説明

端末機器

【課題】水平面に設置した状態でエコー現象を低減できる端末機器を提供する。
【解決手段】カメラ機器1は、第一筐体2と第二筐体3とを備え、回転軸を中心に折り畳み可能に構成されている。第一筐体2にはマイク20が設けられ、第二筐体3にはスピーカ50が設けられている。カメラ機器1は、第一筐体2と第二筐体3とを最大角度で開いた状態で、机上に載置して自立させることができる。マイク20は、スピーカ50の出力方向と同方向に単一指向性を有する。カメラ機器1を開状態で机上に設置した場合、マイク20とスピーカ50との間が所定距離離間して位置決めされる。これにより、スピーカ50から出力された音声をマイク20が拾うことによるエコー現象を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ、スピーカ及びマイクを備えた端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビ会議端末に接続して使用するカメラ機器には、据置タイプ、ディスプレイに装着するタイプ等の種々の形態がある。カメラ機器には、マイク及びスピーカが内蔵されている。最近では、手軽に持ち運びができ、かつ机上に設置可能なカメラ機器の開発が進められている。例えば、同時に通話撮影機能を有し、広角撮影及び直立機能を備えたネットワーク電話が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電話の本体正面の上部にはカメラ(カメラ底台)が軸支され、正面中央にはスピーカが設けられ、その下方にはマイクが設けられている。利用者は、本体の下部に回転可能に支持された底台を展開することによって、水平面に本体を直立して設置できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3137616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のネットワーク電話の構造を、テレビ会議用のカメラ機器に適用した場合、水平面に直立して設置した状態では、本体の前後方向において、スピーカとマイクとがほぼ同一位置となる。テレビ会議では、このような設置状態で、自拠点にいる利用者全員の音声を捉えることができるように、マイク感度を上げて使用する。さらに、スピーカから出力された音声を利用者が明瞭に聞くことができるように、スピーカ音量を上げて使用する。この場合、スピーカから出力される音声がマイクに拾われてしまうため、エコー現象(反響)を生じてしまう。それ故、利用者が非常に煩わしく感じるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、水平面に設置した状態でエコー現象を低減できる端末機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る端末機器は、カメラ、スピーカ及びマイクを備え、前記スピーカの出力方向と同方向に前記マイクの指向性を有する端末機器であって、前記端末機器を水平面に設置するときに、前記スピーカの出力方向において、かつ前記カメラよりも下方の位置で、前記マイクと前記スピーカとが互いに近づいた閉状態から、前記マイクと前記スピーカとの間が所定距離離間する開状態となるように、前記マイク又は前記スピーカを可動させる可動機構を備えたことを特徴とする。
【0007】
第1態様に係る端末機器は、例えば、テレビ会議端末に接続して利用できる。マイクで複数の参加者の音声を拾いつつ、スピーカから出力された音声が利用者全員に聞こえる必要がある。故に、マイク感度を良好にし、かつスピーカ音量を大きくする必要があるので、エコー現象を生じ易い状態である。そこで、本発明の第1態様は、水平面に設置する際に、可動機構によって開状態にする。開状態では、マイクとスピーカとの間が所定距離離間する。これにより、スピーカから出力された音声がマイクに入力され難くなるので、設置時においてエコー現象を低減できる。また、カメラよりも下方にマイクとスピーカがあるので、カメラは端末機器における上側に位置する。故に、端末機器を机上に置いたときに、カメラの高さ位置が低すぎないので、利用者を良好に撮影できる。
【0008】
また、第1態様において、前記可動機構は、前記スピーカの前記出力方向における前記スピーカの前方において、かつ前記カメラよりも下方の位置で、前記閉状態から前記開状態となるように、前記マイク又は前記スピーカを可動させてもよい。マイクはスピーカよりも前方に位置するので、マイクの音声入力においてスピーカが障壁とならない。故に、マイクで利用者の音声を良好に取得できる。
【0009】
また、第1態様において、前記端末機器を水平面に設置した状態において、前記端末機器を正面からみたときに、前記カメラの下方に前記スピーカが配置され、前記スピーカの下方に前記マイクが配置されていてもよい。カメラよりも下方にマイクとスピーカがあるので、カメラは端末機器における上側に位置する。故に、端末機器を机上に置いたときに、カメラの高さ位置が低すぎないので、利用者を良好に撮影できる。また、スピーカは、マイクの上側に位置するので、机上に設置した場合に、スピーカから出力された音声が机上に反射しない。これにより、利用者は、スピーカから出力された音声を良好に聞くことができる。他方、マイクは机上に近いので、利用者から直接伝わる音声のみならず、机上に反射した音声も重ねて捉えることができる。これにより、端末機器を設置した拠点の利用者の音声を良好に捉えることができる。
【0010】
また、第1態様において、マイクは、単一指向性マイクであるので、特定方向の音声を良好に取得できる。第1態様では、特定方向をスピーカの出力方向と同方向にしている。これにより、マイクは、スピーカの出力方向と同方向の音声を選択的に、かつ良好に捉えることができる。
【0011】
また、第1態様において、前記端末機器を水平面に設置した状態において、前記スピーカの正面方向と、前記マイクの指向方向とがともに水平であるようにしてもよい。これにより、スピーカから出力された音声が机上に反射することなく、利用者に直接伝えることができるので、利用者は、スピーカから出力された音声を明確に聞き取ることができる。さらに、マイクの指向方向も水平であるので、利用者の音声を確実に捉えることができる。
【0012】
また、第1態様において、前記可動機構は、前記マイクを保持する第一筐体と、当該第一筐体に対して回転軸を介して折り畳み可能に連結され、かつ前記スピーカを保持する第二筐体とを備え、前記カメラは、前記回転軸を中心に回転可能に支持され、前記閉状態は、前記第一筐体と前記第二筐体とを折り畳んだ状態であって、前記開状態は、前記第一筐体と前記第二筐体とを所定角度で開いた状態であって、前記端末機器を前記開状態で、かつ前記回転軸の軸心方向を水平面に対して平行にした状態で水平面に設置したときに、前記マイクは、前記スピーカの正面方向において、前記スピーカから前記所定距離離間した位置に保持されていてもよい。このような構造により、開状態では、マイクとスピーカとの間を確実に所定距離離間させることができる。これにより、スピーカから出力された音声がマイクに安定的に減衰した状態で入力されるので、設置時においてエコー現象を低減できる。
【0013】
また、第1態様において、前記マイクは前記第一筐体の下部に設けられ、前記第一筐体の前記第二筐体に対向する背面には、前記スピーカが出力する音を前記マイクに対して後方から直接伝えるための貫通孔を設けてもよい。マイクは第一筐体の下部に設けられているので、マイクを机上に近付けることができる。故に、利用者のマイクに直接届く音声と、反射した音声がマイクに届くまでのタイムラグが少ないので、利用者の音声を良好に取得できる。
【0014】
また、スピーカから出力された音は、第一筐体の背面に設けた貫通孔から入ってマイクの振動板の裏側に届く(直接音)。同じ音は回り込み、少し遅れて振動板の表側にも届く(間接音)。そして直接音の速度を遅らせて間接音と同時に到達するようにすると、この音は振動板の表と裏で同時に生じた同量のエネルギーとして相殺され、電気出力にならない。故に、マイクの後方の音声を拾わないようにすることができる。
【0015】
また、第1態様では、前記第一筐体において、前記第二筐体に設けられた前記スピーカに相対する部分に開口部を設け、前記閉状態では、前記開口部の内側に前記スピーカが格納されるようにしてもよい。閉状態では、開口部の内側にスピーカが格納されるので、スピーカが外方に突出せず、コンパクトな状態で端末機器を持ち運ぶことができる。一方、開状態では、スピーカに相対する位置に第一筐体の開口部が位置する。故に、第一筐体はスピーカの出力した音声の妨げにならず、スピーカの出力した音声を利用者に良好に伝えることができる。
【0016】
また、第1態様において、前記端末機器を前記開状態で水平面に設置したときの前記開口部の下側の内周面には、前記端末機器を操作するための操作部を設けてもよい。操作部が操作し易い位置にあるので、使い勝手のよい端末機器を提供できる。
【0017】
また、第1態様において、前記マイクと、前記スピーカの正面中心とを仮想的に結んだ直線は、前記マイクの指向性により感度が低下する部分と交わるようにしてもよい。これにより、スピーカから出力した音声に対してマイクの感度が低くなるので、エコー現象を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】テレビ会議端末10にカメラ機器1をケーブル4で接続した状態を示す図である。
【図2】カメラ機器1の斜視図(開状態)である。
【図3】カメラ機器1の斜視図(閉状態)である。
【図4】カメラ機器1の正面図(閉状態)である。
【図5】カメラ機器1の右側面図(閉状態)である。
【図6】カメラ機器1の右側面図(開状態)である。
【図7】図4に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図8】図7の断面位置に対応するカメラ機器1の開状態の断面図である。
【図9】第一筐体2の背面22の下側部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の端末機器を具現化した一実施形態であるカメラ機器1について、図面を参照して説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている機器の構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。なお、図2,図3の上側、下側、右斜め下側、左斜め上側を、カメラ機器1の上側、下側、右側、左側とする。
【0020】
図1に示すように、カメラ機器1は、テレビ会議端末10にケーブル4を介して接続して使用される。カメラ機器1は、自拠点の利用者を撮像し、その映像情報をテレビ会議端末10に入力する。カメラ機器1は、カメラ機能の他、利用者の音声をテレビ会議端末に入力するマイク機能、及び他拠点の利用者の音声を出力するスピーカ機能を併せ持つ。
【0021】
まず、カメラ機器1の全体構造について説明する。図2,図3に示すように、カメラ機器1は、第一筐体2と、第二筐体3とを備えている。第一筐体2と第二筐体3とは、その上部で回転軸5を介して連結され、回転軸5を中心に回動することで折り畳み可能となっている。カメラ機器1の上部中央には、回転軸5に回動可能に軸支されたカメラ装置6が設けられている。カメラ装置6の正面中心にはレンズ部7(図2参照)が設けられている。第一筐体2の前面21の下部には、利用者の音声を捉えるためのマイク部11が設けられている。第二筐体3の前面31の略中央には、前側に向かってやや斜め下方に突出し、音声が出力されるスピーカ部35が設けられている。
【0022】
図2に示すように、カメラ機器1は、回転軸5の軸心方向を水平面に対して平行にし、かつ第一筐体2と第二筐体3とを最大角度で開いた状態で、水平面である机上(図示外)に載置して自立させることができる。カメラ機器1が自立した状態で、カメラ装置6を回動させ、レンズ部7を利用者に向けることで、カメラ機器1の設置が完了する。カメラ機器1は、自拠点の利用者の音声をマイク部11で捉える。他拠点の音声は、スピーカ部35から出力される。なお、以下説明において、カメラ機器1を最大角度で開いて机上に設置する状態を「開状態」(図2、図6参照)とし、折り畳んだ状態を「閉状態」(図3〜図5参照)とする。
【0023】
次に、第一筐体2の構造について説明する。図2〜図4に示すように、第一筐体2は、正面視縦長の略長方形の薄板状に形成されている。第一筐体2の略中央には、正面視略長方形状の開口部12が設けられている。図2に示すように、開口部12は、開状態で、後方に位置するスピーカ部35に対向して位置する。故に、第一筐体2が、スピーカ部35から出力される音声の妨げにはならない。一方、図3に示すように、開口部12は、閉状態で、第二筐体3の前面31に突設されたスピーカ部35を内側に格納する機能を有する。
【0024】
図2〜図4に示すように、第一筐体2の上部の左右方向中央には、略長方形状に切り欠いた凹部19が設けられている。凹部19の内側には、回転軸5を中心に回動可能に軸支されたカメラ装置6が設けられている。カメラ装置6を使用する時は、図2に示すように、カメラ装置6を回動させてレンズ部7を外部に露出させる。カメラ装置6を使用しない時は、図3に示すように、カメラ装置6を回動させてレンズ部7を凹部19の内側に収納する。レンズ部7を収納できるので、使用しない時にレンズ部7が損傷するのを防止できる。
【0025】
第一筐体2の前面21の下部には、マイク部11が設けられている。マイク部11には、カメラ機器1の前方の音声を捉えるための複数の貫通孔14Aが網目状に設けられている。図7,図8に示すように、マイク部11に位置する第一筐体2の内側には、マイク20が設けられている。マイク20は、第一筐体2の前方に指向性を有する「単一指向性マイク」である。図9に示すように、マイク20の背面側に対向する第一筐体2の背面22の下部には、カメラ機器1の後方の音声を拾うための複数の貫通孔14B(本発明の「貫通孔」に相当)が網目状に設けられている。マイク20の指向性の原理については後述する。
【0026】
図2,図4に示すように、開口部12は、カメラ機器1の開状態の姿勢において、上側内面12A、右側内面12B、左側内面12C、及び下側内面12Dを形成している。図4に示すように、カメラ機器1を、第一筐体2の前面21を鉛直方向に立たせた状態において、下側内面12Dは後方に向かって斜め上方に傾斜している。そして、カメラ機器1を開状態にして机上に設置した状態では、図2に示すように、下側内面12Dは略水平となっている。
【0027】
下側内面12Dには、カメラ機器1を操作するための4つのボタンを有する操作部55が設けられている。操作部55には、左側から右側に向かって順に、電源ボタン15、マイクミュートボタン16、スピーカ音量を上げるための音量プラスボタン17、スピーカ音量を下げるための音量マイナスボタン18が各々設けられている。カメラ機器1が開状態で机上に設置されたときに下側内面12Dが略水平となるので、利用者にとって操作部55の操作がし易くなり、使い勝手が向上する。
【0028】
図2,図3に示すように、第一筐体2の凹部19の左右両側には、前面21の上部から後方に向かって半円弧状に形成され、第一筐体2と第二筐体3を開く際に、第二筐体3の上端部に設けられた係止部37,38(図2,図3参照)が係止するための被係止部27,28が各々設けられている。被係止部27,28の後方に向かう各終端部は、前面21の最上部に位置し、かつ回転軸5に対して直交する方向に切断されている。
【0029】
図3,図5に示すように、第一筐体2の下端部には、机上に接地するための接地部8が設けられている。接地部8は、前面21側から背面22側に向かって所定角度で斜め上方に傾斜している。接地部8の傾斜面は、カメラ機器1を最大角度で開き、机上に自立させたときに水平となるように形成されている(図6,図8参照)。接地部8には滑り止めのストッパ81が固定されている。
【0030】
次に、第二筐体3の構造について説明する。図2に示すように、第二筐体3は、正面視縦長の略長方形の薄板状に形成されている。第二筐体3は、その上端部において回転軸5に回動可能に連結されている。第二筐体3の上部の左右方向中央にも、カメラ装置6を格納するための略長方形状に切り欠いた凹部(図示外)が設けられている。第二筐体3の前面31の略中央には、前面31に直交する方向の前方に向かって突出する角柱状のスピーカ部35が設けられている。スピーカ部35の前面には、複数の貫通孔35Aが網目状に設けられている。
【0031】
図8に示すように、第二筐体3の内側には、カメラ機器1の動作を制御するための制御基板70が複数の螺子75で固定されている。さらに、スピーカ部35の内側には、スピーカ50が設けられている。スピーカ50は、カメラ機器1を開状態で机上に設置した場合に、音声の出力方向を、カメラ機器1の前方にかつ略水平に向けられるように支持されている。スピーカ50から出力された音声は、スピーカ部35の貫通孔35Aからカメラ機器1の前方にかつ略水平に向かって出力される。これにより、スピーカ50から出力された音声を利用者に対して直接伝えることができるので、利用者は、スピーカ50から出力された音声を明瞭に聞き取ることができる。
【0032】
図2,図3に示すように、第二筐体3の切り欠き部の左右両側には、背面32の上部から前方に向かって半円弧状に形成され、第一筐体2と第二筐体3を開く際に、第一筐体2の上端部に設けられた被係止部27,28(図2,図3参照)に係止するための係止部37,38が各々設けられている。係止部37,38の前方に向かう各終端部は、回転軸5に対して直交する方向に切断されている。
【0033】
図2に示すように、第一筐体2と第二筐体3とを開いたときに、係止部37,38が被係止部27,28に係止することによって、第一筐体2と第二筐体3の回動が制限される。このとき、第一筐体2と第二筐体3との開度は最大角度となる。なお、第一筐体2と第二筐体3との開度は、カメラ機器1の机上における設置面積を考慮すると、最大角度を90°以下にするのが好ましい。なお、第一筐体2と第二筐体3の回動を制限する構造は、これに限らず、他の構造でもよい。
【0034】
図5に示すように、第二筐体3の下端部にも、机上に接地するための接地部9が設けられている。接地部9は、背面32側から前面31側に向かって所定角度で斜め上方に傾斜している。接地部9の傾斜面は、カメラ機器1を最大角度で開き、机上に自立させたときに水平となるように形成されている(図6,図8参照)。接地部9にも滑り止めのストッパ91が固定されている。
【0035】
次に、マイク20の指向性の原理について説明する。マイク20は、特定の方向を捉えやすい性質を持つ単一指向性のマイクである。図8に示すように、開状態のカメラ機器1を机上に設置した場合を例に説明する。カメラ機器1の後方の音声は、第一筐体2の背面22の下側に設けられた貫通孔14Bからマイク20の振動板の裏側に届く(直接音)。同じ音声は第一筐体2の前側にも回り込み、第一筐体2の前面21のマイク部11に設けられた貫通孔14Aから少し遅れて振動板の表側にも届く(間接音)。貫通孔14Bから振動板の裏側までの間には障害物(図示外)等が設けられている。それ故、直接音の速度が遅れて間接音と同時に到達する。この音声は振動板の表と裏で同時に生じた同量のエネルギーとして相殺されるので、電気出力にならない。
【0036】
一方、カメラ機器1の前方の音声は、第一筐体2の前面21のマイク部11に設けられた貫通孔14Aから、まず先にマイク20の振動板の表側に伝わる。その後の第一筐体2の裏側への回り込みは、上述の障害物によって到達がさらに遅くなる。この時間差によってエネルギーは相殺されずに電気出力される。このような原理で、マイク20はカメラ機器1の前方に対し、図8の一点鎖線で示すような指向性Rを有する。
【0037】
次に、上記構造からなるカメラ機器1を自立させたときの状態について説明する。図2に示すように、第一筐体2と第二筐体3とを回転軸5を中心に開くと、第一筐体2の被係止部27,28に第二筐体3の係止部37,38が係止する。このとき、第一筐体2と第二筐体3との開度は最大角度となる。最大角度で開いた開状態であるカメラ機器1を、回転軸5の軸心方向を水平面に対して平行にして机上に載置する。
【0038】
図6に示すように、この状態のカメラ機器1を回転軸5の軸方向から見た場合、第一筐体2の接地部8と、第二筐体3の接地部9とは何れも水平である。これにより、第一筐体2の接地部8と、第二筐体3の接地部9とは、机上に対して何れも水平面で接地できるので、カメラ機器1は、開いた状態の姿勢を安定して保持できる。
【0039】
また、図8に示すように、カメラ機器1において、上から下に向かって、カメラ装置6、スピーカ50、マイク20の順に位置する。カメラ装置6は、カメラ機器1の最上部に位置している。これにより、図2,図6に示すように、カメラ機器1を机上に設置したときに、レンズ部7の高さ位置が低すぎない。故に、適切な高さで利用者を撮影できる。
【0040】
これに対し、マイク20は、カメラ機器1の最下部に位置している。マイク20は机上に最も近い。故に、利用者のマイク20に直接届く音声と、反射した音声がマイク20に届くまでのタイムラグが少ないので、利用者の音声を良好に取得できる。
【0041】
スピーカ50は、マイク20の上側に位置している。従って、スピーカ50から出力された音声の大部分は机上に反射しないので、利用者は、スピーカ50から出力された音声を良好にかつ明瞭に聞き取ることができる。
【0042】
そして、図8に示すように、カメラ機器1が開状態において、マイク20とスピーカ50との間はスピーカ50の出力方向に沿って所定距離離れるようになっている。マイク20とスピーカ50とがスピーカ50の出力方向に沿って所定距離離れることによって、スピーカ50から出力された音声がマイク20に拾われることによって生じるエコー現象を低減できる。これらマイク20とスピーカ50との位置関係は、マイク20の指向性とスピーカ50の出力方向によって決まる。
【0043】
次に、マイク20とスピーカ50の位置関係について具体的に説明する。図8に示すように、マイク20は、カメラ機器1の前方に対して指向性Rを有する。マイク20の指向性Rは、カメラ機器1の前方を最大とするカーディオイド型状であり、マイク20の裏側に回り込みつつ裏面の中心部に向かって感度が低下している。このような指向性Rを有するマイク20の後方のやや上方にスピーカ50が位置し、マイク20とスピーカ50との間がスピーカ50の出力方向に沿って所定距離離れている。
【0044】
このような位置関係において、スピーカ50の正面中心と、マイク20の中心とを仮想直線P(図8中点線)で結ぶ。仮想直線Pは、マイク20の指向性により感度が低下する部分と交わるように位置している。これにより、マイク20の入力信号を、スピーカ50の音声出力信号に対して効果的に低くすることができる。
【0045】
このように、カメラ機器1を開状態にしたときに、マイク20とスピーカ50とが、上記の位置関係に位置決めされることで、スピーカ50から出力された音声をマイク20が拾うことによるエコー現象を低減できる。よって、スピーカ50から出力された音声を明瞭に聞き取ることができるので、テレビ会議の進行を良好にできる。
【0046】
次に、折り畳まれたカメラ機器1を開くときの操作性について説明する。図5に示すように、折り畳まれたカメラ機器1を回転軸5の軸方向から見た場合、第一筐体2の接地部8は、前方から後方に向かって斜め上方に傾斜している。これに対し、第二筐体3の接地部9は、後方から前方に向かって斜め上方に傾斜している。さらに、カメラ機器1を折り畳んだ状態では、第一筐体2の接地部8と、第二筐体3の接地部9とは、同じ位置関係となっている。故に、接地部8,9はV字形状を形成している。
【0047】
さらに、接地部8,9は、第一筐体2と第二筐体3とが対向する対向面を中心とした対称形状の傾斜面となっている。これは、第一筐体2と第二筐体3とが回転軸5を中心に開く構造であって、その開いた状態の接地部8,9を水平にしたことに起因する。これらの特徴から、接地部8,9に対して両手の指を当てやすく、さらには指を引っ掛けやすくなるので、カメラ機器1を開く際の操作性が向上する。
【0048】
次に、カメラ機器1を折り畳んだ状態について説明する。図2〜図5に示すように、カメラ機器1を折り畳んで閉状態にした場合、第二筐体3の前面31から突出するスピーカ部35が、第一筐体2の開口部12の内側に格納される。閉状態のカメラ機器1は、コンパクトな略直方体の端末機器となるので、手軽に持ち運ぶことができ、携帯性が向上する。また、図5に示すように、閉状態のカメラ機器1には外方に突出する部分もないので、服飾等に引っ掛けることもない。
【0049】
以上説明したように、本実施形態であるカメラ機器1は、第一筐体2と第二筐体3とを備え、回転軸5を中心に回動することで折り畳み可能に構成されている。第一筐体2には、マイク20が設けられ、第二筐体3にはスピーカ50が設けられている。カメラ機器1は、回転軸5を上方に向け、第一筐体2と第二筐体3とを最大角度で開いた状態で、机上に載置して自立させることができる。マイク20は、スピーカ50の出力方向と同方向に単一指向性を有する。そして、カメラ機器1を開状態で机上に設置した場合、マイク20とスピーカ50との間が所定距離離間して位置決めされる。これにより、スピーカ50から出力された音声をマイク20が拾うことによるエコー現象を低減できる。よって、スピーカ50から出力された音声を明瞭に聞き取ることができるので、テレビ会議の進行を良好にできる。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、テレビ会議端末10が接続されたケーブル4を、第一筐体2に設けられた入出力部に接続し、ケーブル4を通じて音声情報または映像情報の入出力を行っている。これに対し、例えば、テレビ会議端末と無線通信によって音声情報、映像情報の入出力を行うようにしてもよい。この場合、テレビ会議端末と通信するためのアンテナを、第一筐体2又は第二筐体3の内側に格納すればよい。
【0051】
また、上記実施形態では、カメラ機器を開状態で机上に設置したときに、マイク20の指向方向は略水平にしているが、やや下向きにしてもよい。この場合、指向性Rの内、出来るだけ感度の低いマイク20の背面に対してスピーカ50の音声が入力される。故に、エコー現象をさらに確実に低減できる。さらに、上記実施形態では、スピーカ50の正面方向を略水平にしているが、やや上向きにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 カメラ機器
2 第一筐体
3 第二筐体
5 回転軸
6 カメラ装置
12 開口部
12D 下側内面
14B 貫通孔
20 マイク
50 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ、スピーカ及びマイクを備え、前記スピーカの出力方向と同方向に前記マイクの指向性を有する端末機器であって、
前記端末機器を水平面に設置するときに、前記スピーカの出力方向において、かつ前記カメラよりも下方の位置で、前記マイクと前記スピーカとが互いに近づいた閉状態から、前記マイクと前記スピーカとの間が所定距離離間する開状態となるように、前記マイク又は前記スピーカを可動させる可動機構を備えたことを特徴とする端末機器。
【請求項2】
前記可動機構は、前記スピーカの前記出力方向における前記スピーカの前方において、かつ前記カメラよりも下方の位置で、前記閉状態から前記開状態となるように、前記マイク又は前記スピーカを可動させることを特徴とする請求項1に記載の端末機器。
【請求項3】
前記端末機器を水平面に設置した状態において、
前記端末機器を正面からみたときに、
前記カメラの下方に前記スピーカが配置され、前記スピーカの下方に前記マイクが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の端末機器。
【請求項4】
前記マイクは、単一指向性マイクであることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の端末機器。
【請求項5】
前記端末機器を水平面に設置した状態において、
前記スピーカの正面方向と、前記マイクの指向方向とがともに水平であることを特徴とする請求項4に記載の端末機器。
【請求項6】
前記可動機構は、
前記マイクを保持する第一筐体と、
当該第一筐体に対して回転軸を介して折り畳み可能に連結され、かつ前記スピーカを保持する第二筐体と
を備え、
前記カメラは、前記回転軸を中心に回転可能に支持され、
前記閉状態は、前記第一筐体と前記第二筐体とを折り畳んだ状態であって、
前記開状態は、前記第一筐体と前記第二筐体とを所定角度で開いた状態であって、
前記端末機器を前記開状態で、かつ前記回転軸の軸心方向を水平面に対して平行にした状態で水平面に設置したときに、前記マイクは、前記スピーカの正面方向において、前記スピーカから前記所定距離離間した位置に保持されることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の端末機器。
【請求項7】
前記マイクは前記第一筐体の下部に設けられ、
前記第一筐体の前記第二筐体に対向する背面には、前記スピーカが出力する音を前記マイクに対して後方から直接伝えるための貫通孔を設けたことを特徴とする請求項6に記載の端末機器。
【請求項8】
前記第一筐体において、前記第二筐体に設けられた前記スピーカに相対する部分に開口部を設け、
前記閉状態では、前記開口部の内側に前記スピーカが格納されることを特徴とする請求項6又は7に記載の端末機器。
【請求項9】
前記端末機器を前記開状態で水平面に設置したときの前記開口部の下側の内周面には、前記端末機器を操作するための操作部を設けたことを特徴とする請求項8に記載の端末機器。
【請求項10】
前記マイクと、前記スピーカの正面中心とを仮想的に結んだ直線は、前記マイクの指向性により感度が低下する部分と交わることを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−119851(P2012−119851A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266617(P2010−266617)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】