説明

窒化物半導体の評価方法及び評価装置

【課題】窒化物半導体の内部電場を非破壊・非接触に求めることができる窒化物半導体の評価方法及び評価装置を得る。
【解決手段】参照信号に同期した音波を窒化物半導体の試料15に照射する。試料15にプローブ光を照射し、試料15で反射又は透過したプローブ光を受光して電気信号に変換する。プローブ光の電気信号を直流成分と交流成分に分離する。交流成分を、参照信号に同期したロックイン増幅器25によりロックイン検出する直流成分を直流電圧計24により計測する。交流成分を直流成分で除算することでプローブ光の変調スペクトルを求める。変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて試料15の内部電場を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変調分光を用いた窒化物半導体の評価方法及び評価装置に関し、特に窒化物半導体の内部電場を非破壊・非接触に求めることができる評価方法及び評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化インジウム(InN)、及びこれらから構成される混晶の総称である窒化物半導体は、物理的かつ化学的に安定であり、熱伝導率も高く放熱性に優れていることが知られている。このため、多層膜又は単層膜窒化物半導体を用いた素子、例えばAlGa1−xN/GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT: high electron mobility transistor)やInGa1−xN/GaNレーザーダイオード(LD: laser diode)は、高出力素子として有望視されている。これまでに数多くの窒化物半導体素子が報告され、一部実用化されている(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0003】
半導体素子の特性は、その材料段階での構造設計に強く支配される。とりわけ特性に繋がる電子・ホールの挙動を決定するポテンシャル構造の最適化は、構造設計において最も基本的である。特に窒化物半導体は、その結晶構造がウルツ鉱型であるため、群論に従ってc軸方向に沿った自発分極の発生が許容される。しかも、窒化物半導体の多層膜では、格子不整合歪が生じるため、ピエゾ分極も発生する(例えば、非特許文献1,2参照)。
【0004】
これら2種類の電気的分極は電場を誘起するため、ポテンシャル構造を決定する。しかも、これらの分極は窒化物半導体では非常に強い値を示すので、電子・ホール濃度も支配する。このため、窒化物半導体の多層膜の構造設計において、これらの電気的分極を制御することは必須の課題である。
【0005】
半導体素子の開発段階では、構造設計とそれに基づいた素子の作成及び評価が一般的に行われる。しかし、半導体素子の作成には多大な工程を要するので、その途中工程において評価を行い、その結果をフィードバックすることが必要となる。特に重要なのは、半導体の多層膜を成長した後の材料評価である。窒化物半導体の多層膜では、前述の自発分極及びピエゾ分極によって誘起される電場強度又はポテンシャルを測定することが必要である。
【0006】
窒化物半導体の多層膜におけるポテンシャル又は電場強度を評価する方法が2つ存在する。1つ目の評価方法は、Yuらが提案した光電流測定法である(例えば、非特許文献3参照)。これは、半導体の多層膜内での内部光電効果を利用した方法である。具体的には、基板裏面から照射した光に対する電流の分光応答特性を測定し、ポテンシャルを推定する。この手法は、フェルミ準位に対する障壁ポテンシャルの高さを直接見積もることができるという長所を有するが、電流測定に必要な金属電極の蒸着という破壊的・侵食的プロセスが付随するという短所を有する。さらに、実際に検出されるデータは金属/窒化物半導体の多層膜の複合システムにおけるフェルミ準位に対する障壁ポテンシャルであるため、窒化物半導体の多層膜自体の障壁ポテンシャルとは異なる可能性がある。
【0007】
2つ目の評価方法は、電場下における半導体の変調分光特性を利用した方法である(例えば、非特許文献4−6参照)。変調分光とは、試料内に周期的摂動を加えることにより生じる誘電関数の変調成分を、プローブ用の光を用いて検出する分光計測である。また、変調分光は、周期的摂動の形態によって様々な種類に分類される。その中でも光変調反射分光は、半導体で比較的よく用いられる変調分光である。光変調反射分光とは、周期的強度変化を伴う励起光照射によって誘起される誘電関数の電場変調成分を、プローブ光を用いて変調反射率として検出する分光計測である。なお、励起光照射による電場変調は、光生成電子・ホールに起因する。
【0008】
ある一定の電場(通常10kV/cm以上)を有する試料から得られた光変調反射スペクトルは、試料の基礎光学遷移エネルギー近傍で振動形状を示すことが知られている。この振動形状は、フランツ・ケルディッシュ(FK: Franz-Keldysh)振動と呼ばれている。FK振動の周期は試料の電場強度によって決定される。従って、測定によって得られたFK振動の周期を解析することにより、試料の内部電場を求めることができる。光変調反射分光を用いた内部電場評価方法は、ポテンシャル構造に対するプローブとして光を用いるので、非破壊・非接触という特徴を有する。従って、試料に対する加工及び処理を必要とせず、簡便性において優れている。こうした利点を生かして、これまでにもFK振動から窒化物半導体の電場強度を推定した報告がなされている。
【0009】
しかし、光変調反射分光を用いた内部電場評価法には、以下の問題点が存在する。1つ目の問題点は、レーザー光照射により必然的に試料から発光・散乱光が発生することである。こうした発光成分及び散乱光成分は、プローブ光の変調反射成分を受光するための検出器に対して迷光成分として作用する。光変調反射信号は一般に発光成分及び散乱光成分よりも微小な信号なので、上記迷光成分は光変調反射信号を擾乱させてしまう。
【0010】
2つ目の問題点は、データの解析に関係する。光変調反射測定では、試料に対して励起光とプローブ光が照射されるので、FK振動解析から得られる電場強度は厳密には光照射下での電場強度である。光照射下では、キャリアの発生に伴う電場遮蔽効果が働くので、上記電場強度は、暗中の電場強度より低い値を示すと予測される。構造設計時では、通常、光照射を想定しないので、設計時の内部電場強度は、FK振動解析から得られた電場強度と異なる可能性がある。事実、竹内らは、AlGaN/GaNヘテロ構造において、FK振動解析から得られた電場強度が設計時の内部電場強度と大きく異なることを報告している(例えば、非特許文献7参照)。こうした電場強度の違いは、例えばGaAs系の場合、数値シミュレーションにより仮想的に光照射を行えばFK振動解析結果に相当する電場強度を再現することができるので、解消することができる(例えば、非特許文献8、特許文献1,2参照)。
【0011】
【非特許文献1】For a review, ”Group III-Nitride Semiconductor Compounds” ed. B. Gil (Clarendon Press, Oxford, 1998)
【非特許文献2】For a review, ”Wide Energy Bandgap Electronic Devices” eds. F. Ren and J. C. Zolper (World Scientific Publishing, Singapore, 2003)
【非特許文献3】L. S. Yu, Q. J. Xing, D. Qiao, S. S. Lau, K. S. Boutros, and J. M. Redwing, Appl. Phys. Lett. 73, 3917 (1998)
【非特許文献4】For a review, M. Cardona, “Modulation Spectroscopy” (Academic Press, New York, 1969)
【非特許文献5】For a review, F. H. Pollak and H. Shen, Mater. Sci. Eng. R 10, 275 (1993)
【非特許文献6】For a review, H. Shen and M. Dutta, J. Appl. Phys. 78, 2151 (1995)
【非特許文献7】H. Takeuchi, Y. Yamamoto, Y. Kamo, T. Oku, and M. Nakayama, Eur. Phys. J. B 52, 311 (2006)
【非特許文献8】H. Takeuchi, Y. Kamo, Y. Yamamoto, T. Oku, M. Totsuka, and M. Nakayama, J. Appl. Phys. 97, 063708 (2005)
【非特許文献9】“計測のためのフィルタ回路設計”,遠坂 俊昭 著 (CQ出版, 1998)
【非特許文献10】H. Takeuchi, Y. Yamamoto, R. Hattori, T. Ishikawa, and M. Nakayama, IEICE Trans. Electron. E86-C, 2015 (2003)
【非特許文献11】H. Takeuchi, Y. Yamamoto, R. Hattori, T. Ishikawa, and M. Nakayama, Jpn. J. Appl. Phys. 42, 6772 (2003)
【非特許文献12】H. Takeuchi, Y. Yamamoto, R. Hattori, T. Ishikawa, and M. Nakayama, Physica E 21, 693 (2004)
【非特許文献13】H. Takeuchi, Y. Yamamoto, and M. Nakayama, J. Appl. Phys. 96, 1967 (2004)
【特許文献1】特許出願2004-316818号公報
【特許文献2】U.S. Patent Application 20060094133
【特許文献3】U.S. Patent 7,038,768
【特許文献4】特許出願2003-9515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、窒化物半導体に代表される先端材料の場合、シミュレーションに用いるパラメータが存在しないこと、又はパラメータの既報値が信頼性に欠けることがある。従って、窒化物半導体の場合、シミュレーターを用いてFK振動解析結果に相当する電場強度を再現することは非常に困難である。
【0013】
この問題は、光変調反射以外の非破壊・非接触な変調分光法を用いたFK振動測定法を確立することにより解消される。FK振動を測定するためには、電気的摂動を試料に加える必要がある。しかし、非破壊・非接触を実現するためには、電極を設けて直接電圧印加することはできない。従って、光変調反射と同様に、試料内部で電気的摂動に変換される非接触印加可能な摂動を用いる必要がある。
【0014】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、窒化物半導体の内部電場を非破壊・非接触に求めることができる評価方法及び評価装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る窒化物半導体の評価方法は、窒化物半導体に音波を照射してピエゾ分極を発生させる工程と、プローブ光を窒化物半導体に照射する工程と、窒化物半導体で反射又は透過したプローブ光の変調スペクトルを測定する工程と、変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて窒化物半導体の内部電場を求める工程とを備える。
【0016】
本発明に係る窒化物半導体の評価装置は、窒化物半導体に音波を照射してピエゾ分極を発生させる音波発生器と、プローブ光を窒化物半導体に照射するプローブ光用光源及び光学系と、窒化物半導体で反射又は透過したプローブ光の変調スペクトルを測定する変調スペクトル測定部と、変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて窒化物半導体の内部電場を求める計算機とを備える。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、窒化物半導体の内部電場を非破壊・非接触に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る窒化物半導体の評価装置を示すブロック図である。この窒化物半導体の評価装置は、プローブ光の検出方法として反射型を採用している。
【0019】
白色光源11は、プローブ光用の光源であり、例えばハロゲンランプおよびキセノンランプ等である。白色光集光レンズ12は、白色光源11からの光を分光器13に導く。分光器13は、入射した白色光を単色化し、プローブ光を生成する。プローブ光集光レンズ14は、分光器13で単色化されたプローブ光を、試料台に載せられた試料15の表面に集光する。
【0020】
反射光集光レンズ16は、試料15から反射されたプローブ光を光検出器17に集光する。光検出器17は、例えばフォトダイオードなどであり、窒化物半導体の試料15で反射又は透過したプローブ光を受光して電気信号に変換する。音波発生器18は、参照信号に同期させた音波を試料15に照射してピエゾ分極を発生させる。制御部19は、光検出器17からの電気信号を入力し、分光器13や音波発生器18を制御する。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態1に係る窒化物半導体の評価装置の変形例を示すブロック図である。このようにプローブ光の検出方法として透過型を採用しても良い。透過光集光レンズ20は、試料15から透過されたプローブ光を光検出器17に集光する。その他の構成は図1と同様である。これにより同様の効果を奏する。
【0022】
図3は、本発明の実施の形態に係る制御部を示すブロック図である。波形生成器21は、試料15に照射する音波とロックイン検出用の参照信号を生成する。波形として、ロックイン検出に最適な正弦波および方形波を用いる。電流電圧変換器22は、光検出器17から出力される光電流信号を電圧信号に変換する。バンドパスフィルター23は、電圧信号を変調反射率ΔRに相当する交流成分と反射率Rに相当する直流成分に分離する。
【0023】
直流電圧計24は、反射率Rに相当する直流成分を測定する。ロックイン増幅器25は、変調反射率ΔRに相当する交流成分を、参照信号に同期してロックイン検出する。こうして検出した交流成分を直流成分で除算することでプローブ光の変調スペクトルを求めることができる。これらの光検出器17、電流電圧変換器22、バンドパスフィルター23、ロックイン増幅器25及び直流電圧計24等は、試料15で反射又は透過したプローブ光の変調スペクトルを測定する変調スペクトル測定部である。
【0024】
コンピューター26(計算機)は、測定された変調スペクトルの記録および各機器の制御を行う。また、コンピューター26は、変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて窒化物半導体の内部電場を求める。
【0025】
図4は、試料を示す断面図である。基板31上にi−GaNバッファ層32とi−AlGa1−xN層33が順番に積層されている。即ち、最表面層がi−AlGa1−xNであるAlGa1−xN/GaNヘテロ構造を有する窒化物半導体の多層膜が基板31上に形成されている。
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る音波変調分光特性測定方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0027】
まず、試料15にプローブ光を照射する。そして、試料15からの反射スペクトルを光検出器17で測定できるように、白色光源11、白色光集光レンズ12、分光器13、プローブ光集光レンズ14、反射光集光レンズ16及び光検出器17からなる光学系を調整する。光学系を調整した後、波形生成器21からの参照信号を音波発生器18に入力し、音波発生器18を駆動させて試料15に音波を照射する。この際、プローブ光と音波が試料15の表面上で交差するように音波発生器18を調整する(ステップS1)。
【0028】
次に、波形生成器21を用いて、音波発生器18とロックイン増幅器25に参照信号を送る。そして、音波発生器18は、参照信号に同期した音波を生成し、試料15に照射してピエゾ分極を発生させる(ステップS2)。ここで、ウルツ鉱型の結晶構造をとる窒化物半導体に音波を照射することで周期的微小応力が印加され、c軸方向への応力が働いてピエゾ分極が発生する。そして、ピエゾ分極誘起電場が誘電関数を変調する。
【0029】
次に、分光器13を制御してプローブ光の波長をある値に設定して、プローブ光を試料15に照射する。そして、試料15で反射又は透過したプローブ光を光検出器17で受光して光電流信号(電気信号)に変換する(ステップS3)。
【0030】
次に、光検出器17からの光電流信号を電流電圧変換器22により電圧信号に変換する。この電圧信号には、変調反射率ΔRに相当する交流成分と反射率Rに相当する直流成分の2成分が含まれる。そこで、バンドパスフィルター23により電圧信号を直流成分と交流成分に分離する(ステップS4)。
【0031】
そして、直流成分を直流電圧計24により計測する。また、交流成分を、参照信号に同期したロックイン増幅器25によりロックイン検出する。ただし、ロックイン検出の前に、あらかじめ音波と変調反射信号との位相を調整しておく必要がある。そして、交流成分を直流成分で除算することでプローブ光の変調スペクトルΔR/Rを求める(ステップS5)。このようにして、試料15で反射又は透過したプローブ光の変調スペクトルを測定する。
【0032】
次に、変調スペクトルΔR/Rをプローブ光の波長又はフォトンエネルギーの関数としてコンピューター26に記録する。そして、コンピューター26により、変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動(FK振動)の周期に基づいて試料15の内部電場を求める(ステップS6)。ここで用いるFK振動の解析手法は、光変調反射分光法を用いて得られたFK振動の解析手法と同一である(例えば、非特許文献4−6,8,10−13、特許文献1−4参照)。
【0033】
このように音波照射を利用した変調反射分光を行うことで、窒化物半導体の内部電場を非破壊・非接触に求めることができる。
【0034】
ここで、上記の光変調反射信号の測定において、試料上での音波とプローブ光の交差の調整と、ロックイン検出のための音波と変調反射信号との位相調整が重要となる。これらの調整に適した音波発生器を図6に示す。
【0035】
音波発生素子41は、試料15に照射する音波を発生する。ポジショニング用光源42は、指向性のある光源、例えばレーザー光源であり、音波のポジショニング用ビームを出射する。光学ミラー43,44(光学系)は、ポジショニング用光ビームが音波伝播方向に対してコリニア(collinear)になるように調整する。これにより、試料15の表面上で音波が照射されている位置をポジショニング用光ビームの位置として可視化することができる。
【0036】
また、音波発生素子41とポジショニング用光源42を同位相で駆動する駆動回路45が設けられている。このため、試料15の表面で散乱されたポジショニング用光ビームを光検出器17で受光することによって得られる信号と波形生成器21からの参照信号を用いれば、ロックイン増幅器25の位相調整を行うことができる。
【0037】
ロックイン検出を行うための位相調整方法について図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
まず、波形生成器21を駆動し、音波発生器18に参照信号を入力する。そして、音波発生器18を駆動し、音波の伝搬方向に対してコリニアであるポジショニング用光ビームを試料15に照射する(ステップS11)。この際、駆動回路45により、ポジショニング用光ビームと音波を同期させる。
【0039】
次に、ポジショニング用光ビームの試料15の表面上での照射位置に基づいて、プローブ光と音波が試料15の表面上で交差するように音波発生器18の位置を調整する(ステップS12)。
【0040】
次に、試料15で散乱されたポジショニング用光ビームを光検出器17により受光して電気信号に変換する(ステップS13)。
【0041】
次に、検出されたポジショニング用光ビーム信号を電流電圧変換器22及びバンドパスフィルター23で処理した後、波形生成器21からの参照信号と共にロックイン増幅器25に入力する。そして、ポジショニング用光ビームの電気信号の交流成分を入力したロックイン増幅器25の出力が最大になるようにロックイン増幅器25の位相を調整する(ステップS14)。
【0042】
音波によるプローブ光の変調反射成分は、音波と同期しているので、ポジショニング用光ビームに対して同位相である。従って、上記の手順に従いロックイン増幅器25の位相を調整すれば、プローブ光の変調反射成分をロックイン検出することができる。なお、ロックイン増幅器25の操作については非特許文献9等に詳細に記載されている。位相調整後は、不要な迷光を防止するため、ポジショニング用光源42を遮断する。
【0043】
上記位相調整方法は、光検出器17、電流電圧変換器22、バンドパスフィルター23及びロックイン増幅器25を通過した信号を利用するため、これらの機器の装置関数に起因する信号の位相シフトを自動的に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係る窒化物半導体の評価装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る窒化物半導体の評価装置の変形例を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る制御部を示すブロック図である。
【図4】試料を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る音波変調分光特性測定方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る音波発生器を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るロックイン検出を行うための位相調整方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
11 白色光源(プローブ光用光源)
12 白色光集光レンズ(プローブ光用光学系)
13 分光器(プローブ光用光学系)
14 プローブ光集光レンズ(プローブ光用光学系)
15 試料(窒化物半導体)
17 光検出器(変調スペクトル測定部)
18 音波発生器
21 波形生成器
23 バンドパスフィルター(変調スペクトル測定部)
24 直流電圧計(変調スペクトル測定部)
25 ロックイン増幅器(変調スペクトル測定部)
26 コンピューター(計算機)
41 音波発生素子
42 ポジショニング用光源
43,44 光学ミラー(ポジショニング用光学系)
45 駆動回路





【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体に音波を照射してピエゾ分極を発生させる工程と、
プローブ光を前記窒化物半導体に照射する工程と、
前記窒化物半導体で反射又は透過した前記プローブ光の変調スペクトルを測定する工程と、
前記変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて前記窒化物半導体の内部電場を求める工程とを備えることを特徴とする窒化物半導体の評価方法。
【請求項2】
前記音波を参照信号に同期させ、
前記窒化物半導体で反射又は透過した前記プローブ光を受光して電気信号に変換し、
前記プローブ光の電気信号を直流成分と交流成分に分離し、
前記交流成分を、前記参照信号に同期したロックイン増幅器によりロックイン検出し、
前記直流成分を直流電圧計により計測し、
前記交流成分を前記直流成分で除算することで前記プローブ光の変調スペクトルを求めることを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体の評価方法。
【請求項3】
前記音波の伝搬方向に対してコリニアであるポジショニング用光ビームを前記窒化物半導体に照射する工程と、
前記ポジショニング用光ビームの前記窒化物半導体の表面上での照射位置に基づいて、前記プローブ光と前記音波が前記窒化物半導体の表面上で交差するように調整する工程を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体の評価方法。
【請求項4】
前記ポジショニング用光ビームと前記音波を同期させる工程と、
前記窒化物半導体で散乱された前記ポジショニング用光ビームを受光して電気信号に変換する工程と、
前記ポジショニング用光ビームの電気信号の交流成分を入力した前記ロックイン増幅器の出力が最大になるように前記ロックイン増幅器の位相を調整する工程を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体の評価方法。
【請求項5】
窒化物半導体に音波を照射してピエゾ分極を発生させる音波発生器と、
プローブ光を前記窒化物半導体に照射するプローブ光用光源及び光学系と、
前記窒化物半導体で反射又は透過した前記プローブ光の変調スペクトルを測定する変調スペクトル測定部と、
前記変調スペクトルに現れるフランツ・ケルディッシュ振動の周期に基づいて前記窒化物半導体の内部電場を求める計算機とを備えることを特徴とする窒化物半導体の評価装置。
【請求項6】
参照信号を生成する波形生成器を更に備え、
前記音波発生器は前記音波を前記参照信号に同期させ、
前記変調スペクトル測定部は、
前記窒化物半導体で反射又は透過した前記プローブ光を受光して電気信号に変換する光検出器と、
前記プローブ光の電気信号を直流成分と交流成分に分離するバンドパスフィルターと、
前記交流成分を、前記参照信号に同期してロックイン検出するロックイン増幅器と、
前記直流成分を計測する直流電圧計とを有し、
前記交流成分を前記直流成分で除算することで前記プローブ光の変調スペクトルを求めることを特徴とする請求項5に記載の窒化物半導体の評価装置。
【請求項7】
前記音波の伝搬方向に対してコリニアであるポジショニング用光ビームを前記窒化物半導体に照射するポジショニング用光源及び光学系を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の窒化物半導体の評価装置。
【請求項8】
前記音波発生器の音波発生素子と前記ポジショニング用光源を同位相で駆動する駆動回路を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の窒化物半導体の評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−4706(P2009−4706A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166624(P2007−166624)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】