説明

管状体

【課題】この発明は、応力集中の軽減化を図ったうえで、クラック発生の防止を図り得ようにして、巻回作業性の向上を図ることにある。
【解決手段】少なくとも交差する一方を強化繊維で形成した強化部Sと、この強化部Sの側部の少なくとも一方側に沿って配される緩衝部Pとを備えた繊維束31a、31bを織り込んだプリプレグシートを巻回してなる補強層30を積層して管状体20を形成するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば釣竿、ゴルフクラブシャフト、テニスラケット等の各種スポーツ用品に用いるのに好適する管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の管状体は、複数の繊維束を0度、90度のように所定の角度に配した繊維強化プリプレグシートを組み合わせて巻回し、所望の積層構造を有した管状に形成される。そして、このような管状体は、美麗な外観と共に、その層間の密着性を実現して層間の剥離を防止した堅牢な剛性、強度等が要請される。
【0003】
そこで、この要請を満足する釣り、ゴルフシャフト等の積層管用中間基材としては、有機、無機繊維に金属メッキもしくは金属を蒸着した糸状等の金属光沢性材料と、炭素等からなる糸条を一定ピッチ、かつ交互に配列して経糸とし、成形後に透明となるグラス等の有機、無機繊維を緯糸として織物に樹脂を含浸して構成したものが提案されている(例えば,特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平310598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記積層管用中間基材では、樹脂の含浸される織物が、経糸と緯糸とが交差されて織り込まれるために、管状に巻回して積層管を成形する際に、その変形により屈曲部位に応力が集中して、クラックが発生しやすく、その作業が非常に面倒であるうえ、経糸と緯糸の間に隙間が発生しやすく、樹脂を含浸する際、ピンホールが発生するという問題を有する。特に、伸びの少ないカーボン・カーボンのような材質の織物の場合に重大である。
【0005】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、応力集中の軽減化を図ったうえで、クラック発生の防止を図り得るようにして、巻回作業性の向上を図った管状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、複数の繊維束を交差させて織り込んで樹脂を含浸させた繊維強化プリプレグシートを巻回した管状本体を備えた管状体において、前記繊維強化プリプレグシートの複数の繊維束を、少なくとも交差する一方を強化繊維で形成した強化部と、この強化部の側部の少なくとも一方側に沿って配される緩衝部とを備えて構成した。
【0007】
上記構成によれば、プリプレグシートの交差される繊維束の少なくとも一方を、強化繊維で形成した強化部Sと、この強化部Sの側部の少なくとも一方側に沿って緩衝部Pを設け、このプリプレグシートを巻回して管状本体を形成している。これにより、プリプレグシートを巻回して、強化部及び緩衝部の繊維束に応力が作用すると、その緩衝部の繊維束の変形が許容されることで、クラック発生が防止され、強度低下を生じることなく、高耐衝撃性が得られ、しかも、安定した巻回作業を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、応力集中の軽減化を図ったうえで、クラック発生の防止を図り得るようにして、巻回作業性の向上を図った管状体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、この発明の一実施の形態に係る管状体の適用された魚釣用釣竿の外観構成を示すもので、トップ節を構成する管状体である第1の竿杆10には、その基端部に例えばバット節を構成する管状体である大径の第2の竿杆11が並継構造の継合部12を介して継合されて連設される。
【0011】
このうち第1の竿杆10には、その先端に,例えば金属材料で形成されるトップガイド101が設けられ、このトップガイド101と上記継合部12との間には、例えば金属材料で形成される複数の固定ガイド102が所定の間隔に配置されて糸巻き等の手法により固定配置される。他方、第2の竿杆11には、その継合部12に続いて例えば固定ガイド111、フォアグリップ112、リール13の取付けられるリートシート113、リアグリップ114が順に所定の間隔を有して配置される。
【0012】
上記第1及び第2の竿杆10,11は、例えば炭素繊維等の強化繊維にエポキシ樹脂等の合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグシート(以下の説明では、単にプリプレグシートと称する)を周方向、軸方向あるいは軸線に対して適宜角度に傾斜した偏向方向に引き揃えて複数層、巻回して加熱成形することで中空構造の管状本体20が形成される(図3参照)。ここで、繊維とは、日本工業規格の繊維用語にあるところの糸、織物の構成の単位を称し、その太さに比して十分な長さ寸法を持つ、細くて撓みやすいものをいう。
【0013】
上記管状体20を構成するプリプレグシートは、強化繊維として繊維方向を一定方向に引き揃えた炭素繊維を用い、強化繊維に含浸する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いるのが好ましく、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を混在させてもよい。このプリプレグシートの繊維の配向角は、熱変形等を考慮して設定され、例えば0度、90度に配向しても良いし、さらに45度等に斜行させたものを適宜に組み合わせて構成される。
【0014】
そして、上記第2の竿杆11の管状本体20上には、例えば装飾層を兼ねる補強層30がフォアグリップ112の穂先側及びリールシート113とフォアグリップ114との間に積層される。この補強層30は、例えば略同様に図2及び図3に示すように互いに90°の角度に交差させて織り込んだ複数の経方向及び緯方向繊維束31a,31bで形成した織布シート31を布状強化材としたプリプレグシートで形成され、この織布シート31に合成樹脂を含浸して形成される。
【0015】
この布状強化材を形成する織布シート31は、強化繊維として、互いに90°の角度で交差する経方向繊維束31aと緯方向繊維束31bとを、その巾ピッチで織り込んで形成した織布状に形成し、樹脂をこの強化繊維に含浸して形成される。この織布シート31は、繊維束31a,31bの巾ピッチで織り込むことにより、同方向に延びる繊維束31a,31bのそれぞれを互いに密に隣接させた織物状構造に形成され、成形時のずれがなく、規則正しい織り目模様を形成することができる。
【0016】
また、織布シート31は、各繊維束31a,31bが互いに直交する方向に配向されるため、線膨張率の差に基づく変形、すなわち繊維方向に応じて変形量が相違することで、成型時に変形するのが抑制されて、強度が安定する。なお、この織布シート31を管状本体20に積層する際は、経方向繊維束31a及び緯方向繊維束31bのそれぞれを、積層する層の繊維方向と異なる方向に配向し、該管状体20の繊維が剥離するのを防止することが好ましい。但し、剛性を重視する場合においては、隣接する層と同一方向に配向しても良い。
【0017】
特に、図3に示すように、織布シート31の経方向繊維束31aと緯方向繊維束31bとのそれぞれは、厚さ寸法Tよりも幅寸法Wの方が大きな寸法を有する帯状に形成してあり、幅寸法W1の帯状に形成した強化部Sと、この強化部Sの一側に沿って延びる幅W2の緩衝部Pとを有する。これら強化部S及び緩衝部Pは、その繊維束31a、31bに曲げ応力が作用すると、その緩衝部Pの繊維束の変形が許容されることで、クラック発生が防止され、強度低下を生じることなく、高耐衝撃性が得られ、しかも、曲げ応力の加わる巻回作業を簡便にして容易に実現することが可能となる。
【0018】
また、各繊維束31a,31bの幅寸法Wを厚さ寸法Tに比して大きく形成することにより、織成による屈曲を小さくし、これにより各繊維束31a,31bの強化繊維に作用する応力を小さくし、繊維束に発生するクラック発生の防止が図れて、強度低下を生じさせることなく、高耐衝撃性が得られ、しかも、簡便にして容易に高精度な巻回作業を実現することができる。
【0019】
なお、上記説明では、経方向繊維束31aと緯方向繊維束31bとをそれぞれ同一構造に形成してあるが、必要に応じてそれぞれの寸法あるいは構造を変更するようにしてもよい。
【0020】
これら繊維束31a,31bの強化部Sは、例えばカーボン・カーボン、カーボン・ガラス、カーボン・アラミド(繊維)や炭素、ガラス、アラミド、アルミナ、ケブラー(Kevlar:登録商標)、及び、その他の有機、無機繊維を含む高弾性繊維の内から選択した繊維を、複数本まとめて形成され、その繊維束の全体の強度、あるいは剛性を担うように構成される。
【0021】
一方、緩衝部Pは、強化部Sの強化繊維に比して低弾性又は伸び率大又は破断伸度大の繊維で形成され、強化部Sの厚さ寸法と同等か、それ以下で、クラック防止作用を疎外しない範囲に設定することで、例えば後述するようにその表面に金属蒸着した場合でも、表面研磨により、その金属蒸着層が取り除かれることなく、容易な製造が可能となるように構成される。
【0022】
この緩衝部Pを形成する繊維としては、例えば低弾性炭素、ガラス、アラミド、ポリエステル、ナイロン、及び、有機、無機繊維を含む繊維から選択した繊維で形成してあり、一本の繊維で形成することも可能であるが、複数本からなる繊維束として形成することが好ましい。この緩衝部Pは、上記経方向繊維束31a及び緯方向繊維束31bを、例えば0度,90度の繊維配向で織り込んだ場合に、その緩衝部Pが外観上、階段状に視認され、斜行させて織り込んだ場合に略波状に視認されて、その配置形状を利用した装飾系を構成することが可能となる。
【0023】
また、緩衝部Pは、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)テープ等の柔軟部材上にアルミニウム等の金属蒸着を施したり、あるいはレーヨン系又はガラス系を芯材として、芯材の周囲にティンセルをスパイラル状等に被着するようにして、所望の装飾系を構成しても良い。
【0024】
これらの強化部Sと緩衝部Pとを形成するそれぞれの繊維は、経方向繊維束31aと緯方向繊維束31bとの双方を同じ組合せで形成しても、あるいはそれぞれの用途あるいは変形の大きさに応じて互いに異なる組合せで形成してもよい。そして、織布シート31に含浸する樹脂、すなわちマトリックス材料は、エポキシ樹脂等の合成樹脂が好ましく、無色、あるいは有色透明樹脂を用いた場合、織布シート31を形成する繊維束31a,31bの織目模様を視認することが可能となり、意匠的にも優れた外観を形成することができる。
【0025】
また、互いに交差する繊維束31a,31bの双方に設ける場合には、大きく変形、あるいは屈曲する繊維束の緩衝部Pよりも、この繊維束に対して直交する方向の繊維束の緩衝部Pの幅寸法W2あるいは繊維量を多くすることが好ましい。このように、変形量の少ない側の繊維束の側部に緩衝作用、あるいは変形能力の大きな緩衝部Pを配置することにより、これに当接する相手方の繊維束に応力が作用したときに、この相手方の繊維束の変形を許容し、巻回する際に強化繊維32にクラックが発生して強度が低下するのを防止することができる。
【0026】
これにより、織布シート31の強度が低下せず、高耐衝撃性が得られる。また、緩衝部Pの繊維を、強化部Sの強化繊維32よりも低弾性の繊維で形成する場合には、強化部Sの繊維に対して、この緩衝部Pの弾性率を調整するだけでよく、繊維束31a,31bを形成する際に、弾性率を調整するだけで簡易に形成することができる。
【0027】
ここで、上記織布シート31の緩衝部Pの作用を説明する。例えば図4に示すように、それぞれ上述の緩衝部Pを設けていない経方向繊維束6aと緯方向繊維束6bとを織成した織布シートを管状本体8に積層して補強層6を形成した積層部材5の場合に、緯方向繊維束6bの強化繊維4は、隣接する経方向繊維束6aの側部間で大きく屈曲した屈曲部Mを形成する。このような屈曲部Mでは、積層部材5が変形した際、経方向繊維束6aにより、せん断方向の応力が集中しやすい。また、屈曲部Mは、外部からの衝撃で、破損し易い。
【0028】
これに対して、上述した本願発明による補強層30は、図5に示すように管状本体上に巻回されると、緯方向繊維束31bの屈曲部Mが縦方向繊維束31aの緩衝部Pに当接するため、緯方向繊維束31bに応力が作用した際、緩衝部Pの緩衝作用により、緯方向繊維束31bの強化繊維32が屈曲部Mで、変形を許容される。これにより、緩衝部Pに当接する緯方向繊維束31bの屈曲部Mに応力集中することがなくなり、繊維束間のクラックの発生による強度低下を防止し、高耐衝撃性を得ることができる。
【0029】
このような補強層30は、経方向繊維束31aの厚さT1をその幅寸法Wよりも小さく形成することにより、屈曲部Mの屈曲を小さく、かつ、その凹凸を小さくし、織布シート31あるいは管状本体20との間の気泡の発生を抑制して、強度低下を防止することができる。このため、幅寸法Wの値は、厚さ寸法T1の30倍以上で、50倍以上とするのが好ましい。
【0030】
また、強化部Sの幅寸法W1は、緩衝部Pの幅寸法W2よりも大きいこと、換言すると、強化部Sの幅寸法W1を繊維束の幅寸法Wの半分以上とすることにより、繊維束の強度を安定することができる。
【0031】
さらに、経方向繊維束31aの厚さ寸法T1よりも緯方向繊維束31bの厚さ寸法T2を小さくすることにより、緯方向繊維束31bの屈曲部Mの屈曲を小さくすることができる。いずれの場合でも、屈曲部Mに緩衝部Pが当接するため、この緩衝部Pの緩衝作用により、繊維束の強化繊維32の変形が可能となり、屈曲部Mに集中する応力で繊維束にクラックが生じるのが防止される。
【0032】
このような繊維束31a,31bの強化部Sを形成する強化繊維32は、その一部あるいは全部に金属を被覆するようにしてもよい。このような金属被覆繊維には、炭素繊維、あるいはガラス繊維で形成する強化繊維に、金属メッキあるいは金属を蒸着して形成することができる。
【0033】
また、上記織布シート31は、強化繊維32が互いに直交する方向に配向されていることにより、加熱成型する際、特にこの織布シート31の面に沿う変形を抑制することができ、熱変形の少ない第1及び第2の竿杆10,11を構成する管状本体20を実現すると共に、加熱成型時及び冷却時の変形を抑制し、所望の形状及び寸法の高精度な管状本体20を形成することができる。
【0034】
そして、織布シート31による補強層30は、その強化部Sと緩衝部Pの作用により、管状本体20の外周部に積重配置する際、簡便にして容易な巻回作業が実現され、しかも、その緩衝部Pの作用により、装飾として機能を奏し、外観構成の多様化を容易に図ることができる。
【0035】
ここで、上記織布シート31は、装飾系を構成する緩衝部Pを上記PETにアルミニウム蒸着して構成した場合、強化部Sの表面に、繊維に含浸した樹脂のいわゆる樹脂だまりによる凹凸が発生しているが、緩衝部Pに凹凸が発生しにくい。これにより、成形前同じ厚みを有していても、巻回成形後、高さが低くなりやすく、表面研磨を施しても蒸着部分の剥離防止の促進が図れる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、緩衝部Pを強化部Sの一側にのみ設けて構成した場合で説明したが、これに限ることなく、例えば、強化部Sの両側に設けるように構成しても良い。そして、この緩衝部Pは、経方向繊維束31aと緯方向繊維束31bとの一方にのみ設けて構成しても良い。このように互いに交差する繊維束31a,31bの一方にのみ設ける場合には、大きく変形、あるいは湾曲する繊維束と直交する方向の繊維束に設けることが好ましい。
【0037】
また、上記実施の形態では、補強層30を第2の竿杆11の中間部に配するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、その他、例えば管状本体20の先端部等の端部に積層配置するように構成しても良い。これによると、例えば装飾系としての機能の他、端部の破損等の防止機能を形成することも可能となる。さらに、補強層30を管状本体20の全周壁に積層するように構成しても良い。
【0038】
この発明は、上記織布シート31の繊維束形態に限ることなく、その他、図6及び図7に示すように構成しても良い。但し、図6及び図7においては、上記図2及び図3と同一部分について同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図6に示す織布シート31Aは、斜方向及び緯方向の3つの方向に延びる各繊維束31a,31b,31cが、それぞれ強化部Sの両側に緩衝部Pを有し、同方向に延びる繊維束間に隙間Dを形成して三軸織物を構成する。この織布シート31Aは、3つの繊維束31a,31b,31cと六角形状の隙間Dとのコントラストにより、外観を向上させることができる。
【0040】
図7に示す織布シート31Bは、3つの方向に延びる各繊維束31a,31b,31cを綾織状に編み込んで形成してあり、同方向に延びる繊維束は互いに密に近接した状態に配置される。図示の繊維束31a,31b,31cは、強化部Sの一側に緩衝部Pを形成してあるが、これに限らず、図6の繊維束と同様に強化部Sの両側に緩衝部Pを設けてもよい。
【0041】
上記補強層30を形成する織布シート31,31a,31bは、それぞれ一側にのみ緩衝部Pを形成した繊維束と両側に緩衝部Pを形成した繊維束とを組合せて形成してもよい。この各繊維束は、金属で被覆した繊維と金属を被覆してない炭素繊維とを並べて形成してもよく、金属を被覆した繊維よりも、金属を被覆してない炭素繊維を多く配置することにより、炭素繊維が補強層30の比強度を向上させて、柔軟性を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、上記織布シート31,31a,31bの外側には、それぞれガラス繊維を例えば0°及び90°の2つの直交方向に配向して格子状あるいは織布状に形成した強化繊維32に、樹脂を含浸したガラスプリプレグシート(図示しない)を積層してこの本体層20及び織布シート31,31a,31bと共に加熱成形して形成してもよい。このガラスプリプレグシートは、例えば+45°と−45°との2つの方向に配向した格子状あるいは織布状のものが配される。
【0043】
また、このガラスプリプレグシートに代え、管状本体20の表面にクリア塗装を施すように構成してもよい。これにより、補強層30の外観を長期間にわたって維持することができる。このガラスプリプレグ層やクリア塗装層は、滑らかに研磨すると、更に美しい外観を得ることができて、さらに装飾性の向上を図ることが可能となる。
【0044】
さらに、上記織布シート31A,31Bにおいても、例えば繊維束31a,31b,31cの両側部に対して装飾系を構成する緩衝部Pとして、上記PETにアルミニウム蒸着して配することにより、同様にその強化部Sの発生している含浸した樹脂のいわゆる樹脂だまりによる凹凸が発生しにくい。これにより、成形前、同じ厚みを有していても、成形後、高さが低くなりやすく、表面研磨を施しても蒸着部分の剥離防止の促進が図れる。
【0045】
また、上記実施の形態では、織布シート31,31A,31Bを用いて補強層30を管状本体20上に積層配置するように構成した場合で説明したが、これに限ることなく、例えば織布シート31,31A,31Bを用いて管状本体20を直接的に形成するように構成することも可能である。
【0046】
さらに、上記実施の形態では、魚釣用釣竿を構成する管状体に適用した場合について説明したが、これに限ることなく、その他、例えばゴルフクラブやテニスラケット等の各種のスポーツ用品を構成する管状体に適用することが可能で、いずれにおいても同様の効果が期待される。
【0047】
よって、この発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0048】
例えば実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の一実施の形態に係る管状体を適用した魚釣用釣竿の外観構成を示した平面図である。
【図2】図1の補強層の外観を拡大して示した詳細図である。
【図3】図1の補強層を断面して示した断面図である。
【図4】図1の補強層に緩衝部を備えていない場合の問題点を説明するために示した断面図である。
【図5】図1の補強層の作用効果を説明するために示した断面図である。
【図6】この発明の他の実施の形態に係る管状体の要部を拡大して示した詳細図である。
【図7】この発明の他の実施の形態に係る管状体の要部を拡大して示した詳細図である。
【符号の説明】
【0050】
10…第1の竿杆、101…トップガイド、102…固定ガイド、11…第2の竿杆、111…固定ガイド、112…フォアグリップ、113…リールシート、114…リアグリップ、12…継合部層、13…リール、20…管状本体、30…補強層、31,31A,31B…織布シート、31a…繊維束、31b…繊維束、31c…繊維束、32…強化繊維、P…緩衝部、S…強化部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維束を交差させて織り込んで樹脂を含浸させた繊維強化プリプレグシートを巻回した管状本体を備えた管状体において、
前記繊維強化プリプレグシートの複数の繊維束は、少なくとも交差する一方を強化繊維で形成した強化部と、この強化部の側部の少なくとも一方側に沿って配される緩衝部とを備えることを特徴とする管状体。
【請求項2】
繊維強化樹脂で形成した管状本体と、
この管状本体上に積層されるものであって、複数の繊維束を交差させて織り込んで樹脂を含浸させた繊維強化プリプレグシートの、前記複数の繊維束のうち、少なくとも交差する一方を強化繊維で形成した強化部と該強化部の側部の少なくとも一方側に沿って配される緩衝部とを有する補強層と
を具備することを特徴とする管状体。
【請求項3】
前記緩衝部は、前記強化部を形成する強化繊維に比して低弾性の強化繊維で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の管状体。
【請求項4】
前記緩衝部は、前記強化部を形成する強化繊維に比して伸度の大きい柔軟部材で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の管状体。
【請求項5】
前記柔軟部材には、厚さ寸法が前記強化部の厚さと略同等がそれ以下の金属蒸着が施されることを特徴とする請求項4記載の管状体。
【請求項6】
前記強化繊維束は、厚さ寸法に比して幅寸法の大きな帯状を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の管状体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−181869(P2006−181869A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−377982(P2004−377982)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】