説明

立体表示システム

【課題】表示装置に対して眼鏡の表面を水平に配置したまま回転する際、コントラスト及び色の変化が小さい立体表示システムが求められている。
【解決手段】右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置と、表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッターとを備えた眼鏡とを含み、前記表示装置と前記眼鏡とがともに、位相差板を有し、表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種が、式(1)を充足する位相差板である立体表示システム。Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示システムとしては、例えば、右眼用画像と左眼用画像とを時間的に交互に表示する表示装置と、当該表示装置により表示される各眼用画像が表示されるタイミングに同期して開閉するシャッター機能を有する眼鏡とを含む立体表示システムが知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】ディスプレイ技術年鑑2010 P.158(日経BP社発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の立体表示システムは、表示装置に対して眼鏡の表面を水平に配置したまま回転する際、コントラスト及び色の変化が大きいという点(角度依存性)で、十分満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明である。
1.右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置と、表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッター眼鏡とを含み、
前記表示装置と前記眼鏡とがともに、位相差板を有し、
表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種が、式(1)を充足する位相差板である立体表示システム。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
2.表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板の両方が、式(1)を充足する位相差板である1.記載の立体表示システム。
3.表示装置が、直線偏光を円偏光へ変換する位相差板を有する装置であり、かつ眼鏡が、円偏光を直線偏光に変換する位相差板を有する装置である1.又は2.記載の立体表示システム。
4.式(1)を充足する位相差板が、重合性液晶化合物を重合して得られる位相差板、及びフィルムを延伸して得られる位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種である1.〜3.のいずれか記載の立体表示システム。
【0006】
5.重合性液晶化合物が、式(A)で表される化合物である4.記載の立体表示システム。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数Nπは、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する1価の基を表す。]
6.Lが式(B)で表される基であり、かつLが式(C)で表される基である5.記載の立体表示システム。
−F−(B−A−E− (B)
−F−(B−A−E− (C)
[式(B)及び(C)中、B、B、E及びEは、それぞれ独立に、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−又は単結合を表す。kが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。kが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
及びFは、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は、重合性基を表す。
は、水素原子又は重合性基を表す。]
【0007】
7.Arが、式(Ar−6)で表される基である5.又は6.記載の立体表示システム。

[式(Ar−6)中、Zは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−NR、−SRを表す。nが2以上の整数である場合、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−S−、−O−又は−NR−を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。]
8.G及びGが、ともにシクロヘキサン−1,4−ジイル基である5.〜7.のいずれか記載の立体表示システム。
9.重合性基が、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である5.〜8.のいずれか記載の立体表示システム。
【0008】
10.フィルムが、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位を含むフィルムである4.記載の立体表示システム。
11.フィルムが、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位、並びにカルバゾール骨格、フルオレン骨格、ベンゾチアゾール骨格及びナフタレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する重合性化合物に由来する構造単位を含むフィルムである4.又は10.記載の立体表示システム。
【0009】
12.表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッター眼鏡であり、かつ式(1)を充足する位相差板を有する立体表示システム用眼鏡。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
13.位相差板が、式(A)で表される化合物を重合して得られる位相差板である12.記載の立体表示システム用眼鏡。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、1価の基有機基を表し、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する1価の基を表す。]
14.式(1)を充足する位相差板が、フィルムを延伸して得られる位相差板である12.記載の立体表示システム用眼鏡。
【0010】
15.右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置であり、式(1)を充足する位相差板を有する立体表示システム用表示装置。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
16.式(1)を充足する位相差板が、式(A)で表される化合物を重合して得られる位相差板である15.記載の立体表示システム用表示装置。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、有機基を表す。ただし、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する基である。]
17.式(1)を充足する位相差板が、フィルムを延伸して得られる位相差板である15.記載の立体表示システム用表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の立体表示システムによれば、コントラスト及び色の角度依存性を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る半透過型液晶表示装置31Aを示す概略図である。
【図2】本発明に係る半透過型液晶表示装置31Aを示す別の概略図である。
【図3】本発明に係る液晶表示装置51を示す概略図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置以外のフラットパネル表示装置61を示す概略図である。
【図5】本発明に係る液晶表示装置71Aを示す概略図である。
【図6】本発明に係る液晶表示装置71Bを示す概略図である。
【図7】本発明に係る液晶表示装置71Cを示す概略図である。
【図8】本発明に係る立体表示システム用眼鏡91を示す概略図である。
【図9】本発明に係る立体表示システム用眼鏡96を示す概略図である。
【図10】本発明の実施例における評価条件を示す図である。
【図11】本発明の実施例における評価条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置と、表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッター眼鏡とを含み、
前記表示装置と前記眼鏡とがともに、位相差板を有し、
表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板らなる群から選ばれる少なくとも1種が、式(1)を充足する位相差板である立体表示システムである。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
すなわち、本発明の立体表示システムは、表示装置及び眼鏡からなる群から選ばれる少なくとも1種が、式(1)を充足する位相差板を有する装置である立体表示システムである。
【0014】
右眼用画像とは、右眼により視認されるべき画像情報を意味し、左眼用画像とは、左眼により視認されるべき画像情報を意味する。
液晶シャッター眼鏡は、液晶セルの駆動により、表示装置から出射される光を透過または不透過とする眼鏡であり、前記表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する。ここで、”同期して動作する”とは、表示装置が右眼用画像を表示した場合には、観察者の右眼で当該右眼用画像が観察されるよう、当該眼鏡の右眼側は、表示装置から出射される光を透過するとともに、左眼側は、表示装置から出射される光を不透過とする一方で、表示装置が左眼用画像を表示した場合には、観察者の左眼で当該左眼用画像が観察されるよう、当該眼鏡の左眼側は、表示装置から出射される光を透過するとともに、右眼側は、表示装置から出射される光を不透過とすることを意味する。
【0015】
本発明の表示システムでは、表示装置と眼鏡とがともに、位相差板を有する。
本明細書において、位相差板とは、光を透過し得る物体であって、光学的な機能を有する物体をいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。位相差板は、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したりするために用いられる。
位相差板は、基板上に形成されたものであってもよい。また、フィルム状の位相差板であってもよい。
【0016】
表示装置としてはブラウン管方式表示装置、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置等が挙げられる
【0017】
表示装置は、右眼用の画像と左眼用の画像を高速で交互に切り替えて表示する。画像の切り替え速度(画像の表示周期)は、観察者が観察する画像に自然な連続性を感じる程度が望ましく、切り替え速度が30Hz未満であると、観察者は、観察する画像に自然な連続性を感じにくくなるため、表示装置は30Hz以上の画像切り替え速度で、右眼用画像と左眼用画像とを交互に切り替えて表示することが可能な表示装置であることが望ましい。
【0018】
液晶シャッター眼鏡は、液晶シャッター機能を有する眼鏡である。液晶シャッターは、表示装置の画像切り替えに応じて動作し、観察者の両眼に届ける画像情報を、制御するものである。液晶シャッターは、液晶シャッターが閉じた状態、つまり、表示装置から出射される光を不透過とする場合には、表示装置から出射される光に対して、十分な遮光性を有しており、かつ表示装置の高速な画像切り替えに同期して動作しうる高速応答性を有することが望ましい。
前記液晶シャッターとしては、偏光板2枚に挟まれた液晶セル、及び観察者側に1枚の偏光板を配置した液晶セルが挙げられる。3Dクロストークを低減するという点で、前者の偏光板2枚に挟まれた液晶セルが好ましく、観察者によって観察される画像の輝度の点で、観察者側に1枚の偏光板を配置した液晶セルが好ましい。
【0019】
本発明の立体表示システムに含まれる表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種は、式(1)を充足する。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
以下、式(1)を充足する位相差板を「位相差板(1)」という場合がある。
前記表示装置、前記眼鏡またはその両方が有する位相差板が、式(1)を充足することにより、一様の偏光変換が可能なため、観察者により観察される画像のコントラスト及び色の角度依存性が小さくすることができる。
【0020】
観察者が、立体表示用の眼鏡を通して、立体表示装置により表示される画像を観察する場合、当該立体表示装置の正面に観察者が位置していても、観察者が首を曲げたり、横になったりすると、観察者により観察される画像のコントラストや色が変化する。本明細書では、このような、観察角度により、コントラストや色が変化することを、「角度依存性を有する」といい、観察角度によって、コントラストや色の変化が小さいことを、「角度依存性が小さい」という。
本発明の立体表示システムは、表示装置が有する位相差板が位相差板(1)であり、眼鏡が有する位相差板は位相差板(1)でない立体表示システム、表示装置が有する位相差板が位相差板(1)ではない位相差板であり、眼鏡が有する位相差板が位相差板(1)である表立体示システム、および、表示装置が有する位相差板が位相差板(1)であり、眼鏡が有する位相差板も位相差板(1)である立体表示システムを含む。
【0021】
中でも、表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板の両者が、位相差板(1)である立体表示システムが好ましい。表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板の両者が、位相差板(1)であると、観察者によって観察される画像のコントラスト及び色の角度依存性がさらに小さくなる。
【0022】
位相差板(1)の位相差値は、50〜500nmであり、好ましくは100〜300nmである。
位相差板(1)が、広帯域λ/4板である場合、Re(549)は113〜163nmが好ましく、120〜140nmがより好ましく、122〜138nmがさらに好ましい。広帯域λ/2板である場合、Re(549)は250〜300nmが好ましく、好ましくは270〜280nmがより好ましく、273〜277nmがさらに好ましい。
位相差値が前記の値であると、広範の波長の光に対し、一様に偏光変換できる傾向があり、好ましい。
ここで、広帯域λ/4板とは、各波長の光に対し、その1/4の位相差値を発現する位相差板であり、広帯域λ/2板とは、各波長の光に対し、その1/2の位相差値を発現する位相差板である。
本明細書において、50〜500とは、50以上500以下を意味する。
【0023】
表示装置が、直線偏光を円偏光へ変換する位相差板を有する装置であり、かつ眼鏡が、円偏光を直線偏光に変換する位相差板を有する装置であることが好ましい。表示装置の発する画像情報を円偏光に変換して眼鏡に届けることで、コントラスト及び色の角度依存性を小さくすることができる。
【0024】
位相差板(1)の膜厚は、0.1〜100μmであることが好ましい。
位相差値Re(ν)(νは波長を表す。)は、複屈折率と膜厚との積であることから、前記の範囲で膜厚を変化させることにより調整することができる。
【0025】
本発明の立体表示システムの表示装置は、さらに偏光板を有することが好ましく、位相差板(1)を含む円偏光板を有する表示装置であることがより好ましい。λ/4板として位相差値を調整した位相差板(1)と偏光板とを組合せることによって、円偏光板を作製することができる。位相差板(1)の位相差値Re(549)を、113〜163nm、好ましくは120〜140nm、さらに好ましくは122〜138nmに調整することでλ/4板とすることができる。
【0026】
[円偏光板]
本発明の立体表示システムの液晶シャッター眼鏡は、さらに偏光板を有することが好ましく、位相差板(1)を含む円偏光板を有する液晶シャッター眼鏡であることが好ましい。
前記円偏光板は、λ/4板として位相差を調整した位相差板(1)と、偏光板とを組合せることによって、作製することができる。位相差板(1)の位相差Re(549)を、113〜163nm、好ましくは120〜140nm、さらに好ましくは122〜138nmに調整することでλ/4板とすることができる。
【0027】
偏光板としては、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。
【0028】
円偏光板は、位相差板(1)と偏光板とを、位相差板(1)の遅相軸方向と偏光板の吸収軸方向とが40〜50度、好ましくは42〜48度の角度をなすように配置することによって作製することができる。円偏光板を構成する位相差板と偏光板とは、接合剤を用いて貼合されていることが好ましい。接合剤としては、位相差値をもたない接合剤が好ましい。
【0029】
本発明の立体表示システムが、位相差板(1)を有する表示装置及び位相差板(1)を有する液晶シャッター眼鏡を含む場合、表示装置の位相差板(1)の波長分散性及び眼鏡位相差板(1)の波長分散性は、互いに近いものが好ましい。
【0030】
図1は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、半透過型液晶表示装置31Aを示す概略図である。図2は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、半透過型液晶表示装置31Bを示す概略図である。半透過型表示装置31A及び31Bは、反射モード及び/又は透過モードで駆動されることができる表示装置である。
【0031】
半透過型液晶表示装置31Aは、位相差板(1)を有する表示装置であり、バックライト32、偏光板33、位相差板34、基材35、画素36、液晶層37、前面透明電極38、カラーフィルタ39(ただし、カラーフィルタは、必ずしも必要ない)、偏光板40、基材41及び位相差板(1)42を含み、バックライト32が半透過型液晶表示装置の背面側に来るように配置され、さらに、バックライト32側(背面側)から、偏光板33、位相差板34、基材35、画素36、液晶層37、前面透明電極38、カラーフィルタ39、偏光板40、基材41、位相差板(1)42の順に配置された装置である。
【0032】
半透過型液晶表示装置31Bは、位相差板(1)を有する表示装置であり、バックライト32、偏光板33、位相差板34、基材35、画素36、液晶層37、前面透明電極38、偏光板40、カラーフィルタ39、基材41および位相差板(1)42を含み、バックライト32が半透過型液晶表示装置の背面側に来るように配置され、バックライト32側(背面側)から、偏光板33、位相差板34、基材35、画素36、液晶層37、前面透明電極38、偏光板40、カラーフィルタ39(ただし、カラーフィルタは、必ずしも必要ない)、基材41、位相差板(1)42の順に配置された装置である。
半透過型液晶表示装置31A及び31Bは、いずれも基材41を含むが、基材41を含まない半透過型液晶表示装置であってもよい。
【0033】
画素36は、第1及び第2のサブ画素に副分割され、第1の副画素を反射サブ画素と呼び、第2のサブ画素を透過サブ画素と呼ぶ。第1のサブ画素は、反射部を兼ねる、アルミニウムホイル等から製造される背面反射電極部36Aを含み、第2のサブ画素は、例えばITO等から製造される透明の背面透明電極部36Bを有する。従って、背面反射電極部36Aは反射画素部であり、背面透明電極部36Bは透過画素部である。
【0034】
図3〜7は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、フラットパネル表示装置を示す概略図である。
図3は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置51を示す概略図である。液晶表示装置51は、位相差板(1)を有し、さらに、バックライト52、偏光板53、液晶セル54および偏光板55を含み、バックライト52が液晶表示装置の背面側に来るよう配置され、バックライト52側(背面側)より順番に、偏光板53、液晶セル54、偏光板55、位相差板(1)56を含む構成である。液晶セル54の前後に偏光板53及び偏光板55配置され、バックライト52側とは反対側(前面側)の偏光板55の、液晶セル54に対する面とは反対側に、位相差板(1)56が設けられている。
図4は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置以外のフラットパネル表示装置61を示す概略図である。液晶表示装置以外のフラットパネル表示装置61としては、有機EL表示装置、プラズマ表示装置表示装置、フィールドエミッション表示装置(FED)、SED方式平面型表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。これらの表示装置は出射光が偏光ではないため、従来のフラットパネル表示装置62の前面の出射側に、偏光板63を設置し、偏光板63の従来のフラットパネル表示装置62とは反対側に位相差板(1)64を設置することにより、立体表示が可能となる。
【0035】
図5〜7は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置71A〜71Cを示す概略図である。液晶表示装置71A〜71Cは、液晶セルの外側に偏光板を配置する構成もあるが、セル内に偏光板及び位相差板(1)を配置することにより、立体表示のクロストークを軽減することができる。
【0036】
図5は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置71Aを示す概略図である。液晶表示装置71Aは、バックライト72、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、カラーフィルタ79、偏光板82、位相差板(1)80及び基材81を含み、バックライト72が、液晶表示装置の背面側に来るよう配置され、さらに、バックライト72側(背面側)から、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、カラーフィルタ79(ただし、カラーフィルタは、必ずしも必要ない)、偏光板82、位相差板(1)80、基材81の順に配置されている。
【0037】
図6は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置71Bを示す概略図である。液晶表示装置71Bは、バックライト72、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、偏光板82、位相差板(1)80、カラーフィルタ79及び基材81を含み、バックライト72が液晶表示装置の背面側に来るよう配置され、バックライト72側(背面側)から、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、偏光板82、位相差板(1)80、カラーフィルタ79(ただし、カラーフィルタは、必ずしも必要ない)、基材81の順に配置されている。
【0038】
図7は、本発明に係る立体表示システムを構成する表示装置の一つである、液晶表示装置71Cを示す概略図である。液晶表示装置71Cは、バックライト72、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、偏光板82、カラーフィルタ79、位相差板(1)80、基材81を含み、バックライト72が液晶表示装置の背面側に来るよう配置され、さらに、バックライト72側(背面側)から、偏光板73、公知の位相差板74、基材75、背面電極76、液晶層77、前面透明電極78、偏光板82、カラーフィルタ79(ただし、カラーフィルタは、必ずしも必要ない)、位相差板(1)80、基材81の順に配置されている。
液晶表示装置71A、71B及び71Cは、いずれも基材81を含むが、基材81を含まない液晶表示装置であってもよい。
【0039】
図8は、本発明に係る立体表示システム用眼鏡の一つである、立体表示システム用眼鏡91を示す概略図である。立体表示システム用眼鏡91は、観察者が眼鏡を掛けた際の最前面側(すなわち表示装置側)に位相差板(1)92を配し、その背面に偏光板93、液晶セル94、偏光板95を含む構成である。
【0040】
図9は、本発明に係る立体表示システム用眼鏡の一つである、立体表示システム用眼鏡96を示す概略図である。立体表示システム用眼鏡96は、観察者が眼鏡を掛けた際の最前面側(すなわち表示装置側)に位相差板(1)92を配し、その背面に液晶セル94、偏光板95を含む構成である。
【0041】
本発明の立体表示システムとしては、例えば、図1〜図7に示す表示装置のいずれか一つと、図8または図9に示す立体表示システム用眼鏡とを組み合わせたシステムが挙げられる。また、図1〜図7に示す表示装置のいずれか一つであって、該表示装置における位相差板(1)が、位相差板(1)以外の位相差板、つまり、式(1)を充足しない位相差板である表示装置と、図8または図9に示す立体表示システム用眼鏡とを組み合わせたシステムも挙げられる。さらに、図1〜図7に示す表示装置のいずれか一つと、図8または図9に示す立体表示システム用眼鏡であって、該眼鏡における位相差板(1)が、位相差板(1)以外の位相差板、つまり、式(1)を充足しない位相差板である眼鏡とを組み合わせたシステムも挙げられる。
【0042】
位相差板(1)は、式(1)を充足する位相差板であればよい。かかる位相差板(1)は、重合性液晶化合物を重合することにより得られる位相差板(以下「位相差板(a)」という場合がある)及びフィルムを延伸することにより得られる位相差板(以下「位相差板(b)」という場合がある)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
位相差板(a)としては、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」という場合がある)を重合して得られる位相差板が好ましい。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基(−CH−)は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、1価の基有機基を表し、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する1価の基を表す。]
【0044】
位相差板(a)は、化合物(A)を含む組成物を基板に塗布し、該組成物中の化合物(A)を含む重合性成分を重合することにより得られる。該組成物には、化合物(A)は単独で用いてもよいし、異なる複数の種類の化合物(A)を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
Arは、芳香環を有する2価の基であり、本明細書において、「芳香環」は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環を含む。Arは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する2価の基であることが好ましい。該2価の基に含まれる芳香環のπ電子の合計数Nπは、12以上22以下であり、好ましくは13以上22以下である。
【0046】
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環等が挙げられ、芳香族複素環としては、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環及びベンゾチアゾール環等が挙げられる。中でも、ベンゼン環、チアゾール環又はベンゾチアゾール環が好ましい。
【0047】
Arとしては、例えば式(Ar−1)〜式(Ar−13)で表される2価の基が挙げられる。
【0048】
【化1】

【0049】
[式(Ar−1)〜式(Ar−13)中、Zは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
及びQは、それぞれ独立に、−CR10−、−S−、−NR−、−CO−又は−O−を表す。
及びR10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
、Y及びYは、それぞれ独立で置換基を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基又は1価の芳香族複素環基を表す。
及びWは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表す。
mは、0〜6の整数を表す。
nは、0〜2の整数を表す。]
【0050】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0051】
炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0052】
炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec−ブチルスルフィニル基、tert−ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基、ヘキシルスルフィニル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルフィニル基がより好ましく、メチルスルフィニル基が特に好ましい。
【0053】
炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、tert−ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキルスルホニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基がより好ましく、メチルスルホニル基が特に好ましい。
【0054】
炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のフルオロアルキル基がより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0055】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0056】
炭素数1〜6のアルキルスルファニル基としては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec−ブチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のアルキルスルファニル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキルスルファニル基がより好ましく、メチルスルファニル基が特に好ましい。
【0057】
炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基としては、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−イソプロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−イソブチルアミノ基、N−sec−ブチルアミノ基、N−tert−ブチルアミノ基、N−ペンチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のN−アルキルアミノ基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基がより好ましく、N−メチルアミノ基が特に好ましい。
【0058】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基としては、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N,N−ジプロピルアミノ基、N,N−ジイソプロピルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N,N−ジイソブチルアミノ基、N,N−ジペンチルアミノ基、N,N−ジヘキシルアミノ基等が挙げられる。中でも炭素数2〜8のN,N−ジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基がより好ましく、N,N−ジメチルアミノ基が特に好ましい。
【0059】
炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基としては、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−sec−ブチルスルファモイル基、N−tert−ブチルスルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜4のN−アルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数1〜2のN−アルキルスルファモイル基がより好ましく、N−メチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0060】
炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジイソプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジイソブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基等が挙げられる。中でも炭素数2〜8のN,N−ジアルキルスルファモイル基が好ましく、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルスルファモイル基がより好ましく、N,N−ジメチルスルファモイル基が特に好ましい。
【0061】
式(Ar−1)〜(Ar−13)中のZは、特にハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、メチルスルホニル基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−メチルスルファモイル基又はN,N−ジメチルスルファモイル基であることが好ましい。
【0062】
及びR10における炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。中でも炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0063】
式(Ar−1)〜(Ar−13)中のQは、−S−、−CO−、−NH−又は−N(CH)−であることが好ましく、Qは、−S−又は−CO−であることが好ましい。
【0064】
、Y及びYを表す1価の芳香族炭化水素基及び1価の芳香族複素環基としては、単環系芳香族炭化水素基、単環系芳香族複素環基、多環系芳香族炭化水素基及び多環系芳香族複素環基が挙げられる。
1価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が挙げられる。中でもフェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。1価の芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも一つ含む炭素数4〜20の芳香族複素環基が挙げられる。中でもフリル基、チエニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基が好ましい。
【0065】
かかる1価の芳香族炭化水素基及び1価の芳香族複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基及び炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前述したZにおけるものと同様のものが挙げられる。
【0067】
前記置換基としては、中でもハロゲン原子、炭素数1〜2のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜2のアルキルスルホニル基、炭素数1〜2のフルオロアルキル基、炭素数1〜2のアルコキシ基、炭素数1〜2のアルキルスルファニル基、炭素数1〜2のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜4のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜2のアルキルスルファモイル基が好ましい。
【0068】
1価の単環系芳香族炭化水素基又1価のは単環系芳香族複素環基としては、例えば式(Y−1)〜式(Y−6)で表される基が挙げられる。
【0069】
【化2】

【0070】
[式(Y−1)〜式(Y−6)中、*は結合手を表し、Zは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
は、0〜5の整数、aは、0〜4の整数、bは、0〜3の整数、bは、0〜2の整数、Rは、水素原子又はメチル基を表す。]
【0071】
におけるハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基又は炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前述したZにおけるものと同様のものが挙げられる。
【0072】
としては、特にハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましい。
【0073】
、Y及びYは、それぞれ独立に、式(Y−1)又は式(Y−3)で表される基であることが、製造工程やコストの点で特に好ましい。
【0074】
1価の多環系芳香族炭化水素基又は1価の多環系芳香族複素環基としては、例えば式(Y−1)〜式(Y−7)で表される基が挙げられる。
【0075】
【化3】

【0076】
[式(Y−1)〜式(Y−7)中、*は結合手を表し、Zは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基を表す。
及びVは、それぞれ独立に、−CO−、−S−、−NR11−、−O−、−Se−又は−SO−を表す。
〜Wは、それぞれ独立に、 −CH=又は−N=を表す。
ただし、V、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N、O又はSeを含む基を表す。
11は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
aは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
bは、それぞれ独立に、0〜2の整数を表す。]
【0077】
さらに、式(Y−1)〜式(Y−7)で表されるいずれかの基は、式(Y−1)〜式(Y−6)で表される基であることが好ましい。
【0078】
【化4】

【0079】
[式(Y−1)〜式(Y−6)中、*、Z、a、b、V、V及びWは、前記と同じ意味を表す。]
【0080】
としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、カルボキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。
ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基及び炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基としては、前述したZにおけるものと同様のものが挙げられる。
【0081】
としては、中でもハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、ニトロソ基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N−ジメチルアミノ基又はN−メチルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0082】
さらに、V及びVは、それぞれ独立に、−S−、−NR11−又は−O−であることが好ましく、W〜Wは、それぞれ独立に、−CH=又は−N=である。
また、V、V及びW〜Wのうち少なくとも1つは、S、N又はOを含む基を表すことが好ましい。
aは0又は1であることが好ましく、bは0であることが好ましい。
【0083】
Arとしては、具体的に下記の基が例示される。
例えば、式(Ar−1)〜式(Ar−4)で表される基の具体例としては、式(ar−1)〜式(ar−29)で表される基等が挙げられる。
【0084】
【化5】

【0085】
【化6】

【0086】
【化7】

【0087】
【化8】

【0088】
【化9】

【0089】
【化10】

【0090】
式(Ar−5)で表される基の具体例としては、式(ar−30)〜式(ar−39)で表される基等が挙げられる。
【0091】
【化11】

【0092】
【化12】

【0093】
式(Ar−6)又は式(Ar−7)で表される基の具体例としては、式(ar−40)〜式(ar−119)で表される基等が挙げられる。
【0094】
【化13】

【0095】
【化14】

【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
【化27】

【0109】
【化28】

【0110】
式(Ar−8)又は式(Ar−9)で表される基の具体例としては、式(ar−120)〜式(ar−129)で表される基等が挙げられる。
【0111】
【化29】

【0112】
【化30】

【0113】
式(Ar−10)で表される基の具体例としては、式(ar−130)〜式(ar−149)で表される基等が挙げられる。
【0114】
【化31】

【0115】
【化32】

【0116】
【化33】

【0117】
【化34】

【0118】
式(Ar−11)で示される基の具体例としては、式(ar−150)〜式(ar−159)で示される基等が挙げられる。
【0119】
【化35】

【0120】
【化36】

【0121】
式(Ar−12)で表される基の具体例としては、式(ar−160)〜式(ar−179)で表される基等が挙げられる。
【0122】
【化37】

【0123】
【化38】

【0124】
【化39】

【0125】
【化40】

【0126】
式(Ar−13)で示される基の具体例としては、式(ar−180)〜式(ar−189)で示される基等が挙げられる。
【0127】
【化41】

【0128】
【化42】

【0129】
化合物(A)におけるArとしては、化合物を合成しやすいため、また位相差の波長分散性をしやすいため、特に式(Ar−6)で表される2価の基であることが好ましい。
【0130】
式(A)中のD及びDは、*−O−CO−、*−O−C(=S)−、*−O−CR−、*−NR−CR−又は*−NR−CO−(*はArとの結合手を表わす。)であることが好ましい。D及びDが、*−O−CO−、*−O−C(=S)−又は*−NR−CO−(*はArとの結合手を表す。)であることがより好ましい。
【0131】
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0132】
式(A)中のG及びGとしては、式(g−1)〜式(g−10)で示されるヘテロ原子を含んでもよい2価の脂環式炭化水素基が挙げられ、5員環又は6員環の2価の脂環式炭化水素基であることが好ましい。
【0133】
【化43】

【0134】
上記式(g−1)〜(g−10)で示される基に含まれる水素原子は、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜4のフルオロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1〜4のフルオロアルコキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0135】
及びGとしては、式(g−1)で表される6員環からなる1価の脂環式炭化水素基であることが好ましい。中でも、G及びGがともにシクロヘキサン−1,4−ジイル基であることがより好ましく、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイル基であることが特に好ましい。
【0136】
式(A)中のL及びLは1価の有機基であり、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する1価の基である。
有機基Lは式(B)で表される基であり、Lは式(C)で表される基であることが好ましい。
−F−(B−A−E− (B)
−F−(B−A−E− (C)
[式(B)及び(C)中、B、B、E及びEは、それぞれ独立に、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−又は単結合を表す。kが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。kが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
及びFは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は、重合性基を表す。
は、水素原子又は重合性基を表す。]
【0137】
及びAにおける炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基としては、前記式(g−1)〜式(g−10)で表される5員環又は6員環等からなる脂環式炭化水素基や、下記式(a−1)〜式(a−8)で表される2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0138】
【化44】

【0139】
なお、A及びAとして、前記例示された基に含まれる水素原子は、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基又はエトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメトキシ基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子又は臭素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0140】
及びAとしては、それぞれ独立に、単環の1,4−フェニレン基又はシクロヘキサン−1,4−ジイルであることが好ましく、特に、化合物(A)の製造が容易なことから、1,4−フェニレン基であることが好ましい。さらに、A及びAとしては、化合物(A)の製造が容易となる傾向にあることから、同種類の基であることが好ましい。
【0141】
及びBは、化合物(A)の製造が容易となる傾向にあることから同種類の基であることが好ましい。また、化合物(A)の製造がより容易となることから、Aのみと結合しているB、及びAのみと結合しているBが、それぞれ独立に、−CH−CH−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、−NH−CO−、−O−CH−、−CH−O−又は単結合であることが好ましい。特に、高い液晶性を示すことから、−CO−O−又は−O−CO−であることが好ましい。さらに、Fと結合しているB、及びFと結合しているBが、それぞれ独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NH−、−NH−CO−又は単結合であることがより好ましい。
【0142】
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すことが好ましく、k及びlは0〜2であることがより好ましい。k及びlの合計は、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。k及びlが上記の範囲であると、液晶性を示しやすいことから、好ましい。
【0143】
及びFは、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましい。特に、無置換のアルキレン基が好ましい。該アルキレン基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基又はハロゲン原子に置換されていてもよい。また、該アルキレン基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−に置換されていてもよい。
【0144】
は重合性基であり、Pは、水素原子又は重合性基である。得られる位相差板の硬度が優れる傾向にあることから、P及びPがともに重合性基であるとことが好ましい。
【0145】
ここで重合性基とは、化合物(A)を重合させることのできる置換基を意味し、具体的には、ビニル基、ビニルオキシ基、スチリル基、p−(2−フェニルエテニル)フェニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、アセチル基、ヒドロキシ基、カルバモイル基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、アミノ基、オキシラニル基、オキセタニル基、ホルミル基、イソシアナト基又はイソチオシアナト基等が例示される。
重合性基としては、光重合させるのに適したラジカル重合性基、カチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上に製造も容易となる傾向にあることから、アクリロイル基、メタクロイル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が好ましい。中でも重合性基が、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基であることが好ましく、特にアクリロイルオキシ基であることが好ましい。
【0146】
が式(B)で表される基である場合の*−D−G−L(*は、Arとの結合手を示す。)の具体例としては、下記式(R−1)〜式(R−120)及び式(R−129)〜式(R−131)で表される基等が挙げられる。Lが式(C)で表される基である場合の*−D−G−L(*は、Arとの結合手を示す。)の具体的例としては、下記式(R−1)〜式(R−134)で表される基等が挙げられる。
なお、式(R−1)〜式(R−134)におけるnは2〜12の整数を表す。
【0147】
【化45】

【0148】
【化46】

【0149】
【化47】

【0150】
【化48】

【0151】
【化49】

【0152】
【化50】

【0153】
【化51】

【0154】
【化52】

【0155】
【化53】

【0156】
【化54】

【0157】
【化55】

【0158】
【化56】

【0159】
化合物(A)は、式(5)及び式(6)を満たす化合物であることが好ましい。
(Nπ−4)/3<k+l+4 (5)
12≦Nπ≦22 (6)
[式(5)及び式(6)中、Nπは、Arが有する芳香環に含まれるπ電子の数を表す。k及びlは、式(B)及び(C)におけるものと同じ意味を表す。]
【0160】
化合物(A)としては、例えば、下記化合物(i)〜化合物(xxxiv)が挙げられる。なお、表1中のR1は、−D−G−Lを、R2は、−D−G−Lを表す。
【0161】
【表1】

【0162】
上記表1中、化合物(xvii)は、Arが式(ar−78)で示される基である化合物又はArが式(ar−79)で示される基である化合物あるいはArが式(ar−78)で示される基である化合物と式(ar−79)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。
【0163】
上記表1中、化合物(xxx)は、Arが式(ar−120)で示される基である化合物又はArが式(ar−121)で示される基である化合物あるいはArが式(ar−120)で示される基である化合物と式(ar−121)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。同じく、化合物(xxxi)は、Arが式(ar−122)で示される基である化合物又はArが式(ar−123)で示される基である化合物あるいはArが式(ar−122)で示される基である化合物と式(ar−123)で示される基である化合物との混合物のいずれかであることを意味する。
【0164】
表1の化合物の具体例としては、例えば以下のような化合物が挙げられる。下記に化合物(i)、化合物(ii)、化合物(iv)、化合物(v)、化合物(vi)、化合物(ix)、化合物(x)、化合物(xi)、化合物(xvi)、化合物(xviii)、化合物(xix)、化合物(xx)、化合物(xxi)、化合物(xxiii)、化合物(xxiv)、化合物(xxv)、化合物(xxvi)、化合物(xxvii)、化合物(xxviii)及び化合物(xxix)の代表的な構造式を例示する。
【0165】
【化57】

【0166】
【化58】

【0167】
【化59】

【0168】
【化60】

【0169】
【化61】

【0170】
【化62】

【0171】
さらに、化合物(A)として、例えば以下のものが例示される。
【0172】
【化63】

【0173】
【化64】

【0174】
【化65】

【0175】
【化66】

【0176】
【化67】

【0177】
【化68】

【0178】
【化69】

【0179】
【化70】

【0180】
【化71】

【0181】
【化72】

【0182】
さらに、化合物(A)としては、式(A1−1)〜式(A68−8)で表される化合物も挙げられる。該式中、*は結合手を表し、例えば式(A1−1)で表される化合物は、下記のように表される化合物である。
【0183】
【化73】

【0184】
【化74】

【0185】
【化75】

【0186】
【化76】

【0187】
【化77】

【0188】
【化78】

【0189】
【化79】

【0190】
【化80】

【0191】
【化81】

【0192】
【化82】

【0193】
【化83】

【0194】
【化84】

【0195】
【化85】

【0196】
【化86】

【0197】
【化87】

【0198】
【化88】

【0199】
【化89】

【0200】
【化90】

【0201】
【化91】

【0202】
【化92】

【0203】
【化93】

【0204】
【化94】

【0205】
【化95】

【0206】
【化96】

【0207】
【化97】

【0208】
【化98】

【0209】
【化99】

【0210】
【化100】

【0211】
【化101】

【0212】
【化102】

【0213】
【化103】

【0214】
【化104】

【0215】
【化105】

【0216】
【化106】

【0217】
【化107】

【0218】
【化108】

【0219】
【化109】

【0220】
【化110】

【0221】
【化111】

【0222】
【化112】

【0223】
【化113】

【0224】
【化114】

【0225】
【化115】

【0226】
【化116】

【0227】
【化117】

【0228】
【化118】

【0229】
【化119】

【0230】
【化120】

【0231】
【化121】

【0232】
【化122】

【0233】
【化123】

【0234】
【化124】

【0235】
【化125】

【0236】
【化126】

【0237】
【化127】

【0238】
【化128】

【0239】
【化129】

【0240】
【化130】

【0241】
【化131】

【0242】
【化132】

【0243】
【化133】

【0244】
【化134】

【0245】
【化135】

【0246】
【化136】

【0247】
【化137】

【0248】
【化138】

【0249】
【化139】

【0250】
【化140】

【0251】
化合物(A)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の
有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0252】
例えば、化合物(A)のD及びDが*−O−CO−である場合には、式(1−1)
【0253】

[式中、Arは上記と同一の意味を表わす。]
で示される化合物と式(1−2)
【0254】

[式中、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表わす。]
で示される化合物とを反応させることにより、式(1−3)
【0255】

[式中、Ar、G、E、A、B、F、P及びkは上記と同一の意味を表わす。]
で示される化合物を得て、得られた式(1−3)で示される化合物と式(1−4)
【0256】

[式中、G、E、A、B、F、P及びlは上記と同一の意味を表わす。]
で示される化合物とを反応させることにより製造することができる。
【0257】
式(1−1)で示される化合物と式(1−2)で示される化合物との反応及び式(1−3)で示される化合物と式(1−4)で示される化合物との反応は、エステル化剤の存在下に実施することが好ましい。
【0258】
エステル化剤としては、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメト−パラ−トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(一部水溶性カルボジイミド:WSCとして市販されている)、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、等のカルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾール、1,1’−オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1(4−ニトロベンゼンスルフォニル)−1H−1、2、4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート、N−(1,2,2,2−テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N−カルボベンゾキシスクシンイミド、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O−(6−クロロベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2−ブロモ−1−エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2−クロロ−1−メチルピリジニウムアイオダイド、2−クロロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、2−フルオロ−1−メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステ等が挙げられる。中でも、反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、エステル化剤としてはジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、2,2’−カルボニルビス−1H−イミダゾールが好ましい。
【0259】
化合物(A)を含む組成物は、化合物(A)とは異なる液晶化合物を含んでいてもよい。
前記液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子、3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)、6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料に記載された化合物等が挙げられる。
なかでも、重合性基を有していてかつ液晶性を示す化合物が好ましい。
前記液晶化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0260】
液晶化合物としては、例えば、式(6)で表される化合物(以下「化合物(6)」という場合がある)等が挙げられる。
【0261】
11−E11−(B11−A11−B12−G (6)
[式(6)中、A11は、炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基又は炭素数3〜18の2価の脂環式炭化水素基を表し、該芳香族炭化水素基及び該脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、フルオロ基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基又はで置換されていてもよい。
11及びB12は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
Gは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、炭素数1〜13のフルオロアルキル基、炭素数1〜13のN−アルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基又は−E12−P12を表す。
11及びE12は、炭素数1〜18のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置き換わっていてもよい。
11及びP12は、重合性基を表す。
tは、1〜5の整数を表す。tが2以上の整数である場合、複数のB11及びA11は、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0262】
11及びP12としては、化合物(A)のP及びPと同様の基が挙げられる。より低温での硬化が可能であることから光重合性基が好ましく、ラジカル重合性基又はカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、化合物(6)の製造も容易であることから、式(P−1)〜(P−5)で表される基が好ましい。

【0263】
[式(P−1)〜(P−5)中、R17〜R21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。*は、B11との結合手を表す。]
【0264】
中でも、P11及びP12としては、ビニル基、プロペニル基、オキシラニル基、メチルオキシラニル基、オキセタニル基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0265】
11の芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基又は1,4−フェニレン基が好ましい。
【0266】
11及びE12としては、炭素数1〜18のアルカンジイル基であり、直鎖状であるか分岐が1箇所である炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。
【0267】
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基、ドデカンジイル基、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−及び−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−等が挙げられる。
【0268】
化合物(6)のうち、例えば、tが4であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(I−1)〜式(I−4)で表される化合物が挙げられ、
tが4であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(II−1)〜式(II−4)で表される化合物が挙げられ、
tが3であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(III−1)〜式(III−26)で表される化合物が挙げられ、
tが3であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(IV−1)〜式(IV−19)表される化合物が挙げられ、
tが2であり、かつGが−E12−P12である化合物の具体例として式(V−1)及び式(V−2)で表される化合物が挙げられ、
tが2であり、かつGが−E12−P12以外の基である化合物の具体例として式(VI−1)〜式(VI−6)で表される化合物等が挙げられる。ただし、式中k1及びk2は、2〜12の整数を表す。これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されている等、入手が容易であることから好ましい。
【0269】

【0270】

【0271】

【0272】

【0273】

【0274】

【0275】

【0276】

【0277】
液晶化合物の含有量は、例えば液晶化合物と化合物(A)との合計量100質量部に対して、0〜90質量部であり、好ましくは0〜70質量部である、さらに好ましくは0〜40質量部である。
【0278】
本発明の立体表示システムを構成する表示装置及び/又は眼鏡が有する位相差板(1)の波長分散特性は、位相差板(1)における化合物(A)に由来する構造単位の含有量及び液晶化合物に由来する構造単位の含有量によって、決定することができる。位相差板(1)における化合物(A)に由来する構造単位の含有量を増加させると、より高い逆波長分散特性を示す。
【0279】
具体的には、化合物(A)に由来する構造単位の含有量が異なる組成物を2〜5種類程度調製し、それぞれの組成物について後述するように、同じ膜厚の位相差板を製造して得られる位相差板の位相差値を求め、その結果から、化合物(A)に由来する構造単位の含有量と位相差板の位相差値との相関を求め、得られた相関関係から、上記膜厚における位相差板に所望の位相差値を与えるために必要な化合物(A)に由来する構造単位の含有量を決定すればよい。
【0280】
〔重合開始剤〕
化合物(A)を含む組成物(以下「組成物(A)」という場合がある)は、さらに重合開始剤を含有する組成物であることが好ましい。重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましく、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。重合開始剤を含有することで、位相差板の耐久性が向上する傾向があり、好ましい。
【0281】
光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジルケタール等のベンジルケタール類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニル−2,2−ジメトキシ−1−エタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−2−モルホリノ−1−(4−メチルスルファニルフェニル)プロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジルブタン−1−オン等のα−アミノケトン類、ヨードニウム塩又はスルホニウム塩等が挙げられる。イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン(株)製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学(株)製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬(株)製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152又はアデカオプトマーSP−170(以上、全て(株)ADEKA製)等市販されている光重合開始剤を使用することもできる。
【0282】
また重合開始剤の含有量は、例えば化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは、0.5質量部〜10質量部である。
【0283】
組成物(A)は、さらに重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤及び有機溶剤等を含有していてもよい。
【0284】
〔重合禁止剤〕
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2、6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0285】
重合禁止剤を用いることにより、化合物(A)等の重合を制御することができ、得られる位相差板の安定性を向上させることができる。また重合禁止剤の使用量は、例えば化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0286】
〔光増感剤〕
光増感剤としては、例えばキサントン及びチオキサントン等のキサントン類、アントラセン及びアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン類、フェノチアジン或いはルブレンを挙げることができる。
【0287】
光増感剤を用いることにより、化合物(A)等の重合を高感度化することができる。また光増感剤の使用量としては、化合物(A)100質量部に対して、例えば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0288】
〔レベリング剤〕
レベリング剤としては、有機変性シリコーンオイル系、ポリアクリレート系、パーフルオロアルキル系等が挙げられる。具体的には、例えば、DC3PA、SH7PA、DC11PA、SH28PA、SH29PA、SH30PA、ST80PA、ST86PA、SH8400、SH8700、FZ2123(以上、全て東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341、X22−161A、KF6001(以上、全て信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF−4446、TSF4452、TSF4460(以上、全てモメンティブ パフォーマンス マテリアルズ ジャパン合同会社製)、フロリナート(商品名)FC−72、同FC−40、同FC−43、同FC−3283(以上、全て住友スリーエム(株)製)、メガファック(商品名)R−08、同R−30、同R−90、同F−410、同F−411、同F−443、同F−445、同F−470、同F−477、同F−479、同F−482、同F−483(以上、いずれもDIC(株)製)、エフトップ(商品名)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(以上、全て三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(商品名)S−381、同S−382、同S−383、同S−393、同SC−101、同SC−105、KH−40、SA−100(以上、全てAGCセイミケミカル(株)製)、商品名E1830、同E5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)、BM−1000、BM−1100、BYK−352,BYK−353,BYK−361N(いずれも商品名:BM Chemie社製)等が挙げられる。これらレベリング剤は2種類以上を併用して使用してもよい。
【0289】
レベリング剤を用いることにより、位相差板を平滑化することができる。さらに位相差板の製造過程で、組成物(A)の流動性を制御したり、化合物(A)等を重合して得られる位相差板の架橋密度を調整したりすることができる。またレベリング剤の使用量の具体的な数値は、例えば化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0290】
〔有機溶剤〕
有機溶剤としては、化合物(A)等、組成物(A)の構成成分を溶解し得る有機溶剤であり、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル又はフェノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶剤;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;クロロホルム又はクロロベンゼン等の塩素系溶剤;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。特に本発明の組成物は相溶性に優れ、アルコール、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、非塩素系脂肪族炭化水素溶剤及び非塩素系芳香族炭化水素溶剤等にも溶解し得ることから、クロロホルム等の塩素系溶剤を用いなくとも、溶解して塗工させることができる。
【0291】
組成物(A)における固形分の濃度は、5〜50質量%である。固形分の濃度が5質量%以上であると、位相差板が薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償に必要な複屈折率が与えられる傾向がある。また50質量%以下であると、組成物(A)の粘度が低いことから、位相差板の膜厚にムラが生じにくくなる傾向があることから好ましい。ここで、固形分とは、組成物(A)全量から溶剤を除いた量のことをいう。
組成物(A)の粘度は、0.1〜10mPa・sが好ましく、0.1〜7mPa・sであることがさらに好ましい。この範囲であると、均一に塗工することができる。
【0292】
位相差板(a)の製造方法について、以下に説明する。
位相差板(a)は、組成物(A)を、基板に塗布し、乾燥し、重合することにより、基板上に目的の位相差板を得ることができる。
【0293】
[未重合フィルム調製工程]
基板の上に、組成物(A)を塗布し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。該基板上には、配向膜が形成されていてもよい。未重合フィルムがネマチック相等の液晶相を示す場合、得られる位相差板は、モノドメイン配向による複屈折性を有する。
【0294】
基板への塗布方法としては、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法又はダイコーティング法等が挙げられる。またディップコーター、バーコーター又はスピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0295】
上記基板としては、例えばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム又は透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム又はポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0296】
例えば位相差板(a)の貼合工程、運搬工程、保管工程等、位相差板の強度が必要な工程でも、基板を用いることにより、破れ等なく容易に取り扱うことができる。
【0297】
また、配向膜を形成した基板上に組成物(A)を塗布することが好ましい。配向膜は、組成物(A)の塗布時に、混合液に溶解しない溶剤耐性を持つこと、溶剤の除去や液晶の配向の加熱処理時に、耐熱性をもつこと、ラビング時に、摩擦等による剥がれ等が起きないことが好ましく、ポリマー又はポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。
【0298】
上記ポリマーとしては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0299】
またこれらのポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ又はプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート又は乳酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン又はメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;ペンタン、ヘキサン又はヘプタン等の非塩素系脂肪族炭化水素溶剤;トルエン又はキシレン等の非塩素系芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム又はクロロベンゼン等の塩素系溶媒;等が挙げられる。これら有機溶剤は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0300】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)又はオプトマー(登録商標、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0301】
このような配向膜を用いれば、複屈折の面内ばらつきが小さくなるため、フラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きな位相差板を提供できるという効果を奏する。
【0302】
上記基板上に配向膜を形成する方法としては、例えば上記基板上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールすることにより、上記基板上に配向膜を形成することができる。
【0303】
このようにして得られる配向膜の厚さは、例えば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、化合物(A)等を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0304】
またこれら配向膜は、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行うことができる。これらにより化合物(A)等を所望の方向に配向させることができる。
【0305】
配向膜をラビングする方法としては、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
【0306】
上記の通り、未重合フィルム調製工程では、任意の基板の上に積層した配向膜上に未重合フィルム(液晶層)を積層する。それゆえ、液晶セルを作製し、該液晶セルに液晶化合物を注入する方法に比べて、生産コストを低減することができる。さらにロールフィルムでのフィルムの生産が可能である。
【0307】
溶剤の乾燥は、重合を進行させるとともに行ってもよいが、重合前にほとんどの溶剤を乾燥させることが、成膜性の点から好ましい。
【0308】
溶剤の乾燥方法としては、例えば自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。未重合フィルムを加熱乾燥する場合、具体的な加熱温度としては、0〜250℃が好ましく、50〜220℃がより好ましく、80〜170℃がさらに好ましい。また加熱時間としては、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度及び加熱時間が上記範囲内であれば、上記基板として、耐熱性が必ずしも十分ではない基板を用いることができる。
【0309】
[未重合フィルム重合工程]
未重合フィルム重合工程では、上記未重合フィルム調製工程で得られた未重合フィルムを重合し、硬化させる。これにより化合物(A)の配向性が固定化されたフィルム、すなわち重合フィルムとなる。従って、熱による複屈折への影響を受けにくくすることができる。
【0310】
未重合フィルムを重合させる方法は、化合物(A)等の種類に応じて、選択することができる。化合物(A)に含まれるP及び/又はP等の重合性基が光重合性であれば光重合、該重合性基が熱重合性であれば熱重合により、上記未重合フィルムを重合することができる。位相差板(a)においては、光重合により未重合フィルムを重合させることが好ましい。光重合によれば低温で未重合フィルムを重合させることができるので、より耐熱性の低い基板も選択することができる。また工業的にも製造が容易となる。また成膜性の観点からも光重合が好ましい。光重合は、未重合フィルムに可視光、紫外光又はレーザー光を照射することにより行う。取り扱いやすいという点から、紫外光が特に好ましい。光照射は、組成物(A)が液晶相をとる温度に加温しながら行ってもよい。この際、マスキング等によって重合フィルムをパターニングすることもできる。
【0311】
位相差板(a)の製造方法において、上記工程に続いて、基板を剥離する工程を含んでいてもよい。このような構成とすることにより、得られる積層体は、配向膜と位相差板(a)とからなるフィルムとなる。また上記基板を剥離する工程に加えて、配向膜を剥離する工程をさらに含んでいてもよい。このような構成とすることにより、位相差板(a)を得ることができる。
【0312】
位相差板(a)の位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(30)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、膜厚d及び複屈折率Δn(λ)を調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (30)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0313】
膜厚dは、未重合フィルム調製工程において、組成物(A)の固形分濃度や塗布量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように調製することができる。位相差板(a)の厚み(膜厚d)は、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.5〜5μmであることがより好ましい。ここで、位相差板(a)の厚みとは、組成物(A)がなす層の厚みを意味する。
また複屈折率Δn(λ)は、未重合フィルム重合工程において、重合時の露光量、加熱温度、加熱時間適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように調製することができる。
【0314】
かくして得られた本発明の立体表示システムに含まれる位相差板(a)は、式(1)を満たす光学特性を有する。従って、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【0315】
位相差板(b)は、フィルムを延伸することにより得られる。
フィルムは、樹脂(B1)を含む組成物(以下「組成物(B)」という場合がある)を成膜することで得ることができる。組成物(B)は、重合性モノマー(B2)及び重合性モノマー(B2)に由来する構造単位を有する樹脂(ただし樹脂(B1)とは異なる)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましく、さらに光重合開始剤(B3)を含むことがより好ましい。
【0316】
樹脂(B1)としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン及びポリウレタンウレア等が挙げられる。組成物(B)が樹脂(B1)を含むことにより、得られるフィルムに、ポリエステルに由来する構造単位、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリアミドに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位等を導入することができる。
中でも、フィルムは、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位を含むフィルムであることが好ましい。これらの構造単位を含むと、位相差発現性、耐久性、耐光性の面で優れるため、好ましい。
【0317】
ポリウレタンとしては、例えば、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物(以下「ポリオール」という場合がある)と、2つ以上のイソシアナト基を有する化合物(以下「ポリイソシアネート」という場合がある)とを反応させて得られるものが挙げられる。さらに、ヒドロキシ基含有アクリル化合物を反応させてもよい。
ポリウレタンウレアとしては、例えば、ポリオールと、ポリイソシアネートと、2つ以上のアミノ基を有する化合物(以下「ポリアミン」という場合がある)とを反応させて得られるものが挙げられる。さらに、ヒドロキシ基含有アクリル化合物を反応させてもよい。
【0318】
ポリオールとしては、好ましくはポリスチレン換算でGPCによる数平均分子量1000〜5000のものである。例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0319】
ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、一部をカルボジイミド化されたジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリ
レンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0320】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、メチルジアミノシクロヘキサン、ビペラジン等が挙げられる。
【0321】
ヒドロキシ基含有アクリル化合物としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等が挙げられる。
【0322】
ポリウレタンウレアの製造方法としては、ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとヒドロキシ基含有アクリル化合物とを反応せしめればよく、各試剤の混合順序は特に限定されるものではない。例えば、ポリイソシアネートとポリアミンとを反応させて末端イソシアネートのポリウレアプレポリマーを得、次いで該ポリウレアプレポリマーとポリオール、ヒドロキシ基含有アクリル化合物を反応させる方法、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて末端イソシアネートのウレタンプレポリマーを得、次いで該ポリウレアプレポリマーとポリアミン、ヒドロキシ基含有アクリル化合物とを反応させる方法等が挙げられる。ポリオールとポリイソシアネートとポリアミンとヒドロキシ基含有アクリル化合物との反応は、無溶媒で行うこともできるし、有機溶媒中で行うこともできるし、水中で行うことができる。通常は、有機溶媒中で行われ、反応温度は、好ましくは20〜120℃であり、より好ましくは30〜100℃である。反応時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0323】
ポリオール、ポリアミン、ヒドロキシ基含有アクリル化合物の活性水素原子含有基と、ポリイソシアネートとのイソシアナト基の当量比は特に制限されるものではないが、通常0.5:1〜1:0.5である。例えばポリウレタンウレア樹脂の製造方法としてポリオールとポリイソシアネートとを予め反応させて末端イソシアナト基のウレタンプレポリマーを得、次いでこれとポリアミン、ヒドロキシ基含有アクリル化合物とを反応させる方法を採用する場合には、通常ポリオールのヒドロキシ基とポリイソシアネートのイソシアナト基の当量比が1:1.1〜1:3となるように、各試剤の使用量を調整して、反応を行って、末端イソシアナト基のウレタンプレポリマーを得、次いで得られた該ウレタンプレポリマーのイソシアナト基とポリアミン、ヒドロキシ基含有アクリル化合物の活性水素原子の当量比が1:0.6〜1:1.2となるように、各試剤の使用量を調整して、反応を行う。ポリウレタンウレア樹脂の製造方法に際しては、必要に応じて第三級アミン系触媒又は/及び有機金属系触媒を使用して反応を促進することができる。前記有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブ、酢酸セロソルブ、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、イソプロパノール等が挙げられる。
【0324】
ポリウレタンウレアの重量平均分子量は、7万〜11万が好ましい。上記範囲内であると、良好な生産性及び加工性を確保し、より薄膜で、所望とする複屈折率の耐熱性の高い位相差板(b)を得ることが可能になる。
【0325】
ポリウレタンウレアの分子量制御方法について説明する。ポリウレタンウレアの分子量は、ポリオール(A)、ポリアミン(C)、水酸基含有アクリル化合物(D)の活性水素原子含有基の当量比と、ポリイソシアネート(B)とのイソシアネート基の当量比により適宜制御すればよい。具体的には、例えば、上記記載の0.5:1〜1:0.5を、1:1により近づけるほどポリウレタンウレアは高分子量となり、1:1からより離れるほどポリウレタンウレアは低分子量となる。ポリウレタンウレアの分子量は、下記の分子量測定条件を用いて機器分析することにより容易に確認可能である。
<分子量測定条件>
・使用機器名 東ソー株式会社 HLC-8220 GPC・ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、分子量既知の標準ポリスチレンの検量線を利用して測定したポリスチレン換算の重量平均分子量・溶離液 テトラヒドロフラン
・流量 1mL/分
・検出 示査屈折計(RI)
【0326】
ポリウレタンウレアが、ウレタンウレア樹脂溶剤溶液 タイフォース CSシリーズ 未変性タイプ 品番:CS−S−207(商品名、DIC(株)製)、ウレタンウレア樹脂溶剤溶液 タイフォース CSシリーズ 未変性タイプ 品番:CS−S−208(商品名、DIC(株)製)又はウレタンウレア樹脂溶剤溶液 タイフォース CSシリーズアクリロイル基導入タイプ 品番:CS−S−65(商品名、DIC(株)製)であることが好ましい。なお、これらのDIC(株)開発上市品は、優れた透明性、優れたUV架橋性及び優れた耐久性(耐熱性、耐湿熱性、耐アルカリ性等)を特徴として有するものである。
【0327】
ポリウレタンウレアに由来する構造単位の含有量は、位相差板(b)に含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%とした場合、例えば10〜100質量%、好ましくは30〜98質量%、特に好ましくは50〜95質量%である。上記範囲内であると、位相差板が広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましい。
【0328】
組成物(B)は、重合性モノマー(B2)及び重合性モノマー(B2)に由来する構造単位を有する樹脂(ただし樹脂(B1)とは異なる)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
重合性モノマー(B2)としては、式(I)及び式(II)で表されるモノマー(以下「モノマー(I)、モノマー(II)」という場合がある)からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマー(以下「モノマー(1)」という場合がある)に由来する構造単位を有することが好ましい。モノマー(I)に由来する構造単位を有すると、得られる位相差板(b)が広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましく、モノマー(II)に由来する構造単位を有すると、得られる位相差板(b)の光弾性係数が小さいため、応力による複屈折の発現が極めて小さく、貼合後の偏光板の収縮等による位相差値変化が原因とされる光抜けを抑制し、光学的ムラのないフィルムを得ることが可能になることから好ましい。すなわち、モノマー(I)に由来する構造単位とモノマー(II)に由来する構造単位の両方を有することがより好ましい。
【0329】

【0330】
(式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、Rは、炭素数6〜20の環式炭化水素基又は炭素数4〜20の複素環基を表し、該環式炭化水素基及び複素環基は、ヒドロキシ基、オキソ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基、炭素数2〜4のアシル基、炭素数1〜12のアシルオキシ基、アミノ基、一つ若しくは二つの炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアミノ基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、前記アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アシル基及びアシルオキシ基は、ヒドロキシ基、アミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基又は炭素数1〜6のアシル基で置換されていてもよい。)
オキソ基とは、カルボニル基のO=を表す。
【0331】

【0332】
(式(II)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Rは、水素原子、メチル基、炭素数2〜18のアルキル基、炭素数2〜6のアルキルアミノ基、又は炭素数6〜20の環式炭化水素基を表す。該アルキル基、及び該アルキルアミノ基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、オキソ基又はカルボキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。該環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基、オキソ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基、炭素数2〜4のアシル基又はハロゲン原子で置換されていてもよく、該環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基及び該アラルキル基に含まれる水素原子は、ヒドロキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0333】
モノマー(I)において、Rは、好ましくは水素原子である。モノマー(I)において、環式炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基が好ましい。単環の環式炭化水素基であってもよいし、縮合環式炭化水素基であってもよい。脂環式炭化水素基の具体例としては、シクロヘキシル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基及びアントリル基等が挙げられる。複素環基としては、窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を環の構成原子として含む複素環基であればよい。単環の複素環基であってもよいし、縮合環状の複素環基であってもよい。具体的には、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラジル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、テトラヒドロフリル基、インドリル基、チアゾリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。Rとしては、芳香族炭化水素基又は複素環基が好ましい。
【0334】
環式炭化水素基及び複素環基は、ヒドロキシ基、オキソ基、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基又はオクチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、例えばメトキシ基又はエトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、例えばフェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜12のアリール基、例えばベンジル基等の炭素数7〜12のアラルキル基、グリシジルオキシ基、例えばアセチル基等の炭素数2〜4のアシル基、例えばアセチルオキシ基等の炭素数1〜12のアシルオキシ基、アミノ基、例えばエチルアミノ基、ジメチルアミノ基等の一つ若しくは二つの炭素数1〜12のアルキル基で置換されたアミノ基、及び例えばフッ素原子、塩素原子又は臭素原子等のハロゲン原子からなる群から選ばれる少なくとも一つで置換されていてもよい。
【0335】
環式炭化水素基及び複素環基は、環式炭化水素基及び複素環基からなる群から選ばれる少なくとも一つが連結基を介して環式炭化水素基又は複素環基に結合された基であってもよい。連結基としては、例えばメチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、シクロヘキシリデン基、エチレン基又はプロピレン基等の炭素数1〜6程度の炭化水素基、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基あるいは−CO−等が挙げられる。また複数の環式炭化水素基及び複素環基から選ばれる基が、単結合で結合していてもよい。
【0336】
具体的には、複数の芳香族炭化水素基が単結合で結合したビフェニル基や、複数の芳香族炭化水素基がイソプロピリデン基で結合した下記式で表される基等が挙げられる。
【0337】

【0338】
モノマー(I)としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン、トリメチルスチレン、プロピルスチレン、tert−ブチルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ドデシルスチレン等のアルキルスチレン、例えばヒドロキシスチレン、t−ブトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニルベンジルアセテート、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン及びアミノスチレン等の、ベンゼン環にヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基、アシルオキシ基、ハロゲン及びアミノ基等から選ばれる基が結合した置換スチレン、例えば4−ビニルビフェニル、2−エチル−4ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン及び4−ヒドロキシ−4’−ビニルビフェニル等のビニルビフェニル系化合物、ビニルナフタレン及びビニルアントラセン等の縮合環及びビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0339】
芳香族複素環基を有するモノマー(I)としては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルフタルイミド及びN−ビニルインドール等が挙げられる。
【0340】
モノマー(I)としては、特にスチレン、N−ビニルカルバゾール、ビニルナフタレン及びビニルアントラセンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであると、位相差板(b)が広い波長域でより一様の偏光変換を行うことが可能になることから好ましく、スチレン又はN−ビニルカルバゾールであることがより好ましい。モノマー(I)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0341】
モノマー(I)に由来する構造単位の含有量は、位相差板(b)に含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%とした場合、含まれなくてもよいが、例えば1〜90質量%、好ましくは2〜70質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
【0342】
モノマー(II)において、Rは、好ましくは水素原子である。モノマー(II)において、炭素数6〜20の環式炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基及びアントラニル基等の芳香族炭化水素基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロデカニル基、アダマンチル基、及びノルボルナンラクトン基等のシクロアルキル基等が挙げられる。
【0343】
該環式炭化水素基には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基及びオクチル基等の炭素数1〜12のアルキル基、例えばメトキシ基及びエトキシ基等の炭素数1〜12のアルコキシ基、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子、例えばアセチル基等のような炭素数2〜4のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜12のアラルキル基、ヒドロキシ基、グリシジルオキシ基並びにカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基が結合していてもよい。該環式炭化水素基に含まれる−CH−は、−O−、−S−又は−NH−で置き換わっていてもよい。
【0344】
モノマー(II)の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アントラセニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ
)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルナンラクトン(メタ)アクリレート、2−(5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4,2,1,03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−4−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート及びグリセリンモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0345】
モノマー(II)としては、メチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルナンラクトン(メタ)アクリレート、2−(5−オキソ−4−オキサトリシクロ[4,2,1,03,7]ノナン−2−イルオキシ)−2−オキソエチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−4−メトキシナフタレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びグリセリンモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであると、位相差板の光弾性係数が小さいため、応力による複屈折の発現が極めて小さく、貼合後の偏光板の収縮等による位相差値変化が原因とされる光抜けを抑制し、光学的ムラのないフィルムを得ることが可能になることから好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレート、メチルアダマンチル(メタ)アクリレート、エチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルナンラクトン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びグリセリンモノ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが特に好ましい。モノマー(II)として、異なる複数のモノマーを併用してもよい。
【0346】
モノマー(II)に由来する構造単位の含有量は、位相差板(b)に含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%とした場合、含まれなくてもよいが、例えば1〜90質量%、好ましくは2〜70質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
【0347】
モノマー(1)に由来する構造単位の含有量は、位相差板(b)に含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%とした場合、例えば1〜90質量%、好ましくは2〜70質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。
【0348】
モノマー(1)はそのまま用いることもできるし、重合して重合体(1)として用いることもできる。また一部を重合体(1)としてさらに一部をモノマー(1)のまま用いることもできる。重合体(1)の重合方法としては、公知のラジカル重合法が挙げられる。ラジカル重合法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合及び塊状重合等の重合方法が挙げられるが、特別に限定はされない。分子量調整、容易性及び成膜性等の観点から、溶液重合が好ましい。
【0349】
重合体(1)としては、市販の重合体を用いてもよい。ポリビニルカルバゾールは、例えば、シグマ・アルドリッチジャパン(株)から販売されており、ポリスチレンは、例えば和光純薬工業(株)、関東化学(株)から販売されている。重合体(1)を構成するモノマーとしては、特にモノマー(I)とモノマー(II)との組合せを用いることが好ましい。
【0350】
重合体(1)に由来する構造単位の含有量は、位相差板(b)に含まれるすべての構造単位の合計量を100質量%とした場合、含まれなくてもよいが、10〜70質量%、好ましくは30〜60質量%、特に好ましくは40〜55質量%である。
【0351】
位相差板(b)は、組成物(B)を成膜し更に延伸することによって得ることができる。成膜し更に延伸する工程は、光重合工程を含んでいてもよい。光重合は、成膜したのち延伸する前に行っても、成膜したのち延伸しながら行っても、成膜し更に延伸したのちに行ってもよい。特に、成膜し光重合したのち更に延伸して得ることが好ましい。
【0352】
光重合工程では、組成物(B)に紫外光(UV)を照射することによって、組成物(B)中の光重合性成分が光重合して硬化する。紫外光の発生源としては、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、低圧、高圧、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、太陽光線、無電極ランプ等が例示される。紫外光の照射強度は、終始一定で行ってもよいし、硬化途中で変化させてもよく、これにより、硬化後の物性を微調整することもできる。
【0353】
組成物(B)は、光重合開始剤(B3)を含むことが好ましく、光ラジカル重合開始剤を含むことがより好ましい。
光重合開始剤としては、組成物(A)において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0354】
また光重合開始剤の使用量は、例えば樹脂(B1)100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜20質量部である。
【0355】
組成物(B)は、有機溶剤を含むことが好ましい。
有機溶剤としては、例えばエーテル類、芳香族炭化水素類、ケトン類、アルコール類、エステル類、アミド類等が挙げられる。
【0356】
エーテル類としては、例えばテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、アニソール、フェネトール及びメチルアニソール等が挙げられる。
【0357】
芳香族炭化水素類としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等が挙げられる。
【0358】
ケトン類としては、例えばアセトン、2−ブタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロペンタノン及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0359】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
【0360】
エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルキルエステル類、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート及びγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0361】
アミド類としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。その他の溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン及びジメチルスルホオキシド等が挙げられる。溶剤は、それぞれ単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0362】
組成物(B)は、更に、必要に応じて重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤及び可塑剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。具体的には、それぞれ、組成物(A)において挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0363】
重合禁止剤の使用量は、例えば樹脂(B1)100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0364】
光増感剤の使用量は、樹脂(B1)100質量部に対して、例えば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。
【0365】
レベリング剤の含有量は、樹脂(B1)100質量部に対して、0.001質量部〜2.0質量部であり、好ましくは0.005質量部〜1.5質量部である。
【0366】
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステル又はグリコール酸エステルが挙げられる。リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート及びトリブチルホスフェート等が挙げられる。
【0367】
カルボン酸エステルとしては、例えば、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルが挙げられる。その他のカルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステル等が挙げられる。。
【0368】
グリコール酸エステルとしては、例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート及びブチルフタリルブチルグリコレート等が例示される。またトリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ジトリメチロールプロパンテトラプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート、ソルビトールトリアセテートトリプロピオネート、イノシトールペンタアセテート及びソルビタンテトラブチレート等も好例として挙げられる。
【0369】
可塑剤としては、中でもトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネート等が好ましく、特にトリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラベンゾエート、ジトリメチロールプロパンテトラアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、ソルビトールヘキサプロピオネート及びソルビトールトリアセテートトリプロピオネートが好ましい。
【0370】
可塑剤は1種でもよいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量は、位相差板特性を大きく損ねない範囲で適宜、選択されればよく、例えば組成物(B)の固形分総量に対して0.1〜30質量%程度である。固形分総量とは、組成物(B)から溶媒を引いた量である。
【0371】
可塑剤の具体例としては、特開平11−124445号公報記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報記載の置換フェニルリン酸エステル類等が挙げられる。
【0372】
位相差板(b)は、組成物(B)を成膜(フィルム化)し、得られた膜状物を更に延伸することによって製造される。又は、組成物(B)を成膜(フィルム化)し、光重合し、得られた膜状物を更に延伸することによって製造される。組成物の膜状物を形成する方法としては、例えば、組成物(B)を平滑な面にキャストして溶剤を留去する溶剤キャスト法、組成物(B)を溶融押出機等でフィルム状に押出成形する溶融押出法等が挙げられる。特に溶剤キャスト法は組成物(B)をそのまま成膜できることから好ましい。
【0373】
また、延伸方法としては、例えば、テンター法による延伸法、ロール間延伸による延伸法等が挙げられる。延伸は、一軸延伸でも二軸延伸のいずれでもよく、縦延伸でも横延伸のいずれでもよい。一軸延伸の方法としてはロール間延伸による縦方向への一軸延伸法、テンター機を用いた横方向への一軸延伸法等が挙げられ、二軸延伸の方法としては、フィルムの側端を把持するテンタークリップのレール幅が開かれてゆき縦方向の延伸と同時にガイドレールの広がりにより横方向にも延伸する同時二軸延伸や、ロール間延伸による縦方向への延伸を行った後にその両端部をテンタークリップで把持してテンター機を用いて横方向へ延伸する逐次二軸延伸法等が挙げられる。特に生産性の観点から、横一軸延伸及び二軸延伸が好ましく、特に横一軸延伸が好ましい。横一軸延伸や二軸延伸によって光学的二軸性を有している位相差板を得ることができる。ここで光学的二軸性とは、フィルム面内の直行する二方向の屈折率をそれぞれn、n(ただしn>nとする)、厚み方向の屈折率をnとしたときにn≠n≠nとなることであり、逆にn、n、nのうちのいずれか二つが等しい場合(例えばn>n=n、等)は光学的一軸性である。光学的二軸性を有する位相差板(b)は、フィルムの厚み方向に対しても一様な偏光変換が可能である。
【0374】
かくして得られた本発明の立体表示システムに含まれる位相差板(b)は、式(1)を満たす光学特性を有する。従って、広い波長域で一様の偏光変換を行うことができる。
【実施例】
【0375】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0376】
化合物を以下のスキームで合成した。原料のモノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)は特許文献(特開2004−262884)に記載されている方法により合成した。
【0377】
(第一経路)

【0378】
(化合物(b)の合成例)
モノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)50.1g(258mmol)、炭酸カリウム97.1g(703mmol)、6−ブロモヘキサノール46.7g(258mmol)及びジメチルアセトアミド177gを混合した。得られた混合液を、窒素雰囲気下、90℃で、その後100℃で撹拌し、その後室温まで冷却した。混合液に、純水及びメチルイソブチルケトンを加え、分離した有機層を回収した。回収した有機層を水酸化ナトリウム水溶液及び純水で洗浄後に脱水し、濾過後に減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて、生成した沈殿を濾過後、真空乾燥させて、化合物(b)47g(159mmol)を得た。収率は6−ブロモヘキサノール基準で62%であった。
【0379】
(化合物(c)の合成例)
化合物(b)126g(428mmol)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(以下BHTという)1.40g(6.42mmol)、N,N−ジメチルアニリン116.7g(963mmol)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1.00g及びクロロホルム600gを混合した。窒素雰囲気、氷冷下で、得られた混合液に、アクリロイルクロリド58.1g(642mmol)を滴下し、さらに純水を加えて攪拌した後、分離した有機層を回収した。回収した有機層を塩酸水、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び純水で洗浄した。有機層を乾燥し、濾過後、有機層にBHT1gを加えて減圧濃縮して、化合物(c)を得た。
【0380】
(化合物(d)の合成例)
化合物(c)及びテトラヒドロフラン(以下THFという)200mlを混合後、得られた混合液にTHF200mlを加えた。さらに塩酸水及び濃塩酸水を加えて、窒素雰囲気、60℃の条件下で攪拌した。得られた混合溶液に飽和食塩水500mlを加えてさらに攪拌し、分離した有機層を回収した。回収した有機層を脱水し、濾過後減圧濃縮した。さらに有機層にヘキサンを加えて氷冷下で攪拌し、析出した粉末を濾過後真空乾燥して、化合物(d)を90g(339mmol)得た。収率は化合物(c)基準で79%であった。
【0381】
(化合物(e)の合成)
化合物(e)は以下に示す経路で合成した。

【0382】
トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノエトキシメチルエステル(式(h)で表される化合物)を下記のスキームで合成した。

【0383】
トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸200g(1.1616mol)及びジメチルアセトアミド1000mLを混合した。窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃まで昇温して、得られた溶液に炭酸カリウム96.3g(0.6969mol)を加えた後、ベンジルクロリド139.7g(1.1035mol)を加え、溶液を120℃で6時間攪拌して反応させた。溶液を室温まで放冷後、氷1500gに注ぎ攪拌した。得られた結晶を濾取して、これを水/メタノール3:2(v/v)、次いで水で洗浄した。真空乾燥により溶媒を除去し、化合物(f)を含む粉末251gを得た。
前工程で得られた化合物(f)を含む粉末251gをクロロホルム600mLとを混合した得られた溶液を氷冷し、窒素雰囲気下、得られた溶液にエトキシクロロメタン93.5g(0.7600mol)及びトリエチルアミン146.8g(1.4515mol)を滴下した。反応溶液を室温、窒素雰囲気下で3時間攪拌して反応させた。反応溶液にトルエン600mLを加え、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を回収し、水で洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、溶媒を除去した。得られた粗生成物を真空乾燥して、化合物(g)を含む液体242gを得た。
【0384】
前工程で得られた化合物(g)を含む液体242g及びTHF250mlを混合した。窒素雰囲気下で、得られた溶液に10%パラジウム−炭素(50%含水)10.0gを加えた。減圧後、水素置換し、室温、常圧、水素雰囲気下で得られた溶液を6時間攪拌して反応させた。窒素置換後、得られた溶液を濾過し、触媒及び溶媒を除去した。残渣をクロロホルムに溶解した。得られた溶液をシリカゲル濾過した。シリカゲル上の不溶物を、シリカゲルからさらにクロロホルムにて抽出した。クロロホルム溶液を回収し、これを減圧濃縮し、これにヘプタンを加えて結晶化させた。得られた結晶を濾別、真空乾燥することにより化合物(h)106gを得た。収率は化合物トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸基準で39%であった。
【0385】
化合物(d)56.8g(215mmol)、ジメチルアミノピリジン2.65g(22mmol)、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノエトキシメチルエステル50g(217mmol)及びクロロホルム300mLを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気下、氷冷して攪拌し、ジシクロヘキシルカルボジイミド48.79g(237mol)及びクロロホルム50mLからなる溶液を滴下した。滴下終了後、得られた反応溶液を室温にて攪拌し、クロロホルム200mL及びヘプタン200mLを加えて沈殿を濾過した。濾液を回収して、2N−塩酸水溶液で洗浄した。分離した有機層を回収し、不溶成分を濾過により除去後、無水硫酸ナトリウムを加え、濾過後、溶媒を除去して得られた固体を、真空乾燥して、化合物(e’)100gを得た。
【0386】
化合物(e’)100g、純水3.64g(202mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物3.84g(20.2mmol)及びTHF200mLを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気下、50℃に加温し、攪拌した。混合液を室温まで放冷後、THFを減圧除去し、残渣にヘプタン200mLを加えた。析出した沈殿を濾取し、純水で洗浄後、真空乾燥した。得られた粉末をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを通してから濾過した。濾液を回収しクロロホルム400mLに溶解して、得られた溶液を濃縮し、トルエンを加えた。溶液を減圧濃縮したのち、ヘプタンを加えて結晶化させ、得られた粉末を濾取、真空乾燥して、化合物(e)64.1gを得た。収率は化合物(d)基準、二工程で76%であった。
<化合物(A11−1)の合成例>
化合物(A11−1)は下記のスキームに従って合成した。
【0387】

【0388】
[4,6−ジメチルベンゾフランの合成例]
3,5−ジメチルフェノール25g(205mmol)をN,N’−ジメチルアセトアミド150.0gに溶解させた。溶液を氷浴により冷却した後に、水酸化ナトリウム9.82(246mmol)を加えた。室温で1時間攪拌し、クロロアセトアルデヒドジメチルアセタール25.49g(266mmol)を滴下した。100℃で15時間攪拌し、反応液を水1000mL、メチルイソブチルケトン400mLに加えて分液した。有機層を回収し、2回500mLの1N−水酸化ナトリウム水溶液で、さらに2回800mLの純水で有機層を洗浄した。有機層を回収後、無水硫酸ナトリウムで脱水し、エバポレータにて減圧濃縮させ淡赤色粘長液体を得た。一方で、400gのトルエンと、オルトリン酸3.01gを混合し110℃に加熱した。該溶液に淡赤色粘長液体をトルエン100mLに溶解させた溶液を滴下した。3時間110℃で攪拌した後、室温まで冷却した。反応液を1N−炭酸水素ナトリウム水溶液で二回洗浄し、最後に純水500mLで洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥させて、4,6−ジメチルベンゾフランを16.5g淡赤色粘長液体として得た。収率は3,5−ジメチルフェノール基準で55%であった。
【0389】
[2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフランの合成例]
4,6−ジメチルベンゾフラン21.62g(148mmol)をN,N’−ジメチルホルムアミド28.4g(389mmol)に溶解させた。溶液を水浴により冷却した後に、オキシ塩化リン25g(163mmol)を滴下した。ピンク色溶液を室温で1時間攪拌した後、100℃で10時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、純水100mLを加えて一時間攪拌後、1N炭酸水素ナトリウムで中和した。pHを8に調節後、トルエンと分液した。有機層を回収し、活性炭を2.6g加えて濾過した。エバポレータにて減圧濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、ヘプタンにて結晶化させた。結晶を濾取、真空乾燥して、2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフランを19.5g淡黄色粉末として得た。収率は4,6−ジメチルベンゾフラン基準で76%であった。
【0390】
[4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸の合成例−1]
2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフラン19.50g(112mmol)、アミド硫酸13.04g(134mmol)を100mLの純水と混合した。氷浴で冷却し、亜塩素酸ナトリウム12.15g(134mmol)の水100mL溶液を滴下した。水浴で36時間反応させた。反応溶液にトルエン100mL、水酸化カリウム25gを加えてpHを12に調整した。分液し、水層を回収し水層をさらに200mLのトルエンで洗浄した。水層を回収し、2N−塩酸にてpHを2にした後、トルエン400mLを加えて分液した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥して、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸を14.27g黄色粉末として得た。収率は2−ホルミル−4,6−ジメチルベンゾフラン基準で67%であった。
【0391】
4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸は下記のスキームによっても合成できた。
【0392】
[4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸の合成例−2]

【0393】
3,5−ジメチルフェノール150g(1227mmol)、パラホルムアルデヒド230.1g(7674mmol)、無水塩化マグネシウム175.4g(1842mmol)をアセトニトリル900mLに分散させた。氷浴で30分攪拌した後、トリエチルアミン474g(4681mmol)を二時間かけて滴下した。混合液を水浴で8時間、室温で14時間反応させた。反応液に冷5N−塩酸1500mLを加えて、酸性にした後、400mLの酢酸エチルで分液し、有機層を回収した。さらに水層を400mLの酢酸エチルで分液した。有機層を回収し、先の有機層と集めて、無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて減圧濃縮した。残渣を400mLトルエンに溶解し、活性炭3g、シリカゲル20g加えて30分室温で攪拌し、濾過した。濾液を回収し、エバポレータにて減圧濃縮、真空乾燥させることにより、4,6−ジメチルサリチルアルデヒドを170g橙色粘稠液体として得た。収率は3,5−ジメチルフェノール基準で92%であった。
【0394】
4,6−ジメチルサリチルアルデヒド45.0g(300mmol)、炭酸カリウム101.g(300mmol)、をN,N’―ジメチルアセトアミド360mLに分散させた。80℃に加温した後、ブロモ酢酸エチル50.0g(300mmol)を1時間かけて滴下した。混合液を80℃で4時間反応させた。反応液を室温まで冷却後、メチルイソブチルケトン400mLを加えて、冷1N−塩酸1000mLで酸性にした後、分液した。有機層を3回1000mLの純水で洗浄し、有機層を回収した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、エバポレータにて溶媒を留去した。残渣に水酸化カリウム40g、エタノール400mLを加えて、80℃で1時間攪拌した。室温まで放冷後、エバポレータにて溶媒を留去し、純水1000mLを加えた。pHが12以上であることを確認後、水層をトルエンにて二回、ヘプタンで一回洗浄した。水層を回収し、4N−硫酸にて中和、pHを3に調節した。析出した黄色沈殿を濾取し、純水で懸洗後、真空乾燥させることにより、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸を48.1g黄色粉末として得た。収率は4,6−ジメチルサリチルアルデヒド基準で83%であった。
【0395】
[化合物(11−a)の合成例]
2,5−ジメトキシアニリン11.49g(75.0mmol)、4,6−ジメチルベンゾフラン−2−カルボン酸14.27g(75.7mmol)、トリエチルアミン7.59g(75.0mmol)、N,N’−ジメチルアミノピリジン1.83g(15.0mmol)及び脱水N,N’−ジメチルアセトアミド100.0gを混合した。得られた溶液を氷浴にて冷却した後、BOP試薬34.85g(82.5mmol)を加えて室温で24時間反応させた。得られた混合液に水、メタノールの混合溶液(水2体積部、メタノール1体積部)を加えて晶析させた。得られた沈殿を濾取し水−メタノールの混合溶液(水3体積部、メタノール2体積部)で洗浄、真空乾燥して、淡黄色粉末として化合物(11−a)を16.2g得た。収率は2,5−ジメトキシアニリン基準で66%であった。
【0396】
[化合物(11−b)の合成例]
化合物(11−a)16.0g(49mmol)、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド(ローソン試薬)9.2g(30.0mmol)及びトルエン100gを混合し、得られた混合液を80℃に昇温して12時間反応させた。冷却後濃縮し、化合物(11−b)とローソン試薬の分解物とを主成分とする赤色粘稠固体を得た。
【0397】
[化合物(11−c)の合成例]
前項で得られた化合物(11−b)を含む混合物、水酸化ナトリウム11.8g(262mmol)及び水250gを混合し、得られた混合液を氷冷下で反応させた。続いてフェリシアン化カリウム44.17g(134mmol)を含む水溶液を、氷冷下で加え、反応させた。60℃で12時間反応させて、析出した黄色沈殿を濾取した。濾取した沈殿を水、次いでヘキサンで洗浄し、トルエンで結晶化させた。得られた黄色を真空乾燥して、化合物(11−c)を主成分とする黄土色固体4.1gを得た。収率は化合物(11−a)基準で25%であった。
【0398】
[化合物(11−d)の合成例]
化合物(11−c)4.0g(12.0mmol)及び塩化ピリジニウム40.0g(10倍質量)を混合し、180℃に昇温して3時間反応させた。得られた混合液を氷に加え、得られた沈殿を濾取した。水で懸洗後、トルエンで洗浄、真空乾燥させて、化合物(11−d)を主成分とする黄土色固体3.4gを得た。収率は化合物(11−c)基準で93%であった。
【0399】
[化合物(A11−1)の合成例]
化合物(11−d)3.00g(9.64mmol)、化合物(e)8.47g(20.23mmol)、ジメチルアミノピリジン0.12g(0.96mmol)及びクロロホルム40mLを混合した。得られた混合液にN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド2.92g(23.12mmol)を氷冷下で加えた。得られた反応溶液を室温で終夜反応させ、シリカゲル濾過したのち、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、クロロホルムに再溶解させ0.3gの活性炭を加えて、室温で一時間攪拌した。溶液を濾過して濾液をエバポレータにて1/3まで減圧濃縮後、攪拌しながらメタノールを加えて、生成した白色沈殿を濾取し、ヘプタンで洗浄、真空乾燥して化合物(A11−1)を白色粉末として7.60g得た。収率は化合物(11−d)基準で71%であった。
【0400】
化合物(A11−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.45〜1.85(m、24H)、2.36〜2.87(m、18H)、3.93〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.79〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.17(m、2H)、6.37〜6.45(m、2H)、6.87〜7.01(m、9H)、7.20(s,1H)、7.23(s、2H)、7.53(s,1H)
【0401】
得られた化合物(A11−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって確認した。化合物(A11−1)は、昇温時において、105℃から137℃まで粘性の高い中間相を示した。液晶相の判別は困難であったが、137℃以上で明確なネマチック液晶相を呈した。ネマチック液晶相は180℃以上まであり、降温時においては、61℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0402】
(化合物(x−a)の製造例)
化合物(x−a)は、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1誌、205−210頁(2000年)に記載されている方法と同等の以下のスキームで合成した。つまり、上記に記載されている合成法のベンゾイルクロライドを2-チオフェンカルボニルクロリドに変える以外は同様の方法で、合成した。
さらに、化合物(x−a)は、化合物(x−d)20.0g(72.1mmol)と塩化ピリジニウム100.0g(5倍質量)とを混合し、得られた混合液を220℃に昇温して攪拌した。混合液を冷却後、水を加え、得られた沈殿を濾別し、水及びノルマルヘプタンで洗浄して、化合物(x−a)を主成分とする固体17.4gを得た。収率は化合物(x−d)基準で97%であった。
【0403】

【0404】
<化合物(x−1)の合成例>
化合物(A11−1)の合成例と同様の方法で、化合物(11−d)を化合物(x−a)に変える以外は同様の方法にて、化合物(x−1)を得た。収率は化合物(x−a)基準で84%であった。
【0405】
化合物(x−1)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.43〜1.83(m、24H)、2.29〜2.82(m、12H)、3.92〜3.97(t、4H)、4.15〜4.20(t、4H)、5.80〜5.84(dd、2H)、6.07〜6.18(m、2H)、6.37〜6.44(m、2H)、6.86〜7.02(m、8H)、7.12(dt、1H)、7.18(s、2H)、7.51(dd、1H)、7.63(dd、1H)
【0406】
得られた化合物(x−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(x−1)は、昇温時において、101℃から106℃までスメクチック相を呈し、106℃から180℃以上までネマチック相を呈し、降温時において、81℃までネマチック相を呈し結晶化した。
【0407】
〔実施例1及び2、比較例1及び2〕
表2に示す組成となるように各成分を混合し、組成物1及び組成物2を得た。
表2は、組成物全量に対する各成分の含有量(質量%)を表す。
【0408】
【表2】


液晶化合物b:下記式で表される化合物(Poliocolor LC242;BASF社製)


組成物1の光重合性開始剤:イルガキュア369(チバ・ジャパン(株)製)
組成物2の光重合性開始剤:イルガキュア907(チバ・ジャパン(株)製)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)
【0409】
<位相差板(a)の製造例>
ガラス基板(EAGLE2000、平岡特殊硝子製作(株)製)に、ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業(株)製)の2質量%水溶液を塗布し、乾燥後、厚さ89nmの膜を形成した。続いて、得られた膜の表面にラビング処理を施した。ラビング処理は、半自動ラビング装置(商品名:LQ−008型、常陽工学(株)製)を用いて、布(商品名:YA−20−RW、吉川化工(株)製)によって、押し込み量0.15mm、回転数500rpm、16.7mm/sの条件で行った。続いてラビング処理を施した面に、表3に記載の組成物を、硬化後の膜厚が表3に記載の膜厚になるようにスピンコート法により塗布し、表3に記載の温度で加熱し、モノドメイン配向した塗膜を得た。その後、表3に記載の温度に保持して紫外線(SP−7、ウシオ電機(株)製)を表3に記載の露光量(積算光量)を照射した。これにより、ガラス基板上に、位相差板i〜iv、vii及びixを得た。
【0410】
【表3】

【0411】
<位相差板(b)の製造例>
ポリウレタンウレア(商品名:ウレタンウレア樹脂溶剤溶液 タイフォース CSシリーズ アクリロイル基導入タイプ 品番:CS−S−65、DIC(株)(樹脂第二技術本部 スペシャリティ開発グループ、〒592−0001 大阪府高石市高砂1−3)製、重量平均分子量7万、不揮発分25%、粘度60,000、アクリロイル基 当量重量(固形分換算)28,000)の溶液80部(固形分量換算で20部)、N−ビニルカルバゾール6.5部、光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イルガキュア184;チバ・ジャパン(株)製)0.4部、レベリング剤(ポリエーテル変性シリコーンオイルSH8400;東レ・ダウコーニング社製)0.01部、N,N−ジメチルホルムアミド20部を混合した後、ポリエチレンテレフタレート製の離型フィルム上にロール・ツー・ロール成膜装置を用いて塗り厚800μmで塗布し、100℃で25分乾燥し、UV照射(高圧水銀ランプ:1Pass当たり 672mJ/cm:365nm)し、フィルムを得た。得られたフィルムを、テンター延伸機を用いて横一軸延伸により3倍延伸し、位相差板vを得た。
位相差板viとしては、ポリカーボネート系一軸延伸フィルム(ピュアエースWR S−142;帝人化成製)を用いた。
【0412】
<光学特性の測定>
位相差板の位相差値(nm)の測定は、ガラス基板上に作成した位相差板を、ガラス基板から剥離することなく、測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)で計測した。基材に使用したガラス基板には、ほとんど複屈折性が無いため、剥離せずに測定しても、ガラス基板上に作製した位相差板の位相差値を得ることができる。立体表示システムの表示装置側及び眼鏡側に使用した位相差板の波長451nm、549nm、及び628nmにおける位相差値を表4に示す。また、その位相差値の値から、[Re(451)/Re(549)](αとする)及び[Re(628)/Re(549)](βとする)を算出した。
【0413】
【表4】

【0414】
<眼鏡用円偏光板の作製>
眼鏡用位相差板と偏光板(PVA層:クラレRポバールフィルム、片TAC品、住友化学製)とを貼合することで眼鏡用円偏光板101を作製した。眼鏡用位相差板101としては、上記の位相差板i〜ixを用いた。
【0415】
<輝度及び色度の測定のための装置>
図10に示すように、簡易暗室ユニット(品番:DRU−1515、シグマ光機製)中に液晶表示装置97(型番:N220W、HYUNDAI IT(株)製)を配置し、液晶表示装置97の画面の一部に表示装置用位相差板98を貼り付けた。表示装置用位相差板98は、ガラス基板上に位相差板が形成されており、位相差板が表示装置側に、ガラス基板が後述する色彩輝度計側に来るように配置するとともに、その遅相軸方向が液晶表示装置97から出る光の吸収軸方向(液晶表示装置が備える偏光板の吸収軸)と右又は左に45度の角度をなすように設置した。なお、ここで右又は左とは、色彩輝度計100側から液晶表示装置97を見た際の回転方向とする。
表示装置用位相差板97としては、上記の位相差板i〜ixを用いた。
【0416】
液晶表示装置97の画面のうち位相差板98が貼り付けられている部分以外は、黒画用紙で遮光をした。また、表示装置用位相差板98の面から垂直方向に60cm離れた位置に、色彩輝度計(型番:BM−5A、光源;F−10、(株)トプコン製)のレンズ筒先端が来るように色彩輝度計100を配置し、その先端部分に、眼鏡用円偏光板101と表示装置用位相差板98とが平行になるように、かつ偏光板面が色彩輝度計100側に向くように、眼鏡用円偏光板101を取り付けた。また、眼鏡用位相差板101と表示装置用位相差板98とは同じものを用いた。
色彩輝度計は、RS−232Cケーブルを介してパーソナルコンピュータと繋げ、色彩輝度計の測定結果は、コンピュータ内のアプリケーションソフト(HarveyScope、Harver Lab.製)を使用して出力した。
【0417】
<輝度及び色度の測定方法>
前記液晶表示装置97に、白(Y=71.9、x=0.301、y=0.283)を全画面に表示させた。
【0418】
表示装置用位相差板98の遅相軸が液晶表示装置97から発せられる偏光方向(すなわち液晶表示装置97に具備される偏光板の吸収軸)と右45度の角度をなすように(言い換えれば、表示装置用位相差板98の遅相軸が液晶表示装置97に具備される偏光板の透過軸と左45度の角度をなすように)、表示装置用位相差板98を配置した。色彩輝度計に取り付けた眼鏡用円偏光板101を回転させ、表示装置用位相差板98の遅相軸の方向と眼鏡用円偏光板101を構成する位相差板の遅相軸の方向とが平行であり、かつ、円偏光板101に具備される偏光板の透過軸が、液晶表示装置97に具備される偏光板の透過軸と直交するとき、眼鏡用円偏光板101の角度は、明視野状態における0度であるとした。
【0419】
また、表示装置用位相差板98の遅相軸が液晶表示装置97から発せられる偏光方向(すなわち液晶表示装置97に具備される偏光板の吸収軸)と左45度の角度をなすように(言い換えれば、表示装置用位相差板98の遅相軸が液晶表示装置97に具備される偏光板の透過軸と右45度の角度をなすように)、表示装置用位相差板98を配置した。色彩輝度計に取り付けた眼鏡用円偏光板101を回転させ、表示装置用位相差板の遅相軸の方向と眼鏡用円偏光板101を構成する位相差板の遅相軸の方向とが直交し、かつ、円偏光板101に具備される偏光板の透過軸が、液晶表示装置97に具備される偏光板の透過軸と直交するとき、眼鏡用円偏光板101の角度は、暗視野状態における0度であるとした。
【0420】
色彩輝度計から液晶表示装置97を見た場合の眼鏡用円偏光板101の回転が左回り方向を正とし、眼鏡用円偏光板101を明視野状態又は暗視野状態の初期配置から右及び左回りに10度刻みで40度まで、回転させた際の輝度Y及び色度(x,y)の値を上記色彩輝度計100を用いて測定した。暗視野での測定結果を表5に示す。
コントラストは、同一角度における明視野状態の輝度を暗視野状態の輝度で除して算出した。コントラストが高いほど、表示装置用位相差板98と眼鏡用円偏光板101との両者における光漏れが少なく、眼鏡を通して観察する画像はより鮮明であるといえる。
また、0度におけるコントラスト値に対する、各角度におけるコントラスト値の比を、コントラスト保持率として示した。コントラスト保持率が小さいほど、観察角度の変化によってコントラストがより低下することを表す。
【0421】
実施例1、3、4及び比較例1の結果を表5に示す。
【0422】
【表5】


輝度Y及び色度x,yは、CIE 1931色度座標に基づく。
輝度Yの単位は、cd/mである。
【0423】
<色再現性評価>
表示装置用位相差板98の遅相軸の方向と眼鏡用位相差板101の遅相軸の方向とが平行になるように配置し、色彩輝度計100を分光放射計(型番:SR−3A、(株)トプコンテクノハウス製)に替えた以外は、前記「輝度及び色度の測定のための装置」と同様の装置を作製し、分光放射計に入射する光の分光分布を測定した。表示装置用位相差板98及び眼鏡用円偏光板101を配置しない状態での分光分布を基準の放射強度(100%)とした場合の、各波長における放射強度比を算出した。放射強度比が高いほど、表示装置の出射する光の損失が少なく、表示装置が表示する画像に対する、眼鏡を通して観察する画像の色再現性が高いといえる。結果を表6に示す。
【0424】
【表6】

【0425】
<斜め方向からの色度測定1>
「輝度及び色度の測定のための装置」と同じ装置を用いて、表示装置用位相差板98及び眼鏡用円偏光板101を、それぞれに具備される位相差板の遅相軸が直交し、かつ、円偏光板101の偏光板の透過軸が、液晶表示装置97に具備される偏光板の透過軸と平行になるように設置した。次いで図11に示すように、色彩輝度計100に取り付けた眼鏡用円偏光板101が、表示装置用位相差板98の中心aを向くように配置した。
色彩輝度計の走査方向102に沿って中心aから同心円上の位置で、かつ仰角103を−60度から60度の位置まで20度刻みで、色彩輝度計100の位置を変更し、色度(x,y)を測定した。中心aから眼鏡用円偏光板101までの距離は35cmとした。
測定された色度(x,y)から、色差△xyを下記式に従い算出した。色差△xyが小さいほど、観察する位置によって観察される色の変化は小さいといえる。
△xy=((x(t)−x(0))+(y(t)−y(0))0.5
(式中、x(t)は、仰角t度のときの色度xを表す。y(t)は、仰角t度のときの色度yを表す。)
表示装置用位相差板98及び眼鏡用円偏光板101を配置しない状態で測定した色度(x,y)を測定し、色度(x,y)との差△x及び△yを下記式に従い算出した。△x及び△yが小さいほど、表示装置用位相差板及び眼鏡用円偏光板を通して観察したことによる色の変化が小さいといえる。結果を表7に示す。
△x=x−x
△y=y−y
【0426】
【表7】

【0427】
色度(x,y)は、CIE 1931色度座標に基づく。
【0428】
<斜め方向からの色度測定2>
「斜め方向からの色度測定1」で用いた装置において、色彩輝度計100に取り付けた眼鏡用円偏光板101を、色彩輝度計100側から液晶表示装置97を見て左に30度回転させた状態で、前記と同様に色度(x,y)を測定し、測定された色度(x,y)から色差△xyを算出した。結果を表8に示す。
【0429】
【表8】

【0430】
<式(1)を充足する位相差板を一部に含む立体表示システムの輝度・色度評価>
本発明の立体表示システムの一例として、表9の実施例6、実施例7に示すように、眼鏡あるいは表示装置のいずれか一方のみに式(1)を充足する位相差板を配した立体表示システムを<輝度及び色度の測定のための装置>中に導入し、<輝度及び色度の測定方法>と同様の手法を用いて輝度Y・色度(x,y)を測定した。また、得られた値から色差Δxyを算出した。暗視野での色度測定結果とそこから算出した色差Δxyを共に、表10に示す。
【0431】
【表9】

【0432】
【表10】

輝度Y及び色度x,yは、CIE 1931色度座標に基づく。
輝度Yの単位は、cd/mである。
【0433】
上記実施例によれば、本発明の立体表示システムは、角度を変えた場合でもコントラスト保持率が高いことから、観察角度によらず位相差板による偏光変換において光漏れが少ないことが確認された。さらに、表6によれば、広範の波長において高い放射強度比を示すことから、表示装置から出射する光が、表示装置用位相差板と眼鏡用円偏光板を構成する位相差板との両者を通過しても減衰しにくく、色度が変化しにくいことが示された。表7及び8によれば、本発明の立体表示システムは表示装置に対して斜め方向から観察したり、さらに眼鏡を傾けて観察したりしても、観察される色度は変化しにくいことが示された。加えて、眼鏡と表示装置のうちのいずれか一方のみに式(1)を充足する位相差板を含む立体表示システムにおいても、観察角度の変化に伴う色度変化を抑制することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0434】
本発明の立体表示システムは、コントラスト及び色の角度依存性をを小さくすることができる。このことから、本発明の立体表示システムによれば、優れた立体画像を表示及び観察することができる。
【符号の説明】
【0435】
31A,31B 半透過型液晶表示装置
32,52,72 バックライト
33,40,53,55,63,73,82,93,95 偏光板
34,74 公知の位相差板
35,41,75,81 基材
36 画素
36A 背面反射電極部
36B 背面透明電極部
37,77 液晶層
38,78 前面透明電極
39,79 カラーフィルタ
42,56,64,80,92 位相差板(1)
43 背面電極
51 液晶表示装置
54 液晶セル
61 液晶表示装置以外のフラットパネル表示装置
62 従来のフラットパネル表示装置
71A,71B,71C 液晶表示装置
76 背面電極
91 立体表示システム用眼鏡
94,96 液晶セル
97 液晶表示装置
98 表示装置用位相差板
a 表示装置用位相差板の中心
100 色彩輝度計
101 眼鏡用円偏光板
102 走査方向
103 仰角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置と、表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッター眼鏡とを含み、
前記表示装置と前記眼鏡とがともに、位相差板を有し、
表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種が、式(1)を充足する位相差板である立体表示システム。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
【請求項2】
表示装置が有する位相差板及び眼鏡が有する位相差板の両方が、式(1)を充足する位相差板である請求項1記載の立体表示システム。
【請求項3】
表示装置が、直線偏光を円偏光へ変換する位相差板を有する装置であり、かつ眼鏡が、円偏光を直線偏光に変換する位相差板を有する装置である請求項1又は2記載の立体表示システム。
【請求項4】
式(1)を充足する位相差板が、重合性液晶化合物を重合して得られる位相差板、及びフィルムを延伸して得られる位相差板からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の立体表示システム。
【請求項5】
重合性液晶化合物が、式(A)で表される化合物である請求項4記載の立体表示システム。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数Nπは、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する1価の基を表す。]
【請求項6】
が式(B)で表される基であり、かつLが式(C)で表される基である請求項5記載の立体表示システム。
−F−(B−A−E− (B)
−F−(B−A−E− (C)
[式(B)及び(C)中、B、B、E及びEは、それぞれ独立に、−CR−、−CH−CH−、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−O−C(=S)−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CH−、−CH−O−、−S−CH−、−CH−S−又は単結合を表す。kが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のBは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜18の2価の芳香族炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。kが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。lが2以上の整数である場合、複数のAは互いに同一であっても異なっていてもよい。
k及びlは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表す。
及びFは、炭素数1〜12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
は、重合性基を表す。
は、水素原子又は重合性基を表す。]
【請求項7】
Arが、式(Ar−6)で表される基である請求項5又は6記載の立体表示システム。

[式(Ar−6)中、Zは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、−NR、−SRを表す。nが2以上の整数である場合、複数のZは互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
は、−S−、−O−又は−NR−を表す。
は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の1価の芳香族複素環式基を表す。
nは、0〜2の整数を表す。]
【請求項8】
及びGが、ともにシクロヘキサン−1,4−ジイル基である請求項5〜7のいずれか記載の立体表示システム。
【請求項9】
重合性基が、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5〜8のいずれか記載の立体表示システム。
【請求項10】
フィルムが、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位を含むフィルムである請求項4記載の立体表示システム。
【請求項11】
フィルムが、ポリカーボネートに由来する構造単位、ポリウレタンに由来する構造単位又はポリウレタンウレアに由来する構造単位、並びにカルバゾール骨格、フルオレン骨格、ベンゾチアゾール骨格及びナフタレン骨格からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する重合性化合物に由来する構造単位を含むフィルムである請求項4又は10記載の立体表示システム。
【請求項12】
表示装置が交互に表示する画像と同期して動作する液晶シャッター眼鏡であり、かつ式(1)を充足する位相差板を有する立体表示システム用眼鏡。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
【請求項13】
式(1)を充足する位相差板が、式(A)で表される化合物を重合して得られる位相差板である請求項12記載の立体表示システム用眼鏡。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、1価の基有機基を表し、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する1価の基を表す。]
【請求項14】
式(1)を充足する位相差板が、フィルムを延伸して得られる位相差板である請求項12記載の立体表示システム用眼鏡。
【請求項15】
右眼用画像と左眼用画像とを交互に表示する表示装置であり、式(1)を充足する位相差板を有する立体表示システム用表示装置。
Re(451)<Re(549)<Re(628) (1)
[式(1)中、Re(ν)は、波長νnmにおける位相差値を表す。]
【請求項16】
式(1)を充足する位相差板が、式(A)で表される化合物を重合して得られる位相差板である請求項15記載の立体表示システム用表示装置。
−G−D−Ar−D−G−L (A)
[式(A)中、Arは、芳香環を有する2価の基を表し、該芳香環に含まれるπ電子の数は、12以上22以下である。
及びDは、それぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−O−CO−、−C(=S)−O−、−O−C(=S)−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−、−CR−O−CR−、−CR−O−CO−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−、−CR−NR−、−CO−NR−、又は−NR−CO−を表す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、該脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−又は−NH−で置き換っていてもよく、該脂環式炭化水素基に含まれるメチン基は、

で置き換っていてもよい。
及びLは、それぞれ独立に、有機基を表す。ただし、L及びLからなる群から選ばれる少なくとも1種は、重合性基を有する基である。]
【請求項17】
式(1)を充足する位相差板が、フィルムを延伸して得られる位相差板である請求項15記載の立体表示システム用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−8525(P2012−8525A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29471(P2011−29471)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】