説明

竹繊維含有樹脂成形体、竹繊維含有樹脂成形体の製造方法および製造装置

【課題】柔細胞をも使用して竹材を無駄なく利用しつつ、成形体としての剛性を確保した竹繊維含有樹脂成形体を提供し、さらに、そのような竹繊維含有樹脂成形体の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】竹繊維含有樹脂成形体10の製造装置100は、竹材20を繊維化することによって竹繊維21および柔細胞22を得る繊維化部110と、積層構造体30を形成する積層部120と、積層構造体を一体的にプレスしてボード体40を得るプレス部130と、を有している。積層構造体は、竹繊維と熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31と、柔細胞を含有する第2の層32と、を有し、第1の層、第2の層、第1の層をこの順に積層している。積層部はさらに、第1の層の上に積層する柔細胞を湿らせる水151を噴射する噴射部150を備え、第2の層を、第1の層の上に、柔細胞を水によって湿らせながら積層することによって形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹繊維含有樹脂成形体、竹繊維含有樹脂成形体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的容易に入手することができ、成長も早い天然資源である竹材を、工業用材料として利用することが提案されている(特許文献1参照)。竹材は、比較的強度が高い維管束鞘と、比較的柔らかい柔細胞とに大別できる。そして、竹材から柔細胞を分離し、維管束鞘繊維つまり竹繊維のみを用いて成形体を製造することによって、成形体の剛性を高めることも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−207362
【特許文献2】特開2007−283661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形体の剛性を高めるために、竹材から柔細胞を分離することは有効な手段となり得る。しかしながら、竹材から柔細胞を除去していることから、竹材のうち製品に使用できる竹繊維が占める割合、すなわち、材料歩留まりが比較的低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、柔細胞をも使用して竹材を無駄なく利用しつつ、成形体としての剛性を確保した竹繊維含有樹脂成形体を提供し、さらに、そのような竹繊維含有樹脂成形体の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の竹繊維含有樹脂成形体は、竹材を繊維化することによって得られる竹繊維および柔細胞と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、少なくとも柔細胞の含有される割合が異なる二層の積層体からなる点に特徴を有する。
【0007】
また、本発明の竹繊維含有樹脂成形体は、竹材を繊維化することによって得られる竹繊維および柔細胞と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、一対の表層の間に中間層を挟み込んだ積層構造を有している。前記中間層に含有される前記柔細胞の割合が前記表層に比べて大きく、比較的剛性の低い中間層を、比較的剛性の高い表層によって挟み込んだ構造を有している点に特徴を有する。
【0008】
また、本発明の竹繊維含有樹脂成形体の製造方法は、竹材を繊維化することによって竹繊維および柔細胞を得る工程と、前記竹繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含有する第1の層と、前記柔細胞を含有する第2の層と、を有し、前記第1の層、前記第2の層、前記第1の層をこの順に積層してなる積層構造体を形成する工程と、前記積層構造体を一体的にプレスしてボード体を得る工程と、を有している。そして、前記積層構造体を形成する工程においては、前記第2の層は、前記第1の層の上に、前記柔細胞を液体によって湿らせながら積層することによって形成している。
【0009】
さらに、本発明の竹繊維含有樹脂成形体の製造装置は、竹材を繊維化することによって竹繊維および柔細胞を得る繊維化部と、前記竹繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含有する第1の層と、前記柔細胞を含有する第2の層と、を有し、前記第1の層、前記第2の層、前記第1の層をこの順に積層してなる積層構造体を形成する積層部と、前記積層構造体を一体的にプレスしてボード体を得るプレス部と、を有している。さらに、前記積層部は、前記第1の層の上に積層する前記柔細胞を湿らせる液体を噴射する噴射部を備えている。そして、前記第2の層を、前記第1の層の上に、前記柔細胞を前記噴射部から噴射した液体によって湿らせながら積層することによって形成している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の竹繊維含有樹脂成形体によれば、少なくとも柔細胞の含有される割合が異なる二層の積層体からなるので、柔細胞をも使用して竹材を無駄なく利用し、かつ、成形体全体としての剛性を確保することができる。柔細胞を使用することによって、成形体の軽量化も達成できる。
【0011】
本発明の竹繊維含有樹脂成形体によれば、比較的剛性の低い中間層を、比較的剛性の高い表層によって挟み込んだ構造を有しているので、柔細胞をも使用して竹材を無駄なく利用し、かつ、成形体全体としての剛性を確保することができる。柔細胞を中間層の材料に使用することによって、成形体の軽量化も達成できる。
【0012】
また、本発明の竹繊維含有樹脂成形体の製造方法および製造装置によれば、柔細胞を水によって湿らせながら第1の層の上に積層して第2の層を形成しているので、柔細胞を飛散させることなく第1の層の上に均一に積層することができ、柔細胞の取り扱いを容易なものとできる。もって、竹材を無駄なく利用し、成形体全体としての剛性を確保し、軽量化をも図った竹繊維含有樹脂成形体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】竹繊維含有樹脂成形体の製造装置の全体を示す概略構成図である。
【図2】繊維化部に配置される解繊機を示す図である。
【図3】竹繊維含有樹脂成形体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
図1を参照して、実施形態に係る竹繊維含有樹脂成形体10の製造装置100は、概説すれば、竹材20を繊維化することによって竹繊維21および柔細胞22を得る繊維化部110と、積層構造体30を形成する積層部120と、積層構造体30を一体的にプレスしてボード体40を得るプレス部130と、ボード体40に製品形状を付与する成形部140と、を有している。積層構造体30は、竹繊維21と熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31と、柔細胞22を含有する第2の層32と、を有し、第1の層31、第2の層32、第1の層31をこの順に積層している。積層部120はさらに、第1の層31の上に積層する柔細胞22を湿らせる水151(液体に相当する)を噴射する噴射部150を備え、第2の層32を、第1の層31の上に、柔細胞22を噴射部150から噴射した水151によって湿らせながら積層することによって形成している。実施形態にあっては、第2の層32は、第1の層31に含まれる竹繊維21が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維21をさらに含有している。このため、積層部120は、第2の層32を、第1の層31の上に、柔細胞22および平均繊維長が短い竹繊維21を噴射部150から噴射した水151によって湿らせながら積層することによって形成している。
【0016】
なお、説明の便宜上、平均繊維長が比較的長い竹繊維21を「竹長繊維21L」と言い、平均繊維長が比較的短い竹繊維21を「竹短繊維21S」と言う。また、竹長繊維21Lおよび竹短繊維21Sのそれぞれを区別せずに両者を含めるときには、単に「竹繊維21」と言う。以下、詳述する。
【0017】
竹繊維含有樹脂成形体10は、例えば、自動車の内装部材の一つであるリアパッケージトレイに適用することができる。
【0018】
図2をも参照して、繊維化部110には、竹材20を繊維化するための解繊機111を配置している。解繊機111は、竹材20を供給するコンベア112と、送りロール113と、多数の歯が設けられたピンロール114と、集塵機115とを有している。裁断、脱リグニン処理、圧搾を経て軟化した竹材20を、コンベア112および送りロール113によって、図中右方向に送っている。ピンロール114は、送りロール113よりも速く回転しており、多数の歯が軟化した竹材20を引っかくことによって解繊する。竹材20を解繊すると、竹繊維21および柔細胞22を得るが、得られた竹繊維21は、竹長繊維21L(例えば、平均繊維長が50mm以上)と、竹短繊維21S(例えば、平均繊維長が50mm未満)とを含んでいる。柔細胞22は綿状あるいは粉体状であり、竹短繊維21Sは綿状である。柔細胞22および竹短繊維21Sは、竹長繊維21Lに比べて比重が小さい。このため、柔細胞22および竹短繊維21Sのほとんどを、集塵機115によって集めることができる。竹長繊維21Lは、ピンロール114の引っかけ動作に伴って飛ばされる。このように比重の差によって、柔細胞22および竹短繊維21Sを第1容器116に、竹長繊維21Lを第2容器117に、分別して回収することができる。柔細胞22および竹短繊維21Sの割合は、解繊後の単位重量あたり10〜20%程度である。
【0019】
ピンロール114の回転数、歯の大きさや設置密度を変えることによって、竹短繊維21Sと竹長繊維21Lとの比率、竹繊維21の径や平均繊維長などを変化させることができ、用途に応じた竹繊維21を得ることができる。例えば、ピンロール114の回転数を送りロール113に対して十分速くすると、送りロール113によって押さえられている軟化した竹材20の一部を、ピンロール114が引きちぎるように解繊するようになる。これによって、竹短繊維21Sの比率を相対的に増加させることができる。
【0020】
積層部120において形成する積層構造体30は、柔細胞22を含有する第2の層32を、竹繊維21と熱可塑性樹脂繊維33とを含有し不織布状の第1の層31によって挟み込んでいる。
【0021】
ここで、第1の層31には、柔細胞22が含まれていないことが好ましい。綿状あるいは粉体状の柔細胞22は、熱可塑性樹脂繊維33とともに不織布を形成するときに抜け落ちやすいからである。また、柔細胞22が混ざることによって、第1の層31の剛性が低下することを防止するためである。但し、実施形態の解繊機111にあっては比重の差を利用して竹長繊維21Lと、竹短繊維21S・柔細胞22とを分別していることから、多少の柔細胞22が竹長繊維21Lに絡み合うなどして第1の層31に混入することもあり得る。このように第1の層31に柔細胞22が不可避的に混入する場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
【0022】
第1の層31に含まれる竹繊維21は、竹長繊維21Lが主体であることが好ましい。綿状の竹短繊維21Sは、熱可塑性樹脂繊維33とともに不織布を形成するときに抜け落ちやすいからである。また、竹短繊維21Sが混ざることによって、第1の層31の剛性が低下することを防止するためである。但し、実施形態の解繊機111にあっては比重の差を利用して竹長繊維21Lと、竹短繊維21S・柔細胞22とを分別していることから、多少の竹短繊維21Sが竹長繊維21Lに絡み合うなどして第1の層31に混入することもあり得る。このように第1の層31に竹短繊維21Sが混入する場合であっても、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
第2の層32は、少なくとも柔細胞22を含んでいれば足りるが、第1の層31に含まれる竹繊維21が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維21をさらに含有していてもよい。上述したように、第1の層31の剛性が低下することを防止するためには、竹短繊維21Sが第1の層31に含まれないことが好ましい。このことから、竹長繊維21Lと竹短繊維21Sとを分別している本実施形態にあっては、竹材20を有効活用する観点から、第2の層32に含まれる竹繊維21は、第1の層31に含まれないようにすべき竹短繊維21Sが主体となる。
【0024】
図1を再び参照して、積層部120は、竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31を形成する第1積層部121と、柔細胞22および竹短繊維21Sを含有する第2の層32を形成する第2積層部122と、を有している。第1の層31、第2の層32、第1の層31をこの順に積層してマット化するために、2個の第1積層部121と、1個の第2積層部122を、第1積層部121、第2積層部122、第1積層部121の順に配置してある。
【0025】
第1積層部121は、竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とを混合させるブレンダー123と、ブレンダー123によって混練された材料から竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とが均一に混ざった薄い不織布を作製するカード機124と、を有している。ブレンダー123には、第2容器117に分別回収した竹長繊維21Lを供給する。熱可塑性樹脂繊維33は特に限定されないが、例えば、PP(ポリプロピレン)繊維を挙げることができる。熱可塑性樹脂繊維33の径、竹長繊維21Lとの比率なども製品に要求される特性に応じて適宜選択することができる。第1積層部121のカード機124から出てきた不織布は、クロスレイヤー125で重ねる。
【0026】
第2積層部122は、柔細胞22と竹短繊維21Sとを混合させるとともに第1の層31の上に降り注ぐように供給して第2の層32を形成するホッパー126を有している。ホッパー126には、第1容器116に分別回収した柔細胞22および竹短繊維21Sを供給する。
【0027】
柔細胞22および竹短繊維21Sは比重が小さいため、ホッパー126から供給したときに飛散しやすく、第1の層31の上に安定的かつ定量的に降り積もらせることが難しい。そこで、積層部120の第2積層部122には、柔細胞22および竹短繊維21Sを湿らせる水151を噴射するスプレーノズル150(噴射部に相当する)を備えてある。柔細胞22および竹短繊維21Sをスプレーノズル150から噴射した水151によって湿らせながら第1の層31の上に積層することによって、柔細胞22および竹短繊維21Sを安定的かつ定量的に降り積もらせることができ、均質な第2の層32を形成することができる。スプレーノズル150は、ホッパー126の出口近傍に配置し、ホッパー126から供給される柔細胞22および竹短繊維21Sを水151によって湿らせるようにしてある。ホッパー126内において水151によって湿らせることも可能ではあるが、柔細胞22および竹短繊維21Sを第1の層31の上に均一に載せるためには、ホッパー126から出てきた柔細胞22および竹短繊維21Sを湿らせる方が好ましい。
【0028】
スプレーノズル150からの水151の噴射は、連続的または断続的のいずれでもよい。噴射した水151の状態は、水滴状または霧状のいずれでもよい。水151の噴射量は適宜設定できるが、例えば、供給する柔細胞22および竹短繊維21Sの重量の1%程度である。柔細胞22および竹短繊維21Sを湿らせる液体は、水151に限定されたものではなく、柔細胞22および竹短繊維21Sの飛散を防止し、かつ、柔細胞22および竹短繊維21Sを第1の層31の上に均一に載せ得る限りにおいて、適宜の液体を選択することができる。例えば、飛散を防止するために若干の粘性を持たせる添加剤や接着剤を含んだ液体でもよい。
【0029】
プレス部130には、一対の熱ロール131を配置してある。一対の熱ロール131によって、積層構造体30をプレスして熱を加えることによって(加熱圧縮成形)、第1の層31、第2の層32、第1の層31が一体となったボード体40を形成する。加熱温度は、使用する熱可塑性樹脂繊維33の材質、積層構造体30を両側から押し付ける加圧力、加圧時間などに応じて適宜設定できるが、例えば、160℃〜200℃程度である。
【0030】
成形部140には、製品形状の外形形状に合致した内面形状を有する成形型141を配置してある。ボード体40を成形型141においてプレスすることによって、ボード体40に製品形状を付与する。
【0031】
次に、竹繊維含有樹脂成形体10の製造手順を説明する。
【0032】
実施形態に係る竹繊維含有樹脂成形体10の製造手順は、概説すれば、繊維化工程と、マット化工程と、ボード化工程と、製品化工程とを含んでいる。まず、竹材20を繊維化することによって竹繊維21および柔細胞22を得る(繊維化工程)。次に、竹繊維21と熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31と、柔細胞22を含有する第2の層32と、を有し、第1の層31、第2の層32、第1の層31をこの順に積層してなる積層構造体30を形成する(マット化工程)。このマット化工程において、第2の層32は、第1の層31の上に、柔細胞22を水151によって湿らせながら積層することによって形成する。次に、積層構造体30を一体的にプレスしてボード体40を得る(ボード化工程)。そして、ボード体40に製品形状を付与して製品を得る(製品化工程)。実施形態にあっては、第2の層32は、第1の層31に含まれる竹繊維21が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維21をさらに含有している。このため、マット化工程においては、第2の層32を、第1の層31の上に、柔細胞22および平均繊維長が短い竹繊維21を噴射部150から噴射した水151によって湿らせながら積層することによって形成している。以下、詳述する。
【0033】
繊維化工程においては、裁断、脱リグニン処理、圧搾を経て軟化した竹材20を解繊機111によって解繊する。比重の差を利用して、柔細胞22および竹短繊維21Sを第1容器116に、竹長繊維21Lを第2容器117に分別して回収する。
【0034】
マット化工程においては、1台目の第1積層部121によって、竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31を形成し、第2積層部122によって、柔細胞22および竹短繊維21Sを含有する第2の層32を第1の層31の上に形成し、2台目の第1積層部121によって、竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とを含有する第1の層31を第2の層32の上に形成する。第1積層部121のブレンダー123によって、第2容器117に回収した竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とを混合し、カード機124によって、竹長繊維21Lと熱可塑性樹脂繊維33とが均一に混ざった薄い不織布を作製する。第2積層部122のホッパー126によって、第1容器116に回収した柔細胞22および竹短繊維21Sを混合させるとともに第1の層31の上に降り注ぐように供給する。このとき、柔細胞22および竹短繊維21Sをスプレーノズル150から噴射した水151によって湿らせながら第1の層31の上に積層し、第2の層32を形成している。これによって、柔細胞22および竹短繊維21Sを安定的かつ定量的に第1の層31の上に降り積もらせることができ、均質な第2の層32を形成することができる。また、柔細胞22および竹短繊維21Sの飛散を抑えることができ、作業性も良好なものとなる。
【0035】
ボード化工程においては、一対の熱ロール131によって、積層構造体30をプレスして熱を加える。これによって、第1の層31、第2の層32、第1の層31が一体となったボード体40を形成する。熱プレスによって、第1の層31における熱可塑性樹脂繊維33の一部が第2の層32における柔細胞22および竹短繊維21Sと絡み合って、第1の層31、第2の層32、第1の層31が一体となる。
【0036】
製品化工程においては、成形型141によってボード体40をプレス成形して、製品を得る。
【0037】
図3を参照して、製造した竹繊維含有樹脂成形体10は、竹材20を繊維化することによって得られる竹繊維21および柔細胞22と、熱可塑性樹脂繊維33とを含んでおり、一対の表層11の間に中間層12を挟み込んだ積層構造を有し、中間層12に含有される柔細胞22の割合が表層11に比べて大きい。また、中間層12に含有される竹繊維21の平均繊維長が、表層11に含有される竹繊維21の平均繊維長よりも短い。上述したボード化工程において、第1の層31における熱可塑性樹脂繊維33の一部が第2の層32における柔細胞22および竹短繊維21Sと絡み合うことによって中間層12を形成し、この中間層12を挟み込んでいる第1の層31が一対の表層11を形成する。竹繊維含有樹脂成形体10の厚みに対して、表層11は表面から20%〜30%の厚みを有し、熱可塑性樹脂繊維33と、竹長繊維21Lとを含んでいる。中心部の中間層12は、熱可塑性樹脂繊維33と、竹長繊維21Lと、竹短繊維21Sと、柔細胞22とを含んでいる。
【0038】
中間層12は、含有される柔細胞22の割合が表層11に比べて大きく、剛性が表層11に比べて低い。しかしながら、竹繊維含有樹脂成形体10は、比較的剛性の低い中間層12を、比較的剛性の高い表層11によって挟み込んだ構造を有しているので、柔細胞22をも使用して竹材20を無駄なく利用し、かつ、成形体10全体としての剛性を十分に確保することができる。
【0039】
中間層12はまた、含有される竹繊維21の平均繊維長が表層11に含有される竹繊維21の平均繊維長よりも短く、この点からも、剛性が表層11に比べて低い。しかしながら、竹繊維含有樹脂成形体10は、比較的剛性の低い中間層12を、比較的剛性の高い表層11によって挟み込んだ構造を有しているので、平均繊維長が比較的短い短繊維をも使用して竹材20を無駄なく利用し、かつ、成形体10全体としての剛性を十分に確保することができる。
【0040】
綿状あるいは粉体状の柔細胞22や、綿状の短繊維を中間層12の材料に使用することによって、成形体10全体としての剛性を十分に確保しつつ、成形体10の軽量化を図ることができる。
【0041】
表層11の竹長繊維21Lの配合比率は、例えば、40〜60%であり、表層11の熱可塑性樹脂繊維33の配合比率は、例えば、60〜40%であることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維33と竹長繊維21Lとが絡み合って、十分な接合強度を得ることができるからである。さらに、加熱圧縮成形時に、表層11にスキン層を生成し、剛性が十分に得られるとともに外観の平滑性を良好にできるからである。しかも、意匠性を向上させる表皮(図示せず)を表層11上に同時成形する場合において、熱可塑性樹脂繊維33がバインダーとして機能し、表皮と表層11との間の接着面積を十分に確保して両者の接着性を高めることができるからである。
【0042】
中間層12の竹材20の配合比率は、竹長繊維21Lが20〜30%、柔細胞22および竹短繊維21Sが30〜40%であり、中間層12の熱可塑性樹脂繊維33の配合比率は、例えば、50〜30%であることが好ましい。成形体10全体としての剛性を十分に確保しつつ、成形体10の軽量化を図ることができるからである。
【0043】
表層11の熱可塑性樹脂繊維33には、PP繊維あるいはリサイクルPP繊維を使用することが好ましい。汎用樹脂であるので原料が入手しやすく、竹繊維含有樹脂成形体10の製造コストの低減を図ることができるからである。また、リサイクル材を使用することによって、二酸化炭素の発生量を削減し、枯渇性資源の使用量を削減することが可能となるからである。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の竹繊維含有樹脂成形体10によれば、竹材20を繊維化することによって得られる竹繊維21および柔細胞22と、熱可塑性樹脂繊維33とを含み、一対の表層11の間に中間層12を挟み込んだ積層構造体30を有し、中間層12に含有される柔細胞22の割合が表層11に比べて大きい。比較的剛性の低い中間層12を、比較的剛性の高い表層11によって挟み込んだ構造となっているので、柔細胞22をも使用して竹材20を無駄なく利用し、かつ、成形体10全体としての剛性を確保することができる。柔細胞22を中間層12の材料に使用することによって、成形体10の軽量化も達成できる。
【0045】
また、中間層12に含有される竹繊維21の平均繊維長が、表層11に含有される竹繊維21の平均繊維長よりも短い竹繊維含有樹脂成形体10であるので、竹長繊維21Lのみならず竹短繊維21Sをも使用して竹材20を一層無駄なく利用し、かつ、成形体10全体としての剛性を確保することができる。柔細胞22および竹短繊維21Sを中間層12の材料に使用することによって、成形体10の軽量化も達成できる。
【0046】
本実施形態竹繊維含有樹脂成形体10の製造方法および製造装置100によれば、柔細胞22を水151によって湿らせながら第1の層31の上に積層して第2の層32を形成しているので、柔細胞22を飛散させることなく第1の層31の上に均一に積層することができ、柔細胞22の取り扱いを容易なものとできる。もって、竹材20を無駄なく利用し、成形体10全体としての剛性を確保し、軽量化をも図った竹繊維含有樹脂成形体10を製造することが可能となる。
【0047】
また、第2の層32は、第1の層31に含まれる竹繊維21が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維21つまり竹短繊維21Sをさらに含有し、柔細胞22および竹短繊維21Sを水151によって湿らせながら第1の層31の上に積層して第2の層32を形成しているので、柔細胞22および竹短繊維21Sを飛散させることなく第1の層31の上に均一に積層することができ、柔細胞22および竹短繊維21Sの取り扱いを容易なものとできる。もって、竹材20を一層無駄なく利用し、成形体10全体としての剛性を確保し、軽量化をも図った竹繊維含有樹脂成形体10を製造することが可能となる。
【0048】
(改変例)
上述した実施形態では、積層構造体30の第2の層32を形成するときに熱可塑性樹脂繊維を含有させていないが、柔細胞22および竹短繊維21Sに、さらに熱可塑性樹脂繊維を含有させてもよい。この場合、第2の層32の熱可塑性樹脂繊維には、第1の層31の熱可塑性樹脂繊維33よりも融点が低い樹脂繊維、例えば、PE(ポリエチレン)繊維や低融点PET(ポリエチレンテレフタレート)などを使用することが好ましい。融点の低い熱可塑性樹脂繊維を第2の層32に用いることによって、加熱圧縮成形時に、溶けやすく、バインダー効果が十分に得られ、表層11と中間層12との剥離を防ぐのに効果的だからである。さらに、PE樹脂などの剛性が比較的高い樹脂繊維を用いることによって、中間層12自体の強度を高めることを通して、成形体10全体の剛性を一層高めることができるからである。
【0049】
第2の層32にも熱可塑性樹脂繊維を含める場合には、第2の層32の熱可塑性樹脂繊維の繊維径を、第1の層31の熱可塑性樹脂繊維33の繊維径に比べて小さくすることが好ましい。小径の熱可塑性樹脂繊維を第2の層32に用いることによって、加熱圧縮成形時に、溶けやすく、バインダー効果が十分に得られ、表層11と中間層12との剥離を防ぐのに効果的だからである。
【0050】
積層構造体30における積層数は上述した三層に限られるものではなく、第1の層と第2の層の二層以上であれば、成形体10に要求される強度に応じて増減することができる。すなわち、竹繊維含有樹脂成形体は、竹材を繊維化することによって得られる竹繊維および柔細胞と、熱可塑性樹脂繊維とを含み、少なくとも柔細胞の含有される割合が異なる二層の積層体からなるものであればよい。かかる竹繊維含有樹脂成形体にあっても、少なくとも柔細胞の含有される割合が異なる二層の積層体からなるので、柔細胞をも使用して竹材を無駄なく利用し、かつ、成形体全体としての剛性を確保することができる。また、柔細胞を使用することによって、成形体の軽量化も達成できる。積層構造体30は、第1の層31、第2の層32を積層した積層単位を少なくとも1つ含んでいればよい。したがって、要求される強度に応じて、第1、第1、第2、第1、第1の層31、31、32、31、31のように積層してもよいし、第1、第2、第1、第2、第1の層31、32、31、32、31のように積層してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 竹繊維含有樹脂成形体、
11 表層、
12 中間層、
20 竹材、
21 竹繊維、
21L 竹長繊維、
21S 竹短繊維、
22 柔細胞、
30 積層構造体、
31 第1の層、
32 第2の層、
33 熱可塑性樹脂繊維、
40 ボード体、
100 竹繊維含有樹脂成形体の製造装置、
110 繊維化部、
111 解繊機、
112 コンベア、
113 送りロール、
114 ピンロール、
115 集塵機、
116 第1容器、
117 第2容器、
120 積層部、
121 第1積層部、
122 第2積層部、
123 ブレンダー、
124 カード機、
125 クロスレイヤー、
126 ホッパー、
130 プレス部、
131 熱ロール、
140 成形部、
141 成形型、
150 スプレーノズル(噴射部)、
151 水(液体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹材を繊維化することによって得られる竹繊維および柔細胞と、熱可塑性樹脂繊維とを含む竹繊維含有樹脂成形体であって、
少なくとも柔細胞の含有される割合が異なる二層の積層体からなる竹繊維含有樹脂成形体。
【請求項2】
竹材を繊維化することによって得られる竹繊維および柔細胞と、熱可塑性樹脂繊維とを含む竹繊維含有樹脂成形体であって、
一対の表層の間に中間層を挟み込んだ積層構造を有し、前記中間層に含有される前記柔細胞の割合が前記表層に比べて大きい竹繊維含有樹脂成形体。
【請求項3】
前記中間層に含有される前記竹繊維の平均繊維長が、前記表層に含有される前記竹繊維の平均繊維長よりも短い請求項2に記載の竹繊維含有樹脂成形体。
【請求項4】
竹材を繊維化することによって竹繊維および柔細胞を得る工程と、
前記竹繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含有する第1の層と、前記柔細胞を含有する第2の層と、を有し、前記第1の層、前記第2の層、前記第1の層をこの順に積層してなる積層構造体を形成する工程と、
前記積層構造体を一体的にプレスしてボード体を得る工程と、を有し、
前記積層構造体を形成する工程において、前記第2の層は、前記第1の層の上に、前記柔細胞を液体によって湿らせながら積層することによって形成する、竹繊維含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の層は、前記第1の層に含まれる竹繊維が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維をさらに含有し、
前記積層構造体を形成する工程において、前記第2の層は、前記第1の層の上に、前記柔細胞および竹繊維を液体によって湿らせながら積層することによって形成する、請求項4に記載の竹繊維含有樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
竹材を繊維化することによって竹繊維および柔細胞を得る繊維化部と、
前記竹繊維と熱可塑性樹脂繊維とを含有する第1の層と、前記柔細胞を含有する第2の層と、を有し、前記第1の層、前記第2の層、前記第1の層をこの順に積層してなる積層構造体を形成する積層部と、
前記積層構造体を一体的にプレスしてボード体を得るプレス部と、を有し、
前記積層部は、前記第1の層の上に積層する前記柔細胞を湿らせる液体を噴射する噴射部を備え、前記第2の層を、前記第1の層の上に、前記柔細胞を前記噴射部から噴射した液体によって湿らせながら積層することによって形成する、竹繊維含有樹脂成形体の製造装置。
【請求項7】
前記第2の層は、前記第1の層に含まれる竹繊維が有する平均繊維長よりも短い平均繊維長を有する竹繊維をさらに含有し、
前記積層部は、前記第2の層を、前記第1の層の上に、前記柔細胞および竹繊維を前記噴射部から噴射した液体によって湿らせながら積層することによって形成する、請求項6に記載の竹繊維含有樹脂成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−245719(P2011−245719A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120450(P2010−120450)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(510146470)
【出願人】(000133065)株式会社タケヒロ (16)
【Fターム(参考)】