説明

立体回路部品およびその製造方法

【課題】 優れた電磁波シールド性を得ることができる立体回路部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 絶縁基板1に、カーボンナノチューブ7を含む金属膜6を内側面に設けた凹部2を形成し、ノイズから遮断されることが必要なセンサ素子4を凹部2内に配置することで、センサ素子4をカーボンナノチューブ7を含む金属膜6で包囲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体回路部品およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体回路部品において、ノイズ源となる電子部品、またはノイズから遮断されることが必要な電子部品を実装することがある、例えば、センサ素子等は微弱電流で動作するため、外部からの電磁波ノイズの影響を強く受けて、誤動作を引き起こしやすい。
【0003】
また、従来の電磁波シールド体としては、ポリアミド樹脂と炭素繊維を溶融混練して成形したものや(例えば、特許文献1参照)、カーボンナノチューブを含んだ熱可塑性樹脂よりなる制電層または導電層を基板上に設けたもの(例えば、特許文献2,3参照)がある。
【特許文献1】特開平2002−234950号公報
【特許文献2】特開平2004−230690号公報
【特許文献3】特開平2004−253796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の電磁波シールド体は、樹脂に炭素繊維やカーボンナノチューブを混ぜていることから絶縁体とはならず、電気めっき処理による回路形成が不可能であるので、立体回路部品の基板材料に用いることはできなかった。また、その電磁波シールド性も十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、優れた電磁波シールド性を得ることができる立体回路部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ノイズ源となる電子部品、またはノイズから遮断されることが必要な電子部品を包囲する内側面を設けた絶縁基板を備え、絶縁基板の少なくとも前記内側面にカーボンナノチューブを含む1層以上の金属膜を設けることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、金属による電磁波の反射または吸収と、カーボンナノチューブによる電磁波の吸収との相乗効果によって、優れた電磁波シールド性を得ることができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記金属膜は、銅または銅を含む合金であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、銅は導電性が高い(体積固有抵抗が低い)ので、電磁波の反射による損失を大きくできる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1において、前記金属膜は、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ニッケルは磁性損失が大きいので、電磁波の吸収による損失を大きくできる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかにおいて、前記絶縁基板は、カーボンナノチューブを含む前記金属膜を内側面に設けた凹部を形成されて、当該凹部の底面上に設けた前記電子部品を実装する実装用端子と、絶縁基板の外面に設けた配線パターンと、実装用端子と配線パターンとを接続するスルーホールとを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、凹部の内側面を配線パターンが通らないので、内側面全体にカーボンナノチューブを含む金属膜を形成でき、電磁波に対するシールド効果がさらに向上する。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかにおいて、前記絶縁基板は、カーボンナノチューブを含む前記金属膜を内側面および底面に設けた凹部を形成されて、当該凹部内に前記電子機器を配置することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、電磁波に対するシールド効果がさらに向上する。
【0016】
請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかにおいて、前記絶縁基板は、一面に開口を有する凹部を形成されて、当該凹部内に前記電子機器を配置し、凹部の内側面および絶縁基板の前記一面にカーボンナノチューブを含む前記金属膜を設け、絶縁基板の前記一面には、凹部の開口を塞ぐとともに前記一面に設けた金属膜に接触する金属製の蓋を覆設することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、電磁波に対するシールド効果がさらに向上する。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6において、前記絶縁基板の一面に設けた金属膜は、他の金属膜を形成するときに行う電気めっき処理の給電線として用いることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、給電線を別途設ける必要がなく、構造の単純化を図ることができる。
【0020】
請求項8の発明は、絶縁基板の表面をプラズマ処理して表面の活性化を行った後、絶縁基板の表面を被覆する金属層を形成し、次に回路形成部分と非回路形成部分の境界領域にレーザ光を照射して境界領域の金属層を除去し、次に回路形成部分の金属層にめっき処理を施すことで金属膜を形成する立体回路部品の製造方法において、ノイズ源となる電子部品、またはノイズから遮断されることが必要な電子部品を包囲する内側面を設けた絶縁基板の少なくとも前記内側面にカーボンナノチューブを含む1層以上の金属膜をめっき処理によって形成することを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、金属膜による電磁波の反射または吸収と、カーボンナノチューブによる電磁波の吸収との相乗効果によって、優れた電磁波シールド性を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明では、優れた電磁波シールド性を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(実施形態1)
図1、図2(a)(b)(図2(a)は、図2(b)のX1−X1’断面を示す。但し、図2(b)において、センサ素子4は省略。)は、本実施形態の立体回路部品A1の構成を示しており、直方体に成形された絶縁基板1の上面に凹部2が形成され、凹部2の底面には一対の実装用端子3,3が形成され、実装用端子3,3上にはセンサ素子4が配置され、センサ素子4は実装用端子3,3に電気的に接続している。実装用端子3からは配線パターン5が延設されており、配線パターン5は、各実装用端子3から互いに反対方向に伸びて、凹部2の底面,絶縁基板1の内側面、絶縁基板1の外縁部の上面,絶縁基板1の外側面に亘って直線状に形成され、立体回路部品A1の外部に電気的に接続される。なお、センサ素子4が自己の容量や抵抗値の変化を検知して出力する場合は、図1に示すように一対の実装用端子3、一対の配線パターン5を形成して、各々を信号線、GND線として用いるが、センサ素子4に電源が必要な場合は、3つの実装用端子3、3つの配線パターン5を形成して、各々を電源線、信号線、GND線として用いる。
【0025】
そして、本実施形態では、配線パターン5近傍以外の絶縁基板1の内側面に金属膜6a、外側面に金属膜6bを形成し、さらに絶縁基板1の外縁部の上面には、内側面と外側面の金属膜6a,6bを連結する金属膜6cを2箇所に形成しており、これらの金属膜6(以降、金属膜6a,6b,6c,...を示すときは金属膜6と称す)はカーボンナノチューブ7を含有している。
【0026】
以下、絶縁基板1の表面に、実装用端子3、配線パターン5、金属膜6を形成するプロセスについて、図3(a)〜(c)、図4(a)〜(d)を用いて説明する。まず、絶縁基板1は、ポリフタルアミド(PPA)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等の耐熱性に優れたポリマー基材、またはアルミナ(92〜99%)、窒化アルミ、炭化ケイ素等のセラミックス基材からなり、配線パターン5が形成されない互いに対向する絶縁基板1の外側面に設けたピンゲート8を介して基材が供給されて直方体に成形され、上面には凹部2が形成される(図3(a))。なお、好ましいポリマー基材としては、熱可塑性樹脂であって、上記以外に例えば、6ナイロン(PA6)、6−6ナイロン(PA6−6)、4−6ナイロン(PA46)、11ナイロン(PA11)、6−10ナイロン、PA−MXD−6、芳香族ポリアミド(PA6T、PA9T等)等のポリアミド、またはポリフェニレンサルファイド、またはポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン等のポリケトン、またはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、またはポリエーテルイミド、またはポリイミド等を例示することができる。
【0027】
次に、絶縁基板1の表面にRFプラズマ処理を施して、絶縁基板1の表面を活性化させる。プラズマ処理は、チャンバー内に一対の電極を対向配置し、一方の電極に高周波電源を接続するとともに他方の電極を接地して構成されるプラズマ処理装置を用いて行われる。そして、絶縁基板1の表面をプラズマ処理するにあたっては、絶縁基板1を一方の電極上にセットし、チャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、チャンバー内にNやNH等の化学的反応が活性なガスを導入して流通させるとともに、チャンバー内のガス圧を8〜15Paに制御し、次に高周波電源によって電極間に高周波電圧(RF:13.56MHz)を10〜100秒程度印加する。このとき、電極間の高周波グロー放電による気体放電現象によって、チャンバー内の活性ガスが励起され、陽イオンやラジカル等のプラズマが発生し、陽イオンやラジカル等がチャンバー内に形成される。
【0028】
そして、この陽イオンやラジカル等が絶縁基板1の表面に衝突することによって、絶縁基板1の表面が活性化され、後述するメタライジング処理において絶縁基板1と金属層M1との間で化学的結合が形成されて、密着性を高めることができる。特に、陽イオンが絶縁基板1に誘引衝突すると、絶縁基板1の表面に金属と結合しやすい窒素極性基や酸素極性基が導入されるので、金属層M1との密着性がより向上する。
【0029】
なお、プラズマ処理の条件は上記に限定されるものではなく、絶縁基板1の表面がプラズマ処理によって過度に粗面化されない範囲で任意に設定して行うことができる。また、プラズマの種類も特に限定されるものではないが、窒素プラズマ処理が望ましい。窒素プラズマ処理では、酸素プラズマ処理のように樹脂のエステル結合が切断されて炭酸ガスを脱離することが少ないので、絶縁基板1の表層部の強度低下を抑制することができ、金属層M1の密着性が低下することを防ぐことができる。
【0030】
そして、上記のように絶縁基板1をプラズマ処理した後、スパッタリングまたは真空蒸着またはイオンプレーティング等の物理蒸着法(PVD法)により、絶縁基板1の表面に金属層M1を形成するメタライジング処理を行う(図3(b))。ここで、絶縁基板1をチャンバー内でプラズマ処理した後、このチャンバー内を大気開放することなく、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等のいずれかの処理を連続プロセスで行うことが望ましい。金属層M1を形成する金属としては銅、ニッケル、金、アルミニウム、チタン、モリブデン、クロム、タングステン、スズ、鉛、黄銅、ニクロム等の単体、あるいは合金を用いることができる。
【0031】
スパッタリングとしては、例えば、DCスパッタ方式を適用する。まず、チャンバー内に絶縁基板1を配置し、真空ポンプよってチャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、チャンバー内にアルゴン等の不活性ガスを0.1Paのガス圧となるように導入する。そして、500Vの直流電圧を絶縁基板1に印加することによって、銅ターゲットをボンバードし、200〜500nm程度の膜厚を有する銅等の金属層M1を絶縁基板1の表面に形成する。
【0032】
また、真空蒸着としては、例えば、電子線加熱式真空蒸着方式を適用する。まず、チャンバー内に絶縁基板1を配置し、真空ポンプよってチャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、400〜800mAの電子流を発生させ、この電子流をるつぼの中の蒸着材料に衝突させて加熱すると、蒸着材料が蒸発し、200nm程度の膜厚を有する銅等の金属層M1を絶縁基板1の表面に形成する。
【0033】
また、イオンプレーティングで金属層M1を形成する場合は、まず、チャンバー内に絶縁基板1を配置し、真空ポンプよってチャンバー内を真空引きして10−4Pa程度に減圧した後、上記真空蒸着と同様にるつぼの中の蒸着材料を蒸発させるとともに、絶縁基板1とるつぼの間に設けた誘導アンテナ部にアルゴン等の不活性ガスを導入し、チャンバー内のガス圧を0.05〜0.1Paに設定してプラズマを発生させる。そして、誘導アンテナに13.56MHz、500Wの高周波のパワーを印加し、さらに絶縁基板1を載置している電極に高周波のパワーを印加して所望のバイアス電圧を発生させることによって、200〜500nm程度の膜厚を有する銅等の金属層M1を絶縁基板1の表面に形成する。
【0034】
物理蒸着法によって絶縁基板1の表面に金属層M1を形成するにあたって、プラズマ処理を行わないで金属層M1を形成しても、回路形成が可能な程度の密着力を得ることは困難であるが、上記のように、絶縁基板1の表面を予めプラズマ処理によって化学的に活性化させることで、絶縁基板1の表面に対する金属層M1の密着性を高くしている。
【0035】
なお、メタライジング処理には、上記以外に無電解めっき処理を用いてもよい。
【0036】
次に、絶縁基板1の表面に設けた金属層M1で回路形成するパターニングを行う(図3(c))。本実施形態では、絶縁基板1はその上面に凹部2を形成した三次元立体表面を有しており、この立体表面に金属層M1を形成した後に回路パターンを形成することによって、MID等の立体回路基板に仕上げる。
【0037】
パターニングは、例えばレーザ法(微細三次元レーザ加工)によって行う。回路形成部分と回路非形成部分との境界領域に沿って金属層M1にレーザ光を照射し、この境界領域の金属層M1を除去することによって、回路形成部分の金属層M1を回路パターンとして、金属層M1の回路非形成部分から分離する。
【0038】
次に、ピンゲート8を介して回路形成部分の金属層M1にのみ給電し、電気銅めっき処理を施して厚付けし、5〜20μm程度の厚みを有する銅導電層M2を金属層M1の表面に形成する(図4(a))。この銅導電層M2は、硫酸銅、シアン化銅、ピロリン酸銅、ホウフッ化銅のいずれの銅めっきでもよい。
【0039】
次に、ソフトエッチング処理を施すことで、回路非形成部分に残る金属層M1を除去し、銅導電層M2を表面に形成した回路形成部分は残存させることによって、所望のパターン形状の回路を形成した成形回路基板となる(図4(b))。このソフトエッチング処理は、金属層M1が銅の場合、過硫酸アンモニウム、硝酸、硫酸、塩酸等を用いる。
【0040】
次に、ピンゲート8を介して給電し、銅導電層M2の表面に電気ニッケルめっき処理を施して、数μm程度の厚みを有するニッケル導電層M3を形成する(図4(c))。この電気ニッケルめっき処理は、ワット浴、スルファミン酸浴、クエン酸浴、ホウフッ化浴、全塩化物浴、全硫酸塩浴のいずれを用いてもよい。
【0041】
次に、ピンゲート8を介して給電し、ニッケルめっき層M3の表面に電気金めっき処理を施して、数μm程度の厚みを有する金導電層M4を形成する(図4(d))。
【0042】
図3,図4では、1つの絶縁基板1に対する処理を示しているが、1つの成形体から複数の絶縁基板1を作る場合は、この成形体に対して上記一連の処理を施して、最後に絶縁基板1を個片毎に切断する。
【0043】
実装用端子3、配線パターン5、金属膜6は、上記一連の処理による金属層M1、銅導電層M2,ニッケル導電層M3,金導電層M4で構成されるのであるが、金属膜6にカーボンナノチューブ7を含有させるには、上記電気銅めっき処理において、銅のめっき液中にカーボンナノチューブ7を分散剤とともに添加して、該分散剤によりめっき液中にカーボンナノチューブ7を分散させ、このめっき液を用いて電気銅めっき処理を施すことにより、カーボンナノチューブ7が含まれている銅導電層M2を形成する。なお、めっき液は銅、あるいは銅を含む合金であればよい。
【0044】
または、上記ニッケルめっき処理において、ニッケルのめっき液中にカーボンナノチューブ7を分散剤とともに添加することで、カーボンナノチューブ7が含まれているニッケル導電層M3を形成して、金属膜6にカーボンナノチューブ7を含有させる。なお、めっき液はニッケル、あるいはニッケルを含む合金であればよい。
【0045】
または、上記カーボンナノチューブ7が含まれている銅導電層M2と、上記カーボンナノチューブ7が含まれているニッケル導電層M3との両方を形成して、金属膜6にカーボンナノチューブ7を含有させてもよい。
【0046】
そして、図1に示すように、絶縁基板1の内側面および外側面には、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6a,6bが各々形成されており、銅導電層M2の銅または銅合金は導電性が高い(体積固有抵抗が低い)ので電磁波の反射による損失を大きくでき、ニッケル導電層M3のニッケルまたはニッケル合金は磁性損失による電磁波の吸収が大きいので、金属膜6a,6bが電磁波ノイズを反射,吸収し、さらにカーボンナノチューブ7が電磁波ノイズを吸収するので、凹部2の底面上に配置されたセンサ素子4は、周囲を包囲する金属膜6a,6bとカーボンナノチューブ7の相乗効果によって電磁波ノイズに対する優れたシールド性を得ることができ、外部からの電磁波ノイズの干渉やノイズの重畳を防止することができる。
【0047】
さらに金属膜6だけでなく、実装用端子3、配線パターン5もカーボンナノチューブ7を混入しためっき液を用いてめっき処理することで、カーボンナノチューブ7を含有する実装用端子3、配線パターン5を形成してもよく、さらなるシールド性の向上を図ることができ、且つカーボンナノチューブ7を含む実装用端子3、配線パターン5は電気伝導性に優れたものとなる。
【0048】
また、センサ素子4の代わりにノイズ源となる電子部品を凹部2内に配置すれば、周囲を包囲する金属膜6a,6bとカーボンナノチューブ7の相乗効果によって、外部へ放出される電磁波ノイズを抑制できる。
【0049】
(実施形態2)
図5、図6(a)〜(c)は、本実施形態の立体回路部品A2の構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。なお、図6(a)は、図5のX2−X2’断面を示す。
【0050】
立体回路部品A2は、矩形の枠体に成形された絶縁基板11で構成され、絶縁基板11の枠部11aの内側には矩形の孔11bが形成されている。そして、枠部11aの互いに対向する2辺において、上面、内側面、下面の3面に亘って連続した複数本の配線パターン12が各々形成され、枠部11aの残りの2辺の内側面にはカーボンナノチューブ7を含有する金属膜6aが形成され、さらに枠部11aの外側面にもカーボンナノチューブ7を含有する金属膜6bが形成されている。
【0051】
絶縁基板11の成形時には、枠部11aの配線パターン12を形成する2辺に沿って設けたサイドゲート13を介して基材が供給される。
【0052】
また、絶縁基板11の表面に金属膜6、配線パターン12を形成するプロセスは、図3(a)〜(c)、図4(a)〜(d)に示される実施形態1と同様の処理が行われ、図4(a)(c)(d)の電気めっき処理においては、配線パターン12を形成した絶縁基板11の2辺に沿って設けたサイドゲート13を介して給電される。さらに、金属膜6にカーボンナノチューブ7を含有させる処理も実施形態1と同様に行われる。
【0053】
また、サイドゲート13を介して複数の絶縁基板1を1つの成形体で構成すれば、サイドゲート13に設けた配線パターン14を介して各絶縁基板1に給電することで、複数の絶縁基板1において同時に電気めっき処理が可能となる。そして、最後にサイドゲート13を切断して個片毎に分割することで、生産性が向上する。
【0054】
そして、立体回路部品A2は(図6(a))、ノイズ源となる電子部品22を上面に実装したプリント配線板21の上面に載置され、電子部品22は絶縁基板1の孔11b内に位置し、プリント配線板21上面の配線パターン23は、絶縁基板1の枠部11aの下面に形成した配線パターン12に半田H1を介して電気的に接続する(図6(b))。さらに、立体回路部品A2の上面には、ノイズ源となる電子部品25を下面に実装したプリント配線板24の下面が載置され、電子部品25は絶縁基板1の孔11b内に位置し、プリント配線板24下面の配線パターン26は、絶縁基板1の枠部11aの上面に形成した配線パターン12に半田H2を介して電気的に接続する(図6(c))。すなわち、プリント配線板21,24は、立体回路部品A2の配線パターン12を介して互いに電気的に接続されている。
【0055】
上記図6(c)の状態で、電子部品22,25は、立体回路部品A2の枠部11aの孔11b内に位置し、枠部11aの内側面、外側面に形成したカーボンナノチューブ7を含有する金属膜6a,6bによってその周囲を包囲されている。したがって、周囲を包囲する金属膜6a,6bとカーボンナノチューブ7の相乗効果によって電磁波ノイズに対する優れたシールド性を得ることができ、外部へ放出される電磁波ノイズを抑制できる。また、電子部品22,25の代わりにセンサ素子をプリント配線板21,24上に実装すれば、外部からの電磁波ノイズの干渉やノイズの重畳を防止することができる。
【0056】
このように、プリント配線板21,24に金属製のシールド部材を各々設ける必要がなく、1つの立体回路部品A2によって、プリント配線板21,24を互いに電気的に接続しながら小型化が可能になるとともに、プリント配線板21,24に実装している電子部品に対して優れたシールド性を得ることができる。
【0057】
(実施形態3)
図7、図8(a)(b)、図9は、本実施形態の立体回路部品A3の構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。なお、図8(a)は、図7のX3−X3’断面を示す。
【0058】
立体回路部品A3において、絶縁基板1の凹部2の底面上に設けた実装用端子3は、凹部2の底面を上下方向に貫通するスルーホール31を介して絶縁基板1の下面に設けた配線パターン32に電気的に接続している(図9の一部拡大図参照)。したがって、実施形態1では、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6a,6bを、配線パターン5を避けて絶縁基板1の内側面および外側面に形成していたが、本実施形態では、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6a,6bを、絶縁基板1の内側面および外側面の全面に亘って形成することができ、シールド効果がさらに向上する。
【0059】
なお、本実施形態では図8(b)に示すように、3つの実装用端子3を設けて、センサ素子4は各実装用端子3を介して電源線、信号線、GND線に接続している。
【0060】
(実施形態4)
図10、図11(a)(b)は、本実施形態の立体回路部品A4の構成を示しており、実施形態2と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。なお、図11(a)は、図10のX4−X4’断面を示す。
【0061】
立体回路部品A4は、絶縁基板11の枠部11aの上面および下面に接続用端子41,43を複数設け、各接続用端子41と各接続用端子43とは枠部11aを上下方向に貫通するスルーホール42を介して電気的に接続している(図11(b)の一部拡大図参照)。したがって、実施形態2では、絶縁基板11の枠部11aの上面、内側面、下面に配線パターン12を形成するために、枠部11aの内側面では配線パターン12を避けてカーボンナノチューブ7を含有する金属膜6aを形成していたが、本実施形態では、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6aを、枠部11aの内側面の全面に亘って形成することができ、シールド効果がさらに向上する。
【0062】
(実施形態5)
図12(a)(b)に示す立体回路基板A5は、実施形態1の立体回路基板A1において絶縁基板1の内側面、外側面だけでなく、絶縁基板1の凹部2の底面にも、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6dを形成したもので、さらなるシールド効果の向上を図ることができる。
【0063】
また、図13(a)(b)に示す立体回路基板A6は、実施形態3の立体回路基板A3において内側面、外側面だけでなく、絶縁基板1の凹部2の底面にも、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6dを形成したもので、さらなるシールド効果の向上を図ることができる。
【0064】
(実施形態6)
図14、図15(a)(b)は、本実施形態の立体回路部品A7の構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0065】
立体回路部品A7は、絶縁基板1の対向する2辺の外縁部の各上面において、その辺方向の略中央に凹部61を各々設け、配線パターン5が凹部61内を通って、絶縁基板1の内側面、外側面に連続するように形成されている。
【0066】
そして、凹部61を除く絶縁基板1の外縁部の上面全体には、カーボンナノチューブ7を含有する金属膜6cが、絶縁基板1の内側面、外側面の金属膜6a,6bに連続して形成されている。そして、金属製の蓋62が凹部2の開口を塞ぐように絶縁基板1の上面に配置され、この金属製の蓋62の下面は、絶縁基板1の外縁部の上面に設けた金属膜6cに半田H3を介して接続している。したがって、立体回路部品A7の金属膜6と蓋62とが同電位になり、シールド効果がさらに向上する。
【0067】
また、図15(a)に示すように、プリント配線板63上に、蓋62を覆設した立体回路部品A6を実装し、絶縁基板1の外側面に設けた金属膜6bをプリント配線板63のGND電位に半田H4を介して接続し、金属膜6、蓋62をプリント配線板63のGND電位と同電位にすることで、シールド効果はさらに一層向上する。
【0068】
さらに、本実施形態では、凹部61を除く絶縁基板1の外縁部の上面全体に金属膜6cを形成することで、金属膜6cと蓋62との接触面積を最大限にとっており、蓋62によるシールド機能を効果的にしている。
【0069】
(実施形態7)
図16は、本実施形態の立体回路部品A8の構成を示しており、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明は省略する。
【0070】
立体回路部品A8は、絶縁基板1の対向する2辺の外縁部の各上面において、その辺方向の略中央に凹部61を各々設け、配線パターン5が凹部61内を通って、絶縁基板1の内側面、外側面に連続するように形成されている。
【0071】
そして、金属製の蓋62が凹部2の開口を塞ぐように絶縁基板1の上面に配置され、この金属製の蓋62の下面は、絶縁基板1の外縁部の上面に設けた2箇所の金属膜6cに半田H5を介して接続している。したがって、立体回路部品A7の金属膜6と蓋62とが同電位になり、シールド効果がさらに向上する。
【0072】
また、この絶縁基板1の外縁部の上面に設けた2箇所の金属膜6cを、図4(a)(c)(d)の電気めっき処理における給電線として用いれば、給電線を別途設ける必要がなく、構造の単純化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態1の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【図2】(a)(b)同上の構成を示す断面図および平面図である。
【図3】(a)〜(c)同上の製造方法を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)同上の製造方法を示す断面図である。
【図5】実施形態2の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【図6】(a)〜(c)同上の使用形態を示す断面図である。
【図7】実施形態3の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【図8】(a)(b)同上の構成を示す断面図および平面図である。
【図9】同上の一部を示す拡大断面図である。
【図10】実施形態4の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【図11】(a)(b)同上の構成を示す断面図および一部拡大断面図である。
【図12】(a)(b)実施形態5の立体回路部品の構成を示す斜視図および平面図である。
【図13】(a)(b)同上の別の立体回路部品の構成を示す斜視図および平面図である。
【図14】実施形態6の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【図15】(a)(b)同上の構成を示す断面図および一部拡大図である。
【図16】実施形態7の立体回路部品の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
A1立体回路部品
1 絶縁基板
2 凹部
3 実装用端子
4 センサ素子
5 配線パターン
6 金属膜
7 カーボンナノチューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ源となる電子部品、またはノイズから遮断されることが必要な電子部品を包囲する内側面を設けた絶縁基板を備え、絶縁基板の少なくとも前記内側面にカーボンナノチューブを含む1層以上の金属膜を設けることを特徴とする立体回路部品。
【請求項2】
前記金属膜は、銅または銅を含む合金であることを特徴とする請求項1記載の立体回路部品。
【請求項3】
前記金属膜は、ニッケルまたはニッケルを含む合金であることを特徴とする請求項1記載の立体回路部品。
【請求項4】
前記絶縁基板は、カーボンナノチューブを含む前記金属膜を内側面に設けた凹部を形成されて、当該凹部の底面上に設けた前記電子部品を実装する実装用端子と、絶縁基板の外面に設けた配線パターンと、実装用端子と配線パターンとを接続するスルーホールとを備えることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の立体回路部品。
【請求項5】
前記絶縁基板は、カーボンナノチューブを含む前記金属膜を内側面および底面に設けた凹部を形成されて、当該凹部内に前記電子機器を配置することを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の立体回路部品。
【請求項6】
前記絶縁基板は、一面に開口を有する凹部を形成されて、当該凹部内に前記電子機器を配置し、凹部の内側面および絶縁基板の前記一面にカーボンナノチューブを含む前記金属膜を設け、
絶縁基板の前記一面には、凹部の開口を塞ぐとともに前記一面に設けた金属膜に接触する金属製の蓋を覆設することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の立体回路部品。
【請求項7】
前記絶縁基板の一面に設けた金属膜は、他の金属膜を形成するときに行う電気めっき処理の給電線として用いることを特徴とする請求項6記載の立体回路部品。
【請求項8】
絶縁基板の表面をプラズマ処理して表面の活性化を行った後、絶縁基板の表面を被覆する金属層を形成し、次に回路形成部分と非回路形成部分の境界領域にレーザ光を照射して境界領域の金属層を除去し、次に回路形成部分の金属層にめっき処理を施すことで金属膜を形成する立体回路部品の製造方法において、
ノイズ源となる電子部品、またはノイズから遮断されることが必要な電子部品を包囲する内側面を設けた絶縁基板の少なくとも前記内側面にカーボンナノチューブを含む1層以上の金属膜をめっき処理によって形成することを特徴とする立体回路部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−28200(P2008−28200A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199948(P2006−199948)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】