説明

管状体

【課題】軽量化すると共に、装飾のムラや欠けを防止し、装飾性に優れた管状体を提供すること。
【解決手段】強化繊維20に合成樹脂22を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して管状体の本体12を形成し、この本体12の最外側に配置される繊維強化プリプレグの外表面側樹脂に装飾粒子30を埋め込んで形成した管状体10であって、最外側の繊維強化プリプレグの外表面側樹脂層22aの平均厚さLを、この最外側の繊維強化プリプレグの強化繊維20の平均径Dよりも小さく形成すると共に、装飾粒子30の平均厚さtを外表面側樹脂層22aの平均厚さL以下に形成した管状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体に関し、特に、本体を、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して形成した管状体に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プリプレグを巻回して形成した竿には、最外層を形成するプリプレグのうち、竿の外周面に相当する部分に予め塗料を塗布しておき、この予め塗装した最外層を形成するプリプレグを巻回した上から成形テープを巻回して焼成し、竿素材を形成することが知られている(例えば特許文献1参照)。この予め塗布する塗料は、透明な樹脂中に層状構造の顔料を混入してあり、この透明な樹脂内で一定方向に規則的な多重反射を行うように配向されている。
【0003】
また、繊維強化プリプレグを巻回して管素材を形成し、この管素材の最外層に位置する繊維強化樹脂層の表面部位に装飾粒子を配設した後、成形テープを緊縛して加熱焼成する管状体も開発されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第3178626号公報
【特許文献2】特開2004−229610
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、最外層を形成するプリプレグのうち、竿の外周面に相当する部分に予め塗料を塗布する場合には、未硬化のプリプレグの表面に塗料を塗布しておくため、塗料重量が大きくなり、更に、塗料およびプリプレグが粘着性を失わない状態でマンドレル上に巻回するため、作業性が悪い。
また、管素材の最外層に位置する繊維強化樹脂層の表面部位に装飾粒子を配設する場合には、繊維強化樹脂層の表面部位における装飾粒子の固定が不十分であると、装飾粒子が脱落し、あるいは、成形テープを緊縛する際に装飾粒子が移動し、外観上、ムラや欠けが発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、このような事情に基いてなされたもので、軽量化すると共に、装飾のムラや欠けを防止し、装飾性に優れた管状体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の管状体は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して管状体の本体を形成し、この本体の最外側に配置される繊維強化プリプレグの外表面側樹脂に装飾粒子を埋め込んで形成した管状体であって、前記最外側の繊維強化プリプレグの外表面側樹脂の平均厚さLを、この最外側の繊維強化プリプレグの強化繊維の平均径Dよりも小さく形成すると共に、前記装飾粒子の平均厚さtを前記外表面側樹脂の平均厚さL以下に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の管状体によると、本体の最外側に配置される繊維強化プリプレグの外表面側樹脂に、装飾粒子が確実に保持されて脱落を防止でき、しかも、この装飾粒子が繊維強化プリプレグの外表面側の肉厚が極めて薄い樹脂内に保持されるために、極めて軽量でかつ装飾効果の高い管状体が形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1から図4は、本発明の好ましい実施形態による管状体10を示す。
図1に示すように、この管状体10は、例えば釣竿用として形成してあり、中空薄肉構造の本体12を有する。この本体12は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下の説明では、単にプリプレグと称する)を図2に示す芯金8に巻回することで形成される。このようなプリプレグは、強化繊維として例えば繊維直径が5〜7μm程度のカーボン繊維、ガラス繊維あるいはアラミド繊維等を用いるのが好ましく、強化繊維に含浸する樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を混在させてもよい。
【0009】
本実施形態では、この本体12は、図3に示すように内層14と中間層16と外層18とを有する三層構造に形成してあり、内層14と外層18とはプリプレグの強化繊維を周方向に引き揃え、中間層16では軸長方向に引き揃えてある。図4に、このような外層18の強化繊維20と、これらの強化繊維20に含浸あるいは混在させた樹脂22とを示す。この外層18を形成するプリプレグについては、その最外層すなわち本体12の外表面を形成するプリプレグの樹脂含浸量を20wt%〜38wt%の範囲とすることにより、この本体12の軽量化を促進することができる。
【0010】
なお、本体12は、このような三層構造に限らず、適宜数の積層構造にプリプレグを巻回して形成してもよく、内層14と中間層16と外層18とのそれぞれの層を複数枚のプリプレグで形成してもよい。また、その強化繊維を引き揃える方向も軸長方向に対して適宜角度に傾斜した偏向方向に引き揃えて形成することもでき、好適に接着できるものであれば、互いに含浸する樹脂の異なるプリプレグを積層させてもよい。更に、図示のような中空構造に限らず、大きく撓ませることが可能な中実構造に形成することもできる。
【0011】
このようにプリプレグを積層して形成した本体12は、図2に示すように、その外周部に緊締用テープ24を巻回し、この緊締用テープ24の締付け力により、本体12を芯金8上に加圧する。本体12の外周面の全体を所要の圧力で均一に加圧するため、緊締用テープ24を例えば1.5〜2mm程度のピッチp(図3)で、所定幅づつ重ねて螺旋状に巻回するのが好ましい。このように螺旋状に巻回する緊締用テープ24は、例えば、厚さが10〜35μm、幅寸法が5〜20mm程度の寸法を有する例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂あるいはこれらの樹脂の組合せで一層、二層あるいはサンドイッチ構造に形成され、本体12の外面を所要の締付け力で加圧するための十分な強さに形成することが好ましい。
【0012】
図3および図4は、このような緊締用テープ24を巻回した本体12を、所要温度で所定時間にわたって焼成し、硬化した後、芯金8と共に緊締用テープ24を取外した状態を示す。本体12の外側面には、緊締用テープ24の平坦な内面によるなだらかな傾斜状面26と、緊締用テープ24の側縁部による段部28とが形成される。段部28は、先に巻回された緊締用テープ24の外面とこの側縁部に重ねて巻回された緊締用テープの内面との間に形成され、外層18の外表面上を螺旋状に延びる。
【0013】
図5および図6に更に拡大して示すように、外層18の表面側には強化繊維20が配置されない樹脂層22aが形成してあり、この樹脂層22a中に薄板状の装飾粒子30が埋め込まれている。
このような装飾粒子30は、本体12の外層18を形成するプリプレグ、特に最外側に配置される樹脂層22aを形成するプリプレグの外表面側樹脂に、種々の方法で埋め込むことが可能である。例えば、装飾粒子30を本体12の外表面側樹脂にスプレー等で吹き付けた後、揮発成分を除去して装飾粒子30のみを残留させる方法を採用することができる。このように装飾粒子30が表面に付着した未硬化のプリプレグで形成された本体12は、例えばフッ素材料製マットに回転させながら押付けあるいはテープを巻回する等の外圧を作用させることにより、装飾粒子30を樹脂層22a中に完全に埋め込むことができる。フッ素材料製マットに本体12を押付ける場合には、装飾粒子30が互いに重なっている状態から、余分な装飾粒子30を除去することができる。また、テープを巻回して外力を与える場合には、装飾粒子30を埋め込んだ後に、テープをはがすことで、本体12から余分な装飾粒子30を除去することができる。
【0014】
装飾粒子30を樹脂層22a内に埋め込むためには適宜の方法を採用可能であり、巻回したプリプレグを最終的に加熱硬化する前に、プリプレグの高い粘性状態を保ちつつ、樹脂層22aに装飾粒子30をなじませておくことが好ましい。これにより、未硬化の樹脂層22a内での装飾粒子30の動きが抑制され、この状態で最終的な加熱硬化処理を行うことができる。
【0015】
いずれの場合も、最外側の繊維強化プリプレグの表面側樹脂で形成される樹脂層22aの平均厚さLを、この最外側の繊維強化プリプレグの強化繊維20の平均径Dよりも小さく形成すると共に、装飾粒子30の厚さtを樹脂層22a平均厚さL以下に形成する。ここに、樹脂層22aの平均厚さLは、本体12を硬化した後の最も外表面側に位置する強化繊維20と樹脂層22aの外表面との間の距離の平均値であり、装飾粒子30の平均厚さtは、装飾粒子30の差渡し寸法の大きい方向に沿う両端部および中央部のそれぞれの厚さの平均値である。この樹脂層22aは、平均厚さLを4μm〜6μmとすることができ、通常の塗料を樹脂層22aの表面に塗布する場合と比較すると、極めて薄く、しかも内部の装飾粒子30により、塗料を塗布した場合と同等の装飾効果を得ることができる。また、装飾粒子30の平均厚さtは0.05μm〜1μmに形成してもよく、このような範囲に形成することにより、樹脂層22aを形成するプリプレグの外表面側樹脂に装飾粒子30が食い込み易く、樹脂層22aとの密着性に優れたものとすることができる。
【0016】
このような装飾粒子30を埋設した樹脂層22aの外表面は、図5に示すように、装飾粒子30が突出させることなく強化繊維20と共に完全に内部に埋め込み、滑らかな曲面状の傾斜状面26を形成することができる。この場合には、装飾粒子30が強化繊維20と接触して密着不良となった場合であっても、装飾粒子30が樹脂層22aから脱落するのを防止することができる。この装飾粒子30の全体が樹脂層22aの樹脂で覆われ、装飾粒子30と傾斜状面26との間に樹脂層22aを形成する樹脂が層状に介挿されることにより、装飾粒子30は本体12および樹脂層22aから脱落し難く、耐磨耗性に優れると共に、装飾粒子30の退色あるいは劣化が抑制され、長期間にわたって装飾効果を維持することができる。
【0017】
また、例えば装飾粒子30の平均厚さtが樹脂層22aの平均厚さLとほぼ等しい場合には、図6に示すように、装飾粒子30の一部が外部に露出して樹脂層22aの傾斜状面26の一部を形成することもある。このように、装飾粒子30がその一部を直接外部に露出させた場合には、この装飾粒子30の本来の色彩や光輝感がそのまま外部に表れ、装飾効果を増大させることができる。装飾粒子30が樹脂層22a内に完全に埋設される場合および一部が外表面に露出される場合のいずれの場合であっても、樹脂層22aの外表面が上述のような外圧で滑らかに湾曲した平滑面で形成されることにより、管状体10が軽量化されることに加え、この外表面に凹凸がほとんど形成されることなく、装飾粒子30の発色および光輝感を強調させることができる。
【0018】
図7は、このように形成した管状体10の外観を示す。本実施形態では、種々の形状の装飾粒子30を組合わせてあり、このように多種類の装飾粒子30を使用することにより、それぞれの装飾粒子30による管状体10の光輝性のあるきらめきを強調することができ、変化のある外観を形成することができる。図示のように、段部28に近接した部位等の適宜部位で装飾粒子30の密度を粗く形成し、あるいは管状体10の外表面の全体にわたって装飾粒子30の密度を部分的に変えることで、模様上の外観の差異を出してもよい。
【0019】
図8に示すように、このような装飾粒子30は、薄い薄片状の金属あるいは雲母等の天然鉱物製のコア部材32を被覆層34で覆って形成することができる。この被覆層34には、樹脂、フッ化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、あるいはセラミックス等を用いることができる。この装飾粒子30は、金属等の光輝性のある色彩を有する粒子で形成するだけでなく、透明性粒子で形成することもできる。透明性粒子で形成する場合には、透明金属薄膜チップあるいはガラスフレークの多層構造の薄膜状樹脂チップあるいはホログラムチップ等を用いることができる。更に、装飾粒子30として樹脂に金属を蒸着した薄片状粒子、干渉光を発する光輝性粒子を用いても、管状体12の外観のきらびやかさを強調することができる。このような装飾粒子の外形形状は、任意の形状に形成することができ、例えば円形等の形状よりも種々の形状の箔状形状とすることにより、本体12の外表面の隠蔽効果を向上させることができる。
【0020】
上記のように形成された管状体10は、本体12のプリプレグが外表面側に形成する樹脂層22aに種々の形状の薄膜状あるいは箔状の装飾粒子30を埋め込み、この樹脂層22aの平均厚さLを、この最外側の繊維強化プリプレグの強化繊維20の平均径Dよりも小さく形成すると共に、装飾粒子30の平均厚さtを樹脂層22aの平均厚さL以下に形成したことにより、本体の最外側に配置される繊維強化プリプレグの外表面側樹脂22に、装飾粒子30が確実に保持されて脱落を防止され、しかも、この装飾粒子30が繊維強化プリプレグの外表面側の肉厚が極めて薄い樹脂層22a内に保持されるために、極めて軽量でかつ装飾効果の高い管状体10を形成することができる。
【0021】
なお、本体12の外層18を形成するプリプレグは、樹脂22が装飾粒子30を外部から視認可能とするものであれば、透明以外にも半透明のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態による管状体を示す概略図。
【図2】図1の管状体を製造する工程の一部を示す説明図。
【図3】図1の管状体の本体の一部を拡大した断面図。
【図4】図1の管状体の本体を形成する外層の一部を拡大した断面図。
【図5】図1の管状体の外層の表面側における装飾粒子の配置状態を示す概略図。
【図6】図5と同様な装飾粒子の他の配置状態を示す概略図。
【図7】図1の管状体の装飾粒子による外観を例示する説明図。
【図8】装飾粒子を例示する拡大断面図。
【符号の説明】
【0023】
10…管状体、12…本体、18…外層、20…強化繊維、22…樹脂、22a…樹脂層(表面側樹脂)、30…装飾粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグを巻回して管状体の本体を形成し、この本体の最外側に配置される繊維強化プリプレグの外表面側樹脂に装飾粒子を埋め込んで形成した管状体であって、前記最外側の繊維強化プリプレグの外表面側樹脂の平均厚さLを、この最外側の繊維強化プリプレグの強化繊維の平均径Dよりも小さく形成すると共に、前記装飾粒子の平均厚さtを前記外表面側樹脂の平均厚さL以下に形成したことを特徴とする管状体。
【請求項2】
前記装飾粒子は、前記外表面側樹脂で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の管状体。
【請求項3】
前記装飾粒子の一部が、前記外表面側樹脂から外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の管状体。
【請求項4】
前記外表面側樹脂の平均厚さLは、4μm〜6μmの範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の管状体。
【請求項5】
前記装飾粒子の厚さtは、0.05μm〜1μmの範囲であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の管状体。
【請求項6】
前記最外側の繊維強化プリプレグは、強化繊維が外表面側樹脂で完全に覆われていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の管状体。
【請求項7】
前記本体は、複数の繊維強化プリプレグを巻回して形成され、最外側に巻回される繊維強化プリプレグの樹脂含浸量は20wt%〜38wt%の範囲であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の管状体。
【請求項8】
前記本体は、外表面が平滑面で形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の管状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−89478(P2007−89478A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283569(P2005−283569)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】