説明

窒化アルミニウム単結晶の製造装置及び製造方法

【課題】高品質の窒化アルミニウム単結晶を製造することができる窒化アルミニウム単結晶の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】成長容器2内に内側ガス導入部2fを経て窒素ガスを導入するとともに成長容器2内のガスをガス排出部2eを経て排出させながら、成長容器2内に収容した窒化アルミニウムからなる原料を昇華させ、成長容器2内の種結晶10上に結晶12を成長させて窒化アルミニウム単結晶を得る結晶成長工程を含み、結晶成長工程において、成長容器2を収容する反応管3内に外側ガス導入部3bを経て、窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入することにより、ガス排出部2eの外側に外側ガスを流す窒化アルミニウム単結晶の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム単結晶の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム系半導体は、6.2eVという広いバンドギャップを有することから、青色・紫外発光素子、白色LED、高耐圧・高周波電源ICなどへの利用が期待されている。また、窒化アルミニウム単結晶は、窒化ガリウムとの格子不整合が2.4%と小さいことから、窒化ガリウム系半導体を成長させる際の成長用基板としても期待されている。
【0003】
このような窒化アルミニウム単結晶の製造方法として、種々のものが知られており、中でも、昇華法は、一般的に成長速度が大きいため、バルク結晶の作製に対して有力な方法としてよく使用されている。昇華法は、成長容器を加熱して、成長容器の底部および上部に温度差を設け、底部に載置した原料を昇華させ、その昇華ガスを、底部より温度の低い上部に固定された種結晶にて再結晶させることで結晶を成長させる方法である。
【0004】
昇華法による窒化アルミニウム単結晶成長は、通常は密閉された成長容器内で行われるが、密閉しない成長容器内で行われることもある(下記特許文献1)。下記特許文献1に記載の単結晶の製造装置は加熱炉を備えており、その加熱炉には、窒化アルミニウム成長に関わる雰囲気ガスである窒素ガスを導入するガス導入口が設けられ、加熱炉内の圧力を一定にするためにガス排出口が設けられている。また加熱炉の底部には原料を収容するルツボが配置され、加熱炉の上部にはルツボの上方に種結晶が固定されている。そして、ガス導入口は加熱炉底部に設けられ、ガス排出口は種結晶よりも上方に設けられている。そして、原料を昇華させ、ガス導入口から窒素ガスを導入すると、原料から昇華したガスとガス導入口から導入された窒素ガスとの混合ガスが、種結晶において冷却されることで再結晶して固相になり結晶が成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3970789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1記載の発明は以下の課題を有していた。
【0007】
即ち、特許文献1記載の発明では、ガス排出口は種結晶よりも上方に設けられている。通常、加熱炉においては底部から上部に向かって温度が低くなるように温度プロファイルが形成されるため、ガス排出口の温度は、種結晶の温度よりも低くなる。しかも、原料から昇華したガスとガス導入口から導入された窒素ガスとの混合ガスは、種結晶において冷却されてからガス排出口を経て排出される。このため、ガス排出口においては、混合ガスの温度が種結晶の先端部の温度より低くなっており、窒化アルミニウム粒子が析出しやすく、経過時間によっては、析出した窒化アルミニウム粒子でガス排出口が閉塞される場合があった。その結果、加熱炉内の圧力制御が困難になると共に成長条件が変化して窒化アルミニウム単結晶の品質に悪影響を及ぼす場合があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高品質の窒化アルミニウム単結晶を製造することができる窒化アルミニウム単結晶の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入するとともに前記成長容器内のガスをガス排出部を経て排出させながら、前記成長容器内に収容した窒化アルミニウムからなる原料を昇華させ、前記成長容器内の種結晶上に結晶を成長させて窒化アルミニウム単結晶を得る結晶成長工程を含み、前記結晶成長工程において、前記成長容器を収容する反応管内に外側ガス導入部を経て、窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入することにより、前記ガス排出部の外側に前記外側ガスを流す窒化アルミニウム単結晶の製造方法である。
【0010】
この製造方法によれば、成長容器内に収容した窒化アルミニウム単結晶の原料を昇華させて、成長容器内の種結晶上に結晶を成長させることによって窒化アルミニウム単結晶が得られる。このとき、成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入すると、窒素ガスと、原料の昇華ガスとの混合ガスが、種結晶上に成長した結晶に供給され、冷却されてから、ガス排出部を経て排出される。このとき、成長容器を収容する反応管内に外側ガス導入部を経て、窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入することにより、ガス排出部の外側に外側ガスを流すことで、ガス排出部において、排出されるガス中に含まれる昇華ガスの再結晶による窒化アルミニウム粒子の析出を十分に抑制することができ、析出した窒化アルミニウム粒子によるガス排出部の閉塞を十分に抑制することができる。従って、成長容器内の圧力調整が容易になり、昇華速度などの成長条件の変化も抑制することが可能となる。
【0011】
上記窒化アルミニウム単結晶の製造方法において、前記成長容器内の原料ガスの流量に対する前記反応管内に導入される前記外側ガスの流量の比が0.50〜20であることが好ましい。
【0012】
上記比が上記範囲内にあると、上記比が0.50未満である場合に比べて、ガス排出部から流出するガスの流路が狭くなることがより十分に抑制され、成長容器内の圧力上昇がより十分に抑制される。その結果、昇華速度の減少による成長条件の変化がより十分に抑制され、より高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができる。また、上記比が上記範囲内にあると、上記比が20を超える場合に比べて、過剰なガス消費がより抑えられ、経費面及び環境面で無駄がなくなる。
【0013】
上記窒化アルミニウム単結晶の製造方法において、前記外側ガスが、前記窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスであることが好ましい。
【0014】
この場合、ガス排出部における窒化アルミニウムの析出がより十分に抑制され、より高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができる。
【0015】
また本発明は、成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入するとともに前記成長容器内のガスをガス排出部を経て排出させながら、前記成長容器内に収容した窒化アルミニウムからなる原料を昇華させ、前記成長容器内の種結晶上に結晶を成長させて窒化アルミニウム単結晶を得る窒化アルミニウム単結晶の製造装置において、前記成長容器を収容する反応管と、前記成長容器の外側で且つ前記反応管内に窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入する外側ガス導入部とを備える窒化アルミニウム単結晶の製造装置である。
【0016】
この製造装置によれば、成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入しながら、窒化アルミニウム単結晶の原料が昇華され、成長容器内の種結晶上に結晶が成長し窒化アルミニウム単結晶が得られる。そして、窒素ガスと原料の昇華ガスとの混合ガスが種結晶に供給され、冷却されてから、ガス排出部を経て排出される。このとき、成長容器の外側で且つ反応管内に、外側ガス導入部を通して、窒素ガス又は窒化アルミニウム生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入すると、ガス排出部の外側に、上記外側ガスを流すことが可能となる。その結果、ガス排出部において、排出されるガス中に含まれる昇華ガスの再結晶による窒化アルミニウム粒子の析出を十分に抑制することができ、析出した窒化アルミニウム粒子によるガス排出部の閉塞を十分に抑制することができる。従って、成長容器内の圧力調整が容易になり、昇華速度などの成長条件の変化も小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高品質の窒化アルミニウム単結晶を製造することができる窒化アルミニウム単結晶の製造装置及び製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造装置の一実施形態を示す切断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
まず本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造装置の一実施形態について図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造装置を示す切断面端面図である。図1に示すように、窒化アルミニウム単結晶の製造装置(以下、単に「製造装置」と呼ぶ)100は、窒化アルミニウム単結晶の原料1を収容する成長容器2と、成長容器2を収容する反応管3と、反応管3の周囲に設けられる加熱装置4とから構成されている。
【0021】
反応管3は、筒状の反応管本体部3aと、反応管本体部3aの側面に接続され、成長容器2の外側で且つ反応管本体部3aの内側に外側ガスを導入する外側ガス導入管3bとを備えている。反応管3は、例えば黒鉛、タングステン又は炭化タンタルで構成されている。外側ガスとしては、窒素ガス、又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスが挙げられる。窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスとしては、アルゴンガスなどが挙げられる。
【0022】
成長容器2は、筒状の原料収容部2aと、原料収容部2aの外周面に突設され、溝2bを形成する環状部材2cと、原料収容部2aを覆うドーム状のキャップ部材2dとを有している。
【0023】
原料収容部2aの内部には、窒化アルミニウム単結晶の原料1を収容するルツボ5が収容されている。また原料収容部2aには、窒素ガスを導入する内側ガス導入管2fが反応管3の本体部3aを貫通して原料収容部2aに接続されている。内側ガス導入管2fの先端には内側ガス導入口2hが形成されている。
【0024】
キャップ部材2dには、支持部材7の先端に固定した種結晶保持体8を挿入するための挿入口2gが形成されている。ここで、種結晶保持体8は、支持部材7に固定される基材9と、種結晶10と、基材9及び種結晶10を接合する接合部11とで構成されている。ここで、基材9は例えば黒鉛で構成される。種結晶10は通常、窒化アルミニウム単結晶で構成されるが、炭化ケイ素の単結晶、又は炭化ケイ素の単結晶上に窒化アルミニウム単結晶膜を成長させたもので構成されてもよい。接合部11は、例えば種結晶10と同一材料からなる多結晶体で構成される。
【0025】
キャップ部材2dは、その内側に原料収容部2aの上端部を挿入可能となっている。またキャップ部材2dの端部は、環状部材2cの溝2bに挿入可能となっている。そして、キャップ部材2dの内側に原料収容部2aの上端部を挿入し、キャップ部材2dの端部を環状部材2cの溝2bに挿入することで、単結晶配置領域6が形成されるとともに、ガス排出路(ガス排出部)2eが形成される。
【0026】
単結晶配置領域6は、原料収容部2aの上端と、キャップ部材2dの内壁面とによって形成されるものであり、ガス排出路2e及び原料収容部2aよりも上方に設けられている。そして、ガス排出路2eは、原料が配置されるルツボ(原料配置部)5よりも高い位置で且つ単結晶配置領域6よりも低い位置に配置されている。即ち、ガス排出路2eは、ルツボ5と単結晶配置領域6との間に配置されている。
【0027】
加熱装置4は、図1に示すように、複数の独立したリング状のヒータ4a、4b、4cを備えている。これらの複数のヒータ4a、4b、4cは、成長容器2の下部から上部に向かって順次配置され、各ヒータ4a、4b、4cにおける発熱量を独立して調整することが可能である。ヒータ4a,4b,4cはそれぞれ、蛇行状であることが好ましい。ヒータ4a,4b,4cのそれぞれは、複数(例えば2つ)に分割されていてもよい。ここで、ヒータ4aは、原料1の温度を調整するためのものである。従って、ヒータ4aは、ルツボ5を包囲するように配置されている。ヒータ4bはガス排出路2eの温度を調整するためのものである。従って、ヒータ4bはガス排出路2eを包囲するように配置されている。またヒータ4cは単結晶配置領域6を加熱するためのものである。従って、ヒータ4cは、単結晶配置領域6を包囲するように配置されている。
【0028】
なお、原料収容部2a及びキャップ部材2dは通常、黒鉛で構成される。但し、原料収容部2a及びキャップ部材2dの内壁面は、原料1の昇華時に生成されるアルミニウムガスによる腐食を抑制する観点からは、炭化タンタル(TaC)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タングステン(WN)又は窒化タンタル(TaN)などの材料でコーティングされることが好ましく、中でも、アルミニウムガスに対する耐腐食性に特に優れることから、炭化タンタルでコーティングされることが好ましい。
【0029】
次に、上記製造装置100を用いた窒化アルミニウム単結晶の製造方法について説明する。
【0030】
まず成長容器2において、原料収容部2a内に配置したルツボ5に窒化アルミニウム単結晶の原料1を収容する。
【0031】
一方、棒状の支持部材7の先端に種結晶保持体8を固定する。このとき、種結晶保持体8の基材9を支持部材7の先端に固定する。そして、種結晶保持体8を支持した支持部材7を、キャップ部材2dの挿入口2gに、種結晶保持体8側から挿入する。このとき、種結晶10は、成長容器2内の単結晶配置領域6に配置される。具体的には、種結晶10は、その先端部が原料収容部2aの底面2iから所定の距離離れた位置に配置されるように単結晶配置領域6に配置される。
【0032】
他方、成長容器2内に内側ガス導入管2fの内側ガス導入口2hを経て窒素ガスを導入しながら、加熱装置4を作動させる。このとき、例えばリング状ヒータ4aの発熱量を、ヒータ4bの発熱量よりも大きくし、ヒータ4bの発熱量をヒータ4cの発熱量よりも大きくする。
【0033】
こうして、加熱装置4により、窒化アルミニウム単結晶の原料1が加熱されて昇華すると、原料1から昇華した昇華ガスと内側ガス導入口2hから導入された窒素ガスとの混合ガスが、種結晶10において冷却されることで再結晶して固相になり種結晶10に結晶12が成長する。こうして窒化アルミニウム単結晶が得られる。
【0034】
窒素ガスと原料1の昇華ガスとの混合ガスは、種結晶10から成長した結晶12に供給され、冷却されてから、ガス排出路2eを経て排出される。
【0035】
一方、結晶12を成長させている間は、成長容器2を収容する反応管3内に外側ガス導入管3bを経て外側ガスを導入することにより、ガス排出路2eの外側に外側ガスを流す。すると、ガス排出路2eにおいて、排出されるガス中に含まれる昇華ガスの再結晶による窒化アルミニウム粒子の析出を十分に抑制することができ、析出した窒化アルミニウム粒子によるガス排出路2eの閉塞を十分に抑制することができる。従って、成長容器2内の圧力調整が容易になり、成長容器2内の昇華速度などの成長条件の変化も抑制することが可能となる。よって、高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができる。
【0036】
このとき、成長容器2内の原料ガスの流量に対する反応管3内に導入される外側ガスの流量の比は特に制限されるものではないが、0.50〜20であることが好ましく、1〜20であることがより好ましく、4〜20であることがさらに好ましく、9〜20であることが特に好ましい。
【0037】
上記比が0.50〜20の範囲内にあると、上記比が0.50未満である場合に比べて、ガス排出路2eから流出するガスの流路が狭くなることがより十分に抑制され、成長容器2内の圧力上昇がより十分に抑制される。その結果、昇華速度の減少による成長条件の変化がより十分に抑制され、より高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができる。また、上記比が0.50〜20の範囲内にあると、上記比が20を超える場合に比べて、過剰なガス消費がより抑えられ、経費面及び環境面で無駄がなくなる。
【0038】
また外側ガスは、窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスであることが好ましい。この場合、外側ガスとして窒素ガスを用いる場合と比べて、ガス排出路2eにおける窒化アルミニウムの析出がより十分に抑制され、より高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができる。
【0039】
さらに、外側ガスの温度は、特に限定されるものではないが、ガス排出路2eの温度を原料部温度よりも高い温度にすることが可能な温度であることが好ましい。この場合、ガス排出路2eにおける温度を原料部温度よりも高くすることができるため、ガス排出路2eにおける窒化アルミニウムの析出をより十分に抑制することができる。
【0040】
こうして種結晶10から結晶12を成長させていると、結晶12は、単結晶配置領域6から原料収容部2aに向かって成長するため、結晶12の先端部が、単結晶配置領域6から原料収容部2a内に侵入するおそれがある。この場合、結晶12の先端部の温度が高くなり、原料1の昇華ガスが固相になりにくくなるため、結晶12の成長が停止されるおそれがある。加えて、結晶12の先端部の温度が、ガス排出路2eよりも高くなるため、ガス排出路2eで窒化アルミニウム粒子の析出によるガス排出路2eの閉塞が起こるおそれがある。そのため、結晶12が常に単結晶配置領域6に配置され、結晶12が原料収容部2a内に侵入しないように、支持部材7を結晶12の成長に合わせて引き上げることが好ましい。このとき、結晶12の最下端部の位置が原料収容部2aの底面から常に一定の位置になるように支持部材7を引き上げることがより好ましい。
【0041】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、リング状ヒータ4aの発熱量を、ヒータ4bの発熱量よりも大きくし、ヒータ4bの発熱量をヒータ4cの発熱量よりも大きくすることにより、原料1、ガス排出路2e及び単結晶配置領域6の順で温度が高くなっているが、リング状ヒータ4bの発熱量を、ヒータ4aの発熱量よりも大きくし、ヒータ4aの発熱量をヒータ4cの発熱量よりも大きくすることにより、ガス排出路2eの温度を原料1及び単結晶配置領域6の温度よりも高くすることが好ましい。この場合、ガス排出路2eにおける窒化アルミニウム粒子が析出することをより効果的に抑制することができる。そのため、析出した窒化アルミニウム粒子によるガス排出路2eの閉塞をより十分に抑制することができる。従って、成長容器2内の圧力調整が容易になり、昇華速度などの成長条件の変化もより小さくすることが可能となる。なお、ガス排出路2eの温度は、ガス排出路2eの入口よりも出口の方が高くなる。このため、上記実施形態においては、ガス排出路2eの入口における温度が、ガス排出路2eの温度となる。
【0042】
また上記実施形態では、原料収容部2aの外周面に環状部材2cを設け、この環状部材2cの溝2bにキャップ部材2dの先端を挿入してガス排出路2eを形成しているが、環状部材2cは必ずしも必要ではなく、省略が可能である。この場合でも原料収容部2aとキャップ部材2dとによりガス排出路2eを形成することが可能である。
【0043】
また上記実施形態では、ガス排出路2eが、原料が配置されるルツボ(原料配置部)5よりも高い位置で且つ単結晶配置領域6よりも低い位置に配置されているが、ガス排出路2eは、原料が配置されるルツボ(原料配置部)5よりも低い位置で且つ単結晶配置領域6よりも高い位置に配置されていてもよい。
【0044】
さらにまた上記実施形態では、支持部材7により結晶12の位置を自由に変動させることが可能となっているが、支持部材7は必ずしも必要なものではなく、省略が可能である。支持部材7が省略される場合、結晶12は成長容器2の内壁面に固定されていればよい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の内容を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1に示す窒化アルミニウム単結晶の製造装置を用い、以下のようにして窒化アルミニウム単結晶を製造した。
【0047】
即ち、まずドーム状のキャップ部材2dを取り外した。このとき、キャップ部材2dは、棒状の支持部材7を挿入口2gに挿入した状態で取り外した。支持部材7は、タングステンで構成した。
【0048】
次に、ルツボ5に窒化アルミニウム粉末からなる原料1を収納した。その後、支持部材7の先端に、タングステンからなる基材9、窒化アルミニウム結晶の多結晶体からなる接合部11、窒化アルミニウム単結晶からなる種結晶10を順次積層してなる種結晶保持体8を固定した。
【0049】
次に、キャップ部材2dの内側に、円筒状の原料収容部2aの上端部を挿入し、キャップ部材2dの端部を、原料収容部2aの外周面に設けた環状部材2cの溝2bに挿入した。こうして、キャップ部材2dと原料収容部2aとによりガス排出路2eを形成した。
【0050】
そして、内側ガス導入管2hから窒素ガスを400sccmの流量で導入するとともにガス排出路2eからガスを排出させ、成長容器2内の圧力を100Torrに保持した。そして、支持部材7を引き上げ、種結晶10を、原料収容部2aの上端よりも上方にある単結晶配置領域6内に配置した。このとき、種結晶10の先端部が、原料収容部2aの底面から5cmの位置に配置されるようにした。
【0051】
また、反応管3の反応本体部3a内に、窒素ガスからなる外側ガスを250sccmの流量で導入することによりガス排出路2eの外側に外側ガスを流した。こうして、原料ガスの流量に対する外側ガスの流量の比を0.50とした。このとき、原料ガスの流量は、内側ガスの流量と、昇華ガスの流量との和で算出し、昇華ガスの流量は、成長容器2内の昇華量を昇華時間で割ることによって算出した。さらに外側ガスについては、ガス排出路2eでの温度が原料部温度よりも高い2250℃となるようにした。
【0052】
次に、加熱装置4として、リング状ヒータを3個用意し、これらのリング状ヒータを、反応管本体3aの延び方向(高さ方向)に沿って配置した。以下、最も下側にあるヒータを「下部ヒータ」、最も上側にあるヒータを「上部ヒータ」、上部ヒータと下部ヒータとの間にあるヒータを「中央部ヒータ」と呼ぶこととする。そして、3個のリング状ヒータをそれぞれ作動させ、下部ヒータの高さ方向に沿った中心位置と同じ高さ位置の反応管3の外壁温度(以下、「原料部温度」と呼ぶ)を2200℃とし、上部ヒータの高さ方向に沿った中心位置と同じ高さ位置の反応管3の外壁温度(以下、「成長部温度」と呼ぶ)を2100℃とし、中央部ヒータの高さ方向に沿った中心位置と同じ高さ位置の反応管3の外壁温度(以下、「中間部温度」と呼ぶ)を2250℃とした。なお、ガス排出路2eにおける最低温度はガス排出路2eの入口における温度であり、この温度は、中間部温度とほぼ同じであるため、中間部温度を、ガス排出路2eの温度とした。なお、原料部温度、中間部温度及び成長部温度は放射温度計により測定した。
【0053】
こうして、中間部温度を、成長部温度よりも高い温度に保持しながら、窒化アルミニウム単結晶を200時間にわたって成長させた。
【0054】
(実施例2〜5及び7)
原料ガスの流量に対する外側ガスの流量の比を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして、窒化アルミニウム単結晶を成長させた。
【0055】
(実施例6)
外側ガスの種類を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして窒化アルミニウム単結晶を成長させた。
【0056】
(実施例8)
原料ガスの流量に対する外側ガスの流量の比、及び外側ガスの種類を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして窒化アルミニウム単結晶を成長させた。
【0057】
(実施例9)
原料部温度、中間部温度および成長部温度を表1に示す通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして、窒化アルミニウム単結晶を成長させた。
【0058】
(比較例1)
反応管内に外側ガスを導入しなかったこと以外は実施例1と同様にして窒化アルミニウム単結晶を成長させた。
【0059】
[評価]
(1)結晶の品質
実施例1〜8及び比較例1で得られた窒化アルミニウム単結晶について、X線回折により(0002)面のロッキングカーブを測定し、そのピークの半値幅(FWHM)を求めた。結果を表1に示す。
(2)ガス排出路における閉塞の有無
実施例1〜8及び比較例1で窒化アルミニウム単結晶を成長させた後、使用した単結晶製造装置におけるガス排出路を観察した。結果を表1に示す。
【表1】

【0060】
表1に示す結果より、実施例1〜8で得られた窒化アルミニウム単結晶は、比較例1で得られた窒化アルミニウム単結晶に比べてFWHMの値がかなり小さかったことから、結晶性の高い窒化アルミニウム単結晶が得られていることが分かった。
【0061】
一方、実施例1〜8で使用した単結晶の製造装置においては、ガス排出路において窒化アルミニウム粒子の析出がわずかながら見られたものの、窒化アルミニウム粒子による閉塞は見られなかった。これに対し、比較例1で使用した単結晶の製造装置においては、ガス排出路において窒化アルミニウム粒子がかなり析出し、ガス排出路を閉塞させていた。
【0062】
なお、ガス排出路が閉塞されているかどうかについては、実施例1〜8及び比較例1のガス排出路を目視にて観察した場合に、窒化アルミニウム多結晶の析出が顕著であるかどうかによって判断した。
【0063】
以上のことから、本発明に係る窒化アルミニウム単結晶の製造方法によれば、ガス排出路における閉塞が十分に抑制され、その結果、高品質の窒化アルミニウム単結晶を得ることができることが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1…原料
2…成長容器
2e…ガス排出路(ガス排出部)
2f…内側ガス導入管(内側ガス導入部)
2h…内側ガス導入口
3…反応管
3b…外側ガス導入管(外側ガス導入部)
10…種結晶
12…結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入するとともに前記成長容器内のガスをガス排出部を経て排出させながら、前記成長容器内に収容した窒化アルミニウムからなる原料を昇華させ、前記成長容器内の種結晶上に結晶を成長させて窒化アルミニウム単結晶を得る結晶成長工程を含み、
前記結晶成長工程において、前記成長容器を収容する反応管内に外側ガス導入部を経て、窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入することにより、前記ガス排出部の外側に前記外側ガスを流す窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記成長容器内の原料ガスの流量に対する前記反応管内に導入される前記外側ガスの流量の比が0.50〜20である請求項1に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記外側ガスが、前記窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスである、請求項1又は2に記載の窒化アルミニウム単結晶の製造方法。
【請求項4】
成長容器内に内側ガス導入部を経て窒素ガスを導入するとともに前記成長容器内のガスをガス排出部を経て排出させながら、前記成長容器内に収容した窒化アルミニウムからなる原料を昇華させ、前記成長容器内の種結晶上に結晶を成長させて窒化アルミニウム単結晶を得る窒化アルミニウム単結晶の製造装置において、
前記成長容器を収容する反応管と、
前記成長容器の外側で且つ前記反応管内に窒素ガス又は窒化アルミニウムの生成反応に対する不活性ガスからなる外側ガスを導入する外側ガス導入部とを備える窒化アルミニウム単結晶の製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2013−35720(P2013−35720A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174109(P2011−174109)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】