説明

窒化ケイ素配線基板

【課題】パワーモジュールなどの配線基板としてその放熱性を高めるとともに、基板の熱抵抗を低減した配線基板を提供する。
【解決手段】窒化ケイ素を主成分とするセラミックスからなる絶縁基板1の一方の表面に配線回路層2が設けられ、他方の表面に放熱板4が貼付けられてなる窒化ケイ素配線基板において、絶縁基板1の他方の表面側に、銅を主成分とする導体が充填された複数のビア導体6が配設されたビア形成層1bを具備し、ビア導体1bと放熱板4とを熱的に接続してなり、絶縁基板1におけるビア形成層1bの厚みを絶縁基板全体の30〜80%とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、絶縁基板の表面に配線回路層が形成され、その配線回路層に対して大電流が印加される配線基板に関し、特に絶縁基板が窒化ケイ素を主成分とするセラミックスからなる配線基板の放熱性の改良に関するものである。
【0002】
【従来技術】近年、産業機器の分野ではMOSFETやIGBTなどのパワー系デバイスを用いたパワーモジュールが制御基板に適用されつつある。これらのパワー系デバイスに使用される電流は数十〜数百Aを超え、非常に高電力となるため、パワー系デバイスから発生する熱も大きく、この熱によるデバイスの誤動作あるいは破壊を防止するために、発生熱をいかに系外に放出するかが大きな問題になっており、このようなパワー系デバイスを搭載する配線基板に対しては、絶縁基板として高い熱伝導性が要求されている。
【0003】従来から、デバイスから発生した熱を放熱するための好適な絶縁材料としては、炭化珪素、ベリリウム、窒化アルミニウム等のセラミックスが用いられてきたが、量産性、安全性などの点から窒化アルミニウム質セラミックスが最も多く用いられてきた。
【0004】そこで、従来のパワーモジュールに用いられる配線基板の構造について概略断面図を図3に示した。図3の配線基板によれば、絶縁基板21の一方の表面には、大電流が印加される肉厚の大きい銅あるいはアルミニウムなどの配線回路層22がロウ材23により被着形成されている。そして、絶縁基板21の他方の表面には、パワー素子の作動によって発生した熱を効率的に放熱するために、Cuなどの高熱伝導体からなる放熱板24がロウ材23により取付けられている。
【0005】パワーモジュール用の配線基板は高放熱性が要求されることから、その絶縁基板21は高熱伝導性を有し、また基板厚みを薄くして熱抵抗を下げるといった手法が用いられている。
【0006】従来、パワーモジュールの絶縁基板21に用いられている窒化アルミニウム質セラミックスは、熱伝導率は高いものの、強度が低く、基板厚みを薄くできなかったため、放熱性を上げるためには熱伝導率を高くしなければならず、その結果、窒化アルミニウムの純度を高め、高温で焼成する必要があり、非常に高価な製造装置が必要であるために製造コストが高くなっていた。また、温度サイクル試験においても、配線回路層及び放熱板に用いられるCuと窒化アルミニウムとの間に働く熱応力により、基板−Cu板間でクラックが発生し、パワーモジュールとして信頼性が劣っていた。
【0007】これに対し、この窒化珪素質セラミックスは、耐熱衝撃性、高温強度に優れたセラミックスとして各種の構造材料用セラミックスとして用いられてきたが、最近になって、上記特性に加え、組成や組織の制御によっては高い熱伝導性を有することが見いだされ、パワーモジュール用の絶縁基板材料として期待されており、特開平4−212441号、特開平6−135771号、特開平6−216481号などにおいて高熱伝導性と高強度を兼ね備えた窒化珪素質セラミックスを用いた配線基板が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この窒化ケイ素質セラミックスをパワーモジュールにおける絶縁基板21として用いる場合、強度が非常に高いためにその基板21の厚みを0.3mm程度まで薄くして熱抵抗を低下させることが可能である、窒化アルミニウム質セラミックスを絶縁基板21としたときの約半分まで基板厚みを薄くできるが、数十〜数百KVの電圧に対する電気絶縁性を考慮すると、これ以上基板を薄くすることができない。
【0009】また、窒化ケイ素質セラミックスを絶縁基板として用いた場合、強度が高いことからCuとの熱応力に対する耐久性が高く、その結果、Cu板厚を約0.5mm程度と窒化アルミニウム質セラミックスを絶縁基板としたときに比較して2倍以上まで厚くできるが、絶縁基板とCu板の接合信頼性の点からこれ以上厚くすることはできない。
【0010】よって、従来のパワーモジュールの放熱性や基板自体の強度を高めるためには窒化ケイ素質セラミックス自体の特性を高めるしかなかったが、このような特性を発揮させるには、非常に特殊な製造方法によらざる得ないために、高価となり、安価に製造することが困難であった。
【0011】従って、本発明の目的は、従来の窒化ケイ素質セラミックスを用いながらも、高い放熱性を発揮することのできる窒化ケイ素配線基板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題に対して検討を重ねた結果、絶縁基板を窒化ケイ素質セラミックスによって形成するとともに、その絶縁基板の放熱板接合側に銅を主成分とする導体を充填したビア導体を複数配設したビア形成層を設けることによって、絶縁基板自体の放熱性をさらに高めることができる、言い換えれば、放熱性を劣化させることなく絶縁基板の厚さを厚くでき、基板の強度や破断荷重を高められる結果、Cu板の厚みも厚くできることを見いだした。
【0013】即ち、本発明の窒化ケイ素配線基板は、窒化ケイ素を主成分とするセラミックスからなる絶縁基板の一方の表面に配線回路層が設けられ、他方の表面に放熱板が貼付けられた放熱板とを具備してなるものであって、該絶縁基板の前記他方の表面側に、銅を主成分とする導体が充填された複数のビア導体が配設されたビア形成層を具備し、前記ビア導体と前記放熱板とを接合してなることを特徴とするものである。
【0014】なお、かかる配線基板によれば、放熱性を低下させることなく基板厚みを大きくすることができる結果、配線回路層を0.5mm以上の金属板によって形成することできる。
【0015】また、放熱性の点から、前記絶縁基板における前記ビア形成層の厚みが絶縁基板全体の30〜80%を占めることが望ましく、さらに前記ビア形成層におけるビア部総面積の絶縁基板全面積に対する面積比率が30〜80%であることが望ましい。
【0016】また、前記絶縁基板の熱伝導率が40W/m・K以上であることが放熱性を高める上で望ましく、絶縁基板を構成する窒化ケイ素質セラミックスとしては、窒化ケイ素を主成分とし、希土類元素及びアルカリ土類金属を酸化物換算による合量で4〜30モル%、且つ前記希土類金属(RE)及びアルカリ土類(R)の酸化物換算によるモル比(RE23/RO)が0.1〜15の割合となる比率で含有するとともに、Alの酸化物換算による含有量が1.0モル%以下であることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の窒化ケイ素配線基板の概略断面図を図1に示した。図1に示すように、窒化ケイ素を主成分とする絶縁基板1の表面には、大電流が印加される配線回路層2がロウ材3により被着形成されており、その配線回路層2にはパワー素子(図示せず)などが搭載される。一方、絶縁基板1の裏面には、パワー素子などの作動によって発生した熱を効率的に放熱するために、Cuなどの高熱伝導体からなる放熱板4がロウ材5により取付けられている。
【0018】本発明によれば、上記絶縁基板1が絶縁層1aとCuを主成分とする導体が充填されたビア導体6が多数配設されたビア形成層1bとの積層構造によって構成されていることが大きな特徴である。このような高熱伝導性に優れたビア導体6を多数配設したビア形成層1bを形成することによって絶縁基板1の放熱性を高めることができる。
【0019】例えば、同一の厚みの絶縁基板において放熱板接合側にビア形成層1bを設けることによって、絶縁基板全体の熱抵抗を下げることができる。
【0020】また、同一の放熱性を具備させる場合、ビア形成層1bを設けない場合に比較して、窒化ケイ素単板よりも熱伝導性のよいビア形成層1bを設けることによって、その絶縁基板1の全体の厚みを厚くすることができ、絶縁基板の破壊荷重をを高めることができる。
【0021】そして、絶縁基板1の強度や破壊荷重を高めることができる結果、配線回路層2や放熱板4を絶縁基板1に接合した場合、窒化ケイ素質絶縁基板1と配線回路層2や放熱板4との熱膨張差に起因する熱応力に対する耐性を高めることができ、配線回路層2や放熱板4の厚みを厚くでき、配線基板としての配線回路層に対してさらに大電流を印加することができ、また放熱性を高めることができる。
【0022】また、このビア形成層1bの厚さは、絶縁基板1の放熱性を決定する1つの要因であって、その厚さが厚いほど熱伝導性を高めることができるが、ビア形成層1bの厚さが厚く、絶縁層1aの厚さが薄すぎると、絶縁層1aの表面に形成された配線回路層2に電圧を印加した場合に、絶縁層1aが絶縁破壊を起こしてしまう虞がある。かかる観点から、ビア形成層の厚さは絶縁基板全体厚みの30〜80%、特に50〜80%が適当である。
【0023】また、絶縁基板1における絶縁層1aは、配線回路層2間の電気絶縁性を保つために必要であり、その厚さは、絶縁性を維持し電圧印加時に絶縁破壊を起こさない最低限の厚さであればよく、具体的には0.2mm以上であることが望ましい。また、この絶縁層1aの厚さが厚すぎると、配線基板全体の熱抵抗を増大させてしまうために、その厚さは0.5mm以下、特に0.4mm以下であることが望ましい。
【0024】また、本発明の配線基板は、絶縁基板1の放熱性および強度を高めることができる結果、配線回路層2及び放熱板4の厚さを従来よりも厚くすることができ、その厚さを0.5mm以上、特に0.6mm以上、さらには0.7mm以上とすることができる。
【0025】さらに、ビア形成層1bにおけるビア導体6は、図2の絶縁基板1の裏面の平面図に示すように、複数のビア導体6がアレイ状に配設されているが、このビア導体6の絶縁基板1全面積に占める全ビア部の総面積が大きい程、ビア形成層1bの熱抵抗を低くすることができるが、その面積が大きすぎると、基板強度の向上効果が小さくなってしまう。かかる観点から、ビア導体6の絶縁基板1全面積に占める全ビア部の総面積の比率が30〜80%、特に40〜70%であることが望ましい。
【0026】また、本発明によれば、絶縁基板1を構成する窒化ケイ素質セラミックスは、それ自体の熱伝導率が高いことが望まれ、特に熱伝導率が40W/m・K以上、特に60W/m・K以上が望ましい。
【0027】このような絶縁基板を構成する窒化ケイ素質セラミックスは、β−窒化ケイ素を主体とするものであり、焼結体の断面における電子顕微鏡写真より求めた平均アスペクト比が1.5〜5、短軸径が0.1〜1μmの結晶から構成される。
【0028】そして、この焼結体の粒界相には、焼結助剤成分として、少なくとも希土類元素(RE)を含有するものである。希土類元素(RE)としてはY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの何れの元素でも好適に用いる事ができるが、これらの中でもY、Ce、Sm、Dy、Er、Yb、Lu、とりわけY、Erが特性、コストの点で望ましい。
【0029】また、本発明によれば、上記特性を具備するとともに低温での焼結性を高める上でアルカリ土類金属、特にMgを含有することが望ましく、前記希土類元素(RE)及びアルカリ土類金属(R)は酸化物換算による合量で4〜30モル%、特に5〜25モル%の範囲で配合される。但し、前記希土類元素とアルカリ土類金属との酸化物換算によるモル比(RE23/RO)が0.1〜15、特に0.5〜13の範囲となることが望ましい。
【0030】これは上記合量が4モル%より少ないと、焼結体を十分に緻密化させることは困難であり、30モル%を越えると、焼結体中での粒界相の占める割合が増加する為に熱伝導率が低下するためである。またRE23/ROの比率が15を越えたり、0.1より小さくなっても、緻密化は不十分となり、熱伝導率は低下する。
【0031】また、Al23などのAl化合物の配合は、焼結性の向上に大きく寄与するが、Si34結晶中に固溶してフォノンの伝播を阻害する結果、焼結体の熱伝導率を著しく低下させるため、高熱伝導化のためには存在しないことが望ましく、具体的には、Alは酸化物換算で1.0モル%以下、望ましくは0.5モル%以下、より望ましくは0.1モル%以下、更には0.01モル%以下にするのが良い。
【0032】なおこの焼結体中には着色成分としてTi、Hf、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、など周期律表第4a、5a、6a属金属のうち少なくとも1種を酸化物換算で0.05〜1重量%の割合で含んでいてもよい。
【0033】本発明の窒化ケイ素配線基板を製造するには、まず絶縁基板を作製する。この絶縁基板は、窒化ケイ素粉末に対して、焼結助剤として、希土類元素化合物、アルカリ土類金属化合物を前述の比率に配合する。
【0034】このとき、用いる窒化ケイ素粉末としては不純物酸素量が0.5〜3.0重量%のものが望ましい。これは不純物酸素量が3.0重量%よりも多いと、焼結体表面が荒れ、強度劣化を招く虞があり、0.5重量%よりも少ないと焼結性が悪くなるためである。また、平均粒径は、0.1〜1.5μmであり、α率が80%以上であることが望ましい。なお、焼結助剤となる化合物は、酸化物、炭酸塩、酢酸塩など焼成によって酸化物を形成しうる化合物であることが望ましい。
【0035】該混合粉末に有機バインダーと溶媒とを添加してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブレード法、カレンダーロール法、圧延法、押し出し成形法等の周知の成形方法によりシート状成形体を作製する。
【0036】そして、ビア形成層用として、シート状成形体に対して、マイクロドリル、レーザー等により直径が50〜250μmのビアホールを所定のピッチで複数個に形成する。その後、このビア形成用シート状成形体とビアホールを形成していない絶縁層用シート状成形体とを積層圧着する。
【0037】その後、上記積層成形体を弱酸化性雰囲気中にて脱バインダー処理した後、窒素などの非酸化性雰囲気中で、1800℃以下の温度で焼成することにより絶縁基板素体を作製することができる。
【0038】次に、得られた絶縁基板素体のビアホール内に、銅粉末を主成分とする導体ペーストを調製し、このペーストをビアホールにスクリーン印刷、プレス埋め込み等の手法によって印刷充填することによって絶縁基板を作製することができる。
【0039】その後、この絶縁基板の表面にCu−Ag−Ti或いはCu−Au−Tiなどの活性金属を含有するロウ材のペーストを塗布し、厚さ0.5mm以上の金属箔あるいは金属板を積層し、800〜900℃で加圧しながら焼付けを行う。焼付け後、金属箔や金属板にレジスト塗布、露光、現像、エッチング処理、レジスト剥離などの手法によって、所定の回路パターンからなる配線回路層を形成することにより窒化ケイ素配線基板を得る。
【0040】また、この配線基板の裏面に、放熱板を取り付けるには、配線回路層形成と同様に、活性金属を含有するロウ材のペーストを塗布し、厚さ0.5mm以上の金属箔あるいは金属板を積層し、800〜900℃で加圧しながら焼付けを行うことにより取り付けられる。
【0041】本発明によれば、上述したように、絶縁基板1に上記ビア形成層1bを設けることにより、絶縁層1aを絶縁性が劣化しない最低限の厚みにすることができる。ビア形成層1bのビア中には高熱伝導性を有するCuを主成分とする導体が充填されているため熱伝導率は高く、またビアの面積比率を特定の範囲にすることにより、基板強度をも高くすることができる。これにより、放熱板や配線回路層の厚さを厚くすることも可能となり、パワーモジュール全体としての放熱性を向上させることが可能となる。
【0042】
【実施例】実施例1平均粒径が1.2μm、酸素量が1.3重量%、α率93%の直接窒化法により製造された窒化ケイ素原料粉末にEr23とMgO換算で14.99モル%、Er23/MgO比=1,Al23量0.01モル%以下となる量で配合して、その混合粉末に対して成形用バインダーとしてアクリル樹脂バインダーを、溶媒としてトルエンを添加してスラリー化した。そして、そのスラリーを用いてドクターブレード法により厚さ0.1〜0.3mmのグリーンシートを得た。
【0043】そして、ビア形成層用のグリーンシートにはホール径120μmのビアホールをレーザーにより所定箇所へ複数個形成した。そして絶縁層及びビア形成層の各グリーンシートを位置合わせして積層圧着し、積層成形体を作製した。
【0044】かくして得られた積層成形体を弱酸化性雰囲気中、所定温度で脱バインダーした後、常圧窒素雰囲気中で焼成した。
【0045】なお、熱伝導率測定のために、ビアホールを形成していない単板を作製し、この単板の熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定した。また、アルキメデス法によって基板の相対密度を算出した。
【0046】次に、銅粉末(平均粒径5μm)とアクリル系バインダーとをアセトンを溶媒としてビア導体用の導体ペーストを調製し、このペーストをビアホールにスクリーン印刷によって印刷充填し、950℃で焼結させた。なお、焼結後の基板全体面積に対するビア導体の総面積が62%であった。
【0047】その後、絶縁基板の表面にCu−Ag−Tiの活性金属ロウを塗布し、厚さ500μmの銅板を貼り付け、また配線基板の裏面に厚さ0.5mmの銅板をCu−Ag−Tiの活性金属ロウを塗布し貼り付け、900℃で熱処理して銅板を接合した。その後、この銅板にレジスト塗布、露光、現像、レジスト除去の処理を施し、所定パターンの配線回路層を形成し、配線回路層表面に無電解Niメッキを施した。その後、この配線基板の配線回路層の上に実際に半導体チップを実装し、配線基板の熱抵抗を測定した。
【0048】また、上記の絶縁基板に対して、JISR1601の3点曲げ抗折試験法に従って、50mmスパンで支持し、中央部に応力印加して破断したときの強度を基板強度として評価した。
【0049】なお、表1では、絶縁基板の全体厚みを0.6mmに一定として、ビア形成層の厚みを徐々に厚くした場合の特性の変化について評価した。また、表2は、絶縁層の厚みを0.3mmと一定とし、ビア形成層の厚みを徐々に大きくした。
【0050】
【表1】


【0051】
【表2】


【0052】表1の結果から明らかなように、ビア形成層の形成によって、強度の低下を低減しつつ、絶縁基板の熱抵抗を大幅に低減することができる。また、表2の結果から明らかなように、ビア形成層の厚みを厚くすることにより、基板の熱伝導率を高めることができ、また基板の破断荷重を高くすることができる。
【0053】実施例2実施例1において、基板全体厚みを0.6mm(絶縁層0.2mm,ビア形成層0.4mm)とし、ビア形成層におけるビア導体の大きさおよび個数を変えて、全基板の面積に対する比率を変えるか、放熱板の厚みを変えることによる配線基板の熱抵抗、基板強度を測定した。結果は表3に示す。
【0054】
【表3】


【0055】表3の結果から明らかなように、ビア導体の面積比率を高めることにより基板強度を大きく低下させることなく、熱抵抗を低減することができた。また、放熱板の厚みを大きくするに従って熱抵抗を低減することができ、放熱板の厚みが0.5mm以上の場合においても放熱板の剥がれや絶縁基板に割れなどの発生がなかった。
【0056】以上の表1〜表3の結果から、絶縁層厚みを0.5mm以下、且つビア形成層の厚みを全体厚みの30〜80%とし、ビアの面積比率を30〜80%にすることにより、熱抵抗は0.6℃/W以下になり、従来のパワーモジュール用配線基板(試料No.1)に比べ、放熱性を大幅に改善することが可能となった。
【0057】実施例3配線基板の全体厚みを0.6mm(絶縁層厚み0.2mm、ビア形成層厚み0.4mm)とし、絶縁基板を形成する窒化ケイ素質焼結体の組成を種々変更した場合の特性の変化をみた。結果は表4に示した。
【0058】
【表4】


【0059】表4の結果によれば、希土類元素(RE)及びMgを酸化物換算による合量が4モル%以上で相対密度95%以上が達成されたが、その含有量が増加するに従い、熱伝導率が低下した。特に4〜30モル%で40W/m・K以上の特性が達成された。
【0060】また、希土類金属及びMgの酸化物換算によるモル比(RE23/MgO)では0.1〜15、また、Al23量が1モル%以下で40W/m・K以上の特性が達成された。
【0061】以上の結果、熱伝導率が40W/m・Kを下回るものは、ビア形成層を設けても熱抵抗が0.6℃/W以上と高くなり、材料特性として40W/m・K以上が望ましいことがわかる。
【0062】
【発明の効果】以上詳述したとおり、本発明の配線基板は、絶縁基板を、絶縁層とビア形成層の2層から構成し、ビア形成層にCuを主成分とする導体を充填したビア導体を形成することにより、放熱性を高める、あるいは放熱性を劣化させることなく基板を厚くでき、その結果、放熱板あるいは配線回路層に用いるCu板を厚くすることができ、従来に比べて高放熱性である配線基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化ケイ素配線基板の概略断面図である。
【図2】本発明の窒化ケイ素配線基板におけるビア形成層の構造を説明するための概略平面図である。
【図3】従来のパワーモジュール用配線基板の概略断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
1a 絶縁層
1b ビア形成層
2 配線回路層
3 ロウ材
4 放熱板
5 ロウ材
6 ビア導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】窒化ケイ素を主成分とするセラミックスからなる絶縁基板の一方の表面に配線回路層が設けられ、他方の表面に放熱板が貼付けられた放熱板とを具備してなる窒化ケイ素配線基板において、該絶縁基板の前記他方の表面側に、銅を主成分とする導体が充填された複数のビア導体が配設されたビア形成層を具備し、前記ビア導体と前記放熱板とが接合されてなることを特徴とする窒化ケイ素配線基板。
【請求項2】前記配線回路層が0.5mm以上の金属板からなる請求項1記載の窒化ケイ素配線基板。
【請求項3】前記絶縁基板における前記ビア形成層の厚みが絶縁基板全体の30〜80%を占めることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素配線基板。
【請求項4】前記ビア形成層におけるビア部総面積の絶縁基板全面積に対する面積比率が30〜80%であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素配線基板。
【請求項5】前記絶縁基板の熱伝導率が40W/m・K以上であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素配線基板
【請求項6】前記絶縁基板が、窒化ケイ素を主成分とし、希土類元素及びアルカリ土類金属を酸化物換算による合量で4〜30モル%、且つ前記希土類金属(RE)及びアルカリ土類金属(R)の酸化物換算によるモル比(RE23/RO)が0.1〜15の割合となる比率で含有するとともに、Alの酸化物換算による含有量が1.0モル%以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−156406(P2001−156406A)
【公開日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−339881
【出願日】平成11年11月30日(1999.11.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】