説明

管状火炎バーナ

【課題】安定した火炎の形成ができて良好な燃焼性を確保できるとともに、一定量以上の希釈ガスを投入しても失火せずに、熱風の温度を適切に低下させることができる管状火炎バーナを提供する。
【解決手段】管状火炎バーナ1おいて、燃焼室10は、胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部13と、胴長方向の中間部分から胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部14と、小径部13から大径部14に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部15とを備える。燃焼室10の小径部13には、燃料ガス用ノズル16及び酸素含有ガス用ノズル17が設置される。燃焼室10の大径部14には、大径部14内に大径部14の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズル18が設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉や燃焼器に備えられる管状火炎バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
工業的に用いられる炉や燃焼器に備えられるガスバーナは、燃料ガスと酸素含有ガスの混合法によって、拡散燃焼方式(外部混合)のものと、予混合燃焼方式(内部混合)のものとに大別される。これら型式のバーナのうち、予混合燃焼方式のものは、比較的短い火炎を形成させることができる等の利点を有するため、炉や燃焼器に多く用いられている。
従来、この種の予混合燃焼方式のガスバーナとして、例えば、図9に示す管状火炎バーナが知られている(特許文献1参照)。図9は、従来例の管状火炎バーナの制御システム構成図である。
【0003】
図9における管状火炎バーナ100は、胴長方向(図9における左右方向)に延びる円筒管状の燃焼室110を備えている。この燃焼室110の胴長方向の一端は開放され、燃焼ガスの排出口111となっている。一方、燃焼室110の胴長方向の他端は閉塞され、その他端近傍には、胴長方向に沿って延びるスリット112が形成されている。このスリット112には、ノズル113が接続されている。ノズル113は、燃料ガスと酸素含有ガスよりなる予混合気をスリット112を介して燃焼室110内に吹き込む。
【0004】
ノズル113は、燃焼室110の内壁面の接線方向に向けて設けられ、予混合気の吹き込みによって燃焼室110内に旋回流が形成されるようになっている。また、燃焼室112の胴長方向の他端近傍には、点火プラグ114が設けられている。
更に、燃焼室110には、燃焼室110の一端側端部である下流側端部の内壁の温度を測定するための温度計115が設けられ、この温度計115で検出された値の信号が演算・制御器117へ送られるようになっている。また、予混合気を吹き込むノズル113に接続された配管には、流量調節計116が接続され、この流量調節計116で検出された流量値の信号が演算・制御器117へ送られると共に、演算・制御器117から流量調節計116へ制御信号が送られるようになっている。
【0005】
そして、図9に示した管状火炎バーナ100において、ノズル113から吹き込まれて旋回流が形成された予混合気に点火プラグ114により点火すると、燃焼室110内には管状の火炎120が生成される。そして、燃焼室110内のガスは旋回しながら下流側へ流れるが、その間、内壁側のガスが順次燃焼して軸心側へ移動し、排出口111から排出される。
【0006】
この図9に示した管状火炎バーナ100によれば、管状火炎バーナ100内に火炎が形成されるので、バーナ100の前方に燃焼用の空間が必要ではなく、燃焼設備の小型化を図ることができる。また、燃焼ガスの温度のバラツキが小さく、局所的な高温領域が形成されない上に、酸素供給比を下げることができるので、NOXなどの有害ガスの発生が極めて少なく、ススの発生もほとんどなく、未燃焼のまま排出されるガスもほとんどなく、排ガスの低公害化を達成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−281015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図9に示した管状火炎バーナ100などの炉や燃焼器に備えられる管状火炎バーナは、燃焼室の排出口から排出される熱風(排ガス)を利用し、熱風発生装置として使用される場合がある。この場合、例えば、空気、窒素等の大量の希釈温度調整ガスを用いて排ガスを希釈し、熱風の温度調整を行う要望がある。
しかしながら、図9に示した管状火炎バーナ100においては、バーナ単体を熱風発生装置として使用する場合の、排ガスを希釈する方法については全く記載がない。具体的に述べると、管状の火炎120を形成する上で重要な部分である燃焼室110の胴長方向中間部からの希釈温度調整ガスを吹き込む場合の燃焼室110の形状や吹き込み方法に関する記載が全くない。また、燃焼室110の排出口111において、希釈温度調整ガスで排ガスを希釈し、熱風の温度を調整する方法について全く記載がない。
【0009】
一方、燃焼室110においてノズル113の胴長方向下流側に単純に希釈温度調整ガスを円筒管状の燃焼室110の接線方向に投入しても、火炎の直径が減少し、一定量以上の希釈温度調整ガスを投入したら失火してしまうという問題点があった。投入する希釈温度調整ガスの量が多ければその分だけ熱風の温度を低下させることができるが、失火してしまうとその目的を達成し得ない。
従って、本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、安定した火炎の形成ができて良好な燃焼性を確保できるとともに、一定量以上の希釈温度調整ガスを投入しても失火せずに、熱風の温度を適切に低下させることができる管状火炎バーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に係る管状火炎バーナは、胴長方向に延びる円筒管状に形成され、前記胴長方向の一端が開放した排出口を形成し、前記胴長方向の他端が閉塞した燃焼室と、該燃焼室の胴長方向の他端近傍に設置され、前記燃焼室内に該燃焼室の接線方向に燃料ガスを吹き込む燃料ガス用ノズルと、該燃焼室の胴長方向の他端近傍に設置され、前記燃焼室内に該燃焼室の接線方向に酸素含有ガスを吹き込む酸素含有ガス用ノズルとを備えた管状火炎バーナにおいて、前記燃焼室は、前記胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部と、前記胴長方向の中間部分から前記胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部と、前記小径部から前記大径部に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部とを備え、前記燃焼室の小径部に、前記燃料ガス用ノズル及び前記酸素含有ガス用ノズルを設置すると共に、前記燃焼室の大径部に、前記燃焼室の大径部内に該大径部の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズルを設置したことを特徴としている。
【0011】
また、本発明のうち請求項2に係る管状火炎バーナは、請求項1記載の管状火炎バーナにおいて、 前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面矩形形状のスリットとされており、該スリットの短辺方向の厚さをtとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(1)式が成立することを特徴としている。
D2−D1≧t…(1)
【0012】
更に、本発明のうち請求項3に係る管状火炎バーナは、請求項1記載の管状火炎バーナにおいて、 前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面円形状の丸孔とされており、該丸孔の直径をdとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(2)式が成立することを特徴としている。
D2−D1≧d…(2)
【0013】
また、本発明のうち請求項4に係る管状火炎バーナは、請求項2又は3記載の管状火炎バーナにおいて、燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速をVb、燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速をVaとした場合に、次の(3)式が成立するように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整する制御手段を備えたことを特徴としている。
Vb=0.9Va〜1.1Va…(3)
ここで、Vb=DIb/{(πD22/4)−(πD12/4)}
Va=DIa/(πD12
但し、DIbは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分における最大の希釈温度調整ガスの流量、DIaは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分における最大の燃料ガス及び酸素含有ガスの流量である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のうち請求項1に係る管状火炎バーナによれば、燃焼室は、胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部と、胴長方向の中間部分から胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部と、小径部から大径部に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部とを備えているので、燃焼室の小径部内に円量ガス及び酸素含有ガスを吹き込んで点火すると、火炎は、小径部において径が小さくテーパ部で徐々に径が大きくなり、大径部において径が最大となる。そして、燃焼室の大径部に、燃焼室の大径部内に大径部の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズルを設置したので、希釈温度調整ガス用ノズルから希釈温度調整ガスを大径部内に吹き込むと、排出口からの熱風の温度が低下すると共に、希釈温度調整ガス用ノズルから希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向下流側の火炎(径が大きくなった火炎)の径が縮小するように作用し、火炎が燃焼室の排出口近傍まで延びる。一方、希釈温度調整ガス用ノズルから希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎の径、すなわち、燃焼反応面積(火炎の表面積)は維持される。この結果、適切な燃焼反応を維持できて良好な燃焼性を確保できるとともに、一定量以上の希釈温度調整ガスを希釈温度調整ガス用ノズルから燃焼室内に投入しても失火することはなく、熱風の温度を適切に低下させることができる。
【0015】
また、本発明のうち請求項2に係る管状火炎バーナによれば、請求項1記載の管状火炎バーナにおいて、 前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面矩形形状のスリットとされており、該スリットの短辺方向の厚さをtとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(1)式が成立する。
D2−D1≧t…(1)
【0016】
このため、スリットの短辺方向の厚さtが小さいので、スリットから吹き込まれた希釈温度調整ガスによって火炎が干渉されにくく、良好な火炎を形成することができる。
更に、本発明のうち請求項3に係る管状火炎バーナによれば、請求項1記載の管状火炎バーナにおいて、 前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面円形状の丸孔とされており、該丸孔の直径をdとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(2)式が成立する。
D2−D1≧d…(2)
【0017】
このため、丸孔の直径dが小さいので、丸孔から吹き込まれた希釈温度調整ガスによって火炎が干渉されにくく、良好な火炎を形成することができる。
また、本発明のうち請求項4に係る管状火炎バーナによれば、請求項2又は3記載の管状火炎バーナにおいて、燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速をVb、燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速をVaとした場合に、次の(3)式が成立するように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整する制御手段を備えている。
Vb=0.9Va〜1.1Va…(3)
【0018】
これにより、希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速Vbが、燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速Vaとほぼ等しくなり、希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より上流側の火炎が希釈温度調整ガスに干渉されるおそれがなくなり、失火を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る管状火炎バーナの実施形態の制御システム構成図である。
【図2】希釈温度調整ガスが吹き込まれていない状態の管状火炎バーナの実施形態を示す断面模式図である。
【図3】図2の管状火炎バーナを示し、(A)は図2における3A−3A線に沿う断面図、(B)は図2における3B−3B線に沿う断面図である。
【図4】希釈温度調整ガスが吹き込まれた状態の管状火炎バーナの実施形態を示す断面模式図である。
【図5】円筒管状の燃焼室において胴長方向の下流側に単純に希釈温度調整ガス用ノズルを設置して希釈温度調整ガスを燃焼室内に吹き込む例の管状火炎バーナにおいて、希釈温度調整ガスが吹き込まれていない状態の断面模式図である。
【図6】図5の管状火炎バーナを示し、(A)は図5における6A−6A線に沿う断面図、(B)は図5における6B−6B線に沿う断面図である。
【図7】円筒管状の燃焼室において胴長方向の下流側に単純に希釈温度調整ガス用ノズルを設置して希釈温度調整ガスを燃焼室内に吹き込む例の管状火炎バーナにおいて、希釈温度調整ガスが吹き込まれた状態の断面模式図である。
【図8】希釈温度調整ガスとして空気を吹き込んだ場合の当該空気の流量と排出口における熱風温度との関係を示すグラフである。
【図9】従来例の管状火炎バーナの制御システム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る管状火炎バーナの実施形態の制御システム構成図である。図2は、希釈ガスが吹き込まれていない状態の管状火炎バーナの実施形態を示す断面模式図である。図3は、図2の管状火炎バーナを示し、(A)は図2における3A−3A線に沿う断面図、(B)は図2における3B−3B線に沿う断面図である。図4は、希釈温度調整ガスが吹き込まれた状態の管状火炎バーナの実施形態を示す断面模式図である。
【0021】
図1乃至図4に示す管状火炎バーナ1は、胴長方向(図1、図2及び図4における左右方向)に延びる円筒管状の燃焼室10を備えている。この燃焼室10の胴長方向の一端(図1、図2、及び図4における左端)は開放され、燃焼ガスの排出口11となっている。一方、燃焼室10の胴長方向の他端は閉塞部12によって閉塞されている。
【0022】
ここで、燃焼室10は、図1乃至4に示すように、胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部13と、胴長方向の中間部分から胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部14と、小径部13から大径部14に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部15とを備えている。このため、燃焼室10において、内径及び外径の小さな小径部13から内径及び外径の大きな大径部14にかけてテーパ部15により滑らかに径が大きくなるように設定される。
【0023】
そして、燃焼室10の胴長方向の他端近傍、即ち小径部13には、1対の燃料ガス用ノズル16及び1対の酸素含有ガス用ノズル17が設置されている。1対の燃料ガス用ノズル16は、図3(A)に示すように、小径部13の上下両側に対角を成すように対向配置されている。各燃料ガス用ノズル16は、小径部13に胴長方向に沿って形成された接続用開口13Aに接続される。各燃料ガス用ノズル16は、小径部13内に小径部13内壁面の接線方向に沿って燃料ガスを吹き込むようになっている。また、1対の酸素含有ガス用ノズル17は、図3(A)に示すように、小径部13の左右両側に対角を成すように対向配置されている。各酸素含有ガス用ノズル17は、小径部13の左右両側に胴長方向に沿って形成された接続用開口13Bに接続される。各酸素含有ガス用ノズル17は、小径部13内に小径部13内壁面の接線方向に沿って酸素含有ガスを吹き込むようになっている。
【0024】
また、燃焼室10の胴長方向の他端近傍、即ち小径部13には、点火プラグ19も設置されている。
更に、燃焼室10の大径部14には、1対の希釈温度調整ガス用ノズル18が設置されている。1対の希釈温度調整ガス用ノズル18は、図3(B)に示すように、大径部14の左右両側に対角を成すように対向配置されている。各希釈温度調整ガス用ノズル18は、大径部14に胴長方向に沿って形成された接続用開口14Aに接続される。各希釈温度調整ガス用ノズル18は、大径部14内に大径部14内壁面の接線方向に沿って希釈温度調整ガスを吹き込むようになっている。希釈温度調整ガスは、排出口11からの熱風の温度を低下させるためのものであって、熱風の温度を低下できるものであれば、空気、窒素などの不活性ガス、酸素含有ガス、あるいは燃料ガスなどのいずれであってもよい。
【0025】
そして、希釈温度調整ガス用ノズル18における大径部14内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、図3(B)に示すように、断面矩形形状のスリット18Aとされている。ここで、スリット18Aの短辺方向の厚さはtとされている。また、図2に示すように、小径部13の内径はD1とされるとともに、大径部14の内径はD2とされている。そして、小径部13の内径D1及び大径部14の内径D2について、次の(1)式が成立するようになっている。
D2−D1≧t…(1)
【0026】
なお、希釈温度調整ガス用ノズル18における大径部14内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面円形状の緒径dの丸孔としてもよい。この場合、小径部13の内径D1及び大径部14の内径D2について、次の(2)式が成立するようにする。
D2−D1≧d…(2)
更に、酸素含有ガスを吹き込む酸素含有ガス用ノズル17に接続された配管には、流量調節計20が接続され、燃料ガスを吹き込む燃料ガス用ノズル16に接続された配管には、流量調節計21が接続されている。更に、希釈温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズル18に接続された配管にも、流量調節計22が接続されている。そして、これら流量調節計20、21、22で検出された流量値の信号が演算・制御器23へ送られると共に、演算・制御器23から流量調節計20、21、22へ制御信号が送られるようになっている。
【0027】
そして、演算・制御器23は、燃焼室10の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速をVb、燃焼室10の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速をVaとした場合に、次の(3)式が成立するように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整する。
Vb=0.9Va〜1.1Va…(3)
ここで、Vb=DIb/{(πD22/4)−(πD12/4)}
Va=DIa/(πD12
但し、DIbは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分における最大の希釈温度調整ガスの流量、DIaは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分における最大の燃料ガス及び酸素含有ガスの流量である。
【0028】
具体的には、流量調節計20で検出された酸素含有ガスの流量値、流量検出計21で検出された燃料ガスの流量値が演算・制御器23に送られ、演算・制御器23は、これらの値を所定期間取得し、燃焼室10の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分における最大の燃料ガス及び酸素含有ガスの流量値を演算する。そして、当該燃焼室10の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分における最大の燃料ガス及び酸素含有ガスの流量値について、温度圧力補正を行い、DIaを算出する。この算出されたDIaから燃焼室10の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速Va=DIa/(πD12)を算出する。
【0029】
その一方、流量調節計22で検出された希釈温度調整ガスの流量値が演算・制御器23に送られ、演算・制御器23は、この値を所定期間取得し、燃焼室10の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分における最大の希釈温度調整ガスの流量値を演算する。そして、当該燃焼室10の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分における最大の希釈温度調整ガスの流量値について、温度圧力補正を行い、DIbを算出する。この算出されたDIbから燃焼室10の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速Vb=DIb/{(πD22/4)−(πD12/4)}を算出する。
そして、演算・制御器23は、算出されたVa、Vbに基づいて、Vb=0.9Va〜1.1Vaとなるように、流量調節計20、21、22へ制御信号を送り、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整する。演算・制御器23が、請求項4に規定する「制御手段」を構成する。
【0030】
次に、管状火炎バーナ1の動作について説明する。
管状火炎バーナ1において、燃料ガス用ノズル16から燃料ガスが、酸素含有ガス用ノズル17から酸素含有ガスが燃焼室10内に吹き込まれると、燃料ガス及び酸素含有ガスが旋回流となって混合し、点火プラグ19により点火される。すると、燃焼室10内には、図2に示すように、管状の火炎30が生成される。そして、燃焼室10内のガスは旋回しながら下流側へ流れるが、その間、内壁側のガスが順次燃焼して軸心側へ移動し、排出口11から排出される。
【0031】
ここで、図2及び図3(A)、(B)に示すように、希釈温度調整ガス用ノズル18から希釈温度調整ガスが燃焼室10内に吹き込まれていない場合には、火炎30は、小径部13、テーパ部15及び大径部14にかけてそれら火炎30は、小径部13、テーパ部15及び大径部14の内径に沿うように広がる。つまり、火炎30は、小径部13において径が小さくテーパ部15で徐々に径が大きくなり、大径部14において径が最大となる。
【0032】
そして、希釈温度調整ガス用ノズル18から希釈温度調整ガスを燃焼室10内に吹き込むと、排出口11からの熱風の温度が低下すると共に、図4に示すように、希釈温度調整ガス用ノズル18から希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向下流側の火炎30(径が大きくなった火炎)の径が縮小するように作用し、火炎30が燃焼室10の排出口11近傍まで延びる。一方、希釈温度調整ガス用ノズル18から希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎30の径、すなわち、燃焼反応面積(火炎の表面積)は維持される。この結果、適切な燃焼反応を維持できて良好な燃焼性を確保できるとともに、一定量以上の希釈温度調整ガスを希釈温度調整ガス用ノズル18から燃焼室10内に投入しても失火することはなく、熱風の温度を適切に低下させることができる。
【0033】
なお、希釈温度調整ガスを大量に吹き込むと、希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎30が希釈温度調整ガスに干渉されて、良好な火炎の形成ができずに、失火してしまうおそれがある。これを回避するために、前述した(3)式が成立するように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整することが好ましい。これにより、希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速Vbが、燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速Vaとほぼ等しくなり、希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎30が希釈温度調整ガスに干渉されるおそれがなくなり、失火を確実に防止することができる。
【0034】
希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速Vbが、燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速Vaよりも10%超えて大きくなったり、10%超えて小さくなるように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整すると、希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎30が希釈温度調整ガスに干渉されて、良好な火炎の形成ができずに、失火してしまうおそれがある。
【0035】
また、燃焼室10の小径部13の内径D1及び大径部14の内径D2について、希釈温度調整ガス用ノズル18の希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分であるスリット18Aの短辺方向の厚さtとの関係で、D2−D1≧tが成立している。このため、スリット18Aの短辺方向の厚さtが小さいので、スリット18Aから吹き込まれた希釈温度調整ガスによって火炎30が干渉されにくく、良好な火炎30を形成することができる。また、希釈温度調整ガス用ノズル18の希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分を直径dの断面円形状の丸孔とし、D2−D1≧dとした場合も同様の効果を得ることができる。
【0036】
次に、図5乃至図7を参照して、円筒管状の燃焼室において胴長方向の下流側に単純に希釈温度調整ガス用ノズルを設置して希釈温度調整ガスを燃焼室内に吹き込む例について説明する。図5は、円筒管状の燃焼室において胴長方向の下流側に単純に希釈温度調整ガス用ノズルを設置して希釈温度調整ガスを燃焼室内に吹き込む例の管状火炎バーナを示す断面模式図である。図6は、図5の管状火炎バーナを示し、(A)は図5における6A−6A線に沿う断面図、(B)は図5における6B−6B線に沿う断面図である。図7は、円筒管状の燃焼室において胴長方向の下流側に単純に希釈温度調整ガス用ノズルを設置して希釈温度調整ガスを燃焼室内に吹き込む例の管状火炎バーナにおいて、希釈温度調整ガスが吹き込まれた状態の断面模式図である。
【0037】
図5乃至図7に示す管状火炎バーナ51は、管状火炎バーナ1と同様に、胴長方向(図5における左右方向)に延びる円筒管状の燃焼室60を備えている。この燃焼室60の胴長方向の一端(図5における左端)は開放され、燃焼ガスの排出口61となっている。一方、燃焼室60の胴長方向の他端は閉塞部62によって閉塞されている。
ここで、燃焼室60は、管状火炎バーナ1における燃焼室10と異なり、小径部13及び大径部14は存在せず、胴長方向において均一の外径及び内径を有する単純な円筒管形状に形成されている。
【0038】
そして、燃焼室60の胴長方向の他端近傍には、管状火炎バーナ1と同様に、1対の燃料ガス用ノズル66及び1対の酸素含有ガス用ノズル67が設置されている。1対の燃料ガス用ノズル66は、図6(A)に示すように、燃焼室60の上下両側に対角を成すように対向配置されている。各燃料ガス用ノズル66は、燃焼室60内に燃焼室60内壁面の接線方向に沿って燃料ガスを吹き込むようになっている。また、1対の酸素含有ガス用ノズル67は、図6(A)に示すように、燃焼室60の左右両側に対角を成すように対向配置されている。各酸素含有ガス用ノズル67は、燃焼室60内に燃焼室60内壁面の接線方向に沿って酸素含有ガスを吹き込むようになっている。
【0039】
また、燃焼室60の胴長方向の他端近傍には、管状火炎バーナ1と同様に、点火プラグ69も設置されている。
更に、燃焼室60の胴長方向の中央よりやや一端側、即ち下流側には、1対の希釈温度調整ガス用ノズル68が設置されている。1対の希釈温度調整ガス用ノズル68は、管状火炎バーナ1における希釈温度調整ガス用ノズル18と同様に、図6(B)に示すように、燃焼室60の左右両側に対角を成すように対向配置されている。各希釈温度調整ガス用ノズル68は、燃焼室60内に燃焼室60内壁面の接線方向に沿って希釈温度調整ガスを吹き込むようになっている。
そして、図5及び図6(A)、(B)に示すように、希釈温度調整ガス用ノズル68から希釈温度調整ガスが燃焼室60内に吹き込まれていない場合には、火炎80は、燃焼室60の内径に沿うように胴長方向下流側に向けて延びる。
【0040】
そして、希釈温度調整ガス用ノズル68から希釈温度調整ガスを燃焼室60内に吹き込むと、排出口61からの熱風の温度が低下するが、図7に示すように、燃焼室60内の胴長方向全体の火炎80の径が縮小するように作用し、火炎80が燃焼室60の排出口61近傍まで延びる。この結果、希釈温度調整ガス用ノズル68から希釈温度調整ガスを吹き込んだ部分より胴長方向上流側の火炎80の径、すなわち、燃焼反応面積(火炎の表面積)も縮小する。この結果、ガスが未反応の状態で排出口61へ行くことになり、一定量以上の希釈温度調整ガスを希釈温度調整ガス用ノズル68から燃焼室60内に投入すると、失火してしまうおそれがある。このため、熱風の温度を大きく低下させるために一定量以上の希釈温度調整ガスを投入することができないことになる。
【0041】
従って、図1乃至図4に示した本実施形態に係る管状火炎バーナ1においては、燃焼室10を、胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部13と、胴長方向の中間部分から胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部14と、小径部13から大径部14に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部15とで構成し、燃焼室10の大径部14に、燃焼室10の大径部14内に大径部14の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズル18を設置する。
【0042】
なお、小径部13と大径部14とに間にテーパ部15を設けないで、燃焼室10を構成すると、点火プラグ19により点火した際に、火炎30は、小径部13から大径部14にかけて径が円滑に大きくならない。このため、小径部13と大径部14とに間にテーパ部15を設け、火炎30の径を、テーパ部15の内径に沿って徐々に、即ち滑らかに大きくする必要がある。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、燃料ガス用ノズル16及び酸素含有ガス用ノズル17の設置個数及び配置の仕方は、それぞれ燃焼室10内に燃料ガス、酸素含有ガスを吹き込めるようになっていれば、図示した例に限られない。
また、希釈温度調整ガス用ノズル18の設置個数及び配置の仕方は、燃焼室10の大径部14内に該大径部14の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込むようになっていれば、図示した例に限られない。
【実施例】
【0044】
本発明の効果を検証すべく、図2に示す管状火炎ガスバーナ1において、希釈温度調整ガスとして空気を吹き込んだ場合の当該空気の流量と排出口における熱風温度との関係を調査した。
この調査において、管状火炎バーナ1における寸法関係は下記の通りである。
燃焼室10の小径部13の内径D1;φ174mm
燃焼室10の大径部14の内径D2:φ270mm
燃料ガス用ノズル16におけるスリットのサイズ:75mm×15mm
酸素含有ガス用ノズル17におけるスリットのサイズ:75mm×30mm
希釈温度調整ガス用ノズル18におけるスリットのサイズ:200mm×30mm
燃料ガス用ノズル16及び酸素含有ガス用ノズル17のスリットと希釈温度調整ガス用ノズル18のスリットとの間の距離:800mm
燃焼室10の全長:1500mm
この結果を表1及び図8に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1において、燃料ガス用ノズル16からは燃料ガスとしてのLPGと希釈窒素とが吹き込まれ、それぞれ「メインバーナーLRG流量(Nm3/hr)」、「メインバーナー希釈窒素流量(Nm3/hr)」としてある。また、表1において、酸素含有ガス用ノズル17からは酸素含有ガスとして空気が吹き込まれ、「メインバーナー燃焼空気流量(Nm3/hr)」としてある。また、表1において、希釈温度調整ガス用ノズル18からは空気が吹き込まれ、「温度調整用空気流量(Nm3/hr)」としてある。
【0047】
表1及び図8を参照すると、温度調整用空気流量を184.4(Nm3/hr)から434.4(Nm3/hr)まで増加させると、排出口における熱風温度が1005(℃)から596(℃)まで低下していることがわかる。
一方、図5に示す管状火炎ガスバーナ51において、希釈温度調整ガスとして空気を吹き込んだ場合には、温度調整用空気流量を384.4(Nm3/hr)以上にすると、失火してしまった。従って、排出口における熱風温度として648(℃)以下を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0048】
1 管状火炎バーナ
10 燃焼室
11 排出口
12 閉塞部
13 小径部
13A、13B、14A、14B 接続用開口
14 大径部
15 テーパ部
16 燃料ガス用ノズル
17 酸素含有ガス用ノズル
18 希釈温度調整ガス用ノズル
18A スリット
19 点火プラグ
20、21、22 流量調節計
23 演算・制御器(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴長方向に延びる円筒管状に形成され、前記胴長方向の一端が開放した排出口を形成し、前記胴長方向の他端が閉塞した燃焼室と、該燃焼室の胴長方向の他端近傍に設置され、前記燃焼室内に該燃焼室の接線方向に燃料ガスを吹き込む燃料ガス用ノズルと、該燃焼室の胴長方向の他端近傍に設置され、前記燃焼室内に該燃焼室の接線方向に酸素含有ガスを吹き込む酸素含有ガス用ノズルとを備えた管状火炎バーナにおいて、
前記燃焼室は、前記胴長方向の他端側から中間部分にかけて設けられた小径部と、前記胴長方向の中間部分から前記胴長方向の一端側にかけて設けられた大径部と、前記小径部から前記大径部に向けて徐々に径が太くなるよう設定されたテーパ部とを備え、
前記燃焼室の小径部に、前記燃料ガス用ノズル及び前記酸素含有ガス用ノズルを設置すると共に、
前記燃焼室の大径部に、前記燃焼室の大径部内に該大径部の接線方向に希釈ガス温度調整ガスを吹き込む希釈温度調整ガス用ノズルを設置したことを特徴とする管状火炎バーナ。
【請求項2】
前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面矩形形状のスリットとされており、該スリットの短辺方向の厚さをtとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(1)式が成立することを特徴とする請求項1記載の管状火炎バーナ。
D2−D1≧t…(1)
【請求項3】
前記希釈温度調整ガス用ノズルにおける前記大径部内に希釈温度調整ガスを吹き込む開口部分は、断面円形状の丸孔とされており、該丸孔の直径をdとし、前記小径部の内径をD1とし、前記大径部の内径をD2とした場合に、前記小径部の内径D1及び前記大径部の内径D2について、次の(2)式が成立することを特徴とする請求項1記載の管状火炎バーナ。
D2−D1≧d…(2)
【請求項4】
前記燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分のガスの胴長方向の流速をVb、前記燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分の胴長方向のガスの流速をVaとした場合に、次の(3)式が成立するように、希釈温度調整ガス、燃料ガス、及び酸素含有ガスの流量を調整する制御手段を備えたことを特徴とする請求項2又は3記載の管状火炎バーナ。
Vb=0.9Va〜1.1Va…(3)
ここで、Vb=DIb/{(πD22/4)−(πD12/4)}
Va=DIa/(πD12
但し、DIbは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の希釈温度調整ガスが吹き込まれる部分における最大の希釈温度調整ガスの流量、DIaは、温度圧力補正が済んだ、燃焼室の燃料ガス及び酸素含有ガスが吹き込まれる部分における最大の燃料ガス及び酸素含有ガスの流量である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79734(P2013−79734A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218442(P2011−218442)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】