説明

筒状部材の製造方法

【課題】隣り合う屈曲部の間からコア金型を外側に引き抜くことができないために一体成形が不可能であった任意の形状の筒状部材を確実且つ容易に製造することを可能にする筒状部材の製造方法を提供する。
【解決手段】内型と外型を型閉して形成した射出空間に溶融材を射出して筒状部材Aを成形する筒状部材の製造方法において、内型の少なくとも一部として筒状のコア部材8を用い、このコア部材8の内孔が筒状部材Aの内孔10を形成する所定位置にコア部材8を配置して型閉し、射出空間に射出した溶融材6を冷却し、内型と外型を型開する際にコア部材8を残し、冷却固化した溶融材6と一体化したコア部材8を構成要素にして筒状部材Aを製造するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば管継手などの筒状部材を射出成形によって製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂製の管継手などの筒状部材は、キャビティ金型(外型)の内孔にコア金型(内型)を挿入配置して型閉し、キャビティ金型の内面とコア金型の外面の間に形成した射出空間に溶融樹脂を射出して製造される(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−205680号公報
【特許文献2】特開2001−219453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、従来、管継手などの筒状部材を射出成形によって製造する場合には、射出空間に射出した溶融樹脂を冷却し、金型を型開(離型)する際に、成形品の筒状部材の内孔からコア金型を外側に引き抜くことが必要になる。
【0005】
これに対し、図7(a)、図7(b)、図8に示すような少なくとも2箇所で屈曲する筒状部材1を射出成形によって製造しようとした場合、軸線O1方向に隣り合う屈曲部2、3の間からコア金型を外側に引き抜くことができなくなるため、射出成形で一体成形して製造することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供している。
【0007】
請求項1記載の筒状部材の製造方法は、内型と外型を型閉して形成した射出空間に溶融材を射出して筒状部材を成形する筒状部材の製造方法において、前記内型の少なくとも一部として筒状のコア部材を用い、該コア部材の内孔が前記筒状部材の内孔を形成する所定位置に前記コア部材を配置して型閉し、前記射出空間に射出した前記溶融材を冷却し、前記内型と前記外型を型開する際に前記コア部材を残し、冷却固化した前記溶融材と一体化した前記コア部材を構成要素にして前記筒状部材を製造するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の筒状部材の製造方法においては、内型の少なくとも一部として用いた筒状のコア部材を型開時に成形品の筒状部材の内孔から外側に引き抜くことなく残し、このコア部材を構成要素として筒状部材を製造することができる。これにより、少なくとも2箇所の屈曲部で屈曲する筒状部材を、射出成形によって一体成形することが可能になり、従来、隣り合う屈曲部の間からコア金型を外側に引き抜くことができないために一体成形が不可能であった任意の形状の筒状部材を確実且つ容易に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る筒状部材を示す断面図である。
【図2】図1のX1−X1線矢視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る筒状部材の製造方法を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る筒状部材の製造方法で用いるコア部材保持機構を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る筒状部材の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る筒状部材の変形例を示す断面図である。
【図7】2箇所の屈曲部で屈曲する筒状部材を示す断面図である。
【図8】図7のX1−X1線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る筒状部材の製造方法及び筒状部材について説明する。本実施形態は、筒状部材を射出成形によって製造する方法に関するものである。
【0011】
はじめに、本実施形態の筒状部材Aは、管継手などであり、図1(a)、図1(b)、図2に示すように、略円筒状(略円管状)に形成されるとともに、2箇所の屈曲部2、3で屈曲して形成されている。また、本実施形態の筒状部材Aは、一方の屈曲部2から一端4aまでの一端側部分4と、他方の屈曲部3から他端5aまでの他端側部分5とが、射出成形時に射出して冷却固化した合成樹脂(溶融樹脂、溶融材)6のみで形成されている。
【0012】
一方、筒状部材Aの軸線O1方向に隣り合う一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7は、射出成形時に射出して冷却固化した合成樹脂6とコア部材8とが一体化して形成されている。コア部材8は、金属もしくは合成樹脂を用い、円筒状に形成されている。また、コア部材8は、その内径を筒状部材Aの一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7の内径と同径にし、外径を筒状部材Aの一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7の外径よりも小径にして形成されている。
【0013】
すなわち、筒状部材Aの一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7は、コア部材8の内面を一端側部分4及び他端側部分5の内面と滑らかに接続してコア部材8が配設され、このコア部材8の外面を覆うように合成樹脂6を一体に積層して形成されている。また、筒状部材Aの一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7は、その外面が一端側部分4及び他端側部分5の外面と滑らかに接続するように形成されている。これにより、一方の屈曲部2と他方の屈曲部3の間の部分7は、コア部材8の内孔が筒状部材Aの内孔10を形成している。
【0014】
次に、上記構成からなる本実施形態の筒状部材の製造方法について説明する。
【0015】
この筒状部材Aを製造する際には、内型と外型を型閉して筒状の射出空間を形成し、この射出空間に溶融樹脂を射出する。
【0016】
このとき、図3(a)に示すように、本実施形態では、内型11として、筒状のコア部材8と略円柱棒状の一対のコア金型本体13、14とを用いる。そして、図3(b)に示すように、コア部材8の一端部に一方のコア金型本体13の一端側を係合させて着脱可能に固定し、コア部材8の他端部に他方のコア金型本体14の一端側を係合させて着脱可能に固定する。これにより、コア部材8が両端部をそれぞれコア金型本体13、14で位置決め保持され、内型11が形成される。
【0017】
ここで、図4に示すように、各コア金型本体13(14)には、コア部材8の端部に一端側を係合させて着脱可能に固定するためのコア部材保持機構15が設けられている。本実施形態において、コア部材保持機構15は、コア金型本体13(14)の軸線中心に穿設されたガイド孔16と、このガイド孔16に挿入して軸線O2方向に進退自在に設けられた操作ピン17と、操作ピン17の進退操作に応じてコア金型本体13(14)の一端側から出没する係合保持ピン18とを備えて構成されている。また、操作ピン17の一端面17aと係合保持ピン18の後端面18aとがそれぞれテーパー面で形成されており、操作ピン17と係合保持ピン18は、互いのテーパー面17a、18aを合わせつつバネなどの弾性体19を介して接続されている。
【0018】
図4(a)に示すように、このように構成したコア部材保持機構15は、操作ピン17を進出させると、操作ピン17のテーパー面17a上で係合保持ピン18のテーパー面18aが滑動し、係合保持ピン18が案内されてコア金型本体13(14)の一端側の内側から外側に突出する。そして、操作ピン17を進出操作して係合保持ピン18をコア金型本体13(14)の外側に突出させるとともに、突出した係合保持ピン18をコア部材8の内孔8aに係合させる。これにより、コア部材保持機構15を介してコア金型本体13(14)の一端側でコア部材8の端部を位置決め保持することができる。
【0019】
また、図4(b)に示すように、コア部材保持機構15は、操作ピン17を退避させると、弾性体19の付勢力によって係合保持ピン18がコア金型本体13(14)の内側に引き込まれる。これとともに、操作ピン17のテーパー面17a上で係合保持ピン18のテーパー面18aが滑動して、係合保持ピン18が元の位置に戻る。このように操作ピン17を退避操作して係合保持ピン18をコア部材8の内孔8aから引き戻すことにより、コア部材8の端部の保持状態を解除することができ、コア金型本体13(14)とコア部材8を切り離すことができる。
【0020】
そして、コア部材保持機構15を進出操作し、図3(b)に示すように各コア金型本体13、14でコア部材8を位置決め保持して内型11を形成した状態で、図3(c)に示すように外型20を所定位置に設置して型閉し、筒状部材Aに応じた形状の射出空間21を内型11と外型20の間に形成する。
【0021】
次に、図3(d)に示すように、射出空間21に連通して外型20に形成された射出孔22を通じて溶融樹脂6を射出空間21に射出する。そして、射出した溶融樹脂6を冷却固化した後、内型11と外型20を型開(離型)して射出成形品の筒状部材Aを取り出す。このとき、図3(e)に示すように、コア部材保持機構15を退避操作し、各コア金型本体13、14をコア部材8から切り離して離型する。これとともに外型20を離型し、内型11としてのコア部材8を残した状態で型開を行う。
【0022】
これにより、図1及び図2に示すように、冷却固化した合成樹脂6とコア部材8を一体化した筒状部材Aが得られ、射出孔22によって形成された不要部分を切削除去するなどして、本実施形態の筒状部材Aの製造が完了する。
【0023】
したがって、本実施形態の筒状部材Aの製造方法及び筒状部材Aにおいては、内型11の少なくとも一部として用いた筒状のコア部材8を、型開時に成形品の筒状部材Aの内孔から外側に引き抜くことなく残し、このコア部材8を構成要素として筒状部材Aを製造することができる。
【0024】
これにより、少なくとも2箇所の屈曲部2、3で屈曲する筒状部材Aを、射出成形によって一体成形することが可能になり、従来、隣り合う屈曲部2、3の間からコア金型を外側に引き抜くことができないために一体成形が不可能であった任意の形状の筒状部材Aを確実且つ容易に製造することが可能になる。
【0025】
以上、本発明に係る筒状部材の製造方法及び筒状部材の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、筒状部材Aの軸線O1方向に隣り合う屈曲部2、3の間にコア部材8を配置して筒状部材Aを製造するものとして説明を行ったが、例えば図5に示すように、一端側部分4や他端側部分5の他の部分にコア部材8を配置して筒状部材Aを製造するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、コア部材8が金属もしくは合成樹脂を用いて円筒状に形成されているものとしたが、例えば図6に示すように、外層23を金属、内層24を合成樹脂にするなどして、コア部材8が多層状で形成されていてもよい。そして、図6のように構成した場合には金属の外層23で筒状部材Aの剛性を高めることなどが可能になり、外層23の内側に合成樹脂を積層して内層24を形成することで、金属の外層23の腐食を防止したり、コア部材8を設けた部分の筒状部材Aの内面の粗度係数を調整することなどが可能になる。
【符号の説明】
【0027】
1 筒状部材
2 屈曲部
3 屈曲部
4 一端側部分
4a 一端
5 他端側部分
5b 他端
6 合成樹脂(溶融樹脂、溶融材)
7 隣り合う屈曲部の間の部分
8 コア部材
8a 内孔
10 内孔
11 内型
13 コア金型本体
14 コア金型本体
15 コア部材保持機構
16 ガイド孔
17 操作ピン
17a テーパー面(一端面)
18 係合保持ピン
18a テーパー面(後端面)
19 弾性体
20 外型
21 射出空間
22 射出孔
23 外層
24 内層
A 筒状部材
O1 軸線
O2 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内型と外型を型閉して形成した射出空間に溶融材を射出して筒状部材を成形する筒状部材の製造方法において、
前記内型の少なくとも一部として筒状のコア部材を用い、該コア部材の内孔が前記筒状部材の内孔を形成する所定位置に前記コア部材を配置して型閉し、
前記射出空間に射出した前記溶融材を冷却し、前記内型と前記外型を型開する際に前記コア部材を残し、
冷却固化した前記溶融材と一体化した前記コア部材を構成要素にして前記筒状部材を製造するようにしたことを特徴とする筒状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200869(P2012−200869A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64321(P2011−64321)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】