説明

筒型防振装置およびそれに用いられるストッパゴム

【課題】部品点数および製造コストが増加することなく、内筒部材またはブラケットに取り付けられるストッパゴムと外筒部材に取り付けられるストッパゴムとを一体成形できる筒型防振装置を提供する。
【解決手段】ストッパゴム20は、外筒部材12の筒状部121の軸方向端部とブラケット30との間であって筒状部121の軸方向端部から軸方向に離隔するように、内筒部材11またはブラケット30に取り付けられる第一ストッパゴム21と、外筒部材12とブラケット30との間であってブラケット30から離隔するように、外筒部材12に取り付けられる第二ストッパゴム22と、第一ストッパゴム21および第二ストッパゴム22に一体成形により連結され、第一ストッパゴム21への連結位置と第二ストッパゴム22への連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能であり、第一ストッパゴム21および第二ストッパゴム22の伸縮率より大きな伸縮率を有する伸縮部材23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型防振装置およびそれに用いられるストッパゴムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の筒型防振装置として、例えば、特許第2659678号公報(特許文献1)に記載されたものがある。特許文献1に記載の筒型防振装置は、内筒部材と、外筒部材と、それらを弾性連結するゴム弾性体とを備えている。ここで、内筒部材は、ブラケットを介して、エンジンなどに取り付けられている。このブラケットは、一対の対向片を有するコの字型形状からなり、それぞれの対向片を内筒部材の軸方向両端に取り付けている。さらに、内筒部材の軸方向端面とブラケットの一対の対向片の内側との間に、ストッパゴムを配置している。このストッパゴムは、外筒部材の軸方向端部から軸方向に離隔して取り付けられており、内筒部材と外筒部材とが軸方向に相対変位した場合に、外筒部材がストッパゴムに当接することで、軸方向のストッパとしての機能を発揮する。
【特許文献1】特許第2659678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、特許文献1に記載の筒型防振装置に用いられるストッパゴムは、ブラケットの対向片の内側に取り付け、外筒部材の軸方向端部に当接するようにしている。このストッパゴムに加えて、さらに、外筒部材に別のストッパゴムを取り付け、ブラケットに当接することで、ストッパとしての機能をより発揮することが検討されている。
【0004】
しかし、一方のストッパゴムは、内筒部材またはブラケットに取り付けられ、他方のストッパゴムは、外筒部材に取り付けられるものである。そして、内筒部材またはブラケットと、外筒部材とは、相対的に移動可能に構成されている。つまり、一方のストッパゴムと他方のストッパゴムとが、それぞれ別体に形成しなければならない。そのため、部品点数が増加するとともに、製造コストが増加するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、部品点数および製造コストが増加することなく、内筒部材またはブラケットに取り付けられるストッパゴムと外筒部材に取り付けられるストッパゴムとを一体成形できる筒型防振装置およびそれに用いられるストッパゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<筒型防振装置>
本発明の筒型防振装置は、内筒部材と、筒状からなり内筒部材の径方向外方に離隔して同軸状にまたは偏心して配置される筒状部を備え、振動源側部材および振動受け側部材のどちらか一方の部材に取り付けられる外筒部材と、内筒部材の外周面と外筒部材の筒状部の内周面とを弾性連結するゴム弾性体と、内筒部材の軸方向端部と振動源側部材および振動受け側部材のどちらか他方の部材とに取り付けられ、外筒部材の筒状部に対して軸方向に係合するブラケットと、筒状部の軸方向端部とブラケットとの間であって筒状部の軸方向端部から軸方向に離隔するように、内筒部材またはブラケットに取り付けられる第一ストッパゴムと、外筒部材とブラケットとの間であってブラケットから離隔するように、外筒部材に取り付けられる第二ストッパゴムと、第一ストッパゴムおよび第二ストッパゴムに一体成形により連結され、第一ストッパゴムへの連結位置と第二ストッパゴムへの連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能であり、第一ストッパゴムおよび第二ストッパゴムの伸縮率より大きな伸縮率を有する伸縮部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように、第一ストッパゴムは、内筒部材またはブラケットに取り付けられ、第二ストッパゴムは、外筒部材に取り付けられる。そして、内筒部材およびブラケットと、外筒部材とは、相対的に移動可能である。従って、第一ストッパゴムと第二ストッパゴムは、内筒部材およびブラケットと外筒部材とが相対的に移動することに伴って、相対的に移動する。そして、このように相対的に移動する第一ストッパゴムと第二ストッパゴムとが、伸縮部材と一体成形により連結されている。この伸縮部材は、第一ストッパゴムとの連結位置と第二ストッパゴムとの連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能である。従って、第一ストッパゴムと第二ストッパゴムとが相対的に移動した場合に、伸縮部材が伸縮することで、第一ストッパゴムと伸縮部材との連結状態を維持するとともに、第二ストッパゴムと伸縮部材との連結状態を維持することができる。このように、伸縮部材により第一ストッパゴムと第二ストッパゴムとを連結することで、これらを一体成形することができる。つまり、部品点数および製造コストを増加することなく、2種のストッパゴムを一体成形できる。
【0008】
ここで、本発明の筒型防振装置において、第一ストッパゴムは、内筒部材と筒状部とが軸方向に相対移動する場合に筒状部の軸方向端部に当接し、第二ストッパゴムは、内筒部材と筒状部とが軸方向と異なる方向に相対移動する場合にブラケットに当接するようにしてもよい。
【0009】
これにより、異なる複数方向のうち一方に対して第一ストッパゴムがストッパとしての機能を発揮でき、他方に対して第二ストッパゴムがストッパとしての機能を発揮できる。そして、このように異なる複数方向に対してストッパとしての機能を発揮するストッパゴムを一体成形できる。
【0010】
特に、この場合、第二ストッパゴムは、内筒部材と筒状部とが径方向に相対移動する場合にブラケットに当接するようにするとよい。つまり、直交2軸方向に対して、ストッパとしての機能を発揮できる。
【0011】
また、本発明の筒型防振装置において、ブラケットは、一対の対向片を備えるコの字型形状からなり、一対の対向片は内筒部材の軸方向両端部のそれぞれに取り付けられ、第一ストッパゴムは、筒状部の軸方向一端部とブラケットの一方の対向片との間、および、筒状部の軸方向他端部とブラケットの他方の対向片との間のそれぞれに配置されるとよい。
【0012】
これにより、第一ストッパゴムのうち、筒状部の軸方向一端部とブラケットの一方の対向片との間に配置されている部分により、外筒部材の筒状部が内筒部材に対して一方の軸方向に移動する場合に、ストッパとしての機能を発揮する。さらに、第一ストッパゴムのうち、筒状部の軸方向他端部とブラケットの他方の対向片との間に配置されている部分により、外筒部材の筒状部が内筒部材に対して他方の軸方向に移動する場合に、ストッパとしての機能を発揮する。つまり、内筒部材と外筒部材の筒状部が軸方向の両方向に相対移動することに対して、第一ストッパゴムがストッパとしての機能を発揮できる。
【0013】
また、本発明の筒型防振装置において、伸縮部材は、蛇腹状からなるとよい。蛇腹状とすることで、その肉厚をほぼ同一に形成することができることに加えて、伸長変形した場合に大きな引張応力が生じない。従って、耐久性を高くすることができる。なお、伸縮部材は、蛇腹状の他に、例えば、第一ストッパゴムおよび第二ストッパゴムに比べて肉厚を薄くすることや、貫通孔を形成することなどが可能である。ただし、耐久性の観点から、上述した蛇腹状であるのが良い。
【0014】
また、本発明の筒型防振装置において、第二ストッパゴムは、外筒部材に対して相対移動を規制するように取り付けられているとよい。これにより、安定して、ストッパとしての機能を発揮できる。
【0015】
<筒型防振装置に用いられるストッパゴム>
ここで、上述においては、本発明を筒型防振装置として捉えた場合について説明した。この他に、本発明は、筒型防振装置に用いられるストッパゴムとして捉えることもできる。
【0016】
すなわち、筒型防振装置に用いられるストッパゴムは、内筒部材と、筒状からなり内筒部材の径方向外方に離隔して同軸状にまたは偏心して配置される筒状部を備え、振動源側部材および振動受け側部材のどちらか一方の部材に取り付けられる外筒部材と、内筒部材の外周面と外筒部材の筒状部の内周面とを弾性連結するゴム弾性体と、内筒部材の軸方向端部と振動源側部材および振動受け側部材のどちらか他方の部材とに取り付けられ、外筒部材の筒状部に対して軸方向に係合するブラケットと、を備える筒型防振装置に用いられるストッパゴムであって、筒状部の軸方向端部とブラケットとの間であって筒状部の軸方向端部から軸方向に離隔するように、内筒部材またはブラケットに取り付けられる第一ストッパゴムと、外筒部材とブラケットとの間であってブラケットから離隔するように、外筒部材に取り付けられる第二ストッパゴムと、第一ストッパゴムおよび第二ストッパゴムに一体成形により連結され、第一ストッパゴムへの連結位置と第二ストッパゴムへの連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能であり、第一ストッパゴムおよび第二ストッパゴムの伸縮率より大きな伸縮率を有する伸縮部材と、を備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、部品点数および製造コストを増加することなく、2種のストッパゴムを一体成形できる。また、本発明の筒型防振装置に用いられるストッパゴムにおいて、上述した本発明の筒型防振装置についての他の特徴を同様に適用することができる。この場合、上記同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態の筒型防振装置1は、車両のエンジンマウントに適用した場合について説明する。つまり、筒型防振装置1が取り付けられる振動源側部材がエンジンであり、振動受け側部材がエンジンフレームである。
【0019】
<第一実施形態>
(筒型防振装置1の構成)
筒型防振装置1の構成について説明する。ここで、まずは、筒型防振装置1を構成する筒型防振装置本体10、ストッパゴム20、および、ブラケット30のそれぞれの構成について説明した後に、これらを組み付けた筒型防振装置1について説明する。
【0020】
(筒型防振装置本体10の構成)
筒型防振装置本体部10の構成について図1および図2を参照して説明する。図1は、筒型防振装置本体10の正面図である。図2は、図1の右側面図、すなわち内筒部材11の軸方向から見た図である。ここで、図1および図2における上下方向は、車両上下方向に相当する。
【0021】
図1および図2に示すように、筒型防振装置本体10は、内筒部材11と、外筒部材12と、ゴム弾性体13、13と、位置決め突起14、15とから構成される。内筒部材11は、金属からなり、円筒状に形成されている。そして、この内筒部材11の内周面のうち軸方向の両端部には、雌ねじが形成されている。これらの雌ねじは、後述するストッパゴム20の第一ストッパゴム21およびブラケット30をボルト40により固定するためのものである。
【0022】
外筒部材12は、筒状部121と、フランジ部122とから構成される。筒状部121は、金属からなり、内筒部材11の外径よりも大きな内径を有する円筒状に形成されている。さらに、筒状部121の軸方向長さは、内筒部材11の軸方向長さより僅かに小さく形成されている。そして、この筒状部121は、その軸方向が内筒部材11の軸方向に平行となるように、且つ、内筒部材11に対して径方向外方に離隔し、内筒部材11の軸方向の中央部に配置されている。ここで、筒型防振装置本体10の単体の状態、すなわち、筒型防振装置1をエンジンおよびエンジンフレームに取り付ける前の状態においては、筒状部121の軸中心は、内筒部材11の軸中心に対して車両上方に大きくずれている。つまり、この状態においては、筒状部121は、内筒部材11に対して大きく偏心して配置されている。もちろん、筒状部121は、内筒部材11に対して同軸状に配置されていてもよいし、その偏心量をより小さくしてもよい。
【0023】
フランジ部122は、筒状部121に溶接により固定され、エンジンフレーム(図示せず)に取り付けられる。このフランジ部122は、金属板を図2に示すようなコの字型形状に屈曲形成されている。具体的には、フランジ部122は、コの字連結部122aと、一対の対向片122b、122cとから構成される。
【0024】
コの字連結部122aの図2の左右幅は、筒状部121の外径より僅かに小さくなるように形成されている。このコの字連結部122aは、車両下方側に位置し、3個の円形の貫通孔122dが形成されている。これらの貫通孔122dは、エンジンフレームに取り付けるためのボルト(図示せず)を挿通する。さらに、フランジ部122の一対の対向片122b、122cは、その開口端側が、コの字連結部122a側よりも、図1における左右幅が狭くされている。これら対向片122b、122cの車両上方における図1の左右幅は、筒状部121の軸方向長さとほぼ同一にされている。そして、対向片122b、122cの対向方向が筒状部121の軸方向に直交する方向となるように、対向片122b、122cの上端が、筒状部121の外周面に溶接されている。また、一方の対向片122bには、円形の貫通孔122eが形成されている。この貫通孔122eには、後述する第二ストッパゴム22の係止部223が挿入される。
【0025】
ゴム弾性体13、13は、内筒部材11の外周面と外筒部材12の筒状部121の内周面とを弾性連結する。具体的には、ゴム弾性体13、13は、内筒部材11の外周面のうち図1の左右端面と、筒状部121の内周面のうち車両上下方向の中心から僅かに下側の左右両側部分とを、それぞれ加硫接着により弾性連結する。ここで、このゴム弾性体13は、例えば、NRなどの従来から防振ゴムとして一般に使用されるゴム材料からなる。
【0026】
位置決め突起14、15は、内筒部材11の外周面のうち軸方向両端部に形成されている。具体的には、図1の右側端部の位置決め突起14は、図1の下側に突出する部分と、図1の奥側に突出する部分の、2箇所形成されている。また、図1の左側端部の位置決め突起15は、図1の下側に突出する部分と、図1の手前側に突出する部分の、2箇所形成されている。そして、位置決め突起14、15は、外筒部材12の軸方向端面より軸方向外方に形成されている。さらに、位置決め突起14、15は、ゴム弾性体13と一体成形されている。
【0027】
(ストッパゴム20の成形時における構成)
次に、ストッパゴム20の成形時における構成について、図3〜図5を参照して説明する。図3は、成形時におけるストッパゴム20の正面図である。図4は、図3のA−A断面図である。図5は、図3のB−B部分断面図である。なお、ストッパゴム20を筒型防振装置本体10への組み付け状態については、後述する。
【0028】
ストッパゴム20は、図3〜図5に示すように、第一ストッパゴム21と、第二ストッパゴム22と、伸縮部材23とから構成され、これらは一体成形される。そして、ストッパゴム20は、全体として、ほぼ平板状に形成される。
【0029】
第一ストッパゴム21は、一対の本体部211、212と、一対の本体部211、212を連結する連結部213とから構成される。それぞれの本体部211、212は、扇形状に形成されている。この本体部211、212は、扇形状の外周部分である円弧状の厚肉部211a、212aと、その中央部分である薄肉部211b、212bとからなる。この厚肉部211a、212aの外径は、外筒部材12の筒状部121の外径より大きく形成されている。厚肉部211a、212aの内径は、外筒部材12の筒状部121の内径より小さく形成されている。また、薄肉部211b、212bの中央には、円形孔211c、212cが形成されている。この円形孔211c、212cは、それぞれ、2箇所の凹部211d、212dが形成されている。そして、円形孔211c、212cには、内筒部材11が挿通される。さらに、凹部211d、212dには、位置決め突起14、15が係合する。
【0030】
連結部213は、ほぼ長方形状に形成されている。この連結部213の長手方向長さは、外筒部材12の筒状部121の軸方向長さより僅かに長くされている。そして、連結部213は、長手方向の両端部が、それぞれ、一方の本体部211の厚肉部211aの外周縁と他方の本体部212の厚肉部212aの外周縁に連結されている。具体的には、一方の本体部211の厚肉部211aの開口側と他方の本体部212の厚肉部212aの開口側とが反対側を向くように、連結部213は厚肉部211a、212aに連結されている。また、この連結部213の幅(図3の上下方向幅)は、本体部211、212の外径より十分に小さくされている。さらに、連結部213の長手方向の両端部には、図5に示すように、長手方向に直交する方向へ凹溝213a、213bが形成され、それぞれの凹溝213a、213bの反対面が突出するように形成されている。これらの凹溝213a、213bは、連結部213に対してそれぞれの本体部211、212が屈曲し易くするためのものである。
【0031】
第二ストッパゴム22は、板状のベース部221と、円形厚肉部222と、係止部223とから構成される。ベース部221は、U字型の平板からなる。このベース部221は、フランジ部122に形成されている円形の貫通孔122eを覆蓋可能な大きさからなる。円形厚肉部222は、ベース部221の肉厚よりも十分に厚肉からなり、円形底面がベース部221の一方面に結合されている。この円形厚肉部222は、ベース部221側から先端側に向かって、僅かながら縮径している。つまり、円形厚肉部222を軸方向に切断した断面は、台形状をなしている。係止部223は、ベース部221の他方面から茸状に突出するように形成されている。この係止部223の基部の外径は、フランジ部122に形成されている円形の貫通孔122eの内径と同一若しくは僅かに小さくされている。また、係止部223の先端部の外径は、フランジ部122に形成されている円形の貫通孔122eの内径より大きくされている。
【0032】
伸縮部材23は、平板を蛇腹状に形成した形状からなり、第一ストッパゴム21および第二ストッパゴム22に一体成形により連結されている。伸縮部材23の肉厚は、第一ストッパゴム21の連結部213および第二ストッパゴム22のベース部211の肉厚とほぼ同一である。伸縮部材23の幅は、ベース部221と同一である。また、この伸縮部材23の蛇腹状の一端側が、第一ストッパゴム21の連結部213の長手方向中央部に、同一平面状となるように連結されている。一方、伸縮部材23の蛇腹状の他端側が、第二ストッパゴム22のベース部221に、同一平面状となるように連結されている。つまり、伸縮部材23は、第一ストッパゴム21への連結位置と第二ストッパゴム22への連結位置とを結ぶ方向(図3の上下方向)に伸縮可能となる。さらに、伸縮部材23は蛇腹状からなるため、第一ストッパゴム21および第二ストッパゴム22の伸縮率より十分に大きな伸縮率を有する。
【0033】
(ブラケット30の構成)
次に、ブラケット30の構成について図6〜図8を参照して説明する。図6は、ブラケット30の正面図である。図7は、図6の平面図である。図8は、図6の右側面図である。
【0034】
図6〜図8に示すように、ブラケット30は、上述した内筒部材11等に比べて厚肉の金属からなり、コの字型状に形成されている。このブラケット30のコの字型連結部31は、細長状直方体に形成されており、3個の円形の貫通孔31aが形成されている。これらの貫通孔31aは、エンジンに取り付けるためのボルト(図示せず)を挿通する。また、ブラケット30のコの字型の一対の対向片32、33は、図8に示すように、湾曲した弧状からなる。この一対の対向片32、33の対向面間距離は、外筒部材12の筒状部121の軸方向長さに第一ストッパゴム21の厚肉部211a、212aの両肉厚を加算した長さより、僅かに長くされている。また、一対の対向片32、33の対向面間距離は、内筒部材11の軸方向長さより短くされている。さらに、一対の対向片32、33の一端側(図8の左下側)が、コの字型連結部31に結合されている。また、一対の対向片32、33の他端側(図8の右上側)には、両者が対向する方向に貫通する貫通孔32a、33aが形成されている。この貫通孔32a、33aは、他方の対向片32、33側が小径に形成され、反対側が大径に形成されている。そして、この貫通孔32a、33aの小径部分には、内筒部材11が挿通され、大径部分には、ブラケット30と内筒部材11とを結合するためのボルト40の頭部座面が係合する。
【0035】
(筒型防振装置1の各部品の組み付け状態)
次に、筒型防振装置1の各部品の組み付け状態について図9および図10を参照して説明する。図9は、筒型防振装置1の正面図である。図10は、図9の右側面図である。
【0036】
まず、ストッパゴム20の第一ストッパゴム21を筒型防振装置本体10に取り付ける。具体的には、第一ストッパゴム21のうち一対の本体部211、212を、連結部213に対して約90度屈曲させておく。このとき、凹溝213a、213bが屈曲の内側に位置するようにする。このように、凹溝213a、213bが形成されているために、非常に容易に、本体部211、212を連結部213に対して屈曲できる。
【0037】
そして、一方の本体部211の凹部211dが位置決め突起14に係合するように、本体部211の円形孔211cを内筒部材11の一方端部を挿通する。さらに、他方の本体部212の凹部212dが位置決め突起15に係合するように、本体部212の円形孔212cを内筒部材11の他方端部を挿通する。つまり、第一ストッパゴム21は、コの字型状にして、内筒部材11の両端に係止する。ここで、連結部213の長手方向長さは、外筒部材12の筒状部121の軸方向長さより僅かに長くされているため、屈曲された一対の本体部211、212の厚肉部211a、212aの対向面は、外筒部材12の筒状部121の端面から僅かに離隔している。
【0038】
続いて、第二ストッパゴム22を筒型防振装置本体10に取り付ける。具体的には、第二ストッパゴム22の係止部223を、フランジ部122に形成されている円形の貫通孔122eに外側から挿入する。これにより、第二ストッパゴム22のベース部221と係止部223の先端部とにより、フランジ部122の一方の対向片122bを挟持することになる。従って、第二ストッパゴム22は、フランジ部122の一方の対向片122bに固定される。さらに、係止部223の基部の外径は、フランジ部122に形成されている円形の貫通孔122eの内径と同一若しくは僅かに小さくされているため、第二ストッパゴム22は、フランジ部122に対して相対移動を規制するように固定されている。
【0039】
続いて、ブラケット30を内筒部材11に取り付ける。具体的には、ブラケット30の一対の対向片32、33に形成されている貫通孔32a、33aの小径部分に、内筒部材11の軸方向両端部をそれぞれ挿入する。このとき、ブラケット30のコの字型連結部31が、第二ストッパゴム22の円形厚肉部222の頂面に対して離隔して対向するように位置させる。その状態において、貫通孔32a、33aに軸方向外方から内筒部材11の内部に向かって、ボルト40を挿入して、ボルト40の頭部座面が貫通孔32a、33aの大径部分に当接する状態になるまで、内筒部材11に形成された雌ねじと螺合させる。このようにして、ブラケット30の一対の対向片32、33は、内筒部材11の軸方向両端部のそれぞれに取り付けられる。
【0040】
最後に、ブラケット30をエンジンに取り付け、外筒部材12のフランジ部121をエンジンフレームに取り付ける。このとき、エンジンの荷重により、内筒部材11およびブラケット30が外筒部材12に対して相対的に下方(図9および図10の下方)へ変位する。つまり、内筒部材11の軸中心と外筒部材12の軸中心とが、組み付け前の状態に比べて近接する状態となる。つまり、組み付け後の状態においては、筒状部121は、内筒部材11に対して僅かに偏心して配置されている。もちろん、組み付け後の状態において、筒状部121は、内筒部材11に対して同軸状に配置されていてもよい。
【0041】
このように、筒型防振装置1が組み付けられた状態において、以下のようになる。まず、第一ストッパゴム21の一方の本体部211は、外筒部材12の筒状部121の軸方向一端部とブラケット30の一方の対向片32との間に配置されている。また、エンジンの荷重により内筒部材11が外筒部材12に対して下方へ変位することで、一方の本体部211の厚肉部211aは、筒状部121の軸方向一端部に対向するように位置する。そして、当該厚肉部211aが、筒状部121の軸方向一端部から軸方向に離隔している。
【0042】
また、第一ストッパゴム21の他方の本体部212は、外筒部材12の筒状部121の軸方向他端部とブラケット30の他方の対向片33との間に配置されている。また、エンジンの荷重により内筒部材11が外筒部材12に対して下方へ変位することで、他方の本体部212の厚肉部212aは、筒状部121の軸方向他端部に対向するように位置する。そして、当該厚肉部212aが、筒状部121の軸方向他端部から軸方向に離隔している。
【0043】
従って、一対の本体部211、212のそれぞれは、内筒部材11と筒状部121とが軸方向に相対移動する場合に、筒状部121の軸方向両端部に当接することで、当該軸方向のストッパとしての機能を発揮する。
【0044】
また、第二ストッパゴム22の円形厚肉部222は、外筒部材12のフランジ部122の一方の対向片122bと、ブラケット30のコの字型連結部31との間に配置されている。そして、第二ストッパゴム22の円形厚肉部222は、ブラケット30のコの字型連結部31から離隔している。この円形厚肉部222とブラケット30のコの字型連結部31との離隔方向は、筒状部121の軸方向に直交する方向である。従って、円形厚肉部222は、内筒部材11と筒状部121とが径方向に相対移動する場合に、ブラケット30のコの字型連結部31に当接することで、当該径方向のストッパとしての機能を発揮する。
【0045】
さらに、第一ストッパゴム21は内筒部材11またはブラケット30に取り付けられ、第二ストッパゴム22は外筒部材12に取り付けられている。つまり、第一ストッパゴム21と第二ストッパゴム22とが取り付けられる対象部材は、相対移動する部材である。そして、このように相対移動する第一ストッパゴム21と第二ストッパゴム22とが、伸縮部材23と一体成形により連結されている。この伸縮部材23は、第一ストッパゴム21との連結位置と第二ストッパゴム22との連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能である。従って、第一ストッパゴム21と第二ストッパゴム22とが相対的に移動した場合に、伸縮部材23が伸縮することで、第一ストッパゴム21と伸縮部材23との連結状態を維持するとともに、第二ストッパゴム22と伸縮部材23との連結状態を維持することができる。このように、伸縮部材23により第一ストッパゴム21と第二ストッパゴム22とを連結することで、ストッパゴム20を一体成形することができる。つまり、部品点数および製造コストを増加することなく、2種のストッパとしての機能を発揮するストッパゴム20を一体成形できる。
【0046】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、外筒部材12を構成する筒状部121とフランジ部122とは、樹脂により一体成形されるようにしてもよい。これにより、部品点数を削減できるとともに、軽量化を図ることができる。また、エンジンマウントの他、種々の防振装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】筒型防振装置本体10の正面図である。
【図2】の右側面図、すなわち内筒部材11の軸方向から見た図である。
【図3】成形時におけるストッパゴム20の正面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B部分断面図である。
【図6】ブラケット30の正面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】図6の右側面図である。
【図9】筒型防振装置1の正面図である。
【図10】図9の右側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1:筒型防振装置、
10:筒型防振装置本体、
11:内筒部材、
12:外筒部材、 121:筒状部、 122:フランジ部、
122a:コの字連結部、 122b、122c:一対の対向片、
122d:エンジンフレーム取付用の貫通孔、
122e:第二ストッパゴム取付用の貫通孔、
13:ゴム弾性体、 14、15:位置決め突起、
20:ストッパゴム、
21:第一ストッパゴム、
211、212:一対の本体部、
211a、212a:厚肉部、 211b、212b:薄肉部、
211c、212c:円形孔、 211d、212d:凹部、
213:連結部、 213a、213b:凹溝、
22:第二ストッパゴム、
221:ベース部、 222:円形厚肉部、 223:係止部、 23:伸縮部材、
30:ブラケット、
31:コの字型連結部、 31a:エンジン取付用の貫通孔、
32、33:一対の対向片、 32a、33a:内筒部材取付用の貫通孔、
40:ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒部材と、
筒状からなり前記内筒部材の径方向外方に離隔して同軸状にまたは偏心して配置される筒状部を備え、振動源側部材および振動受け側部材のどちらか一方の部材に取り付けられる外筒部材と、
前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の前記筒状部の内周面とを弾性連結するゴム弾性体と、
前記内筒部材の軸方向端部と前記振動源側部材および前記振動受け側部材のどちらか他方の部材とに取り付けられ、前記外筒部材の前記筒状部に対して軸方向に係合するブラケットと、
前記筒状部の軸方向端部と前記ブラケットとの間であって前記筒状部の軸方向端部から軸方向に離隔するように、前記内筒部材または前記ブラケットに取り付けられる第一ストッパゴムと、
前記外筒部材と前記ブラケットとの間であって前記ブラケットから離隔するように、前記外筒部材に取り付けられる第二ストッパゴムと、
前記第一ストッパゴムおよび前記第二ストッパゴムに一体成形により連結され、前記第一ストッパゴムへの連結位置と前記第二ストッパゴムへの連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能であり、前記第一ストッパゴムおよび前記第二ストッパゴムの伸縮率より大きな伸縮率を有する伸縮部材と、
を備えることを特徴とする筒型防振装置。
【請求項2】
前記第一ストッパゴムは、前記内筒部材と前記筒状部とが軸方向に相対移動する場合に前記筒状部の軸方向端部に当接し、
前記第二ストッパゴムは、前記内筒部材と前記筒状部とが前記軸方向と異なる方向に相対移動する場合に前記ブラケットに当接する請求項1に記載の筒型防振装置。
【請求項3】
前記第二ストッパゴムは、前記内筒部材と前記筒状部とが径方向に相対移動する場合に前記ブラケットに当接する請求項2に記載の筒型防振装置。
【請求項4】
前記ブラケットは、一対の対向片を備えるコの字型形状からなり、前記一対の対向片は前記内筒部材の軸方向両端部のそれぞれに取り付けられ、
前記第一ストッパゴムは、前記筒状部の軸方向一端部と前記ブラケットの一方の前記対向片との間、および、前記筒状部の軸方向他端部と前記ブラケットの他方の前記対向片との間のそれぞれに配置される請求項1〜3の何れか一項に記載の筒型防振装置。
【請求項5】
前記伸縮部材は、蛇腹状からなる請求項1〜4の何れか一項に記載の筒型防振装置。
【請求項6】
前記第二ストッパゴムは、前記外筒部材に対して相対移動を規制するように取り付けられている請求項1〜5の何れか一項に記載の筒型防振装置。
【請求項7】
内筒部材と、
筒状からなり前記内筒部材の径方向外方に離隔して同軸状にまたは偏心して配置される筒状部を備え、振動源側部材および振動受け側部材のどちらか一方の部材に取り付けられる外筒部材と、
前記内筒部材の外周面と前記外筒部材の前記筒状部の内周面とを弾性連結するゴム弾性体と、
前記内筒部材の軸方向端部と前記振動源側部材および前記振動受け側部材のどちらか他方の部材とに取り付けられ、前記外筒部材の前記筒状部に対して軸方向に係合するブラケットと、
を備える筒型防振装置に用いられるストッパゴムであって、
前記筒状部の軸方向端部と前記ブラケットとの間であって前記筒状部の軸方向端部から軸方向に離隔するように、前記内筒部材または前記ブラケットに取り付けられる第一ストッパゴムと、
前記外筒部材と前記ブラケットとの間であって前記ブラケットから離隔するように、前記外筒部材に取り付けられる第二ストッパゴムと、
前記第一ストッパゴムおよび前記第二ストッパゴムに一体成形により連結され、前記第一ストッパゴムへの連結位置と前記第二ストッパゴムへの連結位置とを結ぶ方向に伸縮可能であり、前記第一ストッパゴムおよび前記第二ストッパゴムの伸縮率より大きな伸縮率を有する伸縮部材と、
を備えることを特徴とする筒型防振装置に用いられるストッパゴム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−248947(P2008−248947A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88455(P2007−88455)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】