説明

管理サーバ、位置推定用設備システム及び位置推定システム

【課題】 金属物の多い環境でも、無線移動ノードの位置が精度良く推定できる位置推定システムを提供する。
【解決手段】 本発明は、位置推定対象の移動ノードと、位置基準を与える複数の固定ノードと、各固定ノードと移動ノードとの距離に応じて、移動ノードの位置を推定する管理サーバとを有する位置推定システムに関する。管理サーバは、各固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している記憶手段と、固定ノード若しくは移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方のノードにおける信号受信数を取得する受信数取得手段と、取得した信号受信数に基づいて、記憶手段を参照して、各固定ノードと移動ノードとの距離情報を得る信号変換手段と、各固定ノードと移動ノードとの距離情報を複数適用して、移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管理サーバ、位置推定用設備システム及び距離推定システムに関し、例えば、電波伝搬状況に影響を与える金属物が多い環境下での位置推定に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
現在、鉄工所や各種製造工場では、安全管理のため作業者の現在の作業場所(現在位置)を集中管理することが求められている。
【0003】
そこで、作業者に無線タグを持たせ、受信電波強度(RSSI)を利用して、基準となる固定無線ノードから無線タグまでの距離を算出して、位置を特定するシステムが多く開発・研究されている。既存の受信電波強度を用いた位置検出方式(RSSI方式)の多くは、受信電波強度が距離に反比例して減衰する性質(距離減衰)を利用して無線タグと無線ノードの距離を推定し、複数の無線ノードからの推定距離(3点測量の原理)により無線タグの位置を検出している(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−250768
【特許文献2】特開2006−258468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電波の距離減衰を利用した従来の位置推定の方式では、鉄工所や工場等の金属物の多い環境では、マルチパス等により距離減衰が異常に大きくなり、無線ノード及び無線タグ間の距離が推定できず、位置推定が不可能になってしまうことが大半である。
【0006】
さらに、鉄工所や各種製造工場では、金属物の位置が作業の進行によって種々変化したり、当日の作業予定に応じてレイアウト変更がなされたりするため、電波伝搬具合(電波飛散距離や距離減衰)も刻々と変化する。
【0007】
例えば、図8に示すように、金属物がないような環境で(金属物を除去したと仮定した場合)、固定無線ノードからの距離と受信電波強度との関係曲線がC1であるような場合において、その空間内に、金属物があり、金属物のレイアウトが変更されたときには、固定無線ノードからの距離と受信電波強度との関係曲線は、C2〜C4のようになる。関係曲線C2〜C4からは、減衰がさほどでないため受信電波強度から距離を特定できるのは数m程度であり、しかも、その数mも、金属物のレイアウト変更のために、時間帯毎に、受信電波強度と距離との関係が変化しているため、距離を特定できないことが分かる。
【0008】
図9は減衰計測グラフであって、受信電波強度に係る縦軸も、距離に係る横軸も、指数表記のものである。図9における回帰線yは、図8におけるような複数の関係曲線(C2〜C4)から得られたものであり、各距離における複数のプロットは、その距離で受信電波強度がばらついていることを表している(図9におけるRはバラツキを表す指標である)。回帰線yの傾斜は減衰率に応じているが、回帰線yの傾斜が大きいほど、受信電波強度から距離を特定し易いことを表している。図9に示すように、傾斜が小さいと、受信電波強度から距離を特定し難く、しかも、プロットが多いことで、同一の距離でも多くの受信電波強度の値を取っていることが分かる。
【0009】
以上のように、鉄工所や工場等の金属物の多い環境では、小さな距離で電波強度の減衰が大きく、しかも、その減衰量のバラツキが大きく、距離の推定精度が悪いものとなる。その結果、推定された距離から求められる無線タグの位置の推定値も精度が低いものとなる。
【0010】
そのため、金属物の多い環境でも、無線移動ノードの位置が精度良く推定することができる管理サーバ、位置推定用設備システム及び位置推定システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明は、位置推定対象の無線移動ノードと、位置基準を与える複数の無線固定ノードと、上記各無線固定ノードと無線移動ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバとを有する位置推定システムにおいて、上記管理サーバが、上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有することを特徴とする。
【0012】
第2の本発明は、位置基準を与える複数の無線固定ノードと、上記各無線固定ノードと位置推定対象の無線移動ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバとを有する位置推定用設備システムにおいて、上記管理サーバが、上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有することを特徴とする。
【0013】
第3の本発明は、位置推定対象の無線移動ノードと、位置基準を与える複数の無線固定ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバにおいて、上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、異なる出力強度で送信された信号の受信数に基づいて、無線移動ノードの位置を推定するようにしたので、RSSI値の変動が大きい金属物の多い環境などでも、無線移動ノードの位置が精度良く推定することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る位置推定システムの構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の無線固定ノードの配置及び詳細構成の説明図である。
【図3】実施形態の無線固定ノードを構成する複数の通信端末の電波出力強度と、その電波を受信可能な距離との関係を示す説明図である。
【図4】実施形態の位置状態管理サーバの位置/状態管理機能面から見た機能的構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態の監視エリアにおける伝搬状態を表す情報の更新方法の説明図である。
【図6】実施形態の監視エリアにおける無線伝搬状態を把握する際の、位置状態管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態の無線移動ノードの位置を推定する際の、位置状態管理サーバの動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の課題の説明図(1)である。
【図9】従来の課題の説明図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(A)主たる実施形態
以下、本発明による管理サーバ、位置推定用設備システム及び位置推定システムの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。この実施形態の位置推定システムは、電波伝搬状況に影響を与える金属物が多い環境下で使用されるシステムを意図している。
【0017】
(A−1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る位置推定システムの構成を示すブロック図である。実施形態に係る位置推定システムが適用している無線での通信プロトコルがZigBeeであるとして、以下、説明する。
【0018】
図1において、位置推定システム1は、位置状態管理サーバ2、表示端末3、中央警告灯4、コーディネータ5、複数の無線固定ノード6(6−a〜6−d、6−1〜6−10)及び無線移動ノード7を有する。ここで、位置状態管理サーバ2、表示端末3、中央警告灯4及びコーディネータ5は有線ネットワーク(内部LAN)8を介して接続されている。また、コーディネータ5、無線固定ノード6及び無線移動ノード7は、作業者状態管理エリアAR内に配置され、ZigBeeに従って無線通信を実行する。また、位置状態管理サーバ2、コーディネータ5及び複数の無線固定ノード6(6−a〜6−d、6−1〜6−10)が、位置推定用設備システムを構成している。
【0019】
コーディネータ5は、ZigBee無線ネットワーク(PAN)全体を管理する機能を持ち、PANに一つ存在するノードである。なお、作業者状態管理エリアARを一部重複するように複数のエリアに分割し、各分割エリア毎にPANを構成させた場合には、複数のコーディネータ5が設けられることになる。
【0020】
各無線固定ノード6は、無線移動ノード7の位置推定の基準となるものである。位置状態管理サーバ2は、各無線固定ノード6の位置情報を有し、各無線固定ノード6と無線移動ノード7の距離から無線移動ノード7の位置を推定する。各無線固定ノード6は、監視エリアAR内の位置に固定的に取り付けられている。各無線固定ノード6は、例えば、図2に示すように、直交座標系(xy座標系)のx方向及びy方向に沿って等間隔に配置される。なお、図1では無線固定ノード6を4個(6−a〜6−d)示し、図2では無線固定ノード6を10個(6−1〜6−10)示しているが、これは描画の都合上であり、個数が変化することはない。
【0021】
各無線固定ノード6はそれぞれ、複数(図2では4個)の通信端末(ZigBee端末)10−1〜10−nを備えている。複数の通信端末10−1〜10−nは、例えば、上述した直交座標系(xy座標系)の法線方向に積層されたものであり、通信端末10−1〜10−nはそれぞれ、位置状態管理サーバ2及びコーディネータ5の制御下で、無線移動ノード7に向けた電界強度送信要求を意味するビーコン(以下、第1の電界強度送信要求ビーコンと呼ぶ)を定期的に同時に送信したり、他の無線固定ノード6に向けた電界強度送信要求を意味するビーコン(以下、第2の電界強度送信要求ビーコンと呼ぶ)を定期的に同時に送信したりするものである。ここで、同一の無線固定ノード(例えば6−1)における複数のZigBee端末10−1〜10−nは、第1又は第2の電界強度送信要求ビーコンを送信する際の送信電力(電波出力強度)が異なるように選定されており(なお、送信周波数も異なっている)、ビーコンの伝搬可能な距離が異なっている。
【0022】
図3は、通信端末10からのビーコンの送信電力(電波出力強度)と、ビーコンの伝搬可能な距離との関係の説明図である。
【0023】
例えば、図3(A)の無線固定ノード6−1が4個の通信端末10−1〜10−4を有し、図3(B)に示すように、通信端末10−1が電波出力強度P1でビーコンを送信し、通信端末10−2が電波出力強度P2でビーコンを送信し、通信端末10−3が電波出力強度P3でビーコンを送信し、通信端末10−4が電波出力強度P4でビーコンを送信したとする。電波出力強度P1〜P4が異なるため、送信されたビーコンの到達可能距離も異なる。
【0024】
例えば、図3(C)に示すように、電波出力強度P1で送信されたビーコンの到達可能距離が20mであり、電波出力強度P2で送信されたビーコンの到達可能距離が15mであり、電波出力強度P3で送信されたビーコンの到達可能距離が10mであり、電波出力強度P4で送信されたビーコンの到達可能距離が5mであれば、0〜5mの範囲にビーコンの受信機(無線移動ノードや他の無線固定ノード)がある場合には4個の通信端末10−1〜10−4からのビーコンを受信でき、5〜10mの範囲にビーコンの受信機がある場合には3個の通信端末10−1〜10−3からのビーコンを受信でき、10〜15mの範囲にビーコンの受信機がある場合には2個の通信端末10−1及び10−2からのビーコンを受信でき、15〜20mの範囲にビーコンの受信機がある場合には1個の通信端末10−1からのビーコンを受信できる。逆に言えば、仮に、ある受信機が、無線固定ノード6−1の4個の通信端末10−1〜10−4からのビーコンを2個だけ受信できた場合には、その受信機と無線固定ノード6−1との距離が15〜20mの範囲内にあることを意味する。
【0025】
図3(A)に示すように、無線固定ノード6−1の2つの通信端末10−1及び10−2からのビーコンを、無線固定ノード6−3及び6−7が受信していた状況において、金属物の配置変化などによって、無線固定ノード6−3及び6−7が受信できるビーコン数が1つになった場合には、ビーコン数が1つの距離の範囲が、それまでの範囲15〜20mから短い方に移動し、又は、短い方に幅を拡げたことを意味する。
【0026】
各無線固定ノード6は、無線移動ノード7からの情報や、他の無線固定ノード(6)からの情報を、コーディネータ5(位置状態管理サーバ2)へ到達させるためのルーティングを行うと共、コーディネータ5から無線移動ノード7への情報のルーティングを行うものである。
【0027】
無線移動ノード7は位置推定対象であり、状態が監視される作業者が携帯し、若しくは、作業者に装着されているものである。無線移動ノード7は、例えば、1つの通信端末(ZigBee端末)からなっており、タグ状(無線タグ)に構成されている。無線移動ノード7は、いずれかの無線固定ノード6から送信された第1の電界強度送信要求ビーコンの受信時に、受け取れたビーコンの数を送信するものである。受信したビーコンの強度(以下、適宜、RSSI値と称する)が所定閾値以上であると、「受け取れた」と判断するものとする。受け取れたビーコンの数の送信先は、ビーコンの送信元の無線固定ノードであるとして、以下、説明する。なお、他の無線プロトコルを採用している場合など、無線移動ノード7が、受け取れたビーコンの数をコーディネータ5に直接送信するようにしても良い。
【0028】
位置状態管理サーバ2は、ハードェア的には一般的なサーバと同様な構成を有し、サーバにインストールされたソフトウェアによって、大きく見て、ZigBeeゲートウェイ(ZGW)としての機能と、位置/状態管理機能とを実行するものである。
【0029】
ZigBeeゲートウェイ機能面から言えば、位置状態管理サーバ2は、監視エリアAR内に設置されたコーディネータ5と接続し、監視エリアARの設備としての無線ネットワークと内部LAN8とのゲートウェイとして相互通信を行うものである。
【0030】
また、無線ネットワークより送信される作業者の無線タグの電界強度情報よりRSSI値を評価し、位置推論による位置推定を行う位置検出サーバ機能を実装する。
【0031】
図4は、位置状態管理サーバ2の位置/状態管理機能面から見た機能的構成を示すブロック図である。
【0032】
位置状態管理サーバ2は、位置/状態管理機能に関し、エリア状態把握部20、移動ノード位置推定部21、移動ノード位置表示部22、警告部23及びデータベース24を有する。
【0033】
エリア状態把握部20は、監視エリアARの伝搬状態を定期的に把握(検出)し、データベース24の伝搬状態情報データベース部24Aの格納内容(伝搬状態情報)を適宜更新させるものである。エリア状態把握部20は、無線固定ノード6毎に、その無線固定ノード6が有する全ての通信端末10からビーコンを送信させ、他の無線固定ノードで受信できたビーコン数を取り込み、他の無線固定ノードで受信できたビーコン数のセットが前回と同じか否かを判別し、前回と同じであれば、伝搬状態情報データベース部24Aを更新させず、前回と異なる場合には、例えば、受信ビーコン数が1の帯状領域、受信ビーコン数が2の帯状領域、…を、他の無線固定ノードの位置を参酌して定め(図3参照)、さらに、帯状領域の幅の中心を通る中心線を決定し、ビーコンを送信させた無線固定ノード6から中心線までの距離の平均を、その受信ビーコン数での距離と定め、そのような距離情報を伝搬状態情報として伝搬状態情報データベース部24Aに登録させる。
【0034】
図5は、上述した伝搬状態情報の更新方法の説明図である。図5における「×」は、ビーコンを送信させる無線固定ノードを表しており、その周囲の数字「4」、「3」、「2」、「1」が付与された位置は他の無線固定ノードの位置を表し、数字はその無線固定ノードにおける受信ビーコン数を表している。等高線図の作成技術などを適用することにより、受信ビーコン数が「4」、「3」、「2」、「1」の帯状領域を定めることができ、各帯状領域の、送信固定ノードから見た径方向の幅の中心を結んでいくことにより中心線が得られ、その径方向の中心までの距離の平均を、その受信ビーコン数での距離と定める。
【0035】
移動ノード位置推定部21は、無線移動ノード7の位置を定期的に推定し、データベース24の移動ノード位置データベース部24Bの格納内容(移動ノード位置)を適宜更新させるものである。移動ノード位置推定部21は、無線固定ノード6毎に、その無線固定ノード6が有する全ての通信端末10からビーコンを送信させ、無線移動ノード7で受信できたビーコン数を取り込み、全ての無線固定ノード6からの送信で得られたビーコン数のセットが、前回と同じか否かを判別し、前回と同じであれば、移動ノード位置データベース部24Bの移動ノード位置を同じ位置とし、前回と異なる場合には、伝搬状態情報データベース部24Aを参照して、各無線固定ノード6と無線移動ノード7との距離を得、その後、既存の位置推定アルゴリズムを適用して、無線移動ノード7の位置を推定して、移動ノード位置データベース部24Bの無線移動ノード7の位置を更新させるものである。
【0036】
移動ノード位置表示部22は、データベース24から監視エリアレイアウトデータ24Cを取り出し、また、移動ノード位置データベース部24Bの移動ノード位置を取り出し、それらから、移動ノード位置を含めた監視エリアの表示用レイアウトデータを形成して、表示端末3に与えて表示させるものである。
【0037】
警告部23は、データベース24から警告エリアデータ24Dを取り出し、また、移動ノード位置データベース部24Bの移動ノード位置を取り出し、移動ノード位置が警告エリア内に位置しているときに、中央警告灯4による報知動作を起動するものである。
【0038】
データベース24は、上述した伝搬状態情報データベース部24Aのデータ、移動ノード位置データベース部24Bのデータ、監視エリアレイアウトデータ24C、警告エリアデータ24D等を格納しているものである。
【0039】
表示端末3は、位置状態管理サーバ2の制御下で、監視エリアARのレイアウト上に無移動ノード7の位置を表示するものである。表示端末3は、位置状態管理サーバ2と一体的に構成されているものであっても良い。なお、オペレータの操作に応じ、無線ネットワークのトポロジー表示(PAN構成されているZigBee端末のネットワーク構成表示)をできるように、位置状態管理サーバ2及び表示端末3を構成するようにしても良い。
【0040】
中央警告灯4は、位置状態管理サーバ2の制御下で、無線移動ノード7(を携帯する作業者)警告エリア内に位置していることの警告報知動作を行うものである。
【0041】
(A−2)実施形態の動作
次に、実施形態に係る位置推定システムの動作を、監視エリアにおける無線伝搬状態の把握動作、無線移動ノードの位置推定動作の順に説明する。
【0042】
図6は、監視エリアにおける無線伝搬状態を把握する際の、位置状態管理サーバ2の動作を示すフローチャートである。
【0043】
位置状態管理サーバ2は、定期的に図6に示す処理を起動し、いずれか1つの無線固定ノード6を処理対象ノードに設定する(ステップ100)。そして、その無線固定ノード6が有する全ての通信端末10から、第2の電界強度送信要求ビーコンを放出(ブロードキャスト)させ(ステップ101)、全ての他の無線固定ノードが受信したビーコン数を取り込む(ステップ102)。なお、監視エリアAR内の全ての他の無線固定ノードの受信ビーコン数を取り込む代わりに、処理対象ノードに応じて定まる範囲内に位置する全ての他の無線固定ノードの受信ビーコン数を取り込むようにしても良い。
【0044】
その後、取り込んだ受信ビーコン数とそれを出力した無線固定ノードの識別情報との対情報を、全ての他の無線固定ノードにまとめたセット情報が、前回のセット情報と同じか否かを判別する(ステップ103)。
【0045】
前回のセット情報と異なっていれば、上述したようにして、処理対象ノードについての伝搬状態情報を更新させる(ステップ104)。
【0046】
前回のセット情報と同じ場合や、前回のセット情報と異なっていて処理対象ノードについての伝搬状態情報を更新した場合には、位置状態管理サーバ2は、ある無線固定ノードを処理対象ノードに設定した処理を、全ての無線固定ノードについて実行したか否かを判別し(ステップ105)、全ての無線固定ノードについて実行していなければ、上述したステップ100に戻り、全ての無線固定ノードについて実行していれば、図6に示す一連の処理を終了する。
【0047】
図7は、無線移動ノードの位置を推定する際の、位置状態管理サーバ2の動作を示すフローチャートである。
【0048】
位置状態管理サーバ2は、定期的に図7に示す処理を起動し、いずれか1つの無線固定ノード6を処理対象ノードに設定する(ステップ200)。そして、その無線固定ノード6が有する全ての通信端末10から、第1の電界強度送信要求ビーコンを放出(ブロードキャスト)させ(ステップ201)、無線移動ノード7が受信したビーコン数を取り込む(ステップ202)。位置状態管理サーバ2は、ある無線固定ノードを処理対象ノードに設定したビーコン送信、受信ビーコン数の取込処理を、全ての無線固定ノードについて実行したか否かを判別し(ステップ203)、全ての無線固定ノードについて実行していなければ、上述したステップ200に戻る。
【0049】
これに対して、ある無線固定ノードを処理対象ノードに設定したビーコン送信、受信ビーコン数の取込処理を全ての無線固定ノードについて実行した場合には、全ての無線固定ノード6からの送信で得られたビーコン数のセットが、前回と同じか否かを判別する(ステップ204)。そして、前回と異なっていれば、各無線固定ノード6についての伝搬状態情報を参照して、各無線固定ノード6と無線移動ノード7との距離を得た後、既存の位置推定アルゴリズムを適用して、無線移動ノード7の位置を推定して位置情報を更新させる(ステップ205)。
【0050】
ビーコン数のセットが前回と同じである場合や、ビーコン数のセットが前回と異なっていて無線移動ノード7の位置を推定し直した場合には、図7に示す一連の処理を終了する。なお、無線移動ノード7が複数存在する場合には、図7に示す処理が、それぞれの無線移動ノードについて実行される。
【0051】
(A−3)実施形態の効果
上記実施形態によれば、無線固定ノードから出力強度が異なる複数のビーコンを送信させ、無線移動ノードの受信ビーコン数から、その無線固定ノードと無線移動ノードとの大雑把な距離情報を得て位置を推定するようにしたので、RSSI値そのものを適用するより、推定結果から、金属物などの影響を排除することができる。
【0052】
その結果、金属物が多い鉄工所や工場を監視エリアとしていても、無線移動ノードの位置を推定することが可能になる。
【0053】
ここで、ある無線固定ノードから出力強度が異なる複数のビーコンを送信させた場合に、どの距離で、どれだけのビーコン数を受信できるかを、無線固定ノードから他の無線固定ノードへのビーコンの伝搬から捉え、無線伝搬状態の情報として格納しておき、無線移動ノードの位置推定で利用するようにしているので、位置推定が無線移動ノードの受信ビーコン数を利用していても、かなり良い位置推定結果を得ることができる。
【0054】
電波伝搬状況は、金属物の配置だけでなく、天候や人の動きによっても変化するが、変化原因に拘わらず、受信ビーコン数を利用した推定結果を向上させることができる。
【0055】
(B)他の実施形態
上記実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0056】
上記実施形態では、無線通信プロトコルとしてZigBeeの適用を意図して説明したが、無線技術やプロトコルはこれに限定されず、Wi−FiやUWB等を適用することができる。距離に応じて受信電界強度が変化し、受信電界強度基づいて、「受け取れた」か否かを判断できる無線技術等であれば良い。
【0057】
上記実施形態では、既存の位置推定アルゴリズムを適用できるように、受信ビーコン数を距離に置き換えて位置を推定するものを示したが、受信ビーコン数を距離の範囲に置き換えて位置を推定するようにしても良い。監視エリアARの伝搬状態を把握する際に、処理対象の無線固定ノードから、ビーコン数が0の帯状領域(距離範囲)、ビーコン数が1の帯状領域、…を得ておき、無線移動ノードの位置推定時に、受信ビーコン数に基づいて、ある無線固定ノードから見て存在すると捉えられる帯状領域を得、複数の無線固定ノードについて得られた帯状領域の重ね合わせによって、無線移動ノードの位置を推定するようにしても良い。このような方法の場合、隣り合う帯状領域の境界をオーバーラップさせて定めるようにしても良い。
【0058】
上記実施形態においては、無線移動ノードの位置を推定する際においても、無線固定ノードがビーコンの送信側であるものを示したが、無線移動ノードに複数の通信端末(例えば、ZigBee端末)を設け、異なる出力強度でビーコンを送信させ、各無線固定ノードで受信できたビーコン数に応じて、各無線固定ノードと無線移動ノードとの距離の情報を得るようにしても良い。
【0059】
上記実施形態においては、複数の無線固定ノードが等間隔に配置されたものを示したが、状態管理サーバが把握しているならば、配置は等間隔に限定されるものではない。
【0060】
上記実施形態では、無線固定ノードに複数の通信端末を設けて、出力強度が異なるビーコンの送信を可能としたものを示したが、出力強度を可変できる1個の通信端末を無線固定ノードに設け、出力強度の可変制御によって、出力強度が異なる複数のビーコンを時分割で送信するようにしても良い。但し、全てのビーコンの送信に係る時間は、位置が同一とみなせるような短時間とする。
【0061】
上記実施形態では、全ての無線固定ノードについて、送信ビーコン数や、送信時の出力強度の組み合わせが同じものを示したが、ビーコン数や出力強度の組み合わせが、無線固定ノードのよって異なるようにしても良い。例えば、位置推定の精度を高めたいエリア部分の無線固定ノードとして、送信ビーコン数が多いものを適用する。
【符号の説明】
【0062】
1…位置推定システム、2…位置状態管理サーバ、3…表示端末、4…中央警告灯、5…コーディネータ、6−a〜6−d、6−1〜6−10…複数の無線固定ノード、7…無線移動ノード、8…有線ネットワーク(内部LAN)、10−1〜10−4…1つの無線固定ノードが有する通信端末、20…エリア状態把握部、21…移動ノード位置推定部、22…移動ノード位置表示部、23…警告部、24…データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置推定対象の無線移動ノードと、位置基準を与える複数の無線固定ノードと、上記各無線固定ノードと無線移動ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバとを有する位置推定システムにおいて、
上記管理サーバが、
上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、
上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、
取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、
上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有する
ことを特徴とする位置推定システム。
【請求項2】
上記管理サーバが、
ある上記無線固定ノードから、出力強度が異なる複数の状態把握用信号を送信させ、他の上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第2の受信数取得手段と、
上記第2の受信数取得手段が取得した信号受信数に基づいて、状態把握用信号を送信した上記無線固定ノードについての、上記監視エリア状態記憶手段に記憶されている信号受信数と距離との関係情報を更新する監視エリア状態更新手段とをさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位置推定システム。
【請求項3】
位置基準を与える複数の無線固定ノードと、上記各無線固定ノードと位置推定対象の無線移動ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバとを有する位置推定用設備システムにおいて、
上記管理サーバが、
上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、
上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、
取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、
上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段とを有する
ことを特徴とする位置推定システム。
【請求項4】
上記管理サーバが、
ある上記無線固定ノードから、出力強度が異なる複数の状態把握用信号を送信させ、他の上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第2の受信数取得手段と、
上記第2の受信数取得手段が取得した信号受信数に基づいて、状態把握用信号を送信した上記無線固定ノードについての、上記監視エリア状態記憶手段に記憶されている信号受信数と距離との関係情報を更新する監視エリア状態更新手段とをさらに有する
ことを特徴とする請求項3に記載の位置推定用設備システム。
【請求項5】
位置推定対象の無線移動ノードと、位置基準を与える複数の無線固定ノードとの距離に応じて、上記無線移動ノードの位置を推定する管理サーバにおいて、
上記各無線固定ノードについて、信号受信数と距離との関係情報を記憶している監視エリア状態記憶手段と、
上記無線固定ノード若しくは上記無線移動ノードから、出力強度が異なる複数の距離計測用信号を送信させ、他方の上記無線移動ノード若しくは上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第1の受信数取得手段と、
取得した信号受信数に基づいて、上記監視エリア状態記憶手段を参照して、上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を得る信号受信数/距離変換手段と、
上記各無線固定ノードと上記無線移動ノードとの距離情報を複数適用して、上記無線移動ノードの位置を推定する位置推定手段と
を有することを特徴とする管理サーバ。
【請求項6】
ある上記無線固定ノードから、出力強度が異なる複数の状態把握用信号を送信させ、他の上記無線固定ノードにおける信号受信数を取得する第2の受信数取得手段と、
上記第2の受信数取得手段が取得した信号受信数に基づいて、状態把握用信号を送信した上記無線固定ノードについての、上記監視エリア状態記憶手段に記憶されている信号受信数と距離との関係情報を更新する監視エリア状態更新手段と
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の管理サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−204028(P2010−204028A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52314(P2009−52314)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】