説明

筒体の塗装装置及び塗装方法

【課題】特にジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の内表面及び外表面に、小型の装置で一定膜厚の塗装膜を安定して形成できるようにする。
【解決手段】筒体1の表面に一定膜厚の塗装膜を形成する筒体の塗装装置であって、筒体1を水平に支持し且つ筒体1の軸線を中心に回転駆動可能な支持台2と、支持台2に支持した筒体1の表面と間隔を隔てたスプレーガン13,20を筒体1の軸線と平行に移動させて筒体1の表面に塗料を噴射する塗装機3,4と、支持台2を180゜水平旋回可能に支持する旋回台21とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体、特にジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の内表面及び外表面に、小型の装置で一定膜厚の塗装膜を安定して形成できるようにした筒体の塗装装置及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジンシャフトには、例えば図8に一例を示すように直径が150mm前後で長さが3000mm前後のような細長い筒体1によって構成されたものがあり、このようなジェットエンジンシャフトは、断面形状が長手方向において均一ではなく、内表面及び外表面に部分的に径が異なる形状変化部1aを有するものがある。そして、このようなジェットエンジンシャフトは製造の一工程として内表面と外表面に塗装を行って40〜70μmの薄い膜厚の塗装膜を形成することが実施されており、この塗装膜は塗装した後に焼き付け処理を行って筒体と一体化しているが、この焼き付け処理の安定性を保持するために前記塗装膜の膜厚の誤差を30μm程度内に収めるという厳しい要求がある。このため、従来より10μm程度の薄い膜厚による塗装を複数回繰り返して重ね塗りすることで40〜70μmの膜厚の塗装膜を形成している。
【0003】
ここで、ジェットエンジンシャフトのような筒体において外表面を塗装する場合は、均一厚さの塗装膜を形成することが比較的容易で種々の方法が実施されているが、筒体の内表面を塗装する場合は、均一厚さの塗装膜を形成することが難しいという問題がある。
【0004】
従来、筒体の内表面を塗装する方法としては、長尺のアームの先端に周方向全周へ向けて塗料を噴射するようにしたスプレーガンを取り付けたスプレー装置、或いはアームの先端に回転するスプレーガンを取り付けたスプレー装置を用いて、作業員がアームを把持しスプレーガンを筒体内に挿入することにより塗装する方法がある。
【0005】
しかし、前記したように作業員がアームを把持し手作業によりスプレーガンをジェットエンジンシャフト内に挿入して内表面に40〜70μmの薄い塗装膜を均一に形成することは非常に難しく、塗装には高度の熟練を要していた。特にシャフトの内表面を塗布する際は目視によって確認することができないため、熟練した作業員によっても均一な塗装膜を形成することは非常に困難であるという問題があった。
【0006】
更に、周方向全周へ塗料を噴霧するスプレーガンを用いる方法では、スプレーガンの性能によって周方向における噴射量にバラツキが生じて塗装膜の膜厚が不均一になる可能性があり、又、回転するスプレーガンを用いる方法では、スプレーガンを回転させるための構造が非常に複雑になるという問題がある。又、前記周方向全周へ塗料を噴霧するスプレーガン及び回転するスプレーガンのいずれを用いる場合においても、水平に固定した筒体内表面に塗料を噴射すると、塗料は下側に向かって液垂れするために、塗装膜の厚みが周方向で不均一になるという問題がある。又、周方向に均一な厚みの塗装膜を形成するために、筒体を縦に固定して塗装することも考えられるが、このように筒体を立てた場合には、長手方向一端(上端)と他端(下端)とで膜厚に差異が生じてしまう可能性があり、更に、筒体を縦に固定した場合には、装置全体の高さが大型になってしまう問題がある。
【0007】
前記塗装には、一般に揮発性で可燃性の溶剤に粉体等の基剤を溶解した塗装液を用いられているために、前記した筒体等の塗装作業は通常防爆ブース内で行われているが、前記したように塗装装置の高さが高くなると、防爆ブースも大型にする必要があり、このように防爆ブースが大型になると、防爆ブース内を換気するためのファン等の換気装置も大型になるという問題がある。
【0008】
先端に噴射ノズルを備えたランス(槍状物)を、管の一端から管内に挿入して管の内面を塗装するようにした管内面の塗装装置には特許文献1がある。
【0009】
又、回転させた円筒状基体に対し、ノズルヘッドを回転軸線と平行に移動させて基体の表面に連続した塗布膜を形成する円筒状塗布体の製造方法には特許文献2がある。
【特許文献1】特開平05−064762号公報
【特許文献2】特開平04−074570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1では、前記ジェットエンジンシャフトのように3000mm前後の長さを有する筒体1の内表面を塗装するには、筒体1の長さ3000mmに、ランスを支持するための長さを加えた非常に長い長さのランスを備え、更に、該ランスを筒体1の全長に亘って挿入・引抜きを行うためにランスに長さと略同等の長さの移動が可能な移動装置を備える必要があり、よって塗装装置が非常に大型になるという問題がある。更に、前記したようにランスが長くなると先端が撓んで垂れ下がる問題があり、この垂れ下がりによって、筒体1の手前側と内奥部とでは噴射ノズルと筒体1内表面の間隔が変化し、よって均一な塗装が困難になるという問題があり、又最悪の場合には噴射ノズルが筒体1の内表面に接触してしまうことが考えられる。
【0011】
又、前記特許文献2においても、前記したような長さが長い筒体1の外表面に塗布膜を形成するには、ノズルヘッドを筒体1の全長に亘って移動させる必要があるために、塗装装置が非常に大型になるという問題がある。
【0012】
更に、上記したように塗装装置が大型になると、防爆ブースも大型となり、よって防爆ブース内を換気するための換気装置も大型になるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、特にジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の内表面及び外表面に、小型の装置で一定膜厚の塗装膜を安定して形成できるようにした筒体の塗装装置及び塗装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、筒体の表面に一定膜厚の塗装膜を形成する筒体の塗装装置であって、
筒体を水平に支持し且つ筒体の軸線を中心に回転駆動する支持台と、
支持台に支持した筒体の表面と間隔を隔てたスプレーガンを筒体の軸線と平行に移動させて筒体の表面に塗料を噴射する塗装機と、
支持台を180゜水平旋回可能に支持する旋回台と
を有することを特徴とする筒体の塗装装置、に係るものである。
【0015】
上記筒体の塗装装置において、塗布機と旋回台に支持した支持台は、防爆ブース内に配置してもよい。
【0016】
又、前記筒体の塗装装置において、塗装機は、アームの先端にスプレーガンを備えて筒体内に挿入することにより筒体の内表面を塗装する内面塗装機であってもよい。
【0017】
又、前記筒体の塗装装置において、塗装機は、スプレーガンにより筒体の外表面を塗装する外面塗装機であってもよい。
【0018】
又、前記筒体の塗装装置において、支持台上に支持される筒体の軸線を一定位置に保持するための調心手段を有することは好ましい。
【0019】
又、前記筒体の塗装装置において、調心手段は、筒体外面の長手方向2個所に取り付けるようにした調心リングであってもよい。
【0020】
筒体の表面に一定膜厚の塗装膜を形成する筒体の塗装方法であって、筒体を水平に支持し且つ筒体の軸線を中心に回転駆動可能な支持台と、支持台に支持した筒体の表面と間隔を隔てたスプレーガンを筒体の軸線と平行に移動させて筒体の表面に塗料を噴射する塗装機と、支持台を180゜水平旋回可能に支持する旋回台とを設け、
回転した筒体の一端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して螺旋状に塗装した後、
旋回台により支持台を180゜水平旋回して筒体を長手方向に反転し、
筒体の他端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して螺旋状に塗装することにより繋ぎ部を形成する
ことを特徴とする筒体の塗装方法、に係るものである。
【0021】
上記筒体の塗装方法において、筒体の一端から長手方向中間位置まで塗装を行って塗装を停止した後、旋回台により支持台を180゜水平旋回して筒体を長手方向に反転し、筒体の他端から長手方向中間位置まで塗装して繋ぎ部を形成する操作を複数回行うことにより重ね塗りすることは好ましい。
【0022】
又、上記筒体の塗装方法において、重ね塗りする際に、前回の塗装に対して位相をずらして塗装することにより一定膜厚の塗装膜を形成することは好ましい。
【0023】
又、上記筒体の塗装方法において、重ね塗りする際に、前回の繋ぎ部と今回の繋ぎ部とが重ならないように繋ぎ部の位置をずらすことは好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の筒体の塗装装置及び塗装方法によれば、回転した筒体の一端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して塗装した後、旋回台により支持台を180゜水平旋回して筒体を長手方向に反転し、筒体の他端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して塗装することができるので、塗装のための塗装機の移動距離を従来に比して半減できるため塗装機を小型化することができ、特に筒体の内表面を塗装する際には、筒体内に挿入するアームの長さが半減されるために、アームが撓んで先端が垂れ下がる問題を防止して均一膜厚での塗装が可能になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0026】
図1は一端にコーン状に拡がった形状変化部1aを有する筒体1の内表面及び外表面に塗装膜を形成する場合の塗装装置の全体を示す平面図、図2は塗装装置の斜視図である。図1、図2において、塗装装置は、筒体1を水平に支持する支持台2と、筒体1の内表面の塗装を行う内面塗装機3と、筒体1の外表面の塗装を行う外面塗装機4とを有している。又、上記支持台2と内面塗装機3と外面塗装機4は、防爆ブース5内に配置されている。
【0027】
前記支持台2の上面には、図1〜図4に示すように、左右に間隔を隔てた一対の駆動シャフト6が水平に設けてあり、該駆動シャフト6はサーボモータによる回転駆動装置7によって同方向に同時に回転駆動されるようになっている。そして、駆動シャフト6の長手方向の一方の端部には、両鍔付きのプーリ8が外嵌装着されていると共に、前記各駆動シャフト6の長手方向の他方の端部には、軸心方向に長いローラ9が外嵌装着されており、これら各プーリ8と各ローラ9とにより前記筒体1の両端部に装着した調心リング10,11(調心手段)を介して筒体1を回転駆動可能に支持している。
【0028】
前記調心リング10,11は、前記駆動シャフト6の各プーリ8と各ローラ9に支持される筒体1の軸線の左右・上下の位置を常に一定位置に保持するためのものであり、従って、筒体1の径が異なる場合にはその径に応じた調心リング10,11を取り付けて、筒体1の軸線が常に一定位置に保持されるようにしている。ジェットエンジンシャフトのような筒体1では、少なくとも長手方向2箇所に軸受を装着する部分を有しており、この軸受の取付部には塗装を施さないため、この軸受の取付部に前記調心リング10,11を装着するようにしている。
【0029】
又、一方の調心リング10が両鍔付きのプーリ8で支えられているのは、筒体1が軸線方向へ移動するのを抑えるためであり、他方の調心リング11が軸心方向に長いローラ9で支えられているのは、長さの異なる他の筒体1にも対応できるようにするためである。又、図示例では調心リング10,11を筒体1に取り付けた調心手段の場合について説明したが、駆動シャフト6に筒体1の軸線を一定位置に保持して回転駆動するようにした調心鍔等からなる調心手段を備えるようにしてもよい。
【0030】
前記内面塗装機3は、図1、図2に示すように、支持台2上に水平設置される筒体1の内部に対して挿脱し得るよう筒体1の軸線と平行に進退動するアーム12を備えており、このアーム12の先端に前記筒体1の内表面に塗料を噴射するスプレーガン13が備えられている。前記アーム12は、前記筒体1の軸線と平行に設けたガイドレール14に沿って移動する移動台車15により水平状態に支持されており、前記ガイドレール14内に張設された図示しない無端状チェーンを駆動装置16で循環駆動することにより前記移動台車15がガイドレール14に沿い移動してアーム12が筒体1内に対して挿脱されるようになっている。
【0031】
前記アーム12は、前記筒体1の全長の1/2の長さを塗装できる長さ寸法に設定されており、又、アーム12を筒体1に挿脱する移動ストロークも筒体1の全長の略1/2の長さとなっている。
【0032】
又、前記外面塗装機4は、図1、図2に示すように、旋回台部17と、該旋回台部17上に回動可能に備えた回動アーム18と、該回動アーム18の上端に起伏可能に備えた起伏アーム19と、該起伏アーム19の先端にスプレーガン20を備えた塗装ロボットの場合を示している。尚、外面塗装機4としては、例えば特許文献2に示したように、筒体1の外表面と間隔を隔ててスプレーガンを平行に移動させることによって筒体1の外表面に塗料を噴射する塗装機を用いることもできる。
【0033】
図1〜図4に示した塗装装置における支持台2は、水平旋回可能な旋回台21上に設けられている。旋回台21は、固定台22に設けたサーボモータからなる旋回駆動装置23により歯車24を介して回転するようになっており、旋回台21上に固定した支持台2を180゜の範囲で水平旋回し、これによって支持台2上に支持した筒体1を長手方向で反転できるようにしている。
【0034】
図1中、25,26は塗料供給装置、27は塗料供給装置25と内面塗装機3、塗料供給装置26と外面塗装機4、及び旋回台21と支持台2の夫々に信号を送って作動を制御する制御盤である。又、28は防爆ブース5の天井に設けられた空気吹き込み口、29は吸引口30を介して防爆ブース5内を吸引する吸引ファンであり、防爆ブース5内を換気するようになっている。
【0035】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0036】
前記筒体1を塗装するには、図2に示すように、調心リング10,11を装着した筒体1の調心リング10が両鍔付きのプーリ8上に支持され、調心リング11がローラ9上に支持されるように支持台2上に載置する。この時、支持台2は駆動シャフト6が内面塗装機3のアーム12と平行な状態に保持されており、更に、支持台2上に載置した筒体1の長手方向中間部が旋回台21の旋回中心に略一致するように両鍔付きのプーリ8の位置が予め設定されている。
【0037】
支持台2の回転駆動装置7を駆動し、前記プーリ8、ローラ9、及び調心リング10,11を介して筒体1を所定の速度で回転した状態で、内面塗装機3によって筒体1の内表面を塗装する際は、アーム12先端のスプレーガン13から塗料を噴射しながら駆動装置16を作動して、図3に示すようにスプレーガン13を所要の速度で筒体1の一端A側から筒体1内に挿入し、図6(a)に示すように、筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行い、スプレーガン13の挿入停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止する。筒体1が回転した状態で塗装が行われるため、筒体1の内表面には螺旋状の塗装膜が形成されるようになり、更に、筒体1が回転しているために塗布した塗料が液垂れする問題は生じない。
【0038】
筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行うと、アーム12を筒体1から抜き出した後、旋回駆動装置23を駆動して旋回台21及び支持台2を180゜水平旋回することにより、図5に示すように筒体1を長手方向で反転させる。
【0039】
続いて、前記と同様に、スプレーガン13から塗料を噴射しながら駆動装置16によりアーム12を所要の速度で筒体1の他端B側から筒体1内に挿入し、図6(b)に示すように、筒体1の長手方向中間位置における前記停止位置まで塗装を行い、挿入停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止することにより、繋ぎ部31を形成する。これにより、筒体1は全内表面が塗装される。尚、上記塗装を停止する位置は塗り残しが無く且つ不要な重ね塗りが生じない繋ぎ部31が形成されるように、スプレーガン13の移動の停止と塗料の噴射の停止を制御する。
【0040】
又、上記したように筒体1の内表面に1回目の塗装を行った後に、同様の操作を複数回行うことにより、重ね塗りすることができる。このとき、複数回の塗装を位相を同じくして行った場合には、塗装膜の膜厚に厚い部分と薄い部分が生じてしまう問題があるため、複数回の塗装を行う際には、前回の塗装と今回の塗装を位相をずらして行うことが好ましく、位相をずらして塗装を行うと、塗装膜の膜厚が平坦化されて一定膜厚の塗装膜を精度良く形成することができる。
【0041】
又、複数回の塗装を行う際は、前記したように筒体1の長手方向中間位置で塗装を停止する位置が常に同じ場合には繋ぎ部によって塗装膜の膜厚に厚い部分と薄い部分が生じてしまう問題があるため、上記したように複数回の塗装を行う際には、図7(a)に示すように、前回の繋ぎ部31とは異なる位置まで塗装を行って停止し、筒体1を長手方向に反転した後、図7(b)に示すように、今回の停止位置まで塗装を行って繋ぎ部31'を形成し、今回の塗装膜の繋ぎ部31'が前回の繋ぎ部31と重ならないようにすることが好ましく、このように今回の塗装膜の繋ぎ部31'が前回の繋ぎ部31と重ならないように塗装を行うと、塗装膜の膜厚が平坦化されて一定膜厚の塗装膜を精度良く形成することができる。
【0042】
前記した内面塗装機3においては、アーム12の長さを筒体1の全長の略1/2にできるため、アーム12が撓んで先端が垂れ下がる問題を防止して、スプレーガン13と筒体1内表面との間隔を一定に保持することができ、よって均一な膜厚での塗装が可能となる。又、アーム12を筒体1に挿脱する移動ストロークも筒体1の全長の略1/2の長さとすることができるため、内面塗装機3の全体長さを小型化することができる。
【0043】
一方、外面塗装機4によって筒体1の外表面を塗装する際は、外面塗装機4に備えた起伏アーム19先端のスプレーガン20から塗料を噴射しながら、回転している筒体1の外表面に沿ってスプレーガン20を筒体1の一端Aから他端Bまで全長に亘って移動させることにより1回の操作で塗装することができる。しかし、長さが長い筒体1の場合には、外面塗装機4のスプレーガン20から塗料を噴射しながら、回転している筒体1の外表面に沿ってスプレーガン20を筒体1の一端A側から長手方向中間位置まで移動して塗装を行い、移動停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止する。続いて、スプレーガン20を後退させ、旋回駆動装置23を駆動して旋回台21及び支持台2を180゜水平旋回することにより、図5に示すように筒体1を長手方向で反転させた後、再びスプレーガン20から塗料を噴射しながらスプレーガン20を筒体1の他端B側から外表面に沿って移動させて筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行い、移動停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止することにより、繋ぎ部31を形成する。これにより、筒体1は全外表面が塗装される。筒体1の外表面に複数回の重ね塗りを行う際には、前記筒体1の内表面を塗装する場合と同様にして行うことができる。
【0044】
このように、筒体1の外表面を塗装する場合においても、筒体1を長手方向で反転させて長手方向に半分ずつを塗装することにより、スプレーガン20の移動距離を短くすることができ、よって、外面塗装機4を小型化することができる。
【0045】
尚、前記外面塗装機4による筒体1の外表面の塗装は、前記内面塗装機3による内表面の塗装と別々に行うようにしてもよく、或いは内面塗装機3による内表面の塗装と同時に行うようにしてもよい。
【0046】
上記したように、内面塗装機3及び外面塗装機4を小型化できることによって、防爆ブース5を小型化することができ、よって防爆ブース5内を換気するための吸引ファン28等の換気装置も小型化することができる。
【0047】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものできなく、ジェットエンジンシャフトの以外の種々の筒体の塗装にも適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の塗装装置の全体を示す平面図である。
【図2】図1の塗装装置の斜視図である。
【図3】支持台と旋回台の構成を示す正面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】図3の支持台を180゜水平旋回した状態を示す作動説明図である。
【図6】(a)は筒体の内表面の長手方向途中まで塗布した状態の概略図、(b)は筒体を長手方向に反転し、内表面の残りを塗布して繋ぎ部を形成した状態の概略図である。
【図7】(a)は図6で形成した塗装膜の上に更に前記繋ぎ部とは異なる位置まで塗布した状態の概略図、(b)は筒体を長手方向に反転し、残りを塗布して前記とは異なる位置に繋ぎ部を形成した状態の概略図である。
【図8】ジェットエンジンシャフトの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 筒体
2 支持台
3 内面塗装機(塗装機)
4 外面塗装機(塗装機)
5 防爆ブース
10,11 調心リング(調心手段)
12 アーム
13 スプレーガン
20 スプレーガン
21 旋回台
31 繋ぎ部(前回)
31' 繋ぎ部(今回)
A 一端
B 他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の表面に一定膜厚の塗装膜を形成する筒体の塗装装置であって、
筒体を水平に支持し且つ筒体の軸線を中心に回転駆動する支持台と、
支持台に支持した筒体の表面と間隔を隔てたスプレーガンを筒体の軸線と平行に移動させて筒体の表面に塗料を噴射する塗装機と、
支持台を180゜水平旋回可能に支持する旋回台と
を有することを特徴とする筒体の塗装装置。
【請求項2】
塗布機と旋回台に支持した支持台は、防爆ブース内に配置される請求項1に記載の筒体の塗装装置。
【請求項3】
塗装機は、アームの先端にスプレーガンを備えて筒体内に挿入することにより筒体の内表面を塗装する内面塗装機である請求項1又は2に記載の筒体の塗装装置。
【請求項4】
塗装機は、スプレーガンにより筒体の外表面を塗装する外面塗装機である請求項1又は2に記載の筒体の塗装装置。
【請求項5】
支持台上に支持される筒体の軸線を一定位置に保持するための調心手段を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の筒体の塗装装置。
【請求項6】
調心手段は、筒体外面の長手方向2個所に取り付けるようにした調心リングである請求項5に記載の筒体の塗装装置。
【請求項7】
筒体の表面に一定膜厚の塗装膜を形成する筒体の塗装方法であって、筒体を水平に支持し且つ筒体の軸線を中心に回転駆動可能な支持台と、支持台に支持した筒体の表面と間隔を隔てたスプレーガンを筒体の軸線と平行に移動させて筒体の表面に塗料を噴射する塗装機と、支持台を180゜水平旋回可能に支持する旋回台とを設け、
回転した筒体の一端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して螺旋状に塗装した後、
旋回台により支持台を180゜水平旋回して筒体を長手方向に反転し、
筒体の他端から長手方向中間位置まで塗装機により塗料を噴射して螺旋状に塗装することにより繋ぎ部を形成する
ことを特徴とする筒体の塗装方法。
【請求項8】
筒体の一端から長手方向中間位置まで塗装を行って塗装を停止した後、旋回台により支持台を180゜水平旋回して筒体を長手方向に反転し、筒体の他端から長手方向中間位置まで塗装して繋ぎ部を形成する操作を複数回行うことにより重ね塗りする請求項7に記載の筒体の塗装方法。
【請求項9】
重ね塗りする際に、前回の塗装に対して位相をずらして塗装することにより一定膜厚の塗装膜を形成する請求項8に記載の筒体の塗装方法。
【請求項10】
重ね塗りする際に、前回の繋ぎ部と今回の繋ぎ部とが重ならないように繋ぎ部の位置をずらす請求項8又は9に記載の筒体の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−5505(P2010−5505A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165490(P2008−165490)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】