説明

窒化ガリウム結晶及びウェハ並びに製造方法

窒化ガリウムを含む結晶を開示する。この結晶は、2.75mmより大きい少なくとも1つの次元と約10cm−2未満の転位密度とを有する少なくとも1つの粒子を有し、実質的に傾角境界がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2004年12月13日に出願された米国特許出願第11/010,507号の一部継続出願である2006年3月15日に出願された米国特許出願第11/376,575号の一部継続出願であり、2002年12月27日に出願された米国特許出願第10/329,981号の一部継続出願である。本出願は、これらの優先権及びそれによる利益を主張し、これらの開示は、参照によりここに援用される。
【0002】
連邦政府により援助された研究開発に関する記載
米国政府は、米国商務省の米国標準技術局によって与えられた協力協定第70NANB9H3020号に基づき、本発明についての一定の権利を有することが許されている。
【背景技術】
【0003】
本発明は、概括的に、窒化ガリウムを含む高品質単結晶及びその製造方法に関する。
【0004】
窒化ガリウム(GaN)系のオプトエレクトロニクス(光電子工学)デバイス及びエレクトロニクス(電子工学)デバイスは、極めて商業的に重要性である。しかし、これらデバイスの品質及び信頼性は、極めて高い欠陥濃度、特にデバイスの半導体層での貫通転位によって低下してしまう。この転位は、サファイア又は炭化ケイ素のような非GaN基板に対するGaN系半導体層の格子不整合に起因し得る。さらなる欠陥は、層の成長方法の詳細に依存して、熱膨張不整合、不純物及び傾角境界から生じ得る。
【0005】
欠陥の存在は、エピタキシャル成長させた層に悪影響を及ぼし、電子デバイスの性能及び信頼性を低下させ、欠陥の濃度及び/又は影響を減らすために複雑で厄介な製造ステップが必要となる。窒化ガリウムを含む結晶を成長させる実質的に多数方法が提案されているが、現行の方法には改良の余地がある。
【0006】
米国特許第5,637,531号及び6,273,948号明細書は、高圧及び高温で窒化ガリウム結晶を成長させる方法を開示し、熱力学的に安定な相としてGaNを維持するために、液体のガリウム及びガリウム系合金を溶媒として利用し、溶融物に対し窒素の高圧を利用する。このプロセスでは、約10〜10cm−2の転位密度を有する導電性GaN結晶を、又は約10〜10cm−2の転位密度を有する半絶縁性GaN結晶を成長させることができ、これについては、Porowskiが「ほとんど無欠陥のGaN基板」[MRS Internet J. Nitride Semicond. Research 4S1, G1.3 (1999)]で記載する通りである。
【0007】
しかし、上記導電性結晶は、5×1019cm−3のオーダーで高濃度のn型欠陥を有する。この欠陥は、酸素不純物及び窒素空格子点を含むと考えられる。その結果、この結晶は比較的不透明であり、スペクトルの可視部の波長で約200cm−1の吸収係数を有する。その結果、このような結晶上に製造された発光ダイオード(LED)によって放射された光の半分までが、基板によって吸収されてしまう。これは、サファイア又は透明なSiC基板上に製造された従来のヘテロエピタキシャルなLEDに対して、大きな欠点となる。さらに、溶融したGaの中で成長した、名目上ドープしてない結晶における高濃度のn型欠陥は、格子定数を約0.01〜0.02%まで増加させて、格子不整合を引き起こし、それの上に堆積させるドープされていないエピタキシャルGaN層に歪みを発生させる。さらに、この方法によって形成されたドープされてないGaN基板は、高電力デバイスの性能に悪影響を与え得るかなり低いキャリア移動度、約30〜90cm/V・sを有する。
【0008】
液体Ga中で成長させたGaN結晶の透明度及び転位密度は、Mg又はBeを成長媒体に添加することによって改良することができるが、このようにして製造された結晶は、半絶縁性であり、約10Ω・cmより大きい抵抗率(resistivity)を有する。そのような結晶は、1つの電気接点が基板自体に製作されている縦型デバイス(垂直デバイス)には適さない。この基板は、いくつかのさらなる欠点を有し、それには以下が含まれる。(i)Mg原子及びO原子が、それぞれ約1019cm−3の高濃度であり[J. I. Pankove et al., Appl. Phys. Lett. 74, 416 (1999)]、これらは、高温処理中にデバイス構造内へ拡散する可能性を有している。(ii)比較的低い熱伝導度を有する。例えば二次元電子ガスによる輸送が生じるように設計されている高電子移動度トランジスタ(HEMT)において、ドープされてないGaN緩衝層へとドーパントが拡散し、これによってキャリア移動度が低下する。さらに、点状欠陥の存在によりバルクGaN基板においてフォノンが散乱し、熱伝導度が下がり、これにより、GaN系HEMTにおいて理論的な性能レベルに達するのに不利となる。
【0009】
Porowski及び共同研究者たちによる方法の、最終的な、しかし極めて重要な制約は、スケールアップできそうにない、すなわち50mm以上の直径をもつGaNブール及びウェハを製造できそうにないことにある。このプロセスによって、典型的には、約10mmの直径及び0.1〜0.2mmの厚みをもつ多数の小板状結晶が得られるが、さらに長時間成長させても、同等の品質を有するより大きな結晶を生じない。この方法によってこれまで成長させた最大の結晶は、直径約20mmである。このプロセスは、厚いブールでなく小板状体を与えるので、従来のウェハ技術(スライス、研磨)に関連した規模の経済性を達成することはできず、基板は極めて高価なままであろう。
【0010】
バルクに準ずる(pseudo-bulk)GaN又はバルクGaNの成長に適した最も成熟した技術は、HVPEとしても知られる水素化物/ハロゲン化物の気相エピタキシである。最も広く応用されている手段では、HClは、液体Gaと反応して気相GaClを生成し、この気相GaClを基板へと移して、そこで、注入されたNHと反応させてGaNを生成する。典型的には、この堆積は、非GaN基板、例えばサファイア、ケイ素、ヒ化ガリウム又はLiGaO上で行う。HVPE成長した膜中の転位密度は、初期には極めて高く、GaNのヘテロエピタキシで典型的な1010cm−2のオーダーであるが、GaNを厚み100〜300μmに成長させた後は約10cm−2の値までに下がる。例えば、Vaudoら[米国特許第6,596,079号明細書]は、10cm−2未満の転位密度を有するGaNウェハ又はブールを製造する方法を教示する。
【0011】
HVPEによって、より厚い膜での欠陥濃度をさらに下げることは可能であるが、ウェハ全体にわたって10cm−2未満の値が得られる可能性は少ない。非GaN基板上に(又はそれ自体を非GaN基板上に成長させたGaN基板上に)成長させたGaNの転位密度が、GaN層が厚くなると減少することは充分に確立されている。たとえGaNウェハがHVPE成長させた厚いブールからスライスされ、さらなる成長のためにシード(種)として使用されたとしても、残留転位及び粒子又は傾角境界は、永久的に存ることがと予想される。Vaudoら[Phys. Stat. Solidi(a) 194, 494 (2002)]は、HVPE厚膜の粒子内で、10cm−2未満の転位密度を報告している。しかし、刃状転位を含む可能性が最も高い粒子間の転位の密度は、はるかに高いことが予想される。さらに、基板と膜との間の熱膨張不整合に起因して、HVPEウェハ中に歪みが存在する。この歪みがあるために、成長後に基板及び薄膜を冷却すると反りが生じる。歪み及び反りの少なくとも一部は、元々ある基板を取り除いた後にさえも残る。基板中に存在する貫通転位、歪み及び反りは、オプトエレクトロニクス又はエレクトロニクスのデバイスを形成するための、そのような基板に堆積されたエピタキシャル層中にも存在することが予想される。
【0012】
Melnikら[米国特許第6,613,143号明細書]は、SiC基板上でのGaNのHVPE成長方法を開示する。この発明者らは、高温酸中で湿式化学エッチングを使用して欠陥密度を測定したことを報告している。Melnikらは、厚み1cmのブールからスライスされたウェハについて10〜100cm−2、厚み5、7又は9mmのブールからスライスされたウェハについて10〜1000cm−2又は100〜10,000cm−2のエッチピット密度を報告している。Melnikらによって報告されたエッチピット密度は、この材料中の転位密度を実際には過度に小さく見積もっている可能性が極めて大きい。Melnikらの成長方法は、いくつかの細かい点(例えばSiC基板の使用)で異なるものの、全体としては多くの別のグループによって採用された方法に極めて類似している。図9によれば、厚み約5〜10mmのGaN層については、Melnikらによって報告された10〜10,000cm−2のEPD値とは対照的に、10〜10cm−2の転位密度が予想される。図1のデータに対する10倍の不一致は、実験間での、またグループ間で観察される変動以内とすることができるだろうが、10倍(10対10cm−2)というのは全く信じがたい。特に、例えばMelnikにより採用されたタイプの酸処理を使用して測定した場合のGaN中のエッチピット密度が、転位密度を、例えば10倍以上著しく小さく見積もっていることも十分に確立されている。
【0013】
さらに、Vaudoら及びMelnikらによりHVPEによって成長させたタイプの厚膜は、単一のシードを使用しても傾角境界を含むだろう。HVPEによって成長させたGaN厚膜におけるそのような挙動は、多くの著者が報告している。傾角境界は、GaNインゴット全体にわたって、その厚みには無関係に、存続する。例えば、傾角境界を含むGaNのシード上で成長させたGaNについて、同じことが言え、それというのは、傾角境界は、SiC又はサファイアのような基板上のヘテロエピタキシャル膜に由来するからである。
【0014】
大面積で低転位密度のGaNの成長のために広く用いられている別の方法は、様々に呼ばれ、エピタキシャル横方向成長(overgrowth)(ELO又はELOG)、横方向エピタキシャル成長(LEO)、選択領域成長(SAG)、逆ピラミッド形ピット(DEEP)をもつエピタキシャル成長による転位消去等と言われる。この方法の全ての変形において、ヘテロエピタキシャルGaN成長は、基板上で、マスク、トレンチ等によって分離されている一次元又は二次元アレイの位置で開始される。成長位置の周期又はピッチは、3〜100μm、典型的には約10〜20μmである。個々のGaN微結晶が成長し、融合する。さらに、エピタキシャル成長が、融合したGaN材料の上部で連続して、厚膜又は「インゴット」を生成する。典型的には、融合したGaN材料上に形成される厚いGaN層は、HVPEによって蒸着される。
【0015】
ELOプロセスは、特にマスクの上方の領域で、典型的には約10〜10cm−2の水準にまで転位の濃度を大きく減らすことができる。しかし、ELO基板上で製造された多くのタイプのデバイスは、少なくとも約10μm(10−4cm)の表面積を有し、依然として相当な数の貫通転位を含む。さらに、多くの著者は、ELO構造を単結晶と呼ぶけれども、ELO法のGaN基板は真の単結晶ではない。個々のGaN微結晶が粒子を構成し、粒子が融合結合する地点には、典型的には低角粒界又は傾角境界が存在する。この低角境界又は傾角境界は、刃状転位の配列として現れ、GaN内に横方向の歪みを発生させる。結晶学的な傾き(crystallographic tilting)の範囲及び程度は、マスキング及び成長条件の詳細に依存するが、一般に、粒子の融合に関連した少なくとも低いレベルの傾きが存在する。結晶学的な傾きの多く又は大部分は、単に熱膨張不整合の結果というよりは成長の際に直接的に形成される。傾角境界間の間隔は、元々のマスクの周期又はピッチと等しく、典型的には約10〜20μmに等しい。傾角境界は、そのような基板上に成長させたエピタキシャル層を通して永久的に残るであろう。その結果、そのような基板上に形成されたデバイスは、デバイスが約100μmより大きな横方向寸法有する場合、特にデバイスが約300μmより大きな横方向寸法を有する場合、さらにデバイスが約2000μmより大きな横方向寸法を有する場合に、デバイスを通って延びる傾角境界を有することになる。
【0016】
例えば、傾角境界の存在から生じる、ホモエピタキシャルGaN系デバイスの残留応力又は歪みは、レーザダイオード、高出力発光ダイオード、高電力トランジスタ又は他のデバイスの劣化を早め得る。同様に、傾角境界に関連する転位は、高出力発光ダイオード、レーザダイオード及びパワーエレクトロニクスデバイスの寿命を縮めうる。レーザダイオードの寿命の転位密度への依存を示すそのような挙動の例を、図12に示す。転位によるデバイス寿命の短縮は、活性層への不純物拡散が容易となること又は新しい転位が容易に発生することに起因し得る。転位は、非輻射再結合中心として働き、発光ダイオード及びレーザダイオードの発光効率を低下させ得る。転位は、さらに逆バイアス電流リークを増加させ、ダイオード、トランジスタ及び光検出器の性能を劣化させる。明かに、GaN系デバイス内に転位がただ1つあっても、そのデバイスの性能及び/又は寿命は下がり得る。
【0017】
傾角粒界組織及び横方向歪みは、全インゴットにわたって残り、よって、このインゴットからスライスされた各基板にも残ってしまう。言いかえれば、そのようなインゴットからスライスされた基板は、傾角境界及び横方向歪みがない真の単結晶ではない。さらに、GaN基板は、「標準的な」HVPEGaNとして、室温でのUV吸収及びフォトルミネセンスにおいて同様の欠点を有する傾向が大きい。
【0018】
別のGaN結晶成長法は、溶媒として超臨界のアンモニアを使用する。いくつかのグループは、超臨界アンモニア中での極めて小さなGaN結晶の成長を報告しており、特に、Kolisらの「超臨界アンモニア中のIII族窒化物の材料化学及びバルク結晶成長」Mater. Res. Soc. Symp. Proc. 495, 367 (1998)、「超臨界アンモニア中の窒化ガリウムの結晶成長」J. Cryst. Growth 222, 431 (2001)、「物理的気相輸送で成長させたAlN及びアンモノサーマルGaNのシンクロトロン白色ビームトポグラフィーによる特性測定」J. Cryst. Growth 246, 271 (2002)、並びにDwilinskiらの「GaN及びAlN生成のAMMONO方法」Diamond Relat. Mater. 7, 1348 (1998)、「BN、AlN及びGaN合成のAMMONO方法及び結晶成長」MRS Internet J. Nitride Semiconductor Res. 3, article 25 (1997)、「アンモノサーマル方法によるGaN結晶化について」Acta Phys. Pol. A 90, 763 (1996)及び「アンモノサーマル方法によるGaN合成」Acta Phys. Polonica A 88, 833 (1995)である。これらの方法は、一般に、A、ANH又はAXの少なくとも1つから選択される鉱化剤(mineralizer)の添加を伴うアンモノ塩基化学を使用し、ここで、Aはアルカリ原子であり、Xはハロゲン化物である。NHの存在下で、一般に、アルカリ原子Aは反応してANH+1/2Hを生成し、よって、塩基性であると考えられる。しかし、現在のところ、約10cm−2を超える転位密度を有するやや質の低い小さな結晶又はmmサイズの結晶しか報告されていない。さらに、これらの著者は、シード上の成長を最適化するための温度勾配プロファイルの使用を開示してない。
【0019】
最近、Dwilinskiら[米国特許第6,656,615号明細書及びPCT出願WO第03/035945号明細書]は、複合温度勾配プロファイルの使用を含む、GaNを成長させるための改良されたアンモノ塩基法を開示した。この発明者は、10〜10cm−2以下の範囲の転位密度を教示しているが、HVPEのシード上で厚み200〜300μmの層において6×10cm−2の転位密度を主張する唯一の例を示すにとどまる。HVPEGaNにおける層の厚みの関数として公表された転位密度の記載に基づくと、この値は非現実的に低く見えるが、これは恐らく、カソードルミネセンス画像中の隣接した黒色点を解像するのが困難なことによる過少のカウントに起因しているのだろう。さらに、Dwilinskiらは、GaN結晶からの傾角境界の除去については教示してない。必然的に傾角境界を含むHVPEシード結晶を使用しているので、彼らの方法によって成長させたGaN結晶中には傾角境界が確実に存在する。Dwilinskiらは、反応容器にガリウム又はアルカリ金属を添加することを教示している。そのような添加物はアンモニアとの化学反応によって水素を生成するが、水素は圧力容器の壁を脆くする傾向があり、GaNのための効果的な溶媒ではないので望ましくない。これらの発明者は、10キロバール(kbar)もの高い圧力の使用を教示するが、圧力容器として開示されたオートクレーブは、安全に達する最大圧力はわずかに5キロバールにすぎないので、高圧を達成する効果的な方法は教示してない。Dwilinskiらの方法のさらなる限界は、成長速度が全く小さく、約0.2〜3μm/時であるという点である。この成長速度は、従来のMOCVDによって達成されるものと同程度であり、この方法の経済的な実行可能性に関する重大な懸念がある。
【0020】
Demazeauらの仏国特許第2,796,657号明細書は、0.05〜20kbarの圧力、100〜600℃の温度及び10〜100℃の温度勾配で、超臨界アンモニア又はヒドラジン中でGaNを成長させる方法を開示する。これらの条件に達するためにDemazeauによって教示された唯一の装置は、技術上既知の、最大圧力が5〜6kbarに制限されるタトル型コールドシール圧力容器(Tuttle type cold-seal pressure vessel)である。「固体化学における高圧アンモノリシス」Curr. Topics Mater. Sci. 8, ed. by E Kaldis (North-Holland, 1982)の中でJacobs及びSchmidtが論じているように、NHで作業する場合、標準的な圧力容器は約5〜6kbarの圧力に制限され、よって、最高温度、反応速度及びおそらく結晶の質も制限される。したがって、Demazeauは、より高い圧力範囲に達することができる方法を示しておらず、1mmより大きな寸法のGaN結晶を提示していない。さらに、Demazeauは、温度勾配プロファイルを使用してシード上の成長を最適化することを教示していない。
【0021】
Purdy[米国特許第6,177,057号明細書及び米国特許出願2003/0209191号明細書並びにCryst. Growth Design 2, 141 (2002)]、並びにChen[Mater. Res. Bull. 36, 2155 (2001)]は、GaN成長のために、アンモニア中に1〜5モルパーセントの濃度で、酸鉱化剤のNHCl、NHBr及びNHの使用を教示している。両著者は、主として六方晶系(ウルツ鉱)GaNではなく立方晶系(閃亜鉛鉱)GaNに主に注目している。しかし、六方晶系GaNは、より高い温度で得られる。Purdyは、鉱化剤としてNHFを使用しないことを教示し、その際、その液体NH中での溶解度が低いこと及びGaFの不可逆的生成を引用している。確かに、Kolis[Mater. Res. Soc. Symp. Proc. 495, 367 (1998)]は、鉱化剤としてNHFを使用する場合、未確認の錯体が一見不可逆的に生成することを報告し、GaN成長を観察しなかった。
【0022】
D'Evelynらの米国特許第6,398,867号明細書は、5kbarを超える圧力、550℃を越える温度及び5〜300℃の温度勾配での、超臨界流体中のGaNの温度勾配再結晶のための方法を開示している。この著者らは、温度勾配プロファイルを使用してシード上の成長を最適化することも、10cm−2未満の転位密度を提示することも教示していない。
【0023】
全て既知の方法によって成長させた窒化ガリウムは、結晶及びその上に成長させたデバイスの特性を低下させる自然欠陥を含む。一般的に生じる自然欠陥の1つは、n型GaNで、ドナーを補償する深い三重アクセプタ(deep, triple acceptor)として作用するGa空格子点(空孔、vacancy)である。原理的に、水素はガリウム空格子点に結合して、1〜4個の周囲のN原子上のダングリングボンド(dangling bond)をキャッピングして、VGaH、VGa、VGa、及びVGaと表示されるN−H結合を形成し得る。Ga空格子点に関連したN−H結合は、3100〜3500cm−1の振動数を持ち、極めて安定であることが予測される[C. Van de Walle, Phys. Rev. B 56, R10020 (1997)]。しかし、既知のGaN結晶成長方法は、水素添加によってGa空格子点をパッシベートする(passivating、安定化若しくは保護)ための手段を与えない。例えば、HVPEによって成長させた厚み300〜400μmのGaN試料の赤外透過分光法では、他の欠陥に関連する2850〜2915cm−1近傍に弱い吸収特性を示したが、水素化されたGa空格子点に帰属し得る3100〜3500cm−1の吸収特性は観察されなかった。
【0024】
GaNを希土類金属によってドープすると、ルミネセンス(発光)を生じることが知られている。例えば、Lozykowskiら[米国特許第6,140,669号明細書]は、イオン注入、MOCVD又はMBEによって及び1000℃以上でのアニールによってGaN層中へ希土類イオンを注入することを教示している。Birkhahnら[米国特許第6,255,669号明細書]は、希土類イオン又はクロムでドープされたGaN層を使用して、発光ダイオードを製造することを教示している。しかし、この発明は、バルク結晶でなく、薄いGaNエピタキシャル層に注目している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
発光し、実質的に傾角境界がなく且つ10又は100cm−2未満の転位密度の、バルクGaN又はホモエピタキシャルGaNの成長は、当分野でまだ知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの次元で少なくとも約2.75ミリメートルであり、約10cm−1未満の転位密度を有し、且つ実質的に傾角境界を有しない窒化ガリウムを含む単結晶を提供する。
【0027】
本発明の他の態様によれば、少なくとも1つの次元で少なくとも約2.75ミリメートルであり、傾角境界を有さない窒化ガリウムを含む単結晶を提供し、この場合、この単結晶は、300Kの結晶温度で約3.38〜約3.41eVの光子エネルギーでピークを示すフォトルミネセンススペクトルを有する。
【0028】
本発明の他の態様によれば、窒化ガリウムを含む単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)チャンバの第1の領域に核形成中心を供し、(b)チャンバの第2の領域に、窒化ガリウムを含む源材料(ソース材料)を供し、(c)チャンバ内に溶媒を供し、(d)チャンバを加圧し、(e)溶媒がチャンバの第1の領域で過飽和されるように、且つ窒化ガリウムを含む結晶が核形成中心上で成長する第1の温度勾配が核形成中心と源材料との間に存在するように第1の温度分布を作り、保持し、(f)溶媒がチャンバの第1の領域で過飽和されるように、且つ窒化ガリウムを含む結晶が核形成中心上で成長する第2の温度勾配が核形成中心と窒化ガリウムを含む源材料との間に存在するように、第2の温度分布を作ることを含み、第2の温度勾配は、第1の温度勾配より大きさが大きく、結晶成長速度は、第2の温度分布で、第1の温度分布におけるより大きい。
【0029】
本発明の他の態様によれば、窒化ガリウムを含む単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)第1の端部を有するチャンバの第1の領域に、核形成中心を供し、(b)第2の端部を有するチャンバの第2の領域に、窒化ガリウムを含む源材料を供し、(c)チャンバ内に溶媒を供し、(d)5〜80kbarの圧力にチャンバを加圧し、(e)溶媒がチャンバの第1の領域で過飽和され、且つ窒化ガリウムを含む結晶が核形成中心上で成長する第1の温度勾配が第1の端部と第2の端部との間に存在するように、約550℃〜約1200℃に平均温度を有する第1の温度分布を作り、保持し、(f)溶媒がチャンバの第1の領域で過飽和され、且つ窒化ガリウムを含む結晶が核形成中心上で成長する第2の温度勾配が第1の端部と第2の端部との間に存在するように、約550℃〜約1200℃に平均温度を有する第2の温度分布をチャンバ内に作ることを含み、第2の温度勾配は、第1の温度勾配より大きさが大きく、結晶成長速度は、第2の温度分布で、第1の温度分布におけるより大きい。
【0030】
本発明の他の態様によれば、窒化ガリウムを含む単結晶を形成する方法が提供される。この方法は、(a)第1の端部を有するチャンバの第1の領域に、核形成中心を供し、(b)第2の端部を有するチャンバの第2の領域に窒化ガリウムを含む源材料を供し、(c)チャンバに溶媒を供し、(d)チャンバを加圧し、(e)第1の端部と第2の端部との間に第1の温度勾配が存在するように、第1の温度分布を発生させ、保持し、(f)溶媒がチャンバの第1の領域で過飽和され、且つGaN結晶が核形成中心上で成長する第2の温度勾配が第1の端部と第2の端部との間に存在するように、第2の温度分布をチャンバ内に発生させることを含み、第1の温度勾配は、ゼロ又は第2の温度勾配とは逆の符号を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の好ましい態様による窒化ガリウムを含む単結晶を製造するために使用されるカプセルの概略的な断面図である。
【図2】本発明の好ましい態様による窒化ガリウムを含む単結晶を製造するために使用される圧力容器の概略的な断面図である。
【図3】本発明の好ましい態様によるGaN結晶の一連の発光スペクトル(フォトルミネセンススペクトル)である。
【図4】転位を含むc軸配向のシード結晶上で成長させたバルクGaN中の転位の展開若しくは発生を示す概略図である。
【図5】傾角境界を含むc軸配向のシード結晶上で成長させたバルクGaN中の傾角境界の展開を示す概略図である。
【図6】欠陥のあるシードの場合でさえ、大面積の低転位密度の結晶の成長を可能にする切欠部を備えているGaNシード結晶の概略図である。
【図7(a)】単純に研磨した端部を有するGaNウェハの概略図である。
【図7(b)】面取りされた端部を有するGaNウェハの概略図である。
【図7(c)】丸み付けされた端部を有するGaNウェハの概略図である。
【図8】本発明の態様により生成した典型的なバルクGaN基板の赤外スペクトルを示す図である。
【図9】HVPE法によって成長させたGaN膜の近似的な転位密度を、厚みの関数として示す図である。
【図10】本発明の方法によって成長させたGaN結晶の写真である。
【図11】本発明の方法によって成長させた別のGaN結晶の写真である。
【図12】レーザダイオードの寿命の、転位密度への依存具合を示すプロットを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0032】
以下、本発明の現時点において好ましい実施態様を詳説する。可能な限り、同じ参照番号を図面全体にわたって、同一の又は類似の部分を参照するために使用する。
【0033】
ここで使用される限り、「窒化ガリウムを含む結晶組成物」という用語は、「窒化ガリウムを含む結晶」と互いに交換可能に使用することができる。
【0034】
結晶組成物の欠陥は、空格子点、格子間原子及び不純物のような点状欠陥、転位(刃状、らせん状、それらの混合)のような一次元の線状欠陥、傾角境界、粒界、劈開点及び劈開表面のような二次元の面状欠陥、並びに孔、ピット及びクラックのような三次元の拡張欠陥の1つ以上を指す。対象が欠陥の特別の部分集合であることを文脈又は用語が示さなければ、欠陥は、上述の欠陥の1つ以上を指していてよい。
【0035】
「二次元の欠陥がない」は、「傾角境界がない」又は「傾角境界が実質的にない」と互いに交換可能に使用することができ、結晶組成物がごくわずかなレベルの傾角境界を有するか、又は傾角境界がTEM若しくはX線回折によって容易に検知できないような傾斜角を有するか、又は結晶組成物が、例えば少なくとも1ミリメートル以上の特定の距離だけ互いに大きく隔てられた傾角境界を含んでいてよいことを意味する。したがって、「〜がない」若しくは「〜が不含である」(free)又は「〜が実質的にない」(substantially free)は、ある用語と組み合わせて使用することができるが、修飾された語のわずかな数又は微量を含んでいてよく、一方、もちろん修飾された語がないことが考慮に入れられる。さらに、「〜がない」又は「〜が実質的にない」は、修飾された語が全く存在しないことも含む。
【0036】
ここで使用される限り、ブール(boule)は、インゴットと互いに交換可能に使用することができ、(z次元で)0.2cmの最小厚みを有し、0.2cmを超える体積を有する結晶を指す。
【0037】
ここで使用される限り、「黒色の」結晶は、190nm〜700nmの波長範囲で少なくとも93%の光吸収をもつ結晶を指す。
【0038】
ここで使用される限り、「バンドエッジ近傍(near-band-edge)のフォトルミネセンス」とは、バンドエッジの0.2eV以内で起こるルミネセンスを指す。
【0039】
ここで使用される限り、磁性のという語は、常磁性から強磁性の範囲の特性を指す。
【0040】
ここで使用される限り、粒子のω方向における(0002)反射のx線ロッキング曲線(x-ray rocking curve)の半値全幅は、市販のX線回折計を使用して測定する。一態様で、試料に入射するx線ビームの直径は、約1〜2ミリメートルである。一態様で、検出器への入射スリットは、約2〜3ミリメートルの受容開口を有し広く開いている。一態様で、x線ロッキング曲線の半値全幅は、対称な(0002)反射を使用して測定する。他の態様で、x線ロッキング曲線の半値全幅は、(10−12)、(10−14)、(10−15)、(20−21)又は(11−24)のような、非対称の反射を使用して測定する。
【0041】
III族半導体結晶においては、文字x、y、wによって表される3つの次元があり、wは厚み、x及びyはwに垂直な結晶面の次元である。丸い又は円形の結晶においては、x=y=結晶組成物の直径である。
【0042】
ここで使用される限り、「III族窒化物半導体結晶」又は「結晶組成物」又は「窒化ガリウムを含む結晶組成物」は、AlInGa1−x−yN[式中、0≦x≦1、0≦y≦1及び0≦x+y≦1]によって表される、GaN、AlN、InN、AlGaN、InGaN及びそれらの合金を指す。ここで使用される限り、「窒化ガリウムを含む結晶組成物」という用語は、「窒化ガリウムを含む結晶」、「窒化ガリウム結晶」又は「GaN結晶」と互いに交換可能に使用することができる。
【0043】
本発明者らは、GaNが、超臨界アンモニア及び他の超臨界的なGaN溶媒の中で極めて容易に核を形成して、再結晶が1つの大きな結晶でなく多くの小さな結晶を与えることを見出した。従来技術で知られている方法によって小さな高品質GaN結晶を成長させることはできるが、その方法では、10cm−2未満の転位密度を有し且つ2.75mm(x又はy次元で)より大きな高品質の結晶は成長しない。本発明者らは、適切な温度勾配を含む改良された温度プロファイルを用いる方法を、シード結晶を取り付けるため改良された方法と共に行うことによって、これらの制約を克服できることを見出した。
【0044】
本発明の態様によれば、粒子及び傾角境界が実質的にない窒化ガリウムを含む真の単結晶を合成され、単一の核から少なくとも直径2.75mmの寸法へと成長させることができる。この単結晶は、n型で、電気的に伝導性、光学的に透明であって、横方向の歪み及び傾角境界がなく、転位密度は約10cm−2未満であり得る。好ましくは、転位密度は約10cm−2未満である。他の態様で、転位密度は約100cm−2未満である。一態様で、単結晶はp型であり、他の態様で、単結晶は半絶縁性である。他の態様で、単結晶は磁性であり、さらに他の態様で、単結晶は発光性であり、さらに他の態様で、単結晶は光学的に吸収性又は黒色である。一態様で、この結晶は、3175cm−1近傍の赤外吸収ピークを生じる形態で水素を含み、約0.01cm−1より大きな単位厚みに当りの吸光度を有する。他の態様で、基板は、約0.04ppmより多いフッ素、典型的には約0.04〜1ppmのフッ素を含む。一態様で、結晶は、約1016cm−3〜約1021cm−3の濃度で、Be、C、O、Mg、Si、H、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Hf又は希土類金属の少なくとも1つでドープされている。
【0045】
窒化ガリウムを含むこの大きくて高品質の単結晶は、過熱された流体溶媒中で高圧及び高温の温度勾配再結晶によって成長させることができる。この結晶は真の単結晶である、すなわち、傾角境界を有しない。この結晶は、非限定的にアンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチレンジアミン、メラミン又は他の窒素含有流体を含む過熱された流体中での温度勾配再結晶によって成長させることができる。源材料は、ガリウム及び窒素を含んでいてよく、例えば窒化ガリウム結晶粉末の形態であってよい。源材料の別の形態も使われ、例えば単結晶又は多結晶のGaN、単結晶又は多結晶のAlN、無定形の窒化ガリウム、或いはガリウム金属又はガリウム化合物のような窒化ガリウム先駆体である。単結晶又は多結晶のAlN又はGaNは、技術上既知の多くの方法によって成長させることができる。別の形態、例えば、無定形AlN又はAlN先駆体、例えばAl金属若しくはAl化合物、或いは無定形のGaN又はGaN先駆体、例えばGa金属若しくはGa化合物を使用してもよい。源材料は、下記に記載のじゃま板の孔を通過できないような、充分な大きさの1つ以上の粒子を有することが好ましい。このじゃま板は、チャンバ内又はカプセル内で、源材料が置かれている源領域を、核形成中心が置かれている結晶成長領域から分離する。非GaN窒化物の成長のための一態様で、源材料の酸化物含有量は約1重量パーセント未満に維持される。
【0046】
III族窒化物成長のための核形成は、核形成中心において、シード結晶なしで例えば容器壁の一部で、又は例えばサファイアのような非窒化物のシード結晶ありで、カプセルの結晶成長部で誘起され得る。しかし、プロセスの制御がより簡単で、成長させる結晶の品質がより高くなるので、窒化ガリウムを含むシード結晶を供することが好ましい。
【0047】
適切なシード結晶は、GaN系でも又は非GaN系でもよい。完全に同じ窒化物から形成されたシード結晶を、制御のしやすさ、また成長させた結晶組成物の品質が比較的より高くなるという理由で使用することができる。AlNの成長のための一態様で、核形成を、炭化ケイ素のような非AlNシード結晶をもつセルの結晶成長部上で誘起させる場合があるが、このプロセスはAlNシード結晶を用意した場合には制御しやすくなる。適切なGaN系シード結晶は、HVPE法、昇華又は有機金属化学気相成長法(MOCVD)の少なくとも1つによって、或いは前の過程で過熱流体中で成長させた結晶組成物によって成長させた自立(free-standing)窒化ガリウム薄膜を含んでいてよい。サファイア又はSiCのような非AlN基板上のエピタキシャルAlN層、HVPE法又はMOCVDによって成長させた自立AlN膜、昇華/再凝縮によって成長させたAlN結晶、又は前の過程で超臨界流体中で成長させた結晶を含む、様々なタイプのAlNシード結晶を、AlNを成長させるために使用することができる。
【0048】
窒化ガリウムだけから形成されてないシード結晶を使用しない場合には、適切な非GaNシード結晶はサファイア又は炭化ケイ素を含んでいてよい。一態様で、非GaN系シード結晶は、成長表面を、窒化ガリウム層でプレコーティングされていてよい。適切にコーティングされたシード結晶は、非GaN基板上のエピタキシャル窒化ガリウム層を含んでいてよい。GaN系であっても非GaN系であっても、シード結晶は、約0.04ppmより大きい、又は約0.04〜約1ppmの量のフッ素を含んでいてよい。シード結晶は、約0.04ppmより大きい、又は約0.04〜約1ppmの量の塩素を含んでいてよい。一態様で、シード結晶は本質的にハロゲン不含である。
【0049】
シード結晶は、好ましくは、少なくとも1つの次元x又はyで1ミリメートルより大きく、傾角境界が実質的になく且つ約10cm−2未満、好ましくは約10cm−2未満の転位密度を有する高品質であってよい。
【0050】
成長は、全ての露出した表面で起こるので、シードはいかなる結晶配向(結晶方位)を有していてもよい。シードから成長させた結晶は、典型的には、(0001)、(000−1)及び(1−100)のファセットによって終端し、これらの全ての配向はシード表面に適している。(11−20)面は、典型的には、本発明の方法で急速に成長し、好ましいシード表面配向をも構成することができる。一態様で、成長させたGaN結晶の結晶配向は、(0001)配向、(000−1)配向、(10−10)配向、(11−20)配向及び(10−11)配向のうちの1つの約10°以内であってよい。別の態様で、成長させたGaN結晶の配向は、これらの配向のうちの1つの約5°以内にあってよい。成長させたままの(未処理の)GaN結晶又はGaNウェハの結晶性に関する標準的な基準は、(0002)反射のx線回折ロッキング曲線測定(x-ray diffraction rocking curve measurements)によって得ることができる。本発明の方法のGaN結晶及びウェハの、ωに対する(0002)回折強度の半値全幅(FWHM)は、一般に、50秒角(arc-second)未満である。
【0051】
好ましい実施態様で、GaNシード結晶は、10cm−2未満の転位密度を有し、傾角境界(低角粒界としても知られている)が実質的になく、これにより、同様に約10cm−2未満の転位密度を有し且つ傾角境界が実質的にないGaN結晶が得られる。他の態様で、GaNシード結晶は1つ以上の傾角境界を含む。例えば、HVPEによって成長させたGaN結晶を、シード結晶として使用することができる。そのような手段によって、大面積のシード結晶の利用を容易にする道が開ける。しかし、HVPEによって成長させたGaN結晶は、典型的には10〜10cm−2の転位密度を有する。その上、ヘテロエピタキシーによってモザイク構造が生成し、さらに、ヘテロエピタキシャル膜の厚みが例えば1mmを超えて増加するにつれ、厚膜中の傾角境界の存在はますます明白となる。傾角境界を有するシード上に、本発明により成長させた窒化ガリウムを含むバルク結晶も、傾角境界を含むことになる。
【0052】
約10cm−2未満の一次元の転位密度を有し、傾角境界が実質的にない窒化ガリウムを含む結晶は、約10cm−2〜10cm−2の転位密度を有し且つ傾角境界がないシード結晶から、下記の手順によって成長させることができる。溶媒量、鉱化剤濃度、温度及び温度勾配を適切に制御することによって、シード上での成長は、c方向(すなわち、c軸に沿った(0001)及び(000−1))及びc方向に垂直な方向で行うことができる。c方向で成長させたバルクGaN中の転位密度410は、著しく減少される。例えば、約10cm−2の転位を含むc配向のシード結晶402上での厚み300〜800μmの層の成長によって、図4に示すように、シード404の上の領域に約1〜3×10cm−2の転位を有するGaN結晶が得られる。しかし、c配向のシード結晶402に関し横方向に成長させたバルクGaN406は、図4に示すように、10cm−2より少ない転位、好ましくは10cm−2より少ない転位、さらに好ましくは100cm−2より少ない転位を有する。c配向のシード結晶502中に存在する境界510は、成長中にc方向に伝播し、これにより、図5に概略的に示すように、シード上に成長するバルクGaN504中に、シード結晶502中のものに類似した粒状構造が得られる。しかし、図5に示すように、傾角境界510は、横方向に成長したバルクGaNでは外方向に放射上に広がり、結晶が大きくなるにつれて、傾角境界510がない領域520が漸次的に大きくなる。傾角境界510の位置は、x線回折、x線トポグラフィー又は単純な光学的反射といった当分野で公知の方法によって判定することができ、新しいシード結晶は、傾角境界が完全にない横方向に成長させたGaNから切り出すことができる。この新しいシード結晶から成長させたバルクGaNは、実質的に傾角境界がなく、10cm−2未満、好ましくは10cm−2未満、さらに好ましくは100cm−2未満の転位密度を有する。
【0053】
10cm−2未満、好ましくは10cm−2未満、さらに好ましくは100cm−2未満の転位密度を有する比較的大面積の結晶は、より高い転位密度を有するシードを使用して次の手順によって製作することができる。穴、切欠部又はジグザグパターンを、例えばレーザによって切削することによってシードに設けることができる。そのようなシード610の例を図6に示す。穴、切欠部又は他のパターンは、例えば円形、楕円、正方形又は長方形であってよい。好ましい態様では、図6に示すように、スロット602又はジグザグ切欠部604の長い寸法は、(10−10)(m面)に対してほぼ平行に配向している。この配向で、安定した成長前面が生じ、スロット602又はスペース606が滑らかに満たされる。このようにして、横方向成長612は、結晶の周囲だけでなくむしろ中央部分で起こり、10cm−2を超える比較的高い転位密度を持つシードを使用した場合でさえ、10cm−2未満の極めて低い転位密度の材料の大きな領域608を生成する。このプロセスは繰り返すことができる。上述の方法によって成長させた結晶は、やや低い転位密度及び極めて低い転位密度を有する。より高い転位密度を有する結晶の領域は切り落とし、その結晶をシードとして再使用してもよい。横方向成長612によって、極めて低い転位密度の材料608で、切り落とされたエリア602が再び満たされる。このようにして、10cm−2未満、好ましくは100cm−2未満の転位密度を80パーセントを超える面積で有する大面積の窒化ガリウムを含む結晶を製造することができる。この結晶は、横方向成長させた材料の融合領域で傾角境界を含むが、傾角境界間の隔たりは、約2ミリメートル(mm)、2.75mm、3mm、5mm、10mm、25mm又はそれより大きくすることができる。
【0054】
シード結晶の周囲に沿った又はパターンのあるシード結晶を用いたこれらの横方向成長方法によって、x又はy次元の少なくとも1つでの、少なくとも2.75mm、5mm、10mm、25mm又は600mmのように大きな単結晶粒子を有する窒化ガリウムを含む結晶を製造することが可能となる。そのような結晶から切り出したウェハを基板として使用することにより、傾角境界が実質的にない大面積のホモエピタキシャルGaN系のエレクトロニクス又はオプトエレクトロニクスデバイスの製造が可能となる。
【0055】
源材料と、もし使用されるなら1つ以上のシードとは、多孔性のじゃま板によって少なくとも2つの領域に分割される圧力容器又は圧力カプセルの中に置かれる。例示的なカプセルは、2002年1月31日に出願された「超臨界流体中で材料を加工するための高温圧力カプセル」と題するD'Evelynらの米国特許出願第09/683,659号明細書に記載されているおり、その全ての内容は参照によりここに援用される。
【0056】
図1に、例示的なカプセル100を図示する。このカプセル100は壁102を含み、この壁102は、カプセル100のチャンバ104を囲むように密閉することができる。チャンバは、多孔性のじゃま板110によって分離された第1の領域108及び第2の領域106に分割されていてよい。結晶成長中、カプセル100は、じゃま板110によって互いに分離されたシード結晶120又は他の核形成中心と、源材料124とを含んでいてよい。源材料124及びシード結晶120は、例えば第2の領域106及び第1の領域108にそれぞれ配置されていてよい。カプセル100は、溶媒材料130も含むことができる。後述の成長プロセスにおいて、成長した結晶132は、シード結晶120上で成長し、また、前記溶媒は過熱状態にある。
【0057】
じゃま板110は、例えば複数の穴を有する板又は織成された金属布を含んでいてよい。じゃま板110の部分的な開口面積は、1%〜50、好ましくは5%〜40%であってよい。源材料124からシード結晶120又は成長させた結晶132への補給物質の輸送は、カプセル100のより低温の部分がより高温の部分の上方にあって、それにより自己対流により流体が撹拌される場合に、過熱流体のような溶媒中で最適化することができる。多くの溶媒では、III族窒化物の溶解度は、温度の上昇につれて増加し、その場合、源材料124をカプセル下部のより高温の部分に置き、シード結晶120をカプセル上部のより低温の部分に置くことができる。
【0058】
シード結晶120は、例えばそのシード結晶を通じて空けられた穴を通したワイヤ150によって吊され、結晶成長が、壁102又は他の材料からの干渉を全方向で最小限に抑えて行われるようにする。穴は、レーザ、ダイヤモンドドリル、研磨ドリル又は超音波ドリルによって形成することができる。別態様で、シード結晶120は、シードの一方の端部の周りにワイヤをくくりつけることによって吊してもよい。
【0059】
しかし、溶媒によっては、温度(上昇)とともにIII族窒化物の溶解度が減少するものもある。その場合には、シード結晶120は、カプセル下部のより高温の部分に置き、源材料124をカプセル上部のより低温の部分に置くことが望ましい。源材料124は、じゃま板110から隔置されている多孔性のバスケット140内に置かれ、じゃま板110と直接接触しないようにすることができ、それというのは、後者の配置では(じゃま板110と直接接触している配置では)、じゃま板110を通じての流体及び補給物質の輸送が妨げられる虞があるからである。
【0060】
溶媒中のIII族窒化物の溶解度を増加させるために、鉱化剤を、源材料124と一緒に又は別々にカプセル100に添加することもできる。鉱化剤は、(i)アルカリ及びアルカリ土類の窒化物、例えばLiN、Mg又はCa、(ii)アミド、例えばLiNH、NaNH及びKNH、(iii)尿素及び関連化合物、(iv)アンモニウム塩、例えばNHF及びNHCl、(v)希土類、ハロゲン化物、硫化物又は硝酸塩、例えばCeCl、NaCl、LiS又はKNO、(vi)アジ化物塩、例えばNaN、(vii)他のLi塩、(viii)ハロゲン化物、カルコゲニド又は硝酸塩、例えばNaCl、LiS又はKNO、(ix)上記の組合せ、(x)上記の少なくとも1つと、AlN、Al、Ga、GaN、In及びInNのいずれか並びにそれの組合せとの化学反応によって形成される化合物、(xi)上記の少なくとも2つと、他の1つとの化学反応によって形成される化合物、例えばNaAlF、の少なくとも1つを含んでいてよい。
【0061】
一態様で、鉱化剤は、HX、NHX、MXの少なくとも1つ、又はこれらの種のうちの2つの若しくはアンモニアとの反応によって形成される化合物を含む。式中、Xはハロゲン化物(F、Cl、Br、I)であり、MはIII族金属(B、Al、Ga、In)である。一態様で、NHF及びNHClは、特に550℃を超える温度及び5kbarを超える圧力でのアンモノサーマルGaN成長用の効果的な鉱化剤として役立つ。理論によって拘束されることは望まないが、輸送は、式(1)によって記述されるように、HX(HXとして、アンモニアに溶解したNHXが考えられる)とMNとが反応し、MX及びアンモニアを生成すると考えられる。
【0062】
MN+3HX=MX+NH(1)
よって、輸送種は、このようにアンモニアで溶媒和されていると推測されるMXである。NHFの場合には、原料の溶解はセルの低温の端部で起り、結晶成長はセルの高温の端部で起こる。言いかえれば、方程式(1)によって概略的に示される反応は発熱性であり、よって、低温では右辺のより安定な種が支配的になり、高温では平衡が左にシフトする。この考えと一致して、結晶成長過程の完了時点で、セルが白色針状晶で充たされることが見出され、これは、構造が文献で知られているGaF(NH及び(NHGaFを含むことがx線回折によって同定されている。これに対し、NHClの場合には、原料の溶解はセルの高温の端部で起り、結晶成長はセルの低温の端部で起こる。言いかえれば、方程式(1)によって概略的に示された反応は吸熱性であり、よって、低温では左辺のより安定な種が支配的になり、高温では平衡が右にシフトする。この考えと一致して、結晶成長過程の完了時点で、セルが白色粉体で充填されることが見出され、これは、NHClを主として含み、それと共にガリウム含有化合物を微量だけ含む。
【0063】
窒化ガリウムを含む結晶の成長の際の鉱化剤NHF及びNHClの挙動は、純物質の反応の自由エネルギーを考慮することによってある程度は理解することができ、なお、これは、HX及びMXの両方の溶媒和の自由エネルギーを無視し、溶液中にはもちろん存在しない結晶性のMXの格子エネルギーを含む。表1に、選択された結果を示すが、関与するいくつかの化学種の生成自由エネルギーの利用可能性によって一部限定されている。
【0064】
【表1】

【0065】
表1の第2列を検討した場合、単純化された熱力学データが、低温での生成物(GaF+NH)の安定性と、高温での反応(1)が左へシフトする傾向、すなわちGaNが堆積する傾向とを正しく予測していることに留意されたい。第2列と第3列とを比較した場合、単純化された熱力学データが、塩化ガリウム形成の傾向がフッ化ガリウムの形成より小さいことも正しく予測していることに留意されたい。しかし、限定された塩化ガリウム形成に関するデータは、反応(1)が高温で左にシフトすることを示唆している。この予測される挙動は、フッ化物が関わる場合の傾向に類似するが、この反応系ではGaNの結晶成長が低温の端部で起きるので、実験の観察とは矛盾する。これは、第3列における傾向が600Kを超える温度で逆転することによるかもしれないし、この単純化された分析において無視されたアンモニア溶媒和の熱力学データが、HF、HCl、フッ化ガリウム及び塩化ガリウムの間で、温度と共に全体の平衡及び傾向がシフトしするのに充分な程度に変わるということかもしれない。
【0066】
表1の第4列と第5列は、特にGaNについて観察された理論的、実験的傾向との比較によって、AlNのアンモノサーマル結晶成長に対するいくらかの洞察を与える。第4列と第2列とを比較すると、AlFもGaFも安定性が高温で下がるにも関わらず、AlFの形成は、GaFの形成より著しく有利であることが分かる。したがって、生成は低めの温度では事実上は不可逆で、AlNの結晶成長が無効である可能性がある。しかし、約1200Kを超える温度では、NHFは、AlN結晶成長用の効果的な鉱化剤として役立つかもしれない。第5列を検討すると、AlClの生成はAlFほど有利ではないことが理解されるが、GaClの生成についての結果を外挿することによっておおよそ同等に見える。したがって、NHClは、AlNのアンモノサーマル結晶成長のための効果的な鉱化剤であると結論付けられる。第5列のデータは、AlN結晶成長が高温端で起ることを示唆している。しかし、GaNで観察される逆の挙動へ類推すれば、AlNの結晶成長は、実際は低温端で生じると予想される。低温端での結晶成長は、壁での核形成を減少させるか又はなくすことが容易かもしれないという点で、アンモノサーマル結晶成長プロセスの制御には有利となり得る。
【0067】
第4列と第5列とを比較すると、混合ハロゲン化物、例えばAlFClの生成は、生成自由エネルギーが純粋なハロゲン化物と比較して中間にあるはずであると理解される。そのような種の生成は、鉱化剤としての、NHCl中のNHFの希薄な混合物よって、エントロピー的に有利となるだろう。よって、一態様で、AlN結晶は、鉱化剤としてNHCl中のNHFの希薄な混合物を用いて成長させる。
【0068】
この結果を一般化すると、純粋なMX輸送種の生成が、所望の温度範囲で本質的に不可逆で生成するという見地から、過度に安定である場合、MYの生成がMXの生成ほど有利ではないとすると、鉱化剤としてNHY中のNHXの希釈物を使用することによって鉱化の改善が得られるだろう。反対に、純粋なMY輸送種の生成の安定性が、所望の温度範囲で極めて低い濃度で生成するという見地から、不十分である場合、MXの生成がMYの生成より有利であるとすると、鉱化剤としてNHYとNHXとを混合することによって鉱化の改善が得られるだろう。
【0069】
表1の第6列は、NHClが、InN結晶成長用の効果的な鉱化剤になることを示唆する。InClの生成が強すぎる平衡定数で起きる場合、鉱化剤としてNHClと、NHF、NHBr又はNHIの1つ以上との混合物を使用することができる。
【0070】
1つの好ましい実施態様で、アンモニアは過熱された流体溶媒130として使用され、フッ化アンモニウムNHF、フッ化ガリウムGaFの少なくとも1つ、又はHF、NH、Ga及びGaNの化学反応によって生成する少なくとも1つの化合物が、鉱化剤として使用される。特にカプセルが銀から製造されている場合、この組合せは、カプセルに対して過度に腐食性でないことと同時に、GaNの溶解度が比較的高いという利点を与える。この場合、GaNの有効な溶解度(effective solubility)は温度と共に低下する。理論によって拘束されることは望まないが、本発明者らは、GaNが鉱化剤及び溶媒と化学的に反応し、過熱されたアンモニアに可溶の、ガリウム、フッ化物、アンモニウムイオン及びアンモニアを含む錯体を形成すると確信している。錯体の生成は可逆的であり、生成の平衡定数は温度と共に減少して、それにより、遊離GaNの生成が高温で有利になり、GaNの有効溶解度は温度と共に低下する。この化学反応で行われた結晶成長を終了した後に、カプセルは典型的には白い針状結晶で満たされることが見出された。X線回折解析は、この結晶が、文献で構造が知られているGaF(NH及び(NHGaFを含むことを示す。
【0071】
場合によっては、窒化ガリウムを含むn型、半絶縁性、p型、磁性、発光性又は光吸収性の結晶を得るために、或いはバンドギャップを修正するために、ドーパント源もカプセル100に添加される。そうでなければ、酸素又は炭素のような偶発的に混入された不純物によって、結晶は、通常、n型となる。O、Si又はGe(n型)、Be、Mg又はZn(p型)のようなドーパントは、III族窒化物の原料に不純物として添加することができる。別態様で、ドーパントは、金属、塩類又は無機化合物、例えばSi、Si、InN、SiCl、BeF、Mg、MgF、Zn、ZnF又はZnとして添加することができる。Al及び/又はInの添加によって、純粋なGaNに対し、バンドギャップが増加又は減少する。そのようなドープされた結晶は、たとえ結晶がかなりのレベルのAl及び/又はInを含んでいても、ここでは窒化ガリウムと呼ぶ。約1015〜1016cm−3未満の合計のドーパント濃度を有するGaN結晶は、半絶縁性であることが予想される。しかし、典型的には、非意図的に添加された不純物の濃度は1016cm-3より高く、その結晶はn型である。半絶縁性のGaN結晶は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni又はCuの少なくとも1つでドープすることによって得ることができる。1つの好ましい実施態様で、半絶縁性のGaN結晶は、Fe又はCoでドープすることによって生成する。磁性のGaN結晶は、非限定的に、Mnのような特定の遷移金属でドープすることによって得られる。発光性のGaN結晶は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Hf、Pr、Eu、Er又はTmのような特定の遷移金属又は希土類金属でドープすることによって得ることができる。遷移金属又は希土類元素のドーパントは、GaNの源中の不純物として、又は元素としての金属、塩類又は無機化合物、例えばFe、Co、CoF、CrN若しくはEuFとして、単独で又はO、Si、Mg、Zn、C若しくはHのような1つ以上の追加的なドーパントと組み合せて添加することができる。そのようなドーパントは、GaNの源中に約1015cm−3〜約1021cm−3の濃度で存在していてよい。ドーパントの種類及び濃度によって、GaN結晶は光学的に吸収性、すなわち黒色となり得る。例えばCoで重ドープしたGaN結晶は、色が黒く、窒素レーザによる照射によって可視のフォトルミネセンスを発生しない。
【0072】
酸素のような不都合なドーパントの濃度を許容可能なレベルに維持するための一態様において、原料(窒化ガリウムの源、鉱化剤及び溶媒)及びカプセル中の不純物濃度は、適切に低いレベルに制限される。例えば、成長した結晶中の酸素濃度を3×1018cm−3未満にすることは、最終結晶の重量に対して原料及びカプセル中の合計酸素含量を15百万分率未満に保持することによって達成することができ、また、不純物レベルを3×1017cm−3未満は、原料中及びカプセル中の合計酸素含量を1.5百万分率未満に保持することによって達成することができる。
【0073】
系(原料、容器)中の酸素の存在は、窒化物のアンモノサーマル成長(ammonothermal growth)には有害である。従来技術では、1018cm−3より大きい、1019cm−3より大きい、さらに1020cm−3よりも大きい酸素含量が、アンモノサーマル法で成長させたいくつかのGaN中で観察された。本発明の一態様では、酸素の役割は、GaNの成長の場合よりも、AlN及びInNの両方の成長の場合に、より有害であることに留意されたい。純物質の自由生成エネルギーより、アンモニアがIII族金属窒化物を還元する容易さを下の表2に示す。データは、I. Barinより、GaNの生成エンタルピーの補正がなされている[Ranade et al., J. Phys. Chem. B 104, 4060 (2000)]。
【0074】
【表2】

【0075】
示されたように、約900K以上の温度では、アンモニアは酸化ガリウムを窒化ガリウムに容易に還元することができるが、これは大量の酸素又は酸化物が原料の中にあってもGaNをアンモノサーマル法で成長させることができるという観察と定性的に一致する。しかし、アンモニアは、このような温度では、酸化アルミニウム又は酸化インジウムのいずれをも容易に還元せず、これは、周期表中の列を(Al−Ga−In)と下がっていくにつれ、所与の反応型の熱力学が典型的には単調に変化するという意味から意外である。したがって、改善された結果が、原料の酸素含量が1%未満である、さらに酸素含量が0.1%未満、0.01%未満、0.001%(10ppm)未満又は1ppm未満である場合に、得られる。
【0076】
一態様で、酸素のような望ましくないドーパントの濃度を許容レベルまで減少させるために、1つ以上のゲッターをカプセルに加えることもできる。NHClのような非フッ化物鉱化剤のためには、適切なゲッターは、アルカリ土類金属、Sc、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Hf、Ta、W、希土類金属、及びそれらの窒化物又はハロゲン化物を含む。NHF、HF、GaF及び/又はそれらとNH及びGaNとの反応生成物が、酸性フッ化物鉱化剤とも呼ばれる鉱化剤として使用される場合、反応性の高い金属は、系中で水又は酸素と非反応性であるフッ化物を生成する傾向がある。しかし、金属の化合物であって、その金属フッ化物と水とが反応し金属酸化物及びHFを生成する際の自由エネルギーが、結晶成長条件下で、GaFと水との対応する反応より負であるという特性を有するものは、ゲッターとして使用することができる。酸フッ化物鉱化剤との使用に適したゲッターは、CrF、ZrF、HfF、VF、NbF、TaF及びWFを含む。
【0077】
一態様で、鉱化剤は、溶媒に対して0.5〜5モルパーセントの濃度で存在してよい。本発明者らは、酸鉱化剤、例えばNHF及びNHClが、アンモニア中で0.5モルパーセント、1モルパーセント、2モルパーセント、5モルパーセント、10モルパーセント、20モルパーセント、50モルパーセント又はそれより多くのうちの1つより大きい濃度で効果的となり得ることを見出した。NHFの場合には、溶解した窒化ガリウムの濃度、すなわち結晶組成物の成長条件下で溶解すると考えられる錯体中に存在するガリウムの濃度は、少なくとも25モルパーセントという高い値の鉱化剤濃度にほぼ比例し、窒化ガリウム結晶組成物の成長は、このような条件下で極めて効果的となり得る。アンモニア中で20モルパーセントを超える鉱化剤濃度を使用することによって、所与の充填レベルで溶媒の圧力を下げられるさらなる利点が得られ、それによって圧力容器に対する機械的な要求が低減する。
【0078】
カプセル100は、プロセス条件下で過熱された流体、例えばアンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、エチレンジアミン、メラミン又は他の窒素含有流体を含む溶媒130で満たされる。好ましい態様では、アンモニアを溶媒130として使用する。カプセル内の自由体積、つまり源材料、シード結晶及びじゃま板で占められていない体積のうち25%〜100%、好ましくは70%〜95%は、溶媒130で満たされ、カプセル100が密閉される。
【0079】
過熱された流体溶媒に溶解された鉱化剤の濃度に応じて、結晶成長条件下で、過熱流体溶液は、超臨界にあってよいし未臨界にあってもよい。例えばアンモニアは、臨界温度132℃及び臨界圧力113バールをそれぞれ有する。NHFの場合の量は、NHClの値に類似すると予想することができ、それは、約882℃及び1635バールである。NHFのアンモニア溶液は、成分であるNHFの臨界温度及び圧力とアンモニアの臨界温度及び圧力との間の中間の温度及び圧力に臨界点を有すると予想することができる。溶液中にIII族含有錯体が存在することによって、過熱流体の状態方程式及び臨界点がさらに変化する。
【0080】
カプセルを充填し、密閉する方法は、例えば2002年1月31日に出願された上述のD'Evelynらの米国特許出願第09/683659号明細書に記載されている。例えば、カプセル100は、溶媒130が液体か固体のいずれかである温度に冷却される。カプセル100を充分に冷却した後、溶媒源を、カプセル100の開いたチャンバに流体用連通し、溶媒を凝縮又は注入のいずれかによって、この時点で開いているチャンバに導入する。溶媒130の所望の量を開いたチャンバに導入した後、チャンバを密閉する。チャンバは、例えば壁102の一部を挟んで締め付けるか又はへこませて、溶接部を形成することによって密閉することができる。
【0081】
密閉されたカプセル100は、約550℃〜約3000℃、又は好ましくは約550℃〜約1200℃の温度を、約5kbar〜約80kbar、又は好ましくは約5kbar〜約20kbarの圧力を発生することができる容器内に置かれる。典型的な圧力容器は、2002年1月31日に出願された「改善された圧力容器」と題するD'Evelynらの米国特許出願第09/683,658号明細書に記載されており、その全ての内容は、参照によりここに援用される。
【0082】
図2に、封入したカプセル100を有する圧力容器210を示す。図2に示された圧力容器210は、ダイを有する液圧プレスを含む。別態様では、圧力容器は、上記の米国特許出願第09/683,658号明細書に記載されているような、多重金床プレス(multi-anvil press)又はダイ、及び強化エンドフランジを有してよい。
【0083】
圧力容器210は、圧縮ダイ204と、上部及び下部のシール220及び222とによって囲まれた圧力媒体214を含んでいてよい。圧力媒体は、例えばNaCl、NaBr又はNaFであってよい。
【0084】
圧力容器210は、カプセル100の加熱の制御のための電力制御システム216を含む。電力制御システム216は、カプセル100を加熱する加熱エレメント218及び加熱エレメント218を制御するためのコントローラ222を含む。電力制御システム216は、好ましくは、カプセル100に関する温度信号を発生するための、カプセル100に近位の少なくとも1つの温度センサ224も含む。
【0085】
圧力容器210は、好ましくは、温度分布、すなわち、カプセル100内の温度勾配を含む、カプセルチャンバ内の位置の関数としての温度を提供するように構成することができる。一態様で、温度勾配は、カプセル100をセル(圧力容器210内の領域)のどちらかの端部により近付けて配置することにより達成することができる。別態様では、温度勾配が、長さに沿って不均一な抵抗を有する少なくとも1つの加熱エレメント218を設けることによって、作り出される。少なくとも1つの加熱エレメント218の不均一な抵抗は、例えば不均一な厚みを有する少なくとも1つの加熱エレメント218を設けることによって、選択された箇所で少なくとも1つの加熱エレメント218に孔を開けることによって、又は少なくとも1つの加熱エレメント218の長さに沿って選択された箇所で異なる抵抗の少なくとも2つの材料の積層体を含む少なくとも1つの加熱エレメント218を設けることによって、得ることができる。一態様で、少なくとも1つの温度センサ224は、カプセル100の向かい合う端部230と232との間の温度勾配を測定及び制御するために設けられる、少なくとも2つの独立した温度センサを含む。一態様で、セル内の少なくとも2つの位置に閉ループ温度制御を設けてもよい。少なくとも1つの加熱エレメント218は、カプセル100の2つの端部間に所望の温度勾配を達成するために電力を個々に供給することのできる複数のゾーンを含んでもよい。高圧セル内の少なくとも2つの位置の独立した温度制御を与えるための典型的な装置及び方法は、2002年12月18日に出願されたD'Evelynらの米国特許出願第60/435,189号明細書「結晶成長のための改良された温度制御を備えた高圧/高温装置」に記載されており、その全ての内容は、参照によりここ援用される。
【0086】
カプセル100は、約1℃/時〜1000℃/時と平均速度で、好ましくは約550℃〜1200℃の成長温度に加熱される。圧力セル210に関して上述したように、セル中のカプセルの非対称な配置、非対称な加熱等により、温度勾配がカプセル中に存在すし得る。この温度勾配は、加熱順次操作の全体にわたって過飽和を作り出す効果があり、本発明者らはこの過飽和が自発的核形成を促進することを見出した。
【0087】
本発明の一態様で、成長温度での温度勾配を、約1分〜2時間の期間で、初めは小さく、約25℃未満、好ましくは約10℃未満に保持し、これにより、系が平衡段階で平衡に達するようにする。本出願中で使用される温度勾配は、例えば制御熱電対が配置されている、カプセルの両端部の温度の差である。シード結晶120又は核形成中心の位置での温度勾配は、源材料124の位置での温度に対して、いくらか小さい可能性がある。
【0088】
場合によっては、温度勾配は、平衡段階においては、結晶の成長が核形成中心で起きる場合の温度勾配の符号と逆に(つまり、核形成中心でエッチングが起き、成長が源材料上で起きるように)設定され、それにより、加熱中に形成された核形成中心が供給されている可能性のあるカプセルの領域で、自発的に核形成した結晶がエッチング除去される。言いかえれば、結晶の成長が正の温度勾配に対して起きる場合には、温度勾配を負に設定し、また反対の場合も同様である。
【0089】
この平衡期間の後、温度勾配を、その大きさを大きくし且つシード結晶での成長がより大きな速度で起きるような符合を有するような成長期間を設けることができる。例えば、温度勾配を約0.01℃/時〜約25℃/時の速度で大きくして、成長がより速くなる、より大きな値へと増大させることができる。結晶成長中、温度勾配を、5℃〜300℃の大きさで保持し、上方又は下方に調節することができる。場合によっては、温度勾配は、成長がシード結晶で起きる場合の符号と反対の符号を有するように変化させてよい。勾配の符号は、任意の自発形成した核を交互にエッチング除去し、1つ以上の核形成中心又はシード結晶120上の成長を促進するために、さらに1回以上逆転させてよい。HPHT条件は、III族窒化物の源の実質的な部分を溶解し、それを、少なくとも1つの窒化ガリウム結晶を含む結晶、窒化ガリウムを含むブール又は窒化ガリウムを含む結晶シード上に堆積させるのに充分に長い時間にわたり、維持される。
【0090】
成長期の終結時、カプセルの温度を、成長した結晶132への熱衝撃を最小化するために、約1℃/時〜1000℃/時の割合で、好ましくは約1℃/時〜300℃/時の割合で下げることができる。カプセル及び圧力媒体を含むセルを圧力容器210から取り出し、カプセル100をセルから取り出す。
【0091】
溶媒130は、溶媒の蒸気圧を1bar未満に減少させるようにカプセルを冷却し、カプセルに孔を開け、次に溶媒が蒸発するように加温することによって、都合良く除去することができる。カプセルを切断して開き、成長した結晶を取り出す。この結晶は、鉱化剤を除去するために、適切な洗浄剤、例えば水、アルコール又は他の有機溶媒の少なくとも1つ、及び鉱酸によって洗浄する。
【0092】
他の態様では、傾角境界が実質的になく約10cm−2未満の転位密度を有する高品質シード結晶を、他の結晶成長方法によってAlInGaN厚膜を堆積させるための基板として使用する。一態様で、前記の他の結晶成長方法は、ハイドライド気相エピタキシ(HVPE)を含む。
【0093】
単結晶の品質は、GaNについては室温でバンドエッジで起こるフォトルミネセンスのような特徴測定技術によって示されるだろう。結晶は、さらに処理して1つ以上のウェハにスライスし、ラッピングし、研磨し且つ/又は化学研磨することができる。スライスする方法はワイヤソー又は環状のこぎり(annular saw)で切断することを含む。ラッピング及び研磨は、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミナ又は他の硬い粒子の1つ以上を含むスラリーによって行うことができる。研磨は、III族窒化物ウェハに格子損傷を残し得るが、それは化学機械研磨、反応性イオンエッチング(RIE)によるドライエッチング、高密度誘導結合プラズマ(ICP)プラズマエッチング、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマエッチング、及び化学支援イオンビームエッチング(CAIBE)を含む多くの方法によって除去することができる。研磨されたウェハは、少なくとも10×10mmの横方向のエリア上で約1nm未満のrms(root mean square)表面粗さを有する。好ましくは、表面粗さは、少なくとも10×10mmの横方向のエリア上で0.5nm未満である。ウェハ又は基板は、好ましくは、約0.01〜10mmの厚みを有し、最も好ましくは約0.05〜5mmの厚みを有する。ウェハの表面は、好ましくは、1ミクロン未満の平滑さを有する。ウェハの前面及び背面は、好ましくは、1°より良い平行性を有する。一態様で、窒化ガリウムウェハの前面の結晶配向は、(0001)配向、(000−1)配向、(10−10)配向、(11−20)配向及び(10−11)配向のうちの1つの10°以内にある。別の態様で、ウェハの前面の配向は、前記配向のうちの1つの5°以内にある。
【0094】
III族窒化物は、典型的には、結晶配向を示す1つ以上の追加の平面を有する円形又は正方形に磨かれている。一態様700では、図7(a)に概略的に示すように、GaNウェハの端は、単に磨かれている。しかし、本発明者らは、GaN結晶又はウェハは容易に割れ、単に磨いた端部を有する窒化ガリウムウェハは、チッピング及びクラッキングに特に弱いことを見出した。好ましい態様710では、図7(b)に概略的に示すように、前面と背面の少なくとも1つが面取りされている。この面取りは、当分野において公知の装置を使用してウェハの端部を磨いて作製される。面取りの深さ(図7(b)の寸法「a」)は、典型的には、約10μm〜0.2t(図7(b)の寸法「t」)[tはウェハの厚みである]である。面取りの幅(図7(b)の寸法「b」)は、典型的には、a〜5aである。ウェハの上面(エピタキシャル成長が行なわれる側)及び底面が面取りされる場合、典型的には、底面の方を大きく面取りする。好ましくは、面取りされた部分の端部には鋭い端ではなくわずかな曲面が存在していている。ウェハが取り扱い中にチップ又はクラックする傾向が低減することに加えて、面取りによって、ウェハの周囲近傍でエピタキシャル成長したAlInGaNの「クラウン」(crowning)又は貧弱な形状(poor morphology)の傾向も低減する。さらに好ましい態様720では、図7(c)に概略的に示すように、ウェハの端部を丸める。ウェハの上端の曲率半径(図7(c)の寸法「r1」)は、典型的には、10μm〜0.5t(図7(c)の寸法「t」)[tはウェハの厚みである]である。丸められた部分の内側端とウェハの上側表面の間の角度θは、好ましくは30度未満である。ウェハの底側端の曲率半径(図7(c)の寸法「r2」)は、典型的にはrより大きく、ウェハの底面とも好ましくは30度未満の角度をなしている。ウェハの丸められていない端部(図7(c)の寸法「w」)の厚みは、ゼロでもよく、好ましくは0.5t未満である。
【0095】
この窒化ガリウムを含む単結晶及びそれから形成されたウェハは、電子デバイス及び光電子デバイス用の基板として有用である。
【0096】
結晶は、当分野で公知の標準的な方法によって特徴付けることができる。転位密度の決定のためには、カソードルミネセンス(CL)及びエッチピット密度が有用である。CL画像形成によって、転位密度の非破壊的な測定が得られ、試料調製も必要としない。転位は、III族窒化物中では非輻射再結合中心であり、よって、CLでは暗点として見える。転位密度を決定するには、CL画像中の単に暗点の濃度を測定すればよい。
【0097】
場合によってはより確実となる第2の便利な方法は、エッチピット密度である。そのようなエッチング法の1つは、例えばT. HinoらのAppl. Phys. Lett. 76, 3421 (2000)によって記載されているように、気相HClエッチングであり、その全ての内容は、参照によりここに援用される。
【0098】
これらの方法の両方を、市販のグレードのHVPEGaNの試料のGa面に適用した。1〜2×10cm−2の転位密度(暗点密度又はエッチピット密度)が得られ、これは、同様の材料について他者によって報告された値及び図9に示した値と極めてよく一致する。
【0099】
成長させた窒化ガリウムを含む結晶の光学的吸収及び発光の特性は、光学的吸収、散乱及びフォトルミネセンス分光法によって決定することができ、これは当分野でよく知られている。電気的特性は、ファンデルポー法及びホール測定によって、水銀プローブCV及び熱プローブ技術によって測定することができる。
【0100】
結晶は、当分野で公知の方法によって1枚以上のウェハへスライスすることができる。窒化ガリウムを含む結晶又はウェハは、エピタキシャルAlInGa1−x−yN膜用の基板[式中、0≦x≦1、0≦y≦1及び0≦x+y≦1]、発光ダイオード、レーザダイオード、光検出器、アバランシェフォトダイオード、トランジスタ、ダイオード及び他のオプトエレクトロニクス及びエレクトロニクスのデバイスとしてとして有用である。上述の窒化ガリウムを含むバルク結晶から製造されたウェハ上に堆積させた、エピタキシャルGaN又はAlInGa1−x−yNの層[式中、0≦x,y、x+y≦1]は、同様に実質的に傾角境界がなく、10cm−2未満、好ましくは10cm−2未満、さらに好ましくは100cm−2未満の転位密度を有する。GaN基板上にホモエピタキシャル発光ダイオード及びレーザダイオードを形成する典型的な方法は、例えばD’Evelynらによって2000年10月23日に出願された米国特許出願第09/694,690号明細書「ホモエピタキシャルなGaN系発光デバイス及び生成法」に記載されており、その全ての内容は参照によりここに援用される。GaN基板上にホモエピタキシャル光検出器を形成する典型的な方法は、例えばD'Evelynらによって2001年4月20日に出願された米国特許出願第09/839,941号明細書「ホモエピタキシャルなGaN系光検出器及び生成法」に記載されており、その全ての内容は参照によりここに援用される。GaN基板上にアバランシェフォトダイオードを形成する典型的な方法は、例えば2002年12月10日にSandvikらによって出願された米国特許出願第10/314,986号明細書「苛酷な環境で使用されるアバランシェフォトダイオード」に記載されており、その全ての内容は参照によりここに援用される。基板に傾角境界が実質的に存在しておらず、その転位密度が低いという理由から、ホモエピタキシャル発光デバイスには傾角境界が実質的になく、約10μmまで、又は約9×10μmまで、又は1mmまでのデバイス面積について、ほとんどのデバイスに貫通転位が実質的にない。
【0101】
上述の態様は、温度プログラムに、温度勾配を、結晶成長中の勾配に対して実質的に小さくするか又はゼロ若しくは負にすら設定されていてよい平衡期間を含めること、並びに成長チャンバ内にシード結晶を吊すことによって、改善された核形成が得られる。この結晶成長方法は、高品質、大面積の窒化ガリウムを含む結晶を提供する。
【0102】
上記方法によって形成されたGaN結晶組成物の特性は、エッチピット密度測定、フォトルミネセンス及び光学吸収技術を利用して特徴付けした。形成された単結晶は、転位密度が100cm−1未満であること、フォトルミネセンススペクトルのピークが結晶温度300Kでフォトンエネルギー約3.38〜約3.41eVにあること、並びに700nm(赤色)〜465nm(青色)の波長に対して5cm−1未満の光吸収係数を有することによって特徴付けされる。
【0103】
上記の方法によって形成されたGaN結晶を、赤外透過分光法及びラマン分光法によって特徴付けした。他の方法によって成長させたGaNとは対照的に、ここに記載の方法によって成長させたGaNは、図8に示すように、3050〜3300cm−1の範囲にいくつかの鋭い吸収ピークを有し、3175cm−1近傍で最大の吸収を示した。結晶を、高純度窒素中で30分にわたり750℃までアニールし、赤外スペクトルを再測定した。図8に示すように、3050〜3300cm−1の範囲の吸収ピークは本質的に不変であり、これは、吸収ピークの原因である種の安定性が高いことを示す。VGa〜VGaに対する振動周波数が3100〜3470cm−1にあるとの予測(これは、実際の周波数を約200cm−1だけ過大評価されている可能性がある)、並びに水素注入したGaNにおいて3020〜3050cm−1及び3140cm−1に赤外吸収があるとの観察 [M. G. Weinstein et al., Appl. Phys. Lett. 72, 1703 (1998)] に基づくと、本願の試料中の3150〜3200cm−1の吸収ピークは、VGa及びVGaに相当し、本願の結晶及び水素注入されたGaNの両方における3000〜3150cm−1で観察された吸収ピークは、VGa及びVGaに相当し、他の小さなピークは、他の不純物又は欠陥の存在に関係すると確信している。よって、ここに記載の方法によって成長させたGaN結晶において3175cm−1近傍に赤外吸収の特徴が存在することは、ガリウム空格子点のパッシベーション(passivation、安定化若しくは保護)を示し、高温アニールしても赤外の特徴が維持されることは、このパッシベーションが極めて安定であることを示す。GaN結晶中の水素化されたガリウムの空格子点の濃度に依存して、3175cm−1ピークの単位厚み当り吸光度は、約0.01〜200cm−1にある。
【0104】
ここに記載の方法によって成長させたGaN結晶中の点状欠陥のパッシベーションについてのさらなる証拠は、ラマン分光法によって得た。計5つのピークを400〜800cm−1にある2つの構造(configuration、立体配置)で観察することができた。ピークは、530cm−1[A(TO)]、558cm−1[E(TO)]、569cm−1[E(high)]、734cm−1[A(LO)]及び742cm−1[E(LO)](カッコ内にそれぞれのピークの帰属を示す)で観察された。これらの値は全て、文献に報告されている純粋なGaNに関し許容されている値の数cm−1以内にある。意義深いことに、フォノン−プラズモン結合に関連した幅広いピークが観察されなかった。1016cm−3〜1020cm−3のキャリア濃度を有するGaNについての文献に報告されたラマン測定に基づくと、シフトしていないLOモードが観察されること及びフォノン−プラズモンモードが欠如していることは、キャリア濃度が1017cm−3未満であることを示す。この結晶中の合計の不純物濃度は1019cm−3より大きかった。不純物濃度に比較してキャリア濃度が大幅に減少していることは、おそらく水素に起因する高度の補償を示す。
【0105】
導入された水素は良性であるか又はおそらく有益であると確信する。典型的な窒化ガリウム結晶成長法は、水素が成長システム中にあったとしても、水素化によるガリウム空格子点のパッシベーションをもたらさない。例えば、水素化物気相エピタキシ(HVPE)によって成長させた300〜400mm厚のGaN試料の赤外透過分光測定は、他の欠陥に関連した2850及び2915cm−1の近傍の弱い吸収特徴を明らかにしたが、水素化したGa空格子点に帰属される3100〜3500cm−1の吸収特徴は、HVPE法窒化ガリウム材料では観察されなかった。
【0106】
可視スペクトル内で、窒化ガリウムを含むブールは、典型的に、実質的な透明性を示す。名目上ドープされていない結晶の光吸収係数は、通常、465nm〜700nmで5cm−1未満である。高キャリア濃度で自由キャリア吸収が導入されていても、ドープされた結晶は、同様に低い吸収を示す。さらに、ドーパント、置換型若しくは格子間不純物、空格子点錯体又は他の点状欠陥は、可視域内のより強い吸収の狭いピークを導入し得る。しかし、そのような点状欠陥に関連する狭い吸収ピークが、典型的に、例えば発光の背面からの抽出を目的とした場合、結晶の可視域での実質的な透明性を著しく減少させることはない。
【0107】
窒化ガリウムを含むブールを、NH、GaFの少なくとも1つ、又はGa、GaN、NH及びHFの反応によって得られる別の化合物を、鉱化剤として使用して成長させる場合、ブールは少なくとも約0.04ppmのフッ素、典型的には約0.04〜1ppmのフッ素を含んでいてよい。対照的に、フッ素がない鉱化剤を用いて成長させた、窒化ガリウムを含む結晶は、典型的には0.02ppm未満のフッ素を含む。取り込まれた水素の場合のように、取り込まれたフッ素は良性であり又はおそらく有益であると確信している。分子又は固体中でのフッ素への結合距離は、水素への対応する結合よりほんのわずかに大きいだけなので、フッ素は欠陥をパッシベートする同様の役割を果たし得る。
【0108】
窒化ガリウムを含む結晶を形成した後、結晶又はブールをさらに処理し、1枚以上のウェハへスライスし、ラッピングし、研磨し、化学的に研磨する。ウェハ又は基板は、好ましくは約0.01〜10mm、さらに好ましくは約0.05〜5mmの厚みを有し、デバイス製造用の基板として有用である。一態様において、ウェハは約100Ω・cm未満、さらに好ましくは約10Ω・cm未満、またさらに好ましくは約1Ω・cm未満の電気抵抗率を有するn型GaNを含む。他の態様において、ウェハはp型のGaNを含み、さらに他の態様において、ウェハは半絶縁性GaNを含む。基板はその後、当分野で公知の機械研磨技術を使用して、鏡面仕上げにまで研磨される。表面下の損傷は研磨プロセスの後も残り得る。この損傷は、化学支援イオンビームエッチング、反応性イオンエッチング、化学機械研磨及び光電気化学又は湿式化学エッチングを含む当分野で公知のいくつかの方法によって除去することができる。残留損傷は、約10−8mbar〜約20,000barの分圧で、例えばN又はアンモニアのような窒素含有雰囲気中で、約700℃〜1500℃の温度にウェハを加熱することによって除去することもできる。基板は、好ましくは約0.01mm〜10mm、最も好ましくは約0.05mm〜10mmの厚みを有する。
【実施例】
【0109】
下記の比較例(比較例1〜3)は、実施例(実施例1〜4)への比較のために行われている。比較例は、本発明の従来技術を構成するものではないが、比較の目的として示す。
【0110】
比較例1
NHF鉱化剤0.1gを、直径0.5インチの銀製カプセルに入れた。5.0%の開口面積を有するじゃま板をカプセルの中央部に配置し、多結晶GaN源材料0.31gをカプセルの上半部に配置した。続いてカプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア0.99gで満たす。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、それにより、銀のカプセルと銀のプラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化した。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。セルを約700℃まで加熱し、その温度で55時間にわたり保持し、その際、約85℃の温度勾配であった。さらに、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0111】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、自発核形成した多数の結晶がカプセルの底に観察される。直径約0.36mmの1つの結晶をランダムに選択し、625℃で30分間、Ar中で10%の塩酸(HCl)中でエッチングした。エッチピットは観察されなかった。露出したc面の面積は、約5.3×10−4cmであり、これは、エッチピット密度が(1/(5.3×10−4cm))未満、すなわち1900cm−2未満であることを示す。これに対して、同じエッチング処理を、水素化物/ハロゲン化物気相エピタキシー(HVPE)によって成長させた200μm厚のGaN片に適用した場合、Ga面上で2×10cm−2のエッチピット密度が観察された。HVPE法で成長させた試料の観察されたエッチピット密度は、ラッピングし研磨する前では、約300μmの厚みに成長させた材料の図9とよく一致した。
【0112】
比較例2
各々重さ3mg〜4mgの3つのシード結晶を、NHF鉱化剤0.10gのと共に直径約0.5インチの銀製カプセルの底に置いた。5.0%の開口面積を有するじゃま板をカプセルの中央部に配置し、多結晶GaN源材料0.34gをカプセルの上半部に置いた。続いてカプセルを、直径0.675インチの鋼製リングと共に充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.03gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化した。さらに、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。
【0113】
セルを、約15℃/分で約500℃に加熱し、約0.046℃/分で約700℃に加熱し、約28℃の温度勾配で6時間、後者の温度に保持した。続いてセルを冷却し、プレスから取り出す。アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、自発核形成した多数の結晶がカプセルの底に観察された。加熱速度が極めて遅いにも関わらず、自発核形成した結晶上の成長に比較して、シード上では成長はほとんど起こらなかった。
【0114】
比較例3
重さ10.4mgのGaNシード結晶を、NHF鉱化剤0.04gと共に直径0.5インチの銀製カプセルの底に置いた。5.0%の開口面積を有するじゃま板をカプセルの中央部に設け、多結晶GaN源材料0.74gをカプセルの上半部に置いた。続いてカプセルを、直径0.675インチの鋼製リングと共に充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.14gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化するようにした。続いてカプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。セルを、約15℃/分で約500℃に加熱し、0.05℃/分で680℃に加熱し、約70℃の温度勾配で53時間、後者の温度に保持した。さらに、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、加熱速度が極めて遅いにも関わらず、自発核形成した多数の結晶がカプセルの底に観察された。シードは、重量41.7mg及び直径約2mmへと著しく成長した。しかし、自発核形成した結晶の重量は、シードの重量増加の10倍以上である。
【0115】
実施例1
重さ19.7mgのGaNシード結晶に、高出力レーザによって小さな孔を開けた。このシードを、35%の開口面積の銀のじゃま板から0.13mmの銀線によって吊し、NHF鉱化剤0.10gと共に直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。多結晶GaN源材料0.74gをカプセルの上半部に置いた。続いてカプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア0.99gので満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化した。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。
【0116】
K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約660℃になるまで、セルを約11℃/分の速度で加熱した。続いて、温度勾配ΔTがゼロに減少するまで、ヒータの上半部の電流を増加させた。1時間、ΔT=0で維持した後、ΔTが約35℃に増加するまで、カプセルの上半部の温度を5℃/時で低下させ、温度を78時間にわたりその値で保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り外した。アンモニアを抜いた後にカプセルを開くと、シード重量が33.4mgまで増加したことが観察された。
【0117】
結晶組の特性は、266nm励起(4倍高調波YAG)を使用して、フォトルミネセンスによって特徴付けされる。いくつかの温度のスペクトルを図3に示す。具体的には、結晶試料の特性は、5K、20K、77K及び300Kの温度でフォトルミネセンスによって特徴付けられている。5K〜300Kの全ての温度で、ルミネセンスのピークは3.38〜3.45eVに生じている。
【0118】
実施例2
前の実験から得られた、重さ12.6mgのGaNシード結晶を、35%の開口面積を有する銀製じゃま板から0.13mmの銀線によって、レーザドリル孔を通して吊し、直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。NHF鉱化剤0.10g及び多結晶のGaN源材料1.09gを、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア0.95gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化するようにした。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約640℃になるまで、セルを約11℃/分の速度で加熱した。さらに、温度勾配ΔTがゼロに減少するまで、ヒーターの上半部の電流を増加させた。1時間、ΔT=0に維持した後に、ΔTが約50℃まで増加するまで、カプセルの上半部の温度を5℃/時で低下させ、温度をこの値に、98時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0119】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは24.3mgの重量に成長していた。その後、結晶を、Ar中、625℃で30分間、10%のHCl中でエッチングした。いくつかのエッチピットが、約10cm−2のエッチピット密度でシード上の領域のc面上に観察された。しかし、シードの横方向に成長した領域にはエッチピットがなかった。新たに横方向に成長したGaNの領域は、約3.2×10−2cmであり、これは、エッチピット密度が(1/3.2×10−2cm)未満、すなわち32cm−2未満であることを示す。
【0120】
実施例3
前の実験から得られた、重さ48.4mg及び36.6mgの2つのGaNシード結晶を、0.13mmの銀線によってレーザドリルで開けた孔を通して、35%の開口領域の銀のじゃま板から吊し、直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。NHF鉱化剤0.10g及び多結晶のGaN源材料1.03gを、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.08gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化するようにした。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約642℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱した。さらに、温度勾配ΔTがゼロに減少するまで、ヒーターの上半部の電流を増加させた。1時間にわたりΔT=0で維持した後に、ΔTが約30℃に増加するまで、カプセルの上半部の温度を5℃/時で低下させ、温度をこの値に、100時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0121】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは219.8mgの重量に成長していた。2つの結晶組の小さな方から割り欠いた片を、分析のために選択した。結晶組成物の光学的透過スペクトルをCary500i分光計を使用して測定した。透過率は、赤色(700cm−1)から青色(465cm−1)の波長に対し、60%より大きかった。GaNの屈折率[参照によりここに援用されるG Yu et al., Applied Physics Letters 70, 3209 (1997)]及び結晶の厚み(0.206mm)に基づくと、光学的吸収係数は同じ波長範囲に対し5cm−1未満であった。結晶は、ホットポイントプローブ(hot point probe)測定によってn型導電性を有すると判定された。さらに、結晶を、Ar中、625℃で30分間にわたり、10%HClの中でエッチングした。結晶全体にエッチピットがなかった。結晶のc面の面積は約4.4×10−2cmであり、これは、エッチピット密度が(1/4.4×10−2cm)未満、すなわち23cm−2未満であることを示す。
【0122】
実施例4
前の実験から得られた、重さ25.3mgのGaNシード結晶を、0.13mmの銀線によってレーザドリルで開けた孔を通して、35%の開口領域の銀のじゃま板から吊し、直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。NHF鉱化剤0.10g及び多結晶0.98gのGaN源材料を、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.07gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀のカプセルと銀のプラグとの間に冷間溶接部を形成し、鋼製リングがプラグを囲んで強化するようにした。続いて、カプセルを充填器/密閉アセンブリから取り外し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。K型熱電対によって測定されたカプセルの底の温度が約700℃で、カプセルの上半部の温度が約648℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱した。温度勾配ΔTが3℃に減少するまで、ヒーターの上半部の電流を増加させた。ΔT=3℃を1時間維持した後に、ΔTが約30℃に増加するまで、カプセルの上半分の温度を5℃/時で低下させ、ΔTが約60℃まで増加するまで、2.5℃/時でさらに低下させ、温度を20時間の間、この値に保持した。さらに、セルを冷却し、プレスから取り外した。
【0123】
アンモニアを抜いた後にカプセルを開くと、シード結晶は40.2mgの重量に成長していた。その後、結晶を30分の間、50%のHNO中でエッチングした。エッチピットの連なりが、シード結晶と、新しい横方向に成長した材料との間の界面の上方のc面上で観察された。しかし、新しく成長したGaNの残りの領域には、エッチピットがなかった。ピットがない、新しく成長したGaNの領域は約6.9×10−2cmであり、エッチピット密度が1/6.9×10−2cm未満、すなわち14cm−2未満であることを示す。
【0124】
実施例5
HVPE法によって得られた、重さ13.5mgのGaNシード結晶を、0.13mmの銀線によってレーザドリルで開けた孔を通して35%の開口領域の銀のじゃま板から吊し、直径0.5インチの銀のカプセルの下半部に置いた。0.10gのNHF鉱化剤、0.031gのCoF及び0.304gの多結晶のGaN源材料を、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填器/密閉アセンブリに封入する。カプセル及び充填器/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、1.01gのアンモニアで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセル及び銀製プラグの間に冷間溶接部を形成し、鋼製リングがプラグを囲んで強化するようにした。カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入する。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約635℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱し、温度をその値で10時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0125】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードの重量は10.3mgだったが、より厚く(厚み0.7mm)なっており、本質的に黒色であり、つまり名目上ドープされていない結晶よりはるかに暗い色を有していた。鉱化剤としてのNHFと共に使用されるシード結晶は、典型的には、結晶成長開始の前にエッチングを受ける。洗浄後、CoでドープされたGaN結晶を、約0.02cmの電極面積を有する液状Ga−In合金で湿らせた2枚のIn箔で挟んだ。結晶の電気抵抗は、室温で約1,050MΩであることが見出されたが、これは約3×10Ω・cmの抵抗率に相当する。約10Ω・cmよりも大きい抵抗率を有するGaNは半絶縁性であるとみなされる。結晶をフォトルミネセンス装置内に置き、266nmの窒素レーザで照射した。フォトルミネセンスは観察されなかった。透明に近く、黒いGaN結晶からの近バンドエッジフォトルミネセンスの強度の、名目上ドープされていないGaN結晶に対する比は、0.1%未満であった。
【0126】
実施例6
HVPE法によって成長させたGaNシード結晶を、0.13mmの銀線によってレーザドリルで開けた孔を通して、10%の開口領域の銀のじゃま板から吊し、直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。NHF鉱化剤0.10g、FeN0.087g及び多結晶GaN源材料0.305gを、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填/密閉アセンブリに封入する。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.12gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、プラグを囲む鋼製リングがプラグを強化するようにした。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約630℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱し、温度をこの値で10時間にわたり保持する。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0127】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは170μmの厚みに成長しており、赤みがかった色/琥珀色を有していた。洗浄後、FeでドープされたGaN結晶を、約0.02cmの電極面積を有する液状Ga−In合金で湿らせた2枚のIn箔で挟んだ。電気抵抗は室温で約32MΩを超え、これは3×10Ω・cmの抵抗率に相当する。約10Ω・cmよりも大きな抵抗率を有するGaNは、半絶縁性であるとみなされる。
【0128】
実施例7
HVPE法によって成長させた重さ14.3mgのGaNシード結晶を、0.13mmの銀線によってレーザドリルで開けた孔を通して、35%の開口領域の銀のじゃま板から吊し、直径0.5インチの銀製カプセルの下半部に置いた。NHF鉱化剤0.10g、MnN0.026g及び多結晶GaN源材料1.008gを、カプセルの上半部に置いた。続いて、カプセルを、直径0.583インチの鋼製リングと共に、充填/密閉アセンブリに封入した。カプセル及び充填/密閉アセンブリをガスマニホールドに移し、アンモニア1.04gで満たした。次に、プラグをカプセルの開いた上端部に挿入し、銀製カプセルと銀製プラグとの間に冷間溶接部を形成し、鋼製リングがプラグを囲んで強化するようにした。続いて、カプセルを充填/密閉アセンブリから取り出し、ゼロストローク高圧高温(HPHT)装置に挿入した。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約650℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱し、温度をこの値で60時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0129】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは53.4mgの重量に成長し、厚みは350μmで、オレンジ色を呈した。磁化率測定によると、MnでドープされたGaNの結晶は常磁性であった。
【0130】
実施例8
0.100g、0.200g又は0.500gのNHFを、3つの別々の0.5インチの銀製カプセルに加えた。さらに、充填/密閉アセンブリを使用して、多結晶GaN0.36のg及びNH0.9〜1.0gを各カプセルに加えた。NHF鉱化剤の濃度は、アンモニアに関するモル比として表すと、3つのカプセル中、それぞれ5.4%、9.3%及び23.7%であった。密閉したカプセルをゼロストローク高圧装置のセル内に置き、700℃まで加熱し、この温度に8時間にわたり保持し、その後、冷却した。GaN結晶は3つのカプセル全ての中で成長した。また、各カプセルの中には、GaF(NH及び(NHGaFを含む結晶が存在していた。Gaを含む錯体の重量は、3つのカプセル中、それぞれ0.12g、0.25g及び0.65gであり、溶解したGa含有種の濃度が初期の鉱化剤濃度にほぼ比例することを示す。3つのカプセル中の溶解していない多結晶のGaNの重量は、それぞれ0.29g、0.23g及び0.03gであり、鉱化剤の濃度が高いほどGaNの迅速な溶解及び輸送が可能になることを示す。
【0131】
実施例9
1cmの正方形のGaNシード結晶の中心に、直径2mmの孔をレーザであけた。このシード結晶を25%の開口面積のじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀製カプセル内に置いた。NHF1.000g及び多結晶GaN15.276gを、グローブボックス内の直径1.1インチの銀製カプセルに加え、さらに、直径0.12インチの充填管を有する蓋をカプセルの上端部に溶接した。充填管を、内容物を空気に曝すことなくガスマニホールドに取り付け、カプセルを排気し、さらに、NH8.44gで満たした。続いて、充填管を溶接して密閉した。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置いた。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約650℃になるまで、セルを約11℃/分の割合で加熱した。続いて、温度勾配ΔTがゼロに減少するまで、ヒーターの上半部の電流を増加させた。1時間ΔT=0で保持した後に、カプセルの上半部の温度をΔTが約30℃に増加するまで、5℃/時で低下させ、温度をこの値に100時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは約11.7×16.0mmまで横方向に成長し、中心の孔を満たしていることが見出された。図11に示された結晶では、横方向に成長したGaNがシードと融合した位置の境界が見えるが、穴上及びその周囲で本質的に転位を含まない材料を含んでいた。m方向の成長速度は約17μm/時であり、a方向の成長速度は約60μm/時であり、これはシードの穴を高品質材料で満たすためには充分以上であった。
【0132】
実施例10
厚み約0.2mmの、18×18×18mmの長い三角形のGaNシード結晶を、15%の開口領域を有するじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀製カプセルの内部に置いた。GaF0.998g、NHF0.125g及び多結晶GaN10.118gをグローブボックス内のカプセルに加え、続いて、直径0.12インチの充填管を備えた蓋をカプセルの上部に溶接した。充填管を、内容を空気に曝すことなくガスマニホールドに取り付け、カプセルを排気し、続いて、NH9.07gで満たした。さらに、充填管を溶接して密閉した。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置いた。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約750℃、カプセルの上半部の温度が約700℃になるまで、セルを加熱した。温度をこの値に54時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0133】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは約20×20×20mmまで横方向に成長していたことが見出された。c軸に対する横方向の成長速度は、約37μm/時であった。図10に示す結晶は、端部領域に本質的に転位を含まない材料を含んでいた。成長したままの結晶は極めて透明であり、眼に見えるクラック、二次元の境界又は他の欠陥を有していない。
【0134】
実施例11
18×13×0.20mm厚の三角形のGaNシード結晶を、25%の開口領域を有するじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀製カプセルの内部に置いた。NHF1.0g及び多結晶GaN14.655gを、グローブボックス内のカプセルに加え、続いて、直径0.12インチの充填管を備えた蓋をカプセルの上部に溶接する。充填管を、内容を空気に曝すことなくガスマニホールドに取り付け、カプセルを排気し、続いて、NH8.35gで満たした。充填管を溶接して密閉する。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置く。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約660℃になるまで、セルを加熱した。温度をこの値に99時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0135】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シード結晶の横方向の寸法は同一にとどまり、約18×13mmであった。結晶はくさび形であり、じゃま板の近くの端部での0.50mmから、カプセルの底の近くの端部での2.36mmまでの範囲の厚みを有した。成長速度は、c(0001)方向に沿って薄い端部では5ミクロン/時であり、厚い端部では22ミクロン/時であった。結晶は暗い緑がかった色であったが極めて透明であり、眼に見えるクラック、二次元の境界又は他の欠陥はなかった。
【0136】
実施例12
1×1cmの寸法で880μm厚のGaNシード結晶を、10%の開口領域を有するじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀のカプセルの内部に置いた。GaF1.147g及び多結晶GaN10.112gを、グローブボックス内のカプセルに加え、続いて、直径0.12インチの充填管を備えた蓋をカプセルの上部に溶接した。充填管を、内容を空気にさらすことなしにガスマニホールドに取り付け、カプセルを排気し、続いて、NH8.35gで満たした。そして、充填管を溶接して密閉した。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置いた。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約750℃、カプセルの上半部の温度が約705℃になるまで、セルを加熱した。温度をこの値に56.5時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0137】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、シードは1520mmまで厚みが増加していたが、これはc(0001)方向に沿った成長速度が11.3ミクロン/時であることを示す。
【0138】
実施例13
NHF1.53g及び多結晶GaN1.53gを、NHのない0.5インチの銀製カプセルに加えた。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置き、700℃まで加熱し、この温度に13時間保持し、続いて冷却した。カプセルを開いたとき、高温プロセス中にNHFとGaNとの反応によって形成されたNHガス0.42が排出された。良好なファセットを呈し、自発核形成したGaN結晶が、カプセルの底から回収された。NHF約0.62gの等量が残留し(1.53〜37/17×0.42)、これは、GaNの成長が40モル%のNHF中で起こることを示唆する。
【0139】
実施例14
1.3×6.1mmのスロットを、10×16×0.2mmのHVPE法によるGaN結晶の中心にレーザで切り抜いた。GaNシード結晶を25%の開口領域を有するじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀製カプセルの内部に置いた。NHF1.0g及び多結晶GaN12.79gを、グローブボックス内のカプセルに加え、続いて、直径0.12インチの充填管を備えた蓋をカプセルの上部に溶接した。充填管を、内容を空気に曝すことなしにガスマニホールドに取り付け、カプセルを排気し、続いてNH8.17gで満たした。さらに、充填管を溶接して密閉した。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置いた。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約660℃になるまで、セルを加熱する。温度をこの値に94時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0140】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、スロットは新しく成長したGaN結晶組成物によって覆われ、封じられていたことが分かった。継ぎ目/境界がスロットの中心に存在することが予測されるが、スロットは極めて透明で、高品質で眼に見えるクラック、境界又は他の欠陥のない新しい結晶組で封じられていた。
【0141】
実施例15
1.9mm×5.1mmのスロットを、8.8mm×15.1mm×0.2mmのHVPE法によるGaN結晶の中心にレーザで切り抜いた。GaNシード結晶を、4%の開口領域のじゃま板から吊し、直径1.1インチの銀製カプセルの内部に置いた。NHF1.0g及び多結晶GaN10.03gを、グローブボックス内のカプセルに加え、続いて、直径0.12インチの充填管を備えた蓋をカプセルの上部に溶接した。充填管を、内容を空気に曝すことなくガスマニホールドに取り付け、カプセルをまず排気してから、続いて、NH8.54gで満たした。そして、充填管を溶接して密閉した。カプセルをゼロストローク高圧装置中のセルに置いた。K型熱電対によって測定しながら、カプセルの底の温度が約700℃、カプセルの上半部の温度が約665℃になるまで、セルを加熱した。温度をこの値に60時間にわたり保持した。その後、セルを冷却し、プレスから取り出した。
【0142】
アンモニアを排気した後にカプセルを開くと、スロットが、極めて透明で無色に近い新しく成長したGaN結晶によって実質的に覆われていたことが分かった。この領域上でX線回折試験を行った。(0002)反射については、強度対ω(「ロッキング曲線」)測定により、35秒角の半値全幅(FWHM)を得た。スロット中で成長させたGaN結晶の部分のGa表面上で、較正された二次イオン質量分析(SIMS)によって決定された不純物濃度は、酸素5×1017cm−3、水素3×1018cm−3、炭素4×1016cm−3、ケイ素6×1015cm−3のように見出された。GaN結晶の同じ部分の窒素面上では、対応する不純物濃度は、酸素4×1017cm−3、水素2×1018cm−3、炭素5×1016cm−3、及びケイ素、2×1016cm−3のように見出された。
【0143】
以上、本発明を詳細に、また特定の態様を参照して説明したが、本発明の思想及び範囲を逸脱することがなければ様々な変形及び変更が当業者によって可能であることは明らかであろう。本発明の範囲は、上述の例示的な態様のいずれにも限定されるものではなく、以下に記載の特許請求の範囲及びそれと同等のものによってのみ規定されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みwを有する窒化ガリウムを含む結晶であって、
前記結晶が、少なくとも1つの粒子を含み、前記少なくとも1つの粒子が、前記厚みwに垂直な面を規定する次元x及びyを有し、2.75mmより大きい少なくとも1つの次元x又はyを有し、約10cm−2未満の転位密度を有し、傾角境界が実質的にない、結晶。
【請求項2】
単一のシード及び核のうちの一方から成長している、請求項1に記載の結晶。
【請求項3】
パターン化されたGaN基板上で成長している、請求項1に記載の結晶。
【請求項4】
前記パターン化されたGaN基板が、所定の寸法を有する少なくとも1つの切欠を有し、前記結晶が、前記少なくとも1つの切欠の境界から横方向に成長している、請求項3に記載の結晶。
【請求項5】
前記結晶の主要面の面積の少なくとも約50%が、約10cm−2未満の転位密度を有する、請求項4に記載の結晶。
【請求項6】
光学的に透明であり、465nm〜700nmの波長で100cm−1未満の光吸収係数を有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項7】
前記光吸収係数が、465nm〜700nmの波長で5cm−1未満である、請求項6に記載の結晶。
【請求項8】
約3×1018cm−3未満の酸素濃度を有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項9】
少なくとも1つの粒子の方向で、(0002)反射のx線ロッキング曲線の半値全幅が、約50秒角である、請求項1に記載の結晶。
【請求項10】
n型半導体、p型半導体及び半絶縁体のうちの1つである、請求項1に記載の結晶。
【請求項11】
磁性を有する、請求項10に記載の結晶。
【請求項12】
発光性である、請求項10に記載の結晶。
【請求項13】
前記単結晶が、約300Kの結晶温度で、約3.38eV〜約3.41eVの光子エネルギーでピークを示すフォトルミネセンススペクトルを有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項14】
ウェハである、請求項1に記載の結晶。
【請求項15】
丸められた部分を有する丸められた端部を有する、請求項14に記載の結晶。
【請求項16】
前記ウェハが、(0001)配向、(000−1)配向、(10−10)配向、(11−20)配向及び(10−11)配向の1つの約10°以内にある結晶配向を有する、請求項14に記載の結晶。
【請求項17】
前記結晶配向が、(0001)配向、(000−1)配向、(10−10)配向、(11−20)配向及び(10−11)配向の1つの約5°以内にある、請求項16に記載の結晶。
【請求項18】
前記結晶配向が、(0001)配向、(100−1)配向、(10−10)配向、(11−20)配向及び(10−11)配向のうちの1つである、請求項17に記載の結晶。
【請求項19】
前記結晶の端部上に、少なくとも1つの面取り部を有する、請求項14に記載の結晶。
【請求項20】
前記少なくとも1つの面取り部が、約10μmからウェハの厚みの20%まで深さ、並びに該深さの約1倍〜約5倍の幅を有する、請求項19に記載の結晶。
【請求項21】
ブールである、請求項1に記載の結晶。
【請求項22】
転位密度が約10cm−2未満である、請求項1に記載の結晶。
【請求項23】
転位密度が約100cm−2未満である、請求項22に記載の結晶。
【請求項24】
少なくとも1つのドーパントをさらに含み、該少なくとも1つのドーパントが、Be、C、O、Mg、Si、H、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Zr、Hf、希土類金属及びそれらの組合せである、請求項1に記載の結晶。
【請求項25】
前記少なくとも1つのドーパントが、約1016cm−3〜約1021cm−3の濃度で存在する、請求項24に記載の結晶。
【請求項26】
単結晶である、請求項1に記載の結晶。
【請求項27】
黒色の結晶である、請求項1に記載の結晶。
【請求項28】
前記黒色結晶からのバンドエッジ近傍のフォトルミネセンスの強度の、実質的に透明であり且つ実質的にドープされてない結晶に対する比が、約0.1%未満である、請求項27に記載の結晶。
【請求項29】
少なくとも0.04ppmのフッ素を含む、請求項1に記載の結晶。
【請求項30】
前記少なくとも1つの粒子が、約5mm〜約600mmの少なくとも1つの次元x又はyを有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項31】
半導体構造であって、基板を含み、該基板がIII族窒化物半導体結晶を含み、該結晶が少なくとも1つの粒子を含み、該結晶が厚みzを有し、前記粒子が、厚みzに垂直な結晶面を規定する次元x及びyを有し、
前記少なくとも1つの粒子が、2.75mmより大きい少なくとも1つの次元x又はyを有し、転位密度が約10cm−2未満であり、傾角境界が実質的にない、半導体構造。
【請求項32】
前記結晶に設けられた少なくとも1つのホモエピタキシャル層をさらに含み、該少なくとも1つの層がAlInGa1−x−yN層を含み、0≦x≦1、0≦y≦1及び0≦x+y≦1であり、前記少なくとも1つのホモエピタキシャル層が、少なくとも1つの粒子を含み、該少なくとも1つの粒子が、少なくとも約2.75mmの少なくとも1つの次元x又はyを有し、約10cm−2未満の転位密度を有し、傾角境界が実質的にない、請求項31に記載の半導体構造。
【請求項33】
ウェハである、請求項31に記載の半導体構造。
【請求項34】
ブールである、請求項31に記載の半導体構造。
【請求項35】
発光ダイオード、レーザダイオード、光検出器、アバランシェフォトダイオード、トランジスタ、整流器及びサイリスタの1つ、トランジスタ、整流器、ショットキー整流器、サイリスタ、p−i−nダイオード、金属−半導体−金属ダイオード、高電子移動度トランジスタ、金属半導体電界効果トランジスタ、金属酸化物電界効果トランジスタ、パワー金属酸化物電界効果トランジスタ、パワー金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ、バイポーラ接合型トランジスタ、金属絶縁体電界効果トランジスタ、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ、パワー絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、パワー縦型(垂直)接合電界効果トランジスタ、カスケードスイッチ、内部サブバンドエミッター、量子井戸赤外検出器、量子ドット赤外検出器の1つ、並びにそれらの組合せの一部を構成する、請求項31に記載の半導体構造。
【請求項36】
赤外吸収ピークを約3175cm−1で有し、約0.01cm−1より大きな単位厚み当りの吸光度を有する、III族窒化物半導体結晶。
【請求項37】
単結晶が、約0.04ppmより大きいフッ素濃度を有する、請求項36に記載のIII族窒化物半導体結晶。
【請求項38】
前記結晶が、半導体デバイスの基板の部分を構成し、該半導体デバイスが基板を含む、請求項36に記載のIII族窒化物半導体結晶。
【請求項39】
前記単結晶上にホモエピタキシャルに設けられた少なくとも1つの活性層をさらに含み、該少なくとも1つの活性層が、AlInGa1−x−yN層[式中、0≦x≦1、0≦y≦1及び0≦x+y≦1]を含む、請求項38に記載のIII族窒化物半導体結晶。
【請求項40】
前記少なくとも1つの活性層及び前記結晶の各々が、傾角境界が実質的に有さず、100cm−2未満の転位密度を有する、請求項39に記載のIII族窒化物半導体結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図7(c)】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−509178(P2010−509178A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537166(P2009−537166)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/023694
【国際公開番号】WO2008/063444
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】