説明

立体映像の投影方法及び立体映像の投影装置

【課題】没入感の高い立体映像を提供することにより、視聴者を極めて容易に仮想空間に誘って、従来とは異なる映像体験を味わうことができる立体映像の投影方法及び立体映像の投影装置を提供する。
【解決手段】第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して見せることにより立体的に見える立体映像を映像投影装置でスクリーンに投影する立体映像の投影装置及び投影方法において、スクリーンは、内周面をスクリーン面とした円筒体とし、映像投影装置は、スクリーン面に対向させて複数設けるとともに、各映像投影装置によってそれぞれ投影される立体映像を、側縁部分を互いに重ね合わせながらスクリーン面における周方向に並べて投影し、周方向に一連とした立体映像を投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像の投影方法及び立体映像の投影装置に関するものであり、特に、水平方向に360°に連なった立体映像を投影可能とした立体映像の投影方法及び立体映像の投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、映像を立体的に見せる立体映像の投影方法がいろいろ提案されている。特に、昨今では、各種の機器の技術開発が促進されたことにより、古くから知られている青色のフィルムと赤色のフィルムを用いたいわゆる立体視メガネを用いたアナグラフだけでなく、三次元液晶表示装置や、液晶シャッターメガネを用いた立体映像の投影方法が提案されており、さらには、ホログラムによる立体映像の投影も実用レベルの技術となっている。なお、最近では、青色のフィルムと赤色のフィルムの換わりに、偏光条件が異なる二種類の偏光フィルタが設けられた立体視メガネが用いられることもある。
【0003】
ただし、このような立体映像の投影方法において、比較的安価で、かつ大人数に同時に視聴してもらえるシステムを構築する場合には、やはり立体視メガネを用いた投影方法がコスト的に優れており、プラネタリウムなどにおいて利用されていた。
【0004】
また、立体映像ではないが、凹球面状としたスクリーンに複数のプロジェクタから映像を投影して、高精細で立体感のある映像を表示させるシュミレーションライド装置も提案されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−132082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの投影方法で得られる立体映像は、立体的な映像として見ることはできるが、スクリーンあるいはディスプレイなどの端も見えたり、立体映像自体が小さかったりするために、その立体映像による擬似的な空間中への没入感が乏しかった。
【0006】
したがって、立体映像として表現された仮想空間に自分が存在しているという感覚を抱くことができず、結局は映画などのような一般的な二次元画像を視聴している状態と変わりがなかった。
【0007】
本発明者らは、このような現状に鑑み、没入感の高い立体映像を提供することにより、視聴者を極めて容易に仮想空間に誘って、従来とは異なる映像体験を味わうことができるようにすべく研究開発を行って、本発明を成すに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の立体映像の投影方法では、映像投影装置でスクリーンに重ね合わせて投影した左目用の映像と右目用の映像とからなる立体映像を、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して見せる立体映像の投影方法において、スクリーンを、内周面をスクリーン面とした円筒体とし、複数の映像投影装置を、スクリーン面にそれぞれ対向させて配置するとともに、それぞれが投影する立体映像をスクリーン面の周方向に沿って並べて投影させることにより周方向に一連とした立体映像を生成することとした。
【0009】
また、本発明の立体映像の投影装置では、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して見せることにより立体的に見える立体映像を映像投影装置でスクリーンに投影する立体映像の投影装置において、スクリーンは、内周面をスクリーン面として円筒状に設け、映像投影装置は、スクリーン面に対向させて複数設けるとともに、映像投影装置がそれぞれ投影する立体映像をスクリーン面における周方向に並べて投影し、周方向に一連とした立体映像を生成することとした。
【0010】
さらに、本発明の立体映像の投影装置では、以下の点にも特徴を有するものである。すなわち、
(1)映像投影装置は、スクリーン面に投影した立体映像の周方向側の側縁部分を重ね代映像として、周方向に隣り合わせて投影された立体映像の重ね代映像と互いに重ね合わせて投影すること。
(2)映像投影装置は、隣り合わせに投影される立体映像との位置合わせを行うために、スクリーン面に所定ピッチの格子状パターンとした位置合わせ用映像を投影させる調整モードを有し、位置合わせ用映像の周方向側の側縁部分に設けた重ね代映像部分には、格子パターンの少なくとも一部を欠損させた欠損領域を設けるとともに、欠損領域は、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像の欠損領域を備えた重ね代映像部分の格子パターンと重なり合う位置に設けたこと。
(3)左目用の映像と右目用の映像のいずれか一方の映像を投影する映像投影装置は、位置合わせ用映像における格子状パターンを第1の色で投影し、他方の映像を投影する映像投影装置は、位置合わせ用映像における格子状パターンを第2の色で、第1の色の格子パターンに重ね合わせて投影するとともに、第1の色の格子パターンとして投影された第1位置合わせ用映像における欠損領域には第2の色の格子パターンを投影し、第2の色の格子パターンとして投影された第2位置合わせ用映像における欠損領域には第1の色の格子パターンを投影して、第2の色の格子パターンが投影された欠損領域に、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像における第1の色の格子パターンが投影された欠損領域を重ね合わせ、第1の色の格子パターンが投影された欠損領域に、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像における第2の色の格子パターンが投影された欠損領域を重ね合わせること。
(4)映像投影装置で投影される各画像は、スクリーン面の周方向に複数に分割した分割画像データを結合して形成した連結画像データから生成した画像であること。
(5)第1の偏光フィルタの換わりに青色フィルタを用い、第2の偏光フィルタの換わりに赤色フィルタを用いたこと。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して、映像投影装置でスクリーンに重ね合わせて投影した左目用の映像と右目用の映像とからなる立体映像を見せる立体映像の投影方法及び投影装置において、スクリーンは内周面をスクリーン面とした円筒体とし、複数の映像投影装置を、スクリーン面にそれぞれ対向させて配置するとともに、それぞれが投影する立体映像をスクリーン面の周方向に沿って並べて投影させることによって、水平方向に360°に連なった立体映像を投影することができる。
【0012】
したがって、この立体映像の視聴者は、スクリーンを意識することなく立体映像の視聴できるので、立体映像による仮想空間への没入感を高めることができ、より現実感の高い疑似体験を得ることができる。
【0013】
しかも、スクリーン面は上下方向に所定の寸法を有しているにもかかわらず、スクリーン面に投影された立体映像によってスクリーン面よりも視聴者に近い側に存在するように見える物体によって、視覚上、上下方向の視野が拡張され、スクリーンの存在を意識させなくすることができ、視聴者の上方にスクリーンを設けることなく没入感の高い仮想空間を生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の立体映像の投影方法及び立体映像の投影装置では、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して、映像投影装置でスクリーンに重ね合わせて投影した左目用の映像と右目用の映像とからなる立体映像を見せるものであり、特に、スクリーンを、内周面をスクリーン面とした円筒体とし、複数の映像投影装置を、スクリーン面にそれぞれ対向させて配置するとともに、それぞれが投影する立体映像をスクリーン面の周方向に沿って並べて投影させて、周方向に一連とした立体映像を投影しているものである。
【0015】
すなわち、図1〜3に示すように、本発明の実施形態に係る立体映像の投影装置は、内周面をスクリーン面Sとする円筒体のスクリーン10と、スクリーン面Sに対向させて配置した複数の映像投影装置セット20とで構成している。
【0016】
ここで、映像投影装置セット20とは、1台ずつの左目用の映像を投影する第1映像投影装置20aと、右目用の映像を投影する第2映像投影装置20bで構成した2台1組の映像投影装置対であって、第1映像投影装置20aで投影した左目用の映像と、第2映像投影装置20bで投影した右目用の映像とをスクリーン面Sの同一の領域に重ね合わせることにより1つの立体映像を生成している。
【0017】
第1映像投影装置20a及び第2映像投影装置20bは、それぞれ一般的に「プロジェクタ」と呼ばれている透過型、半透過型、反射型などの液晶表示装置を用いた投影装置であり、それぞれ立体視メガネの第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタに対応した偏光処理を施す偏光フィルタを装着して、この偏光フィルタ越しにそれぞれ映像を投影して左目用の映像及び右目用の映像を生成している。
【0018】
本実施形態では、第1映像投影装置20aと第2映像投影装置20bの2台の映像投影装置を用いて1つの立体映像を生成しているが、可能であれば、例えば、2つの光源と、2つの液晶表示装置とを内蔵して左目用の映像と右目用の映像を生成するとともに、生成された左目用の映像と右目用の映像を重ね合わせて合成した後に投影する立体映像専用の映像投影装置を映像投影装置セット20の換わりに用いてもよい。
【0019】
また、本実施形態では、第1映像投影装置20aと第2映像投影装置20bを上下に重ねて配置しているが、左右に並べて配置してもよい。特に、左右に並べて配置した場合には、それぞれで発生した熱が他方に影響を与えるおそれがなく、第1映像投影装置20a及び第2映像投影装置20bの異常加熱を防止しやすくすることができる。
【0020】
本実施形態では、6つの映像投影装置セット20を設け、各映像投影装置セット20が、周方向に360°となっているスクリーンの60°分の領域にそれぞれ立体映像を投影させることとしている。
【0021】
各映像投影装置セット20から投影させる立体映像となる画像データは、図示しない管理装置で記憶及び管理しており、管理装置では所要の画像データをそれぞれ映像信号として出力し、この映像信号を所要の信号ケーブルを介して各映像投影装置セット20の第1映像投影装置20aと第2映像投影装置20bに入力して投影可能としている。
【0022】
管理装置は、パーソナルコンピュータなどの電子計算機であって、本実施形態では、互いに同期して動作可能とした3台のパーソナルコンピュータで構成している。各パーソナルコンピュータには、それぞれ4つの映像信号出力端子を設けて、3台で12の映像信号出力端子を設け、6つの映像投影装置セット20で構成される12台の映像投影装置20a,20bにそれぞれ所要の映像信号を出力可能としている。3台のパーソナルコンピュータはそれぞれ同期させて動作させていることにより、各映像信号出力端子から出力される映像信号を同期させて、映像投影装置20a,20b間でズレが生じることを防止している。
【0023】
各パーソナルコンピュータには、ハードディスクなどの記憶手段に映像信号に変換して出力させる画像データをそれぞれ記憶させており、各パーソナルコンピュータは、所要の画像データを順次映像信号に変換して各映像信号出力端子から出力している。
【0024】
特に、本実施形態では、記憶手段に画像データを記憶させる際に、4台分の映像投影装置20a,20bの画像データを合成した合成画像データとして記憶しており、映像信号への変換時に合成画像データから各画像データに分割する分割処理を行った後、映像信号への変換を行って各映像信号出力端子から出力している。
【0025】
各映像投影装置セット20は、図1に示すように、その映像投影装置セット20が立体映像を投影するスクリー面Sと対向したスクリーン面Sの上部に配置している。このように各映像投影装置セット20はスクリーン面Sの上部に配置することにより、映像投影装置セット20が邪魔となることがなく、しかも映像投影装置セット20で生じた熱を速やかに上方に逃がすことができ、スクリーン10内の空間に温度上昇が生じることを抑制できる。なお、スクリーン10は、各映像投影装置セット20を安定的に支持できるように、適宜の骨組みを備えている。なお、映像投影装置セット20は、スクリーン面Sの上部に配置する場合に限定するものではなく、可能であれば床に配設してもよい。
【0026】
円筒状のスクリーン10の内側には、視聴者用の座席30を設けている。なお、スクリーン10の一部には、スクリーンの内側への出入り用の入り口(図示せず)が設けられており、この入り口を閉塞する扉(図示せず)の内周面もスクリーンとしている。
【0027】
本実施形態では、座席20部分には、円筒状のスクリーン10と同心状に二段の円形状のステップ31を設け、各段にそれぞれ円弧状に座席30を設けている。本実施形態の座席30は、弾性部材が配設されたフレーム体で構成している。図1〜3中、32は手摺り、33はスロープである。
【0028】
このように構成した立体映像の投影装置で投影される映像は、スクリーン面が周面状となっているので、通常の投影方法では周方向に隣り合った立体映像のつなぎ目部分においの連続性が十分に保てていなかった。
【0029】
すなわち、6つの映像投影装置セット20で周方向に60°分ずつの立体映像を投影して周方向に立体映像を連ねた際に、映像投影装置セット20から通常の映像を単に投影しただけでは、周方向に並んだ6つの平面状のスクリーンにそれぞれ映像を投影していることと同じであり、隣り合った立体映像のつなぎ目部分をなめらかに連続させることができないことによって、つなぎ目部分において立体映像にズレや歪みが生じ、立体感自体が減殺されることとなっていた。
【0030】
そこで、1台の映像投影装置20の周方向の投影角をさらに小さくし、例えば周方向に30°以下として画像を投影することによって、隣り合った映像のつなぎ目部分において違和感のない立体映像が得られることが確認された。
【0031】
しかしながら、1台の映像投影装置20が周方向に30°分の映像を投影するということは、360°の一連の立体映像を表示するには12セット24台の映像投影装置20a,20bが必要となり、立体映像の投影装置が高コスト化するとともに、各映像投影装置セット20で投影する画像を各映像投影装置セット20の第1映像投影装置20aと第2映像投影装置20bに入力している管理装置の負荷が極めて増大することとなっていた。
【0032】
そこで、例えば、周方向に60°分ずつの立体映像を投影する1つの映像投影装置セット20が投影する画像を、周方向に30°分ずつの立体映像を投影するとした場合の隣り合った2つの画像を結合した画像として投影させることとした。本実施形態では、周方向に20°分ずつの立体映像3つで1つの映像投影装置セット20が投影する画像を生成した。
【0033】
ここで、1つの映像投影装置セット20で投影される画像データを「連結画像データ」と呼び、この連結画像データを生成するために用いた画像データ「分割画像データ」と呼ぶこととする。なお、本発明においては、映像投影装置セット20の第1映像投影装置20a及び第2映像投影装置20b内にそれぞれ設けられている液晶表示装置に表示されたものを「画像」と呼び、スクリーン面Sに表示されたものを「映像」と呼んでいる。
【0034】
各分割画像データを作成する際には、図4に示すように、分割画像データに基づいて生成される画像が投影されるスクリーン面Sの位置にそれぞれ矩形状の投影領域s1,s2,s3を想定して、映像投影装置20の投影点Pからの位置関係、すなわち投影方向に対する各投影領域s1,s2,s3の傾きを考慮して作成している。
【0035】
なお、映像投影装置20からスクリーン面Sまでの距離が十分大きい場合には、投影方向に対する各投影領域s1,s2,s3の傾きの差が小さくなるので、図5に示すように、通常の画像作成と同様に投影方向に対して垂直となっている投影領域s1,s2,s3をそれぞれ想定して各分割画像データを作成してもよい。
【0036】
また各分割画像データを作成する際には、各投影領域分の画像データを作成するのではなく、画像とした際に隣り合った分割画像データから生成された画像と重なり合う重ね代を設けるために、この重ね代分だけ各投影領域分よりも大きい領域の画像データを作成している。
【0037】
重ね代部分の画像データはそれぞれ輝度を適宜調整し、重ね代どうしで重なり合った状態で所定の輝度となるようにしている。
【0038】
本実施形態では、周方向に並ぶ3つの分割画像データを結合させて連結画像データとしており、この連結画像データが映像信号として管理装置から映像投影装置セット20の第1映像投影装置20aまたは第2映像投影装置20bに入力されてスクリーン面Sに立体映像として表示している。
【0039】
このとき、スクリーン面Sに表示された立体映像の周方向側の側縁部分には、前記の重ね代からなる重ね代映像が表示されており、周方向に隣り合わせて投影された立体映像の重ね代映像と互いに重ね合わせて投影することにより、隣り合った立体映像を一連の立体映像として違和感のないものとすることができる。
【0040】
前述したように、本実施形態では、分割画像データをスクリーン面Sの周方向の20°分として生成しているが、1つの映像投影装置セット20が周方向に60°分の立体映像を投影する場合には、分割画像データをスクリーン面Sの周方向に、1°分、2°分、3°分、4°分、5°分、6°分、10°分、12°分、15°分あるいは30°分として、必要数の分割画像データを結合して連結画像データを形成してもよい。
【0041】
また、重ね代映像は、各映像投影装置セット20がスクリーン面Sに投影する立体映像の周方向の10%程度が望ましく、連結画像データの生成時に、重ね代映像となる部分の画像データを適宜調整してよい。
【0042】
本実施形態の立体映像の投影装置は、隣り合った映像投影装置セット20から投影した立体映像を前述した重ね代映像部分で重ね合わせているものであり、一方の映像投影装置セット20が投影した立体映像における重ね代映像と、他方の映像投影装置セット20が投影した立体映像における重ね代映像の投影位置にズレが存在すると、適正な立体映像を投影できないおそれがある。
【0043】
そこで、管理装置には、各映像投影装置セット20から所定ピッチとした格子状パターンの映像である位置合わせ用映像をスクリーン面Sに投影させる調整モードを設けている。
【0044】
特に、この位置合わせ用映像を投影する調整モードでは、映像投影装置セット20における第1映像投影装置20aは格子状パターンを第1の色で投影し、第2映像投影装置20bは格子状パターンを第2の色で投影するとともに、第1の色の格子状パターンと、第2の色の格子状パターンとを重ね合わせて投影して、第1映像投影装置20aと第2映像投影装置20bのそれぞれの投影位置が重なるように調整している。
【0045】
ここで、第1の色と第2の色とは異なる色であることが望ましく、本実施形態では、例えば第1の色を青色とし、第2の色を赤色として、第1の色の格子状パターンと、第2の色の格子状パターンとが重なり合った際に白色の格子状パターンとなるようにしている。
【0046】
隣り合った立体映像の位置合わせのために、図6(a)に示すように、第1の色の格子状パターンとして投影された第1映像投影装置20aの位置合わせ用映像には、周方向側の側縁部分に設けた重ね代映像40部分に第1欠損領域41を設けている。本実施形態では、第1欠損領域41は、重ね代映像40部分における位置合わせ用映像の中心寄りの略半分の領域であって短冊状に設けている。
【0047】
さらに、図6(b)に示すように、第2の色の格子状パターンとして投影された第2映像投影装置20bの位置合わせ用映像にも、周方向側の側縁部分に設けた重ね代映像40部分に第2欠損領域42を設けている。本実施形態では、第2欠損領域42は、重ね代映像40部分における位置合わせ用映像の周方向の側縁寄りとした略半分の領域であって短冊状に設けている。
【0048】
このように、第1欠損領域41及び第2欠損領域42を設けることにより、隣り合った映像投影装置セット20の各第1映像投影装置20aは、互いの第1欠損領域41に他方の重ね代映像40の格子状パターンを重ね合わせることができ、この欠損領域における格子状パターンの重ね合わせによって隣り合う立体映像の位置合わせを行っている。
【0049】
特に、本実施形態では、第1映像投影装置20aの位置合わせ用映像と、第2映像投影装置20bの位置合わせ用映像とを重ね合わせることにより、図6(c)に示すように、重ね代映像40部分における第1欠損領域41には赤色の格子状パターンを投影し、重ね代映像40部分における第2欠損領域42には青色の格子状パターンを投影する位置合わせ用映像を生成している。
【0050】
このように重ね代映像40部分に青色の格子状パターンと赤色の格子状パターンを設けた位置合わせ用映像を各映像投影装置セット20から投影させることにより、隣り合った一方の位置合わせ用映像の青色の格子状パターンに他方の位置合わせ用映像の赤色の格子状パターンを重ね合わせることができ、同様に、隣り合った一方の位置合わせ用映像の赤色の格子状パターンに他方の位置合わせ用映像の青色の格子状パターンを重ね合わせることができる。
【0051】
したがって、隣り合った映像投影装置セット20でそれぞれ投影した位置合わせ用映像において位置ズレが生じていない場合には、白色となった格子状パターンをムラなく投影することができ、正しく位置調整されていることを確認することができる。
【0052】
一方、隣り合った映像投影装置セット20でそれぞれ投影した位置合わせ用映像において位置ズレが生じていた場合には、位置ズレ部分で白色の格子状パターンを投影できていないことにより、その位置ズレ部分を極めて容易に視認でき、高精度な調整を可能とすることができる。
【0053】
したがって、隣り合った立体映像の間を移動する映像を違和感なく投影させることができる。
【0054】
前述したように、本実施形態では、立体視メガネに第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを用いる場合について説明したが、第1の偏光フィルタの換わりに青色フィルタを用い、第2の偏光フィルタの換わりに赤色フィルタを用いた立体視メガネを用いて立体映像を投影してもよい。ただし、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを用いた立体視メガネでは、カラー映像の立体映像を視聴することができるが、青色フィルタと赤色フィルタを用いた立体視メガネでは、モノクロ映像の立体映像しか視聴できない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る立体映像の投影装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る立体映像の投影装置の概略平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る立体映像の投影装置の概略縦断面図である。
【図4】分割画像データの作成方法の説明図である。
【図5】分割画像データの作成方法の説明図である。
【図6】調整モードでスクリーン面に投影される位置合わせ用映像の説明図である。
【符号の説明】
【0056】
S スクリーン面
10 スクリーン
20 映像投影装置セット
20a 第1映像投影装置
20b 第2映像投影装置
30 座席
31 ステップ
32 手摺り
33 スロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像投影装置でスクリーンに重ね合わせて投影した左目用の映像と右目用の映像とからなる立体映像を、第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して見せる立体映像の投影方法において、
前記スクリーンを、内周面をスクリーン面とした円筒体とし、
複数の前記映像投影装置を、前記スクリーン面にそれぞれ対向させて配置するとともに、それぞれが投影する前記立体映像を前記スクリーン面の周方向に沿って並べて投影させることにより周方向に一連とした立体映像を生成する
ことを特徴とする立体映像の投影方法。
【請求項2】
第1の偏光フィルタと第2の偏光フィルタを配設した立体視メガネを通して見せることにより立体的に見える立体映像を映像投影装置でスクリーンに投影する立体映像の投影装置において、
前記スクリーンは、内周面をスクリーン面として円筒状に設け、
前記映像投影装置は、前記スクリーン面に対向させて複数設けるとともに、前記映像投影装置がそれぞれ投影する立体映像を前記スクリーン面における周方向に並べて投影し、
周方向に一連とした立体映像を生成することを特徴とする立体映像の投影装置。
【請求項3】
前記映像投影装置は、前記スクリーン面に投影した立体映像の周方向側の側縁部分を重ね代映像として、周方向に隣り合わせて投影された立体映像の重ね代映像と互いに重ね合わせて投影することを特徴とする請求項2に記載の立体映像の投影装置。
【請求項4】
前記映像投影装置は、隣り合わせに投影される前記立体映像との位置合わせを行うために、前記スクリーン面に所定ピッチの格子状パターンとした位置合わせ用映像を投影させる調整モードを有し、
前記位置合わせ用映像の周方向側の側縁部分に設けた重ね代映像部分には、前記格子パターンの少なくとも一部を欠損させた欠損領域を設けるとともに、
前記欠損領域は、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像の欠損領域を備えた重ね代映像部分の前記格子パターンと重なり合う位置に設けた
ことを特徴とする請求項3に記載の立体映像の投影装置。
【請求項5】
左目用の映像と右目用の映像のいずれか一方の映像を投影する映像投影装置は、前記位置合わせ用映像における前記格子状パターンを第1の色で投影し、
他方の映像を投影する映像投影装置は、前記位置合わせ用映像における前記格子状パターンを第2の色で、前記第1の色の格子パターンに重ね合わせて投影するとともに、
前記第1の色の格子パターンとして投影された第1位置合わせ用映像における欠損領域には前記第2の色の格子パターンを投影し、
前記第2の色の格子パターンとして投影された第2位置合わせ用映像における欠損領域には前記第1の色の格子パターンを投影して、
前記第2の色の格子パターンが投影された欠損領域に、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像における第1の色の格子パターンが投影された欠損領域を重ね合わせ、
前記第1の色の格子パターンが投影された欠損領域に、隣り合わせに投影される位置合わせ用映像における第2の色の格子パターンが投影された欠損領域を重ね合わせる
ことを特徴とする請求項4に記載の立体映像の投影装置。
【請求項6】
前記映像投影装置で投影される各画像は、前記スクリーン面の周方向に複数に分割した分割画像データを結合して形成した連結画像データから生成した画像であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の立体映像の投影装置。
【請求項7】
前記第1の偏光フィルタの換わりに青色フィルタを用い、前記第2の偏光フィルタの換わりに赤色フィルタを用いたことを特徴とする請求項6に記載の立体映像の投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−287120(P2008−287120A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133562(P2007−133562)
【出願日】平成19年5月19日(2007.5.19)
【特許番号】特許第4166260号(P4166260)
【特許公報発行日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(501267313)株式会社 システム・プロ (6)
【Fターム(参考)】