説明

竪型ベーンポンプ

【課題】 簡易な構造でありながら、移送物のブリッジの発生を効果的に防止し、移送物をスムースに移送することができる竪型ベーンポンプを提供する。
【解決手段】鉛直な回転軸線6まわりに回転するロータ8と、ロータ8の上部に回転軸線6に直交して摺動可能に支持された複数のベーン20と、ロータ8を回転可能に収容するケーシング14と、ケーシング14における内部空間21の上面を覆い、内部空間21に連通する流入口46を備えたカバー体2と、前記カバー体2の上部に設置され、下部が前記流入口46に通じる移送物供給部48とを含む。ロータ8の上端部にはシャフト27を介して掻取部材36が取付けられ、掻取部材36は、カバー体2から突出して移送物供給部48の内面に臨み、ロータ8およびシャフト27の回転に連動し、前記移送物供給部48の内面に近接して回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送物を移送する竪型ベーンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハムやソーセージの材料、おから、あんこ、バター等の粘性が高くかつ流動性の低い移送物を移送する竪型ベーンポンプが用いられており、その典型的な従来技術は、特許文献1に示されている。特許文献1に示される竪型ベーンポンプにおいては、ロータが鉛直な回転軸線まわりに回転する。前記ロータの上部には、複数のベーンが前記回転軸線に直交し、前記直交方向に摺動可能に支持されている。前記ロータおよびベーンはケーシングに回転可能に収容保持されている。
【0003】
ケーシングには前記内部空間の上面を覆うカバー体が設置され、前記カバー体は前記内部空間に連通する流入口を備える。前記ケーシングの側部には前記内部空間に連通する流出口が形成されている。
【0004】
前記カバー体の上部には、下部が前記流入口に通じるコーン形ホッパー等からなる移送物供給部が設置されている。前記ケーシング内の内部空間は、ベーンによって複数の流路に区画され、ベーンの回転に伴って複数の流路の断面積が変化し、移送物供給部内の移送物が前記流入口から各流路を経て流出口へ移送される。
【0005】
このような竪型ベーンポンプは、装置がコンパクトであり、移送性に優れることから、前記のような粘性移送物の移送に多用されている。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2502924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記竪型ベーンポンプにおいて、ホッパーに投入された移送物は、ホッパーの内面に付着し、これが原因でブリッジを起こし、スムースにポンプ内に流下しないことがある。特に、ハムやソーセージの材料、あるいはおから等のように気泡を含む移送物は、ホッパー内の流入口付近でブリッジを起こし易い。そのため、これらの移送物を扱う生産工場等においては、作業者が、ホッパーの上部を開け、適当な治具でブリッジ部を突き崩す作業を余儀なくされる。このような作業は大変煩わしく、工数も必要とされるため、生産効率を低下させる大きな要因となる。そこで、ホッパー内に攪拌部材を設け、この攪拌部材をモータによって駆動させてホッパー内の移送物を常時攪拌しブリッジの発生を防止している。しかし、この場合モータを新たに設置し、その駆動制御のシーケンスも組込むことが必要とされるため、装置の製造が大形化および複雑化してコストが高価でなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、簡易な構造でありながら、移送物のブリッジの発生を効果的に防止し、粘性の高い移送物であって円滑に移送がすることができる竪型ベーンポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る竪型ベーンポンプは、鉛直な回転軸線まわりに回転するロータと、
前記ロータの上部に、前記回転軸線に直交し、かつ前記直交方向に摺動可能に支持された複数のベーンと、
前記ロータおよびロータが回転可能に収容される内部空間を有し、側部に流動状の移送物を排出するための流出口が形成されるケーシングと、
前記ケーシングの上部を覆い、前記内部空間に連通する流入口を有するカバー体と、
前記カバー体の上部に設置され、下部が前記流入口に移動物を供給する移送物供給部とを含む竪型ベーンポンプにおいて、
前記ロータの上端部にはシャフトを介して掻取部材が設けられ、
前記掻取部材は、前記カバー体から突出して前記移送物供給部の内面に臨み、前記ロータおよび前記シャフトの回転に連動し、前記移送物供給部の内面に近接して回転駆動されていることを特徴とする竪型ベーンポンプである。
【0010】
本発明に従えば、移送物供給部に投入貯留される移送物は、移送物供給部の下部からカバー体に形成された流入口を経て、ケーシングにおける前記内部空間内に流入する。内部空間内に流入した移送物は、ロータの回転に伴うベーンの回転によって、ケーシングの側部に形成された流出口に順次押しやられてポンプ外に流出される。各ベーンは、前記ロータの上部に前記回転軸線に直交し、かつ直交方向に摺動可能に支持されているから、ロータの回転に伴い、内部空間の内部形状に規制されて摺動移動する。これにより、内部空間にベーンによって区画された複数のポンプ室が形成され、このポンプ室を介して移送物の流出口への移送が的確に成される。移送物供給部の内面には、前記ロータの上端部にシャフトを介して取付けられた掻取部材が臨んでおり、この掻取部材は、ロータおよびシャフトの回転に連動し前記移送物供給部の内面に近接して回転するよう構成されているから、移送物供給部の内面に付着しようとする移送物は、掻取部材の作用によって掻取られ、移送物供給部内での移送物のブリッジの発生が防止され、前記内部空間内への移送物の流下、および流出口から前記内部空間への流入が滞ることなくスムースになされる。
【0011】
また本発明は、前記掻取部材が、前記シャフトに形成された嵌合穴に嵌合支持される取付基部と、前記取付基部に固設された掻取片とを含み、
前記取付基部は、前記カバー体に形成された透孔の内周縁部によって前記嵌合穴から抜出不能に嵌合保持され、
前記掻取片は、前記透孔内から延びて前記移送物供給部の内面に臨むように形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、掻取部材が、取付基部をしてシャフトに形成された嵌合穴に嵌合支持されているから、シャフトの回転に連動して前記のような移送物供給部の内面に近接した回転がなされる。そして、取付基部は、前記カバー体に形成された透孔の内周縁部によって嵌合穴から抜出不能に嵌合保持されているから、上記回転動作中に掻取部材が外れたりする懸念がない。また、シャフトに対して掻取部材をこのような嵌合関係で取付けるようにしたことによって、これらが容易に作製および組立てられると共に、掻取部材を適宜交換し得るよう構成することもできる。
【0013】
また本発明は、前記嵌合穴がシャフトの径方向に沿った長穴形状であって、前記取付基部が前記長穴形状に略合致する形状であることを特徴とする。
【0014】
本発明に従えば、嵌合穴がシャフトの径方向に沿った長穴形状であって、前記取付基部が前記長穴形状に略合致する形状であるから、ロータの前記回転軸線まわりの回転トルクが掻取部材に作用し、掻取部材に対する回転伝達が効率的になされる。
【0015】
また本発明は、前記ケーシングの側部に、前記内部空間に通じる脱気口が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、脱気口に吸引手段を接続することにより、ロータが回転中であっても、前記内部空間から空気を強制的に吸引することができる。したがって、移送対象の移送物に空気が混在する場合、この移送物から空気を逐次抜き取ることができるので、移送物の安定した移送が可能となり、移送物の移送重量を安定化することができる。
【0017】
また本発明は、前記カバー体が、前記ケーシングに対して着脱自在に装着されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に従えば、カバー体を取外すことによって前記内部空間内のベーン等のメンテナンスが容易になし得る。
【0019】
また本発明は、移送物供給部が、前記カバー体の上部に着脱自在に設置されたコーン形ホッパーからなることを特徴とする。
【0020】
本発明に従えば、移送物供給部がホッパーからなるから、移送物の一次的な貯留が可能となり、しかも、コーン形ホッパーからなるから、貯留された移送物の下方の流入口への移行がスムースに成される。さらに、ホッパーがカバー体の上部に着脱自在に設置されているから、ホッパーの清掃が容易になし得、これにカバー体が着脱自在である構成を付加すれば、掻取部材の交換等のメンテナンスをも容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に従えば、移送物供給部の内面に、前記ロータの上端部にシャフトを介して取付けられた掻取部材が近接して臨んでおり、この掻取部材は、ロータおよびシャフトの回転に連動し前記移送物供給部の内面に近接して回転するよう構成されているから、移送物供給部の内面に付着しようとする移送物は、掻取部材の作用によって掻取られ、移送物供給部内での移送物のブリッジの発生が防止され、前記内部空間内への移送物の流下、および流出口から内部空間への流入が滞ることなくスムースになされる。しかも、掻取部材はロータの回転に連動して回転するよう構成されているから、掻取部材を回転駆動させるための専用の駆動手段を不要とし、また、掻取部材を駆動制御させるための独自のシーケンスを装置に組込むことも不要とされ、装置コストの高騰を来たす懸念もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ただし以下の実施形態に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載のない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、説明例にすぎない。また、本実施形態にかかる図面は、本発明の特徴を理解しやすくするため、寸法比率を無視して作成している。
【0023】
図1は、本発明の一形態である竪型ベーンポンプ1の構成を示す断面図であり、図2は図1の竪型ベーンポンプ1においてカバー体2を取外して上から見た平面図である。なお、図1は図2の切断面線I−Iから見た断面図である。図3は同竪型ベーンポンプ1におけるカバー体2の平面図であり、図4は同竪型ベーンポンプ1の主要部を分解した状態の側方から見た断面図であり、図5は同竪型ベーンポンプ1におけるロータ8、ケーシング14およびベーン20の関係を示す分解斜視図であり、図6は同竪型ベーンポンプ1におけるシャフト27、掻取部材36およびカバー体2の関係を示す分解斜視図である。
【0024】
図1〜図6に示すようにベース部3にモータ4が設置され、モータ4の水平な出力軸の軸回転は、減速機5によって減速されると共に、減速機5内に組込まれた図示しない笠歯車等の駆動伝達機構によって、鉛直な回転軸線6まわりに回転する回転軸7に駆動力が伝達される。回転軸7は、ロータ8の下半部となるロータ軸部9に形成された軸取付穴10に嵌合され、図示しないキーによって相互の回り止めが成され、これによりロータ8が回転軸7と共に回転軸線6まわりに(図2の矢印a方向参照)回転可能とされる。ロータ8の上半部はロータ本体部11とされ、このロータ本体部11には、回転軸線6に直交しかつ互いに60°の角度を成して交差する3条のベーン溝12が形成され、これら3条のベーン溝12は、いずれもロータ8の上端において開口している(図5参照)。
【0025】
なお、ベーン溝12およびベーン20の数は、3条および3枚に限らず、2条および2枚、あるいは4条および4枚であってもよい。
【0026】
また、ベーン溝12が交差する中心部の底部に、回転軸線6に沿ったボルト孔を貫設し、このボルト孔にボルトを挿通して、回転軸7に螺合することによってロータ8と回転軸7とを結合するようにしてもよい。
【0027】
前記ベース部3上には架台13が構築され、この架台13には、ケーシング14がボルト15を介して固定的に設置されている。このケーシング14は、下部のロータ保持部16と、上部のポンプ室部17とからなる。ロータ保持部16では、ロータ8におけるロータ軸部9をテフロン(登録商標)等からなるブッシュ18,19を介して回転可能に支持し、ポンプ室部17は、前記ベーン溝12に嵌着されるベーン20の内部空間21を形成する。ロータ保持部16とポンプ室部17とは、図示を省略するボルト等の締結手段によって一体とされ、締結面間にはOリング22が介在され、締結面間のシールが達成されている。
【0028】
ケーシング14は、ロータ保持部16をして、架台13に形成された透孔23より下方に突出するよう支持され、前記ボルト15によって架台13に固定されている。この状態でロータ8のロータ軸部9がロータ保持部16より下方に突出し、架台13の中間棚部24に支持された前記減速機5から鉛直方向に突出する回転軸7に結合されている。回転軸7における減速機5からの突出基部まわりにはスペーサ25が嵌着され、このスペーサ25によって、ロータ軸部9の下端と減速機5の上面との間の間隔調整がなされる。
【0029】
ロータ保持部16によるロータ軸部9の支持機構としては、図示を省略するが、ブッシュ18に代え、スタフィングボックス、グランドパッキンおよびグランド押え部材の組合せによって構成してもよい。
【0030】
前記ロータ8の上端面には、前記ロータ8と同心の円形凹部26が形成され、前記凹部26にはシャフト27が嵌め込まれ、3本の六角穴付きボルト28によって固定されている(図2および図6参照)。前記ロータ8の上端部には前述のように回転軸線6を中心とし互いに60°の角度で交差する3条のベーン溝12が開口しており、ベーン溝12には3枚のベーン20(20A,20B,20C)が、それぞれのベーン溝12の長手方向に沿って摺動自在に嵌着されている。3枚のベーン20は、逆凹形のベーン20A、H形のベーン20Bおよび凹形のベーン20Cからなり、これらは組合わせた状態でベーン溝12に嵌着されている。
【0031】
前記シャフト27は、ベーン溝12に3枚のベーン20が嵌着された状態で前記凹部26に嵌め込み固定され、これにより、ベーン20の上方への抜出しが防止される。シャフト27の下面には、ベーン溝12に対応しかつこれらベーン溝12と同幅の溝29が形成され、ベーン溝12に嵌着されたベーン20の上縁部分がこの溝29によって受容される。
【0032】
図2に示すように、前記ケーシング14におけるポンプ室部17に形成されるベーンの内部空間21は、回転軸線6を中心として90°毎に区画された4つの区画域S1,S2,S3,S4によって構成される。第1の区画域S1では、内部空間21の対応する内壁面21Aが、前記回転軸線6の中心を曲率中心とし、かつロータ本体11より大きな曲率半径の1/4円弧面であり、ロータ本体11の外周面との間に周方向に沿って一定幅の扇形の空域(流路)が形成される。
【0033】
第1の区画域S1と対向位置の第3の区画域S3では、内部空間21の対応する内壁面21Cが、前記回転軸線6の中心を曲率中心とし、かつロータ本体11の外周面に近接する1/4円弧面であり、内壁面21Cとロータ本体11の外周面との間には一定幅のわずかな隙間が形成される。
【0034】
第2の区画域S2は、第1の区画域S1におけるロータ8の回転方向aの下流側に隣接し、第1の区画域S1と第3の区画域S3との間に位置する。この第2の区画域S2では、対応する内壁面21Bが、第1の区画域S1に対応する内壁面21Aから第3の区画域S3に対応する内壁面21Cに連なる曲面とされ、これにより、内壁面21Bとロータ本体11の外周面との間の空域(流路)が、前記回転方向aの下流側に向かって漸次狭くなる形状とされる。
【0035】
第4の区画域S4は、第3の区画域S3におけるロータ8の回転方向aの下流側に隣接し、第3の区画域S3と第1の区画域S1との間に位置する。この第4の区画域S4では、対応する内壁面21Dが、第3の区画域S3に対応する内壁面21Cから第1の区画域S1に対応する内壁面21Aに連なる曲面とされ、これにより、内壁面21Dとロータ本体11の外周面との間の空域(流路)が、前記回転方向aの下流側に向かって漸次広くなる形状とされる。
【0036】
4つの内壁面21A〜21Dによって構成される内部空間21の内面形状は、回転軸線6を中心とする対向面間の距離が一定となるよう形成される。したがって、3条のベーン溝12に嵌着される3枚のベーン20の長さは、いずれもこの距離と等しく形成され、ベーン溝12に保持された状態でロータ8が回転すると、各ベーン20はベーン溝12内の摺動を伴いながら常にその両端部が内壁面21A〜21Dのいずれかに摺接しながら内部空間21内を回転することになる。
【0037】
前記内壁面21Dの上部は、さらに遠心方向に刳り抜かれ、この刳抜部分21Eの平面形状は、後記するカバー体2に設けられた流入口46の形状と合致するよう形成されている。また、前記第2の区画域S2に対応する内部空間21の内壁面21Bには、前記ケーシング14の外側部に通じる流出口30が形成され、この流出口30に対応するケーシング14の外側部には図示しない流体輸送管に接続される継手部31が取付けられている。
【0038】
さらに、前記第3の区画域S3に対応する内部空間21の内壁面21Cには、前記ケーシング14の外側部に通じる脱気口33が形成され、この脱気口33に対応するケーシング14の外側部には図示しない吸引管に接続される継手部34が取付けられている。
【0039】
シャフト27は、その上面に前記回転軸線6を中心として径方向に延びる長穴状(長円状)の嵌合穴35を備えている。この嵌合穴35には、掻取部材36の取付基部37が着脱自在に嵌合されている。図1〜図6に示す掻取部材36は、前記取付基部37と、前記取付基部37の中心に固着されたロッド部38と、前記ロッド部38の先端に固着された板状、円柱状若しくは直方体形状の掻取片39とから構成され、ロッド部38は、掻取片39が後記するホッパー48の内面に近接するよう曲成されている。
【0040】
取付基部37は、前記嵌合穴35に嵌合保持され得る平面形状が長円形状であるが、その長手方向長さは、図6に示すように、嵌合穴35の長手方向長さに比べ、両端に0.5mm程度のクリアランスcが形成されるような大きさとされる。これは、後記するように、掻取部材36が回転中に、ホッパー48の内面に付着形成される移送物の固形物に掻取片39に当接した際、取付基部37が嵌合穴35内をクリアランスcがその長手方向に移動し得るようにするためである。これにより、掻取片39が固形物を乗り越え、当接による衝撃を緩和することができる。
【0041】
カバー体2は、前記ケーシング14の上端面の形状と合致する正方形の板状体からなり、その4隅にはボルト挿通孔40が形成されている。ケーシング14の上端面の4隅にはねじ孔41が形成され、このねじ孔41に埋め込みボルト(図示せず)が螺着される。この埋め込みボルトをカバー体2のボルト挿通孔40に挿通させ、カバー体2の上面側よりアイナット42(図1参照)を螺着することによって、カバー体2がケーシング14の上端面に締結固定される。
【0042】
ケーシング14の上端面における内部空間21の周辺部には、Oリング141が周溝に収容された状態で装着され、これにより、ケーシング14の前記内部空間21がカバー体2によって気密的に覆われる。カバー体2は、ロータ8の上端面に突出するよう設置されたシャフト27を覆う短円筒部43をその中央部に隆起状に備え、この短円筒部43の上底部には透孔44が形成されている。この透孔44の径は、前記掻取部材36の取付基部37の長さより小さく、掻取部材36のロッド部38および掻取片39を挿通し得る大きさとされている。
【0043】
したがって、取付基部37を嵌合穴35に嵌合し、ロッド部38および掻取片39を透孔44に挿通させ、カバー体2をケーシング14上端面に締結固定すると、透孔44の内周縁部45によって、取付基部37が嵌合穴35から抜出不能に嵌合保持される。
【0044】
カバー体2の前記短円筒部43の周辺部であって、前記ケーシング14の内部空間21における第4の区画域S4に対応する部位には、前記刳抜部分21Eの平面形状に略合致する形状の流入口46が形成されている。また、カバー体2の上面であって、前記短円筒部43の外側に前記短円筒部43と同心大径の接続円筒47が固設されている(図6では便宜上2点鎖線で表している)。この接続円筒47は、移送物供給部としてのコーン形ホッパー48を接続するためのものであり、その上端には、Oリング49を介在させた状態でクランプリング50によって、コーン形ホッパー48の下端部が結合接続される。これにより、コーン形ホッパー48の下部が流入口46に通じ、さらにこの流入口46を介してベーンの内部空間21に連通する。
【0045】
コーン形ホッパー48の外面部には、図4に示すようにケーシング14の外側部に取付けられたヒンジ部51に連結されるリンクアーム52が固設されている。したがって、前記クランプリング50のクランプを解除し、ホッパー48を、ヒンジ部51を支点として回動させることによって、カバー体2の上端から離脱することが可能とされる。また、ホッパー48の外面部には取手53が取付けられており、ホッパー48の着脱操作の際に使用される。さらに、ホッパー48の外面部にはホッパー48の内部に臨む邪魔板部片54が取付けられている。
【0046】
この邪魔板部片54は、掻取部材36の回転攪拌作用と相乗して、ホッパー48内の移送物の塊状化を防ぎ、あるいは、投入される移送物が固形バター等の場合は、これを崩すよう機能する。邪魔板部片54の形状としては、棒状、板状その他の形状が可能であり、また、ホッパー48の中心部に臨むような形状であってもよい。ホッパー48の上端部には、移送物の輸送系(図示せず)が連結され、ホッパー48内に適宜移送物が投入される。
【0047】
図4は、ホッパー48、カバー体2および掻取部材36を取外した状態を示している。すなわち、前記クランプリング50のクランプを解除すれば、ホッパー48はヒンジ51を支点とし、リンクアーム52に支持された状態で図のように傾斜させることができる。これによりカバー体2の上面が開放される。次いで、アイナット42を緩めて螺着を解除することにより、カバー体2を取外すことができる。アイナット42は、そのリング部に適当な工具を挿入して回転操作することによって容易に緩めることができる。掻取部材36は、その取付基部37をしてシャフト27の嵌合穴35に嵌合されているだけであるから、簡易に取出すことができる。このように各部を着脱自在とすることにより、ホッパー48の内部やカバー体2の清掃等のメンテナンスを容易に実施することができる。また、掻取部材36を移送物の性状に合ったものに交換する作業も簡易に実施することができる。
【0048】
次に、上記のように構成された竪型ベーンポンプ1の作用を説明する。図1のように組立てられた竪型ベーンポンプ1において、モータ4がオンされ、回転軸7が所定の減速度で回転すると、ロータ8が回転軸線6まわりに回転する。ホッパー48に投入された移送物は、下方の流入口46に向け流下する。ロータ8の回転に伴い、掻取部材36も回転し、ホッパー48内の移送物はこの攪拌作用を受けると共に、ホッパー48の内面に付着しようとする移送物が掻取片39により掻取られ、ブリッジを生じることなく移送物の円滑な流下が促進される。
【0049】
ロータ8の回転に伴い、ケーシング14におけるベーンの内部空間21内でロータ本体11が回転軸線6まわりに矢印a方向に回転する。ロータ本体11では、回転軸線6に直交する3条のベーン溝12に、3枚のベーン20A,20B,20Cがそれぞれ摺動自在に保持されているから、ロータ本体11の回転に伴い内部空間21の内面形状に倣うように、それぞれのベーン20A,20B,20Cがベーン溝12内の摺動移動を伴いながら回転する。
【0050】
各ベーン20A,20B,20Cは、回転中その両端部が内部空間21の4つの内壁面21A〜21Dのいずれかに接する状態で回転するから、各ベーン20A,20B,20Cのロータ本体11の外周面より突出する部分が、内部空間21の内壁面との間で複数のポンプ室を形成する。このポンプ室の回転方向aに沿った移動に伴い、ホッパー48から各ポンプ室に流入する移送物が流出口30に向け移送され、流出口30、継手部31および流体輸送管(図示せず)を経て、次の移送物処理工程(図示せず)に向け輸送される。すなわち、ホッパー48内から流下した移送物は、流入口46を経て、内部空間21における第4の区画域S4に流入する。この第4の区画域S4に流入した移送物は、ベーン20の回転作用を受けて第1の区画域S1に押しやられる。第4の区画域S4では、内部空間21の内壁面21Dに前記刳抜部21Eが形成されているから、移送物の流入が円滑になされる。また、第4の区画域S4から第1の区画域S1にかけては、内壁面21Dとロータ本体11の外周面との間隔が回転方向aに沿って広がるから、移送物の移送が抵抗少なくなされる。
【0051】
第1の区画域S1に移送された移送物は、ベーン20の回転作用により、第2の区画域S2に向け移送されるが、第1の区画域S1における内部空間21の内壁面21Aとロータ本体11の外周面との間隔は一定とされているから、この移送も円滑になされる。第2の区画域S2においては、内部空間21の内壁面21Bとロータ本体11の外周面との間隔は漸次狭くなるから、第2の区画域S2に達した移送物は、内壁面21Bには流出口30が形成されているから、逐次この流出口30より継手部31を経て流出される。第3の区画域S3では、内部空間21の内壁面21Cとロータ本体11の外周面とは、わずかな隙間が確保されているだけであるから、第2の区画域S2に達した移送物は、第3の区画域S3に至ることなく流出口30よりケーシング14の外に流出される。
【0052】
第3の区画域S3における内部空間21の内壁面21Cには、脱気口33が設けられており、その継手部34に図示しない吸引手段を接続しておけば、内部空間21内が真空引きされ、移送物が脱気される。したがって、空気混在の移送物の移送が容易に成され、脱気によって移送物の締り状態が一定となり、定量性が向上する。また、移送物が、たとえばハムやソーセージなどのような粘性食品原料である場合は、脱気されることによって細菌の繁殖を防ぐことができ、この原料を使った食品の腐敗防止に役立つ。脱気口33は、第3の区画域S3における狭い間隙に開口されるから、脱気口33に移送物が吸引されることがない。第4の区画域S4には、ホッパー48から移送物が供給されており、ロータ8の継続的な回転により、上記作用が繰返され、移送物は流出口30より逐次流出されてゆく。
【0053】
各ベーン20は、たとえば食品用エンジニアリングプラスチックとも呼ばれる合成樹脂からなり、ベーン溝12に対して摺動自在に嵌着されている。またケーシング14における内部空間21の内壁面21A〜21Dは、ステンレス鋼からなる。
【0054】
掻取部材36は、平面形状が長円形状の取付基部37をシャフト27の嵌合穴35に嵌合保持させることによって、ロータ8の回転に伴い回転軸線6のまわりに回転する。この回転によって、掻取片39がホッパー48の内面に近接した状態で回転し、掻取片39の回転によってホッパー48内の移送物がホッパー48の内面に付着するのを防止し、ホッパー48の下部でのブリッジの発生を抑え、流入口46への移送物の円滑な流入が達成される。
【0055】
また、掻取片39は、その回転によってホッパー48内の移送物の攪拌機能も奏し、したがって、ホッパー48内に異なる種類の移送物を投入し、掻取部材36によって攪拌混合しながら、前記ポンプ移送するような仕様とすることもできる。取付基部37を図示のような長円形状とすることにより、シャフト27からの回転トルクの伝達が効果的になされる。掻取部材36の各構成部材はステンレス鋼によって形成されるが、取付基部37とロッド部38との固着一体化は溶接によって成される。この場合、取付基部37とロッド部38とを螺着結合した上で溶接一体とすること等も可能である。
【0056】
図7(a)〜図7(d)は、掻取部材36の変形例を示す。図7(a)の掻取部材36は、取付基部37と、曲成されたロッド部38のみからり、ロッド部38の先側部分がホッパー48の内面に近接して掻取片として機能する。図7(b)の掻取部材36は、取付基部37と、二股状のロッド部38と、このロッド部38の各先端に固着された掻取片39とからなる。ロッド部38は、二股状に限定されるものではなく、たとえば三股状、四股状に形成してもよい。図7(c)の掻取部材36は、取付基部37と、垂直な支柱状ロッド部38と、このロッド部38に固着されたスクリュー羽根状の掻取片39からなる。図7(b)および図7(c)の例は掻取機能に加えて攪拌機能もより効果的に発現される。図7(d)の掻取部材36は、ロッド部38がホッパー48の内面のコーン形状に沿って曲成されたスパイラル形状とされている。これらは、処理対象の移送物の性状に応じて適宜選択採用される。
【0057】
図8は、掻取部材36のさらに別の変形例を示し、上記と同様の取付基部37にロッド部38が固着され、このロッド部38の先端には掻取片39が、ロッド部38の軸心まわりに回転可能に支持されている。掻取片39は、羽根車部39Aとローラ部39Bとが一体とされてなり、取付基部37がシャフト27と共に回転すると、ローラ部39Bは、ホッパー48の内面に摺接し、この摺接によってホッパー48の内面を転動する。ローラ部39Bの転動によって、羽根車部39Aがロッド部38の軸心まわりに自転しながらホッパー48の内面に近接して回転する。この自転を伴う回転によって、移送物の掻取機能がより効果的になされる。
【0058】
図9(a)および図9(b)は、カバー体2の別の実施形態を示すものであり、図9(a)は図1と同様の切断面線から見た断面図、図9(b)は図4と同様の切断面線から見た断面図である。前記実施形態におけるカバー体2の場合、補助ローラ27を覆う短円筒部43が隆起状に形成されているため、その周囲と接続円筒47との間が凹部となり、移送物がその性状によってはこの凹部に滞る懸念があった。本実施形態では、接続円筒47に代え、短円筒部43の上面からホッパー48との接続端面に至るテーパ状の漏斗状部55を流体流入部46に対応する部位を除き形成している。このような形状とすることにより、上記移送物の滞りの懸念が払拭される。その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付しその説明を省略する。
【0059】
図10は移送物供給部が流体投入シュート56からなることを示している。この投入シュートは直管部分56Aと、その上端に連なる円錐状部56Bとからなり、掻取部材36の掻取片39は、この直管部分56Aの内面に近接して回転するよう構成される。このような構成により、上記と同様に直管部分56Aの内面に対する移送物の付着が防止され、ブリッジの発生もなく、スムースな移送物の内部空間21への流入が成される。カバー体2は、前記図1〜図6に示す実施形態と同様のものとして示しているが、図8に示すカバー体2をこれに充当することはもとより可能である。また、流体投入シュート56の形状は図示のものに限定されず、たとえば、直管を処理システムのレイアウト構成に応じて適宜曲成し、カバー体2の接続円筒47の上端部に至らせ、接続円筒47に接続するよう構成してもよい。その他の構成は図1と同様であるので、共通部分に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
なお、ケーシング14およびカバー体2の平面形状は、正方形に限らず、矩形或いは円形であってもよい。また、シャフト27の嵌合穴35および掻取部材36の取付基部37の平面形状を長円形状としているが、長方形、楕円形或いは円形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一形態である竪型ベーンポンプ1の構成を示す断面図である。
【図2】図1の竪型ベーンポンプ1においてカバー体2を取外して上から見た平面図である。
【図3】同竪型ベーンポンプ1におけるカバー体2の平面図である。
【図4】同竪型ベーンポンプ1の主要部を分解した状態の側方から見た断面図である。
【図5】同竪型ベーンポンプ1におけるロータ8、ケーシング14およびベーン20の関係を示す分解斜視図である。
【図6】同竪型ベーンポンプ1におけるシャフト27、掻取部材36およびカバー体2の関係を示す分解斜視図である。
【図7】図7(a)〜図7(d)は掻取部材36の種々の変形例を示す概念図である。
【図8】掻取部材36の更に別の変形例を示す斜視図である。
【図9】カバー体の別の実施形態を示し、図9(a)は正面断面図、図9(b)は側面断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である竪型ベーンポンプ1の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 竪型ベーンポンプ
2 カバー体
6 回転軸線
8 ロータ
14 ケーシング
20 ベーン
21 ベーンの内部空間
27 シャフト
30,46 流出口
33 脱気口
35 嵌合穴
36 掻取部材
37 取付基部
39 掻取片
44 透孔
45 内周縁部
48 移送物供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直な回転軸線まわりに回転するロータと、
前記ロータの上部に、前記回転軸線に直交し、かつ前記直交方向に摺動可能に支持された複数のベーンと、
前記ロータおよびロータが回転可能に収容される内部空間を有し、側部に流動状の移送物を排出するための流出口が形成されるケーシングと、
前記ケーシングの上部を覆い、前記内部空間に連通する流入口を有するカバー体と、
前記カバー体の上部に設置され、下部が前記流入口に移動物を供給する移送物供給部とを含む竪型ベーンポンプにおいて、
前記ロータの上端部にはシャフトを介して掻取部材が設けられ、
前記掻取部材は、前記カバー体から突出して前記移送物供給部の内面に臨み、前記ロータおよび前記シャフトの回転に連動し、前記移送物供給部の内面に近接して回転駆動されていることを特徴とする竪型ベーンポンプ。
【請求項2】
前記掻取部材は、前記シャフトに形成された嵌合穴に嵌合して支持される取付基部と、前記取付基部に固設された掻取片とを含み、
前記取付基部は、前記カバー体に形成された透孔の内周縁部によって前記嵌合穴から抜出しが阻止された状態で嵌合して保持され、
前記掻取片は、前記透孔内から延びて前記移送物供給部の内面に臨むように形成されていることを特徴とする請求項1記載の竪型ベーンポンプ。
【請求項3】
前記嵌合穴がシャフトの径方向に沿った長穴形状であって、前記取付基部が前記長穴形状に略合致する形状であることを特徴とする請求項2記載の竪型ベーンポンプ。
【請求項4】
前記前記ケーシングの側部には、前記内部空間に通じる脱気口が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の竪型ベーンポンプ。
【請求項5】
前記カバー体が、前記ケーシングに対して着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の竪型ベーンポンプ。
【請求項6】
前記移送物供給部が、前記カバー体の上部に着脱自在に設置されたコーン形ホッパーからなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の竪型ベーンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−101297(P2010−101297A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276172(P2008−276172)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000167967)江口産業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】