管内面の塗装装置
【課題】一つの塗装装置で管内面の下地処理及び塗装を行うことにより、小口径の管においても、平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができるようにする。
【解決手段】水平方向に支持されると共に軸心を中心にして回転される鋳鉄管の内面を粉体塗装する装置1であって、管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入又は管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口33から粉体塗料を噴射するランス3と、管外におけるランス3の基端部にてランス3を支持する支持部23と、噴射口33から基端部側に設けられて管内面に接し得るヘラ38と、ランス3を昇降させることによりヘラ38を昇降させて鋳鉄管の内面へのヘラ38の接触/離間を切り換えるジャッキ部28とを有する。
【解決手段】水平方向に支持されると共に軸心を中心にして回転される鋳鉄管の内面を粉体塗装する装置1であって、管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入又は管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口33から粉体塗料を噴射するランス3と、管外におけるランス3の基端部にてランス3を支持する支持部23と、噴射口33から基端部側に設けられて管内面に接し得るヘラ38と、ランス3を昇降させることによりヘラ38を昇降させて鋳鉄管の内面へのヘラ38の接触/離間を切り換えるジャッキ部28とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内面の塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄管を遠心鋳造したような場合には、この管の内外面を塗装するのが一般的であり、特に管内面は粉体塗装が行われることが多い。従来、管の内面を塗装する場合には、この管を水平方向に支持してこの管の端部開口から管内へランスを挿入し、このランスの先端に設けたノズルから塗料を噴射するのが通例である。
【0003】
また、実際の製造現場では、塗装ラインにただ一種類の管のみが流れてくる訳ではなく、製造ロットごとに口径の異なる管が次々とラインに搬入されてくるのが普通であり、管の口径に合わせてノズルの位置調整を行う必要がある。このため、図9に示すように、水平方向に支持した管Pに挿入されるランス3の基端部を調整ボルト26で上下に移動させることにより、ランス3の先端に設けたノズル32の上下方向の位置決めを容易にできる塗装装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−64762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の塗装装置は、管Pの内面に塗料を噴射するものであるから、図10に示すように、管Pの内面に直径10〜20mmで深さ1〜2mm程度のクボミKがあれば、このクボミKに沿って塗膜5Bが形成されるので、クボミKを十分に埋めることができなかった。また、上記のクボミを埋めるために、ヘラ等で塗装面を滑らかにする作業(以下、下地処理という)を作業員により行う場合であっても、小口径の管(例えば内径が450mm以下)だと作業員が管の内部に入ることができず、作業員の手の届かない管の奥部では下地処理を行うことができなかった。
【0006】
このように、クボミを十分に埋められない、または一部のクボミしか埋められなければ、外観上クボミがあるため、製品としての管の基準を満たさない。一方で、長柄を有する器具や装置等で下地処理を行えば、管の奥部にあるクボミまでも埋めることができるが、下地処理だけでは管内面に十分な塗膜が形成されず、上塗塗装が必要になるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、このような問題を解決して、一つの装置で管内面の下地処理および上塗塗装を行い、小口径の管においても、平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる管内面の塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、水平方向に支持されるとともに軸心を中心にして回転される管の内面を塗装する装置であって、管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入または管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口から塗料を噴射する塗料噴射管と、管外における塗料噴射管の基端部にて塗料噴射管を支持する支持手段と、上記塗料噴射管の噴射口から基端部側に設けられて管の内面に接し得る塗布板と、塗料噴射管を昇降させることにより塗布板を昇降させて管の内面への塗布板の接触/離間を切り換える昇降手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の塗装装置において、塗布板を管の軸心方向に対して傾斜するように配置したことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の塗装装置において、昇降手段は、塗料噴射管を上記管に挿入する方向へ相対移動させている場合には上記管の内面に上記塗布板を接触させ、塗料噴射管を上記管から引出す方向へ相対移動させている場合には上記管の内面から上記塗布板を離間させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
一つの塗装装置で管内面の下地処理および上塗塗装を行うことにより、小口径の管においても、管内面の平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の塗装装置を用いるための設備の全体構造図である。
【図2】同塗装装置の一部断面図である。
【図3】同塗装装置による作業開始時の状態を説明する図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】同塗装装置による下地処理を説明する図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】図6の一部拡大図である。
【図8】同塗装装置による上塗塗装を説明する図である。
【図9】従来の塗装装置を用いるための設備の全体構造図である。
【図10】従来の塗装装置により塗装されたクボミを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
次に、この発明の実施の形態に係る管内面の塗装装置について、図1〜図8を参照しながら、図9に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、具体的に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【0013】
本実施例においては、一例として粉体塗装を鋳鉄管の内面に塗装する装置について説明する。
図1は、本実施例における管内面の塗装装置1を用いるための設備の全体構造を示す図である。Pは塗装されるべき鋳鉄管であり、Sはこの管Pを水平方向に支持するとともに、軸心まわりに回転駆動する管支持装置である。また、塗装装置1は、回転させた管Pの一端側からランス(塗料噴射管の一例である)3を挿入して管内面に粉体塗料を噴射し、管内面を塗装するものである。なお、この塗装装置1は、走行車輪21で管Pの軸心方向に移動可能なため、ランス3を管Pの内部へ挿入または管Pの内部から引出しながら粉体塗料を噴射し、管Pの内面を長さ方向にわたって塗装するものである。
【0014】
以下では、上記鋳鉄管Pにおけるランス3の挿入端側を後側、他端側を前側として説明し、水平面内において当該前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。
上記鋳鉄管Pは、固体である粉体塗料を溶かして塗装しやすい液体状にするために、加熱装置(図示しない)により加熱される。
【0015】
次に、この管Pの内面を塗装する塗装装置1について説明する。
この塗装装置1は、図2に示すように、管内面に粉体塗料を噴射するランス3と、このランス3を支持するとともに前述の車輪21を有して前後方向に移動し得る塗装台車2とを有する。
【0016】
この塗装台車2には、ランス3を支持する円筒状の支持部(支持手段の一例である)23と、この支持部23を昇降させ得るジャッキ部(昇降手段の一例である)28と、塗装台車2を前後方向に移動させ得る走行車輪21とが設けられている。上記支持部23は、ランス3を傾動自在に支持する球面軸受24と、この球面軸受24の後方でランス3を保持する調整保持具25とを有する。この調整保持具25は、支持部23に形成された厚肉部からねじ出される上下一対の調整ボルト26と、これら調整ボルト26の先端に取り付けられてランス3を挟み付ける保持板27とから構成される。したがって、ランス3の保持板27で挟み付けられた位置を調整ボルト26で上下方向に微調整することで、ランス3の傾斜の微調整が可能であり、ランス3を水平に保つことができる。なお、ランス3は、上下一対の調整ボルト26および保持板27だけでなく、図示しないが左右一対の調整ボルトおよび保持板にも挟み付けられる。また、ジャッキ部28は、ヘッド側29Hが当該支持部23の下面に取り付けられるとともにキャップ側29Cがヘッド側29Hの鉛直下方に位置するように塗装台車2に取り付けられた空圧シリンダー29と、この空圧シリンダー29を制御する制御装置(図示しない)とから構成されている。したがって、当該制御装置により空圧シリンダー29を伸展/収縮させることで、支持部23を上昇/下降させることができる。
【0017】
一方、ランス3は、中空部において粉体塗料が空気圧で基端側から先端側へ送られるランス本体31と、このランス本体31の先端側に取り付けられるとともにランス本体31から送られた粉体塗料を前下方へ向けて管内面に噴射する噴射口33を有するノズル32とから構成される。
【0018】
また、ランス3の先端部(ランス3の噴射口33から基端部側である)には、図2〜図6に示すように、固定治具36および角度調整治具37を介してヘラ(塗布板の一例である)38が取り付けられている。このヘラ38は、管Pの内面に押し付けられることで反らせて用いるものであり、また管Pは上述の通り加熱されている。したがって、このヘラ38には、耐熱性および可撓性が求められ、例えばシリコン樹脂や金属等で且つ柔軟性を有するものが用いられる。また、図4に示すように、ランス3の正面視において、ヘラ38はその下端部が左下方(5時の位置)へ向くように、ランス本体31に取り付けられる。すなわち、ランス本体31とともにヘラ38を下降させ、回転している管Pの内面にヘラ38が押し付けられたときに、この押付力および管Pの回転により、図6に示されるようにヘラ38が反るような位置で、ヘラ38がランス本体31に取り付けられる。これにより、ヘラ38を、ランス本体31とともに下降させ、管内面に押し付けて反らせると、ヘラ38は管内面と面で接触するので、この管Pは回転していても、ヘラ38は、その先端面が管Pの内面に接する場合のようには振動せず、反った形状のまま維持される。また、管Pの内面にクボミがある場合でも、ヘラ38と管内面との接触面がクボミより前後方向で長ければ、クボミに影響されることなくヘラ38の姿勢は一定である。したがって、図6および図7に示すように、管内面では、噴射された粉体塗料5がクボミを埋めるようにヘラ38で塗布され、凸凹のない滑らかな塗装面が形成される。
【0019】
一方、上記角度調整治具37は、図4および図6に示すように、左右一対の構成部材からなり、両構成部材でヘラ38を挟んで固定するものである。なお、角度調整治具37は、管Pの軸心方向に対して傾斜させて固定治具36に接続できるようにするため、図示しないが、十分な大きさを有するボルト穴が形成されている。また、固定治具36も、左右一対の構成部材からなり、ランス本体31を左右から挟み込むようにして、固定治具36がランス本体31に取り付けられる。
【0020】
以下に、上記構成の塗装装置1により鋳鉄管の内面を塗装する作業について、図3〜図8に基づき説明する。なお、鋳鉄管Pは、前述のように管支持装置Sにより支持されるとともに回転駆動されており、加熱装置により加熱されている。
【0021】
まず、ヘラ38が管Pの内面に接触しない高さにまで、制御装置により支持部23とともにランス3を上昇させる。
そして、図3および図4に示すように、管支持装置Sで回転させている管Pの軸心方向(前後方向)とランス3が平行になるようにして、塗装装置1を前方へ走行させ、ランス3を管Pの後端から内部に挿入していく。その後、ノズル32の位置が塗装開始位置にまで達すれば、塗装装置1の走行を停止し、制御装置により支持部23とともにランス3を下降させてヘラ38を管内面に接触させる。ここで、調整保持具25でランス3の上下の傾斜を微調整することで、ランス3を水平に保つ。また、図示しない左右方向の調整ボルトでランス3の左右の傾斜を微調整し、ランス3を水平面において管Pの軸心と平行にする。その後、さらに支持部23を制御装置により下降させて、ヘラ38を管内面に押し付け、図5および図6に示すように、ヘラ38を反らせる。
【0022】
次に、粉体塗料5を空気圧でノズル32の噴射口33から前下方に向けて管Pの内面に噴射するとともに、再び塗装装置1を前方へ走行させる。このとき、噴射された粉体塗料5は固体であるが、加熱された管Pの熱で溶けて液体状になる。また、管Pの回転と塗装装置1の走行で、ヘラ38により塗料が管内面に塗りつけられて、図7に示すように、管内面にクボミKがあっても、塗装面が滑らかになるように塗料が塗布される。一方、ヘラ38は管Pの軸心に対して所定の角度で傾斜させており、余剰分の塗料は、ヘラ38により掻き寄せられて、前方へ押し出されるように案内される。
【0023】
そして、ノズル32位置が塗装終了位置にまで達すれば、塗装台車2の走行を停止するとともに、噴射口33からの粉体塗料5の噴射を中断する。
上述した工程により、鋳鉄管Pの内面の後部から前部にわたって下地処理が行われる。すなわち、鋳鉄管Pに生じていたクボミが塗料で埋められるとともに、凸凹のない滑らかな塗装面が形成される。
【0024】
次に、ヘラ38が管内面に接触しない高さにまで、制御装置により支持部23とともにランス3を上昇させ、図8に示すように、再び粉体塗料5を噴射口33から管内面に噴射させるとともに、塗装台車2を後方へ走行させる。これにより、鋳鉄管Pの内面の前部から後部にわたって、上塗塗装が行われる。
【0025】
そして、ノズル32位置が再び塗装開始位置にまで戻れば、噴射口33からの粉体塗料5の噴射を停止し、塗装装置1をさらに後方へ走行させてランス3を管Pの内部から完全に引出すことで、一連の塗装作業が完了する。
【0026】
このように、上記塗装装置1であれば、ノズル32を塗装開始位置から塗装終了位置まで往復させるだけで、管内面の下地処理および上塗塗装を行い、小口径の管においても、平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる。また、一の塗装装置で下地処理および上塗塗装を行うので、別途の装置や新たなスペースを必要とせずに、管内面の塗装をすることができる。
【0027】
ところで、本実施例においては、ヘラ38を管Pの軸心方向に対して傾斜するように配置したが、傾斜させなくてもよい。また、本実施例では、粉体塗料5を用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、他の塗料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0028】
P 管
S 管支持装置
1 塗装装置
2 塗装台車
3 ランス
21 走行車輪
23 支持部
24 球面軸受
25 調整保持具
28 ジャッキ部
29 空圧シリンダー
31 ランス本体
32 ノズル
33 噴射口
36 固定治具
37 角度調整治具
38 ヘラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内面の塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳鉄管を遠心鋳造したような場合には、この管の内外面を塗装するのが一般的であり、特に管内面は粉体塗装が行われることが多い。従来、管の内面を塗装する場合には、この管を水平方向に支持してこの管の端部開口から管内へランスを挿入し、このランスの先端に設けたノズルから塗料を噴射するのが通例である。
【0003】
また、実際の製造現場では、塗装ラインにただ一種類の管のみが流れてくる訳ではなく、製造ロットごとに口径の異なる管が次々とラインに搬入されてくるのが普通であり、管の口径に合わせてノズルの位置調整を行う必要がある。このため、図9に示すように、水平方向に支持した管Pに挿入されるランス3の基端部を調整ボルト26で上下に移動させることにより、ランス3の先端に設けたノズル32の上下方向の位置決めを容易にできる塗装装置が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−64762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の塗装装置は、管Pの内面に塗料を噴射するものであるから、図10に示すように、管Pの内面に直径10〜20mmで深さ1〜2mm程度のクボミKがあれば、このクボミKに沿って塗膜5Bが形成されるので、クボミKを十分に埋めることができなかった。また、上記のクボミを埋めるために、ヘラ等で塗装面を滑らかにする作業(以下、下地処理という)を作業員により行う場合であっても、小口径の管(例えば内径が450mm以下)だと作業員が管の内部に入ることができず、作業員の手の届かない管の奥部では下地処理を行うことができなかった。
【0006】
このように、クボミを十分に埋められない、または一部のクボミしか埋められなければ、外観上クボミがあるため、製品としての管の基準を満たさない。一方で、長柄を有する器具や装置等で下地処理を行えば、管の奥部にあるクボミまでも埋めることができるが、下地処理だけでは管内面に十分な塗膜が形成されず、上塗塗装が必要になるという問題があった。
【0007】
そこで本発明は、このような問題を解決して、一つの装置で管内面の下地処理および上塗塗装を行い、小口径の管においても、平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる管内面の塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、水平方向に支持されるとともに軸心を中心にして回転される管の内面を塗装する装置であって、管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入または管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口から塗料を噴射する塗料噴射管と、管外における塗料噴射管の基端部にて塗料噴射管を支持する支持手段と、上記塗料噴射管の噴射口から基端部側に設けられて管の内面に接し得る塗布板と、塗料噴射管を昇降させることにより塗布板を昇降させて管の内面への塗布板の接触/離間を切り換える昇降手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の塗装装置において、塗布板を管の軸心方向に対して傾斜するように配置したことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の塗装装置において、昇降手段は、塗料噴射管を上記管に挿入する方向へ相対移動させている場合には上記管の内面に上記塗布板を接触させ、塗料噴射管を上記管から引出す方向へ相対移動させている場合には上記管の内面から上記塗布板を離間させるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
一つの塗装装置で管内面の下地処理および上塗塗装を行うことにより、小口径の管においても、管内面の平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の塗装装置を用いるための設備の全体構造図である。
【図2】同塗装装置の一部断面図である。
【図3】同塗装装置による作業開始時の状態を説明する図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】同塗装装置による下地処理を説明する図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】図6の一部拡大図である。
【図8】同塗装装置による上塗塗装を説明する図である。
【図9】従来の塗装装置を用いるための設備の全体構造図である。
【図10】従来の塗装装置により塗装されたクボミを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0012】
次に、この発明の実施の形態に係る管内面の塗装装置について、図1〜図8を参照しながら、図9に示したものと同一の部材には同一の参照番号を付して、具体的に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【0013】
本実施例においては、一例として粉体塗装を鋳鉄管の内面に塗装する装置について説明する。
図1は、本実施例における管内面の塗装装置1を用いるための設備の全体構造を示す図である。Pは塗装されるべき鋳鉄管であり、Sはこの管Pを水平方向に支持するとともに、軸心まわりに回転駆動する管支持装置である。また、塗装装置1は、回転させた管Pの一端側からランス(塗料噴射管の一例である)3を挿入して管内面に粉体塗料を噴射し、管内面を塗装するものである。なお、この塗装装置1は、走行車輪21で管Pの軸心方向に移動可能なため、ランス3を管Pの内部へ挿入または管Pの内部から引出しながら粉体塗料を噴射し、管Pの内面を長さ方向にわたって塗装するものである。
【0014】
以下では、上記鋳鉄管Pにおけるランス3の挿入端側を後側、他端側を前側として説明し、水平面内において当該前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。
上記鋳鉄管Pは、固体である粉体塗料を溶かして塗装しやすい液体状にするために、加熱装置(図示しない)により加熱される。
【0015】
次に、この管Pの内面を塗装する塗装装置1について説明する。
この塗装装置1は、図2に示すように、管内面に粉体塗料を噴射するランス3と、このランス3を支持するとともに前述の車輪21を有して前後方向に移動し得る塗装台車2とを有する。
【0016】
この塗装台車2には、ランス3を支持する円筒状の支持部(支持手段の一例である)23と、この支持部23を昇降させ得るジャッキ部(昇降手段の一例である)28と、塗装台車2を前後方向に移動させ得る走行車輪21とが設けられている。上記支持部23は、ランス3を傾動自在に支持する球面軸受24と、この球面軸受24の後方でランス3を保持する調整保持具25とを有する。この調整保持具25は、支持部23に形成された厚肉部からねじ出される上下一対の調整ボルト26と、これら調整ボルト26の先端に取り付けられてランス3を挟み付ける保持板27とから構成される。したがって、ランス3の保持板27で挟み付けられた位置を調整ボルト26で上下方向に微調整することで、ランス3の傾斜の微調整が可能であり、ランス3を水平に保つことができる。なお、ランス3は、上下一対の調整ボルト26および保持板27だけでなく、図示しないが左右一対の調整ボルトおよび保持板にも挟み付けられる。また、ジャッキ部28は、ヘッド側29Hが当該支持部23の下面に取り付けられるとともにキャップ側29Cがヘッド側29Hの鉛直下方に位置するように塗装台車2に取り付けられた空圧シリンダー29と、この空圧シリンダー29を制御する制御装置(図示しない)とから構成されている。したがって、当該制御装置により空圧シリンダー29を伸展/収縮させることで、支持部23を上昇/下降させることができる。
【0017】
一方、ランス3は、中空部において粉体塗料が空気圧で基端側から先端側へ送られるランス本体31と、このランス本体31の先端側に取り付けられるとともにランス本体31から送られた粉体塗料を前下方へ向けて管内面に噴射する噴射口33を有するノズル32とから構成される。
【0018】
また、ランス3の先端部(ランス3の噴射口33から基端部側である)には、図2〜図6に示すように、固定治具36および角度調整治具37を介してヘラ(塗布板の一例である)38が取り付けられている。このヘラ38は、管Pの内面に押し付けられることで反らせて用いるものであり、また管Pは上述の通り加熱されている。したがって、このヘラ38には、耐熱性および可撓性が求められ、例えばシリコン樹脂や金属等で且つ柔軟性を有するものが用いられる。また、図4に示すように、ランス3の正面視において、ヘラ38はその下端部が左下方(5時の位置)へ向くように、ランス本体31に取り付けられる。すなわち、ランス本体31とともにヘラ38を下降させ、回転している管Pの内面にヘラ38が押し付けられたときに、この押付力および管Pの回転により、図6に示されるようにヘラ38が反るような位置で、ヘラ38がランス本体31に取り付けられる。これにより、ヘラ38を、ランス本体31とともに下降させ、管内面に押し付けて反らせると、ヘラ38は管内面と面で接触するので、この管Pは回転していても、ヘラ38は、その先端面が管Pの内面に接する場合のようには振動せず、反った形状のまま維持される。また、管Pの内面にクボミがある場合でも、ヘラ38と管内面との接触面がクボミより前後方向で長ければ、クボミに影響されることなくヘラ38の姿勢は一定である。したがって、図6および図7に示すように、管内面では、噴射された粉体塗料5がクボミを埋めるようにヘラ38で塗布され、凸凹のない滑らかな塗装面が形成される。
【0019】
一方、上記角度調整治具37は、図4および図6に示すように、左右一対の構成部材からなり、両構成部材でヘラ38を挟んで固定するものである。なお、角度調整治具37は、管Pの軸心方向に対して傾斜させて固定治具36に接続できるようにするため、図示しないが、十分な大きさを有するボルト穴が形成されている。また、固定治具36も、左右一対の構成部材からなり、ランス本体31を左右から挟み込むようにして、固定治具36がランス本体31に取り付けられる。
【0020】
以下に、上記構成の塗装装置1により鋳鉄管の内面を塗装する作業について、図3〜図8に基づき説明する。なお、鋳鉄管Pは、前述のように管支持装置Sにより支持されるとともに回転駆動されており、加熱装置により加熱されている。
【0021】
まず、ヘラ38が管Pの内面に接触しない高さにまで、制御装置により支持部23とともにランス3を上昇させる。
そして、図3および図4に示すように、管支持装置Sで回転させている管Pの軸心方向(前後方向)とランス3が平行になるようにして、塗装装置1を前方へ走行させ、ランス3を管Pの後端から内部に挿入していく。その後、ノズル32の位置が塗装開始位置にまで達すれば、塗装装置1の走行を停止し、制御装置により支持部23とともにランス3を下降させてヘラ38を管内面に接触させる。ここで、調整保持具25でランス3の上下の傾斜を微調整することで、ランス3を水平に保つ。また、図示しない左右方向の調整ボルトでランス3の左右の傾斜を微調整し、ランス3を水平面において管Pの軸心と平行にする。その後、さらに支持部23を制御装置により下降させて、ヘラ38を管内面に押し付け、図5および図6に示すように、ヘラ38を反らせる。
【0022】
次に、粉体塗料5を空気圧でノズル32の噴射口33から前下方に向けて管Pの内面に噴射するとともに、再び塗装装置1を前方へ走行させる。このとき、噴射された粉体塗料5は固体であるが、加熱された管Pの熱で溶けて液体状になる。また、管Pの回転と塗装装置1の走行で、ヘラ38により塗料が管内面に塗りつけられて、図7に示すように、管内面にクボミKがあっても、塗装面が滑らかになるように塗料が塗布される。一方、ヘラ38は管Pの軸心に対して所定の角度で傾斜させており、余剰分の塗料は、ヘラ38により掻き寄せられて、前方へ押し出されるように案内される。
【0023】
そして、ノズル32位置が塗装終了位置にまで達すれば、塗装台車2の走行を停止するとともに、噴射口33からの粉体塗料5の噴射を中断する。
上述した工程により、鋳鉄管Pの内面の後部から前部にわたって下地処理が行われる。すなわち、鋳鉄管Pに生じていたクボミが塗料で埋められるとともに、凸凹のない滑らかな塗装面が形成される。
【0024】
次に、ヘラ38が管内面に接触しない高さにまで、制御装置により支持部23とともにランス3を上昇させ、図8に示すように、再び粉体塗料5を噴射口33から管内面に噴射させるとともに、塗装台車2を後方へ走行させる。これにより、鋳鉄管Pの内面の前部から後部にわたって、上塗塗装が行われる。
【0025】
そして、ノズル32位置が再び塗装開始位置にまで戻れば、噴射口33からの粉体塗料5の噴射を停止し、塗装装置1をさらに後方へ走行させてランス3を管Pの内部から完全に引出すことで、一連の塗装作業が完了する。
【0026】
このように、上記塗装装置1であれば、ノズル32を塗装開始位置から塗装終了位置まで往復させるだけで、管内面の下地処理および上塗塗装を行い、小口径の管においても、平滑な塗装面を迅速且つ容易に得ることができる。また、一の塗装装置で下地処理および上塗塗装を行うので、別途の装置や新たなスペースを必要とせずに、管内面の塗装をすることができる。
【0027】
ところで、本実施例においては、ヘラ38を管Pの軸心方向に対して傾斜するように配置したが、傾斜させなくてもよい。また、本実施例では、粉体塗料5を用いるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、他の塗料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0028】
P 管
S 管支持装置
1 塗装装置
2 塗装台車
3 ランス
21 走行車輪
23 支持部
24 球面軸受
25 調整保持具
28 ジャッキ部
29 空圧シリンダー
31 ランス本体
32 ノズル
33 噴射口
36 固定治具
37 角度調整治具
38 ヘラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に支持されるとともに軸心を中心にして回転される管の内面を塗装する装置であって、
管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入または管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口から塗料を噴射する塗料噴射管と、
管外における塗料噴射管の基端部にて塗料噴射管を支持する支持手段と、
上記塗料噴射管の噴射口から基端部側に設けられて管の内面に接し得る塗布板と、
塗料噴射管を昇降させることにより塗布板を昇降させて管の内面への塗布板の接触/離間を切り換える昇降手段とを有することを特徴とする管内面の塗装装置。
【請求項2】
塗布板を管の軸心方向に対して傾斜するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の管内面の塗装装置。
【請求項3】
昇降手段は、塗料噴射管を上記管に挿入する方向へ相対移動させている場合には上記管の内面に上記塗布板を接触させ、塗料噴射管を上記管から引出す方向へ相対移動させている場合には上記管の内面から上記塗布板を離間させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の管内面の塗装装置。
【請求項1】
水平方向に支持されるとともに軸心を中心にして回転される管の内面を塗装する装置であって、
管の軸心方向への相対移動により管の内部への挿入または管の内部からの引出しが行われることで、管の長さ方向にわたって先端部の噴射口から塗料を噴射する塗料噴射管と、
管外における塗料噴射管の基端部にて塗料噴射管を支持する支持手段と、
上記塗料噴射管の噴射口から基端部側に設けられて管の内面に接し得る塗布板と、
塗料噴射管を昇降させることにより塗布板を昇降させて管の内面への塗布板の接触/離間を切り換える昇降手段とを有することを特徴とする管内面の塗装装置。
【請求項2】
塗布板を管の軸心方向に対して傾斜するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の管内面の塗装装置。
【請求項3】
昇降手段は、塗料噴射管を上記管に挿入する方向へ相対移動させている場合には上記管の内面に上記塗布板を接触させ、塗料噴射管を上記管から引出す方向へ相対移動させている場合には上記管の内面から上記塗布板を離間させるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の管内面の塗装装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−224501(P2011−224501A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98339(P2010−98339)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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