説明

端子金具および端子金具の製造方法

【課題】電食の発生を防止できる端子金具を提供する。
【解決手段】本発明の端子金具10は、電線40を載置して接続する電線接続部23を備える。電線40は、端子金具10を構成する材料とは相違する材料からなる芯線41を絶縁被膜42で被覆してなる。電線接続部23には、電線40の端末から露出する芯線41に圧着される芯線バレル片25が設けられている。電線接続部23の電線40が載置される電線載置面23Aのうち、芯線バレル片25の電線40と電気的に接続される接続領域25Aを除く領域は、絶縁性材料からなる第1絶縁層29で覆われ、さらに、電線接続部23の電線載置面の反対側の面23Bが、絶縁性材料からなる第2絶縁層29で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子金具および端子金具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の電線はその両端部に接続された端子金具を介して車載用の電子機器間を接続する役割を有しており、端子金具と接続される電線の端部は絶縁被膜が剥離されて芯線が露出した状態になっている。この電線の芯線が露出した部分には、端子金具に設けられた芯線バレルが圧着されて機械的・電気的に接続され、電線の絶縁被膜で被覆されている部分には、端子金具に設けられた絶縁被膜バレルが圧着されて機械的に接続されるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
自動車のエンジンルーム(室外)に配される機器との接続には、電線と端子金具との接続部に水などが付着するのを防止するため、防水コネクタが用いられている。これに対し、自動車の室内に搭載される機器においては、水などの液体が付着する機会が少ないため、室内搭載機器との接続には、通常、非防水コネクタが用いられている。そのため、例えば、潮風にさらされる場所で車を使用することで、車の内外の気温差などにより発生する結露などと潮風に含まれる塩分とが結びついて塩水が生じ、この塩水が端子金具と室内に配索される電線との接続部に浸入する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−50736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、室内に配索される電線としては、車両の軽量化等の観点から、近年では、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の芯線を絶縁被膜で被覆してなるアルミ電線の需要が高まっている。アルミ電線に接続される端子金具としては、強度上の問題等で黄銅または銅合金製のものを用いるのが一般的である。
【0006】
したがって、電線の芯線と端子金具とが接触する部分では、アルミニウムと銅という異種の金属が接触することになる。このような場合、上記に例示したような使用により電線の芯線と端子金具とが接触する部分に塩水が浸入すると、接触部分が電解質溶液(塩水)に浸漬された状態となって、電気化学的反応によってイオン化傾向が大きい金属であるアルミニウムが溶解する、いわゆる電食が進むおそれがあった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電食の発生を防止できる端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するものとして、本発明は、電線を載置して電気的に接続する電線接続部を備える端子金具であって、前記電線は、前記端子金具を構成する金属材料とは相違する金属材料からなる芯線を絶縁被膜で被覆してなり、前記電線接続部には、前記電線の端末から露出する前記芯線に圧着される芯線バレル片が設けられ、前記電線接続部の前記電線が載置される電線載置面のうち、前記芯線バレル片の前記電線と電気的に接続される接続領域を除く領域は、絶縁性材料からなる第1絶縁層で覆われ、さらに、前記電線接続部の前記電線載置面の反対側の面が、絶縁性材料からなる第2絶縁層で覆われているところに特徴を有する。
【0009】
本発明においては、端子金具の電線接続部の電線載置面のうち、電線の芯線が圧着されて電気的に接続される接続領域を除く領域が第1絶縁層で覆われている。このように、端子金具の、電線を載置して接続する側の電線載置面を絶縁性材料からなる層で覆う構成とすることで、端子金具の、電線の芯線と直接接触し得る部分が保護されるので、電食の発生を防止することが可能である。
しかしながら、電線載置面の反対側の面にも、塩分などの電解質を含む水が付着することがあり、このような水分に起因する電食が発生する可能性もあるため、電線接続部の電線載置面側の所定領域を絶縁性材料で覆うだけでは、電線載置面の反対側の面に付着する水に起因する電食を十分に防止できない。そこで、本発明においては、端子金具の電線接続部の電線載置面側の所定領域だけでなく、電線接続部の電線載置面の反対側の面も、絶縁性材料からなる第2絶縁層で覆う構成とした。
したがって、本発明では、電線接続部は、接続領域を除く大部分が絶縁性材料からなる層(第1絶縁層および第2絶縁層)により覆われるため、電食が生じ難くなり、その結果、本発明によれば、電食を防止することができる。
【0010】
本発明の端子金具は、以下の構成であってもよい。
前記絶縁性材料がポリエチレンテレフタレートであってもよい。ポリエチレンテレフタレートからなる絶縁層は、ピンホールも生じ難いので、上記のような構成とすると、確実に電食を防止することができる。
【0011】
上記構成において、前記電線接続部の端面には、イオン化傾向が、前記電線接続部を構成する金属材料よりも、前記芯線を構成する金属材料に近い金属によりめっきが施されていてもよい。
本発明の端子金具を、例えば、端子金具を構成する金属板の所定領域に第1絶縁層および第2絶縁層を形成した後、所定形状に打ち抜いて組み立てることにより作製すると、打ち抜き工程により形成された端面は、絶縁性材料により覆われていないため、当該端面に付着する水分や当該端面と電線の芯線との接触に起因する電食の発生が懸念される。
そこで、上述のような構成とすると、電線接続部の端面に、イオン化傾向が、芯線を構成する金属材料に近い金属によるめっきが施されるので、電線接続部の端面と芯線とのイオン化傾向の差(電位差)が小さくなり、これにより電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制される。その結果、本発明によれば、電食を確実に防止することができる。
【0012】
上記構成において、前記芯線を構成する材料がアルミニウムを含む金属である一方、前記電線接続部は銅を含む金属から構成され、かつ、前記電線接続部の端面には、スズめっきが施されていてもよい。このような構成とすると、電線を軽量化することができ、端子金具を強度に優れたものとするとともに、スズめっきにより端子間の接触抵抗を低下することができる。また、スズとアルミニウムとは、イオン化傾向の差が小さいので電食のスピードが抑制される。
【0013】
また、上記課題を解決するものとして、本発明は、芯線を絶縁被膜で被覆してなる電線を載置して接続する電線接続部を備え、前記電線接続部に、前記電線の端末から露出した前記芯線を圧着して電気的に接続する芯線バレル片を設けた端子金具の製造方法であって、前記芯線と相違する材料からなり前記端子金具を構成する金属製の板材の一方の面の、前記電線接続部に対応する部分のうち、前記芯線バレル片の前記電線と接続される接続領域に相当する部分以外の部分に、絶縁性材料からなる第1絶縁層を形成するとともに、前記板材の他方の面の前記電線接続部に対応する部分に絶縁性材料からなる第2絶縁層を形成した後に、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層が形成された板材を所定形状に打ち抜く打抜き工程を実行し、前記打抜き工程を実行した後の板材に、イオン化傾向が、当該板材を構成する金属材料よりも、前記芯線を構成する金属材料に近い金属をめっきするめっき工程を実行するところに特徴を有する。
【0014】
本発明の製造方法により得られる端子金具においては、電線接続部の電線載置面のうち、電線の芯線が圧着されて電気的に接続される接続領域を除く領域に絶縁性材料からなる層(第1絶縁層)を形成するだけでなく、電線接続部の電線載置面の反対側の面にも絶縁性材料からなる層(第2絶縁層)が形成される。
したがって、本発明の製造方法により得られる端子金具では、電線接続部の大部分が絶縁製材料からなる層(第1絶縁層および第2絶縁層)により覆われるため、電食が生じ難くなる。
【0015】
特に、本発明の製造方法においては、打抜き工程を実行した後に、イオン化傾向が、芯線を構成する金属材料に近い金属を用いて板材のめっきを行うので、端子金具の端面と芯線とのイオン化傾向の差が小さくなり、これにより電食が起こり難くなるとともに、電食のスピードが遅くなる。その結果、本発明によれば、電食を確実に防止することができる。
【0016】
また、本発明の製造方法においては、第1絶縁層および第2絶縁層を形成したのちに打抜き工程を実行するので、個々の端子金具に合わせて各絶縁層を形成する必要がない。その結果、本発明によれば、簡素な方法により端子金具を作製することが可能である。
さらに、本発明の製造方法においては、第1絶縁層および第2絶縁層を形成したのちにめっき工程を実行するから、めっき工程を実行してから絶縁性材料からなる層を形成する場合よりも、端子金具を構成する板材と絶縁製材料からなる層とを接着させやすく、作業性に優れる。
【0017】
本発明の製造方法は以下の構成であってもよい。
前記めっき工程を、前記打抜き工程を実行した後の板材の端面に対して実行してもよい。
打抜き工程により形成された端面は、絶縁製材料からなる層に覆われていないため、当該端面に付着する水分や当該端面と電線の芯線との接触に起因する電食の発生が懸念される。そこで、上記のような構成とすると、板材の端面に、芯線を構成する金属材料にイオン化傾向が近い金属によるめっきが施されるので、端面と芯線とのイオン化傾向の差が小さくなり、端面における電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制される。
【0018】
前記絶縁性材料がポリエチレンテレフタレート製のフィルムであってもよい。このような構成とすると、ポリエチレンテレフタレートはピンホールも生じ難い材料であるので、確実に電食を防止することができ、かつ、板材の所定領域に貼り付けることにより第1絶縁層および第2絶縁層を形成できるので、作業性に優れる。
【0019】
前記芯線を構成する材料がアルミニウムを含む金属である一方、前記板材を構成する金属材料は銅を含む金属から構成され、かつ、前記めっき工程において前記板材にスズめっきを施してもよい。
このような構成とすると、電線を軽量化することができ、端子金具を強度に優れたものとするとともに、スズめっきにより端子間の接触抵抗を低下することができる。また、スズとアルミニウムとは、イオン化傾向が近いので電食のスピードが抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電食の発生を防止できる端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1の端子金具の側面図
【図2】端子金具の電線接続部を示す一部平面図
【図3】打抜き加工を施した板材の一部を示す平面図
【図4】図3の裏面図
【図5】図3の要部拡大図
【図6】電線を載置した状態の端子金具の一部を示す平面図
【図7】板材の所定領域に第1絶縁層を形成した状態を示す一部平面図
【図8】図7の裏面図であって、板材の所定領域に第2絶縁層を形成した状態を示す一部裏面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態1>
本発明を具体化した実施形態1の端子金具10を、図1ないし図8によって説明する。以下の説明においては、図1および図2における左側を前とし、図3〜図8における上側を前とする。
本実施形態の端子金具10は、図1および図2に示す雌型の端子金具10であり、銅または銅合金製の金属板にスズめっきを施した金属材料から構成されている。本実施形態の端子金具10は、図3に示すような展開形状の端子金具片10Aに曲げ加工などを施すことで図1に示すような形状に成形されている。
【0023】
端子金具10は、前後に開口する略箱型をなす本体部11を備え、この本体部11内には、前方から相手の雄型の端子金具のタブ(図示せず)が挿入可能とされている。端子金具10の本体部11の後側には、電線40を載置して接続する電線接続部23が設けられている(詳細は後述する)。
【0024】
端子金具10の本体部11は、図3に示す展開形状の端子金具片10Aを折曲線L1に沿って折り曲げることで角筒状に成形されている。本体部11は、前後に延出する底壁13と、底壁13の両側縁から立ち上げられる一対の側壁14,15と、側壁14から連なり底壁13と対向する天井壁16と、側壁15から連なり天井壁16の外側に重ね合わせられる外壁17とから構成されている。天井壁16の側縁には、側壁15側へ突出する支持片18が設けられ、この支持片18が外壁17に切り欠き形成された差込溝19内に差し込まれるとともに差込溝19の側縁(側壁15の上端面)に当接されることで、天井壁16を底壁13とほぼ平行な姿勢に支持可能とされている。
【0025】
底壁13の前端からはタブに対して弾性接触可能な弾性接触片20が設けられている。弾性接触片20の構造の詳細は図示しないが、図3に示す展開状態において底壁13から前方へ真っ直ぐに延出する舌片20Aを、本体部11における前端位置にて後方へ折り返した後、本体部11における長さ方向略中央位置にて前方へ折り返して形成されている。弾性接触片20のうち前後の折返部の間の部分が、天井壁16と対向するとともにタブに対して直接に接触可能なタブ接触部20aとされるのに対し、後側の折返部から前方へ突出する部分が、底壁13に当接可能とされる支持部20bとされ、その先端部20cは図1における上方へ向けて屈曲形成されている。弾性接触片20は、本体部11内に挿入されたタブを天井壁16とタブ接触部20aとの間で挟圧状態に保持可能とされ、タブにより押圧されることで弾性変形されるようになっており、このとき支持部20bが底壁13に当接されるとともに支持部20bの先端部20cがタブ接触部20aの裏側に当接されることで、弾性接触片20が過度撓みするのを規制可能とされる。また弾性接触片20は、底壁13よりも幅狭に形成されている。底壁13には、端子金具10をハウジング(図示せず)のキャビティ内に収容したときにキャビティ内に設けられたランスが進入して係止可能な係止孔21が開口して形成されている。また係止孔21の両側縁(両側壁14,15の下端)からは、キャビティ内への挿入動作の案内などに機能するスタビライザ22が一対突設されている。
【0026】
端子金具10の電線接続部23は、本体部11の底壁13の後端から後方へ延出されて設けられている。電線接続部23においては、本体部11の底壁13から連なって底壁13の幅方向に張り出し形成された2組のバレル片24,25が間隔をあけて設けられている。これら2組のバレル片24,25は、それぞれ、幅方向に対称に張り出し形成されている。
【0027】
電線接続部23に配される電線40は、端子金具10の材料とは相違する金属からなる金属細線(例えば、アルミニウム製またはアルミニウム合金製の金属細線)を撚り合わせてなる芯線41を絶縁製の材料からなる絶縁被膜42で被覆したものである。電線40の端末40Aは、絶縁被膜42が剥離されて芯線41が露出した状態になっている。電線40は、露出した芯線41の端末41Aを本体部11側に向けて端子金具10に接続される。
【0028】
電線接続部23の2組のバレル片24,25のうち、前側(本体部11側)のバレル片25は露出した芯線41を圧着して端子金具10と接続する芯線バレル片25とされ、後側(後端側)のバレル片24は電線40の絶縁被膜42で被覆している部分を圧着して端子金具10と接続する絶縁被膜バレル片24とされる。
芯線バレル片25の電線40が載置される面23A(電線載置面23A、図1における上側に配される面)には、電線40を圧着する際に芯線41の周囲に形成された酸化膜を破るための複数の凹部28が複数凹設されている(図3、図5および図6を参照)。複数の凹部28が設けられている領域25Aは、電線40と芯線バレル片25とが電気的に接続される接続領域25Aである。
【0029】
凹部28の孔縁は電線40を圧着する前の状態において、図3の紙面を貫通する方向から見て平行四辺形状をなしている。複数の凹部28は、芯線バレル片25が芯線41に圧着された状態で芯線41が延びる方向について間隔を空けて配されるとともに、芯線41が延びる方向に交差する方向について間隔を空けて配されている(図6を参照)。
【0030】
芯線バレル片25と本体部11の後端との間の領域26は、電線40の端部40A(端末40A)が配される端部配置領域26であり、この端部配置領域26は、電線40を接続した状態において一部(図1では上側)が開放状態となっており、芯線41が露出状態(外側から目視可能な状態)で配されている(図1および図2を参照)。端部配置領域26の図1における上側に配される板厚方向の面26A(端子金具の端面23Cに相当)には、スズめっきが施されている。
【0031】
芯線バレル片25と絶縁被膜バレル片24との間の領域27は絶縁被膜42の端末42Aと、絶縁被膜の端末42Aから露出した芯線41とが配される芯線配置領域27であり、端部配置領域26と同様に、電線40を接続した状態において一部(図1では上側)が開放状態となっており、芯線41が露出状態(外側から目視可能な状態)で配されている(図1および図2を参照)。芯線配置領域27の図1における上側に配される板厚方向の面27A(端子金具の端面23Cに相当)には、スズめっきが施されている。
【0032】
さて、本実施形態の端子金具10の電線接続部23の電線載置面23A(図3、図5〜図7に描かれている側の面)は、図7および図8に示すように、芯線バレル片25の接続領域25Aを除き、絶縁性材料からなる第1絶縁層29Aで覆われている。具体的には、電線載置面23Aにおいては、電線接続部23の前端23Eから芯線バレル片25の前側縁部25Bに至る領域および芯線バレル片25の後側縁部25Cから電線接続部23の後端23Fに至る領域が、第1絶縁層29Aで覆われている。
【0033】
一方、電線載置面23Aの反対側の面23B(図4および図8に描かれている側の面)については、電線接続部23のほぼ全域が、絶縁性材料からなる第2絶縁層29Bで覆われている。なお、第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bにより覆われている部分については、図中、網掛けで示した。
【0034】
本実施形態において、第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを構成する絶縁性材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0035】
次に、本実施形態の端子金具10の製造方法の一例を説明する。
まず、絶縁性フィルム29としてPBT製フィルムを用い、金属材料からなる板材1(例えば銅製の金属板)の所定領域に当該絶縁性フィルム29を貼り付けて第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを形成する(図7および図8を参照)。
詳しくは、板材1の一方の面1A(図7に描かれている側の面、電線載置面23Aに対応する面)においては、図7に示すように、帯状をなす2本の絶縁性フィルム29,29を、電線接続部23の、接続領域25Aを挟む2つの領域(電線接続部23の前端23Eから芯線バレル片25の前側縁部25Bに至る領域、および芯線バレル片25の後側縁部25Cから電線接続部の後端23Eまでの領域)に対応する部分に貼り付けることにより、第1絶縁層29Aが形成される。
なお、接続領域25Aには、第1絶縁層29Aは形成されないので、端子金具10と電線40との電気的な接続に悪影響を与えることはない。
板材1の他方の面1B(図8に描かれている側の面、電線載置面とは反対側の面23Bに対応する面)においては、図8に示すように、帯状をなす絶縁フィルム29を電線接続部23に対応する部分に貼り付けることにより、第2絶縁層29Bが形成される。
【0036】
次に、板材1を図7および図8に示す点線に沿って打抜く打抜き工程を実行すると、図4に示す形状の連鎖端子30が得られる。図7および図8に示す点線は、端子金具片10Aが複数連結された連鎖端子30の形状(所定形状)を示している。
次に、板材1の一方の面1Aの芯線バレル片25の接続領域25Aに、図示しない複数の凸部が突出形成された金型を用いてプレス加工を施すことにより、複数の凹部28を形成すると、図3に示す連鎖端子30が得られる。
【0037】
連鎖端子30においては、複数の端子金具片10Aがキャリア31,35に連結されている。連鎖端子30は、図3に示すように、図示横方向に沿って延出する帯状をなす一対のキャリア31,35に対し、複数の端子金具片10Aを図示横方向、すなわちキャリア31,35の長手方向(延出方向)に沿ってほぼ等間隔に並んだ状態で連結した構成とされている。各端子金具片10Aは、その長さ方向を図示縦方向、すなわち連鎖端子30における幅方向に沿わせた姿勢とした状態で、前後の各一端部がそれぞれキャリア31,35の幅方向の一方の縁部に連結されている。
【0038】
端子金具片10Aの前端部は、図3における上側のキャリア31に連結されている。端子金具片10Aの前端部に形成された弾性接触片20の先端部20cは、キャリア31の幅領域内に入り込んだところに形成されている。この端子金具片10Aの前端部を連結する連結部32とキャリア31とは、図示横方向に並んで配されている。
【0039】
端子金具片10Aの後端部は、図3における下側のキャリア35の側縁に突設された連結部36に連結されている。連結部36は、端子金具片10Aのうち絶縁被膜バレル片24の後端幅方向略中央に繋げられている。これら端子金具片10Aと連結部36とキャリア35とは、図示縦方向、すなわち連鎖端子30全体から見て幅方向に並んで配されている。このキャリア35には、連鎖端子30を送り出すために加工機に設けられた送り爪(図示せず)が係合可能な送り孔33,34が開口して形成されている。この送り孔33,34は、加工機の種類(例えばプレス機や圧着機)によって送り爪の形状が異なることから、その送り爪の形状に合わせて円形の送り孔33と方形の送り孔34の2種類が設けられている。
【0040】
次に、打抜き工程を経て得られた連鎖端子30にめっきを施すめっき工程を実行する。めっき工程においては、連鎖端子30の両面(図3に描かれた面と図4に描かれた面)をめっきするだけでなく、連鎖端子30(端子金具10)の板厚方向の面(端面23C)についてもめっきを施す。
めっき工程では、イオン化傾向が、端子金具10(板材1)を構成する金属材料(銅、または銅合金)よりも、芯線41を構成する金属材料(アルミニウム、またはアルミニウム合金)に近い金属(スズ)をめっきする。
めっき工程を経ると端子金具10を構成する板材1の両面1A,1Bならびに端面23Cにメッキ層が形成される。
【0041】
次に、キャリア31,35に形成した送り孔33,34に送り爪を係合させることで、端子金具片10Aを順次加工機に送り、その過程で端子金具片10Aに対して曲げ加工などを施す。次に、個々の端子金具片10Aの電線接続部23に設けられた絶縁被膜バレル片24および芯線バレル片25を電線40に圧着させて、端子金具10と電線40とを接続する。具体的には、図6に示すように、電線40を、その芯線41の端末41Aが電線接続部23の端部配置領域26に配されるとともに、絶縁被膜42の端末42Aが芯線配置領域27に配されるように載置してから、芯線バレル片25と絶縁被膜バレル片24とをそれぞれ電線40に圧着させると、図1および図2に示す形状の端子金具10が得られる。
【0042】
次に本実施形態の作用・効果について説明する。
本実施形態においては、端子金具10の電線接続部23の電線載置面23Aのうち、電線の芯線41が圧着されて電気的に接続される接続領域25Aを除く領域が第1絶縁層29Aで覆われ、かつ、電線載置面23Aの反対側の面23Bでは電線接続部23のほぼ全域が第2絶縁層29Bで覆われている。
したがって、本実施形態において、電線接続部23は、接続領域25Aを除く大部分が第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bにより覆われているため、電食が生じ難くなっている。
【0043】
特に、本実施形態では、電線接続部23の端面(端子金具の端面23C)は、芯線41を構成する金属材料(アルミニウムまたはアルミニウム合金)にイオン化傾向が近い金属(スズ)により、めっきが施されているから、電線接続部23の端面23Cと芯線41とのイオン化傾向の差が小さくなり、これにより電食が起こりにくくなるとともに、電食のスピードが抑制される。その結果、本実施形態によれば、電食を確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、絶縁性材料がポリエチレンテレフタレート(PET)であるから、ピンホールも生じ難いので、確実に電食を防止することができる。
さらに、本実施形態の製造方法においては、第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bの形成にPET製のフィルム29を用いるので、板材1に所定領域に貼り付けることにより、第1絶縁層29Aおよび第2の絶縁層29Bを形成することができ、作業性に優れる。
【0045】
また、本実施形態では、芯線41を構成する材料がアルミニウムを含む金属である一方、電線接続部23は銅を含む金属から構成され、かつ、電線接続部23の端面23Cには、スズめっきが施されているから、電線を軽量化することができ、端子金具10を強度に優れたものとするとともに、スズめっきにより端子間の接触抵抗を低下することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを形成したのちに打抜き工程を実行するので、個々の端子金具10に合わせて第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを形成する必要がない。その結果、本実施形態によれば、簡素な方法により端子金具10を作製することが可能である。
【0047】
さらに、本実施形態においては、第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを形成したのちにめっき工程を実行するから、めっき工程を実行してから第1絶縁層29Aおよび第2絶縁層29Bを形成する場合よりも、端子金具10を構成する板材1に絶縁性材料が接着し易いので、作業性に優れる。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態においては、第1絶縁層と第2絶縁層とをPET製フィルムを貼り付けることにより形成したが、第1絶縁層および第2絶縁層を、相違する絶縁性材料により形成してもよいし、液状の絶縁性材料を塗布して熱処理を施す方法などにより形成してもよい。
【0049】
(2)上記実施形態においては、銅(合金製)の金属板にスズめっきを施した材料で構成された端子金具(電線接続部)を備え、アルミニウム(合金)製の芯線を備える電線を示したが、端子金具と芯線の材料はこれに限定されない。要は、電線の芯線の材料と端子金具の材料とが相違するものであれば、本発明の効果が得られる。
【0050】
(3)上記実施形態においては、端子金具の電線載置面、電線載置面の反対側の面および端面に、スズめっきを施したものを示したが、これに限定されない。例えば、めっきを施していない金属板材を用いて作製した端子金具であってもよいし、端子金具の端面にのみ、あるいは、端子金具の電線載置面およびその反対側の面のみにめっきを施したものであってもよい。
【0051】
(4)上記実施形態では、芯線バレル片の接続領域に平行四辺形状をなす複数の凹部を形成したものを示したが、凹部の形状は長方形状などであってもよい。
(5)上記実施形態では、複数の凹部を打抜き加工の後に形成する方法を示したが、複数の凹部を打抜き加工の前に形成してもよいし、打抜き加工と同時に形成してもよい。
【0052】
(6)上記実施形態では、端子金具として雌型のものを示したが、雄型のものでもよい。また、上記実施形態では相手方の端子金具を挿入可能な本体部を備える端子金具を示したが、2以上の電線を接続する電線接続部を有するもの(いわゆる「スプライス端子」)であってもよい。
【0053】
(7)上記実施形態では、打抜き工程の後にめっき工程を実行する製造方法について説明したが、打抜き工程の前にめっき工程を実行してもよい。この場合、でも、打抜き工程の後に、打抜きにより形成された板材の端面にめっきを施すと電食防止効果を確実なものとすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…板材
1A…板材の一方の面(電線載置面に相当する面)
1B…板材の他方の面(電線載置面と反対側の面の面に相当する面)
10…端子金具
23…電線接続部
23A…電線載置面
23B…電線載置面の反対側の面
23C…(電線接続部の)端面
24…絶縁被膜バレル片
25…芯線バレル片
25A…接続領域
26A…(電線接続部の)端面
27A…(電線接続部の)端面
29…絶縁性材料(絶縁性フィルム)
29A…第1絶縁層
29B…第2絶縁層
40…電線
40A…(電線の)端末
41…芯線
41A…(芯線の)端末
42…絶縁被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を載置して電気的に接続する電線接続部を備える端子金具であって、
前記電線は、前記端子金具を構成する金属材料とは相違する金属材料からなる芯線を絶縁被膜で被覆してなり、
前記電線接続部には、前記電線の端末から露出する前記芯線に圧着される芯線バレル片が設けられ、
前記電線接続部の前記電線が載置される電線載置面のうち、前記芯線バレル片の前記電線と電気的に接続される接続領域を除く領域は、絶縁性材料からなる第1絶縁層で覆われ、
さらに、前記電線接続部の前記電線載置面の反対側の面が、絶縁性材料からなる第2絶縁層で覆われていることを特徴とする端子金具。
【請求項2】
前記絶縁性材料がポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1に記載の端子金具。
【請求項3】
前記電線接続部の端面には、イオン化傾向が、前記電線接続部を構成する金属材料よりも、前記芯線を構成する金属材料に近い金属により、めっきが施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の端子金具。
【請求項4】
前記芯線を構成する材料がアルミニウムを含む金属である一方、前記電線接続部は銅を含む金属から構成され、かつ、前記電線接続部の端面には、スズめっきが施されていることを特徴とする請求項3に記載の端子金具。
【請求項5】
芯線を絶縁被膜で被覆してなる電線を載置して接続する電線接続部を備え、前記電線接続部に、前記電線の端末から露出した前記芯線を圧着して電気的に接続する芯線バレル片を設けた端子金具の製造方法であって、
前記芯線と相違する材料からなり前記端子金具を構成する金属製の板材の一方の面の、前記電線接続部に対応する部分のうち、前記芯線バレル片の前記電線と接続される接続領域に相当する部分以外の部分に、絶縁性材料からなる第1絶縁層を形成するとともに、前記板材の他方の面の前記電線接続部に対応する部分に絶縁性材料からなる第2絶縁層を形成した後に、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層が形成された板材を所定形状に打ち抜く打抜き工程を実行し、
前記打抜き工程を実行した後の板材に、イオン化傾向が、当該板材を構成する金属材料よりも、前記芯線を構成する金属材料に近い金属をめっきするめっき工程を実行することを特徴とする端子金具の製造方法。
【請求項6】
前記めっき工程を、前記打抜き工程を実行した後の板材の端面に対して実行することを特徴とする請求項5に記載の端子金具の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁性材料がポリブチレンテレフタレート製のフィルムであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の端子金具の製造方法。
【請求項8】
前記芯線を構成する材料がアルミニウムを含む金属である一方、前記板材を構成する金属材料は銅を含む金属から構成され、かつ、前記めっき工程において前記板材にスズめっきを施すことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の端子金具の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18889(P2012−18889A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156975(P2010−156975)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】