説明

第二座席列の後ろに車体補強材を備えた車体構造

【課題】本発明は、サイドメンバ9、10と、フロア部クロスメンバ4と、側方垂直支持部材5、6とから形成された支持部材複合構造を有する車体構造であって、左側第一サイドメンバ9とフロア部クロスメンバ4の一端と左側第一側方垂直支持部材5とが左側接続部11で接続され、第二サイドメンバ10とフロア部クロスメンバ4の他端と第二側方垂直支持部材6とが右側接続部で接続されており、各接続部においてコーナー補強部が、フロア部クロスメンバ4と側方垂直支持部材5、6の横行面内に取り付けられている車体構造に関する。
【解決手段】サイドメンバ9、10がアルミニウム鋳造製であり、コーナー補強部が、アルミニウム鋳造製サイドメンバの各接続部11で箱状のコーナー補強部材13として一体化されており、これが側方垂直支持部材5、6と上部で接続され、フロア部クロスメンバ4と側部で接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前提部の通り、第二座席列の後ろに車体補強材を備えた車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体補強材は一般的に、2つの対向するサイドメンバと、1つのフロア部クロスメンバと、2つの側方垂直メンバとから成るメンバの複合構造で構成されている。ここで第一の左側サイドメンバは、これに対応するフロア部クロスメンバの左側端部及び第一の左側の側方垂直メンバと、左側の接続部で接続されている。これと同様に第二の右側サイドメンバが、フロア部クロスメンバの右側端部及び第二の右側の側方垂直メンバと、右側の接続部で接続されている。これに加えて、フロア部クロスメンバ及び側方垂直メンバによって形作られる幅方向の面における補強を強化するために、2つの接続部にコーナー補強部が設けられている。
【0003】
こうしたフロア部側方における接続部のコーナー補強は公知であり、走行に伴う車体歪みに対する車体後部領域の車体補強や、側面衝突に対する保護措置として特に適した方法である。例えば特許文献1においては、フロア部クロスメンバを備えた構成が開示されており、このフロア部クロスメンバは、各端部にコーナー補強部を備えており、サイドメンバをまたいで延びており、さらに、短尺の側方垂直支持要素に向けて上方へ曲げられており、ホイールハウジングメンバと接続されている。
【0004】
さらに、後部座席の背もたれが可倒式となっているセダン車向けの車体においては、メンバの複合構造を後部収納庫領域の上部クロスメンバによって一周させてトーションリングにすることにより、後部ホイールハウジング及び後部収納庫領域の車体の剛性を改善することが一般的に知られている。ここで、公知の方法では、フロア部側方の接続部におけるコーナー補強は、コーナーを補強する折曲プレートが補強材として溶接されることで実現される。
【0005】
ステーションワゴン車においても同様の折曲プレートによる補強が一般的に知られた方法として実施されており、この場合は側方垂直メンバとして、ルーフ領域にまで延びるCピラーが使用されていて、ルーフ構造部によって一周した形状となったトーションリングが構成される。
【0006】
特許文献1にて開示されているメンバの複合構造の配置では、側方垂直メンバからホイールハウジングまでの接続部分が短いため、車体歪みを低減する効果はわずかしかない。加えて上記の従来技術におけるメンバの複合構造の配置はいずれも、別体のコーナー補強部品を用いるので、製造及び組立に比較的コストがかかる。さらに、軽量化のための処置が特に講じられていない通常の鋼板車体構造となっている。
【0007】
しかし、一般的に知られた最近の車体においては、流線型の形状とすることに加えて、自然環境に配慮しつつ軽量化によって燃費を低減するために、軽量金属または軽量合金、特にアルミニウムからなる素材がますます多く使用されている。軽量金属素材の剛性および接続技術は、車体構造に関して生じる問題を、各車体位置に正確に適合した素材の組合せや、適切な構成部材の組合せや、大量生産による低コスト化などの手段によって解決することができるという点で、従来の鋼板単独構造とは異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004027377号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、第二座席列の後ろに車体補強部を備えたこの種の車体構造を、高い剛性を備えつつ、低費用で軽量の構造が得られるようにさらに改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、長手方向のサイドメンバをアルミニウムキャスト製サイドメンバとし、このサイドメンバの接続部のそれぞれにおいて、コーナー補強部を同一材料の箱状に突き出たコーナー補強部材として形成し一体化することによって解決される。2つのコーナー補強部材はそれぞれ、一方では上部で対応する側方垂直メンバと、他方では側部でフロア部の幅方向クロスメンバの対応する端部と接続される。
【0011】
アルミニウムキャスト製サイドメンバを使用することにより、所要の取付け要件および剛性要件に簡単かつ良好に適合することのできる、重量的に好ましい構造がもたらされる。加えて、そのようなキャスト製部品内に、付加的に取り付けられる追加のコーナー補強部品を必要とせずに、簡単かつ低コストにコーナー補強部材を成形し一体化することができる。フロア部クロスメンバと側方垂直メンバを直接コーナー補強部材と接続することにより、簡単で安定した接続構造も得られ、その結果、後部ホイールハウジング領域における第二座席列の背後の車体を補強するためのメンバの複合構造の配置が、全体として優れた補強機能を備え、特に重量面、コスト面で有用である。
【0012】
車体製造において、最近はキャスト製部材や薄板部材向けの軽量構造素材としてはほぼアルミニウム合金のみが使用されており、そのような部品は、本願における呼称と同様に、アルミ部品、またはアルミニウム部品、と短縮されて呼ばれている。将来、別のよく適した軽量構造素材、例えば適当なマグネシウム合金のようなものが利用できるようになった場合、上記の用語はそのような素材も包含し、保護の範囲に含むものとする。
【0013】
特に好ましい具体的な実施形態においては、アルミニウムキャスト製長手方向サイドメンバのそれぞれは、車両内側に配置されたアルミニウムキャスト製外殻部品を備え、この外殻部品において、コーナー補強部材が、中空の、車両室内へ箱形の形状に突き出た箱形部として成形されている。この箱形部はここでは、強化すべきコーナーの形状に合わせて基本的にほぼL字形の形状を有し、車両の長手方向において向かい合うほぼL字形の幅方向面部と、天面部と、側面部と、凹状に形成された掛け渡し部を備えている。
【0014】
車両内側に置かれた側方垂直メンバ外殻部は、重ね合わせ接続部によって天面部の領域で上から把持して、又は、その箇所のほぼU字型のフランジに裏から把持して連結することで、接続される。これに対応して車両内側に配置されたフロア部クロスメンバ外殻部は、重ね合わせ接続部において、側面部の領域で、上から把持して連結するようにして箱形部に接続される。組み立てて完成した車体では、フロア部クロスメンバ外殻部は、フロアプレートによって塞がれて、中空構造メンバであるフロア部クロスメンバになる。同様に、側方垂直メンバ外殻部は車両外部プレートによって覆われて、中空構造メンバになる。
【0015】
前述の各アルミニウムキャスト製外殻部品内に成形された箱形部が、上に挙げた接続技術及び接合技術とあいまって、特に鋳造技術によって簡単で安価に製造可能なコーナー補強部が得られ、加えて、強化リブを使用して、特に重量的に有利に、比較的薄い厚みで必要な剛性を有する外殻部品を製作することができる。
【0016】
さらに、たとえフロア部クロスメンバ又はフロア部クロスメンバ外殻部や各側方垂直メンバ又は側方垂直メンバ外殻部がアルミニウム板から作られている場合でも、接触腐食を防止して軽量化を達成することができる。その際、コーナー補強部材と各部材との接続を接着及び/又はリベット接合で行うことが効果的である。車体部品を接続するために利用可能な接続方法としてはさらに、接続箇所に片面からだけアクセスできればよい利点を有する、MIG溶接及びFDSボルト接合がある。
【0017】
特許請求されているメンバの複合構造は、セダン車の車体の場合、特に折りたたみ可能な後部座席背もたれを装備した車両においては、上部クロスメンバによって、後方収納庫の領域で一周して、優れた剛性特性を備える、フロア部コーナーが補強されたトーションリングとなる。ステーションワゴン車の車体の場合でも、特許請求されているメンバの複合構造により、ねじれに対する優れた補強が得られ、その場合、目的に応じて、側方垂直メンバが、ルーフ部領域内まで延びるCピラーの構成要素となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第二座席列の後ろに車体補強部を備える車体構造の部分斜視図
【図2】図1の領域Aの拡大図
【図3】図2の部分を視点Bから見たフロア部側方を示す図
【図4】代替実施形態における図2に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を用いて本発明の実施例について説明する。
図1は、荷室を拡大するために可倒式の後部座席背もたれを備えたセダン車の車体1の後方領域の部分を示している。向かい合うホイールハウジング2に挟まれた領域には、車体1の補強のために、ほぼ垂直な幅方向の面内にトーションリング3が設けられている。このトーションリング3は、フロア部クロスメンバ4と、左側の側方垂直メンバ5及び右側の側方垂直メンバ6と、側方垂直メンバ5、6を接続し後部収納庫8の領域及び高さにある上部クロスメンバ7から構成される。加えて、トーションリング3は、フロア部側方のコーナー領域において、左側のサイドメンバ9及び右側のサイドメンバ10とそれぞれ接続部11で接続されている。図1の領域Aに対応する左側接続部11は、図2及び図3に詳細が示される。
【0020】
図2は、図1の領域Aの拡大図であり、図3は、図2の部分を、概ね矢印Bの視線方向から見たフロア部側方の図である。サイドメンバ9は、その外殻部表面が車両内側に配置されたアルミニウムキャスト製外殻部12を備え、この外殻部は車両側方部左側を長手方向に延びており、組み立てて完成した車体では車両外部プレートで補完されて覆われた長手方向中空構造メンバとなる。アルミニウムキャスト製外殻部品12には、トーションリング3が横断する領域内に、車両室内に突き出た中空の箱形部13がコーナー補強部材として成形されている。
【0021】
この箱形部13は、基本的にほぼL字形の形状となっており、L字の角と端点がなす三角形の形状をした2つの対向する幅方向面部14、15と、天面部16と、側面部17を有し、天面部16と側面部17との間に凹面状に形成された掛け渡し部18を備えている。図3ではさらに、アルミニウムキャスト製外殻部12が、内部領域において適切に取り付けられた強化リブ19により、所要の剛性が得られるように強化されていることが示されている。
【0022】
フロア部クロスメンバ4は、フロア部クロスメンバ外殻部20を備え、このフロア部クロスメンバ外殻部は、中空構造メンバを形成するためにフロアプレート21上に載置されている。このフロア部クロスメンバ外殻部20は、その終端部の重ね合わせ接続部22において側面部17の部分に対して上から把持するように嵌合しており、そこで接着及びリベット接合によって接続されている。同様に、側方垂直メンバ5の側方垂直メンバ外殻部23は、重ね合わせ接続部24において天面部16の部分に対して上から把持するように嵌合しており、そこで同様に接着及びリベット接合によって接続されている。フロア部クロスメンバ外殻部20及び側方垂直メンバ外殻部23は、アルミニウム板から作られている。
【0023】
図4による代替実施形態は、前述の実施形態と概ね一致しており、したがって同じ部品には同じ符号を使用してある。ただし、箱形部13はここでは異なる形状に形成され、掛け渡し部18の代りに箱形部がここでは車両内側に向けて開いており、かつ中央の支持板25を備えている。加えて、側方垂直メンバ外殻部23の接続が第一の実施形態とは異なっている。
【0024】
ここでは、外側から側方垂直メンバ外殻部23が、その下側端部で、天面部の領域において、嵌入接続形式でU字型のフランジ構造26を外側から把持するように連結する。この第二の実施形態は、車体の組立時において有用である。その作用は、基本的に第一の実施形態と同様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二座席列の後ろに車体補強部を備えた車体構造であって、前記車体補強部が、2つの向かい合った長手方向サイドメンバ(9、10)と、フロア部クロスメンバ(4)と、2つの側方垂直メンバ(5、6)とから形成された、メンバの複合構造によって構成され、左側の第一の長手方向サイドメンバ(9)と、これに対応するフロア部クロスメンバ(4)の一端部と、左側の第一の側方垂直メンバ(5)とが、左側の接合部(11)で接合され、これと同様に、第二の長手方向サイドメンバ(10)と、フロア部クロスメンバ(4)の他端部と、第二の側方垂直メンバ(6)とが、右側の接合部で接合されており、前記2つの接合部において、補強強化のためのコーナー補強部が、フロア部クロスメンバ(4)及び側方垂直メンバ(5、6)によって形作られる幅方向の面内に取り付けられている車体構造において、
前記長手方向サイドメンバ(9、10)がアルミニウムキャスト製長手方向サイドメンバであり、前記アルミニウムキャスト製長手方向サイドメンバのそれぞれの接合部(11)で、コーナー補強部が、同じ材料の箱状に突き出たコーナー補強部材(13)として形成され一体化されており、前記コーナー補強部材(13)が、対応する側方垂直メンバ(5、6)と上部で接続されている一方で、フロア部クロスメンバ(4)と側部で接続されていることを特徴とする車体構造。
【請求項2】
アルミニウムキャスト製長手方向サイドメンバのそれぞれが、車両内側に配置されたアルミニウムキャスト製外殻部(12)を備え、前記アルミニウムキャスト製外殻部において、前記コーナー補強部材が、中空の、車両内部に突き出た箱形部(13)として形成されており、
前記箱形部(13)が、車両長手方向から見てコーナー形状に応じたL字形状になっており、向かい合ったL字形状の幅方向面部(14、15)と、天面部(16)と、車両内側を向いた側面部(17)と、凹面状に形成された掛け渡し部(18)と、を備え、
前記天面部(16)の領域の重ね合わせ接続部(24)において、上から把持するように、あるいは裏から把持するように嵌合することによって、車両内側に配置された側方垂直メンバ(5)の側方垂直メンバ外殻部(23)が接続され、これに対応して、前記側面部(17)の領域の重ね合わせ接続部(22)において、上から把持するように嵌合することによって、車両内側に配置されたフロア部クロスメンバ(4)のフロア部クロスメンバ外殻部(20)が接続されることを特徴とする請求項1に記載の車体構造。
【請求項3】
前記フロア部クロスメンバ(4)又は少なくとも1つのフロア部クロスメンバ外殻部(20)と、側方垂直メンバ(5、6)のそれぞれ又は少なくとも1つの側方垂直メンバ外殻部(23)が、アルミニウム板から作られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体構造。
【請求項4】
コーナー補強部材(13)と各部材との接続が、接着、及び/又はリベット接合、及び/又はMIG溶接、及び/又はFDSボルト接続によってなされることを特徴とする請求項3に記載の車体構造。
【請求項5】
セダン車の車体構造のメンバの複合構造が、後部収納庫の領域において、上部クロスメンバ(7)により、一周する形状になっており、フロア部コーナーが補強されたトーションリング(3)となっていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車体構造。
【請求項6】
ステーションワゴン車の車体構造におけるメンバの複合構造の側方垂直メンバ(5、6)が、ルーフ部まで延びるCピラーの構成要素であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506588(P2013−506588A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531274(P2012−531274)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005887
【国際公開番号】WO2011/038877
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(591006586)アウディ アクチェンゲゼルシャフト (34)
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
【住所又は居所原語表記】D−85045 Ingolstadt,Germany
【Fターム(参考)】