説明

窒化物系発光素子及びその製造方法

【課題】窒化物系発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒素物系発光素子は、基板110、n型クラッド層130、活性層140、
p型クラッド層150、格子セル層160及びオーミック接触層が順次に積層された構造
よりなっている。また格子セル層160は導電性を有する素材で30μm以下の大きさを
有する粒子型セルがオーミック接触層内に埋め込まれて、相互離隔されて形成されている
発光素子である。このような窒素物系発光素子とその製造方法は、p型クラッド層とのオ
ーミック接触特性が改善されているため発光効率及び素子寿命を向上させ、かつウェーハ
成長後の活性化工程を省略できて、製造工程を単純化させうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系発光素子及びその製造方法に係り、特に、発光効率を向上させうる
電極構造を有する窒化物系発光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化物系化合物半導体、例えば、窒化ガリウム(GaN)半導体を用いた発光ダイオー
ド(LED)またはレーザーダイオード(LD)のような発光素子を実現するためには、
半導体のn型とp型電極間のオーミック接触構造が非常に重要である。特に、p型クラッ
ド層と電極間のオーミック接触構造は、窒化物系発光素子の性能を左右する程重要な技術
部分である。
【0003】
このような窒化物系発光素子であるGaN系LEDsは、トップエミット型発光ダイオ
ード(top−emitting light emitting diodes;TL
EDs)とフリップチップ発光ダイオード(flip−chip light emit
ting diodes:FCLEDs)とに分類される。
【0004】
一般的にTLEDsが使用される場合は、p型クラッド層と接触しているp型オーミッ
ク電極層を通じて光が出射され、p型オーミック電極層は、高い光透過度と低い固有接触
抵抗及び面抵抗値を有することが要求される。
【0005】
FCLED設計においては、透明な絶縁性基板を通じて光を外部に放出する構造よりな
っている。したがって、p型クラッド層と接触しているp型オーミック電極層は、高い光
反射率及び低い固有接触抵抗及び面抵抗値を有することが要求される。
【0006】
ところで、大部分の電極素材は、光学的特性と電気的特性とが相互逆関係を有しており
、p型クラッド層中の低い電流注入及び電流拡散のような劣悪な電気的特性が原因で、T
LEDまたはFLEDに適したp型オーミック電極層の開発は困難である。主素材として
、ニッケル(Ni)のような遷移金属を含む金属薄膜構造としては、例えば酸化された半
透明なNi/Auの金属薄膜が現在トップエミット型発光素子のp型オーミック電極層を
形成するために広く利用されている。
【0007】
このようなNi金属を基本とする金属薄膜は、O雰囲気でアニールされ10−3〜1
−4Ωcmほどの固有接触抵抗を有する半透明オーミック接触層を形成するものと報
告されている。
【0008】
このような低い固有接触抵抗を持つオーミック接触は、500−600℃の温度範囲、
雰囲気においてアニ―ルされた場合、p型半導体酸化物であるニッケル酸化物(Ni
O)は、島状のAu層の上に形成され、またAu層とp型窒化ガリウムの間の上層部とに
形成されている、その結果、ニッケルとp型窒化ガリウムの間の接触面におけるショット
キー障壁の高さ(Schottky barrier height:SBH)を減少さ
せる。そのため、p型窒化ガリウムの表面付近に多数キャリアのホールを容易に供給して
、それによりp型窒化ガリウム表面付近での実効キャリア濃度(effective c
arrier concentration)を増加させる。他方、p型窒化ガリウムに
接合しているNi/Auオーミット接触のアニール処理により、窒化ガリウム中のMg−
Hの解離を結果的に引き起こし、p型窒化ガリウムの表面でのMgドープ剤の濃度を上昇
させることによってMgドープ剤を再活性化させる。この再活性の結果、p型窒化ガリウ
ムの表面で、かかる実効キャリア濃度を10以上にして、p型窒化ガリウムと電極層(
酸化Ni)との間にトンネリング伝導を起こして、オーミック伝導特性を示すものとされ
ている。
【0009】
ところが、酸化された半透明のNi/Au電極薄膜を用いたTLEDsは、光利用効率
が低くて、大容量及び高輝度発光素子を実現化することには適さない。
【0010】
最近、大容量で高輝度発光素子の実現のために高反射層素材として脚光を浴びている銀
(Ag)、金(Al)、またはロジウム(Rh)などの反射率に優れた電極物質を用いた
フリップチップ方式の発光素子が開発されている。
【0011】
しかし、これらの高い反射効率の材料を使用することで、一時的に高い発光効率を提供
することはできるが、小さな仕事関数値を有する特性のために、低い固有オーミック接触
の抵抗値及び熱安定性を有するp型オーミック接触電極形成が難しい。その結果、発光素
子の寿命及び信頼性を確保し難いという問題点がある。
【0012】
一例として、Al金属は小さな仕事関数値を有し、かつアニールのときに窒化物を形成
する強い傾向があるため、p型窒化ガリウムとAlの界面に、オーミック接触でないショ
ットキー接触を形成する傾向があって、ほとんど利用されていない。Ag金属は、アルミ
ニウムとは違って、p型窒化ガリウムとのオーミック接触を形成するが、熱不安定性とp
型窒化ガリウムとの力学的接着力が乏しいため、発光素子の製作及び作動時に信頼性を確
保し難いという問題点がある。
【0013】
また、Rhは、前記Al及びAgに比べて相対的に大きな仕事関数値と、熱安定性は良
いが、アニールのときにオーミック接触特性の低下及び低い反射率を有するという短所が
ある。
【0014】
最近、TLED用の良質なp型透明オーミック接触層を形成するために、、インジウム
・スズ酸化物(ITO)のような透明導電性酸化物(TCO)を直接または間接的にp型
クラッド層上に積層する技術が提案されたことがある。しかしながらこのアプローチは、
オーミック接触構造が高い固有接触抵抗値を有しているために、素子の短い寿命及び低い
信頼性といった限界に直面している。
【0015】
一方、フリップチップ型発光ダイオード用のp型オーミック接触層の構造としてメンズ
ら(非特許文献1)によりNi/Al及びNi/Ag構造が非特許文献1を通じて提案さ
れたことがある。しかし、該非特許文献1に提案された構造は、Niの非酸化により性能
が落ちる問題点がある。
【0016】
また、マイケルら(特許文献1)により出願された特許文献1には酸化Ni/Ag及び
Au/NiOx/Alが開示されている。ところで、特許文献1により提示されたp型反
射オーミック接触層は製作工程が複雑であり、高い固有オーミック接触の抵抗値りのため
に、発光効率が落ちるという問題点がある。
【0017】
さらに他の発光素子であるLDs(レーザーダイオード)でも、良質のp型オーミック
接触層の構造が重要であると考えられる。LEDとは違って電気的及び光学的特性を持つ
電極は葉考慮せず、LDは、単になるべく低いオーミック接触抵抗値と熱安定性及び熱発
散能を駆動時に必要とする。
【0018】
しかし、現在利用されているほとんどのLDs用のオーミック電極は、高い固有接触抵
抗を有しているために、駆動時に多量の熱を発生することから素子の寿命及び信頼性に多
くの難点を与えている。
【0019】
一方、良質の窒化物系発光素子を実現するためには、高濃度のp型窒化物系半導体に育
て上げることに成功しなければならない。
【0020】
現在、p型窒化物系半導体のドープ剤には、Mg、Zn、またはBeなどの元素の周期
律表上の2族元素が主に用いられているしかし、これらドープ剤金属は、水素(H)と
の結合力が大きくてドープ剤としての機能を発揮できず、多様な形態のコンプレックスを
形成し、パッシベーション化を引き起こす。これを克服するには、ドープ剤としての機能
を発揮させるために、コンプレックスからHの結合を切る活性化過程が必要である。
【0021】
現在、活性化方法として広く使われている技術は、いわゆるランプアニール(rapi
d thermal annealing;RTA)またはファーネスアニール(fur
naceannealing)で、摂氏750℃以上の高温、窒素雰囲気、及び3分以上
において行なっている。しかし、このような活性化工程中でp型窒化物系半導体表面上に
多量に生成される窒素空孔(nitrogen vacancy)の補償効果によって、
p型窒化物系半導体の有効ホール(多数キャリア)濃度を1018/cm以上の値とす
ることが困難である。なぜならp型窒化物系半導体の低いホール濃度のために、表面の面
抵抗値は10Ω/cm以上の大きい値になり、良質のp型オーミック接触層を形成し
にくく、これにより、円滑なホール注入及び電流拡散などに大きい難点を与えているから
である。
【0022】
また、p型半導体と電極との間で低い固有接触オーミック抵抗値を達成するためには、
p型半導体の仕事関数値より相対的に大きい電極を優先的に選択せねばならないが、現在
p型窒化物系半導体の仕事関数値より大きい電極物質は存在していない。
【0023】
それで、現在p型窒化物系オーミック電極はNi、Au、パラジウム(Pd)、または
プラチナ(Pt)などの金属物質を単層または2層以上の多層薄膜を蒸着させ、アニーリ
ング工程を経て、p型窒化物系半導体と電極との界面にオーミック接触形成に有利な多量
のガリウム空孔を生成させて形成している。
【0024】
しかし、このような工程を経て生成されるp型オーミック接触電極は、良質な窒化物系
発光素子の実現するために不十分な固有接触オーミック抵抗値と光学的特性しか持ち合わ
せていない。
【特許文献1】米国公開特許第2002/0171087A1号明細書
【非特許文献1】electronics letters 33(24)p.2066
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、前記問題点を改善するために創案されたものであって、低い面抵抗と
固有接触オーミック接触の抵抗値を有するオーミック接触電極構造を有する窒化物系発光
素子及びその製造方法を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、薄膜形成工程上で引き起こされる性能の劣化を抑制できるように
工程を単純化させうる窒化物系発光素子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記本発明の目的を達成するために窒化物系発光素子は、n型クラッド層とp型クラッ
ド層との間に活性層を有する窒化物系発光素子において、前記p型クラッド層上に導電性
を有する素材で30μm以下の大きさを有する粒子型セルが相互離隔されて形成された格
子セル層と、前記p型クラッド層と前記格子セル層上に形成されたオーミック接触層とを
備える。
【0028】
前記格子セル層は、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au
)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(
Co)、銅(Cu)、イリジウム(Ir)、クロム(Cr)、ロジウム(Rh)、スカン
ジウム(Sc)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、マグネシウム(Mg)、ベリリウ
ム(Be)、ランタノイド系のランタノイド金属、およびこれらのうちから少なくとも何
れか1つを含む合金または固溶体のうちから選ばれた少なくとも何れか1つの素材を用い
て少なくとも一層以上に形成される。望ましくは、前記格子セル層は50nm以下の厚さ
に形成される。
【0029】
前記オーミック接触層は、光透過性であり、透明オーミック接触層は、Ni、Pd、P
t、Au、Ru、Ag、Ti、Mn、Co、Cu、Ir、Cr、Rh、Sc、Zn、Cd
、Mg、Be、ランタノイド系の金属、およびこれらのうちから少なくとも何れか1つを
含む合金または固溶体、透明導電性酸化物(TCO)と透明導電性窒化物のうちから選ば
れた少なくとも何れか1つの素材を用いて少なくとも一層以上に形成される。
【0030】
本発明の他の側面によれば、前記オーミック接触層は、入射された光を前記p型クラッ
ド層に反射させうる反射型オーミック接触層であり、前期オーミック接触層は、Au、R
u、Cr、Rh、Sc、Zn、Mg、Ag、アルミニウム(Al)、およびこれらのうち
から少なくとも何れか1つを含む合金または固溶体のうちから選ばれた少なくとも何れか
1つの素材を用いて少なくとも一層以上に形成される。
【0031】
また、前記窒化物系発光素子は、反射型オーミック接触層上に損傷を防止しうる集塊防
止層をさらに備える。前記集塊防止層は、Cu、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge
)、Zn、Mg、Ti、タングステン(W)、またはリチウム(Li)とこれらの合金の
うち、少なくとも何れか1つ以上より形成される。また前記合金は、上記金属を含む。
【0032】
また、本発明のその他の目的において、窒化物系発光素子の製造方法は、n型クラッド
層とp型クラッド層との間に活性層を有する窒化物系発光素子の製造方法において、a.
基板上にn型クラッド層、活性層及びp型クラッド層が順次に積層された発光構造体の前
記p型クラッド層上に格子セル層形成用の物質を蒸着する段階と、b.前記格子セル層が
多数の粒子型セルで相互離隔されて分散されうるようにアニールする段階と、c.前記格
子セル層上にオーミック接触層を形成する段階と、を含む。
【0033】
望ましくは、前記a段階以前に露出されるように形成されたn型クラッド層上にn型電
極層を蒸着するが、アニーリングは省略する段階をさらに含み、前記n型電極層は前記b
段階の熱処理過程を通じてアニーリング処理させる。
【0034】
さらに望ましくは、前記b段階で適用される加熱温度は、前記p型クラッド層のドープ
剤が活性化される温度を適用する。
【0035】
前記b段階は、300℃ないし900℃で窒素、酸素、または真空雰囲気で行われるこ
とが望ましい。
【0036】
また、前記a段階は、前記格子セル形成用物質を1nmないし50nmの厚さに蒸着す
る。
【発明の効果】
【0037】
本発明による窒化物系発光素子及びその製造方法によれば、p型クラッド層とのオーミ
ック接触特性が改善されて発光効率及び素子寿命を向上させ、かつウェーハ成長後の活性
化工程を省略できて、製造工程を単純化させうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施例による窒化物系発光素子
及びその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の第1実施例による窒化物系発光素子を示す断面図である。
【0040】
図面を参照すれば、発光素子は、基板110、バッファ層120、n型クラッド層13
0、活性層140、p型クラッド層150、格子セル層160及び透明オーミック接触層
170が順次に積層された構造よりなっている。参照符号180はp型電極パッドであり
、190はn型電極パッドである。
【0041】
ここで、基板110からp型クラッド層150までは発光素子構造体に該当し、p型電
極構造体はp型クラッド層150上に形成された格子セル層160及び透明オーミック接
触層170を含む。
【0042】
基板110は、サファイア(Al)、シリコンカーバイド(SiC)、Si、G
aAsのうち何れか1つより形成されたことが望ましい。
【0043】
バッファ層120は省略されうる。
【0044】
バッファ層120からp型クラッド層150までの各層は、III族窒化物系化合物の
一般式であるAlInGaN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y
+z≦1)で表現される化合物のうち、選択された何れか1つの化合物を基本として形成
され、n型クラッド層130及びp型クラッド層150は該当ドープ剤が添加される。
【0045】
また、活性層140は、単層または多重量子井戸(MQW)層など公知の多様な方式で
構成されうる。
【0046】
一例として窒化ガリウム(GaN)系化合物を適用する場合、バッファ層120はGa
N成分により形成され、n型クラッド層130はGaNにn型ドープ剤としてSi、Ge
、セレン(Se)、テルル(Te)などが添加されて形成され、活性層140はInGa
N/GaN MQWまたはAlGaN/GaN MQWより形成され、p型クラッド層1
50はGaNにp型ドープ剤としてMg、Zn、(カルシウム)Ca、Sr、バリウム(
Ba)などが添加されて形成される。
【0047】
n型クラッド層130とn型電極パッド190との間には、n型オーミック接触層(図
示せず)が介在され、n型オーミック接触層はチタン(Ti)とAlとが順次に積層され
た層構造など公知の多様な構造が適用されうる。
【0048】
n型電極パッド190は、Ni/Auが順次に積層された層構造またはW/Au、Pt
/Au、Pd/AuまたはAg/Auが積層された層構構造が適用されうる。
【0049】
p型電極パッド180は、Ni/Auが順次に積層された層構造またはW/Au、Pt
/Au、Pd/AuまたはAg/Auが積層された層構造が適用されうる。
【0050】
各層の形成方法は、電子ビーム蒸着器、PVD(physical vapor de
position)、CVD(chemical vapor deposition)
、PLD(plasma laser deposition)、二重型の熱蒸着器(d
ual−type thermal evaporator)、スパッタリングなど公知
の蒸着方式により形成すればよい。
【0051】
格子セル層160は、p型クラッド層150の実効キャリア濃度を高め、p型クラッド
層150を構成している化合物のうち、窒素以外の成分と優先的に反応性に優れた物質よ
り形成される。一例として、GaNを主成分とする発光素子の場合、格子セル層160は
水素親和力に優れ、窒素よりGaと優先的に反応して金属間化合物を形成する物質が適用
される。
【0052】
この場合、GaNを主成分とするp型クラッド層150中のGaと格子セル層160の
反応により、p型クラッド層150の表面にガリウム空孔を形成する。p型クラッド層1
50に形成されるガリウム空孔はp型ドープ剤として作用するので、p型クラッド層15
0と格子セル層160との反応によりp型クラッド層150の表面での実効p型キャリア
濃度を高めるようになる。
【0053】
また格子セル層160は、p型クラッド層150の表面上に残留すると共に、p型クラ
ッド層150との界面でキャリア流れに障害物の役割をする自然酸化層であるガリウム酸
化物(Ga)を還元させてショットキー障壁の高さと幅とを減らせる物質が適用さ
れる。
【0054】
このような特性を有する格子セル層160は、p型窒化ガリウム表面上におけるより効
果的な活性化工程、窒素空孔抑制、ガリウム空孔形成に加えてさらに、不均一ショットキ
ー障壁形成及び自然酸化を減らし、その結果窒化ガリウム系半導体と接触金属電極の界面
でトンネリング伝導現象を発生させうる。
【0055】
このような条件を満足させる格子セル層160の素材としては、Ni、Pd、Pt、A
u、Ru、Ag、Ti、Mn、Co、Cu、Ir、Cr、Rh、Sc、Zn、Cd、Mg
、Be、及びランタノイド系の金属のうち選択された何れか1つの金属、またはこれら金
属のうち、選択された何れか1つの成分が添加された金属、合金、または固溶体のうち、
選択された何れか1つの素材より形成されることが望ましい。
【0056】
格子セル層160は、単層または2層以上の多層より形成されうることは言うまでもな
い。
【0057】
格子セル層160は、p型クラッド層150上に格子セル層160形成用素材で蒸着し
た後、ランプアニールしてナノ単位の大きさの粒子状に相互離散されるように形成させる

【0058】
透明オーミック接触層170は、オーミック接触層の一例として適用されたものであっ
て、光を透過させうる素材より形成される。
【0059】
透明オーミック接触層170は、Ni、Pd、Pt、Au、Ru、Mn、Co、Cu、
Ag、Ir、Cr、Rh、Sc、Zn、Cd、Mg、Be、及びランタノイドの金属また
はこれら金属のうちから選択された少なくとも1つ以上の成分が添加された合金、または
固溶体が適用されうる。
【0060】
透明オーミック接触層170は、単層または2層以上の多層構造で形成できるというこ
とは言うまでもない。
【0061】
また、透明オーミック接触層170は、透明導電性酸化物(TCO)または透明導電性
窒化物(TCN)より形成されうる。
【0062】
透明導電性酸化物は、In、Sn、Zn、Ga、Cd、Mg、Be、Ag、Mo、V、
Cu、Ir、Rh、Ru、W、Co、Ni、Mn、Al、ランタノイド系の金属のうちか
ら選択された少なくとも1つ以上の成分と酸素(O)が結合されたものを含む。
【0063】
また、透明導電性窒化物は、TiとNとを含有して形成されたものが適用される。
【0064】
透明オーミック接触層170は、5nmないし500nmの厚さに形成することが望ま
しい。
【0065】
また図2で示されたように、フリップチップ構造を形成するために反射型オーミック接
触層が適用されうる。前述した図面と同じ機能をする要素は同じ参照符号で表記する。
【0066】
反射型オーミック接触層270は、Au、Ru、Cr、Rh、Sc、Zn、Mg、Ag
、Alまたはこれらのうちから選択された少なくとも1つ以上の成分が添加された合金、
または固溶体より形成されうる。
【0067】
また、反射型オーミック接触層270は、単層または2層以上の多層構造より形成され
うることは言うまでもない。
【0068】
反射オーミック接触層270は、10nmないし1000nmの厚さに形成することが
望ましい。
【0069】
また図3に示されるように、反射型オーミック接触層270の場合には、に反射型オー
ミック接触層270の上部に後続する薄膜形成過程のアニール及び素子製作の最後の工程
であるパッケージング工程で、反射型オーミック接触層270の損傷を防止しうる集塊防
止層(agglomeration preventing layer:APL)28
0をさらに備えることが望ましい。
【0070】
集塊防止層280は、フリップチップ構造の発光素子でp型電極パッド180との接着
性を高めて、反射型オーミック接触層270の酸化を抑制して耐久性を向上させうる。
【0071】
集塊防止層280は、Cu、Si、Ge、Zn、Mg、Ti、W、またはLiとこれら
よりなる合金のうち、少なくとも何れか1つ以上により形成される。
【0072】
集塊防止層280は、10nmないし100nmの厚さに形成されることが望ましい。
【0073】
このような反射型オーミック接触層270及び集塊防止層280は、電子ビーム蒸着器
、熱蒸着器、スパッタリング蒸着器、レーザー蒸着器のうち何れか1つで形成すればよい

【0074】
以下では、本発明による発光素子の製造工程について図4を参照して説明する。
【0075】
まず、基板110上にバッファ層120、n型クラッド層130、活性層140、p型
クラッド層150が順次に積層された発光構造体ウェーハを成長させる(段階310)。
【0076】
次いで、ドライエッチング工程を用いて形成しようとする単一素子の大きさによって適
切な大きさに発光構造体を分割し(段階320)、分割された各発光構造体に対してn型
クラッド層130の一部が露出されるよう、エッチングによりメサ(MESA)構造を形
成する(段階330)。
【0077】
次いで、n型電極層であるn型オーミック接触層及びn型電極パッド190を蒸着する
(段階340)。
【0078】
次いで、p型クラッド層150上に前述した格子セル層形成用の物質を蒸着する(段階
350)。望ましくは、単層または2層以上に形成される格子セル層の積層厚さは1nm
ないし50nmである。
【0079】
次いで、積層された格子セル層160が粒子型セルに相互分解されてマイクロまたはナ
ノ単位以下の粒子サイズに離散的な分布をさせるためにアニールを行う(段階360)。
【0080】
望ましくは、段階360で適用するアニール温度は、段階310で成長されたp型クラ
ッド層150のドープ剤の水素との結合を切って活性化でき、前記段階340で蒸着され
たn型電極層がアニーリング処理されつつ、p型クラッド層150上の格子セル層160
が離散されうる条件の何れも満足させる温度を適用する。
【0081】
このようなアニール温度を適用すれば、段階310以後、従来にp型クラッド層のドー
プ剤を活性化させるための活性化工程と、段階340以後、従来にn型電極層をアニーリ
ングさせるために行われたアニールの工程が省略される長所を提供する。
【0082】
このようなアニール温度は、蒸着された物質種類によって摂氏300℃ないし900℃
の温度範囲内で適切に適用すればよい。
【0083】
また、アニールは30秒ないし10分、窒素、酸素、または真空雰囲気でランプアニー
ルにより行うことが望ましい。
【0084】
次いで、厚膜を形成してアニーリングを行う(段階370及び380)。ここで、厚膜
は、前述されたオーミック接触層170、270及び集塊防止層280をいい、アニーリ
ングは反応器内の温度を100℃ないし800℃で真空またはガス雰囲気で10秒ないし
3時間程度行う。
【0085】
アニーリング時に反応器内に投入されるガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、水
素、空気のうち、少なくとも何れか1つ以上の気体が適用されうる。
【0086】
以後、p型電極パッド180を蒸着し、アニーリングを行えばよい(段階390及び4
00)。
【0087】
このような製造方法によって格子セル層160を形成した後、電子顕微鏡で撮像した写
真が図5に図示されている。
【0088】
図5Aは、p型クラッド層150上に3nmの厚さにAgを蒸着させた後、摂氏600
℃、窒素雰囲気で3分間ランプアニールして形成させた格子セル層160を撮像した写真
であり、図5Bは、p型クラッド層150上に3nmの厚さにAuを蒸着させた後、摂氏
600℃、窒素雰囲気で3分間ランプアニールして形成させた格子セル層160を撮像し
た写真である。図5から分かるように、適用素材によって若干の差はあるが、μm単位以
下の大きさを有する粒子型セルが形成される。
【0089】
一方、このような構造を有する発光素子の電気的特性を調べるための実験結果が図6及
び図7に図示されている。
【0090】
図6Aは、GaNを主成分にしたp型クラッド層150上に格子セル層160を形成し
ていない場合、Niを3nm厚さに積層した後、アニールして格子セル層160を形成し
た場合、Ni/Agを各々1.5nmずつ順次に積層した後、アニールして格子セル層1
60を形成した場合、Ni/Auを各々1.5nmずつ順次に積層した後、アニールして
格子セル層160を形成した場合、それぞれに対して後続薄膜として透過性素材であるP
tを形成させたトップエミット型構造について電流−電圧特性を測定した結果を示すグラ
フである。図面から分かるように、格子セル層160が省略されてp型クラッド層150
上に8nm厚さを有するPtが直接形成された構造に比べて、Ni及びNi/Agよりな
る格子セル層160を有する構造の方がさらに優れた電気的特性を有している。
【0091】
図7は、GaNを主成分にしたp型クラッド層150上に格子セル層160を形成して
いない場合と、Ni−Mg合金を5nmの厚さに積層した後、アニールして格子セル層1
60を形成した場合、Agを5nmの厚さに積層した後、アニールして格子セル層160
を形成した場合、Ptを5nmの厚さに積層した後、アニールして格子セル層160を形
成した場合、それぞれに対して後続薄膜として100nmの厚さにPdを形成させたレー
ザーダイオード用の構造について電流−電圧特性を測定した結果を示すグラフである。図
面から分かるように、Agよりなる格子セル層160を有する構造の方が、格子セル層1
60のない構造より電気的特性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、発光効率を向上させうる電極構造を有する窒化物系発光素子及びその製造技
術分野に好適に適用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施例に係る窒化物系発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る窒化物系発光素子を示す断面図である。
【図3】本発明の第2実施例に係る窒化物系発光素子を示す断面図である。
【図4】本発明に係る発光素子の製造過程を示すフローチャートである。
【図5】A及びBは、本発明の製造方法によってAgとAuより形成された格子セル層を撮像する電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明に係る発光素子について格子セル層の適用素材を変えた場合と、格子セル層を省略した場合について電流−電圧特性を測定して比較して示すグラフである。
【図7】本発明に係る発光素子について格子セル層の適用素材を変えた場合と、格子セル層を省略した場合について電流−電圧特性を測定して比較して示すグラフである。
【符号の説明】
【0094】
110 基板
120 バッファ層
130 n型クラッド層
140 活性層
150 p型クラッド層
160 格子セル層
170 透明オーミック接触層
180 p型電極パッド
190 n型電極パッド
270 反射オーミック層
280 集塊防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型クラッド層とp型クラッド層との間に活性層を有する窒化物系発光素子において、
前記p型クラッド層上に導電性を有する素材で30μm以下の大きさを有する粒子型セ
ルが相互離隔されて形成された格子セル層と、
前記p型クラッド層と前記格子セル層上に形成されたオーミック接触層と、を備えるこ
とを特徴とする窒化物系発光素子。
【請求項2】
前記格子セル層は、Ni、Pd、Pt、Au、Ru、Ag、Ti、Mn、Co、Cu、
Ir、Cr、Rh、Sc、Zn、Cd、Mg、Be、ランタノイド系の金属、およびこれ
らのうち少なくとも何れか1つを含む合金または固溶体のうちから選択された少なくとも
何れか1つの素材を適用して少なくとも一層以上に形成されたことを特徴とする請求項1
に記載の窒化物系発光素子。
【請求項3】
前記格子セル層は、50nm以下の厚さに形成されたことを特徴とする請求項1または
2に記載の窒化物系発光素子。
【請求項4】
前記オーミック接触層は、光を透過させうる透明オーミック接触層であり、Ni、Pd
、Pt、Au、Ag、Ru、Mn、Co、Cu、Ir、Cr、Rh、Sc、Zn、Cd、
Mg、Be、およびランタノイド系金属及びこれらのうち少なくとも何れか1つを含む合
金または固溶体、透明導電性酸化物、透明導電性窒化物のうち、選択された少なくとも何
れか1つの素材を適用して少なくとも1層以上に形成されたことを特徴とする請求項1に
記載の窒化物系発光素子。
【請求項5】
前記透明導電性酸化物は、In、Sn、Zn、Ga、Cd、Mg、Be、Ag、Mo、
V、Cu、Ir、Rh、Ru、W、Co、Ni、Mn、Al、およびランタノイド系の金
属のうち、少なくとも1つ以上の成分とOとが結合したものを含み、
前記透明導電性窒化物は、TiとNとを含有して形成されたことを特徴とする請求項4
に記載の窒化物系発光素子。
【請求項6】
前記オーミック接触層は、入射された光を前記p型クラッド層に反射させうる反射型オ
ーミおよびこれらのうち、少なくとも何れか1つを含む合金または固溶体のうち、選択さ
れた少なくとも何れか1つの素材を適用して少なくとも1層以上に形成されたことを特徴
とする請求項1に記載の窒化物系発光素子。
【請求項7】
前記反射型オーミック接触層上に損傷を防止しうる集塊防止層をさらに備え、
前記集塊防止層は、Cu、Si、Ge、Zn、Mg、Ti、W、及びLiとこれらの合
金のうち、少なくとも何れか1つ以上より形成されたことを特徴とする請求項6に記載の
窒化物系発光素子。
【請求項8】
n型クラッド層とp型クラッド層との間に活性層を有する窒化物系発光素子の製造方法
において、
a.基板上にn型クラッド層、活性層及びp型クラッド層が順次に積層された発光構造
体の前記p型クラッド層上に格子セル層形成用の物質を蒸着する段階と、
b.前記格子セル層が多数の粒子型セルで相互離隔されて分散されうるように熱処理す
る段階と、
c.前記格子セル層上にオーミック接触層を形成する段階と、を含むことを特徴とする
窒化物系発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記a段階以前に露出されるように形成されたn型クラッド層上にn型電極層を蒸着す
るが、アニーリングは省略する段階をさらに含み、
前記n型電極層は前記b段階のアニール過程を通じてアニーリング処理させることを特
徴とする請求項8に記載の窒化物系発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記b段階で適用される加熱温度は、前記p型クラッド層のドープ剤が活性化される温
度を適用することを特徴とする請求項8に記載の窒化物系発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記b段階は300℃ないし900℃で窒素、酸素、または真空雰囲気で行われること
を特徴とする請求項8または10に記載の窒化物系発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記a段階は、前記格子セル形成用物質を1nmないし50nmの厚さに蒸着すること
を特徴とする請求項8に記載の窒化物系発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−65856(P2013−65856A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209622(P2012−209622)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2005−69399(P2005−69399)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【出願人】(504127739)光州科學技術院 (9)
【Fターム(参考)】