説明

端子及びその製造方法、電動機

【課題】ヒュージング処理によって接合される導線の十分な接合強度を確保できると共に、各導線の抵抗ばらつきを抑制して導電性能を向上させる。
【解決手段】絶縁被覆を有する導線Lを複数本束ねてなる導線束2と、導線束2に装着する端子具10とを備え、収容部12に導線束2を収容した端子具10を電極部材5,5によってかしめて通電することで、導線Lの絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線L間を密着させるヒュージング処理によって形成される端子であって、端子具10は、導線束2を収容するための中空の収容部12を有する本体部11と、収容部12内で複数の導線Lを仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブ15とを備える。リブ15は、収容部12内で複数の導線Lの断面の隙間に配置された渦巻型の断面形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆を有する導線束に装着した端子具を電極部材でかしめて通電することで、絶縁被覆を炭化させて端子具と導線とを導電接合してなる端子及びその製造方法、及び該端子を備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、絶縁被覆を有する導線に端子具を導電接合してなる端子の製造において、ヒュージング(抵抗溶接)処理が行われている。このヒュージング処理では、絶縁被覆を有する導線に装着した金属製の端子具を一対の電極部材でかしめ、その状態で、両電極部材に電流を流すことで、端子具の発熱によって絶縁被覆を炭化(溶融)させ、これにより端子具と導線とを導通状態で接合してなる端子(ターミナル)を形成する。
【0003】
ところで、従来の端子具は、導線束の外周を囲む筒型などの中空状に形成されていた。したがって、発熱した端子具の内壁から導線束の外周側面に熱が伝わり、導線の被覆が溶融するようになっている。ところが、導線束を構成する導線の本数が多い場合や、導線束の径が太い場合には、導線束の外周側面から断面の内側まで十分に熱が伝わらず、導線束の内側の絶縁被覆を十分に溶融できないおそれがあった。これにより、端子具と各導線との接合にムラが生じることがあり、端子の十分な導通や固定強度を確保できないという問題があった。
【0004】
また、中空状の端子具を電極部材で挟持してかしめる方法では、かしめ後の端子具内の導線が均一に配列されず、導線間に隙間ができるおそれがあった。このような隙間ができると、導線束の内部に温度のばらつきが生じ、絶縁被覆を均一に溶融できなかったり、絶縁被覆が炭化して生成する炭化生成物(スラッジ)が導線の隙間に溜まったりすることがある。これにより、導線の十分な接合強度を確保できないという問題があった。また、各導線の抵抗のばらつきが大きくなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−153505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒュージング処理によって接合される導線の十分な接合強度を確保できると共に、各導線の抵抗ばらつきを抑制して導電性能を向上させることができる端子及びその製造方法、及び該端子を備えた電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、絶縁被覆を有する導線(L)を複数本束ねてなる導線束(2)と、導線束(2)を収容するための収容部(12)を有する端子具(10)と、を備え、収容部(12)に導線束(2)を収容した端子具(10)を電極部材(5,5)でかしめて通電することで、導線(L)の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線(L)間を密着させるヒュージング処理によって形成される端子であって、端子具(10)は、収容部(12)を有する筒状の本体部(11)と、収容部(12)内で複数の導線(L)を仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブ(15)とを備え、当該リブ(15)は、複数の導線(L)の断面の隙間に配置された渦巻型の断面形状を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる端子によれば、導線束を収容するための収容部内で複数の導線の断面を仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブを備えたことで、ヒュージング処理の際、収容部の内壁を介して導線束の外周側面に熱が与えられるだけでなく、リブを介して導線束の内部にも熱が与えられるようになるので、端子具内の導線束の全体に均等に熱を与えることができる。したがって、端子具内の導線の絶縁被覆をより効果的に炭化できるようになる。また、導線束の外周と内部とに同時に熱を与えることができるので、導線束の各部の加熱に時間差が生じることを抑制できる。これにより、導線の隙間に炭化生成物(スラッジ)が残留することを抑制できるので、導線間の熱伝導性の低下を防止できる。これらによって、導線を確実に接合することができる。また、各導線の抵抗のばらつきを抑制することができ、端子の導電性能を向上させることができる。そのうえ、リブの断面形状を収容部内で複数の導線の断面の隙間に配置された渦巻型にしたことで、簡単な構成でありながら、リブによって収容部内の複数の導線を効果的に振り分けることが可能となる。
【0009】
また、本発明によれば、端子具を電極部材でかしめたときに、収容部の内壁と板状のリブとによって、導線束の各導線が収容部内で互いに接した状態で配列されるようになる。これにより、導線間に不均一な隙間ができることを抑制できる。したがって、端子具内の導線をより確実に接合させることが可能となる。
【0010】
また、この場合、リブ(15)は、電極部材(5,5)によって端子具(10)がかしめられる方向に突出する突出部(16,16)を有するとよい。これによれば、端子具が電極部材でかしめられたとき、リブがかしめ方向に押されて移動(変形)し易くなるので、該リブによって収容部内の導線の動きを規制し易くなる。また、リブがかしめ方向に対する両側(横方向)に押し広げられ易くなるので、かしめ方向に対する両側の導線間に隙間が生じることを抑制できる。これらによって、収容部内の導線をより確実に接合させることが可能となる。また、各導線の抵抗のばらつきを抑制することができ、導電性能を向上させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するための本発明は、絶縁被覆を有する導線(L)を複数本束ねてなる導線束(2)と、導線束(2)を収容するための中空の収容部(12)を有する端子具(10)と、を備え、収容部(12)に導線束(2)を収容した端子具(10)を電極部材(5,5)でかしめて通電することで、導線(L)の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線(L)間を密着させるヒュージング処理によって形成される端子であって、端子具(10)は、収容部(12)を有する筒状の本体部(11)と、収容部(12)内で複数の導線(L)を仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブ(15)とを備え、当該リブ(15)は、収容部(12)の内壁(12a)から導線束(2)の内部に差し込まれる複数の平板部(21)を有しており、この複数の平板部(21)は、収容部(12)における端子具(10)がかしめられる方向に対する両側の内壁(12a)から導線束(2)の内部に向かって互い違いに突出していることを特徴とする。これによれば、端子具内での導線の移動を効果的に抑制できる。また、ヒュージング処理の際、導線束の内部を均等に加熱することができるので、導線のより確実な接合が可能となる。また、ヒュージング処理の際、導線束を外周からだけでなく内部からも加熱できるので、絶縁被覆が炭化されて生成する炭化生成物を導線の間から効果的に排出できる。
【0012】
また、上記の端子では、リブ(15)における収容部(12)に挿入される導線束(2)の先端(2a)に対向する端部(17)は、該収容部(12)内の奥側に窪んで配置されているとよい。これによれば、導線束の端部を収容部に収容する作業が行い易くなる。したがって、導線束に端子具を装着する作業を簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0013】
また、上記の端子では、リブ(15)は、収容部(12)に挿入される導線束(2)に対向する端部(17)が面取りされた面取部(19)になっているとよい。これによれば、収容部に導線束を挿入する際、複数の導線の隙間にリブが容易に差し込まれるようになる。したがって、導線束に端子具を装着する作業を簡単かつ迅速に行えるようになる。また、導線束に端子具を装着する際に導線束の先端が損傷することを防止できる。
【0014】
また、上記の端子では、リブ(15−3)は、端子具(10−3)の本体部(15)とは別の部材として設けてもよい。また、本発明にかかる端子の製造方法は、このようなリブ(15−3)が端子具(10−3)の本体部(11)とは別の部材として設けられている端子の製造方法であって、導線束(2)にリブ(15−3)を装着する第1工程(ST1)と、導線束(2)のリブ(15−3)を装着した部分を端子具(10−3)の収容部(12)に収容する第2工程(ST2)と、導線束(2)を収容した端子具(10−3)を電極部材(5,5)でかしめて通電することで、導線(L)の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線(L)間を密着させるヒュージング処理を行う第3工程(ST3)と、をこの順番で行うことを特徴とする。
【0015】
このように、リブを端子具の本体部とは別の部材として設ければ、端子を製造する際、先に導線束にリブを装着しておき、このリブを装着した部分の導線束を後から端子具に収容することが可能となる。これによれば、リブが端子具の本体部に一体形成されている場合と比べて、リブを導線の隙間に装着する作業が簡単に行えるようになるので、端子の製造が容易に行えるようになる。また、複数の導線をリブによって所望の状態で振り分ける(仕切る)ことができるようになる。したがって、上記の端子の製造方法によれば、導線束を収容する作業が行い易くなるので、端子の組み立てが短時間で効率良く行えるようになる。
【0016】
また、本発明は、絶縁被覆を有する複数の導線(L)を束ねてなるコイル(52,53)に装着した端子具(10)をヒュージング処理により電気的導通を確保した状態で接続してなる端子(51,55)を備える電動機(50)であって、当該端子(51,55)は、請求項1乃至7のいずれかに記載の端子(1)であることを特徴とする。本発明の電動機によれば、端子の導電性能や耐久性を向上させることができるので、信頼性の高い電動機となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる端子及びその製造方法によれば、ヒュージング処理によって接合される導線の十分な接合強度を確保できると共に、各導線の抵抗のばらつきを抑制して端子の導電性能を向上させることができる。また、本発明にかかる端子を用いることで、信頼性の高い電動機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる端子を構成する端子具を示す図で、(a)は、側面図、(b)は、斜視図である。
【図2】端子具を示す図で、(a)は、図1のA−A矢視断面図、(b)は、図1のB−B矢視断面図である。
【図3】端子具に導線束を収容する手順を説明するための図で、導線束と端子具の側面図(一部断面図)である。
【図4】ヒュージング処理について説明するための図で、(a)は、電極部材で端子具をかしめる前の状態、(b)は、電極部材で端子具をかしめた後の状態を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる端子を構成する端子具を示す図で、(a)、(b)、はそれぞれ、リブが二枚、三枚の平板部からなる場合を示す。
【図6】ヒュージング処理について説明するための図で、(a)は、電極部材で端子具をかしめる前の状態、(b)は、電極部材で端子具をかしめた後の状態を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる端子を構成する端子具を示す図である。
【図8】第3実施形態にかかる端子の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第4実施形態にかかる端子を備えた電動機(モータ)の構成例を示す図で、(a)は、概略平面図、(b)は、後述する固定子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1及び図2は、本発明の第1実施形態にかかる端子1を構成する端子具10を示す図で、図1(a)は、側面図、図1(b)は、斜視図、図2(a)は、図1のA−A矢視断面図、図2(b)は、図1のB−B矢視断面図である。また、図3は、導線束2を端子具10に収容する手順を説明するための図で、導線束2と端子具10の側面図(一部断面図)である。また、図4は、ヒュージング処理について説明するための図で、(a)は、電極部材5,5で端子具10をかしめる前の状態、(b)は、電極部材5,5で端子具10をかしめた後の状態を示す図である。
【0020】
本実施形態の端子1は、図3に示す絶縁被覆を有する導線Lを複数本束ねてなる導線束2と、導線束2を収容する中空の収容部12を有する筒状の端子具10とを備えており、導線束2に装着した端子具10を電極部材5,5(図4参照)でかしめて通電することで、導線Lの絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線L間を密着させるヒュージング処理によって形成される。
【0021】
導線束2は、表面に絶縁被覆を有する導線Lを多数本(数十本程)束ねて構成されている。絶縁被覆を有する導線Lとして、エナメル銅線(EW)、ホルマール銅線(PVF)、ポリエステル銅線(PEW)、及びアミドイミド銅線(AIW)など各種材料で被覆された銅線を用いることができる。一方、導線束2に装着する端子具10は、図1及び図2に示すように、金属製の円筒状部材である。この端子具10は、後述するヒュージング処理において、図4(a)に示すように、一対の電極部材5,5で両側面が挟み込まれてかしめられることで、幅方向に潰されるようになっている。この端子具10は、収容部12を有する略円筒状の本体部11と、収容部12内に設置された薄板状のリブ15とを一体に備えた形状になっている。
【0022】
リブ15は、収容部12内で導線束2を構成する複数本の導線Lの断面の隙間に配置される渦巻型の断面形状を有している。すなわち、収容部12の内壁12aから突出して該内壁12aに沿って延伸する湾曲板状の第1外周片15aと、該第1外周片15aの先端から折り返されて収容部12の内壁12aに沿って第1外周片15aと対称に延伸する第2外周片15bと、第2外周片15bの先端から折り返されて第1外周片15aと第2外周片15bの間で収容部12の中心を通って延伸する平板状の中央片15cとを有している。これらによって、リブ15の断面は、収容部12の内壁12aから中心側に向かって巻回されている。
【0023】
また、このリブ15は、図4に示すように、電極部材5,5によって端子具10がかしめられるかしめ方向(押圧方向)に突出する突出部16,16を有している。すなわち、第1外周片15aの中間位置に設けた一方の突出部16と、第2外周片15bの中間位置に設けた他方の突出部16とがそれぞれかしめ方向の両側に湾曲して突出している。
【0024】
また、図2に示すように、リブ15における収容部12に挿入される導線束2の先端2aに対向する端部17は、収容部12内の奥側に窪んだ位置、すなわち、本体部11の端部18よりも奥側の位置に配置されている。また、リブ15の端部17は、面取りされた面取部19になっている。ここでの面取りは、収容部12に収容される導線束2の先端2a(図3参照)がリブ15の端部17に引っ掛からずにスムーズに挿入される形状に加工されていればよく、一例として、端部17の断面が丸みを帯びた形状となるように加工したものや、端部17の断面の角部を斜めに削ったものが挙げられる。また、図2(b)に示すように、リブ15における中央片15cの端部17は、その長手方向の中間が両側よりも収容部12内の奥側に配置されるように略V字型に屈曲している。
【0025】
次に、端子1の製造方法について説明する。ヒュージング処理によって端子1を製造するには、まず、端子具10の収容部12に導線束2を収容する。これには、図3(a)に示すように、端子具10の一端の開口部13から収容部12に導線束2の先端2aを差し込んで挿入する。この際、導線Lの隙間に渦巻状のリブ15が差し込まれる。こうして、図4(a)に示すように、リブ15によって収容部12内の複数の導線Lが振り分けられた(仕切られた)状態となる。
【0026】
ここで、上記のように、リブ15の端部17が収容部12の奥側に窪んで配置されていることで、導線束2の先端2aを収容部12に挿入する作業が行い易くなる。したがって、導線束2に端子具10を装着する作業を簡単かつ迅速に行えるようになる。
【0027】
また、リブ15の端部17に面取部19を設けていることで、導線束2に端子具10を装着する際、複数の導線Lの隙間にリブ15が容易に差し込まれるようになる。これによっても、導線束2に端子具10を装着する作業を簡単かつ迅速に行えるようになる。また、導線束2に端子具10を装着する際に導線束2の先端2aが損傷することを防止できる。また、リブ15における中央片15cの端部17は、その長手方向の中間が両側よりも収容部12内に窪んだ略V字型に形成されていることで、中央片15cの両側に複数の導線Lを均等に振り分けて挿入できるようになる。
【0028】
このようにして、端子具10に導線束2を収容したら、図4(a)に示すように、端子具10の両側面を電極部材5,5で押圧する。これにより、端子具10の本体部11がかしめ方向に潰される。また、収容部12内のリブ15及び導線束2がかしめ方向に加圧される。こうして、図4(b)に示すように、端子具10の本体部11の断面が略楕円型になり、リブ15がかしめ方向に対する両側に広がるように変形する。これにより、リブ15と収容部12の内壁12aとの隙間に導線Lが配列される。この状態で、電極部材5,5に通電することで、端子具10内の導線Lの絶縁被覆を炭化(溶融)させて排除し、端子具10と導線Lとを導電接合する。こうして、端子1が製造される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の端子具10によれば、収容部12内で複数の導線Lを仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブ15を備えたことで、ヒュージング処理の際、収容部12の内壁12aを介して導線束2の外周側面に熱が与えられるだけでなく、リブ15を介して導線束2の内部にも熱が与えられるようになるので、端子具10に収容された導線束2の全体に均等に熱を与えることができる。したがって、収容部12内の導線Lの絶縁被覆をより効果的に炭化できるようになる。また、導線束2の外周と内部に同時に熱を与えることができるので、導線束2の各部の加熱に時間差が生じることを抑制できる。これにより、導線Lの隙間に炭化生成物(スラッジ)が残留することを抑制できるので、導線L間の熱伝導性の低下を防止することができる。これらによって、導線Lを確実に接合することができる。また、各導線Lの抵抗のばらつきを抑制することができ、端子1の導電性能を向上させることができる。
【0030】
また、本実施形態の端子1では、端子具10を電極部材5,5でかしめたときに、収容部12の内壁12aと板状のリブ15とによって導線束2の各導線Lが押し分けられることで、各導線Lが収容部12内で互いに密接状態で配列されるようになる。これにより、導線L間に不均一な隙間ができることを抑制できる。したがって、端子具10内の導線Lをより確実に接合させることが可能となる。
【0031】
また、本実施形態にかかる端子1では、リブ15は、収容部12内で複数の導線Lの隙間に配置された渦巻型の断面形状を有している。これにより、簡単な構成でありながら、リブ15によって収容部12内の複数の導線Lを略均等に振り分けることが可能となる。したがって、導線L間に不均一な隙間ができることを抑制できるので、導線L同士をより均一に密着させることが可能となる。
【0032】
また、リブ15は、電極部材5,5によって端子具10がかしめられる方向に突出する突出部16,16を有している。これにより、端子具10が電極部材5,5で押圧されたときに、リブ15がかしめ方向に押されて変形し易くなるので、リブ15によって収容部12内の導線Lの動きを規制し易くなる。また、リブ15がかしめ方向に対する両側に押し広げられ易くなるので、かしめ方向に対する両側の導線L間に隙間が生じることを抑制できる。これらによって、収容部12内の導線Lをより確実に接合させることが可能となる。また、各導線Lの抵抗のばらつきを抑制することができ、導電性能を向上させることができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。これらの点は、他の実施形態についても同様である。
【0034】
図5は、本発明の第2実施形態にかかる端子1−2(図6参照)が備える端子具10−2を示す図である。本実施形態の端子具10−2は、第1実施形態の端子具10が備える渦巻型の断面形状を有するリブ15に代えて、収容部12の内壁12aから導線束2の内部に差し込まれて延伸する複数の平板部21(21a〜21e)を有する他のリブ15−2を備えて構成されている。
【0035】
図5(a)に示す端子具10−2は、二枚の平板部21a,21bからなるリブ15−2を備えている。この場合、一方の平板部21aは、内壁12aの一端から収容部12の断面の中心を通って他端の近傍まで延伸して設けられている。また、他方の平板部21bは、平板部21aの先端に対向する内壁12aから突出して、平板部21aに対して所定間隔で平行に配置されて、内壁12aの他端近傍まで延伸している。また、図5(b)に示す端子具10−2は、三枚の平板部21c,21d,21eからなるリブ15−2を備えている。この場合、各平板部21c,21d,21eは、収容部12の内壁12aにおける互いに対向する両側から交互に(互い違いに)突出している、そして、中央の平板部21cに対して両側の平板部材21d,21eが対称に配置されており、これらが所定間隔で平行に配置されている。中央の平板部21dは、内壁12aの一端から収容部12の断面の中心を通って他端の近傍まで延伸して設けられている。
【0036】
図6は、本実施形態の端子1−2を製造する際のヒュージング処理について説明するための図で、(a)は、電極部材5,5で端子具10−2をかしめる前の状態、(b)は、電極部材5,5で端子具10−2をかしめた後の状態を示す図である。なお、図6では、図5(b)に示す3枚の三枚の平板部21d,21e,21fからなるリブ15−2を備えた端子具10−2を例に示している。本実施形態においても、図6(a)に示すように、端子具10−2の両側面を電極部材5,5で挟んでかしめる。これにより、端子具10−2の本体部11がかしめ方向に潰される。また、収容部12内のリブ15−2及び導線束2がかしめ方向に加圧される。こうして、図6(b)に示すように、端子具10−2の本体部11の断面が略楕円型になり、リブ15−2と内壁12aとの隙間に導線Lが配列される。
【0037】
また、平板状のリブ15の面に対して直交する方向に端子具10−2がかしめられることで、本体部11の変形に伴って3枚の平板部21c,21d,21eがその面に沿って互いの根元側に引っ張られるように移動する。これにより、平板部21c,21d,21eの先端が対向する収容部12の内壁12aから離間して、それらの隙間が大きくなる。しかしながら、ここでは、3枚の平板部21c,21d,21eを互い違いに配列していることで、平板部21c,21d,21eの先端と収容部12の内壁12aとの隙間が大きくなっても、当該隙間を通って移動しようとする導線Lの動きが隣接する他の平板部21c,21d,21eによって抑制される。したがって、収容部12内の導線Lの移動を抑制でき、導線Lを均等に配列することが可能となる。
【0038】
そして、図6(b)に示すように、端子具10−2をかしめて潰した状態で、電極部材5,5に通電することで、端子具10内の導線Lの絶縁被覆を炭化(溶融)させて排除し、端子具10と導線Lとを導電接合する。
【0039】
本実施形態の端子具10−2では、導線束2を構成する導線Lの本数に応じて、リブ15−2を構成する平板部21の枚数を変更するとよい。また、平板部21を導線束2の断面に対して対称となるように配置すれば、収容部12内の導線Lを均等に振り分けること可能となる。したがって、導線束2の内部を均等に加熱することが可能となる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の端子具10−2では、リブ15−2は、収容部12の内壁12aから導線束2の内部に差し込まれる複数の平板部21(21a〜21e)を備えており、この複数の平板部21は、収容部12における端子具10がかしめられる方向に対する両側の内壁12aから導線束2の内部に向かって互い違いに突出している。これにより、端子具10内での導線Lの移動を抑制して、導線Lを均等に振り分けることが可能となる。また、ヒュージング処理の際、導線束2を外周からだけでなく内部からも加熱できるので、絶縁被覆が炭化されて生成する炭化生成物(スラッジ)を導線Lの間から効果的に排出できる。したがって、導線Lの確実な接合が可能となる。なお、図5に示す平板部21は、端子具10がかしめられる方向(上下方向)に対する両側(左右両側)の内壁12aから当該上下方向に対して直交する横方向(水平方向)に延びているが、平板部21は、端子具10がかしめられる方向に対する両側の内壁12aから導線束2の内部に向かって突出しているものであれば、かしめられる方向に対して必ずしも直交する方向に延びている必要はなく、ある程度傾斜した方向に延びているものなどであってもよい。
【0041】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態にかかる端子1−3を示す図で、(a)は、端子1−3が備える端子具10−3の側面図、(b)は、端子1−3の分解斜視図である。本実施形態では、端子具10−3の本体部11とリブ15−3とが互いに別の部材として設けられている。すなわち、本実施形態の端子具10−3が備えるリブ15−3は、第1実施形態の端子具10が備えるリブ15と同じ形状であるが、収容部12の内壁12aから分離しており、本体部11とは別の部材として設けられている。
【0042】
図8は、本実施形態の端子の製造方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の端子の製造方法は、導線束2に対して図7に示すリブ15−3を装着する第1工程(ステップST1)と、導線束2のリブ15−3を装着した部分を端子具10−3の収容部12に収容する第2工程(ステップST2)と、導線束2を収容した端子具10−3を電極部材5,5でかしめて通電することで、導線Lの絶縁被覆を炭化させて除去すると共に導線L間を密着させるヒュージング処理を行う第3工程(ステップST3)とをこの順番で行うようになっている。なお、ステップST1で導線束2にリブ15−3を装着する際、リブ15−3は、導線束2を構成する導線Lの隙間に導線束2の外周側面から横向きに差し込んで装着してもよいし、導線束2の先端2aから導線Lの延伸方向に差し込んで装着してもよい。
【0043】
本実施形態では、端子具10−3のリブ15−3が本体部11とは別の部材として設けられていることで、上記のように、端子1−3を製造する際、先に導線束2にリブ15−3を装着しておき、このリブ15−3を装着した導線束2を後から端子具10−3に収容することが可能となる。これにより、導線束2を端子具10−3に収容する作業が行い易くなるので、端子の製造が短時間で効率良く行えるようになる。また、あらかじめ導線束2にリブ15−3を装着しておくことで、端子具10−3内での導線Lの配置や振り分け状態を調整し易くなる。したがって、複数の導線L間に不均一な隙間ができることを抑制できるので、端子の熱伝導性の低下を防止することができる。
【0044】
〔第4実施形態〕
図9は、本発明の第4実施形態にかかる電動機(モータ)50の構成例を示す図で、(a)は、電動機50の全体構成を示す概略平面図であり、(b)は、後述する固定子61の斜視図である。同図に示す電動機50は、3相(U相、V相、W相)のコイル53(53u,53v,53w)を巻回してなる円筒状の固定子61と、該固定子61の中心側で回転する回転子65とを備えたいわゆる分布巻き型の電動機である。固定子61には、複数本のティース63を有する固定子鉄心62が設けられており、スロットを絶縁するための絶縁フィルム64を介してティース63に3相の巻線(コイル)53が巻回されている。なお、コイル53の端部は、引出線52(52u,52v,52w)になっている。一方、回転子65は、4極の永久磁石型であり、回転子鉄心66に複数の永久磁石67を埋設してなり、各永久磁石67は、N極とS極が交互に並ぶように着磁されている。回転子65は、中心に設けた軸孔68にシャフト(図示せず)が貫通しており、当該シャフトが回転自在に支持されている。これにより、固定子61に発生する回転磁界によって回転子65が回転するようになっている。なお、図9(a)に示す回転子65は、一部の構成部品を省略して簡略的に示している。
【0045】
そして、この電動機50は、本発明の実施形態にかかる端子1を備えている。すなわち、電動機50のコイル53(53u,53v,53w)は、図3に示す絶縁被覆を有する導線Lを複数本束ねてなる導線束2からなる。そして、3相の各コイル53u,53v,53wの一端に設けた中性点端子55は、図1などに示す筒状の端子具10を備えた端子1である。すなわち、本実施形態の電動機50では、収容部12を有する筒状の本体部11と、収容部12内に設置された板状のリブ15とを備えた端子具10によって、コイル52の一端に設けた各相の中性点端子55が連結されている。また、各相のコイル52の他端(入力側)に設けた引出線51は、図3に示す絶縁被覆を有する導線Lを複数本束ねてなる導線束2からなり、当該引出線52の先端に設けた端子51が、図1などに示す端子具10(10−2,10−3)によってかしめられた端子1になっている。当該端子51は、電動機50に電源を供給するための図示しない電源供給部などに接続されるようになっている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の電動機50によれば、コイル53の端部に設けた端子55及び引出線52の端部に設けた端子51として、本発明にかかる端子1を採用している。これにより、端子51,55の導電性能や耐久性を向上させることができる。したがって、信頼性の高い電動機50となる。
【0047】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお、直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0048】
例えば、本発明にかかる端子が備える導線束は、第4実施形態に示すように、ハイブリッド車両などに搭載する比較的大型のモータのコイルとして用いる導線束など、数十本程度の導線を束ねた導線束が好適であるが、本発明にかかる端子が備える導線束は、絶縁被覆を有する導線を複数本束ねたものであれば、具体的な導線の本数や太さは、特に限定されない。
【0049】
また、上記の各実施形態に示す端子具10(10−2,10−3)の具体的な形状は一例であり、端子具10は、上記の円筒状以外の形状とすることも可能である。また、リブ15(15−2,15−3)の具体的な形状も上記実施形態に示すものには限定されず、渦巻状や平板状以外の形状とすることも可能である。
【0050】
また、第3実施形態では、端子具の本体部と別部材のリブとして、第1実施形態と同じ渦巻型のリブ15−3を備えた場合を示したが、これ以外にも、図示は省略するが、端子具の本体部と別部材のリブとして、第2実施形態と同じ平板状のリブあるいは他の形状のリブを備えてもよい。
【符号の説明】
【0051】
L 導線
1,1−2,1−3 端子
2 導線束
2a 先端
5,5 電極部材
10,10−2,10−3 端子具
11 本体部
12a 内壁
12 収容部
13 開口部
15,15−2,15−3 リブ
15a 第1外周片
15b 第2外周片
15c 中央片
16,16 突出部
17 (リブの)端部
18 (本体部の)端部
19 面取部
21(21a〜21e) 平板部
50 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆を有する導線を複数本束ねてなる導線束と、
前記導線束を収容するための中空の収容部を有する端子具と、
を備え、
前記収容部に前記導線束を収容した前記端子具を電極部材でかしめて通電することで、前記導線の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に前記導線間を密着させるヒュージング処理によって形成される端子であって、
前記端子具は、前記収容部を有する筒状の本体部と、前記収容部内で前記複数の導線を仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブとを備え、
前記リブは、前記複数の導線の断面の隙間に配置された渦巻型の断面形状を有する
ことを特徴とする端子。
【請求項2】
前記リブの断面形状は、前記電極部材によって前記端子具がかしめられる方向に突出する突出部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の端子。
【請求項3】
絶縁被覆を有する導線を複数本束ねてなる導線束と、
前記導線束を収容するための中空の収容部を有する端子具と、
を備え、
前記収容部に前記導線束を収容した前記端子具を電極部材でかしめて通電することで、前記導線の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に前記導線間を密着させるヒュージング処理によって形成される端子であって、
前記端子具は、前記収容部を有する筒状の本体部と、前記収容部内で前記複数の導線を仕切るようにそれらの隙間に設置される板状のリブとを備え、
前記リブは、前記収容部の内壁から前記導線束の内部に差し込まれる複数の平板部を有しており、
前記複数の平板部は、前記収容部における前記端子具がかしめられる方向に対する両側の内壁から前記導線束の内部に向かって互い違いに突出している
ことを特徴とする端子。
【請求項4】
前記リブにおける前記収容部に挿入される前記導線束の先端に対向する端部は、前記収容部内の奥側に窪んで配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の端子。
【請求項5】
前記リブにおける前記収容部に挿入される前記導線束の先端に対向する端部は、面取りされた面取部になっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の端子。
【請求項6】
前記リブは、前記端子具の前記本体部とは別の部材として設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の端子。
【請求項7】
請求項6に記載の端子の製造方法であって、
前記導線束に前記リブを装着する第1工程と、
前記導線束の前記リブを装着した部分を前記端子具の前記収容部に収容する第2工程と、
前記導線束を収容した前記端子具を電極部材でかしめて通電することで、前記導線の絶縁被覆を炭化させて除去すると共に前記導線間を密着させるヒュージング処理を行う第3工程と、をこの順番で行う
ことを特徴とする端子の製造方法。
【請求項8】
絶縁被覆を有する複数の導線を束ねてなるコイルと、
前記コイルに装着した端子具をヒュージング処理により電気的導通を確保した状態で接続してなる端子と、を備える電動機であって、
前記端子は、請求項1乃至6のいずれかに記載の端子であることを特徴とする電動機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−60523(P2011−60523A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207568(P2009−207568)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】