっては、まず任意の共通節点X及び共通節点Xに接続されている第一接続節点A及び第二接続節点Bを抽出する。そして、図7(a)に示すように、結線XAと結線XBの為す角θABが閾値θ1より大きいか否かの判断を行う。角θABが閾値θ1より大きいと判断した場合は(YES)、第一接続節点Aと第二接続節点Bの間に節点Cを新たに追加する(ステップS16)。この際、結線XCが角θABを二等分する位置に節点Cは配置されるものであって、節点Cは共通節点Xとの隣接関係があると設定される。
【0084】
ステップS15において角θABが閾値θ1よりも小さいと判断し、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれをも追加条件が不成立の場合には(NO)、初期節点aの削除条件が成立したか否かの判断を行う(ステップS17)。かかる判断を行うにあたっては、角θABを閾値θ2と比較する。角θABが閾値θ2よりも小さいと判断し、初期節点a、即ち、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除条件が成立した場合には(YES)、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除を行う(ステップS18)。
【0085】
削除を行うにあたっては、図7(b)に示すように結線XDと結線XAの為す角θADと結線XEと結線XBの為す角θBEの大きさを比較し、第一接続節点Aおよび第二接続節点Bのうち小さい角度を為す結線を形成しているいずれかの節点を削除することを行う。
【0086】
そして、ステップS16において節点Cを追加する処理を行った場合、ステップS17において角θABが閾値θ2よりも大きいと判断し第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれも削除すべきでないと判断した場合(NO)、又はステップS18において第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかを削除する処理を行った後には、全ての初期節点aについて、初期節点aを追加又は削除を行うべきかの判断がなされたかの判断を行う(ステップS19)。
【0087】
全ての初期節点aについて未だに判断が終了していないと判断された場合には(NO)、判断が行われていない初期節点aを抽出して初期節点aの追加をすべきか否かの判断を行う(ステップS15)。
【0088】
全ての初期節点aについて判断が終了していると判断した場合には(YES)、各初期節点aのX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS20)、各初期節点a,a・・・の座標値を基準に各初期節点a,a・・・に連続番号を付する(ステップS21)。
【0089】
そして、初期節点aの初期条件の設定を行う(ステップS22)。初期条件の設定、即ち、初期節点aの属性情報の設定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点aの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0090】
そして、制御部5は属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を行う(ステップS23)。
【0091】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点aのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に決定する。
【0092】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0093】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS24)。全ての初期節点aについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を行う(ステップS23)。
【0094】
属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報の決定が行われたと判断した場合には(YES)、比較を終了し、制御部5は、ポスト処理の一部として、液体と空気の境界面を確定する(ステップS25)。
【0095】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、属性情報を液体と決定された節点と隣接関係にある属性情報を空気と決定された節点を結ぶ線上に境界点を配置する。境界点は、属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された節点までの距離の比が5:5になるように配置する。そして、境界点J同士を結んで等値線L2を引く。制御部5は、等値線が液体と空気の境界であると認識し、等値線L2より属性情報が液体であると判断された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報が空気であると判断された初期節点aの存在する側の領域に空気溜まりが発生していると判断する。そして、シミュレーション解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0096】
以上のように、本実施の形態によれば、初期節点の追加又は削除を行うことによって、液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界線としてより滑らかなものを導き出すことができる。
【0097】
(第三の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第三の実施形態について説明する。なお、第三の実施形態については、第一の実施形態との共通部分についての説明は省略し、第一の実施形態と異なる部分について詳述するものとする。
【0098】
制御部5は、節点の追加を行うようになっている。節点を追加するにあたっては、図10に示すように、初期節点a同士を接続している結線上、即ち隣接関係にある初期節点a同士の中間に初期節点aとは別に二次的に節点を追加して配置するようになっている(以下、追加した節点を「二次節点b」という)。
【0099】
二次節点bは、その二次節点bが配置された結線上の両端に配置されている初期節点a,aと隣接関係にあると設定されるようになっている。また、二次節点bが隣接関係にあると設定された初期節点a,aが含まれている要素に含まれているとともに、その二次節点bの配置されている結線又はその延長上にある線と交差する線上に位置する初期節点aと隣接関係にあると設定されるようになっている。なお、本実施の形態において隣接関係とは、初期節点a又は二次節点bの属性情報を決定するにあたり比較対象となることになる関係をいい、隣接関係にない節点同士の比較対象を行うことはない。
【0100】
例えば、図11(a)に示す三角形の要素Qにおいて、二次節点b1は初期節点a3と、二次節点b2は初期節点a1と、及び二次節点b3は初期節点a2と隣接関係にあると設定されるようになっている。また、図11(b)に示す四角形の要素Rにおいては、二次節点b4は初期節点a6及びa7と、二次節点b5は初期節点a4及びa7と、二次節点b6は初期節点a4及びa5と、並びに、二次節点b7は初期節点a5及びa6と隣接関係にあると設定されるようになっている。
【0101】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置された各二次節点bのX,Y,Z座標値を抽出し、抽出した各二次節点aのX,Y,Z座標値を例えば、ハードディスクドライブ12に記憶させるようになっている。
【0102】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a及び二次節点bに連続番号を付するようになっている。なお、連続番号を付するにあたっては初期節点aと二次節点bとを区別せず、それぞれについて同様の基準で付するものである。そのため、ある初期節点aに番号が付された後にその続きの番号が二次節点bに付されたり、二次節点bに番号が付された後にその続きの番号が初期節点aに付されたりする場合がある。
【0103】
連続番号を付する方法に特に制限はないが、例えば、ハードディスクドライブ12に記憶されている初期節点a及び二次節点bのX,Y,Z座標値を用いて所定の基準により初期節点a及び二次節点bに連続番号を付することとしてもよい。
【0104】
また、制御部5は、二次節点bの初期条件の設定、即ち、各二次節点b,b・・・に属性情報を付与するようになっている。例えば、図3に示すような姿勢で被塗装ワークαが塗料槽βに浸漬される場合に、被塗装ワークαをその周囲より水平より上側の視線で眺めた場合に死角となる範囲に位置する二次節点bの属性情報を空気と、即ち物理量ε=0と設定する。また、死角とならない範囲に位置する二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量ε=1と決定する。
【0105】
各二次節点b,b・・・に属性情報を付与する他の手法としては、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の二次節点bの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定する手法がある。
【0106】
また、制御部5は、属性情報を液体と、即ち物理量がε=1と決定された二次節点b又は初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの重力方向と反対方向の位置を高さとして比較を行うようになっている。属性情報を液体と決定された二次節点b又は初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点a又二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、ε=1に決定する。
【0107】
これに対して、属性情報が液体と決定された二次節点b又初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された二次節点b又は初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された二次節点b又は初期節点aの属性情報は空気、即ち、物理量ε=0に決定する。
【0108】
なお、属性情報を空気と設定された二次節点bと隣接関係にある属性情報を液体と決定されている初期節点aが複数ある場合、それら全ての初期節点aと比較する。そして、それらの初期節点aのうちに属性情報が空気とされた二次節点bよりも1つでも高い又は等しい初期節点aがあった場合は、属性情報を空気とされた二次節点bの属性情報を液体に変更し、その二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量をε=1に決定する。
【0109】
また、制御部5は、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較は、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bに隣接関係にある全て初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定するまで繰り返されるようになっている。
【0110】
なお、制御部5は、二次節点b同士で隣接関係を設定することはない。そのため、属性情報を空気と設定された二次節点bの属性情報を決定するにあたり属性情報を液体と決定されている二次節点bとの比較を行うことはない。
【0111】
以下において、図12のフローチャートを参照して、本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0112】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS31)。
【0113】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS32)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。
【0114】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS33)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係があると設定する。
【0115】
そして、隣接関係にある初期節点a同士の間に二次節点bを配置する(ステップS34)。その際、配置した二次節点と初期節点aとの隣接関係の設定も行う。
【0116】
次いで、各初期節点a,a・・・及び二次節点b,b・・・のX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS35)、抽出した座標値を基準に各初期節点a,a・・・及び二次節点b,b・・・に連続番号を付する(ステップS36)。そして、重力方向Gを決定する(ステップS37)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0117】
次いで、初期節点a及び二次節点bの初期条件の設定を行う(ステップS38)。初期条件の設定、即ち、初期節点a及び二次節点bの属性情報の決定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点a及び二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点a及び二次節点bの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0118】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較を行う(ステップS39)。
【0119】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に決定する。
【0120】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気aと設定された初期節点a又は二次節点bの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0121】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある全ての初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS40)。全ての初期節点a又は二次節点bについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較を行う(ステップS39)。
【0122】
属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある全ての初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定されたと判断した場合には(YES)、比較を終了してポスト処理へ移行し、液体と空気の境界面を確定する(ステップS41)。
【0123】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、境界点Jを属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5になるように、即ち、物理量がε=0.5となる位置に配置する。そして、図13に示すように、△で表した境界点J同士を結んだ一点鎖線で示す等値線L4を引く。制御部5は、等値線L4が液体と空気の境界であると認識し、等値線L4より属性情報が液体であると決定された初期節点a又は二次節点bの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L4より属性情報を空気であると決定された初期節点a又は二次節点bの存在する側の領域を空気、即ち、空気溜まりが発生している領域であると判断する。そして、解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0124】
以上のように、本実施の形態に係る発明によれば、図13に示す等値線L4を空気と液体の境界線とすることで、属性情報を空気と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を液体と決定された初期節点a,a・・・同士を結線して導き出した実線で示す境界線L5よりも、実際の塗装において生じる液体と空気の境界線に近似した境界線を得ることができる。また、実線で示す境界線L5よりも、実際の塗装において生じる液体と空気の境界線に近似した凹凸の程度が少ない滑らかな境界線を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】空気溜まり発生シミュレーション装置の概略構成ブロック図である。
【図2】車体の塗装ラインの概略説明図である。
【図3】塗料槽に被塗装ワークを浸漬する状態を表す模式図である。
【図4】属性情報を液体と判断された初期節点と属性情報を空気と判断された初期節点の中間点を結んで液体と空気との境界を表した図である。
【図5】属性情報を液体と判断された初期節点を結んで液体と空気の境界線を表した図である。
【図6】第一の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図7】(a)は節点を追加する手法をあらわした図であり、(b)は節点を削除する手法を表した図である。
【図8】第二の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図9】第二の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図10】隣接関係にある初期節点同士の中間に二次節点を配置した図である。
【図11】(a)は三角形状の要素上に配置される初期節点と二次節点の隣接関係を表した図であり、(b)は四角形状の要素上に配置される初期節点と二次節点の隣接関係を表した図である。
【図12】第三の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図13】第三の実施形態において解析を行った結果、属性情報を液体と判断された初期節点と属性情報を空気と判断された初期節点の中間点を結んで液体と空気との境界を表した図である。
【符号の説明】
【0126】
1 空気溜まり発生シミュレーション装置
5 制御部
6 キーボード
9 キーボードコントローラ
10 ディスプレイ
11 ディスプレイコントローラ
12 ハードディスクドライブ
13 フレキシブルディスクドライブ
14 ディスクコントローラ
15 ネットワーク
16 ネットワークインターフェースコントローラ
19 システムバス
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装ワーク上に配置した節点の高さを比較することによって空気溜まりが発生するか否かの解析を行う空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車両の車体等を電着液で満たされた電着槽に浸漬させて行う電着塗装は、塗膜を略均一に形成することができ、被電着物の溶接部分にも塗装を行うことができる等の利点がある。この反面、車体のフード内面、ルーフ内面及びフロア下面等の凸部にエアーポケットと呼ばれる空気溜まりが生じ、空気溜まりが発生した部分に塗膜を形成することができないという欠点がある。
【0003】
そこで、被塗装物(被塗装ワーク)を電着槽に浸漬させた際に、空気溜まりが発生するか否かを判定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この手法では、まず、被塗装ワークの各表面をその頂点座標データに基づいて任意数の三角ポリゴン(三角形の要素)に分割し、各々の三角ポリゴン(三角形の要素)について、被塗装ワークを入槽角の姿勢にて浸漬槽に模擬浸漬した際に空気溜まりとなりうる表面部位であるか否かの判定をするものである。
【特許文献1】特開2000−51750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、かかる手法によっては、複数に分割された三角ポリゴン(三角形の要素)ごとに空気と浸漬槽内の塗料との状態変化を時々刻々と計算する必要があり、演算が複雑となる。そのため、コンピュータにかかる負荷が大きくなり、演算に膨大な時間が必要となってしまう。そのため、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを用いて演算を行うには限界があり、実用性に欠ける問題がある。また、かかる手法は、解析対象である被塗装ワークの形状が単純である場合には有効であるが、被塗装ワークの死角となる部分の形状が複雑である場合には、正確な解析結果が得られない場合があるという問題点もある。
【0006】
また、かかる手法を用いて解析を行った場合において、図5に示すような不均一な三角ポリゴン(三角形の要素)を用いた場合、空気溜まりと判断される領域と液体と判断される領域の点線で示す境界線L3の凹凸が急峻になり、実際の浸漬塗装の際に生じる界面と乖離したものとなり、実際の浸漬塗装に即した解析が困難となる。
【0007】
そして、これらの問題は電着塗装に限らず、浸漬塗装一般において生じているものであった。
【0008】
本発明の課題は、被塗装ワークについて空気溜りの発生を解析するにあたり、液体と空気の境界を滑らかなものとして導き出し、実際の浸漬塗装に即したシミュレーションを行うことができる空気溜まり発生シミュレーション装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置は、浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う入力手段と、前記入力手段により入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、を特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、を特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段は、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置において、前記制御手段による浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示する表示手段が備えられていることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法は、浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う、ことを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項7又は請求項8に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、を特徴とする。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項9に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、を特徴とする。
【0019】
請求項11記載の発明は、請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、を特徴とする。
【0020】
請求項12記載の発明は、請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1又は請求項7に記載の発明によれば、空気溜まりが発生するか否かの解析を容易に行うことが可能であり、被塗装ワークに空気溜まりが発生していると判断された場合には、液体と空気の境界を滑らかなものとして空気溜まりを導き出すことができ、このように液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことで、空気溜まりの容積の定法により正確に求めることができる。そして、正確な空気溜まりの容積を求めておくことで、重力方向を変えた場合、即ち、被塗装ワークの塗料槽内における姿勢を変えた場合に生じ得る空気溜まりの容積を正確に導き出すことが可能となる。
【0022】
また、請求項1又は請求項7に記載の発明によれば、解析を行うにあたっては節点の属性情報等に限られることとなるのでシミュレーションに必要なデータは少ないため、演算量が少なくなり、コンピュータにかかる負荷が小さくなる。その結果、従来と比較してより迅速にシミュレーション結果を得ることができる。また、演算量が少ないため、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータを用いた計算が可能となり実用的である。
【0023】
請求項2又は請求項8に記載の発明によれば、従来の方法と比較して液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことができる。
【0024】
請求項3又は請求項9に記載の発明によれば、所定の基準の下に初期節点の追加するか否かの判断を行った上で初期節点の追加を行う為、さらに滑らかな境界面を導き出すことができる。
【0025】
請求項4又は請求項10に記載の発明によれば、所定の基準の下に初期節点の削除するか否かの判断を行った上で初期節点の削除を行う為、さらに滑らかな境界面を導き出すことができる。
【0026】
請求項5又は請求項11に記載の発明によれば、属性情報を液体と設定された初期節点と属性情報を空気と設定された初期節点の中間の位置に境界点を配置し、その境界点を結線して液体と空気との境界線を導き出すので、境界点を滑らかなものとして導き出すことができる。
【0027】
請求項6又は請求項12に記載の発明によれば、被塗装ワークのシミュレーション解析過程を確認することができると共に、被塗装ワークのどの位置に空気溜まり又は液溜まりが発生した場合にはその位置を視認することができるため、その後の設計作業等の効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第一の実施形態)
以下において、図を参照しながら第一の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係る発明は、図示例に限定されるものではない。
【0029】
図1はこの被塗装ワークについて浸漬塗装解析を実行するための空気溜まり発生シミュレーション装置1の実施形態を示すブロック図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態の空気溜まり発生シミュレーション装置1は、CPU2、CPU2の記憶領域或いはワークエリア等として機能するROM3及び例えば、本実施の形態に係る発明を実行する為の各種プログラム及び解析対象のデータ等が記憶されているRAM4からなる制御手段としての制御部5と、入力手段としてのキーボード6と、キーボード6を制御するキーボードコントローラ9と、表示手段としてのディスプレイ10と、ディスプレイ10を制御するディスプレイコントローラ11と、ハードディスクドライブ(HDD)12と、フレキシブルディスクドライブ(FDD)13と、HDD12及びFDD13を制御するディスクコントローラ14と、ネットワーク15との接続のためのネットワークインターフェースコントローラ16とが、システムバス19を介して互いに通信可能に接続されて構成されている。
【0031】
CPU2は、ROM3或いはハードディスクドライブ12に記憶されたソフトウェア、或いはフレキシブルディスクドライブ13より供給されるソフトウェアを実行することで、システムバス19に接続された各構成部を総括的に制御する。すなわち、CPU2は、所定の処理シーケンスに従って処理プログラムを、ROM3、或いはハードディスクドライブ12、或いはフレキシブルディスクドライブ13から読み出して実行することで、本実施形態の被塗装ワークを解析する空気溜まり発生シミュレーション装置1の動作を実現するための制御を行う。
【0032】
被塗装ワークは、具体的には、図2に示すように、溶接等により複数の車体パネルを互いに接合して構成される自動車の車体ボディ20等であり、空気溜まり発生シミュレーション装置1は、車体ボディ20の電着塗装時における電着液及び空気の分布を数値解析し、空気溜まりの発生をシミュレーションする。ここで、車体ボディの塗装ラインについて、図2を用いて簡単に説明する。
【0033】
車体ボディ20は、搬送装置21のハンガに搭載された状態で塗装ラインにて略水平方向へ搬送される。塗装ラインでは、電着塗装の前処理として、車体パネルに脱脂、水洗、表面調整、皮膜化成、水洗等の処理が施される。これらの処理の後、車体ボディ20は電着槽22に向かって降下し、電着液23に浸漬された状態で略水平に移動する。この状態で、車体ボディ20と電着槽22内の電極(図示せず)に電圧を加えることにより、車体パネルに塗料が析出するようになっている。この後、搬送装置21により車体ボディ20は電着槽22から引き上げられ、水洗により車体パネルに電着せずに付着している電着液23が除去される。
【0034】
制御部5は、解析対象である被塗装ワークの形状データをハードディスクドライブ12から読み出して、三次元の数値計算モデルを構築するようになっている。本実施の形態においては、図3に示すような内部に断面が矩形状の部材を備えている断面が矩形状であって、開口Hが設けられた被塗装ワークαを用いる。
【0035】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に複数の節点を配置するようになっている(以下「初期節点a」という)。初期節点aは、被塗装ワークαの表面に節点が全く配置されていない状態において最初に配置される節点である。被塗装ワークαの表面に配置する方法に特に限定はなく、任意の方法により配置することができる。被塗装ワークαの表面に節点を配置する方法としては、例えば、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割した後に、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法がある。なお、ここで、分割する要素の形状に特に限定はなく、三角形や四角形であってもよい。
【0036】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置された各初期節点aのX,Y,Z座標値を抽出し、抽出した各初期節点aのX,Y,Z座標値を例えば、ハードディスクドライブ12に記憶させるようになっている。
【0037】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点aに連続番号を付するようになっている。連続番号を付する方法に特に制限はないが、例えば、ハードディスクドライブ12に記憶されている各初期節点aのX,Y,Z座標値を用いて所定の基準により各初期節点aに連続番号を付することとしてもよい。
【0038】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士の隣接関係の設定を行うようになっている。隣接関係とは、初期節点aの属性情報を決定するにあたり比較対象となることになる関係をいい、隣接関係にない節点同士の比較対象を行うことはない。いかなる初期節点a同士が隣接関係にあるとするかについては特に限定はない。前述のように、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割した後に、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を節点とする方法を用いて節点を配置した場合には、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定されるようになっている。
【0039】
また、制御部5は、解析を行う際の重力方向Gの決定を行うようになっている。
【0040】
また、制御部5は、初期節点aの初期条件の設定、即ち、各初期節点aに属性情報を付与するようになっている。例えば、図3に示すような姿勢で被塗装ワークαが塗料槽βに浸漬される場合に、被塗装ワークαをその周囲より水平より上側の視線で眺めた場合に死角となる範囲に位置する初期節点aの属性情報を空気と、即ち物理量ε=0と設定する。また、死角とならない範囲に位置する初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量ε=1と決定する。
【0041】
各初期節点aに属性情報を付与する他の手法としては、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点aの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定する手法がある。なお、フリーエッジとは、被塗装ワークαの縁の部分、即ち、被塗装ワークαの端部及び被塗装ワークαに形成された穴の縁の部分を意味する。
【0042】
また、制御部5は、属性情報を液体と、即ち物理量がε=1と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気、即ち、物理量がε=0と設定された初期節点aの重力方向と反対方向の位置を高さとして比較を行うようになっている。属性情報が液体である初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報が空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、ε=1に決定される。
【0043】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報が空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報が空気と設定された初期節点aの属性情報は空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0044】
なお、属性情報を空気と設定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を液体と決定されている初期節点aが複数ある場合、それら全ての初期節点aと比較する。そして、それらの初期節点aのうちに属性情報が空気とされた初期節点aよりも1つでも高い又は等しいと判断される属性情報が液体と決定されている初期節点aがあった場合は、属性情報を空気とされた初期節点aの属性情報を液体に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量をε=1に決定する。
【0045】
また、制御部5は、属性情報が液体と決定された初期節点aと属性情報が空気と設定された初期節点aとの比較は、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定するまで繰り返されるようになっている。
【0046】
また、前述のように属性情報が液体と決定された初期節点aと属性情報が空気と判断された初期節点aを比較し、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが、属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報が空気と判断された初期節点aの属性情報を液体に変更して、その属性情報を液体に決定する等の判断を行うのは、液体の比重が空気の比重よりも大きいことによる。
【0047】
また、制御部5は、液体と空気の境界面を確定するようになっている。液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、図4に示すように、属性情報を液体と決定された黒丸で示す初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と決定された白丸で示す初期節点aを結ぶ線L1上の所定の位置に内部に斜線が引かれた境界点Jを配置する。境界点Jを配置する位置に特に制限はないが、例えば、属性情報を液体と決定された節点から境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5又は6:4になるように境界点Jを配置する。そして、境界点J同士を結んで、点線で示す等値線L2を引く。制御部5は、等値線L2が液体と空気の境界であると認識し、L2より属性情報が液体であると判断された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報が空気であると判断された初期節点aの存在する側の領域を空気であると、即ち、浸漬塗装が施されず空気溜まりが発生している領域であると判断するようになっている。
【0048】
このように、等値線L2を引くことで、図5に示すような属性情報を空気と決定された節点と隣接関係にある属性情報を液体と決定された節点同士を結線して導き出した点線で示す境界線L3よりも、境界線に凹凸がなく滑らかになり、実際の塗装における液体と空気の境界線に近似して境界線が得られるようになっている。
【0049】
本実施の形態においては、キーボード6を操作することにより必要なデータが入力されるようになっているが、必要なデータを入力する為にマウス、スキャナ及び外部接続端子等を用いることとしてもよい。
【0050】
ディスプレイ10には、被塗装ワークαについてのシミュレーション解析過程及び解析結果が表示されるようになっている。
【0051】
ハードディスクドライブ12には、解析に必要なデータが格納されている。ここで、解析に必要なデータとは、例えば、各接点の、X,Y,Z座標値、物理量εの大きさ、重力方向G、及び解析領域内に定義される被塗装ワークαの形状データが挙げられる。
【0052】
なお、ハードディスクドライブ12は、空気溜まり発生シミュレーション装置1の外部に設けたハードディスク装置、光磁気ディスク装置又はフラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性記録媒体をハードディスクドライブ12として用いることとしてもよい。
【0053】
また、被塗装ワークαの形状データは、キーボード6を介して直接入力してもよく、外部接続端子に、図示しないLAN等の通信手段を介して接続された、他のコンピュータに備えられている記憶装置(図示せず)から読み込むようにしてもよい。
【0054】
以下において、図6のフローチャートを参照して本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0055】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS1)。
【0056】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS2)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。次いで、各初期節点aのX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS3)、各初期節点a,a・・・の座標値を基準に各初期節点a,a・・・に連続番号を付する(ステップS4)。
【0057】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS5)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定する。そして、重力方向Gを決定する(ステップS6)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0058】
次いで、初期節点aの初期条件の設定を行う(ステップS7)。初期条件の設定、即ち、初期節点aの属性情報の設定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の節点の属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0059】
次いで、制御部5は属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を開始する(ステップS8)。
【0060】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点aのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体に決定する。
【0061】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0062】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS9)。全ての初期節点aについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を空気と設定され、属性情報の決定が行われていない初期節点aのうち最も小さい番号を付されている初期節点aと属性情報を液体と決定された初期節点aとの比較を行う(ステップS8)。
【0063】
属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報の決定が行われたと判断した場合には(YES)、比較を終了し、制御部5は、ポスト処理の一部として、液体と空気の境界面を確定する(ステップS10)。
【0064】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、図4に示すように、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と決定された初期節点aを結ぶ線L1上の所定の位置に境界点Jを配置する。境界点Jは、属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5になるように配置する。そして、図4に示すように、境界点J同士を結んで点線で示す等値線L2を引く。制御部5は、等値線L2が液体と空気の境界であると認識し、等値線L2より属性情報が液体であると決定された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報を空気であると決定された初期節点aの存在する側の領域を空気、即ち、空気溜まりが発生している領域であると判断する。そして、シミュレーション解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0065】
以上のように、本実施の形態に係る発明によれば、被塗装ワークαに空気溜まりが発生するか否かの解析を容易に行うことができる。
【0066】
また、図4に示す等値線L2は、図5に示す属性情報を空気と決定された初期節点aに隣接関係にある属性情報を液体と決定された初期節点a同士を結線して導き出した境界線L3と比較して凹凸が滑らかである。即ち、図4に示す等値線L2を境界線とすることで実際の塗装における液体と空気の境界線に近似した境界線が得られるようになっている。
【0067】
なお、本実施の形態に係る発明を実施することにより得られた空気溜まりのシミュレーション解析結果に基づいて、定法により空気溜まりの空気容積を求めることとしてもよい。その際、上述のように液体と空気の境界面を滑らかなものとして導き出すことで、正確な空気溜まりの容積を導き出すことが可能となる。
【0068】
また、そのように正確な空気溜まりの容積を求めておくことで、重力方向を変えた場合、即ち、被塗装ワークの塗料槽内における姿勢を変えた場合に生じ得る空気溜まりの容積を正確に導き出すことが可能となる。このことは、以下の実施形態においても同様である。
【0069】
(第二の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第二の実施形態について説明する。なお、第二の実施形態については、第一の実施形態との共通部分についての説明は省略し、第一の実施形態と異なる部分について詳述するものとする。
【0070】
制御部5は、初期節点aの追加又は削除を行うようになっている。初期節点aの追加又は削除を行う手法について制限はない。初期節点aを追加する手法としては、例えば、以下のものが挙げられる。なお、本実施の形態における「節点」とは初期節点aを意味し、共通節点X、第1接続節点A、第2接続節点B、節点C、第三接続節点D及び第四接続節点Eもそれぞれ初期節点aである。
【0071】
この手法においては、まず、図7(a)に示すように、共通の節点X(以下「共通節点X」という)及び共通節点Xに接続されている、即ち、隣接関係にある二つの節点を抽出する(以下、共通節点Xに接続されている上記の二つの節点をそれぞれ「第一接続節点A」、「第二接続節点B」という)。そして、第一接続節点Aと第二接続節点Bの間の領域には共通節点Xの隣接関係にある節点が存在しない関係にある。
【0072】
そして、図7(a)に示すように、共通節点Xと第一接続節点Aとの結線XAと共通節点Xと第二接続節点Bの結線XBの為す角θABについて、角θABが閾値θ1より大きいか否かの判断を行う。角θABが閾値θ1より大きいと判断した場合は、第一接続節点Aと第二接続節点Bの中間に節点Cを新たに配置する。この際、共通節点Xと節点Cとの結線XCが角θABを二等分する位置に節点Cは配置されるものであって、節点Cは共通節点Xとの隣接関係にある節点とされる。
【0073】
角θABが閾値θ1よりも小さいと判断した場合は、角θABを閾値θ2と比較する。角θABが閾値θ2よりも小さいと判断した場合には、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除を行うようになっている。
【0074】
初期節点aを削除する手法としては、例えば、図7(b)に示すように、共通節点Xに接続されていると共に、第二接続節点Bよりも第一接続節点Aに近く、その節点と第一接続節点Aの間の領域には共通節点Xと隣接関係にある初期節点aが無い節点D(以下「第三接続節点D」という)と共通節点Xとの結線XDと結線XAの為す角θADの計測を行う。
【0075】
次いで、共通節点Xに接続されていると共に、第一接続節点Aよりも第一接続節点Bに近く、その節点と第二接続節点Bの間の領域には共通節点Xと隣接関係にある初期節点aが無い節点E(以下「第四接続節点E」という)と共通節点Xとの結線XEと結線XBの為す角θBEの計測を行う。
【0076】
そして、角θADと角θBEの大きさを比較し、第一接続節点Aおよび第二接続節点Bのうち小さい角度を為す結線を形成しているいずれかの節点を削除する。図7(b)において、例えば、角θBEの方が小さい場合は第二接続節点Bの削除を行うようになっている。
【0077】
そして、制御部5はかかる作業を被塗装ワークα上に配置された全ての節点について行うようになっており、全ての節点について追加又は削除の必要がないと判断するまで初期節点aの追加又は削除の作業を行うようになっている。
【0078】
なお、閾値θ1及び閾値θ2は、それぞれ任意の値であって、閾値θ2が閾値θ1の2分の1以下の値であること以外には閾値θ1及び閾値θ2に特に制限はない。
【0079】
以下において、図8及び図9のフローチャートを参照して、本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0080】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS11)。
【0081】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS12)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。
【0082】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS13)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係にあると設定する。そして、重力方向Gを決定する(ステップS14)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0083】
そして、初期節点aの追加条件が成立したか否かの判断を行う(ステップS15)。初期節点aを追加するか否かの判断を行うにあたっては、まず任意の共通節点X及び共通節点Xに接続されている第一接続節点A及び第二接続節点Bを抽出する。そして、図7(a)に示すように、結線XAと結線XBの為す角θABが閾値θ1より大きいか否かの判断を行う。角θABが閾値θ1より大きいと判断した場合は(YES)、第一接続節点Aと第二接続節点Bの間に節点Cを新たに追加する(ステップS16)。この際、結線XCが角θABを二等分する位置に節点Cは配置されるものであって、節点Cは共通節点Xとの隣接関係があると設定される。
【0084】
ステップS15において角θABが閾値θ1よりも小さいと判断し、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれをも追加条件が不成立の場合には(NO)、初期節点aの削除条件が成立したか否かの判断を行う(ステップS17)。かかる判断を行うにあたっては、角θABを閾値θ2と比較する。角θABが閾値θ2よりも小さいと判断し、初期節点a、即ち、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除条件が成立した場合には(YES)、第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかの削除を行う(ステップS18)。
【0085】
削除を行うにあたっては、図7(b)に示すように結線XDと結線XAの為す角θADと結線XEと結線XBの為す角θBEの大きさを比較し、第一接続節点Aおよび第二接続節点Bのうち小さい角度を為す結線を形成しているいずれかの節点を削除することを行う。
【0086】
そして、ステップS16において節点Cを追加する処理を行った場合、ステップS17において角θABが閾値θ2よりも大きいと判断し第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれも削除すべきでないと判断した場合(NO)、又はステップS18において第一接続節点A又は第二接続節点Bのいずれかを削除する処理を行った後には、全ての初期節点aについて、初期節点aを追加又は削除を行うべきかの判断がなされたかの判断を行う(ステップS19)。
【0087】
全ての初期節点aについて未だに判断が終了していないと判断された場合には(NO)、判断が行われていない初期節点aを抽出して初期節点aの追加をすべきか否かの判断を行う(ステップS15)。
【0088】
全ての初期節点aについて判断が終了していると判断した場合には(YES)、各初期節点aのX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS20)、各初期節点a,a・・・の座標値を基準に各初期節点a,a・・・に連続番号を付する(ステップS21)。
【0089】
そして、初期節点aの初期条件の設定を行う(ステップS22)。初期条件の設定、即ち、初期節点aの属性情報の設定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点aの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点aの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0090】
そして、制御部5は属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を行う(ステップS23)。
【0091】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点aのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点aの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に決定する。
【0092】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された初期節点aの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0093】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS24)。全ての初期節点aについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を液体と決定された初期節点aと属性情報を空気と設定された初期節点aとの比較を行う(ステップS23)。
【0094】
属性情報を液体と決定された初期節点aと隣接関係にある全ての初期節点aの属性情報の決定が行われたと判断した場合には(YES)、比較を終了し、制御部5は、ポスト処理の一部として、液体と空気の境界面を確定する(ステップS25)。
【0095】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、属性情報を液体と決定された節点と隣接関係にある属性情報を空気と決定された節点を結ぶ線上に境界点を配置する。境界点は、属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された節点までの距離の比が5:5になるように配置する。そして、境界点J同士を結んで等値線L2を引く。制御部5は、等値線が液体と空気の境界であると認識し、等値線L2より属性情報が液体であると判断された初期節点aの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L2より属性情報が空気であると判断された初期節点aの存在する側の領域に空気溜まりが発生していると判断する。そして、シミュレーション解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0096】
以上のように、本実施の形態によれば、初期節点の追加又は削除を行うことによって、液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界線としてより滑らかなものを導き出すことができる。
【0097】
(第三の実施形態)
以下において、図面を参照しつつ第三の実施形態について説明する。なお、第三の実施形態については、第一の実施形態との共通部分についての説明は省略し、第一の実施形態と異なる部分について詳述するものとする。
【0098】
制御部5は、節点の追加を行うようになっている。節点を追加するにあたっては、図10に示すように、初期節点a同士を接続している結線上、即ち隣接関係にある初期節点a同士の中間に初期節点aとは別に二次的に節点を追加して配置するようになっている(以下、追加した節点を「二次節点b」という)。
【0099】
二次節点bは、その二次節点bが配置された結線上の両端に配置されている初期節点a,aと隣接関係にあると設定されるようになっている。また、二次節点bが隣接関係にあると設定された初期節点a,aが含まれている要素に含まれているとともに、その二次節点bの配置されている結線又はその延長上にある線と交差する線上に位置する初期節点aと隣接関係にあると設定されるようになっている。なお、本実施の形態において隣接関係とは、初期節点a又は二次節点bの属性情報を決定するにあたり比較対象となることになる関係をいい、隣接関係にない節点同士の比較対象を行うことはない。
【0100】
例えば、図11(a)に示す三角形の要素Qにおいて、二次節点b1は初期節点a3と、二次節点b2は初期節点a1と、及び二次節点b3は初期節点a2と隣接関係にあると設定されるようになっている。また、図11(b)に示す四角形の要素Rにおいては、二次節点b4は初期節点a6及びa7と、二次節点b5は初期節点a4及びa7と、二次節点b6は初期節点a4及びa5と、並びに、二次節点b7は初期節点a5及びa6と隣接関係にあると設定されるようになっている。
【0101】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置された各二次節点bのX,Y,Z座標値を抽出し、抽出した各二次節点aのX,Y,Z座標値を例えば、ハードディスクドライブ12に記憶させるようになっている。
【0102】
また、制御部5は、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a及び二次節点bに連続番号を付するようになっている。なお、連続番号を付するにあたっては初期節点aと二次節点bとを区別せず、それぞれについて同様の基準で付するものである。そのため、ある初期節点aに番号が付された後にその続きの番号が二次節点bに付されたり、二次節点bに番号が付された後にその続きの番号が初期節点aに付されたりする場合がある。
【0103】
連続番号を付する方法に特に制限はないが、例えば、ハードディスクドライブ12に記憶されている初期節点a及び二次節点bのX,Y,Z座標値を用いて所定の基準により初期節点a及び二次節点bに連続番号を付することとしてもよい。
【0104】
また、制御部5は、二次節点bの初期条件の設定、即ち、各二次節点b,b・・・に属性情報を付与するようになっている。例えば、図3に示すような姿勢で被塗装ワークαが塗料槽βに浸漬される場合に、被塗装ワークαをその周囲より水平より上側の視線で眺めた場合に死角となる範囲に位置する二次節点bの属性情報を空気と、即ち物理量ε=0と設定する。また、死角とならない範囲に位置する二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量ε=1と決定する。
【0105】
各二次節点b,b・・・に属性情報を付与する他の手法としては、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の二次節点bの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定する手法がある。
【0106】
また、制御部5は、属性情報を液体と、即ち物理量がε=1と決定された二次節点b又は初期節点aと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの重力方向と反対方向の位置を高さとして比較を行うようになっている。属性情報を液体と決定された二次節点b又は初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点a又二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、ε=1に決定する。
【0107】
これに対して、属性情報が液体と決定された二次節点b又初期節点aの高さが属性情報を空気と設定された二次節点b又は初期節点aの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気と設定された二次節点b又は初期節点aの属性情報は空気、即ち、物理量ε=0に決定する。
【0108】
なお、属性情報を空気と設定された二次節点bと隣接関係にある属性情報を液体と決定されている初期節点aが複数ある場合、それら全ての初期節点aと比較する。そして、それらの初期節点aのうちに属性情報が空気とされた二次節点bよりも1つでも高い又は等しい初期節点aがあった場合は、属性情報を空気とされた二次節点bの属性情報を液体に変更し、その二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量をε=1に決定する。
【0109】
また、制御部5は、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較は、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bに隣接関係にある全て初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定するまで繰り返されるようになっている。
【0110】
なお、制御部5は、二次節点b同士で隣接関係を設定することはない。そのため、属性情報を空気と設定された二次節点bの属性情報を決定するにあたり属性情報を液体と決定されている二次節点bとの比較を行うことはない。
【0111】
以下において、図12のフローチャートを参照して、本実施形態に係る空気溜まり発生シミュレーション装置1の作用について詳述する。
【0112】
先ず、制御部5で対応付けが行われた被塗装ワークαの形状データをキーボード6より入力する(ステップS31)。
【0113】
次いで、被塗装ワークαの表面に複数の初期節点a,a・・・を配置する(ステップS32)。初期節点a,a・・・を被塗装ワークαの表面に配置するにあたっては、まず、被塗装ワークαの表面を二次元の要素に分割する。そして、被塗装ワークαの表面に形成された要素の頂点を初期節点a,a・・・とする。
【0114】
次いで、被塗装ワークαの表面に配置した初期節点a同士の接続、即ち、初期節点a同士についての隣接関係の設定を行う(ステップS33)。ここにおいては、配置された初期節点a同士のうち、要素を構成する辺によって結ばれている初期節点a同士を隣接関係があると設定する。
【0115】
そして、隣接関係にある初期節点a同士の間に二次節点bを配置する(ステップS34)。その際、配置した二次節点と初期節点aとの隣接関係の設定も行う。
【0116】
次いで、各初期節点a,a・・・及び二次節点b,b・・・のX座標値、Y座標値及びZ座標値を抽出し(ステップS35)、抽出した座標値を基準に各初期節点a,a・・・及び二次節点b,b・・・に連続番号を付する(ステップS36)。そして、重力方向Gを決定する(ステップS37)。ここでは例えばZ座標軸を重力方向Gの高さ方向とする。
【0117】
次いで、初期節点a及び二次節点bの初期条件の設定を行う(ステップS38)。初期条件の設定、即ち、初期節点a及び二次節点bの属性情報の決定は、被塗装ワークαのフリーエッジに隣接している初期節点a及び二次節点bの属性情報を液体と、即ち物理量をε=1と決定し、他の初期節点a及び二次節点bの属性情報を空気と、即ち、物理量ε=0と設定することとする。
【0118】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較を行う(ステップS39)。
【0119】
比較を行うにあたっては、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bのZ方向の高さの比較を行う。属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも高い又は等しい場合は、属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に変更し、その初期節点a又は二次節点bの属性情報を液体、即ち、物理量ε=1に決定する。
【0120】
これに対して、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bの高さが属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bの高さよりも低いと判断された場合は、属性情報を空気aと設定された初期節点a又は二次節点bの属性情報を空気、即ち、物理量をε=0に決定する。
【0121】
そして、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある全ての初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定されたか否かの判断を行う(ステップS40)。全ての初期節点a又は二次節点bについて属性情報の決定が行われていないと判断した場合には(NO)、属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと属性情報を空気と設定された初期節点a又は二次節点bとの比較を行う(ステップS39)。
【0122】
属性情報を液体と決定された初期節点a又は二次節点bと隣接関係にある全ての初期節点a又は二次節点bの属性情報が決定されたと判断した場合には(YES)、比較を終了してポスト処理へ移行し、液体と空気の境界面を確定する(ステップS41)。
【0123】
液体と空気の境界面を明確にするにあたっては、境界点Jを属性情報を液体と決定された初期節点aから境界点Jまでの距離と境界点Jから属性情報を空気と判断された初期節点aまでの距離の比が5:5になるように、即ち、物理量がε=0.5となる位置に配置する。そして、図13に示すように、△で表した境界点J同士を結んだ一点鎖線で示す等値線L4を引く。制御部5は、等値線L4が液体と空気の境界であると認識し、等値線L4より属性情報が液体であると決定された初期節点a又は二次節点bの存在する側の領域を液体であると、即ち、浸漬塗装が施された領域であると判断する。また、等値線L4より属性情報を空気であると決定された初期節点a又は二次節点bの存在する側の領域を空気、即ち、空気溜まりが発生している領域であると判断する。そして、解析結果はディスプレイ10に表示されるようになっている。その後、解析を終了する(エンド)。
【0124】
以上のように、本実施の形態に係る発明によれば、図13に示す等値線L4を空気と液体の境界線とすることで、属性情報を空気と決定された初期節点aと隣接関係にある属性情報を液体と決定された初期節点a,a・・・同士を結線して導き出した実線で示す境界線L5よりも、実際の塗装において生じる液体と空気の境界線に近似した境界線を得ることができる。また、実線で示す境界線L5よりも、実際の塗装において生じる液体と空気の境界線に近似した凹凸の程度が少ない滑らかな境界線を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】空気溜まり発生シミュレーション装置の概略構成ブロック図である。
【図2】車体の塗装ラインの概略説明図である。
【図3】塗料槽に被塗装ワークを浸漬する状態を表す模式図である。
【図4】属性情報を液体と判断された初期節点と属性情報を空気と判断された初期節点の中間点を結んで液体と空気との境界を表した図である。
【図5】属性情報を液体と判断された初期節点を結んで液体と空気の境界線を表した図である。
【図6】第一の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図7】(a)は節点を追加する手法をあらわした図であり、(b)は節点を削除する手法を表した図である。
【図8】第二の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図9】第二の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図10】隣接関係にある初期節点同士の中間に二次節点を配置した図である。
【図11】(a)は三角形状の要素上に配置される初期節点と二次節点の隣接関係を表した図であり、(b)は四角形状の要素上に配置される初期節点と二次節点の隣接関係を表した図である。
【図12】第三の実施形態に係る浸漬塗装の解析のフローチャートである。
【図13】第三の実施形態において解析を行った結果、属性情報を液体と判断された初期節点と属性情報を空気と判断された初期節点の中間点を結んで液体と空気との境界を表した図である。
【符号の説明】
【0126】
1 空気溜まり発生シミュレーション装置
5 制御部
6 キーボード
9 キーボードコントローラ
10 ディスプレイ
11 ディスプレイコントローラ
12 ハードディスクドライブ
13 フレキシブルディスクドライブ
14 ディスクコントローラ
15 ネットワーク
16 ネットワークインターフェースコントローラ
19 システムバス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う入力手段と、
前記入力手段により入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、
を特徴とする請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、
前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、
前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、
を特徴とする請求項3に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、 を特徴とする請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項6】
前記制御手段による浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示する表示手段が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項7】
浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、
入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う、
ことを特徴とする空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項8】
前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、
を特徴とする請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項9】
前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、
前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、
を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項10】
前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、
前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、
を特徴とする請求項9に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項11】
前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、 を特徴とする請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項12】
前記浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項1】
浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データの入力を行う入力手段と、
前記入力手段により入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、
を特徴とする請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、
前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、
前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、
を特徴とする請求項3に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、 を特徴とする請求項1に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項6】
前記制御手段による浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示する表示手段が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション装置。
【請求項7】
浸漬塗装を行う被塗装ワークに対応する形状データを入力し、
入力された前記被塗装ワークの表面の前記形状データに複数の節点を配置し、前記複数の節点同士の隣接関係を定めた後に前記複数の節点に液体又は空気の属性情報を付与し、隣接関係にある前記液体の属性情報を付与された節点と前記空気の属性情報を付与された節点とを比較して前記液体の属性情報を付与された節点の属性情報の決定を行うことにより空気溜まりの発生の有無の解析を行う、
ことを特徴とする空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項8】
前記被塗装ワークの表面に最初に配置する節点である初期節点を複数配置し、前記複数の初期節点のうち所定の初期節点の属性情報を液体と決定し、属性情報を液体と決定された初期節点以外の初期節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点の高さが前記属性を空気と設定された初期節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点と隣接関係にある初期節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点の間に境界点を配置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、
を特徴とする請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項9】
前記被塗装ワーク上に配置した前記初期節点の配置後に、前記複数の初期節点の中から任意の共通節点と前記共通節点に接続されている第一接続節点及び第二接続節点を抽出し、前記共通節点と前記第一接続節点との結線と、前記共通節点と前記第二接続節点の結線の為す角θが閾値θ1より大きいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ1より大きい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点を追加して配置し、
前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記第一接続節点と前記第二接続節点の間に初期節点の追加の配置は行わないこと、
を特徴とする請求項7又は請求項8に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項10】
前記初期節点を追加するか否かの判断において、前記角θが前記閾値θ1より小さい場合は、前記角θを前記閾値θ2と比較し、前記角θが前記閾値θ2よりも小さいか否かの判断を行い、
前記角θが前記閾値θ2より小さいと判断した場合は、第三接続節点と前記共通節点との結線と、前記第一接続点と前記共通点の結線の為す角と、第四接続節点と前記共通節点との結線と、前記第二接続点と前記共通点の結線の為す角と、を比較し、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のうち小さい角度を為す結線を形成している節点を削除し、
前記角θが前記閾値θ2より大きいと判断した場合は、前記第一接続節点又は前記第二接続節点のいずれの削除も行わないこと、
を特徴とする請求項9に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項11】
前記隣接関係にある初期節点同士の中間に二次的に配置する節点である二次節点を配置し、前記二次節点と隣接関係がある初期節点を定めた後に、前記二次節点のうち所定の二次節点の属性情報を液体と決定し、前記属性情報を液体と決定された二次節点以外の二次節点の属性情報を空気と設定し、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さを比較し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも高い又は等しい場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を液体と決定し、
前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点の高さが前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の高さよりも低い場合は前記属性情報を空気と設定された初期節点又は二次節点の属性情報を空気と決定し、
属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と隣接関係にある初期節点又は二次節点の属性情報が全て決定した後に、前記属性情報を液体と決定された初期節点又は二次節点と前記属性情報を空気と決定された初期節点又は二次節点の間に境界点を設置し、前記境界点を結線して液体と判断される領域と空気と判断される領域の境界を設けること、 を特徴とする請求項7に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項12】
前記浸漬塗装のシミュレーション解析過程を表示することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の空気溜まり発生シミュレーション方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−164774(P2007−164774A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305895(P2006−305895)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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