説明

競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法

【課題】コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム等を提供する。
【解決手段】無線タグ50は、ループアンテナ20上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、計時ポイントを検出して、競技タイムを特定する。無線タグ50は、話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、無線タグ50は、例えば、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、競技タイム等を受信機30に向けて送信する。一方、受信機30は、複数の無線タグ50からそれぞれ2回に亘って送信される競技タイム等のうち、無線タグ50毎に少なくとも1つの競技タイム等を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マラソン競技において、競技者個々のゴールタイムを計測(計時)する試みがなされている。例えば、競技者のゼッケン等にバーコードを印刷しておき、ゴールした競技者のバーコードをリーダにて読み取った時刻に基づいて、競技者個々のゴールタイムを計測する計測システムも実用化されている。
最近では、各計時ポイントにおける通過タイムも含めた競技タイムを計測可能とするために、非接触にて競技者個々の競技タイムを計測する試みがなされている。例えば、競技者にタグ送信機を保持させ、このタグ送信機から送られる情報により、競技タイムを計測する計測システムが開発され、実用化に向けた運用試験等が試みられている。
【0003】
より具体的には、方形ループコイル等から競技トラック上の計測エリア内にトリガ信号を送信するようにしておき、タグ送信機を保持する競技者がその計測エリア内を走行すると、このトリガ信号に応答してタグ送信機からID(識別番号等)が送信される。そして、ID受信ユニットがこのIDを受信することにより、各競技者の周回数や競技タイム等を計測する(例えば、特許文献1参照)。
この他にも、タグ送信機がUHF帯の微弱無線電波等にてIDを送出することにより、タグ送信機の通信距離の拡大を図る技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−141497号公報 (第2−4頁、第2図)
【特許文献2】特開2004−125765号公報 (第3−4頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1,2の技術では、計時エリア内にてトリガ信号を受信している間中、タグ送信機がIDを間断なく発信し続けている(特許文献2では、ランダムな間隔にて送信を繰り返している)。
これは、方形のループコイルによりトリガ信号が送信されるため、計時エリア内における正確なトリガポイント(例えば、ゴールライン等のような計時ライン)をタグ送信機にて検出することが極めて困難なことに起因している。そのため、タグ送信機は、競技者が計時エリアに入りトリガ信号を検出すると、直ちにIDの送信を開始し、計時エリアを抜けてトリガ信号の検出を終えるまで、IDを送信し続けている。
一方、ID受信ユニットは、このIDを最初に受信すると、その時刻を開始時刻とし、また、このIDの受信を終えると、その時刻を終了時刻とする。そして、開始時刻から終了時刻までの中間の時刻を求めることにより、このIDに対応する競技者の競技タイムを計時していた。
【0005】
しかしながら、このような特許文献1,2の技術では、同時期に大勢の競技者が計時エリア内に到達すると、ID受信ユニット側が、送信されるはずのIDを適切に受信できない場合があった。これは、計時エリア内にて、複数のタグ送信機がそれぞれにIDを送信し続けることにより、ID受信ユニット側の処理が追いつかない状況が生じたり、各IDの送信時にコリジョンが発生してしまうためである。
このため、ID受信ユニットにて、開始時刻や終了時刻が正しく得られずに不正確な競技タイムを計時してしまったり、IDの受信が殆ど行えずに計時すべき競技タイムをロストしてしまうという問題があった。
なお、特許文献2に開示されている技術では、コリジョンの発生を抑えるべく、タグ送信機側がランダムな間隔にてIDを送信している。それでも現実には、計時エリア内で各タグ送信機がそれぞれにIDの送信を繰り返すうちに、コリジョンが発生してしまっていた。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することのできる競技用計時システム、無線機器、および、タイム送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る競技用計時システムは、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信機と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定手段と、
他の前記無線機器から前記受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定手段により特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、前記受信機に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段から前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信機には、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段が設けられている、
ことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、各無線機器において、計時手段は、例えば、基準時刻に同期した時刻を計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する。タイム特定手段は、検出手段により計時ポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定する。無線通信手段は、他の無線機器から受信機への送信の有無(つまり、話中か否か)を判別し、送信が無い(つまり、話中でない)と判別したときに、タイム特定手段により特定された計時タイムを含むタイム情報を、受信機に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段からタイム情報を送信タイミングをずらして複数回(例えば、2回)に亘って送信させる。一方、受信機において、受信手段は、各無線機器の無線通信手段からタイム情報を受信する。
【0009】
このように、各無線機器は、話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、例えば、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、タイム情報を受信機に送信する。
これにより、一方の送信にてコリジョンが発生した場合でも、他方の送信にてコリジョンを発生させることなく、タイム情報を受信機に送信できる。また、同じタイム情報を複数回に亘って送信することにより、データ化け(パリティエラー等)にも対応できる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0010】
前記各無線機器は、例えば、自己の識別情報(タグID等)に基づいて、予めグループ分けされており、
前記送信制御手段は、前記無線通信手段から前記タイム情報を前記グループ毎に送信タイミングをずらして送信させてもよい。
【0011】
前記受信機は複数配置され、
前記無線通信手段は、前記タイム情報を前記各受信機のうちの一の受信機に第1のチャンネルにて送信するとともに、当該送信に続く前記タイム情報の送信時に前記タイム情報を前記各受信機のうちの他の受信機に第2のチャンネルにて送信するようにしてもよい。
【0012】
前記無線通信手段は、前記タイム情報を前記受信機に第1のチャンネルにて送信するとともに、当該送信に続く前記タイム情報の送信時に前記タイム情報を前記受信機に第2のチャンネルにて送信するようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る無線機器は、
各競技者にそれぞれ携帯される無線機器であって、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定手段と、
他の前記無線機器から所定の受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定手段により特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、当該受信機に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段から前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、計時手段は、例えば、基準時刻に同期した時刻を計時する。また、検出手段は、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する。タイム特定手段は、検出手段により計時ポイントが検出された際に、計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定する。無線通信手段は、他の無線機器から受信機への送信の有無(つまり、話中か否か)を判別し、送信が無い(つまり、話中でない)と判別したときに、タイム特定手段により特定された計時タイムを含むタイム情報を、受信機に向けて送信する。そして、送信制御手段は、無線通信手段からタイム情報を送信タイミングをずらして複数回(例えば、2回)に亘って送信させる。
【0015】
このように、各無線機器は、話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、例えば、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、タイム情報を受信機に送信する。
これにより、一方の送信にてコリジョンが発生した場合でも、他方の送信にてコリジョンを発生させることなく、タイム情報を受信機に送信できる。また、同じタイム情報を複数回に亘って送信することにより、データ化け(パリティエラー等)にも対応できる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るタイム送信方法は、
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信機と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記検出ステップにて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定ステップと、
前記各無線機器において、他の前記無線機器から前記受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定ステップにて特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、前記受信機に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信機において、前記無線通信ステップにて前記各無線機器から送信されるタイム情報を受信する受信ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、各無線機器において、計時ステップは、例えば、基準時刻に同期した時刻を計時する。また、検出ステップは、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する。タイム特定ステップは、検出ステップにて計時ポイントが検出された際に、計時ステップにて計時された時刻を計時タイムとして特定する。無線通信ステップは、他の無線機器から受信機への送信の有無(つまり、話中か否か)を判別し、送信が無い(つまり、話中でない)と判別したときに、タイム特定ステップにて特定された計時タイムを含むタイム情報を、受信機に向けて送信する。そして、送信制御ステップは、無線通信ステップにてタイム情報を送信タイミングをずらして複数回(例えば、2回)に亘って送信させる。一方、受信機において、受信ステップは、無線通信ステップにて各無線機器から送信されるタイム情報を受信する。
【0018】
このように、各無線機器は、話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、例えば、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、タイム情報を受信機に送信する。
これにより、一方の送信にてコリジョンが発生した場合でも、他方の送信にてコリジョンを発生させることなく、タイム情報を受信機に送信できる。また、同じタイム情報を複数回に亘って送信することにより、データ化け(パリティエラー等)にも対応できる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態にかかる競技用計時システムについて、以下、図面を参照して説明する。なお、一例として、競技用計時システムがマラソン競技に適用された場合について説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、この発明の実施の形態に適用される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、競技が行われる走路及びその周辺に配置される信号発生装置10、ループアンテナ20、受信機30、及び、処理装置40と、競技者RNに保持される無線タグ50とを含んで構成される。
【0022】
信号発生装置10は、走路の沿道に配置され、ループアンテナ20に信号を供給してループアンテナ20上に電磁場を発生させる。具体的に信号発生装置10は、所定周波数のLF(Low Frequency)信号を生成し、適宜増幅してループアンテナ20に供給する。
【0023】
ループアンテナ20は、所定形状に形成されたアンテナ(コイル)であり、競技者RNが走行する走路(具体的には、計時ラインLにより規定される計時ポイント)に適宜配置される。
ループアンテナ20は、一例として、図2(a)に示すように、設定用アンテナ部21と、計時用アンテナ部22とから構成される。
【0024】
設定用アンテナ部21は、幅wの略矩形(方形)に形成され、競技者RNの走行方向(矢印A方向)と直交する直線a,bに沿って、走路を横切るように配置される。そして、1辺に給電点s1を有するように形成され、この給電点s1から矢印方向に電流が流れるようになっている。
一方、計時用アンテナ部22は、2つの幅wの略矩形に形成され、走行方向と直交する直線c,d及び、直線d,eに沿って、走路を横切るようにそれぞれ配置される。そして、給電点s2,s3を有するように形成され、それぞれ各給電点から矢印方向に電流が流れるようになっている。なお、この直線dが、計時を行うための計時ラインLと重なるように、配置される。
また、設定用アンテナ部21と計時用アンテナ部22とは、間隔hだけ隔てて配置されている。
【0025】
そして、ループアンテナ20は、図2(a)の各給電点s1〜s3より矢印方向に電流が流れるようになっており、信号発生装置10からLF信号が供給されると、各アンテナ部上に電磁場を生成する。具体的には、図2(b)に示すように、設定用アンテナ部21上に電磁場20aを、また、計時用アンテナ部22上に電磁場20b,20cをそれぞれ生成する。
なお、設定用アンテナ部21と計時用アンテナ部22と間を隔てる間隔hは、電磁場20aから電磁場20b,20cに与える影響を小さくし、また、計時用アンテナ部22の特性が発揮されるように、予め実験等により求められている。
具体的には、各アンテナ部の幅wと、間隔hとの長さの比率が3:1になるように、設定用アンテナ部21と計時用アンテナ部22との間を隔てると、良好な電磁場が得られることが明らかになっている。
【0026】
ループアンテナ20上に生成される図2(b)に示すような電磁場中を、電磁場の検出方向(検出コイル面Dに対して直角な方向)が競技走路と垂直(つまり、検出コイル面Dが走路に対して平行方向)に配置された電磁場検出コイルC(後述する無線タグ50のLFアンテナ51)が矢印B方向に移動すると、図2(c)に示すような電磁界強度分布が得られる。つまり、電磁場検出コイルCは、競技走路に対して垂直方向の磁束をコイル面Dにて捉えることになるため、直線b,cの間及び、直線d上にて、電磁界強度が極めて小さくなり、図2(c)に示すような電磁界強度分布を検出する。
【0027】
このような電磁界強度分布は、ループアンテナ20(信号発生装置10)毎にある程度のばらつきが生じてしまう。
そのため、設定用アンテナ部21上に生成される電磁場20aが、後述する無線タグ50の増幅回路52における利得(増幅率)を設定するために使用される。例えば、無線タグ50は、電磁場20aの電磁界強度を一定時間Tだけ測定し(サンプリング)し、最大値や平均値等を求め、それらに応じて適切な利得を設定する。
そして、無線タグ50は、設定した利得にて計時用アンテナ部22上に生成される電磁場20b,20cの電磁場検出コイルCによる検出信号を適切に増幅し、当該増幅された検出信号に基づいて電磁場20b,20cの電磁界強度の増減を検出し、当該電磁界強度の増減に基づいて、計時ポイントを検出する。
【0028】
図1に戻って、受信機30は、上述したループアンテナ20の近傍に配置され、ループアンテナ20上を通過した無線タグ50から送られる競技タイム及びタグIDを受信する。そして、受信した競技タイム等を処理装置40に供給する。
【0029】
処理装置40は、パーソナルコンピュータ等からなり、各無線タグ50にてそれぞれ計時された競技タイムを収集する。
つまり、処理装置40は、ループアンテナ20上を通過した各無線タグ50から送信される競技タイム及びタグIDを、受信機30を介して受信すると、所定の記憶部に記憶する。
【0030】
一方、競技者RNに保持される無線タグ50は、競技者RNと共に走路上を移動する。無線タグ50は、ループアンテナ20(設定用アンテナ部21)にて生成される電磁場を最初に検出すると、測定した電磁界強度から適切な利得を設定する。そして、利得を設定後に、ループアンテナ20(計時用アンテナ部22)にて生成される電磁場の変極点を検出すると、そのタイミングで計時している時刻を競技タイムとして特定する。
【0031】
一例として、無線タグ50は、電磁場検出手段としてのLFアンテナ51と、増幅回路52と、計時ポイント検出手段としての検出回路53と、制御部54と、計時手段としての計時部55と、記憶部56と、通信回路57と、通信アンテナ58と、を含んで構成される。
【0032】
LFアンテナ51は、電磁場の検出方向が競技走路と垂直(つまり、検出面が走路に対して平行方向)となるように設定されており、上述したループアンテナ20にて発生される電磁場を検出する。つまり、信号発生装置10により設定用アンテナ部21及び計時用アンテナ部22上に生成された電磁場を検出する。
そして、LFアンテナ51は、検出した電磁場の電磁界強度を示す検出信号を増幅回路52に供給する。
【0033】
増幅回路52は、LFアンテナ51から供給される検出信号を適宜増幅して、検出回路53に供給する。
例えば、増幅回路52は、自動利得制御(AGC)が可能であり、ループアンテナ20(設定用アンテナ部21)にて生成される電磁場を最初に検出すると、測定した電磁界強度から適切な利得を設定する。
具体的に増幅回路52は、設定用アンテナ部21にて生成される電磁場20aの電磁界強度を一定時間Tだけ測定し、最大値や平均値等を求め、それらに応じて適切な利得を設定する。そして、利得を設定した後に、計時用アンテナ部22にて生成される電磁場20b,20cの検出信号を増幅する。
なお、増幅回路52は、ループアンテナ20毎(計時ポイント毎)に、利得を設定し直すため、制御部54からの指示に応じて、利得の設定値をクリアする。
【0034】
検出回路53は、増幅回路52から供給される検出信号(電磁界強度)に基づいて、計時用アンテナ部22上における電磁場の変極点(トリガポイント)を検出する。
すなわち、利得が設定された増幅回路52から供給される電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、トリガポイント(つまり、計時ポイント)を検出する。
具体的に、検出回路53は、図3(a)に示すようなループアンテナ20上における電磁場20a〜20cに対して、図3(b)に示すような波形の信号を生成する。なお、電磁場20aに対応する波形は、増幅回路52の利得設定用に使用されるため、図3(b)に示す波形の検出開始後の立ち上がり、すなわち、計時用アンテナ部22上での電磁場20b、20cの変極点を、計時ポイント(計時ラインL)として特定する。
【0035】
図1に戻って、制御部54は、無線タグ50全体を制御する。
制御部54は、増幅回路52が利得を設定し、検出回路53が計時用アンテナ部22上における電磁場の変極点(電磁場20b、20cの変極点)を検出したタイミングで、計時部55が計時する時刻を競技タイムとして特定する。そして、特定した競技タイムを記憶部56に記憶する。
【0036】
また、制御部54は、通信回路57を制御して、特定した競技タイム及びタグID(記憶部56に記憶される自己のタグID)を、上述した受信機30に向けて送信する。
その際、制御部54は、他の無線タグ50が送信中(話中)であるかを判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、競技タイム等を受信機30に向けて送信する。
なお、このような競技タイム等を1回だけ送信したとすると、タイミングによっては、他の無線タグ50における送信と重なってしまい、コリジョンが発生してしまうおそれがある。また、コリジョンが生じずに送信できたとしても、まれに、競技タイム等のデータ化け(パリティエラー等)が発生してしまうこともある。
このようなコリジョンやデータ化けの対策として、制御部54は、通信回路57から複数回に亘って、同じ競技タイム等を送信させる。
【0037】
以下、制御部54が制御する無線通信について、図4を参照して具体的に説明する。なお、コリジョンやデータ化けの対策として、制御部54は、2回に亘って、通信回路57に同じ送信を行わせるものとする。
【0038】
最初に、最もシンプルな例として、話中が生じない状態で2回の送信を行う場合について、図4(a)を参照して説明する。
まず、競技タイムを特定すると、制御部54は、タイミングT1にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせる。なお、キャリアセンスを行う際に、通信回路57は、受信モードとなっている。
【0039】
ここで、話中でないと判別すると、制御部54は、データ処理時間γだけ待機する。
このデータ処理時間γは、受信機30が受信済のデータ(競技タイム等)を処理装置40に供給(転送)するために要する時間であり、この間、受信機30では、無線タグ50からの無線送信を受信できない状態となる(つまり、無線未受信期間となる)。そのため、この無線未受信期間を避けるべく、制御部54は、データ処理時間γだけ待機する。
【0040】
データ処理時間γの待機を終えると、制御部54は、タイミングT2にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、監視時間(キャリアセンス監視時間)βだけ待機する。
この監視時間βは、通信回路57が受信モードから送信モードに切り替えるために要する時間(受信送信切り替え時間)と同等の時間である。つまり、キャリアセンス後の無線タグ50が実際に送信を開始するまでに時間β(受信送信切り替え時間β)だけ必要となり、この間に、他の無線タグ50が話中でないと判別して送信を行うこと(又は、既に行っていること)も起こり得るため、制御部54は、監視時間βだけ待機する。
【0041】
監視時間βの待機を終えると、制御部54は、タイミングT3にて、通信回路57に再度キャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、通信回路57を受信モードから送信モードに切り替える。
通信回路57は、この送信モードへの切り替え(受信送信切り替え)に、上述したように、時間β(受信送信切り替え時間β)だけ要する。
【0042】
受信送信切り替えが完了すると、制御部54は、タイミングT4にて、通信回路57から競技タイム等を送信させる。
通信回路57は、この送信に、通信時間αだけ要する。
【0043】
このようにして、1回目の送信を終えると、制御部54は、タイミングT5より一連処理時間τだけ待機する。
この一連処理時間τは、上述したデータ処理時間γ、監視時間β、受信送信切り替え時間β、及び、通信時間αを加算した時間である。そして、この一連処理時間τを待機することにより、他の無線タグ50にも同様の無線通信を行う機会が与えられる。
なお、制御部54は、この間を利用して、通信回路57を送信モードから受信モードに切り替える。
【0044】
一連処理時間τの待機を終えると、制御部54は、タイミングT6にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、データ処理時間γだけ待機する。
【0045】
データ処理時間γの待機を終えると、制御部54は、タイミングT7にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、グループ時間χだけ待機する。
このグループ時間χは、予め各無線タグ50が属するグループ毎に異なる時間であって、具体的には、グループに応じて、時間βを整数倍(例えば、1倍、2倍、3倍、・・・)した分の時間である。
なお、各無線タグ50は、例えば、タグIDの値(ビット値等)に基づいて、予めグループ分けされているものとする。つまり、各無線タグ50は、自己が属するグループに応じて、異なるグループ時間χが規定されている。
【0046】
グループ時間χの待機を終えると、制御部54は、タイミングT8にて、通信回路57に再度キャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、通信回路57を受信モードから送信モードに切り替える。
そして、受信送信切り替えが完了すると、制御部54は、タイミングT9にて、通信回路57から競技タイム等を送信させる。つまり、2回目の送信を行う。
【0047】
このようにして行われる、1回目の送信と、2回目の送信とでは、データ処理時間γの待機後に、監視時間βだけ待機するのか(タイミングT2)、グループ時間χだけ待機するのか(タイミングT7)が、異なっている。
これは、1回目の送信でコリジョンが発生してしまった(他の無線タグ50の送信と重なってしまった)場合でも、2回目の送信では、グループ毎に異なるグループ時間χ(時間βの整数倍)だけ、送信タイミングをずらすことにより、コリジョンの発生を防止するためである。
【0048】
なお、元々、送信タイミングが時間βの整数倍ずれており、2回目の送信にて、時間βの整数倍ずらすことにより、コリジョンが発生する場合もある。それでも、その場合には、1回目の送信にてコリジョンが発生せずに、送信が有効に完了していることになる。
また、グループ数が多い程、コリジョンの発生確率は小さくなるため、グループ数をより多くすることも考えられるが、弊害として、グループ時間χが長くなってしまうことにより、単位処理時間当たりの処理可能数が減ってしまう。
そのため、同時期に処理しなければならない無線タグ50の数(同時期に計時ポイントに到達することが予想される競技者RNの人数)等を勘案して、グループ数は、適切に定められている。
【0049】
次に、通信途中で話中が生じる場合について、図4(b),(c)を参照して説明する。
図4(b)は、タイミングT11にて話中が生じた例である。なお、このタイミングT11は、図4(a)に示すタイミングT1(T6)に対応している。
また、図4(c)は、タイミングT23にて話中が生じた例である。なお、このタイミングT23は、図4(a)に示すタイミングT3(T8)に対応している。
【0050】
まず、図4(b)に示すように、タイミングT11にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中であると判別すると、制御部54は、通信時間αだけ待機する。つまり、話中となっている送信が終了するのを待機する。
そして、通信時間αの待機を終えると、制御部54は、タイミングT12にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、データ処理時間γだけ待機する。つまり、受信機30の無線未受信期間を避ける。
【0051】
データ処理時間γの待機を終えると、制御部54は、タイミングT13にて、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、監視時間β(2回目ならば、グループ時間χ)だけ待機する。
監視時間β(又は、グループ時間χ)の待機を終えると、制御部54は、タイミングT14にて、通信回路57に再度キャリアセンスを行わせ、話中でないと判別すると、通信回路57を受信モードから送信モードに切り替える。
そして、受信送信切り替えが完了すると、制御部54は、タイミングT15にて、通信回路57から競技タイム等を送信させる。
【0052】
一方、図4(c)に示すように、データ処理時間γ及び、監視時間β(2回目ならば、グループ時間χ)の待機を終えたタイミングT23にて、話中であると判別すると、制御部54は、同様に、通信時間αだけ待機する。
以降、話中が生じないとすると、上記と同様に、制御部54は、データ処理時間γ及び、監視時間β(2回目ならば、グループ時間χ)の待機を終えた後、通信回路57に受信送信切り替えを行わせ、タイミングT27にて、通信回路57から競技タイム等を送信させる。
【0053】
このように、制御部54は、通信回路57により話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、通信回路57から競技タイム等を受信機30に送信させる。
【0054】
図1に戻って、計時部55は、制御部54により適宜補正(設定)され、競技において基準となる基準時刻に同期した時刻を計時する。
なお、計時部55は、高安定水晶発振器を備えており、時刻の計時を安定して維持することが可能となっている。
【0055】
記憶部56は、例えば、不揮発性メモリからなり、制御部54により特定された競技タイム等を記憶する。
この記憶部56には、例えば、競技の計時ポイント分の記憶エリアがそれぞれ設けられており、各計時ポイントにて計時した競技タイムをそれぞれの別の記憶エリアに格納可能となっている。
なお、記憶部56は、例えば、別エリアに、無線タグ50毎(競技者RN毎)に異なる固有の識別情報(タグID)等を予め記憶している。このタグIDは、上述したように、グループ時間χを定めるための、グループ分けに用いられる。
【0056】
通信回路57は、制御部54に制御され、競技タイム等を受信機30に向けて送信する。具体的に通信回路57は、通信アンテナ58を介したキャリアセンスにより、他の無線タグ50が送信中であるか否かを判別し、その判別結果を制御部54に供給する。そして、無線通信が行える状態になると、制御部54の制御に基づいて、競技タイム等を通信アンテナ58を介して受信機30に送信する。
なお、通信回路57は、コリジョンやデータ化けの対策として、同じ競技タイム等を、例えば、2回に亘って送信する。そして、その際、制御部54の制御に基づいて、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、送信する。
また、通信アンテナ58は、通信に使用されるアンテナである。
【0057】
以下、上述した構成の競技用計時システムにおける無線タグ50の動作について、図5を参照して説明する。図5は、無線タグ50が実行するタイム送信処理を説明するためのフローチャートである。このタイム送信処理は、例えば、競技者RNと共に移動する無線タグ50がループコイル20上の電磁場を検出した際に開始される。
【0058】
まず、無線タグ50は、トリガポイント(計時ポイント)を検出するまで待機する(ステップS11)。すなわち、検出回路53が上述した図3(b)に示すように、増幅回路52の利得設定を終えた後、検出開始後の立ち上がりを特定し、計時用アンテナ部22上での電磁場の変極点(電磁場20b、20cの変極点)となる計時ポイントを検出するまで、後続処理の実行を待機する。
【0059】
トリガポイントを検出すると、無線タグ50は、競技タイムを特定する(ステップS12)。つまり、制御部54は、計時用アンテナ部22上における電磁場の変極点を検出したタイミングで、計時部55が計時する時刻を競技タイムとして特定する。そして、特定した競技タイムを記憶部56に記憶する。
【0060】
無線タグ50は、話中であるか否かを判別する(ステップS13)。すなわち、無線タグ50は、通信回路57にキャリアセンスを行わせ、他の無線タグ50が送信中であるか否かを判別する。
【0061】
無線タグ50は、話中であると判別すると、通信時間αだけ待機する(ステップS14)。つまり、話中となっている送信が終了するのを待機する。そして、上述したステップS13に処理を戻す。
【0062】
一方、ステップS13にて、話中でないと判別した場合、無線タグ50は、データ処理時間γだけ待機する(ステップS15)。つまり、受信機30の無線未受信期間を避ける。
そして、無線タグ50は、話中であるか否かを判別する(ステップS16)。ここで、話中であると判別すると、上述したステップS14に処理を戻す。また、話中でないと判別すると、無線タグ50は、1回送信済であるか否かを判別する(ステップS17)。つまり、これから1回目の送信を行うのか、また、これから2回目の送信を行うのかを判別する。
【0063】
無線タグ50は、1回送信済でない(これから1回目の送信を行う)と判別すると、監視時間βだけ待機する(ステップS18)。一方、1回送信済である(これから2回目の送信を行う)と判別すると、グループ時間χだけ待機する(ステップS19)。
すなわち、1回目の送信の場合、どの無線タグ50(他の無線タグ50)の送信と重なるか分からないため、無線タグ50は、そのまま監視時間βだけ待機する。また、2回目の送信の場合、1回目の送信でコリジョンが発生した場合を考慮して、送信タイミングをずらすため、グループ毎に異なるグループ時間χ(時間βの整数倍)だけ待機する。
【0064】
監視時間β、又は、グループ時間χの待機を終えると、無線タグ50は、話中であるか否かを判別する(ステップS20)。ここで、話中であると判別すると、上述したステップS14に処理を戻す。また、話中でないと判別すると、無線タグ50は、受信送信切り替えを行う(ステップS21)。つまり、通信回路57を受信モードから送信モードに切り替える。
【0065】
受信送信切り替えを終えると、無線タグ50は、競技タイム等を受信機30に送信する(ステップS22)。つまり、通信回路57から競技タイム及びタグIDを送信させる。
【0066】
送信を終えると、無線タグ50は、2回送信済であるか否かを判別する(ステップS23)。つまり、今回の送信が1回目の送信であったか、2回目の送信であったかを判別する。
【0067】
無線タグ50は、2回送信済でない(今回の送信が1回目の送信であった)と判別すると、一連処理時間τだけ待機する(ステップS24)。つまり、一連処理時間τ(処理時間γ+監視時間β+受信送信切り替え時間β+通信時間α)だけ待って、他の無線タグ50にも同様の無線通信を行う機会を与える。
そして、一連処理時間τの待機を終えると、無線タグ50は、2回目の送信を行うため、上述のステップS13に処理を戻す。
【0068】
また、ステップS23にて、2回送信済である(今回の送信が2回目の送信であった)と判別した場合、無線タグ50は、タイム送信処理を終える。
【0069】
このようなタイム送信処理により、無線タグ50は、話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、競技タイム等を受信機30に送信する。
これにより、一方の送信にてコリジョンが発生した場合でも、他方の送信にてコリジョンを発生させることなく、競技タイム等を受信機30に送信できる。また、同じ競技タイム等を複数回に亘って送信することにより、データ化け(パリティエラー等)にも対応できる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0070】
上記のタイム送信処理において、1回目の送信の際に、監視時間βだけ待機させ(ステップS18)、また、2回目の送信の際に、グループ時間χだけ待機させる(ステップS19)場合について説明したが、1回目と2回目の待機時間を入れ替えて、1回目の送信の際に、グループ時間χだけ待機させ、また、2回目の送信の際に、監視時間βだけ待機させてもよい。
【0071】
次に、図6を参照して、競技用計時システム全体の動作について説明する。図6は、各無線タグ50における送信と、受信機30(処理装置40)における受信の様子を説明するための模式図である。
なお、無線タグ50中のタグEは、既に1回目の送信を終えているものとする。
【0072】
図示するように、タグEは、タイミング51にて、2回目の送信を行って、無線送信を終える。
この間に、競技タイムを特定したタグAは、タイミングT11にて、話中か否かを判別する。この場合、話中(タグEが送信中)であるため、タグAは、通信時間α、データ処理時間γ、監視時間βと待機する。
【0073】
同様に、競技タイムを特定した無線タグDは、タイミングT41にて、話中か否かを判別する。この場合、話中でないため、タグDは、データ処理時間γ、監視時間βと待機する。そして、その後も話中でないため、送信モードに切り替えた後、タイミングT42にて、1回目の送信を行う。
【0074】
同じく、競技タイムを特定したタグB,Cは、タイミングT21,T31にて、話中か否かを判別する。この場合、話中でないため、タグB,Cは、データ処理時間γ、監視時間βと待機する。その後、タイミングT22,T32にて、話中(タグD等が送信中)と判断し、タグB,Cは、通信時間α、データ処理時間γ、監視時間βと待機する。
【0075】
監視時間βの待機を終えたタグAは、タイミングT12にて、話中でないと判別し(タグDの受信送信切り替え時間β中であるため)、送信モードに切り替えた後、タイミングT13にて、1回目の送信を行う。なお、この送信は、上述したタグDの送信と衝突してしまう(コリジョンが発生してしまう)。
【0076】
監視時間βの待機を終えたタグB,Cは、今度は話中でないため、送信モードに切り替えた後、タイミングT23,T33にて、1回目の送信を行う。この際、タグBの送信は、タグCの送信と衝突してしまう。
【0077】
タイミングT43にて1回目の送信を終えたタグDは、そこから一連処理時間τだけ待機し、タイミングT44にて、話中か否かを判別する。この場合、話中(タグC等が送信中)であるため、タグDは、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機する。そして、今度は話中でないため、タグDは、送信モードに切り替えた後、タイミングT45にて、2回目の送信を行って、無線送信を終える。
【0078】
タイミングT24,T34にて1回目の送信を終えたタグB,Cは、そこから一連処理時間τだけ待機し、タイミングT25,T35にて、話中か否かを判別する。この場合、話中(タグDが送信中)であるため、タグB,Cは、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機する。
なお、タグB,Cは、別グループに属するものとし、グループ時間χがそれぞれ異なっているものとする。より詳細には、タグBのグループ時間χの方が、タグCのグループ時間χよりも短いものとする。
【0079】
そして、先にグループ時間χの待機を終えたタグBは、今度は話中でないため、送信モードに切り替えた後、タイミングT26にて、2回目の送信を行って、無線送信を終える。
一方、後にグループ時間χの待機を終えたタグCは、タイミングT36にて、今度も話中(タグBが送信中)と判断し、更に、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機する。
それ以降話中でないため、タグCは、送信モードに切り替えた後、タイミングT37にて、2回目の送信を行って、無線送信を終える。
【0080】
タイミングT14にて1回目の送信を終えたタグAは、そこから一連処理時間τだけ待機した後、タイミングT15にて話中(タグC等が送信中)であると判別する。そして、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機しても、タイミングT16にて話中(タグDが送信中)であると判別する。
その後、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機しても、タイミングT17にて話中(タグBが送信中)であると判別し、更に、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機しても、タイミングT18にて話中(タグCが送信中)であると判別する。
その後、通信時間α、データ処理時間γ、グループ時間χと待機した後は、話中でないため、送信モードに切り替えた後、タイミングT19にて、2回目の送信を行って、無線送信を終える。
【0081】
このように、タグA〜E(各無線タグ50)は、それぞれ話中を判別しつつ、無線通信が行える状態になるまで適宜待機する。そして、無線通信が行える状態になると、1回目と2回目とで送信タイミングを適宜ずらして、送信を行う。
これにより、例えば、タグBの1回目の送信時に、タグCの送信と衝突しても(コリジョンが発生しても)、タグBとタグCとで、グループ時間χが異なっているため、タグBの2回目の送信時に、送信タイミングが異なることになり、タグC等の送信と衝突することなく、競技タイム等を受信機30に送信できる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0082】
(他の実施形態)
上記の実施の形態では、各無線タグ50が2回に亘って、送信を行う場合について説明した。しかしながら、送信回数は、2回に限られず、3回以上であってもよい。
また、各無線タグ50が競技タイム等を受信機30に対して送信するとともに、当該送信に続く競技タイム等の送信時に競技タイム等を受信機30に対して異なるチャンネルにて送信するようにしてもよい。例えば、各無線タグ50が1回目の送信時と2回目の送信時とで受信機30に対して異なるチャンネルにて無線通信を行なう等、異なるチャンネルにて複数回に亘って無線通信を行なうようにしてもよく、また各無線タグ50が1回目及び2回目の送信時と3回目及び4回目の送信時とで受信機30に対して異なるチャンネルにて無線通信を行なう等、異なるチャンネルにて複数回づつ無線通信を行なうようにしてもよい。
また、無線タグ50の各回の送信時の待機時間は、一連処理時間τに限らず、一連処理時間τ以上であればよく、一連処理時間τよりも長く設定するようにしてもよい。
また、1つの受信機30が、各無線タグ50からの送信を受信する場合について説明したが、複数の受信機30が各無線タグ50から送信される競技タイム等を受信するようにしてもよい。その際、各受信機30に対して異なるチャンネルにて、各無線タグ50が無線通信を行うようにしてもよい。
以下、複数の受信機30が配置される本発明の他の実施形態について説明する。
【0083】
図7は、複数の受信機30が配置される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、図1の競技用計時システムと異なり、2つの受信機30(受信機30a,30b)がそれぞれ適切な場所に配置されている。
なお、無線タグ50は、競技者RNが計時ラインLを通過した後(競技タイムを特定した後)に、2回に亘って、同じ競技タイム等を受信機30aに送信するだけでなく、更に、所定時間経過後(例えば、3秒経過後)に、再度、2回に亘って、同じ競技タイム等を受信機30bに送信する。
そのため、受信機30aは、競技者RNが計時ラインLを通過した後に、無線タグ50から送られる競技タイム等を最適に受信可能な位置に配置される。
一方、受信機30bは、計時ラインLを通過した競技者RNがそのまま走行し、例えば、3秒経過後に、無線タグ50から送られる競技タイム等を最適に受信可能な位置に配置される。
【0084】
また、無線タグ50と受信機30aとの無線通信と、無線タグ50と受信機30bとの無線通信とは、異なるチャンネルにて行われる。
つまり、無線タグ50は、受信機30aに向けて競技タイム等を送信する際に、チャンネルC1にて送信し、また、受信機30bに向けて競技タイム等を送信する際に、チャンネルC2にて送信する。
これにより、受信機30a,30bへの送信が干渉することなく、各無線タグ50の送信機会が2倍に増えるため、コリジョンやデータ化けの対策が強化されることになる。
この結果、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【0085】
上記の実施の形態では、無線タグ50側から一方的に競技タイム等の送信を行う場合について説明した。しかしながら、更に、任意の無線タグ50を指定して、送信を行わせるようにしてもよい。
以下、ポーリングを行う本発明の他の実施形態について説明する。
【0086】
図8は、ポーリングを行う競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
図示するように、この競技用計時システムは、上述した図7の競技用計時システムの構成に、送信機60が加えられている。
この送信機60は、競技者RNが計時ラインLを通過した後から、所定時間経過しても(例えば、5秒経過しても)、無線タグ50からの送信を受信できない場合に、その無線タグ50に向けてタグIDを送信する。
つまり、受信機30a,30bにて、競技タイム等を受信できずに、5秒経過した場合に、処理装置40は、送信機60からタグIDを送信させ、その無線タグ50を指定して、送信要求を行う。
そして、指定された無線タグ50は、受信機30b(又は、受信機30a)に向けて、競技タイム等を送信する。
このように、ポーリング受信を更に行うことで、無線タグ50からの送信の取りこぼしを防止することができる。
【0087】
上記の実施の形態では、マラソン競技を一例として説明したが、計時対象の競技は、これに限られず任意である。
例えば、駅伝、競歩、身障者車椅子ロードレース、自転車ロードレース、トライアスロン、及び、ランニングやオリエンテーション等の山岳競技等にも適宜適用可能である。
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、コリジョンの発生を抑制しつつ、競技者個々の競技タイムを適切に計時することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態に係る競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】(a)が走路上に配置されたループアンテナの一例を示す模式図であり、(b)が生成される電磁場と磁場検出コイルの向きを説明するための模式図であり、(c)が検出される電磁場の強度分布を説明するための模式図である。
【図3】(a)がアンテナ上に生成される電磁場の一例を示す模式図であり、(b)が検出回路にて生成される検出波形を説明するための模式図である。
【図4】(a)〜(c)共に、無線通信の具体的な様子を説明するための模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るタイム送信処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】各無線タグにおける送信と、受信機(処理装置)における受信の様子を説明するための模式図である。
【図7】複数の受信機が配置される競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【図8】ポーリングを行う競技用計時システムの構成の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0090】
10 信号発生装置
20 ループアンテナ
30(30a,30b) 受信機
40 処理装置
50 無線タグ
60 送信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信機と、を含む競技用計時システムであって、
前記各無線機器には、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定手段と、
他の前記無線機器から前記受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定手段により特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、前記受信機に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段から前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御手段と、が設けられ、
前記受信機には、
前記各無線機器の前記無線通信手段から送信される前記タイム情報を受信する受信手段が設けられている、
ことを特徴とする競技用計時システム。
【請求項2】
前記各無線機器が、予めグループ分けされており、
前記送信制御手段が、前記無線通信手段から前記タイム情報を前記グループ毎に送信タイミングをずらして送信させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の競技用計時システム。
【請求項3】
前記受信機が複数配置され、
前記無線通信手段が、前記タイム情報を前記各受信機のうちの一の受信機に第1のチャンネルにて送信するとともに、当該送信に続く前記タイム情報の送信時に前記タイム情報を前記各受信機のうちの他の受信機に第2のチャンネルにて送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計時システム。
【請求項4】
前記無線通信手段が、前記タイム情報を前記受信機に第1のチャンネルにて送信するとともに、当該送信に続く前記タイム情報の送信時に前記タイム情報を前記受信機に第2のチャンネルにて送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の競技用計時システム。
【請求項5】
各競技者にそれぞれ携帯される無線機器であって、
時刻を計時する計時手段と、
走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出手段と、
前記検出手段により前記計時ポイントが検出された際に、前記計時手段にて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定手段と、
他の前記無線機器から所定の受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定手段により特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、当該受信機に向けて送信する無線通信手段と、
前記無線通信手段から前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする無線機器。
【請求項6】
各競技者がそれぞれ携帯する複数の無線機器と、当該各無線機器から送られる情報を受信する受信機と、を含む競技用計時システムにおけるタイム送信方法であって、
前記各無線機器において、時刻を計時する計時ステップと、
前記各無線機器において、走路上に生成された電磁場の電磁界強度の増減に基づいて、予め設置された計時ポイントを検出する検出ステップと、
前記各無線機器において、前記検出ステップにて前記計時ポイントが検出された際に、前記計時ステップにて計時された時刻を計時タイムとして特定するタイム特定ステップと、
前記各無線機器において、他の前記無線機器から前記受信機への送信の有無を判別し、当該送信が無いと判別したときに、前記タイム特定ステップにて特定された前記計時タイムを含むタイム情報を、前記受信機に向けて送信する無線通信ステップと、
前記各無線機器において、前記無線通信ステップにて前記タイム情報を送信タイミングをずらして複数回に亘って送信させる送信制御ステップと、
前記受信機において、前記無線通信ステップにて前記各無線機器から送信されるタイム情報を受信する受信ステップと、
を備えることを特徴とするタイム送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−102285(P2007−102285A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287604(P2005−287604)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】