説明

端子金具、端子金具付き電線、及び端子金具付き電線の製造方法

【課題】本発明は、圧着の前後において、電線の延びる方向について長さ寸法が大きくなることが抑制された端子金具付き電線の製造方法を提供する。
【解決手段】底板15のうち芯線10が載置される面と反対側の面に、電線11の延びる方向に間隔を開けて複数の凸部32を形成する工程と、底板15の凸部32に対応する位置に凹部33が形成されたアンビル30に、アンビル30の凹部33内に底板15の凸部32を挿入させつつ底板15を載置する工程と、底板15に芯線10が載置された状態で、アンビル30の上方からクリンパ31をアンビル30に接近させるように相対移動させて、クリンパ31によってワイヤーバレル片17を押圧することでワイヤーバレル片17を芯線10に巻き付けるように圧着する工程と、を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具、端子金具付き電線、及び端子金具付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電線の端部に圧着される端子金具としては特許文献1に記載のものが知られている。この端子金具は、電線の端部から露出する芯線に圧着される圧着部と、この圧着部から延びて相手側端子金具と接続する接続部と、を備える。芯線に圧着部が圧着されることで、芯線と圧着部とが電気的に接続される。
【特許文献1】特開平10−125362公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の芯線の表面に酸化膜が形成されると、電線と端子金具との電気抵抗が増大することが懸念される。この問題を解決するために、芯線に圧着部を圧着する際の圧力を大きくすることが考えられる。これにより、芯線が圧着部から圧力を受けて大きく塑性変形し、芯線の表面と圧着部の内壁とが摺接する。すると、芯線の表面に形成された酸化膜が剥がれて芯線の新生面が露出する。この新生面と、圧着部とが接触することにより電線と端子金具との電気抵抗が低減することが期待された。
【0004】
しかしながら、上記の構成によると、圧着部に比較的に大きな圧力を加えることにより、圧着部自身が塑性変形し、端子金具の長さ寸法が大きくなってしまうという問題がある。特に、電線の延びる方向についての端子金具の長さ寸法が大きく変化すると、端子金具をコネクタハウジング内に収容する際に、端子金具がコネクタハウジングからはみ出してしまう等の問題が懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、圧着の前後において、電線の延びる方向について長さ寸法が大きくなることが抑制された端子金具、端子金具付き電線、及び端子金具付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、芯線を含む電線と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片を有する端子金具と、を備えた端子金具付き電線の製造方法であって、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面に、前記電線の延びる方向に間隔を開けて複数の凸部を形成する工程と、前記底板の凸部に対応する位置に凹部が形成されたアンビルに、前記アンビルの凹部内に前記底板の凸部を挿入させつつ前記底板を載置する工程と、前記底板に前記芯線が載置された状態で、前記アンビルの上方からクリンパを前記アンビルに接近させるように相対移動させて、前記クリンパによって前記バレル片を押圧することで前記バレル片を前記芯線に巻き付けるように圧着する工程と、を実行することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、芯線を含む電線と、前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、前記端子金具は、前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え、前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凹部内に挿入される複数の凸部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、芯線を含む電線から露出する前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記電線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備えた端子金具であって、前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凹部内に挿入される複数の凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、バレル片を芯線に圧着する際に、バレル片がクリンパとアンビルとに挟まれることで、バレル片には圧力が加わる。バレル片に加えられた圧力は芯線を介して底板に伝達される。底板に圧力が伝達されることにより、底板は電線の延びる方向に伸びようとする。しかしながら、底板に形成された凸部は、アンビルに形成された凹部内に挿入されているので、凸部の外側面が凹部の内側面と当接する。この結果、凸部が電線の延びる方向について変位することが凹部によって抑制されるので、底板が電線の延びる方向について伸びることを抑制できる。
【0010】
また、本発明は、芯線を含む電線と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片を有する端子金具と、を備えた端子金具付き電線の製造方法であって、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面に、前記電線の延びる方向に間隔を開けて複数の凹部を形成する工程と、前記底板の凹部に対応する位置に凸部が形成されたアンビルに、前記底板の凹部内に前記アンビルの凸部を挿入させつつ前記底板を載置する工程と、前記底板に前記芯線が載置された状態で、前記アンビルの上方からクリンパを前記アンビルに接近させるように相対移動させて、前記クリンパによって前記バレル片を押圧することで前記バレル片を前記芯線に巻き付けるように圧着する工程と、を実行することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、芯線を含む電線と、前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、前記端子金具は、前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え、前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凸部が挿入される複数の凹部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、芯線を含む電線から露出する前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記電線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え端子金具であって、前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凸部が挿入される複数の凹部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、バレル片を芯線に圧着する際に、バレル片がクリンパとアンビルとに挟まれることで、バレル片には圧力が加わる。バレル片に加えられた圧力は芯線を介して底板に伝達される。底板に圧力が伝達されることにより、底板は電線の延びる方向に伸びようとする。しかしながら、アンビルに形成された凸部は、底板に形成された凹部内に嵌入しているので、凹部の内側面が凸部の外側面と当接する。この結果、凹部が電線の延びる方向に沿って変位することが抑制されるので、底板が電線の延びる方向について伸びることを抑制できる。
【0014】
なお、凹部は、底板のうち接触面の反対側の面にくぼんだ形状が形成されていればよく、底板を貫通する貫通孔を含む。
【0015】
本発明の実施態様としては以下の態様が好ましい。
前記底板に、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に前記凸部を形成されていてもよい。
【0016】
上記の態様によれば、底板のうちバレル片が形成された領域が電線の延びる方向に伸びるのを、確実に抑制できる。
【0017】
前記底板に、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に前記凹部を形成されていてもよい。
【0018】
上記の態様によれば、底板のうちバレル片が形成された領域が電線の延びる方向に伸びるのを、確実に抑制できる。
【0019】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる構成としてもよい。
【0020】
芯線がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、芯線の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。上記の構成は、芯線の表面に酸化膜が形成されやすい場合に有効である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、バレル片を芯線に圧着する前後において、電線の延びる方向について端子金具の長さ寸法が大きくなることを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4を参照しつつ説明する。本実施形態は、芯線10を含む電線11と、この電線11の端部から露出する芯線10に圧着される雌端子金具12(特許請求の範囲に記載の端子金具に相当)と、を備える端子金具付き電線13である。雌端子金具12は、図示しないコネクタハウジングのキャビティ内に収容されて使用される。
【0023】
(電線11)
図1に示すように、電線11は、複数の金属細線を撚り合わせてなる芯線10と、芯線10の外周を覆う合成樹脂製の絶縁被覆14と、を備える。芯線10は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。本実施形態においては、アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられている。
【0024】
(雌端子金具12)
雌端子金具12は金属板材を所定形状にプレス加工することにより形成される。金属板材は銅又は銅合金等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。本実施形態では銅又は銅合金が用いられる。
【0025】
図2に示すように、電線11が載置される底板15と、この底板15の側縁から側方に突出して電線11の絶縁被覆14の外側から巻き付くように圧着される一対のインシュレーションバレル片16と、底板15の側縁のうちインシュレーションバレル片16よりも電線11の端部側(図2において左側)に位置する側縁から側方に延びて芯線10の外側から巻き付くように圧着される一対のワイヤーバレル片17(特許請求の範囲に記載のバレル片に相当)と、底板15から延びて図示しない雄端子金具と接続される接続部18と、を備える。底板15は、電線11の延びる方向(図2における矢線Aで示す方向)に細長く延びて形成されている。
【0026】
図1に示すように、接続部18は角筒状をなしており、雄端子金具が挿入可能になっている。接続部18の内部には弾性変形可能な弾性接触片(図示せず)が形成されており、この弾性接触片が雄端子金具と弾性的に接触することにより、雄端子金具と雌端子金具12とが電気的に接続される。
【0027】
図2に示すように、芯線10に圧着する前の状態においては、ワイヤーバレル片17は概ね矩形状をなしている。電線11は、ワイヤーバレル片17が芯線10に圧着された状態では、図2における左右方向(矢線Aで示す方向)に延びて配されるようになっている。
【0028】
底板15及びワイヤーバレル片17のうち、芯線10と接触する側(図2における紙面を貫通する方向手前側)の面は、接触面20とされる。底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20には、電線11の延びる方向(図2において矢線Aで示す方向)と交差する方向(図2において矢線Bで示す方向)に延びる複数(本実施形態では3本)の溝21が形成されている。本実施形態においては、溝21は電線11の延びる方向と直交して形成されている。
【0029】
(電線11と雌端子金具12との接続構造)
図3に示すように、一対のワイヤーバレル片17は芯線10の外側に巻き付くように圧着される。ワイヤーバレル片17は、芯線10を底板15に載置した状態でアンビル30に載置し、その後、アンビル30の上方に位置して配されたクリンパ31を、上方からアンビル30側に向けて移動させ、アンビル30とクリンパ31との間でワイヤーバレル片17を挟んで押圧することにより、芯線10に押圧されるようになっている。
【0030】
芯線10にワイヤーバレル片17が巻き付くように圧着されることにより、芯線10にはワイヤーバレル片17から圧力が加えられる。すると、芯線10の表面に形成された酸化膜が破れて芯線10の新生面が露出し、この新生面と、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20とが接触することにより、電線11と雌端子金具12とが電気的に接続される。
【0031】
また、ワイヤーバレル片17から圧力が加えられることにより、芯線10が塑性変形し、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20に形成された溝21内に入り込む。すると、溝21の開口縁に形成されたエッジと、芯線10の表面と、が摺接することにより、芯線10の酸化膜が剥ぎ取られて芯線10の新生面が露出する。この新生面と、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20と、が接触することにより、電線11と雌端子金具12との電気的接続を確実なものとなっている。
【0032】
(凸部32)
図2に示すように、底板15のうち、ワイヤーバレル片17が形成された領域よりも、電線11の延びる方向(図2において矢線Aで示す方向)について外方に位置には、複数(本実施形態では一対)の凸部32が、底板15の接触面20と反対側の面(図2において紙面を貫通する方向奥側の面)に突出して設けられている。凸部32は、電線11の延びる方向と交差する方向(図2において矢線Bで示す方向)に延びて形成されている。本実施形態においては、凸部32は電線11の延びる方向と直交して形成されている。
【0033】
図3に示すように、アンビル30の上面には、底板15に形成された凸部32に対応する位置に、複数(本実施形態では一対)の凹部33が形成されている。底板15がアンビル30の上面に載置される際には、底板15の凸部32は、アンビル30の凹部33内に挿入されるようになっている。
【0034】
凸部32の外側面と、凹部33の内側面とは、ワイヤーバレル片17が芯線10に圧着される工程において当接していればよく、底板15がアンビル30に載置されただけの状態においては、凸部32の外側面と、凹部33の内側面とは当接していてもよいし、また、離間していてもよい。
【0035】
続いて、本実施形態の製造工程の一例を説明する。まず、金属板材を所定形状にプレス成形する。このとき、図2に示すように溝21を形成してもよい。また、このときに凸部32を形成してもよい。
【0036】
次に、金属板材を曲げ加工して接続部18を形成する。このとき溝21を形成してもよい。また、このときに凸部32を形成してもよい。これにより雌端子金具12が形成される。
【0037】
続いて、図4に示すように、アンビル30の上に、底板15に形成された凸部32をアンビル30に形成された凹部33内に挿入させつつ、底板15を載置する。
【0038】
続いて、電線11の端部に位置する絶縁被覆14を剥がして芯線10を露出させる。図3に示すように、露出した芯線10を雌端子金具12の底板15の上に載置する。芯線10は、底板15をアンビル30の上に載置する前に、底板15の上に載置してもよい。
【0039】
その後、クリンパ31をアンビル30に向かって下方に移動させる(図3における矢線Cで示す方向)。すると、クリンパ31とアンビル30との間に挟まれることにより、ワイヤーバレル片17が芯線10の外側に巻き付くように圧着される。これにより端子金具付き電線13が完成する(図1参照)。
【0040】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。本実施形態によれば、芯線10にワイヤーバレル片17が巻き付くように圧着されることにより、芯線10にはワイヤーバレル片17から圧力が加えられる。すると、芯線10の表面に形成された酸化膜が破れて芯線10の新生面が露出し、この新生面と、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20とが接触することにより、電線11と雌端子金具12とが電気的に接続される。
【0041】
また、ワイヤーバレル片17から圧力が加えられることにより、芯線10が塑性変形し、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20に形成された溝21内に入り込む。すると、溝21の開口縁に形成されたエッジと、芯線10の表面と、が摺接することにより、芯線10の酸化膜が剥ぎ取られて芯線10の新生面が露出する。この新生面と、底板15及びワイヤーバレル片17の接触面20と、が接触することにより、電線11と雌端子金具12との電気的接続を確実なものとなっている。
【0042】
また、ワイヤーバレル片17を芯線10に圧着すると、芯線10を介して底板15に圧力が加わる。すると、底板15は、電線11の延びる方向(図4における矢線Aで示す方向)に塑性変形して伸びようとする。すると、底板15に形成された凸部32は、アンビル30に形成された凹部33内に挿入されているので、凸部32の外側面が凹部33の内側面と当接する。
【0043】
この結果、電線11の延びる方向について凸部32が変位することが凹部33によって抑制される。すると、底板15のうち一対の凸部32の間に位置する領域が、電線11の延びる方向について伸びることを抑制できる。これにより、電線11の延びる方向について、雌端子金具12長さ寸法が大きくなることを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、凸部32は、底板15のうち、ワイヤーバレル片17が形成された領域よりも、電線11の延びる方向について外方の位置に形成されている。これにより、底板15のうちワイヤーバレル片17が形成された領域が電線11の延びる方向に伸びるのを、確実に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態においては、芯線10はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる。このように、芯線10がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、芯線10の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。このため、芯線10の酸化膜を剥ぎ取ろうとすると、比較的に大きな圧力によって、ワイヤーバレルを芯線10に圧着する必要がある。すると、ワイヤーバレルも塑性変形しやすくなる。本実施形態は、上記のように比較的に強い圧力でワイヤーバレルを芯線10に圧着する場合に有効である。
【0046】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図5及び図6を参照しつつ説明する。なお、実施形態1と同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。図6に示すように、底板15には、ワイヤーバレル片17が形成された領域よりも、電線11の延びる方向(図6において矢線Aで示す方向)について外方に位置して、複数(本実施形態では一対)の貫通孔40(特許請求の範囲に記載の凹部に相当)が、底板15を貫通して設けられている。詳細には図示しないが貫通孔40は、電線11の延びる方向と交差する方向(図6において紙面を貫通する方向)に延びて形成されている。本実施形態においては、貫通孔40は電線11の延びる方向と直交して形成されている。
【0047】
図5及び図6に示すように、アンビル30の上面には、底板15に形成された貫通孔40に対応する位置に、複数(本実施形態では一対)の凸部42が形成されている。底板15がアンビル30の上面に載置される際には、アンビル30の凸部42は、底板15の貫通孔40内に挿入されるようになっている。
【0048】
凸部42の外側面と、貫通孔40の内側面とは、ワイヤーバレル片17が芯線10に圧着される工程において当接していればよく、底板15がアンビル30に載置されただけの状態においては、凸部42の外側面と、貫通孔40の内側面とは当接していてもよいし、また、離間していてもよい。
【0049】
続いて、本実施形態の製造工程の一例を説明する。まず、金属板材を所定形状にプレス成形する。このとき、溝21を形成してもよい。また、このときに貫通孔40を形成してもよい。
【0050】
次に、金属板材を曲げ加工して接続部18を形成する。このとき溝21を形成してもよい。また、このときに貫通孔40を形成してもよい。これにより雌端子金具12が形成される。
【0051】
続いて、図6に示すように、アンビル30の上に、アンビル30に形成された凸部32を、底板15に形成された貫通孔40内に挿入させつつ、底板15を載置する。
【0052】
続いて、電線11の端部に位置する絶縁被覆14を剥がして芯線10を露出させる。図5に示すように、露出した芯線10を雌端子金具12の底板15の上に載置する。芯線10は、底板15をアンビル30の上に載置する前に、底板15の上に載置してもよい。
【0053】
その後、クリンパ31をアンビル30に向かって下方に移動させる(図5における矢線Cで示す方向)。すると、クリンパ31とアンビル30との間に挟まれることにより、ワイヤーバレル片17が芯線10の外側に巻き付くように圧着される。これにより端子金具付き電線13が完成する。
【0054】
続いて、本実施形態の作用、効果について説明する。ワイヤーバレル片17を芯線10に圧着すると、芯線10を介して底板15に圧力が加わる。すると、底板15は、電線11の延びる方向(図6における矢線Aで示す方向)に塑性変形して伸びようとする。すると、アンビル30に形成された凸部32は、底板15に形成された貫通孔40内に挿入されているので、凸部32の外側面が貫通孔40の内側面と当接する。
【0055】
この結果、電線11の延びる方向について貫通孔40が変位することが凸部32によって抑制される。すると、底板15のうち一対の貫通孔40の間に位置する領域が、電線11の延びる方向について伸びることを抑制できる。これにより、電線11の延びる方向について、雌端子金具12長さ寸法が大きくなることを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態によれば、貫通孔40は、底板15のうち、ワイヤーバレル片17が形成された領域よりも、電線11の延びる方向について外方の位置に形成されている。これにより、底板15のうちワイヤーバレル片17が形成された領域が電線11の延びる方向に伸びるのを、確実に抑制できる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
(1)本実施形態においては、凸部32又は貫通孔40は、電線11の延びる方向と交差する方向に延びて形成される構成としたが、これに限られず、凸部32又は貫通孔40の形状は、必要に応じて任意の形状としうる。
(2)本実施形態においては、底板には一対の凸部32又は貫通孔40が形成される構成としたが、これに限られず、3つ以上の複数の凸部32又は貫通孔40が形成されてもよい。
(3)凸部32又は貫通孔40は、必要に応じて、底板15の任意の位置に形成しうる。
(4)実施形態2においては、凹部33は底板を貫通する貫通孔40としたが、これに限られず、底板15を接触面側にくぼませてなる有底の凹部としてもよい。
(5)一対のワイヤーバレル片17は、互いに電線11の延びる方向にずれた配置で芯線10に圧着されてもよく、また、3本以上に分岐したワイヤーバレル片17が左右両側から互い違いに形成されていてもよく、また、ワイヤーバレル片17が1本のみ形成されて芯線10に圧着されていてもよく、ワイヤーバレル片17の形状は必要に応じて任意の形状としうる。
(6)本実施形態においては、端子金具は筒状の接続部18を有する雌端子金具12としたが、これに限られず、雄タブを有する雄端子金具としてもよいし、また金属板材に貫通孔が形成されたいわゆるLA端子としてもよく、必要に応じて任意の形状の端子金具とすることができる。
(7)本実施形態においては、電線11は、芯線10の外周を絶縁被覆14で覆う被覆電線としたが、これに限られず、シールド電線を用いてもよく、必要に応じて任意の電線を用いることができる。また、芯線10は単芯線でもよい。
(8)溝21は必要に応じて任意の配置で形成可能である。また、溝21は省略可能である。また、芯線10の表面と摺接するエッジが形成される構造であれば、底板15又はワイヤーバレル片17の接触面20に、任意の形状をなす凹部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態1に係る雌端子金具を示す側面図
【図2】芯線に圧着される前の状態におけるワイヤーバレル片及び底板を示す要部拡大平面図
【図3】アンビルに底板を載置する工程をしめす側面図
【図4】アンビルに載置された底板を示す要部拡大断面図
【図5】本発明の実施形態2に係る雌端子金具を示す側面図
【図6】アンビルに載置された底板を示す要部拡大断面図
【符号の説明】
【0060】
10…芯線
11…電線
12…雌端子金具(端子金具)
13…端子金具付き電線
15…底板
17…ワイヤーバレル片(バレル片)
30…アンビル
31…クリンパ
32…凸部
33…凹部
40…貫通孔(凹部)
42…凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線を含む電線と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片を有する端子金具と、を備えた端子金具付き電線の製造方法であって、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面に、前記電線の延びる方向に間隔を開けて複数の凸部を形成する工程と、前記底板の凸部に対応する位置に凹部が形成されたアンビルに、前記アンビルの凹部内に前記底板の凸部を挿入させつつ前記底板を載置する工程と、前記底板に前記芯線が載置された状態で、前記アンビルの上方からクリンパを前記アンビルに接近させるように相対移動させて、前記クリンパによって前記バレル片を押圧することで前記バレル片を前記芯線に巻き付けるように圧着する工程と、を実行することを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項2】
前記底板に、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に前記凸部を形成する工程を実行することを特徴とする請求項1に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項3】
芯線を含む電線と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片を有する端子金具と、を備えた端子金具付き電線の製造方法であって、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面に、前記電線の延びる方向に間隔を開けて複数の凹部を形成する工程と、前記底板の凹部に対応する位置に凸部が形成されたアンビルに、前記底板の凹部内に前記アンビルの凸部を挿入させつつ前記底板を載置する工程と、前記底板に前記芯線が載置された状態で、前記アンビルの上方からクリンパを前記アンビルに接近させるように相対移動させて、前記クリンパによって前記バレル片を押圧することで前記バレル片を前記芯線に巻き付けるように圧着する工程と、を実行することを特徴とする端子金具付き電線の製造方法。
【請求項4】
前記底板に、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に前記凹部を形成する工程を実行することを特徴とする請求項3に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項5】
前記芯線としてアルミニウム又はアルミニウム合金からなるものを使用することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の端子金具付き電線の製造方法。
【請求項6】
芯線を含む電線と、前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、
前記端子金具は、前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え、
前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凹部内に挿入される複数の凸部が形成されていることを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項7】
前記凸部は、前記底板のうち、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の端子金具付き電線。
【請求項8】
芯線を含む電線と、前記芯線に圧着される端子金具と、を備えた端子金具付き電線であって、
前記端子金具は、前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記芯線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え、
前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凸部が挿入される複数の凹部が形成されていることを特徴とする端子金具付き電線。
【請求項9】
前記凹部は、前記底板のうち、前記バレル片が形成された領域よりも前記電線の延びる方向について外方の位置に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の端子金具付き電線。
【請求項10】
前記芯線はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれか一項に記載の端子金具付き電線。
【請求項11】
芯線を含む電線から露出する前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記電線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備えた端子金具であって、
前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凹部内に挿入される複数の凸部が形成されていることを特徴とする端子金具。
【請求項12】
芯線を含む電線から露出する前記芯線が載置される底板と、前記芯線が載置される底板の側縁から側方に突出すると共に前記電線に巻き付くように圧着されるバレル片と、前記底板から延びて相手側端子と接続する接続部と、を備え端子金具であって、
前記バレル片は、アンビルと、前記アンビルの上方に配されるクリンパとの間に挟まれることによって前記芯線に圧着されるようになっており、
前記底板のうち前記芯線が載置される面と反対側の面には、前記電線の延びる方向に間隔を開けて形成されると共に、前記アンビルに形成された凸部が挿入される複数の凹部が形成されていることを特徴とする端子金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−80193(P2010−80193A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245905(P2008−245905)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】