説明

竪型焼成炉

【課題】構造が簡単で安価に作れ、燃焼ガスを有効的に用いることのできる竪型焼成炉を提供することを課題とする。
【解決手段】 静止せる竪型の筒状をなす炉体10内の上部に予熱領域そして下部に焼成領域を形成する竪型焼成炉において、予熱領域は燃焼ガス供給装置15が設けられている炉蓋14と落下開口11Aを有する炉床11との間の空間に形成され、焼成領域が炉床11より下方の空間に形成され、炉体10内に上下方向で予熱領域及び焼成領域にわたり内部空間を形成し下方に向け開口する循環筒体20が配設され、炉蓋14に取り付けられて送気装置16が設けられ、循環筒体20の内部空間が循環筒体20の上部にて送気筒16Aに接続されていて、循環筒体20の下端の開口部22から流入するガスが上記内部空間を上昇し上記送気装置16へ送られて再び該送気装置16の空気と共に再び炉体10内に戻される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竪型焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の焼成炉としては、特許文献1に開示されているものが知られている。
【0003】
特許文献1の竪型焼成炉は、炉蓋と、該炉蓋の周囲で垂下して設けられた周壁と、この周壁の下縁と回転シールを介して相対回転するように周縁が位置している水平環板状の炉床とで囲むことにより予熱空間を形成し、該炉床の中央開口の内縁から垂下し炉床と共に回転する筒状体内に焼成空間そしてその下方に冷却空間を形成している。炉蓋には下方に向け燃焼ガスを放出するバーナ等が設けられていて、回転せる炉床上の原料は上記燃焼ガスに面する表層で予熱され、プッシャで押し出されて上記中央開口から筒状体内へ落下する。
【0004】
筒状体内には、上方に向けディフューザ及びエジェクタが設けられている。このエジェクタは下端側で外部からの空気の供給を受け、これを上端側で上記予熱空間に向け上方へ噴出する。この噴出によりディフューザ下部における圧力が低下して、筒状体とディフューザとの間に形成される焼成空間で、上記炉床からの落下原料が堆積された堆積層内に予熱空間内の燃焼ガスが引き込まれ、この堆積層内での原料の焼成が促進される。筒状体の下方には、該筒状体の回転を許容する回転シールを介して、静止せる取出部分が設けられている。
【特許文献1】特開平8−337447
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の竪型焼成炉にあっては、構造上そして機能上において改善すべき余地があった。
【0006】
先ず、構造上については、炉床とこれから垂下する筒状体が一体となって回転し、炉床より上方に位置する上記炉蓋及び周壁、そして筒状体より下方に設けられた取出部分が静止している。このような特許文献1では、上記炉床及び筒状体の回転のために回転駆動機構を設けると共にその点検が必要であること、相対回転部分に相対回転を許容する回転シールを設けなくてはならないこと、回転シールの状態ではガスの漏洩があり外部環境を汚染すること等である。
【0007】
また、機能上では、エジェクタの空気噴射により、ディフューザの下部における圧力が低下して、焼成空間内の原料堆積層の上層面から予熱空間内の燃焼ガスをこの堆積層内に引き込むが、その一方で、エジェクタから上向きに噴射された空気は、炉の軸線を通る中央部で燃焼ガスを上方に押し戻すこととなる。すなわち、中央部では上向きの流れが、そしてその周囲では下向き流れが生ずる。したがって、両方の流れの境界域では互いに撹乱し合って抵抗となるし、全体としても有効に上記堆積層への下向き流れを生じているとは言えない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、回転部分を設けることなく、構造を簡単かつ安価なものとし、機能上も、燃焼ガスを有効的に堆積層内に引き込んで、焼成をさらに向上させる竪型焼成炉を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る竪型焼成炉は、静止せる竪型の筒状をなす炉体内の上部に予熱領域そして下部に焼成領域を形成する。
【0010】
かかる竪型焼成炉において、本発明では、予熱領域は燃焼ガス供給装置が設けられている炉蓋より下方で炉体内面から半径内方に延び中央部に落下開口を有する炉床より上方の空間に形成され、焼成領域が該炉床より下方の空間に形成され、炉体内に上下方向で予熱領域及び焼成領域にわたり内部空間を形成し下方に向け開口する循環筒体が配設され、炉蓋に取り付けられて炉体内の下方へ向け送気する送気筒を有する送気装置が設けられ、上記循環筒体の内部空間が該循環筒体の上部にて上記送気筒に接続されていて、循環筒体の下端の開口部から流入するガスが上記内部空間を上昇し上記送気装置へ送られて再び炉体内に戻されることを特徴としている。
【0011】
このような構成の本発明の竪型焼成炉では、炉体はどの部分でも回転しない。炉外から落下供給された、炉床上の原料は表層が燃焼ガスにより予熱領域で予熱され、プッシャ等により炉床中央部の落下開口から落下し、炉体と循環筒体との間の空間に堆積し焼成領域を形成する。
【0012】
焼成領域では、上記循環筒体の下部開口から、堆積層内の比較的高温のガスが流入し、循環筒体の内部空間を上昇し送気装置の送気筒へ至る。循環筒体から送気装置へ送られてきたガスは炉体内に向け下方へ送り出される。したがって、予熱空間内の燃焼ガスは降下して堆積層へ到達し、堆積層からは循環筒体の開口への流れに乗る。このようにして、予熱領域の燃焼ガスは焼成領域の堆積層内に積極的に流入し、ここでの焼成を高める。
【0013】
本発明において、送気装置は外部から空気を導入するノズルを有しているようにすることができる。この場合には、外部からの空気は上記送気筒からの燃焼ガスとの混合ガスとなって炉体内に向け送り出され、上記堆積層へ達する。
【0014】
本発明において、送気装置は送気方向で上流の送気筒部分が炉体外に突出し、循環筒体は上部が炉体外に突出していて該上部で上記送気装置の送気筒の上流側部分に接続されているようにすることができる。こうすることにより、接続部分が炉体外に位置することとなり保守・点検が容易となる。また、接続部分が炉体外で炉蓋よりも上方に位置することとなるので、炉蓋に取り付けられて炉体内の下方へ空気を送り込むのに炉蓋よりも上方に設けられる送気装置との接続を行う上で好都合となる。
【0015】
本発明において、循環筒体は内筒と外筒で二重筒に形成され、内筒の内部空間が下方に開口し上部で送気筒と接続されており、内筒と外筒との間に形成される環状空間は下部位置で外部からの冷却空気を導入する導気管と接続されており、かつ環状空間は上部位置で燃焼ガス供給装置に接続されているようにすることができ、こうすることにより、内筒内のガスが上述のように送気装置の送気筒へ供給されると共に、環状空間内の冷却空気が該環状空間を上昇して内筒及び外筒を冷却し上昇後に比較的高温な状態で上記燃焼ガス装置へ燃焼用空気として供給されることとなる。また、上記環状空間は上部位置で送気装置のノズルにも接続されていて、環状空間内を上昇後に昇温した冷却空気が送気装置に供給されるようにもできる。
【0016】
導気管は環状空間の周方向複数位置で接続される複数本設けられているようにできる。複数の導気管の間から、堆積層内のガスが流れて上記循環筒体の下部開口へ達する。
【0017】
本発明において、送気装置は該送気装置の送気筒が燃焼ガス供給装置の燃焼ガス噴出口と共通の噴出軸線上に位置しているように設けることができる。こうすることにより、循環筒体の内部空間から受けた燃焼ガスが送気装置の送気筒から送気ガスとして噴出されて燃焼ガス供給装置からの噴出燃焼ガスと良好に混合された状態で炉体内へ供給される。
【0018】
この場合、送気装置は送気筒からの送気ガスが噴出軸線まわりに旋回流を生じるように形成されていることが好ましい。こうすることにより、混合された送気筒からの送気ガスと燃焼ガス供給装置からの噴出燃焼ガスが炉体内で均一に流れ予熱領域での予熱も均一化される。
【0019】
さらに、この場合、送気装置と燃焼ガス供給装置は炉体の軸線まわりの周方向で複数位置に配設されていることが好ましい。
【0020】
本発明において、循環筒体は周壁内で上下に延びる内部管体が周方向複数位置に設けられ、該複数の内部管体は上下端で周壁内に設けられた上環状ダクトそして下環状ダクトにそれぞれ接続され、該上環状ダクトが送気装置のノズルにそして下環状ダクトが外部からの冷却空気を導入する導気管に接続されているようにすることができる。こうすることにより、複数の管体の総表面積を大きく確保でき、周囲からの伝熱を良好に行い、内部管体内を上昇する空気をさらに高温にして燃焼ガス供給装置へ送り込まれ燃焼に寄与する。
【0021】
本発明において、循環筒体はその内部空間がブロワを介して送気装置の送気筒に接続されていて上記内部空間から送気筒へのガスの送入を促進せしめることが好ましい。
【0022】
さらに本発明においては、炉床より上方の空間に、高さ方向で炉床より上方そして原料供給口よりも下方の位置に、周方向複数箇所で半径方向に延びるブリッジが設けられていることが好ましい。原料供給口から落下供給された原料は炉床に原料の堆積層が形成され、この堆積層の上表面は上記ブリッジよりも上方に位置するが、その際、ブリッジ直下には原料不在空間が形成される。その結果、堆積層内の燃焼ガスの流通が良好となり、ここでの熱交換が高まる。
【0023】
本発明において、送気装置は、外部から石炭粉のような微粉固体燃料の供給を受け、該送気装置の送気筒そしてノズルの少なくとも一方から炉体内に噴出するようにもできる。微粉固体燃料は、その粒径の選択により、焼成筒体内の原料堆積層の上表面にまで落下してこの堆積層で燃焼することとなり、燃焼領域が下方にまで及ぶようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以上のごとく、竪型の炉体が回転部分を有することなく全体として静止せる炉体として形成したので、装置がきわめて簡単化し安価となると共に、炉体内に循環筒体を設け、循環筒体内に流入した燃焼ガスを焼成領域に向け下方に噴出する送気装置を設けることとしたので、燃焼ガスが焼成領域の原料堆積層に進入降下し、上記循環筒体の下部開口部を経て該循環筒体内を上昇し、再び上記送気装置へ至る循環流を形成して、焼成領域への燃焼ガスが積極的に進入することにより原料との熱交換が盛んに行われて焼成が良好に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
<第一実施形態>
図1において、回転することなく静止せる竪型の筒状をなす炉体10は、半径方向中央部に落下開口11Aが形成された環板状の炉床11と、該炉床11の外周縁から上方に延びる予熱筒体12と、該炉床11の内周縁、すなわち上記落下開口11Aの周縁から下方に延びる焼成筒体13とを有している。
【0027】
予熱筒体12は、上方に向け拡径された部分を有し、その上端縁に環板状の天板部12Aが取り付けられている。該天板部12Aは、半径内方に延び、その内周縁から内筒部12Bが垂下している。この内筒部12Bの下端は炉蓋14の外周部に固定され、該内筒部12Bがこの炉蓋14を支持している。
【0028】
炉蓋14は、炉体内に面する下面側が耐火レンガ14Aにより形成されていて、全体として耐火性を有している。炉蓋14の中央部には、該炉蓋14を上下に貫通して、後述の循環筒体20が設けられている。
【0029】
炉蓋14には、燃焼ガス供給装置としてのバーナ15と空気を炉体内に送り込む送気装置16が、それぞれ複数設けられている。バーナ15と送気装置16とは、循環筒体20を取り囲むような周方向複数位置で交互に上記炉蓋14に設けられている。バーナ15は、その燃料の種類を問わず、液体燃料でも、気体燃料でも、固体燃料でもよい。また、送気装置16は、送気筒16A内にノズル16Bが配されて形成されており、送気筒16Aの下端側が炉蓋14で開口して炉体10内に連通し、上記ノズル16Bは、供給を受けた空気を上記送気筒16Aへ噴射するように、ノズル16Bの下端側の出口が上記送気筒16A内で開口している。この送気筒16Aは、喉部から炉蓋14の位置での噴出開口16A−1に向け末広がりとなっていて、上記ノズル16Bの出口は上記喉部に位置している。上記バーナ15と送気装置16は、共に、後述の循環筒体20と接続されているが、その接続関係は、後に循環筒体20と併せて説明する。
【0030】
上記天板部12A、内筒部12B、予熱筒体12そして炉床11によって包囲される空間は、焼成に先立ち予熱されるべき石灰石等の原料Mを炉床11上に堆積するのに供され、特にその空間の下部で予熱領域を形成する。この空間の上部には、原料供給管17が天板部12Aを突入して該天板部12Aに接続されている。この原料供給管17は、上記天板部12Aの周方向複数位置に設けられており、各原料供給管17は、天板部12Aより上方の炉体外で、二つに分岐されていて、一方が傾斜せる原料投入管17A、他方が上方に垂立する排気管17Bとなっている。複数の原料投入管17Aはそれらの上端で原料貯留槽18の底壁18Aに開口して接続されている。該原料貯留槽18は、仕切板18Bによって上空間と下空間に仕切られており、両空間は仕切板18Bから垂下する複数の短筒18Cにより連通している。また、原料貯留槽18の蓋板には、開閉可能な充填口18Dが設けられている。該充填口18Dは、開口されて適宜時に原料Mを外部から槽内の上空間へ充填されるのに供する。上空間に供給された原料Mは上記短筒18Cを経て下空間に落下する。
【0031】
このとき短筒18Cは原料Mの落下通路面積を絞っていてチョークされており、また原料Mで充満しているので、上空間と下空間とは、この原料Mによってシールされていることとなる。下空間に落下した原料Mは、さらに原料投入管17Aを経て炉体内へ投入され上記炉床11上に堆積する。炉床11上に堆積した原料Mは、半径内方を向く自由表面層
で加熱されて予熱され、炉床11のすぐ上方位置で半径方向外方に延びる棒状のプッシャ11Bの長手方向往復動により、上記自由表面層の原料Mが逐次押し出されて上記落下開口11Aから落下する。
【0032】
上記原料投入管17Aから上方に向け分岐された複数の排気管17Bは、上記原料貯留槽18を取り囲むように設けられた環状ダクト19に接続されており、該環状ダクト19は、その吸引口19Aを経てブロワ等の図示せぬ吸引装置に接続されている。
【0033】
炉床11の落下開口11Aの周縁から垂下して設けられている肉厚筒状に耐熱材料で作られている焼成筒体13は、下方に向け拡径され、その下端には肉薄筒状の冷却筒体13Cが下方につぼまる形をなして設けられている。上記焼成筒体13の内面には、上下方向で異なる二位置に、周方向の複数箇所で後述の循環筒体20との間に架橋されたアーチ状のブリッジ13A,13Bが設けられている。これらのブリッジ13A,13Bは耐火レンガで作られていて、上段のブリッジ13Aと下段のブリッジ13Bとは、周方向で互いに異なる位置に設けられていて、原料Mの落下には支障ないようになっている。下段のブリッジ13Bは、上下方向で循環筒体20の下端部に位置している。上記落下開口11Aから落下する予熱原料Mは、上記焼成筒体13と上記循環筒体20との間で堆積し、その上表面は、通常、上下方向にて炉床11よりも下方で上記上段のブリッジ13Aよりも上方の位置となる。上記上表面は、焼成炉の使用状況によっては、炉床近く、あるいは炉床よりも若干上方に定められることもある。
【0034】
循環筒体20は、上端側が炉蓋14を上方に貫通して炉体外に位置し、下端は、既述のように、上下方向で下段のブリッジ13Bとほぼ同じ位置にある。該循環筒体20は、本実施形態では、全高さにわたり同じ径に作られており、上端が端板21で閉じられており、下端は開口部22となっている。該循環筒体20は、外筒20Aとこれよりも少し直径の小さい内筒20Bとを同心に有し、両者間に環状空間23が形成されている。該環状空間23は、上記端板21に接続されている部材24により上端が閉塞され、下端は、図2(A),(B)に見られる環板25により閉塞されている。上記内筒20Bの開口部22は該内筒20Bの下端に形成されている。
【0035】
上記循環筒体20の内筒20Bは、上端側にて、部材24の位置で管体26により上記送気装置16の送気筒16Aと接続されていて、内筒20B内の空間の上部と上記送気装置16の送気筒16Aの内部空間とが連通している。さらに、上記外筒20Aは管体27によりバーナ15と接続されており、外筒20Aと内筒20Bとの間の環状空間23の上部から該環状空間23内の空気がバーナ15へ燃焼用空気として供給されるようになっている。また、上記管体27は送気装置16のノズル16Bにも接続されていて、上記環状空間23内の空気は送気装置16へも供給される。その際、上記管体27はブロワ(図示せず)を経てノズル16Bに接続して、ノズル16Bへの供給を促進せしめてもよい。
【0036】
上記循環筒体20は、図2(A),(B)にも見られるように、下端側にて、内筒20Bが既述のように下方に開口された開口部22を有し、環状空間23は環板25により閉塞されている。しかし、この環板25には、周方向の複数位置に連通孔25Aが形成されていて、各連通孔25Aには下方に延びる導気管28が接続されている。この複数の導気管28はそれらの下端にて、図1に示される一つの中空円盤状のチャンバ29に連通しており、このチャンバ29には空気供給管29Aにより、外部から空気を供給されるようになっている。
【0037】
上記チャンバ29の底壁からは、下方に向け広がる有底のテーパ筒体30が垂下して設けられており、該テーパ筒体30には上下方向中間部に受気室31が形成されており、その一方の側面に空気供給管31Aが接続され、他方の側面には原料の進入を阻止する屋根状の斜板31Bが設けられた小開口31Cが形成されている。したがって、上記空気供給管31Aから受気室31に送られた空気は、上記小開口31Cから出て原料M内に流入す
る。その際、上記斜板31Bにより原料Mは小開口31Cから受気室31内へ入り込むことはない。
【0038】
上記焼成筒体13の下端には、下方に向け縮径するテーパ状をなす冷却筒体13Cが垂下し、この冷却筒体13Cから筒状の排出筒32が垂下している。該排出筒32は、上記テーパ筒体30を取り囲むように半径方向外側に位置し、テーパ筒体30との間に取出空間を形成するように、テーパ筒体30の底面よりも下方位置にまで延び、底壁32Aを有している。この底壁32Aには、上記テーパ筒体30の下端における外径よりも小さな直径の開口32Cが形成されており、ここから取出管33が垂下し、この取出管33にはロータリバルブ34が設けられている。上記排出筒32の底壁32Aの上方には該底壁32Aに近接して半径方向に往復動する棒状のプッシャ35が排出筒32を貫通して設けられている。
【0039】
次に、かかる構成の本実施形態装置について、原料が炉体内へ投入され炉体内で焼成される原理を図1ないし図2にもとづき説明する。
【0040】
(1)充填口18Dから原料貯留槽18の上空間へ供給された石灰石等の焼成対象物たる原料Mは仕切板18B上に貯留され、複数の短筒18Cから該原料貯留槽18の下空間へ落下し、底壁18Aから斜め下方に延びる複数の原料投入管17Aを経て落下し炉体10内の炉床11上に堆積される。炉床11上での原料Mの堆積層は、炉体10の半径方向内方に安息角をもって自由表面を形成する。
【0041】
(2)炉蓋14に設けられた燃焼ガス供給装置としての複数のバーナ15からは火炎が下方に向け噴出され、送気装置16では循環筒体20の外筒20Aと内筒20Bとの間の環状空間23からの空気がノズル16Bにより送気筒16Aの噴出開口16A−1から、後述の循環筒体20内からの燃焼ガスと共に下方へ炉体内に向け噴出される。
【0042】
(3)上記炉床11上の原料Mはその自由表面での加熱により予熱され、プッシャ11Bの作動により、逐次落下開口11Aから焼成筒体13内へ落下する。予熱された原料Mは焼成筒体13内に落下して上段のブリッジ13Aよりも上方位置に自由表面をもつように堆積される。
【0043】
(4)空気供給管31Aから受気室31に送り込まれた外部からの空気は小開口31Cを出て原料Mに流入し原料Mの粒間を経て原料M中を上昇する。一方、送気装置16の噴出開口16A−1からは下向きに空気が噴出されており、バーナ15からの燃焼ガスはこの下向きの空気により、燃焼が促進されると共に高温の混合ガスとなって下方へ導かれ、焼成筒体13内の原料Mの堆積層の自由表面から層内へ流入する。この混合ガスは堆積層内での下方に向く透過中に原料Mを加熱し、混合ガス自体は降温して循環筒体20の下端の開口部22から該循環筒体20の内筒20B内へ流入し該内筒20B内を上昇する。なお、このとき、循環筒体20の下端に接続されている複数の導気管28同士間は十分な間隔があるので(図2(A),(B)参照)、複数の導気管28に対して炉体10の半径方向の内外において原料Mが移動可能に連続して存在しており、この原料Mの粒間を透過して上記混合ガスが上記開口部22に至る際に、上記導気管28の存在は何ら障害とはならない。上記混合ガスは、上記受気室31の小開口31Cから流出して原料M中を上昇する空気と合流して上記開口部22に向かうこと、混合ガスは原料M中を透過の際に降温したとは言え未だ高温であり、上記循環筒体20内で確実に上昇気流を形成すること、上記送気装置16からの下向き空気に乗り堆積層に向かって下方に積極的に流れること、等に起因して上記循環筒体20内外を良好に循環する。
【0044】
(5)このような循環流をなす混合ガスは、焼成筒体13内の原料Mの堆積層にきわめ
て良好に降下進入するので、原料Mの焼成も向上する。
【0045】
(6)一方、空気供給管29Aからチャンバ29に取り入れられた外部空気は、導気管28を経て、冷却空気として、循環筒体20の外筒20Aと内筒20Bとの間の環状空間23内を上昇し、外筒20Aと内筒20Bを冷却し、空気自体は昇温して管体27を経てバーナ15に至り、昇温された燃焼用空気として有効利用されると共に、送気装置16のノズル16Bへ送られて、上記内筒20B内から送気筒16Aへ送られた燃焼ガスと共に該送気筒16Aから予熱空間内に噴出される。
【0046】
(7)炉床11上の原料Mの堆積層にはその自由表面から燃焼ガスの一部が層内に流入し、予熱に寄与する。炉外に設けられた環状ダクト19は吸引口19Aを経て、外部のブロワにより吸引されているので、上記炉床11上の堆積層を透過する燃焼ガスの一部は、原料との熱交換により降温した後に、上記複数の排気管17B中を上昇し、上記環状ダクト19を経て排気される。
【0047】
(8)このように、循環筒体20そして送気装置16を設けたことにより焼成筒体13内の原料M中を良好に降下し透過する混合ガスからの熱を効果的に受け良好に焼成された原料Mは排出筒32を降下しつつ冷却され、プッシャ35の作動により開口32Cから落下して、ロータリバルブ33を経て、製品として取り出される。
【0048】
本発明は、図示の形態には限定されない。例えば、循環筒体20の環状空間23からバーナ15そして送気装置16のノズル16Bへの管体をそれぞれ別系統として、バーナ15そしてノズル16Bへそれぞれ供給される空気の温度そして圧力をバーナ15そしてノズル16Bに対して適切な異なる値にすることができる。一例として、それぞれの管体を流れる空気の量を異なる管径の管体を用いて、送気装置16へは大流量で温度そして圧力を低下させずにそのまま供給し、バーナ15へは小流量で放熱そして圧損により温度そして圧力を低くして供給できる。
【0049】
さらには、空気供給管29Aを高圧そして低圧の空気を二種の導気管へ別途送り込むように二系統の流路を設け、両者からの空気が上記環状空間23内で合流することなく、環状空間23内で仕切られた別々の空間(流路)を上昇するようにしておけば、環状空間23の上端側でこれらの空間から別々に上昇した空気を対応せる管体を経てそのままそれらの空気をバーナ15そして送気装置16へ送ることができる。
【0050】
<第二実施形態>
図3〜4に示される本実施形態は、図1〜2に図示した第一実施形態に比し、送気装置と燃焼ガス供給装置とを同一位置に配したこと、循環筒体の周壁内での空気上昇空間を一つの環状空間ではなく、複数の管体により形成したこと、炉床上の原料堆積層内にブリッジを設けたこと等において相違している。この本実施形態において、第一実施形態と共通部位には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0051】
本実施形態においても、循環筒体20は外筒20Aと内筒20Bとを有し、両筒で周壁を形成している。両筒間の環状空間には、図4にも見られるように、上下に延びる内部管体23Aが周方向の複数位置で平行に設けられている。これらの内部管体23Aは、上下端で上記周壁内に設けられた上環状ダクト23Bそして下環状ダクト23Cにそれぞれ連通接続されている。該下環状ダクト23Cには、図1で示された、外部からの空気を導入する複数の導気管28が連通接続されている。上環状ダクト23Bには、その周方向複数筒所で管体27が半径外方に延出している。炉蓋14には、上記循環筒体20に対して半径方向外側で周方向複数位置に燃焼ガス供給装置としてのバーナ15が設けられており、該バーナ15の下端たる燃焼ガス噴出口15A−1が炉体内に向いて位置している。このバーナ15の外側には、環状ノズル16Bが同心に配設されており、その下端たる空気噴出口16B−1は上記燃焼ガス噴出口15A−1とほぼ同一位置で開口している。そして、上記上環状ダクト23Bから延出する各管体27は、それぞれ対応する環状ノズル16Bへ接続されている。
【0052】
一方、循環筒体20の上端における端板21には、周方向複数位置で上方へ延びる管体26が接続されており、循環筒体20の内部空間と連通している。又、上記端板21の上方位置には、外部環状ダクト26Bが設けられており、上記複数の管体26は、ブロワ40を経て上記外部環状ダクト26Bに連通接続されている。該外部環状ダクト26Bからは、上記バーナ15と対応する周方向の複数位置で導気管26Cが下方に延びており、上記環状ノズル16Bの外側に同心に設けられた送気筒16Aに連通接続されている。該送気筒16Aと環状ノズル16Bが送気装置16を形成している。
【0053】
さらに、本実施形態では、上下方向で炉床11と原料供給管17の下端開口との間に、周方向複数位置で半径方向に延び形成されるブリッジ11Cが設けられている。このブリッジ11Cは炉床11上に形成される原料Mの堆積層内に位置する。したがって、上方の原料供給管17から落下供給される原料は堆積層を形成すると、該ブリッジ11Cの直下に原料不在の空間が形成される。
【0054】
このような本実施形態によると、導気管28を経て外部から導入された空気は、上記複数の内部管体23A内を上昇する際に、該複数の内部管体23Aの総表面積が大きいので、循環筒体20との熱交換を効果的に行なって、昇温し、内部管体23Aから管体27を経て環状ノズル16Bへ至り、その空気噴出口16B−1から噴出され、燃焼ガス供給装置としてのバーナ15からの燃焼ガスと混合され燃焼を促進させる。
【0055】
一方、循環筒体20の内筒20B内を上昇する燃焼ガスは複数の管体26を経てブロワ40に至り、外部環状ダクト26Bへ送り込まれ、ここから各導気管26Cへ分流する。上記内筒20B内からの燃焼ガスはこの導気管26Cから、対応せる送気筒16Aへ導かれて炉体内へ噴出される。この送気筒16Aから噴出される燃焼ガスは旋回流を形成しており、上記燃焼ガス供給装置たるバーナ15からの燃焼ガスそして環状ノズル16Bからの空気の周囲を旋回する。かくして、炉体内では混合ガスは広い範囲で均一に流れ、炉床11上の原料の堆積層を積極的に均一に加熱する。
【0056】
又、上述のように、炉床11上の堆積層内には、ブリッジ11Cの直下に原料不在の空間が形成されるので、該堆積層内での燃焼ガスは良好に流通し、ここでの熱交換が効果的に行なわれ、原料は均一に加熱される。
【0057】
本実施形態において、送気装置16の送気筒16Aからの旋回流の形成には、種々の手法がある。例えば、管体27を送気筒16Aに対し接線方向に接続したり、あるいは、送気筒16A内に螺旋流を生じせしめるガイド部材を設けたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第一実施形態としての竪型焼成炉の縦断面図である。
【図2】図1装置の循環筒体と導気管とをなす斜視図で、図2(A)は上方から見た斜視図、図2(B)はその一部を下方から見た斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態の竪型焼成炉の要部についての縦断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV線での拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 炉体
11 炉床
11A 落下開口
11C ブリッジ
14 炉蓋
15 燃焼ガス供給装置(バーナ)
16 送気装置
16A 送気筒
16B ノズル(環状ノズル)
20 循環筒体
20A 外筒
20B 内筒
22 開口部
23 環状空間
23A 内部管体
23B 上環状ダクト
23C 下環状ダクト
28 導気管
40 ブロワ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止せる竪型の筒状をなす炉体内の上部に予熱領域そして下部に焼成領域を形成する竪型焼成炉において、予熱領域は燃焼ガス供給装置が設けられている炉蓋より下方で炉体内面から半径内方に延び中央部に落下開口を有する炉床より上方の空間に形成され、焼成領域が該炉床より下方の空間に形成され、炉体内に上下方向で予熱領域及び焼成領域にわたり内部空間を形成し下方に向け開口する循環筒体が配設され、炉蓋に取り付けられて炉体内の下方へ向け送気する送気筒を有する送気装置が設けられ、上記循環筒体の内部空間が該循環筒体の上部にて上記送気筒に接続されていて、循環筒体の下端の開口部から流入するガスが上記内部空間を上昇し上記送気装置へ送られて再び炉体内に戻されることを特徴とする竪型焼成炉。
【請求項2】
送気装置は送気筒内へ外部から空気を導入するノズルが設けられていることとする請求項1に記載の竪型焼成炉。
【請求項3】
送気装置は送気方向で上流側部分が炉体外に突出し、循環筒体は上部が炉体外に突出していて該上部で上記送気装置の送気筒の上流側部分に接続されていることとする請求項1に記載の竪型焼成炉。
【請求項4】
循環筒体は内筒と外筒で二重筒に形成され、内筒の内部空間が下方に開口し上部で送気筒と接続されており、内筒と外筒との間に形成される環状空間は下部位置で外部からの冷却空気を導入する導気管と接続されており、かつ環状空間は上部位置で燃焼ガス供給装置に接続されていて、冷却空気が環状空間を上昇して内筒及び外筒を冷却し上昇後に上記燃焼ガス装置へ燃焼用空気として供給されることとする請求項1又は請求項3に記載の竪型焼成炉。
【請求項5】
環状空間は上部位置で送気装置のノズルにも接続されていて、環状空間内を上昇後の冷却空気が送気装置に供給されることとなっている請求項4に記載の竪型焼成炉。
【請求項6】
導気管は環状空間の周方向複数位置で接続される複数本設けられていることとする請求項4に記載の竪型焼成炉。
【請求項7】
送気装置は該送気装置の送気筒が燃焼ガス供給装置の燃焼ガス噴出口と共通の噴出軸線上に位置していることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の竪型焼成炉。
【請求項8】
送気装置は送気筒からの送気ガスが噴出軸線まわりに旋回流を生じるように形成されていることとする請求項7に記載の竪型焼成炉。
【請求項9】
送気装置と燃焼ガス供給装置は炉体の軸線まわりの周方向で複数位置に配設されていることとする請求項7に記載の竪型焼成炉。
【請求項10】
循環筒体は周壁内で上下に延びる内部管体が周方向複数位置に設けられ、該複数の内部管体は上下端で周壁内に設けられた上環状ダクトそして下環状ダクトにそれぞれ接続され、該上環状ダクトが送気装置のノズルにそして下環状ダクトが外部からの冷却空気を導入する導気管に接続されていることとする請求項7に記載の竪型焼成炉。
【請求項11】
循環筒体はその内部空間がブロワを介して送気装置の送気筒に接続されていて上記内部空間から送気筒へのガスの送入を促進せしめていることとする請求項7に記載の竪型焼成炉。
【請求項12】
炉体は、炉床より上方の空間に、高さ方向で炉床より上方そして原料供給口よりも下方の位置に、周方向複数箇所で半径方向に延びるブリッジが設けられていることとする請求項7に記載の竪型焼成炉。
【請求項13】
送気装置は外部から微粉固体燃料の供給を受け、これを送気筒から噴出するようになっていることとする請求項1ないし請求項4、請求項7ないし請求項8、そして請求項11のうちの一つに記載の竪型焼成炉。
【請求項14】
送気装置は外部から微粉固体燃料の供給を受け、これをノズルから噴出するようになっていることとする請求項2、請求項5、請求項10のうちの一つに記載の竪型焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−68821(P2009−68821A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253784(P2007−253784)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(390034212)株式会社チサキ (20)
【Fターム(参考)】