説明

筒体の塗装設備

【課題】ジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の特に内表面に一定膜厚の塗装膜を安定して形成できるようにする。
【解決手段】防爆ブース5内の支持台2上に水平に支持した筒体1を内面塗装機3及び外面塗装機4により塗装する筒体の塗装設備であって、筒体1の一端延長上における防爆ブース5の天井部に外部の空気を供給する給気口28を設け、防爆ブース5における筒体1の他端延長上に吸引口29を備えた隔壁30を介して吸引室31を形成すると共に、吸引室31に吸引ファン32を設け、吸引ファン32の駆動により防爆ブース5内に吸引口29に向かうガス流れを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体、ジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の特に内表面に一定膜厚の塗装膜を安定して形成するための筒体の塗装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジンシャフトには、例えば図6に一例を示すように直径が150mm前後で長さが3000mm前後のような細長い筒体1によって構成されたものがあり、このようなジェットエンジンシャフトは、断面形状が長手方向において均一ではなく、内表面及び外表面に部分的に径が異なる形状変化部1aを有するものがある。そして、このようなジェットエンジンシャフトは製造の一工程として内表面と外表面に塗装を行って40〜70μmの薄い膜厚の塗装膜を形成することが実施されており、この塗装膜は塗装した後に乾燥を行い、更に焼き付け処理を行って筒体と一体化しているが、この焼き付け処理の安定性を保持するために前記塗装膜の膜厚の誤差を30μm程度内に収めるという厳しい要求がある。このため、従来より10μm程度の薄い膜厚による塗装を複数回繰り返して重ね塗りすることで40〜70μmの膜厚の塗装膜を形成している。
【0003】
ここで、ジェットエンジンシャフトのような筒体において外表面を塗装する場合は、均一厚さの塗装膜を形成することが比較的容易であり種々の塗装方法が実施されているが、筒体の内表面を塗装する場合は、均一厚さの塗装膜を形成することが難しいという問題がある。
【0004】
従来、筒体の内表面を塗装する場合は、長尺のアームの先端に周方向全周へ向けて塗料を噴射するようにしたスプレーガンを備えた塗装機の前記アームを作業員が把持してスプレーガンを筒体内に挿入することにより塗装を行っている。
【0005】
しかし、前記したように作業員がアームを把持し、手作業でスプレーガンをジェットエンジンシャフト内に挿入して40〜70μmの薄い塗装膜を内表面に均一に形成することは非常に難しく、塗装に高度の熟練を要していた。特に筒体の内表面を塗布する場合には目視によって塗装状況を確認することができないため、熟練した作業員によっても均一に塗装することは非常に困難であるという問題があった。
【0006】
一方、塗装には、揮発性で可燃性の溶剤(例えばトルエン、キシレン等)に粉体等の基剤を溶解した塗装液が用いられているため、前記した筒体等の塗装は通常防爆ブース内で行うようにしているが、前記したジェットエンジンシャフトのように細長い筒体の特に内表面を塗装する場合には、スプレーガンによって噴射された霧状の塗料が狭い筒体内に高濃度で飛散して篭るため、部分的に余剰の塗料が付着することによって塗装開始位置と塗装終盤位置とでは塗装の膜厚が異なってしまうといった問題が生じ、更に部分的に塗布量が多くなることによって液垂れを生じるといった問題を有していた。
【0007】
防爆ブースを備えた塗装には、鋼管を移動台により支持して塗装ブース外部から塗装ブース内部に移動させつつ鋼管の内面と外面とに塗装ガンにより粉体塗料を噴射して塗装を行うと共に、塗装ブースに飛散した粉体塗料を回収口から吸引ファンにより吸引して回収するようにした管材の粉体塗装装置が特許文献1に示されている。
【0008】
又、異形管をターンテーブル上に位置決めしたターンテーブル台車を塗装ブース内に移動し、塗装ロボットの塗装ガンを5軸方向に移動させることよって異形管の塗装を行う異形管の内面塗装装置が特許文献2に示されている。
【特許文献1】特開平09−253537号公報
【特許文献2】特開平06−031215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1では、鋼管を支持した移動台を塗装ブース外部から塗装ブース内部に進入させて塗装を行うようにしているために、塗装ブースは外気に開放された構造となっており、そのために防爆ブースとしての機能が損なわれる可能性があると共に、防爆ブースが外気に開放されているために吸引ファンを作動しても塗装によって鋼管内に高濃度に飛散した粉体塗料を効果的に吸引することができず、そのために鋼管内に余剰の塗料が付着して均一膜厚で塗装することが困難になるという問題がある。
【0010】
又、引用文献2においても、塗装によって異形管内に高濃度に飛散した塗料を効果的に吸引することができないために、異形管内に余剰の塗料が付着して均一膜厚で塗装することが困難になるという問題がある。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、ジェットエンジンシャフト等のように径に対して長い長さを有する筒体の特に内表面に一定膜厚の塗装膜を安定して形成できるようにした筒体の塗装設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、防爆ブース内の支持台上に水平に支持した筒体を塗装装置により塗装する筒体の塗装設備であって、
前記筒体の一端延長上における防爆ブースの天井部に外部の空気を供給する給気口を設け、
防爆ブースにおける前記筒体の他端延長上に吸引口を備えた隔壁を介して吸引室を形成すると共に、該吸引室に吸引ファンを設け、該吸引ファンの駆動により前記防爆ブース内に前記吸引口に向かうガス流れを形成するようにした
ことを特徴とする筒体の塗装設備、に係るものである。
【0013】
上記筒体の塗装設備において、給気口に、空気の加熱と除湿を行う空気調節装置を備えていることは好ましい。
【0014】
又、上記筒体の塗装設備において、吸引口を有する隔壁は、下端に対して上部が吸引室に近付くように傾いた下部傾斜壁を有することは好ましい。
【0015】
又、上記筒体の塗装設備において、塗装装置は、乾燥空気を筒体表面に吹き付ける空気噴射手段を有することは好ましい。
【0016】
又、上記筒体の塗装設備において、防爆ブースの外部と前記支持台との間を走行して支持台上に対する筒体の搬入・搬出を行う搬送台車を有することは好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筒体の塗装設備によれば、前記筒体の一端延長上における防爆ブースの天井部に外部の空気を供給する給気口を設け、防爆ブースにおける前記筒体の他端延長上に吸引口を介して形成した吸引室に吸引ファンを配置し、吸引ファンの駆動によって防爆ブース内に吸引口に向かうガス流れが形成されるようにしたので、筒体内に高濃度に飛散した塗料が篭ることなく吸引口に向かって流動されるようになるため、内周面へ余剰の塗料が付着する問題を防止して均一膜厚での塗装が可能になる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は筒体1の内表面及び外表面に塗装膜を形成する場合の塗装設備の全体を示す平面図、図2は図1をII−II方向から見た正面図、図3は塗装装置の斜視図である。図1、図3において、塗装装置は、筒体1を水平に支持する支持台2と、筒体1の内表面の塗装を行う内面塗装機3と、筒体1の外表面の塗装を行う外面塗装機4とを有しており、上記支持台2と内面塗装機3と外面塗装機4とからなる塗装装置を防爆ブース5内に配置することによって塗装設備が構成されている。
【0020】
前記支持台2の上面には、図1、図3に示すように、左右に間隔を隔てた一対の駆動シャフト6が水平に設けてあり、該駆動シャフト6はサーボモータによる回転駆動装置7によって同方向に同時に回転駆動されるようになっている。そして、駆動シャフト6の長手方向の一方の端部には、両鍔付きのプーリ8が外嵌装着されていると共に、前記各駆動シャフト6の長手方向の他方の端部には、軸心方向に長いローラ9が外嵌装着されており、これら各プーリ8と各ローラ9とにより前記筒体1の両端部に装着した調心リング10,11(調心手段)を介して筒体1を回転駆動可能に支持している。
【0021】
前記調心リング10,11は、前記駆動シャフト6の各プーリ8と各ローラ9に支持される筒体1の軸線の左右・上下の位置を常に一定位置に保持するためのものであり、従って、筒体1の径が異なる場合にはその径に応じた調心リング10,11を取り付けて、筒体1の軸線が常に一定位置に保持されるようにしている。ジェットエンジンシャフトのような筒体1では、少なくとも長手方向2箇所に軸受を装着する部分を有しており、この軸受の取付部には塗装を施さないため、この軸受の取付部に前記調心リング10,11を装着するようにしている。又、一方の調心リング10が両鍔付きのプーリ8で支えられているのは、筒体1が軸線方向へ移動するのを抑えるためであり、他方の調心リング11が軸心方向に長いローラ9で支えられているのは、長さの異なる他の筒体1にも対応できるようにするためである。
【0022】
前記塗装装置を構成する内面塗装機3は、図1、図3に示すように、支持台2上に水平設置される筒体1の内部に対して挿脱し得るよう筒体1の軸線と平行に進退動するアーム12を備えており、このアーム12の先端に前記筒体1の内面を塗料を噴射するスプレーガン13が備えられている。前記アーム12は、前記筒体1の軸線と平行に設けたガイドレール14に沿って移動する移動台車15により水平状態に支持されており、前記ガイドレール14内に張設された図示しない無端状チェーンを駆動装置16で循環駆動することにより前記移動台車15がガイドレール14に沿い移動してアーム12が筒体1内に対して挿脱されるようになっている。前記アーム12は、前記筒体1の全長の1/2の長さを塗装できる長さ寸法に設定されており、又、アーム12を筒体1に挿脱する移動ストロークも筒体1の全長の略1/2の長さとなっている。
【0023】
又、前記塗装装置を構成する外面塗装機4は、図1、図3に示すように、旋回台部17と、該旋回台部17上に回動可能に備えた回動アーム18と、該回動アーム18の上端に起伏可能に備えた起伏アーム19と、該起伏アーム19の先端にスプレーガン20を備えた塗装ロボットの場合を示している。尚、外面塗装機4としては、例えば、筒体1の外面と間隔を隔ててスプレーガンを筒体1と平行に移動させることによって筒体1の外表面に塗料を噴射する塗装機を用いることもできる。
【0024】
又、前記塗装装置を構成する内面塗装機3と外面塗装機4には、図示しないが筒体1の内表面及び外表面に乾燥空気を吹き付けて塗装膜の乾燥を行う空気噴射手段を備えることができる。空気噴射手段は、前記スプレーガン13,20と一体に移動して乾燥を行うようになっていてもよく、或いはスプレーガン13,20とは別体に移動して乾燥を行うようになっていてもよい。
【0025】
図1、図3に示した塗装設備における支持台2は、水平旋回可能な旋回台21上に設けられている。旋回台21は、固定台22に設けたサーボモータからなる旋回駆動装置23により歯車24を介して回転するようになっており、旋回台21上に固定した支持台2を180゜の範囲で水平旋回し、これによって支持台2上に支持した筒体1を長手方向で反転できるようにしている。図1中、25,26は塗料供給装置、27は塗料供給装置25と内面塗装機3、塗料供給装置26と外面塗装機4、及び旋回台21と支持台2の夫々に信号を送って作動を制御する制御盤である。
【0026】
図1、図2に示すように、前記支持台2に支持される筒体1の一端延長上(内面塗装機3側)における防爆ブース5の天井部には、外部の空気を供給する給気口28を設けている。又、防爆ブース5における前記筒体1の他端延長上には吸引口29を備えた隔壁30を介して吸引室31が形成してあり、該吸引室31には吸引ファン32が設けられている。前記防爆ブース5の筒体1の一端延長上における天井には給気口28の他に、前記外面塗装機4と支持台2との間における前記隔壁30とは反対側の天井に給気口28'が設けてあり、更に、前記筒体1の他端延長上の隔壁30に設けた吸引口29の他に、吸引口29を挟む前後位置にも吸引口29'を設けている。尚、前記吸引口29,29'を有する隔壁30は、図2に示すように、下端から吸引口29,29'までの間は吸引室31側に近付くように傾いた下部傾斜壁となっている。又、傾斜壁となっている隔壁30の吸引口29,29'より上部は、鉛直方向或いは二点鎖線で示すように塗装装置側に傾いた上部壁30'となっている。そして、前記吸引ファン32を駆動すると、前記防爆ブース5内には吸引口29に向かうガス流れKが形成されるようになっている。
【0027】
前記給気口28には、空気の加熱と除湿を行う空気調節装置33が設けてあり、乾燥空気を防爆ブース5内に供給できるようにしている。
【0028】
更に、前記塗装設備においては、従来、支持台2上に対して筒体1を搬入・搬出する場合に用いられている防爆クレーンに代えて、図1に示すように、搬送台車36を備えている。搬送台車36は、防爆ブース5の外部に設けた作業室34と前記支持台2との間をドア35を通して走行して、支持台2上に対する筒体1の搬入・搬出を行えるようになっている。即ち、搬送台車36は、図4、図5に示すように、平面凹字状の張出脚37を備えて4点のキャスター38により走行が可能な走行台39を有しており、走行台39のポスト40には、駆動軸41に備えたウィンチハンドル42により張出脚37側に張出した状態で昇降する昇降台43を設けて該昇降台43に吊フック44が備えてあり、吊フック44を前記筒体1の調心リング10,11に引っかけることにより筒体1を吊り上げて昇降できるようになっている。又、前記駆動軸41のウィンチハンドル41を備えた側と反対側の端部には、空気圧で駆動軸41を回転させて筒体1を昇降させるようにしたエアーモータ45を備えている。前記走行台39は張出脚37を前記固定台22の左右側に嵌合するように挿入すると、前記吊フック41が前記支持台2の駆動シャフト6間の上部に位置して、駆動シャフト6上で筒体1を昇降できるようになっている。
【0029】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0030】
前記筒体1を塗装するには、図3に示すように、筒体1に装着した調心リング10が両鍔付きのプーリ8上に支持され、調心リング11がローラ9上に支持されるように筒体1を支持台2上に載置する。即ち、図1の作業室34において、図4、図5に示すように吊フック41で筒体1を吊上げた搬送台車36が、作業室34からドア35を通して防爆ブース5内に走行し、走行台39の張出脚37を前記固定台22の左右側に嵌合するように挿入した後、前記吊フック44で吊られた筒体1をウィンチハンドル42の操作で駆動シャフト6上に吊り降ろすことで筒体1は調心リング10,11を介して支持台2上に載置される。
【0031】
前記支持台2は駆動シャフト6が内面塗装機3のアーム12と平行な状態に保持されており、更に、支持台2上に載置した筒体1の長手方向中間部が旋回台21の旋回中心に略一致するように両鍔付きのプーリ8の位置が予め設定されている。
【0032】
吸引ファン32を駆動し、吸引口29,29'を介して防爆ブース5内を吸引することにより、給気口28から空気を供給した状態において、支持台2の回転駆動装置7を駆動して前記プーリ8、ローラ9、及び調心リング10,11を介して筒体1を所定の速度で回転し、内面塗装機3のアーム12の先端のスプレーガン13から塗料を噴射しながら駆動装置16を作動してスプレーガン13を所要の速度で筒体1の一端A側から筒体1内に挿入する。これにより、筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行い、スプレーガン13の挿入停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止する。上記したように筒体1は回転した状態で塗装が行われるため、筒体1の内周面には螺旋状の塗装膜が形成されるようになり、更に、筒体1が回転しているために塗布した塗料が液垂れする問題は生じない。
【0033】
筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行うと、アーム12を筒体1から抜き出した後、旋回駆動装置23を駆動して旋回台21及び支持台2を180゜水平旋回することにより、筒体1を長手方向で反転させる。
【0034】
続いて、前記と同様に、スプレーガン13から塗料を噴射しながら駆動装置16によりアーム12を所要の速度で筒体1の他端B側から筒体1内に挿入して、筒体1の長手方向中間位置における前記停止位置まで塗装を行い、挿入停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止する。これにより、筒体1は全内周面が塗装される。尚、上記塗装を停止する位置は塗り残しが無く且つ不要な重ね塗りが生じない繋ぎ部が形成されるように、スプレーガン13の移動の停止と塗料の噴射の停止を制御する。
【0035】
上記したように、筒体1内にスプレーガン13を挿入して内周面の塗装を行うとき、吸引ファン32の吸引によって防爆ブース5内に吸引口29,29'に向かうガス流れKが形成されているので、筒体1内に飛散した塗料が篭ることなく吸引口29に向かって流動するようになるため、筒体1の内周面へ余剰の塗料が付着するのが防止されて均一膜厚での塗装が可能になる。
【0036】
一方、外面塗装機4によって筒体1の外表面を塗装する際は、外面塗装機4に備えた起伏アーム19先端のスプレーガン20から塗料を噴射しながら、回転している筒体1の外表面に沿ってスプレーガン20を筒体1の一端Aから他端Bまで全長に亘って移動させることにより1回の操作で塗装することができる。しかし、長さが長い筒体1の場合には、外面塗装機4のスプレーガン20から塗料を噴射しながら、回転している筒体1の外表面に沿ってスプレーガン20を筒体1の一端A側から長手方向中間位置まで移動して塗装を行い、移動停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止する。続いて、旋回駆動装置23を駆動して旋回台21及び支持台2を180゜水平旋回することにより、図5に示すように筒体1を長手方向で反転させた後、再びスプレーガン20から塗料を噴射しながらスプレーガン20を筒体1の他端B側から外表面に沿って移動させて筒体1の長手方向中間位置まで塗装を行い、移動停止位置で筒体1を略一回転させた後塗料の噴射を停止することにより繋ぎ部を形成する。これにより、筒体1は全外表面が塗装される。
【0037】
上記筒体1の外表面を塗装する場合においても、吸引ファン32の吸引によって防爆ブース5内に吸引口29,29'に向かうガス流れKが形成されているので、飛散した塗料はガス流れKによって吸引口29,29'に吸引されるため、筒体1の外表面へ余剰の塗料が付着するのが防止される。この時、吸引口29,29'を有する隔壁30は、図2に示すように下端に対して上部が吸引室31側に近付くように傾いた下部傾斜壁を有しているので、防爆ブース5内に落下しようとする塗料の粒子は隔壁30の下部傾斜壁に沿って吸引口29へ向かい流動して吸引されるようになる。
【0038】
尚、前記外面塗装機4による筒体1の外表面の塗装は、前記内面塗装機3による内周面の塗装と別々に行うようにしてもよく、或いは内面塗装機3による内周面の塗装と同時に行うようにしてもよい。
【0039】
前記したように、筒体1を長手方向中間位置まで塗装した後、筒体を長手方向に反転させて塗装するようにすると、スプレーガン13,20の移動距離を短くすることができ、よって、内面塗装機3及び外面塗装機4を小型化することができる。
【0040】
上記したように、塗装を行った後に塗装膜の乾燥を行うには、吸引ファン32を駆動して吸引口29,29'を介し防爆ブース5内を吸引すると共に、空気調節装置33により加熱と除湿を行った乾燥空気を給気口28から防爆ブース5内に供給する。そしてこの状態において、内面塗装機3及び外面塗装機4に備えた図示しない空気噴射手段によって筒体1の内表面及び外表面に乾燥空気を吹き付けることにより塗装膜の乾燥を行うが、この時、前記したように防爆ブース5内には吸引口29,29'に向かう乾燥空気の流れKが形成されているので、特に筒体1内を乾燥した後の空気も吸引口29,29'に向かって流動するようになり、よって、筒体1の内周面及び外周面の塗装膜の乾燥を効果的に行わせることができる。
【0041】
又、前記したように筒体1の内表面に及び外表面に1回目の塗装を行った後に、同様の操作を複数回行って重ね塗りすることができ、この場合にも、塗装を行った後にその都度前記と同様にして乾燥を行うことができる。
【0042】
塗装及び乾燥が終了すると、前記した搬送台車36を支持台2の位置に移動して、支持台2の筒体1を搬送台車36により吊上げ、搬送台車36をドア35を通して作業室34内に走行させ、筒体1を搬送台車36から吊降ろした後、塗装を行う新しい筒体1を搬送台車36に吊り上げるようにする。ここで、支持台2上に対して筒体1の搬入・搬出を行うようにした搬送台車36を備えたので、従来このような場合に用いられている防爆クレーンのように回転作動範囲及び吊り上げ高さ範囲を大きくとる必要がないため、搬送台車36は小型化でき、しかも塗装装置による作業中は防爆ブース5の外部に退去できるので、防爆ブース5を小型化することができ、よって吸引ファン32を小型にしても防爆ブース5内において吸引口29,29'に向かうガス流れKを効果的に形成できるようになる。
【0043】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものできなく、ジェットエンジンシャフトの以外の種々の筒体の塗装にも適用できること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の塗装設備の全体を示す平面図である。
【図2】図1の塗装設備をII−II方向から見た正面図である。
【図3】防爆ブース内に設置される塗装装置の斜視図である。
【図4】搬送台車の一例を示す正面図である。
【図5】図4の搬送台車の平面図である。
【図6】ジェットエンジンシャフトの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 筒体
2 支持台
3 内面塗装機(塗装装置)
4 外面塗装機(塗装装置)
5 防爆ブース
12 アーム
13 スプレーガン
20 スプレーガン
28 給気口
28' 給気口
29 吸引口
29,29' 吸引口
30 隔壁(下部傾斜壁)
31 吸引室
32 吸引ファン
33 空気調節装置
36 搬送台車
A 一端
B 他端
K ガス流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防爆ブース内の支持台上に水平に支持した筒体を塗装装置により塗装する筒体の塗装設備であって、
前記筒体の一端延長上における防爆ブースの天井部に外部の空気を供給する給気口を設け、
防爆ブースにおける前記筒体の他端延長上に吸引口を備えた隔壁を介して吸引室を形成すると共に、該吸引室に吸引ファンを設け、該吸引ファンの駆動により前記防爆ブース内に前記吸引口に向かうガス流れを形成するようにした
ことを特徴とする筒体の塗装設備。
【請求項2】
給気口に、空気の加熱と除湿を行う空気調節装置を備えている請求項1に記載の筒体の塗装設備。
【請求項3】
吸引口を有する隔壁は、下端に対して上部が吸引室に近付くように傾いた下部傾斜壁を有する請求項1又は2に記載の筒体の塗装設備。
【請求項4】
塗装装置は、乾燥空気を筒体表面に吹き付ける空気噴射手段を有する請求項1〜3のいずれか1つに記載の筒体の塗装設備。
【請求項5】
防爆ブースの外部と前記支持台との間を走行して支持台上に対する筒体の搬入・搬出を行う搬送台車を有する請求項1〜4のいずれか1つに記載の筒体の塗装設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−5575(P2010−5575A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169789(P2008−169789)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】