説明

窒化物結晶の製造方法、窒化物結晶およびその製造装置

【課題】一般に入手可能な鉱化剤を用いながら、酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を低コストで効率良く安全に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】結晶成長用の反応容器1内または反応容器1に繋がる閉回路内で、鉱化剤を昇華させた後に析出させる鉱化剤昇華精製工程と、反応容器1内にて、溶媒と精製した鉱化剤の存在下で、ソルボサーマル法によって反応容器1内に入れられた窒化物の結晶成長原料8から窒化物結晶を成長させる結晶成長工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソルボサーマル法による窒化物結晶の製造方法、窒化物結晶およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルボサーマル法は、超臨界状態および/または亜臨界状態にある溶媒を用いて、原材料の溶解−析出反応を利用して所望の材料を製造する方法である。結晶成長へ適用するときは、溶媒への原料溶解度の温度依存性を利用して温度差により過飽和状態を発生させて結晶を析出させる方法である。例えば、窒化ガリウムなどの窒化物結晶を析出させるためには、溶媒としてアンモニアなどの窒素含有溶媒を用いるアモノサーマル法が主として採用されている。ソルボサーマル法によって単結晶を成長させるためには、十分な量の原料が過飽和状態で存在し析出する必要があるが、そのためには結晶成長用原料が十分に溶媒に溶解することが必要である。しかしながら、例えば窒化ガリウムなどの窒化物は、採用しうる温度圧力範囲において純粋なアンモニアに対する溶解度が極めて低いため、実用的な結晶成長に必要な量を溶解させることができないという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するために、窒化ガリウムなどの窒化物の溶解度を向上させる鉱化剤を反応系内に添加することが一般に行われている。鉱化剤は、窒化物と錯体などを形成(溶媒和)することができるため、より多くの窒化物をアンモニアなどの窒素含有溶媒中に溶解させることができる。鉱化剤には、塩基性鉱化剤と酸性鉱化剤があり、塩基性鉱化剤の代表例としてはアルカリ金属アミドを挙げることができ、酸性鉱化剤の代表例としてはハロゲン化アンモニウムを挙げることができる(特許文献1参照)。
【0004】
これらの鉱化剤は試薬として販売されているものであり、通常は粉末状の固体として取り扱われている。このような固体の鉱化剤は十分に乾燥させた後に、結晶成長用原料や種結晶を入れた反応容器内に投入して蓋をする。次いで、バルブを介して反応容器内に液体アンモニアを注入し、その後、ヒーターで昇温して内部のアンモニアの体積膨張により内圧を発生させる。設定した温度条件で所定の時間維持して結晶を成長させた後、冷却して反応容器内から結晶を取り出すことにより、窒化物結晶を得ることができる(特許文献2〜4参照)。
【0005】
しかしながら、このようにして固体鉱化剤を添加してソルボサーマル法により結晶成長させた窒化物結晶は、結晶中に含まれる酸素濃度が比較的高いという課題を有している。これは、鉱化剤が水や酸素を吸着しやすいため、反応に用いた鉱化剤に由来する酸素原子が結晶中に取り込まれるためであると考えられる。すなわち、上記従来法により得られた窒化物結晶には、酸素が1018〜1020atom/cm3のオーダーで含まれているが(非特許文献1、非特許文献2参照)、これはHVPE法で育成された窒化物結晶に比べると極めて高い数値である。
【0006】
酸素濃度が高いと、結晶に黒〜茶色の着色が生じ、LED,LD(Laser Diode)などのオプトエレクトロニクス用基板として使用する場合は光の吸収が発生して光取り出し効率を低下させてしまう。また酸素はドナーとして機能するため、意図しない不純物として制御されていない量の酸素が結晶中に含まれると、基板の電気的特性制御のためのドーピングが困難となってしまう。
【0007】
これらを始めとする種々の問題に対処するために、水分濃度が低い鉱化剤を選定して、水分を吸着しないように反応容器へ充填して密閉する方法も考え得るが、生産可能なサイズの大型の反応容器へ適用するには大がかりな設備が必要であるため、現実的ではない。そこで、反応容器内において、アンモニアと反応して鉱化剤を生成する反応性ガスとアンモニアとを接触させて鉱化剤を生成させ、生成させた鉱化剤を用いてソルボサーマル法により窒化物結晶を成長させる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法によれば、酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を成長させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−277182号公報
【特許文献2】特開2005−8444号公報
【特許文献3】特開2007−238347号公報
【特許文献4】特開2007−290921号公報
【特許文献5】特開2011−68545号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of Crystal Growth, 310, 2008, 3902-3906
【非特許文献2】Journal of Crystal Growth, 310, 2008, 876-880
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献5に記載される方法に従えば、確かに酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を成長させることが可能である。しかしながら、この方法ではアンモニアと反応させて鉱化剤を生成させるために、高純度の反応性ガスを反応容器内に導入しなければならない。このため、製造設備に高純度のガスラインを構築する必要がある。また、取り扱いに注意を要する反応性ガスとアンモニアから鉱化剤を生成する反応を制御する必要があるうえ、ガスラインでの水分除去のための真空脱気やガス導入のプロセスも複雑である。このため、固体鉱化剤を用いている従来法よりもコストや手間がかかるという課題があった。また、特許文献5に記載される方法によれば、鉱化剤によって酸素が反応容器内に中に混入するのを防ぐことが可能であるが、それ以外の材料により持ち込まれる酸素や、反応容器内や配管内の酸素については対処することができない。
【0011】
このような従来技術の課題を考慮しつつ、本発明では、従来法と同様に一般に入手可能な鉱化剤を用いながら、酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を低コストで効率良く安全に製造することができる方法を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明者らは、従来法では検討されていなかった方法により鉱化剤を精製することにより、ソルボサーマル法によって酸素濃度が低い窒化物結晶が効率良く得られることを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであり、本発明の具体的内容は以下に示すとおりである。
【0013】
[1] 結晶成長用の反応容器内または前記反応容器に繋がる閉回路内で、鉱化剤を昇華させた後に析出させる鉱化剤昇華精製工程と、
前記反応容器内にて、溶媒と精製した前記鉱化剤の存在下で、ソルボサーマル法によって反応容器内に入れられた窒化物の結晶成長原料から窒化物結晶を成長させる結晶成長工程とを
含むことを特徴とする、窒化物結晶の製造方法。
[2] 前記鉱化剤昇華精製工程において、圧力を1Torr以下にする、[1]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域の温度(T2)の温度差(T1−T2)を5℃以上に設定する、[1]または[2]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記温度差をヒーターにより制御する、[3]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)が80℃〜350℃である、[3]または[4]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[6] 前記鉱化剤析出領域の温度(T2)が30℃〜300℃である、[3]〜[5]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[7] 前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに前記反応容器内に設定する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[8] 前記鉱化剤昇華精製工程を、少なくとも原料、鉱化剤および種結晶が存在している前記反応容器中で行う、[7]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに前記反応容器外に設定する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[10] 前記鉱化剤加熱昇華領域と前記鉱化剤析出領域をともに前記反応容器とは別に設けられた鉱化剤精製容器内に設定する、[9]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[11] 前記鉱化剤加熱昇華領域を鉱化剤加熱昇華容器内に設定し、前記鉱化剤析出領域を前記鉱化剤加熱昇華容器とは別に設けられた鉱化剤析出容器内に設定する、[9]に記載の窒化物結晶の製造方法。
【0014】
[12] 前記鉱化剤昇華精製工程により精製した前記鉱化剤をアンモニアと混合して前記反応容器へ導入する、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[13] 前記鉱化剤析出容器内において析出して得られた精製した鉱化剤を前記反応容器へ導入し、前記鉱化剤加熱昇華容器内に残存している鉱化剤は前記反応容器へ導入しない、[12]に記載の窒化物結晶の製造方法。
[14] 前記鉱化剤昇華精製工程に用いる鉱化剤が、あらかじめ昇華精製されている、[1]〜[13]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[15] 前記鉱化剤がハロゲン元素を含む、[1]〜[14]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[16] 前記溶媒がアンモニアである、[1]〜[15]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[17] 前記窒化物結晶が窒化ガリウムである、[1]〜[16]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[18] 前記鉱化剤昇華精製工程を開始する前に、前記反応容器内または前記閉回路内を窒素ガスで置換する、[1]〜[17]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[19] 前記反応容器が、Pt、Ir、W、Ta、Rh、Ru、Reからなる群より選択される1種以上の金属または合金により構成されている、[1]〜[18]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[20] 前記反応容器が、Pt、Ir、W、Ta、Rh、Ru、Reからなる群より選択される1種以上の金属または合金によりライニングされている、[1]〜[18]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[21] 前記反応容器がオートクレーブである、[1]〜[20]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
[22] 前記反応容器がオートクレーブ中に挿入されたカプセルである、[1]〜[20]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【0015】
[23] [1]〜[22]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法により製造される窒化物結晶。
[24] 前記窒化物結晶が周期表13族金属の窒化物結晶である、[23]に記載の窒化物結晶。
[25] 前記窒化物が窒化ガリウムである、[23]に記載の窒化物結晶。
[26] ソルボサーマル法により窒化物結晶を成長させることができる反応容器と、鉱化剤を昇華して析出させる鉱化剤昇華析出容器と、昇華精製した鉱化剤を前記反応容器へ導入する手段とを備えていることを特徴とする窒化物結晶の製造装置。
[27] 前記鉱化剤昇華析出容器が、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに有する、[26]に記載の窒化物結晶の製造装置。
[28] ソルボサーマル法により窒化物結晶を成長させることができる反応容器と、鉱化剤を昇華させる鉱化剤加熱昇華容器と、鉱化剤を析出させる鉱化剤析出容器と、析出した鉱化剤を前記反応容器へ導入する導入手段とを備えていることを特徴とする窒化物結晶の製造装置。
[29] 前記導入手段が、前記鉱化剤加熱昇華容器中に残存する鉱化剤は前記反応容器へ導入しない、[28]に記載の窒化物結晶の製造装置。
[30] 溶媒を前記各反応容器へ導入する手段をさらに備えている、[26]〜[29]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造装置。
[31] 反応容器には配管が付属しており、配管を通して減圧可能である、[26]〜[30]のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明の窒化物結晶の製造方法(以下、本発明のソルボサーマル法と称する)によれば、酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を効率よく低コストで安全に成長させることができる。また、本発明の窒化物結晶は酸素濃度が低くて純度が高いため、着色が生じにくい。さらに、本発明の製造装置を用いれば、このような特徴を有する窒化物結晶を効率よく低コストで安全に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明で用いる結晶製造装置の概略図である。
【図2】本発明で用いる別の結晶製造装置の概略図である。
【図3】本発明の結晶製造装置の概略図である。
【図4】本発明の別の結晶製造装置の概略図である。
【図5】本発明の鉱化剤昇華精製工程で用いる装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明のソルボサーマル法による窒化物結晶の製造方法、窒化物結晶およびその製造装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0019】
<鉱化剤昇華精製工程>
本発明の窒化物結晶の製造方法は、反応容器内または反応容器に繋がる閉回路内で鉱化剤を昇華精製しておく鉱化剤昇華精製工程を含むことを特徴とするものである。通常、窒化物結晶を成長させる前に鉱化剤昇華精製工程を終えていることが好ましい。
【0020】
(鉱化剤)
反応容器内で鉱化剤を昇華精製する場合、まず反応容器内に鉱化剤を入れる。ここで用いる鉱化剤は、市販されているものであってもよいし、合成されたものでもよく、また、それらを保管していたものであってもよい。本発明では、特に精製して純度を高めた鉱化剤を用いなくても発明の効果を得ることができるが、精製した鉱化剤を用いてさらに本発明による精製を行えば、より純度が高い窒化物結晶を製造することができるため好ましい。鉱化剤を反応容器に入れる際には、常法に従って反応容器を開けて鉱化剤を入れることができる。窒素ガスなどの水分を含まない雰囲気下で反応容器中に鉱化剤を入れてもよいが、本発明の製造方法を採用する場合はそのような操作を行わずに大気中で行っても構わない。
【0021】
本発明で用いる鉱化剤は、ソルボサーマル法により窒化物結晶を製造する際に用いられる鉱化剤の中から選択される。アルカリ金属アミドなどの塩基性鉱化剤を用いてもよいし、ハロゲン化アンモニウムなどの酸性鉱化剤を用いてもよい。その中では、ハロゲン化アンモニウムを用いることが、本発明の効果をより良く享受することができるため好ましい。ハロゲン化アンモニウムの例として、フッ化水素アンモニウム、フッ化アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムなどを挙げることができ、フッ化水素アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムを採用することが好ましく、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウムを採用することがより好ましい。これらの鉱化剤は、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
鉱化剤を精製するときには、反応容器内に鉱化剤のみを入れて実施してもよいが、後に行う窒化物結晶の成長に用いる原料や種結晶を併存させておいてもよい。原料や種結晶の種類や詳細については後述する。
【0022】
(圧力と温度)
鉱化剤を反応容器中で精製する際には、反応容器を脱気しながら減圧下で加熱する。脱気は、反応容器に接続した配管を通して真空ポンプ等により行うことができる。圧力は1Torr以下にすることが好ましく、1×10-1Torr以下にすることがより好ましく、1×10-2Torr以下にすることがさらに好ましい。また、圧力の下限値については、1×10-7Torr以上にすることが好ましく、1×10-6Torr以上にすることがより好ましく、1×10-5Torr以上にすることがさらに好ましい。圧力は徐々に下げて行くことが好ましいが、精製中に水が気化することにより圧力が下がり難くなることがある。このような場合には、ほぼ一定の圧力で気化したガスを脱気した後にさらに圧力を下げることができる。また、精製により鉱化剤が析出した後は、温度を徐々に下げて鉱化剤昇華精製工程を終了することが好ましい。
【0023】
鉱化剤の精製時には、反応容器内の鉱化剤を入れた領域の少なくとも一部を鉱化剤の昇華温度以上に加熱することにより鉱化剤を昇華させる。本明細書では、鉱化剤を加熱して昇華させる領域を鉱化剤加熱昇華領域と呼ぶ。このような鉱化剤加熱昇華領域を設ける一方で、それ以外のいずれかの領域を鉱化剤の昇華温度未満の温度に設定して、鉱化剤を析出させる。本明細書では、鉱化剤を析出させる領域を鉱化剤析出領域と呼ぶ。
【0024】
鉱化剤の昇華温度は、鉱化剤の種類と反応容器内の圧力により決まる。通常は、鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)を昇華温度より1℃以上高い温度に設定し、3℃以上高い温度に設定することが好ましく、また、5℃以上高い温度に設定することがより好ましい。上限値については、例えば昇華温度より200℃高い温度とすることができ、好ましくは昇華温度より150℃高い温度であり、より好ましくは昇華温度より100℃高い温度である。鉱化剤析出領域の温度(T2)は、通常は昇華温度より0.1℃以上低い温度に設定し、1℃以上低い温度に設定することが好ましく、3℃以上低い温度に設定することがより好ましい。下限値については、例えば昇華温度より100℃低い温度とすることができ、好ましくは昇華温度より50℃低い温度であり、より好ましくは昇華温度より30℃低い温度である。鉱化剤昇華精製工程において採用するこれらの温度は、高すぎるとエネルギー効率が悪くなり、低すぎると精製効率が悪くなる。このため、圧力などの条件と併せて制御しながら、程よい温度に加熱することが好ましい。
【0025】
鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)は、80℃以上に設定することが好ましく、100℃以上に設定することがより好ましく、120℃以上に設定することがさらに好ましい。また、鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)は、350℃以下に設定することが好ましく、300℃以下に設定することがより好ましく、250℃以下に設定することがさらに好ましい。鉱化剤析出領域の温度(T2)は、30℃以上に設定することが好ましく、40℃以上に設定することがより好ましく、50℃以上に設定することがさらに好ましい。また、鉱化剤加熱析出領域の温度(T2)は、300℃以下に設定することが好ましく、250℃以下に設定することがより好ましく、200℃以下に設定することがさらに好ましい。鉱化剤加熱昇華領域と鉱化剤析出領域の温度差は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましい。また、温度差は200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう温度差の条件は、鉱化剤加熱昇華領域と鉱化剤析出領域の一部に上記温度差を満たす箇所が存在していれば満たされているものとみなす。鉱化剤昇華精製工程における設定温度は、精製しようとしている鉱化剤の種類も考慮して調整することが好ましい。例えば、塩化アンモニウムの場合は鉱化剤加熱昇華領域を80〜250℃の範囲内に設定し、臭化アンモニウムの場合は鉱化剤加熱昇華領域を100〜300℃の範囲内に設定し、ヨウ化アンモニウムの場合は鉱化剤加熱昇華領域を120〜350℃の範囲内に設定することが好ましい。鉱化剤析出領域の温度(T2)は、これらの鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)よりも5℃以上低い温度に設定することが好ましい。
【0026】
鉱化剤加熱昇華領域の温度は領域の全体にわたって同じ温度に設定してもよいし、領域内で温度分布があってもよい。鉱化剤析出領域の温度についても同じである。鉱化剤析出領域内に温度分布がある態様として、例えば、鉱化剤加熱昇華領域側ほど温度が高い状況を挙げることができる。また、設定温度や温度分布は、鉱化剤昇華精製工程中で一定に維持してもよいし、鉱化剤の析出状況などに応じて変えてもよい。通常は、工程中において、一定の温度に維持する時間を確保する。
反応容器内において鉱化剤を精製するとき、鉱化剤加熱昇華領域は反応容器内に設定する。通常は、鉱化剤を入れたときに鉱化剤が溜まる反応容器の下部が鉱化剤加熱昇華領域となる。一方、鉱化剤析出領域は、反応容器内に設定してもよいし、反応容器外に設定してもよい。鉱化剤加熱昇華領域と鉱化剤析出領域は、例えばヒーターなどの温度制御機構の設置位置と温度制御の仕方により設定することができる。反応容器内に設定する場合は、反応容器の上部または上部から中央部にかけての領域を鉱化剤析出領域とすることが好ましい。
【0027】
なお、反応容器内に鉱化剤析出領域を設定する場合は、鉱化剤析出領域と鉱化剤析出領域の広さは、鉱化剤昇華精製工程の経過とともに変えても構わない。精製が進むにしたがって、鉱化剤加熱昇華領域の鉱化剤量は減少し、鉱化剤析出領域の析出鉱化剤量は増加するため、温度制御範囲を調整することにより、徐々に鉱化剤加熱昇華領域が狭くなるように制御したり、鉱化剤析出領域が広くなるように制御したりしてもよい。その際、精製開始当初は鉱化剤加熱昇華領域であった部分の一部が、精製終了時には鉱化剤析出領域の一部に組み込まれてもよい。
【0028】
鉱化剤析出領域は、反応容器外に設定することもできる。すなわち、反応容器内では鉱化剤が実質的に析出しないように条件設定しておいて、反応容器外で析出するように設定することができる。例えば、反応容器外に設置された鉱化剤析出容器を鉱化剤析出領域に設定して、その鉱化剤析出容器内において鉱化剤を析出させることが可能である。また、そのような鉱化剤析出容器を設けずに、配管の一部を鉱化剤析出領域に設定して、配管中に鉱化剤を析出させることもできる。その場合は、配管の内径を太くしたり、鉱化剤が集中的に析出しやすくする析出補助具を配管内に設置したりする工夫を施して、配管内に析出する鉱化剤によって配管内の流路が過度に狭まらないように工夫をすることが好ましい。
【0029】
(析出補助具)
析出補助具は、反応容器内外を問わず、鉱化剤析出領域に設置することができる。例えば、反応容器や配管内壁と同じ材質の表面を有する棒状体や板状体を例示することができる。棒状体は、複数本が組み合わされた柵状体、編目状体であっても構わない。そのような棒状体の径は、0.1mm以上であることが好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。また、3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。これらの析出補助具は、鉱化剤析出領域を横断するように設置してもよいし、その一部に設置してもよい。また、別の目的で反応容器内に用いられる部材を析出補助具として用いてもよい。例えば、種結晶保持枠や種結晶保持用ワイヤーを析出補助具として機能させてもよい。析出補助具は、設置する容器や配管内の断面積に対してあまり大きな面積を占めるものであると、析出した鉱化剤により容器や配管を閉塞させる危険性が高まる。このため、析出補助具が占める面積は、容器や配管内の断面積の98%を上回らないようにすることが好ましく、95%を上回らないようにすることがより好ましい。
【0030】
(反応容器外における鉱化剤の精製とそれに用いる装置)
鉱化剤の精製は、反応容器の外で行うことも可能である。この場合は、反応容器とは別に閉回路内に鉱化剤精製用容器を設けておき、そこにおいて上記と同様にして鉱化剤の精製を行うことができる。ここでいう閉回路とは、反応容器と繋げたときに反応容器とともに密閉状態を形成して外気から隔離し、酸素、水分等の不純物混入を抑止することが可能な流路または容器を意味する。また、閉回路は常に反応容器に繋がっている必要はなく、バルブやその他の構造を用いることにより反応容器との間で密閉できる機能を保持したまま、反応容器と分離可能な構造でもよい。このような閉回路と反応容器の接続例としては、例えば、反応容器と反応容器とは別の容器(鉱化剤昇華析出容器)が配管で接続されており、それぞれの容器にバルブが付属し密閉可能な構造となってものが挙げられる。具体例として図3に示す装置を挙げることができる。ここでは、鉱化剤昇華析出容器15に鉱化剤を入れておいて、容器の下方をヒーター26で加熱することによって鉱化剤を昇華させ、容器の上方をヒーター25で昇華温度以下に設定しておいて鉱化剤を析出させることができる。鉱化剤昇華析出容器15内は、鉱化剤昇華精製工程中は真空ポンプ11により脱気しておく。鉱化剤の精製を行った後は、アンモニアボンベ12からアンモニアを鉱化剤昇華析出容器15内に導入してアンモニアと鉱化剤の混合物を形成し、混合物をさらにバルブ10を経由してオートクレーブ1内に導入することができる。
【0031】
本発明では、析出した鉱化剤がなるべく高い純度を保ちながら反応容器へ導入されるようにすることが好ましい。そのためには、例えば、窒化物結晶の成長時に用いる高純度の溶媒を鉱化剤析出領域に導入して精製した鉱化剤と溶媒を混合し、混合物を外気に触れさせることなく配管内を通して反応容器内へ注入する方法を採用することが好ましい。このとき、図3の装置を使用する場合のように、溶媒が鉱化剤加熱昇華領域も通るようにして鉱化剤加熱昇華領域に残存している鉱化剤も一緒に反応容器へ導入してもよいが、鉱化剤加熱昇華領域を通らないように配管して、鉱化剤析出領域に析出した鉱化剤だけを反応容器へ導入するようにすればなお好ましい。そのような態様の具体例を図4に示す。ここでは反応容器1とは別に鉱化剤加熱昇華容器17と鉱化剤析出容器16が設置されている。ヒーター26で鉱化剤加熱昇華容器17の下部に充填された鉱化剤を昇華温度以上に加熱し、ヒーター25で鉱化剤加熱昇華容器内で鉱化剤が析出しないように温度制御するとともに、ヒーター24で鉱化剤析出容器16内で鉱化剤が析出するように制御する。この鉱化剤の昇華精製中は、真空ポンプ11により真空脱気を行う。鉱化剤の昇華精製が終了したら、アンモニアを鉱化剤析出容器16に導入し、アンモニアと鉱化剤の混合物をバルブ10を経由してオートクレーブ1中へ導入する。このような一連の装置の詳細については、使用状況や使用目的に応じて適宜改変することができる。
【0032】
<結晶成長工程>
(種結晶)
本発明にしたがって窒化物結晶を成長させる際には、種結晶を用いることが好ましい。種結晶としては、本発明の製造方法により成長させる窒化物の単結晶を用いることが望ましいが、必ずしも同一の窒化物でなくてもよい。ただし、その場合には、目的の窒化物と一致し、もしくは適合した格子定数、結晶格子のサイズパラメータを有する種結晶であるか、またはヘテロエピタキシー(すなわち若干の原子の結晶学的位置の一致)を保証するよう配位した単結晶材料片もしくは多結晶材料片から構成されている種結晶を用いる必要がある。種結晶の具体例としては、例えば窒化ガリウム(GaN)を成長させる場合、GaNの単結晶の他、窒化アルミニウム(AlN)等の窒化物単結晶、酸化亜鉛(ZnO)の単結晶、炭化ケイ素(SiC)の単結晶、サファイア(Al23)等が挙げられる。
【0033】
種結晶は、溶媒への溶解度および鉱化剤との反応性を考慮して決定することができる。例えば、GaNの種結晶としては、MOCVD法やHVPE法でサファイア等の異種基板上にエピタキシャル成長させた後に剥離させて得た単結晶、金属GaからNaやLi、Biをフラックスとして結晶成長させて得た単結晶、LPE法を用いて得たホモ/ヘテロエピタキシャル成長させた単結晶、本発明法を含む溶液成長法に基づき作製された単結晶およびそれらを切断した結晶などを用いることができる。
【0034】
(溶媒)
本発明では、溶媒として特に限定されないが、通常、窒素を含有する溶媒を用いる。窒素を含有する溶媒としては、成長させる窒化物単結晶の安定性を損なうことのない溶媒を挙げることができ、具体的には、アンモニア、ヒドラジン、尿素、アミン類(例えば、メチルアミンのような第1級アミン、ジメチルアミンのような第二級アミン、トリメチルアミンのような第三級アミン、エチレンジアミンのようなジアミン)、メラミン等を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。本発明では、アンモニアを溶媒として用いることが特に好ましい。
本発明で用いる溶媒に含まれる水や酸素の量はできるだけ少ないことが望ましく、これらの含有量は1000ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましく、0.1ppm以下であることがさらに好ましい。アンモニアを溶媒として用いる場合、その純度は通常99.9%以上であり、好ましくは99.99%以上であり、さらに好ましくは99.999%以上であり、特に好ましくは99.9999%以上である。
【0035】
(原料)
本発明では、成長させようとしている窒化物結晶を構成する元素を含む原料を用いる。例えば、周期表13族金属の窒化物結晶を成長させようとする場合は、周期表13族金属を含む原料を用いる。好ましくは13族窒化物結晶の多結晶原料および/またはガリウムであり、より好ましくは窒化ガリウムおよび/またはガリウムである。多結晶原料は、完全な窒化物である必要はなく、条件によっては13族元素がメタルの状態(ゼロ価)である金属成分を含有してもよく、例えば、結晶が窒化ガリウムである場合には、窒化ガリウムと金属ガリウムの混合物が挙げられる。
本発明において原料として用いる多結晶原料の製造方法は、特に制限されない。例えば、アンモニアガスを流通させた反応容器内で、金属またはその酸化物もしくは水酸化物をアンモニアと反応させることにより生成した窒化物多結晶を用いることができる。また、より反応性の高い金属化合物原料として、ハロゲン化物、アミド化合物、イミド化合物、ガラザンなどの共有結合性M−N結合を有する化合物などを用いることができる。さらに、Gaなどの金属を高温高圧で窒素と反応させて作製した窒化物多結晶を用いることもできる。
本発明において原料として用いる多結晶原料に含まれる水や酸素の量は、少ないことが好ましい。本発明で用いる多結晶原料は、酸素濃度が1×1018atom/cm3以下であるものを用いることが好ましく、1×1017atom/cm3以下であるものを用いることが好ましく、1×1016atom/cm3以下であるものを用いることがさらに好ましい。
【0036】
(反応容器)
本発明の製造方法において、結晶成長工程は反応容器中で実施する。
本発明に用いる反応容器は、窒化物結晶を成長させるときの高温高圧条件に耐え得るもの中から選択する。反応容器は、特表2003−511326号公報(国際公開第01/024921号パンフレット)や特表2007−509507号公報(国際公開第2005/043638号パンフレット)に記載されるように反応容器の外から反応容器とその内容物にかける圧力を調整する機構を備えたものであってもよいし、そのような機構を有さないオートクレーブであってもよい。
本発明に用いる反応容器は、耐圧性と耐食性を有する材料で構成されているものが好ましく、特にアンモニア等の溶媒に対する耐食性に優れたNi系の合金、ステライト(デロロ・ステライト・カンパニー・インコーポレーテッドの登録商標)等のCo系合金を用いることが好ましい。より好ましくはNi系の合金であり、具体的には、Inconel625(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標、以下同じ)、Nimonic90(Nimonicはスペシャル メタルズ ウィギン リミテッドの登録商標、以下同じ)、RENE41(Teledyne Allvac, Incの登録商標)、Inconel718(Inconelはハンティントン アロイズ カナダ リミテッドの登録商標)、ハステロイ(Haynes International,Incの登録商標)、ワスパロイ(United Technologies,Inc.の登録商標)が挙げられる。
【0037】
これらの合金の組成比率は、反応容器内の溶媒の温度や圧力条件、および反応容器内で用いる鉱化剤およびそれらの反応物との反応性および/または酸化力・還元力、pHの条件に従い、適宜選択すればよい。これらを反応容器の内面を構成する材料として用いるには、反応容器自体をこれらの合金を用いて製造してもよく、内筒(カプセル)として薄膜を形成して反応容器内に設置してもよく、任意の反応容器の材料の内面にメッキ処理を施してもよい。
【0038】
反応容器の耐食性をより向上させるために、貴金属の優れた耐食性を利用して、貴金属を反応容器の内表面をライニングまたはコーティングしてもよい。また、反応容器の材質を貴金属とすることもできる。ここでいう貴金属としては、Pt、Au、Ir、Ru、Rh、Pd、Ag、およびこれらの貴金属を主成分とする合金が挙げられ、中でも優れた耐食性を有するPtを用いることが好ましい。
【0039】
本発明の製造方法に用いることができる反応容器を含む結晶製造装置の具体例を図1に示す。ここでは、オートクレーブ1中に内筒として装填されるカプセル20中で結晶成長を行う。カプセル20中は、原料を溶解するための原料溶解領域9と結晶を成長させるための結晶成長領域6から構成されている。原料溶解領域9には原料8とともに溶媒や鉱化剤を入れることができ、結晶成長領域6には種結晶7をワイヤーで吊すなどして設置することができる。原料溶解領域9と結晶成長領域6の間には、2つの領域を区画バッフル板5が設置されている。バッフル板5の開孔率は2〜60%であるものが好ましく、3〜40%であるものがより好ましい。バッフル板の表面の材質は、反応容器であるカプセル20の材料と同一であることが好ましい。また、より耐食性を持たせ、成長させる結晶を高純度化するために、バッフル板の表面は、Ni、Ta、Ti、Nb、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることが好ましく、Pd、Pt、Au、Ir、pBNであることがより好ましく、Ptであることが特に好ましい。
【0040】
図1の結晶製造装置では、オートクレーブ1の内壁とカプセル20の間の空隙には、第2溶媒を充填することができるようになっている。ここには、バルブ10を介して窒素ボンベ13から窒素ガスを充填したり、アンモニアボンベ12からマスフローメーター14で流量を確認したりしながら第2溶媒としてアンモニアを充填することができる。また、真空ポンプ11により必要な減圧を行うこともできる。なお、本発明の製造方法を実施する際に用いる結晶製造装置には、バルブ、マスフローメーター、導管は必ずしも設置されていなくてもよい。
【0041】
本発明の製造方法に用いることができる別の結晶製造装置の具体例を図2に示す。この結晶製造装置では、カプセルを使用せず、オートクレーブ内で結晶成長を行う。
オートクレーブにより耐食性を持たせるためにライニングを使用することもできる。ライニングする材料として、Pt、Ir、Ag、Pd、Rh、Cu、AuおよびCのうち少なくとも一種類以上の金属または元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金または化合物であることが好ましく、より好ましくは、ライニングがしやすいという理由でPt,Ag、CuおよびCのうち少なくとも一種類以上の金属または元素、もしくは、少なくとも一種類以上の金属を含む合金または化合物である。例えば、Pt単体、Pt−Ir合金、Ag単体、Cu単体やグラファイトなどが挙げられる。
【0042】
(結晶成長工程)
窒化物結晶を成長させる際には、反応容器内に、種結晶、溶媒、原料、および鉱化剤を入れた状態で封止する。鉱化剤を反応容器内において精製する場合は、溶媒を除く成分を入れた状態で鉱化剤の精製を行い、その後に溶媒を導入することが好ましい。鉱化剤を反応容器外において精製する場合は、種結晶と原料が入っている反応容器に、精製した鉱化剤と溶媒を導入することが好ましい。鉱化剤と溶媒は混合して導入してもよいし、別々に導入してもよい。なお、種結晶は、反応容器内表面を構成する貴金属と同様の貴金属製の治具に固定することが好ましい。装填後には、必要に応じて加熱脱気をしてもよい。
【0043】
図1に示す製造装置を用いる場合は、反応容器であるカプセル20内に種結晶、溶媒、原料、および鉱化剤を入れて封止した後に、カプセル20をオートクレーブ(耐圧性容器)1内に装填し、好ましくは耐圧性容器と該反応容器の間の空隙に第2溶媒を充填して耐圧性容器を密閉する。
【0044】
その後、全体を加熱して反応容器内を超臨界状態および/または亜臨界状態とする。超臨界状態では一般的には、粘度が低く、液体よりも容易に拡散されるが、液体と同様の溶媒和力を有する。亜臨界状態とは、臨界温度近傍で臨界密度とほぼ等しい密度を有する液体の状態を意味する。例えば、原料充填部では、超臨界状態として原料を溶解し、結晶成長部では亜臨界状態となるように温度を変化させて超臨界状態と亜臨界状態の原料の溶解度差を利用した結晶成長も可能である。
【0045】
超臨界状態にする場合、反応混合物は、一般に溶媒の臨界点よりも高い温度に保持する。アンモニア溶媒を用いた場合、臨界点は臨界温度132℃、臨界圧力11.35MPaであるが、反応容器の容積に対する充填率が高ければ、臨界温度以下の温度でも圧力は臨界圧力を遥かに越える。本発明において「超臨界状態」とは、このような臨界圧力を越えた状態を含む。反応混合物は、一定の容積の反応容器内に封入されているので、温度上昇は流体の圧力を増大させる。一般に、T>Tc(1つの溶媒の臨界温度)およびP>Pc(1つの溶媒の臨界圧力)であれば、流体は超臨界状態にある。
【0046】
超臨界条件では、窒化物結晶の十分な成長速度が得られる。反応時間は、特に鉱化剤の反応性および熱力学的パラメータ、すなわち温度および圧力の数値に依存する。窒化物結晶の合成中あるいは成長中、反応容器内の圧力は120MPa以上にすることが好ましく、150MPa以上にすることがより好ましく、180MPa以上にすることがさらに好ましい。また、反応容器内の圧力は700MPa以下にすることが好ましく、500MPa以下にすることがより好ましく、350MPa以下にすることがさらに好ましく、300MPa以下にすることが特に好ましい。圧力は、温度および反応容器の容積に対する溶媒体積の充填率によって適宜決定される。本来、反応容器内の圧力は、温度と充填率によって一義的に決まるものではあるが、実際には、原料、鉱化剤などの添加物、反応容器内の温度の不均一性、およびフリー容積の存在によって多少異なる。
【0047】
反応容器内の温度範囲は、下限値が500℃以上であることが好ましく、515℃以上であることがより好ましく、530℃以上であることがさらに好ましい。上限値は、700℃以下であることが好ましく、650℃以下であることがより好ましく、630℃以下であることがさらに好ましい。本発明の製造方法では、反応容器内における原料溶解領域の温度が、結晶成長領域の温度よりも高いことが好ましい。温度差は、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。反応容器内の最適な温度や圧力は、結晶成長の際に用いる鉱化剤や添加剤の種類や使用量等によって、適宜決定することができる。
【0048】
上記の反応容器内の温度範囲、圧力範囲を達成するための反応容器への溶媒の注入割合、すなわち充填率は、反応容器のフリー容積、すなわち、反応容器に多結晶原料、および種結晶を用いる場合には、種結晶とそれを設置する構造物の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積、またバッフル板を設置する場合には、さらにそのバッフル板の体積を反応容器の容積から差し引いて残存する容積の溶媒の沸点における液体密度を基準として、通常20〜95%、好ましくは30〜80%、さらに好ましくは40〜70%とする。
【0049】
反応容器内での窒化物結晶の成長は、熱電対を有する電気炉などを用いて反応容器を加熱昇温することにより、反応容器内をアンモニア等の溶媒の亜臨界状態または超臨界状態に保持することにより行われる。加熱の方法、所定の反応温度への昇温速度に付いては特に限定されないが、通常、数時間から数日かけて行われる。必要に応じて、多段の昇温を行ったり、温度域において昇温スピードを変えたりすることもできる。また、部分的に冷却しながら加熱したりすることもできる。
なお、上記の「反応温度」は、反応容器の外面に接するように設けられた熱電対、および/または外表面から一定の深さの穴に差し込まれた熱電対によって測定され、反応容器の内部温度へ換算して推定することができる。これら熱電対で測定された温度の平均値をもって平均温度とする。通常は、原料溶解領域の温度と結晶成長領域の温度の平均値を平均温度とする。
【0050】
所定の温度に達した後の反応時間については、窒化物結晶の種類、用いる原料、鉱化剤の種類、製造する結晶の大きさや量によっても異なるが、通常、数時間から数百日とすることができる。反応中、反応温度は一定にしてもよいし、徐々に昇温または降温させることもできる。所望の結晶を生成させるための反応時間を経た後、降温させる。降温方法は特に限定されないが、ヒーターの加熱を停止してそのまま炉内に反応容器を設置したまま放冷してもかまわないし、反応容器を電気炉から取り外して空冷してもかまわない。必要であれば、冷媒を用いて急冷することも好適に用いられる。
【0051】
反応容器外面の温度、あるいは推定される反応容器内部の温度が所定温度以下になった後、反応容器を開栓する。このときの所定温度は特に限定はなく、通常、−80℃〜200℃、好ましくは−33℃〜100℃である。ここで、反応容器に付属したバルブの配管接続口に配管を接続し、水などを満たした容器に通じておき、バルブを開けてもよい。さらに必要に応じて、真空状態にするなどして反応容器内のアンモニア溶媒を十分に除去した後、乾燥し、反応容器の蓋等を開けて生成した窒化物結晶および未反応の原料や鉱化剤等の添加物を取り出すことができる。
【0052】
なお、本発明の製造方法にしたがって窒化ガリウムを製造する場合、上記以外の材料、製造条件、製造装置、工程の詳細については特開2009−263229号公報を好ましく参照することができる。該公開公報の開示全体を本明細書に引用して援用する。
【0053】
(窒化物結晶)
本発明にしたがって精製した鉱化剤を使用すれば、従来法にしたがって精製せずに鉱化剤を使用した場合に比べて、結晶成長後に得られる窒化物結晶の酸素濃度が顕著に低くなる。本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶の酸素濃度は、通常1×1019atom/cm3以下であり、好ましくは5×1018atom/cm3以下であり、より好ましくは5×1017atom/cm3以下であり、さらに好ましくは5×1016atom/cm3以下である。このような低い酸素濃度は、従来の固体鉱化剤を添加するソルボサーマル法では達成が困難であったレベルである。
【0054】
また、本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶は、従来のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶に比べて、シリコン濃度が低いという特徴も有する。本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶のシリコン濃度は、通常5×1018atom/cm3以下であり、好ましくは1×1018atom/cm3以下であり、より好ましくは5×1017atom/cm3以下である。
さらに、本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶は、貫通転位密度が低いという特徴も有する。また、本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶は、格子面のそりが小さいという特徴も有する。
【0055】
本発明のソルボサーマル法により得られる窒化物結晶の種類は、選択する結晶成長用原料の種類等によって決まる。本発明によれば、周期表13族金属の窒化物結晶を好ましく成長させることができ、ガリウム含有窒化物結晶をより好ましく成長させることができる。具体的には、窒化ガリウム結晶の成長に好ましく利用することができる。
本発明のソルボサーマル法によれば、比較的、径が大きな結晶も得ることができる。例えば、最大径が50mm以上である窒化物結晶や、より好ましくは最大径が76mm以上である窒化物結晶や、さらに好ましくは最大径が100mm以上である窒化物結晶を得ることも可能である。従来よりも不純物が少ない環境下で成長するため、より大きな面積で均一な成長が実現できる。
【実施例】
【0056】
以下に試験例と実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0057】
<試験例> 鉱化剤昇華精製試験
図5の製造装置を用いてGaN結晶を製造した。
内径60mm、長さ900mmのPt−Ir合金製カプセル20を用いてヨウ化アンモニウムの昇華実験を行なった。実際の育成条件に近づけるために、カプセル下部に2000gの多結晶GaN8を充填し、純度4Nのヨウ化アンモニウム試薬を58.42g投入した。試薬は濃い黄色から薄いオレンジ色を呈しており水分を吸着していることが示唆された。ほぼ中間の位置にバッフル板5を設置し、上部にPt製の種結晶保持枠を設置した。最後にPt−Ir合金製のキャップを溶接により取り付けた。キャップ上部にはガス注入および真空引きのためのチューブが付属している。カプセルの密閉性を確認するために窒素ガスを充填し約0.2MPaまで圧力を張った。続いて水槽にカプセルを入れてバブルの発生の有無を確認しガスの漏れが無いことを確認した。続いてチューブを真空ポンプ11に接続し1×10-1Torrまで減圧と乾燥窒素パージを数回繰り返した後、真空度が1×10-3Torrまで減圧した。カプセルの外側にラバーヒータを上半分と下半分にそれぞれ巻きつけ、上部(T2)を120℃、下部(T1)を150℃まで約15分かけて昇温した。昇温中は水分の蒸気圧によるものと考えられる真空度の低下が見られ真空度は1×10-1Torrまで悪化した。その後時間の経過とともに水分が減少し真空度は回復に向かった。この温度で2時間保持した後、上部温度はそのままで下部温度(T1)を180℃まで約15分かけて昇温した。この温度で19時間保持した後、真空度は1×10-3Torrに達していた。その状態でバルブを閉じ密閉状態のまま室温まで自然冷却した。キャップを開封しカプセル内を観察したところ、カプセルの内壁および種結晶保持枠の表面を覆うように0.1mmから1mm程度の透明なヨウ化アンモニウム結晶が昇華析出していた。カプセル内壁と種結晶保持枠の表面に昇華析出したヨウ化アンモニウムの重量は35.16gであった。これは投入したヨウ化アンモニウム58.42gの約60%に相当する。更に、昇華せずに下部に残存したヨウ化アンモニウムを観察したところ、実験前は濃い黄色〜薄いオレンジ色だったものがほぼ完全な白色(透明)となっていた。これは昇華しなくても加熱により水分が減少したことを示している。
【0058】
<実施例> GaN結晶の製造
図1の製造装置を用いてGaN結晶を製造した。なお、鉱化剤昇華精製工程については図5の装置形式にて行った。
内寸が直径30mm、長さ450mmのRENE41製オートクレーブ1(内容積約345cm3)を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製カプセル20を反応容器として結晶成長を行った。原料8として多結晶GaN粒子140gを秤量し、カプセル下部領域(原料溶解領域9)内に設置した。原料として使用した多結晶GaN粒子は、使用前にSIMS(二次イオン質量分析装置)により分析した結果、酸素濃度が5×1018atom/cm3であった。次に鉱化剤として純度99.999%のNH4Iと純度99.999%のGaF3をカプセル内に投入した。投入された鉱化剤は下部原料溶解域に堆積したことを確認した。
【0059】
さらに下部の原料溶解領域9と上部の結晶成長領域6の間に白金製のバッフル板5を設置した。種結晶7としてHVPE法により成長した六方晶系GaN単結晶のC面を主面とするウェハー(10mmx5mmx0.3mm)2枚とM面を主面とするウェハー(5mm×7.5mm×0.3mm)2枚を用いた。種結晶の主面はCMP(chemical mechanical polishing)仕上げされており、表面粗さは原子間力顕微鏡による計測によりRmsが0.5nm以下であることを確認した。これら種結晶7を直径0.2mmの白金ワイヤーにより白金製種結晶支持枠に吊るし、カプセル上部の結晶成長領域6に設置した。
【0060】
つぎにカプセル20の上部にPt−Ir製のキャップをTIG溶接により接続したのち、重量を測定した。キャップ上部に付属したチューブに図1のバルブ10と同様のバルブを図5の通り接続し、真空ポンプ11に通ずるようバルブを操作し真空脱気した。その後バルブを窒素ボンベ13に通ずるように操作しカプセル内を窒素ガスにてパージを行った。前記真空脱気、窒素パージを5回行った後、真空ポンプに繋いだ状態で1×10-2Torrまで真空度を上げ、そのまま真空ポンプを稼動した状態に保った。カプセルの下部原料溶解域と上部結晶成長域にそれぞれラバーヒーターを巻きつけ独立して温度制御が可能となるようにした。上部(T2)を120℃、下部(T1)を150℃まで約15分かけて昇温し、その後2時間保持した。引き続き上部(T2)を120℃のまま、下部(T1)を170℃まで約15分かけて昇温し、その後14時間保持した。14時間保持した後の真空度は1×10-3Torrまで到達していた。バルブを閉じカプセルを室温まで自然冷却したのち、真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。つづいてNH3ボンベ12に通ずるように導管のバルブを操作したのち再びバルブを開け外気に触れることなくNH3を充填した後、再びバルブを閉じた。NH3充填前と充填後の重量の差から充填量を確認した。
【0061】
つづいてバルブ10が装着されたオートクレーブ1にカプセル20を挿入した後に蓋を閉じ、オートクレーブ1の重量を計測した。次いでオートクレーブに付属したバルブ10を介して導管を真空ポンプ11に通じるように操作し、バルブを開けて真空脱気した。カプセルと同様に窒素ガスパージを複数回行った。その後、真空状態を維持しながらオートクレーブ1をドライアイスエタノール溶媒によって冷却し、一旦バルブ10を閉じた。次いで導管をNH3ボンベ12に通じるように操作した後、再びバルブ10を開け連続して外気に触れることなくNH3をオートクレーブ1に充填した後、再びバルブ10を閉じた。オートクレーブ1の温度を室温に戻し、外表面を十分に乾燥させオートクレーブ1の重量を計測した。NH3充填前の重量との差からNH3の重量を算出し充填量を確認した。
【0062】
続いてオートクレーブ1を上下に2分割されたヒーターで構成された電気炉内に収納した。結晶成長領域が原料溶解領域よりも約20℃低くなるよう平均温度610℃まで9時間かけて昇温し、設定温度に達した後、その温度にて11日間保持した。オートクレーブ内の圧力は215MPaであった。また保持中のオートクレーブ外面制御温度のバラツキは±0.3℃以下であった。
その後、オートクレーブ1の外面の温度が室温に戻るまで自然冷却し、オートクレーブに付属したバルブ10を開放し、オートクレーブ内のNH3を取り除いた。その後オートクレーブ1を計量しNH3の排出を確認した後、オートクレーブの蓋を開け、カプセル20を取り出した。カプセル上部に付属したチューブに穴を開けカプセル内部からNH3を取り除いた。カプセル内部を確認したところ、C面、M面いずれの種結晶上にも全面に均一に窒化ガリウム結晶が析出していた。SIMSにて結晶中の酸素濃度を測定したところ5×1017atoms/cm3であった。
【0063】
<比較例> GaN結晶の製造
図1の製造装置を用いてGaN結晶を製造した。
内寸が直径30mm、長さ450mmのRENE41製オートクレーブ1(内容積約345cm3)を耐圧性容器として用い、Pt−Ir製カプセル20を反応容器として結晶成長を行った。原料8として多結晶GaN粒子100gを秤量し、カプセル下部領域(原料溶解領域9)内に設置した。次に鉱化剤として純度99.999%のNH4Iをカプセル内に投入した。投入された鉱化剤は下部原料溶解域に堆積したことを確認した。
【0064】
上記実施例と同様に種結晶、バッフルを配置し、カプセル20の上部にPt−Ir製のキャップをTIG溶接により接続したのち、重量を測定した。キャップ上部に付属したチューブに図1のバルブ10と同様のバルブを接続し、真空ポンプ11に通ずるようバルブを操作し真空脱気した。その後バルブを窒素ボンベ13に通ずるように操作しカプセル内を窒素ガスにてパージを行った。前記真空脱気、窒素パージを5回行った後、真空ポンプに繋いだ状態で1×10-2Torrまで真空度を上げた。以上の工程は全て室温にて行なわれた。真空状態を維持したままカプセルをドライアイスエタノール溶媒により冷却した。つづいてNH3ボンベ12に通ずるように導管のバルブを操作したのち再びバルブを開け外気に触れることなくNH3を充填した後、再びバルブを閉じた。NH3充填前と充填後の重量の差から充填量を確認した。
【0065】
その後の工程は上記実施例と同様にオートクレーブにカプセルを挿入し、カプセル外にNH3を充填し後、オートクレーブを電気炉にセットして結晶成長を行なった。結晶成長期間は5日間であった。
SIMSにて成長した結晶中の酸素濃度を測定したところ1.1×1019atoms/cm3であった。
【0066】
上記の実施例と比較例の結果を比較すれば明らかなように、本発明にしたがって鉱化剤を精製してから窒化物結晶を成長させることにより、製造される窒化物結晶中の酸素濃度は大幅に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のソルボサーマル法による窒化物結晶の製造方法によれば、このように酸素濃度が低くて高純度の窒化物結晶を効率よく成長させることができる。また、そのような窒化物結晶を製造することができる本発明の装置は、大型化して大量生産を図ることも可能であることから、工業的な利用可能性が高い。また、本発明の窒化物結晶は酸素濃度が低くて純度が高いことから、着色が生じにくく、LEDやLDなどのオプトエレクトロニクス用基板を始めとする様々な用途に応用されうる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0068】
1 オートクレーブ
2 オートクレーブ内面
3 ライニング
4 ライニング内面
5 バッフル板
6 結晶成長領域
7 種結晶
8 原料
9 原料溶解領域
10 バルブ
11 真空ポンプ
12 アンモニアボンベ
13 窒素ボンベ
14 マスフローメータ
15 鉱化剤昇華析出容器
16 鉱化剤析出容器
17 鉱化剤加熱昇華容器
20 カプセル
21 カプセル内面
22〜26 ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成長用の反応容器内または前記反応容器に繋がる閉回路内で、鉱化剤を昇華させた後に析出させる鉱化剤昇華精製工程と、
前記反応容器内にて、溶媒と精製した前記鉱化剤の存在下で、ソルボサーマル法によって反応容器内に入れられた窒化物の結晶成長原料から窒化物結晶を成長させる結晶成長工程とを
含むことを特徴とする、窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記鉱化剤昇華精製工程において、圧力を1Torr以下にする、請求項1に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域の温度(T2)の温度差(T1−T2)を5℃以上に設定する、請求項1または2に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記温度差をヒーターにより制御する、請求項3に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項5】
前記鉱化剤加熱昇華領域の温度(T1)が80℃〜350℃である、請求項3または4に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項6】
前記鉱化剤析出領域の温度(T2)が30℃〜300℃である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項7】
前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに前記反応容器内に設定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項8】
前記鉱化剤昇華精製工程を、少なくとも原料、鉱化剤および種結晶が存在している前記反応容器中で行う、請求項7に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項9】
前記鉱化剤昇華精製工程において、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに前記反応容器外に設定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項10】
前記鉱化剤加熱昇華領域と前記鉱化剤析出領域をともに前記反応容器とは別に設けられた鉱化剤精製容器内に設定する、請求項9に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項11】
前記鉱化剤加熱昇華領域を鉱化剤加熱昇華容器内に設定し、前記鉱化剤析出領域を前記鉱化剤加熱昇華容器とは別に設けられた鉱化剤析出容器内に設定する、請求項9に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項12】
前記鉱化剤昇華精製工程により精製した前記鉱化剤をアンモニアと混合して前記反応容器へ導入する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項13】
前記鉱化剤析出容器内において析出して得られた精製した鉱化剤を前記反応容器へ導入し、前記鉱化剤加熱昇華容器内に残存している鉱化剤は前記反応容器へ導入しない、請求項12に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項14】
前記鉱化剤昇華精製工程に用いる鉱化剤が、あらかじめ昇華精製されている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項15】
前記鉱化剤がハロゲン元素を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項16】
前記溶媒がアンモニアである、請求項1〜15のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項17】
前記窒化物結晶が窒化ガリウムである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項18】
前記鉱化剤昇華精製工程を開始する前に、前記反応容器内または前記閉回路内を窒素ガスで置換する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項19】
前記反応容器が、Pt、Ir、W、Ta、Rh、Ru、Reからなる群より選択される1種以上の金属または合金により構成されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項20】
前記反応容器が、Pt、Ir、W、Ta、Rh、Ru、Reからなる群より選択される1種以上の金属または合金によりライニングされている、請求項1〜18のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項21】
前記反応容器がオートクレーブである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項22】
前記反応容器がオートクレーブ中に挿入されたカプセルである、請求項1〜20のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造方法により製造される窒化物結晶。
【請求項24】
前記窒化物結晶が周期表13族金属の窒化物結晶である、請求項23に記載の窒化物結晶。
【請求項25】
前記窒化物が窒化ガリウムである、請求項23に記載の窒化物結晶。
【請求項26】
ソルボサーマル法により窒化物結晶を成長させることができる反応容器と、鉱化剤を昇華して析出させる鉱化剤昇華析出容器と、昇華精製した鉱化剤を前記反応容器へ導入する手段とを備えていることを特徴とする窒化物結晶の製造装置。
【請求項27】
前記鉱化剤昇華析出容器が、前記鉱化剤を加熱して昇華させる鉱化剤加熱昇華領域と、昇華した鉱化剤を析出させる鉱化剤析出領域をともに有する、請求項26に記載の窒化物結晶の製造装置。
【請求項28】
ソルボサーマル法により窒化物結晶を成長させることができる反応容器と、鉱化剤を昇華させる鉱化剤加熱昇華容器と、鉱化剤を析出させる鉱化剤析出容器と、析出した鉱化剤を前記反応容器へ導入する導入手段とを備えていることを特徴とする窒化物結晶の製造装置。
【請求項29】
前記導入手段が、前記鉱化剤加熱昇華容器中に残存する鉱化剤は前記反応容器へ導入しない、請求項28に記載の窒化物結晶の製造装置。
【請求項30】
溶媒を前記各反応容器へ導入する手段をさらに備えている、請求項26〜29のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造装置。
【請求項31】
反応容器には配管が付属しており、配管を通して減圧可能である、請求項26〜30のいずれか一項に記載の窒化物結晶の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−14502(P2013−14502A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145431(P2012−145431)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】