管融着装置
【課題】簡単な構造でサイズ変更に応じて管体の加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理調整する管融着装置の提供。
【解決手段】クランプ11,12の間に加熱手段2が配置された状態で、クランプ11,12を管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプ11,12と加熱手段2の間で加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ突き当たって、加熱手段2と管体S,Pの加熱挿入量が設定され、加熱手段2と管体S,Pとの間に隙間Cが形成されるため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ない。
【解決手段】クランプ11,12の間に加熱手段2が配置された状態で、クランプ11,12を管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプ11,12と加熱手段2の間で加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ突き当たって、加熱手段2と管体S,Pの加熱挿入量が設定され、加熱手段2と管体S,Pとの間に隙間Cが形成されるため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパイプやソケットなどの合成樹脂からなる熱溶融可能な管体を融着接合する際に用いられる管融着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管融着装置として、ヒーターによる管及びソケットの加熱工程において、移動側クランプが移動し移動側クランプ及び固定側クランブがヒーターに対してプログラムされた規定の位置に達して管及びソケットがヒーターに圧着されると移動側クランプをロックする電気信号を発するとともに、管とソケットの接合工程において、移動側クランプが移動し移動側クランプが固定側クランプに対してブログラムされた規定の位置まで移動して管とソケットが相互に圧着されると移動側クランプをロックする電気信号を発する位置検出センサーと、位置検出センサーからの電気信号により移動側クランプをロックし、また管及びソケットの加熱工程において、プログラムされた規定の加熱時間に達したときに移動側クランプのロックを解除するとともに、管とソケットの接合工程において、プログラムされた規定の接合時間に達したときに移動側クランプのロックを解除するロック装置を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、管のサイズを検出し管サイズに応じてプログラムを切換えるプログラム切換装置が備えられ、管サイズに応じてプログラムにしたがい自動的に所定の時間だけ管及びソケットの加熱保持と、所定の時間だけ必要な押圧力でもって管とソケットの圧着保持を行い、所定の時間が経過すると自動的にアラームを発すると共にロック装置をアンロックするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−55717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の管融着装置では、固定側クランプ(管側クランプ)及び移動側クランプ(ソケット側クランプ)の相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックしてヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量を設定するとともに、プログラムによりロックを解除するため、装置全体の構造が複雑化して大型化するだけでなく、重量が重く運搬が困難であるという問題があった。
さらに、一般的にヒーターは、管及びソケットの寸法誤差などを考慮して余裕をもった設計がされる。そのため、ヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量にバラツキが発生するおそれがある。
すなわち、管及びソケットの加熱挿入量が不足すると、融着不良となるおそれがあり、これと逆に必要量以上に挿入されると、管及びソケットの嵌合部位よりも広い領域が溶融され、この溶け過ぎた溶融樹脂が管及びソケットの嵌入時においてその内周面側にはみ出し、ビードと呼ばれる盛り上がり部が発生して、管及びソケットの内を通る流体の抵抗となるおそれがある。
また、流体などの配管として天井付近で管体同士を融着する場合がある。
しかし、重量が重く運搬が困難な従来の管融着装置では、天井付近で管体同士を融着することはできなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体の加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理調整可能な管融着装置を提供することなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、互いに嵌合する管体を着脱自在に取り付ける一対のクランプがそれぞれ前記管体の嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段と、前記クランプの間に出し入れ自在に設けられて挿入により前記管体の嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段と、前記クランプと前記加熱手段の間に設けられて前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量を設定する加熱量調整手段と、前記クランプの間に設けられて前記管体同士の嵌入量を設定する融着量調整手段とを備え、前記加熱量調整手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱手段に対して突き当たる加熱量調整用スペーサを有し、前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量として、前記加熱手段と前記管体との間に前記クランプの移動方向へ所定寸法の隙間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明は、クランプの間に加熱手段が配置された状態で、クランプを管体の嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプと加熱手段の間で加熱量調整手段の加熱量調整用スペーサがそれぞれ突き当たって、加熱手段と管体の加熱挿入量が設定され、加熱手段と管体との間に隙間が形成されるため、管体の嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体同士の嵌入時に管体の内周面側にはみ出ないので、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体の加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理調整することができる。
その結果、管側クランプ及びソケット側クランプの相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックしてヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量を設定する従来のものに比べ、装置全体の構造が簡素化されてコンパクト化できるだけでなく、重量が軽くなって作業者一人でも運搬できる。天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
したがって、誰が管体の融着作業を行っても、融着部位の品質を一定にできる。
さらに、管体の内周面側にビードと呼ばれる盛り上がり部を小さくできるため、管体内を通る流体の抵抗とならず、詰まりなどの事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る管融着装置の全体構成を示す加熱(嵌入)時の説明図で、(a)が平面図、(b)が同縦断正面図である。
【図2】融着(挿入)時の説明図で、(a)が平面図、(b)が同縦断正面図である。
【図3】図1(a)の(3)−(3)線に沿える拡大側面図である。
【図4】図1(a)の(4)−(4)線に沿える拡大側面図である。
【図5】図1(b)の(5)−(5)線に沿える拡大側面図である。
【図6】図1(b)の(6)−(6)線に沿える拡大側面図である。
【図7】管体のセット時を示す平面図である。
【図8】管体の位置合わせ時を示す説明図で、(a)が縦断正面図、(b)が図8(a)の(8B)−(8B)線に沿える拡大側面図である。
【図9】管体がサイズ変更した際の説明図で、加熱(嵌入)時の平面図である。
【図10】管体がサイズ変更した際の説明図で、(a)が加熱(嵌入)時の正面図、(b)が図10(a)の(10B)−(10B)線に沿える拡大側面図である。である。
【図11】融着量調整手段の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る管融着装置の使用例を示す説明図であり、(a)が管体のセット時を示す縮小正面図、(b)が加熱(嵌入)時の縦断縮小正面図、(c)が融着(挿入)時の縮小正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管融着装置Aは、図1〜図12に示すように、差し込まれることで互いに嵌り合う管体S,Pを着脱自在に取り付けるための一対のクランプ11,12がそれぞれ管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段1と、クランプ11,12の間に出し入れ自在に設けられて挿入により管体S,Pの嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段2と、クランプ11,12と加熱手段2の間に設けられて加熱手段2と管体S,Pとの加熱挿入量を設定する加熱量調整手段3と、クランプ11,12の間に設けられて管体S,P同士の嵌入量を設定する融着量調整手段4を、主要な構成要素として備えている。
【0010】
管体S,Pは、図1及び図2に示すように、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの熱溶融可能な合成樹脂からなるソケットやパイプなどからなり、一方の管体Sの先端に形成される開口部S1の内径よりも、他方の管体Pの先端部P1における外径が僅かに大径に若しくは両者がほぼ同じに形成され、一方の管体Sの開口部S1に対して他方の管体Pの先端部P1を挿入することで、両者が互いに嵌合するように構成されている。
さらに、管体S,Pは、(径)サイズの異なるものが複数種類用意され、使用目的に応じて最適なもの同士を選択して、加熱手段2により溶融してから挿入嵌合することで一体的に連結される。
また、管体S,Pは、そのいずれか一方又は両方の表面に標線ガイド(図示しない)などを用いて、後述するクランプ11,12に対する位置決め用の目印(図示しない)を付けたり、例えば一方の管体Sにおいて開口端面S2を後述するクランプ11のブロック14の表面と面一に位置合わせすることなどにより、サイズ変更しても後述するクランプ11,12に対して管体S,Pが常時定位置にセットされるようにしている。
【0011】
スライド支持手段1は、互いに嵌合する一対の管体S,Pがそれぞれ着脱自在に取り付けられるクランプ11,12を対向して有し、これらクランプ11,12を、一方の管体Sの開口部S1に対して他方の管体Pの先端部P1が挿入されるように移送路13に沿って相対的にスライド移動自在に支持している。
クランプ11,12は、管体S,Pの先端における径方向へ開閉動自在に構成され、手動操作又は例えばアクチュエータなどの駆動部による締め付けに伴い、一方の管体Sの開口部S1と他方の管体Pの先端部P1をそれぞれの軸線が移送路13に沿って一直線上に配置されるようにセットし保持する。
【0012】
スライド支持手段1の具体例としては、クランプ11,12を備えたブロック14,15に亘ってスライドガイド16が挿通され、手動操作又は駆動源によりブロック14,15のいずれか一方に対して他方をスライド移動させるか、若しくはブロック14,15の両方をスライド移動させるように構成されている。
図示される例では、クランプ11,12を備えたブロック14,15のいずれか一方、他方の管体Pがセットされるクランプ12のブロック15に対してハンドル17が連設され、ハンドル17の手動操作で移動側のクランプ12を固定側のクランプ11へ向け移動させて、管体S,Pが互いに真っ直ぐ挿入されるように構成している。
また、その他の例として図示しないが、一方の管体Sがセットされるクランプ11のブロック14を移動させたり、ハンドル17に代えて、例えば電動シリンダーなどのアクチュエータ(図示しない)によりブロック14,15を相対的に自動移動させることも可能である。
【0013】
加熱手段2は、スライド支持手段1の移送路13の途中に対して出し入れ自在に設けられ、管体S,Pの嵌合部位を溶融するための一対のヒータを有している。これらヒータとしては、一方の管体Sの開口部S1に挿入される凸状ヒータ21と、他方の管体Pの先端部P1が挿入される凹状ヒータ22を具備している。
詳しくは、加熱手段2が手動操作や移動機構などによって移送路13と交差する方向へ設けられる。その具体例としては、加熱手段2が移送路13と直交する水平方向や上下方向などに往復動可能又は揺動可能に支持され、加熱手段2を移送路13の外部から内部へ入れることで、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22の軸線が、クランプ11,12に取り付けた管体S,Pの軸線と移送路13に沿って一直線状に配置されるように構成している。さらに、加熱手段2を移送路13に沿ってスライド移動可能にすることが好ましい。
【0014】
凸状ヒータ21は、一方の管体Sの開口部S1に挿入した状態で発熱させることにより、開口部S1の内周面において所定領域のみを溶融するものである。
凹状ヒータ22は、他方の管体Pの先端部P1を挿入した状態で発熱させることにより、先端部P1の外周面において所定領域のみを溶融するものである。
凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22は、管体S,Pのサイズに対応して(径)サイズの異なるものが複数種類用意され、クランプ11,12にセットされた管体S,Pのサイズと一致するものを選択し、加熱手段2の本体23に対して背中合わせとなるようにそれぞれ着脱自在に取り付けている。
凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22の具体例としては、管体S,Pのサイズ変更に対応して、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量は変化するものの、凸状ヒータ21が挿入された一方の管体Sにおいて開口端面S2の位置と、凹状ヒータ22に挿入された他方の管体Pにおいて先端面P2の位置は変化せず、加熱手段2の本体23と一方の管体Sの開口端面S2との間隔、及び、加熱手段2の本体23と他方の管体Pの先端面P2との間隔は一定寸法となるように形成されるものを使用することが好ましい。つまり、管体Sに凸状ヒータ21が挿入されるとともに、凹状ヒータ22に管体Pが挿入された状態で、クランプ11,12の間隔は、管体S,Pのサイズ変更に関係なく加熱手段2を挟んで一定寸法に保たれるように管体S,Pを取り付け設定することが好ましい。
【0015】
加熱量調整手段3は、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量を設定している。
すなわち、加熱量調整手段3は、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い加熱手段2に対して突き当たる加熱量調整用スペーサ3a,3bを有している。
加熱量調整用スペーサ3a,3bは、クランプ11,12又は加熱手段2のいずれか一方か若しくはクランプ11,12及び加熱手段2の両方に配置される。
図1(a)(b)、図3及び図4に示される例では、加熱手段2の本体23に加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ背中合わせとなるように突出させて配置している。
加熱量調整用スペーサ3a,3bと対向するクランプ11,12のブロック14,15には、図5及び図6に示されるように、加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面がそれぞれ突き当たる当接部14a,15aを有している。さらに必要に応じて、加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面又は当接部14a,15aのいずれか一方か、若しくは加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面及び当接部14a,15aの両方に、例えば磁石などの磁性体(図示しない)を設けて、両者の突き当たり状態が保持されるようにすることも可能である。
また、管体S,Pのサイズ変更に対応して、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量の変化により、凸状ヒータ21が挿入された一方の管体Sにおいて開口端面S2の位置と、凹状ヒータ22に挿入された他方の管体Pにおいて先端面P2の位置が変化する場合には、加熱量調整用スペーサ3a,3bを、管体S,Pのサイズ変更に応じて調整自在に構成するか、又は交換可能に構成する必要がある。
【0016】
ところで、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22は、管体S,Pの寸法誤差などを考慮して、一方の管体Sの開口部S1や他方の管体Pの先端部P1に対し余裕をもった状態で形成される。そのため、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pとの加熱挿入量にバラツキが発生するおそれがある。
具体的に説明すれば、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量や、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量が不足すると、融着不良となるおそれがある。これと逆に一方の管体Sの開口部S1に対して凸状ヒータ21が必要量以上に挿入されたり、凹状ヒータ22に対して他方の管体Pの先端部P1が必要量以上に挿入されると、管体S,Pの嵌合部位よりも広い領域が溶融され、この溶け過ぎた溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時において管体S,Pの内周面側にはみ出し、ビードと呼ばれる盛り上がり部が発生して、管体S,P内を通る流体の抵抗となるおそれがある。
【0017】
そこで、本発明では、図1(a)(b)に示されるように、加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bで設定する加熱手段2と管体S,Pとの加熱挿入量として、加熱手段2と管体S,Pとの間にクランプ11,12の移動方向へ所定寸法の隙間Cを形成している。
つまり、一方の管体Sの開口部S1に凸状ヒータ21を挿入した状態で、互いに対向する管体Sの開口端面S2と凸状ヒータ21の基部21aとの間に隙間Cを形成するとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1を挿入した状態で、互いに対向する管体Pの先端面P2と凹状ヒータ22の内底面22aとの間に、クランプ11,12の移動方向へ所定寸法の隙間Cが形成されるように、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pとの加熱挿入量を設定している。
【0018】
融着量調整手段4は、一方の管体Sの開口部S1に対する他方の管体Pの先端部P1の嵌入量を設定している。
すなわち、融着量調整手段4は、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴って互いに突き当たる融着量調整用スペーサ4aを有している。
融着量調整用スペーサ4aは、管体S,Pのサイズ変更に応じて調整移動自在に構成されるか、又は交換可能に構成されている。
融着量調整用スペーサ4aは、クランプ11,12のいずれか一方か若しくはクランプ11,12の両方に配置される。
図2(a)(b)、図5及び図6に示される例では、融着量調整用スペーサ4aとして、固定側クランプ11のブロック14に、移動側クランプ12のブロック15へ向けて突出する突起部4bを設け、突起部4bと対向する移動側クランプ12のブロック15に、調整部4cを配置している。さらに必要に応じて、融着量調整用スペーサ4aの突起部4b又は調整部4cのいずれか一方か、若しくは突起部4b及び調整部4cの両方に、例えば磁石などの磁性体(図示しない)を設けて、両者の突き当たり状態が保持されるようにすることも可能である。
【0019】
さらに、加熱手段2には、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電をON・OFF制御するための制御ユニット5を設けることが好ましい。
制御ユニット5は、図7に示されるように、加熱手段2と別体に配置されるか、又は加熱手段2と一体的に配置される。
制御ユニット5には、管体S,Pの各サイズに対応した凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22による加熱時間が予め設定されており、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い後述する加熱量調整手段3を介して加熱手段2と接触した際に、電気的に通電させるか若しくはスイッチ(図示しない)の作動により、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電を開始させると同時に、タイマーが作動して加熱時間がタイムアップするとブザーが鳴り、さらに必要に応じて凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電を停止させることが好ましい。
また、制御ユニット5には、管体S,Pの各サイズに対応した溶着保持時間が予め設定されており、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い融着量調整手段4を介してクランプ11,12同士が接触した際に、タイマーが作動して溶着保持時間がタイムアップすると、ブザーが鳴るように制御することも可能である。
またさらに、加熱手段2に例えば熱電対などの加熱温度測定センサー(図示しない)を設けて、制御ユニット5のヒータ温度表示部5aに測定温度を表示するように構成することも可能である。
【0020】
そして、本発明の実施形態に係る管融着装置Aを用いた管体S,Pの融着接合方法について説明する。
先ず、図7の実線に示されるように、スライド支持手段1のクランプ11,12が互いに離れた初期状態において、対応するサイズの管体S,Pをクランプ11,12にそれぞれセットし、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に離隔移動させた状態で、図7の二点鎖線に示されるように、クランプ11,12の間に加熱手段2が配置される。
【0021】
その後、図1(a)(b)に示されるように、クランプ11,12を相対的に接近移動させて、加熱手段2の凸状ヒータ21が一方の管体Sの開口部S1に規定位置まで挿入されるとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1が規定位置まで挿入される。
その際、制御ユニット5を配備した場合には、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電が開始されて、管体S,Pの嵌合部位を加熱して溶融が開始され、それから設定時間後に、管体S,Pの各サイズに対応した加熱時間がタイムアップすると、ブザーが鳴るか又は凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電が停止される。
これに対応して速やかに、クランプ11,12を凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22から離し、移送路13の外に加熱手段2を外す。
【0022】
これに続いて、図2(a)(b)に示されるように、管体S,Pのサイズに対応するように融着量調整手段4の融着量調整用スペーサ4aを選択し、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pの嵌合部位同士が嵌入される。
その際、制御ユニット5に溶着保持時間を設定した場合には、管体S,Pの各サイズに対応した溶着保持時間のタイマーが作動しタイムアップすると、ブザーが鳴る。
これに対応して、融着連結した管体S,Pをクランプ11,12から取り外す。
【0023】
このような本発明の実施形態に係る管融着装置Aによると、図1(a)(b)に示されるように、クランプ11,12の間に加熱手段2が配置された状態で、クランプ11,12を移送路13に沿って管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させると、クランプ11,12と加熱手段2の間で加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ突き当たって、加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pの加熱挿入量が設定され、加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と記管体S,Pとの間に隙間Cが形成されるため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ることがない。
それにより、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体S,Pの加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理することができる。
【0024】
さらに、加熱手段2が、クランプ11,12の相対移動に伴い加熱量調整用スペーサ3a,3bを介して加熱手段2に対し突き当たることで加熱手段2への通電を開始するように構成される場合には、加熱手段2と管体S,Pの加熱挿入量を設定すると同時に加熱を開始することができる。
【0025】
その後、図2(a)(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などでクランプ11,12を移送路13に沿って管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させると、クランプ11,12の間で融着量調整手段4の融着量調整用スペーサ4aが突き当たって、管体S,P同士の嵌入量が設定される。
それにより、簡単な構造でありながらサイズ変更に応じて管体S,Pの融着量を管理することができる。
その結果、管側クランプ及びソケット側クランプの相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックして管及びソケットとの嵌入量を設定する従来のものに比べ、装置全体の構造が簡素化されてコンパクト化できるだけでなく、重量が軽くなって作業者一人でも運搬できる。天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
したがって、誰が管体の融着作業を行っても、融着部位の品質を一定にできる。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1は、図1〜図11に示すように、融着量調整用スペーサ4aとして、クランプ11,12のいずれか一方又は両方に、管体S,Pのサイズ毎にクランプ11,12の移動方向へ突出量が異なる複数の調整部4cを所定方向へ並設し、その並設方向へ調整移動自在に支持している。
【0027】
図示される例では、移動側クランプ12のブロック15に、複数の調整部4cが放射状に配置された星形プレートを回転自在に配置し、星形プレートの回転により調整部4cのいずれか一つが突起部4bと対向して位置合わせされるように構成している。
詳しくは、複数の調整部4cとして、星形プレートに形成された五つの放射状部の先端部位のみをそれぞれ突出量が異なる段差状に形成することにより、5種類のサイズの管体S,Pに対応してそれぞれの嵌入量を設定可能にしている。
また、その他の例として図示しないが、星形プレート以外の形状に形成された回転体に複数の調整部4cを形成したり、回転以外に往復動自在に配置したり、4種類以下又は6種類以上の管体S,Pにサイズ対応可能に構成することも可能である。
【0028】
さらに、図1に示される例では、一方の管体SとしてT型ソケットと、他方の管体Pとしてパイプを、それぞれ加熱手段2により溶融してから挿入嵌合することで一体的に連結している。一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1には、加熱手段2の凸状ヒータ21と対向して段部(図示しない)が形成される場合がある。
また、その他の例として図示しないが、一方の管体SとなるT型ソケットに代えてL型ソケットやパイプなどを、他方の管体Pとなるパイプと一体的に連結することも可能である。
【0029】
そして、クランプ11,12に管体S,Pを取り付けてセットする際には、管体S,Pのサイズ変更に関係なく、クランプ11に対して一方の管体S(T型ソケット)をその開口端面S2のセット位置が常に一定となるように取り付けると同時に、クランプ12に対して他方の管体P(パイプ)をその先端面P2のセット位置が常に一定となるように取り付けることにより、クランプ11,12をそれの間隔が一定寸法になるように離し、一方の管体S(T型ソケット)の開口端面S2と他方の管体P(パイプ)の先端面P2とが、管体S,Pの嵌合方向へほぼ同一平面状に配置されるようにセットしている。
その具体例として、一方の管体S(T型ソケット)は、その開口端面S2がクランプ11の基準面(図示しない)などに対し面一状となるように取り付けることで、常に定位置でセットすることが可能となる。他方の管体P(パイプ)は、その表面に標線ガイド(図示しない)などを用いて、クランプ12に対する位置決め用の目印(図示しない)を付け、この目印に基づいて他方の管体P(パイプ)を取り付けることにより、その先端面P2の取り付け位置がクランプ12から所定寸法だけ離れるようにセットされる。
また、その他の例として、図1〜図10に示されるように、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bから更に突出する凸部4dを設け、この凸部4dの先端面を、図8(a)(b)に示されるように、管体S,Pのサイズ変更に関係なく常に調整部4cのいずれか一つ、図示例では最も突出量の少ないプレートに突き当てることにより、他方の管体P(パイプ)を、その先端面P2の取り付け位置が常にクランプ12から所定寸法だけ離れるようにセットすることも可能である。
【0030】
このような本発明の実施例1に係る管融着装置Aによると、クランプ11,12に対する管体S,Pの取り付けセットに際し、標線ガイドなどで付けられた位置決め用の目印に基づいて他方の管体Pをクランプ12に対し取り付ける場合には、管体S,Pがクランプ11,12にそれぞれセットされた後の工程として、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に一定長さだけ接近移動させると、一方の管体Sの開口端面S2と他方の管体Pの先端面P2とが、ほぼ同一平面状に配置されて、両者の位置合わせが可能になる。
また、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bに凸部4dが突設される場合には、図8(a)(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pのサイズ変更に関係なく常に凸部4dを同じ調整部4cに突き当ててから、他方の管体P(パイプ)を、その先端面P2が一方の管体S(T型ソケット)の開口端面S2と同一平面状に配置されるように取り付けることでセットが完了すると同時に、両者の位置合わせも完了する。
それにより、この状態で管体S,Pに位置ズレがある場合には、クランプ11,12でセットし直すことができる。
【0031】
このような位置合わせが完了した後は、管体S,Pのサイズ変更に対応して融着量調整用スペーサ4aの調整部4cをその並設方向へ調整移動してから、クランプ11,12を管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプ11,12の間で対応する突出量の調整部4cに突き当たって、管体S,P同士の嵌入量が設定される。
この際、一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1に加熱手段2の凸状ヒータ21と対向する段部(図示しない)が形成される場合には、管体Sの開口端面S2と凸状ヒータ21の基部21aとの間に形成された隙間Cによって、開口部S1内の段部と凸状ヒータ21の先端面が接触しないように、一方の管体S(T型ソケット)に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量を設定している。
このように調整すれば、位置合わせが完了した状態で、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bと、それに対応する調整部4cとの間隔が、管体S,Pの嵌入量と一致する。
よって、調整部4cを調整移動して突起部4bと対向するように配置してから、ハンドル17の手動操作などでクランプ11,12を互いに接近する方向へ移動させると、クランプ11,12の間で突起部4bが、対応する突出量の調整部4cに突き当たって、管体S,P同士の融着が完了する。
それにより、簡単な調整でありながらサイズ変更に応じて管体S,Pの融着量を管理することができる。
【0032】
特に、一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1に加熱手段2の凸状ヒータ21と対向する段部(図示しない)が形成される場合には、開口部S1内の段部と他方の管体P(パイプ)の先端面P2が、隙間Cにより加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と接触しないため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ることがない。
それにより、一方の管体S(T型ソケット)の段部と他方の管体P(パイプ)の先端面P2との突き当たりによるビードの発生を防止することができる。
【0033】
また、管体S,Pがサイズ変更された場合にも、図9及び図10(a)(b)に示されるように、前述したように繰り返せば、同様に管体S,Pが融着連結される。
なお、融着量調整用スペーサ4aの調整部4cは、図1〜図10に示された例に限定されず、図11に示すように、星形プレートにおける放射状部の全体をそれぞれ突出量が異なる段差状に形成することも可能である。
【実施例2】
【0034】
この実施例2は、図12(a)〜(c)に示すように、建築現場の天井付近において管体S,Pの溶着作業を行う場合の使用例であり、管融着装置Aの構成は図1〜図11に示した実施例1と同じものである。
【0035】
溶着作業を工程順に説明する。
先ずは、図12(a)に示されるように、天井Dに吊持された管体S,Pに対し、スライド支持手段1のクランプ11,12がそれぞれセットされ、これらクランプ11,12の間に加熱手段2が配置される。
その次に、図12(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などにより、加熱手段2の凸状ヒータ21が一方の管体Sの開口部S1に規定位置まで挿入されるとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1が規定位置まで挿入される。これに続いて、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22により管体S,Pの嵌合部位を加熱して溶融される。
そして最後に、移送路13の外に加熱手段2を外してから、図12(c)に示されるように、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pの嵌合部位同士が嵌入され、両者が融着連結される。
【0036】
このような本発明の実施例2に係る管融着装置Aの使用例によると、管融着装置Aの構造がコンパクトで軽量なので、天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
【0037】
なお、前示実施例では、建築現場の天井付近において管体S,Pの溶着作業を行う場合の使用例のみを説明したが、これに限定されず、天井付近以外の建築現場でも使用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 スライド支持手段 11,12 クランプ
2 加熱手段 3 加熱量調整手段
3a,3b 加熱量調整用スペーサ 4 融着量調整手段
4a 融着量調整用スペーサ 4c 調整部
C 隙間 S,P 管体
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパイプやソケットなどの合成樹脂からなる熱溶融可能な管体を融着接合する際に用いられる管融着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管融着装置として、ヒーターによる管及びソケットの加熱工程において、移動側クランプが移動し移動側クランプ及び固定側クランブがヒーターに対してプログラムされた規定の位置に達して管及びソケットがヒーターに圧着されると移動側クランプをロックする電気信号を発するとともに、管とソケットの接合工程において、移動側クランプが移動し移動側クランプが固定側クランプに対してブログラムされた規定の位置まで移動して管とソケットが相互に圧着されると移動側クランプをロックする電気信号を発する位置検出センサーと、位置検出センサーからの電気信号により移動側クランプをロックし、また管及びソケットの加熱工程において、プログラムされた規定の加熱時間に達したときに移動側クランプのロックを解除するとともに、管とソケットの接合工程において、プログラムされた規定の接合時間に達したときに移動側クランプのロックを解除するロック装置を備えているものがある(例えば、特許文献1参照)。
さらに、管のサイズを検出し管サイズに応じてプログラムを切換えるプログラム切換装置が備えられ、管サイズに応じてプログラムにしたがい自動的に所定の時間だけ管及びソケットの加熱保持と、所定の時間だけ必要な押圧力でもって管とソケットの圧着保持を行い、所定の時間が経過すると自動的にアラームを発すると共にロック装置をアンロックするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−55717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の管融着装置では、固定側クランプ(管側クランプ)及び移動側クランプ(ソケット側クランプ)の相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックしてヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量を設定するとともに、プログラムによりロックを解除するため、装置全体の構造が複雑化して大型化するだけでなく、重量が重く運搬が困難であるという問題があった。
さらに、一般的にヒーターは、管及びソケットの寸法誤差などを考慮して余裕をもった設計がされる。そのため、ヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量にバラツキが発生するおそれがある。
すなわち、管及びソケットの加熱挿入量が不足すると、融着不良となるおそれがあり、これと逆に必要量以上に挿入されると、管及びソケットの嵌合部位よりも広い領域が溶融され、この溶け過ぎた溶融樹脂が管及びソケットの嵌入時においてその内周面側にはみ出し、ビードと呼ばれる盛り上がり部が発生して、管及びソケットの内を通る流体の抵抗となるおそれがある。
また、流体などの配管として天井付近で管体同士を融着する場合がある。
しかし、重量が重く運搬が困難な従来の管融着装置では、天井付近で管体同士を融着することはできなかった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体の加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理調整可能な管融着装置を提供することなどを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明は、互いに嵌合する管体を着脱自在に取り付ける一対のクランプがそれぞれ前記管体の嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段と、前記クランプの間に出し入れ自在に設けられて挿入により前記管体の嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段と、前記クランプと前記加熱手段の間に設けられて前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量を設定する加熱量調整手段と、前記クランプの間に設けられて前記管体同士の嵌入量を設定する融着量調整手段とを備え、前記加熱量調整手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱手段に対して突き当たる加熱量調整用スペーサを有し、前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量として、前記加熱手段と前記管体との間に前記クランプの移動方向へ所定寸法の隙間を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前述した特徴を有する本発明は、クランプの間に加熱手段が配置された状態で、クランプを管体の嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプと加熱手段の間で加熱量調整手段の加熱量調整用スペーサがそれぞれ突き当たって、加熱手段と管体の加熱挿入量が設定され、加熱手段と管体との間に隙間が形成されるため、管体の嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体同士の嵌入時に管体の内周面側にはみ出ないので、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体の加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理調整することができる。
その結果、管側クランプ及びソケット側クランプの相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックしてヒーターと管及びソケットとの加熱挿入量を設定する従来のものに比べ、装置全体の構造が簡素化されてコンパクト化できるだけでなく、重量が軽くなって作業者一人でも運搬できる。天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
したがって、誰が管体の融着作業を行っても、融着部位の品質を一定にできる。
さらに、管体の内周面側にビードと呼ばれる盛り上がり部を小さくできるため、管体内を通る流体の抵抗とならず、詰まりなどの事故を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る管融着装置の全体構成を示す加熱(嵌入)時の説明図で、(a)が平面図、(b)が同縦断正面図である。
【図2】融着(挿入)時の説明図で、(a)が平面図、(b)が同縦断正面図である。
【図3】図1(a)の(3)−(3)線に沿える拡大側面図である。
【図4】図1(a)の(4)−(4)線に沿える拡大側面図である。
【図5】図1(b)の(5)−(5)線に沿える拡大側面図である。
【図6】図1(b)の(6)−(6)線に沿える拡大側面図である。
【図7】管体のセット時を示す平面図である。
【図8】管体の位置合わせ時を示す説明図で、(a)が縦断正面図、(b)が図8(a)の(8B)−(8B)線に沿える拡大側面図である。
【図9】管体がサイズ変更した際の説明図で、加熱(嵌入)時の平面図である。
【図10】管体がサイズ変更した際の説明図で、(a)が加熱(嵌入)時の正面図、(b)が図10(a)の(10B)−(10B)線に沿える拡大側面図である。である。
【図11】融着量調整手段の変形例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施形態に係る管融着装置の使用例を示す説明図であり、(a)が管体のセット時を示す縮小正面図、(b)が加熱(嵌入)時の縦断縮小正面図、(c)が融着(挿入)時の縮小正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管融着装置Aは、図1〜図12に示すように、差し込まれることで互いに嵌り合う管体S,Pを着脱自在に取り付けるための一対のクランプ11,12がそれぞれ管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段1と、クランプ11,12の間に出し入れ自在に設けられて挿入により管体S,Pの嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段2と、クランプ11,12と加熱手段2の間に設けられて加熱手段2と管体S,Pとの加熱挿入量を設定する加熱量調整手段3と、クランプ11,12の間に設けられて管体S,P同士の嵌入量を設定する融着量調整手段4を、主要な構成要素として備えている。
【0010】
管体S,Pは、図1及び図2に示すように、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの熱溶融可能な合成樹脂からなるソケットやパイプなどからなり、一方の管体Sの先端に形成される開口部S1の内径よりも、他方の管体Pの先端部P1における外径が僅かに大径に若しくは両者がほぼ同じに形成され、一方の管体Sの開口部S1に対して他方の管体Pの先端部P1を挿入することで、両者が互いに嵌合するように構成されている。
さらに、管体S,Pは、(径)サイズの異なるものが複数種類用意され、使用目的に応じて最適なもの同士を選択して、加熱手段2により溶融してから挿入嵌合することで一体的に連結される。
また、管体S,Pは、そのいずれか一方又は両方の表面に標線ガイド(図示しない)などを用いて、後述するクランプ11,12に対する位置決め用の目印(図示しない)を付けたり、例えば一方の管体Sにおいて開口端面S2を後述するクランプ11のブロック14の表面と面一に位置合わせすることなどにより、サイズ変更しても後述するクランプ11,12に対して管体S,Pが常時定位置にセットされるようにしている。
【0011】
スライド支持手段1は、互いに嵌合する一対の管体S,Pがそれぞれ着脱自在に取り付けられるクランプ11,12を対向して有し、これらクランプ11,12を、一方の管体Sの開口部S1に対して他方の管体Pの先端部P1が挿入されるように移送路13に沿って相対的にスライド移動自在に支持している。
クランプ11,12は、管体S,Pの先端における径方向へ開閉動自在に構成され、手動操作又は例えばアクチュエータなどの駆動部による締め付けに伴い、一方の管体Sの開口部S1と他方の管体Pの先端部P1をそれぞれの軸線が移送路13に沿って一直線上に配置されるようにセットし保持する。
【0012】
スライド支持手段1の具体例としては、クランプ11,12を備えたブロック14,15に亘ってスライドガイド16が挿通され、手動操作又は駆動源によりブロック14,15のいずれか一方に対して他方をスライド移動させるか、若しくはブロック14,15の両方をスライド移動させるように構成されている。
図示される例では、クランプ11,12を備えたブロック14,15のいずれか一方、他方の管体Pがセットされるクランプ12のブロック15に対してハンドル17が連設され、ハンドル17の手動操作で移動側のクランプ12を固定側のクランプ11へ向け移動させて、管体S,Pが互いに真っ直ぐ挿入されるように構成している。
また、その他の例として図示しないが、一方の管体Sがセットされるクランプ11のブロック14を移動させたり、ハンドル17に代えて、例えば電動シリンダーなどのアクチュエータ(図示しない)によりブロック14,15を相対的に自動移動させることも可能である。
【0013】
加熱手段2は、スライド支持手段1の移送路13の途中に対して出し入れ自在に設けられ、管体S,Pの嵌合部位を溶融するための一対のヒータを有している。これらヒータとしては、一方の管体Sの開口部S1に挿入される凸状ヒータ21と、他方の管体Pの先端部P1が挿入される凹状ヒータ22を具備している。
詳しくは、加熱手段2が手動操作や移動機構などによって移送路13と交差する方向へ設けられる。その具体例としては、加熱手段2が移送路13と直交する水平方向や上下方向などに往復動可能又は揺動可能に支持され、加熱手段2を移送路13の外部から内部へ入れることで、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22の軸線が、クランプ11,12に取り付けた管体S,Pの軸線と移送路13に沿って一直線状に配置されるように構成している。さらに、加熱手段2を移送路13に沿ってスライド移動可能にすることが好ましい。
【0014】
凸状ヒータ21は、一方の管体Sの開口部S1に挿入した状態で発熱させることにより、開口部S1の内周面において所定領域のみを溶融するものである。
凹状ヒータ22は、他方の管体Pの先端部P1を挿入した状態で発熱させることにより、先端部P1の外周面において所定領域のみを溶融するものである。
凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22は、管体S,Pのサイズに対応して(径)サイズの異なるものが複数種類用意され、クランプ11,12にセットされた管体S,Pのサイズと一致するものを選択し、加熱手段2の本体23に対して背中合わせとなるようにそれぞれ着脱自在に取り付けている。
凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22の具体例としては、管体S,Pのサイズ変更に対応して、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量は変化するものの、凸状ヒータ21が挿入された一方の管体Sにおいて開口端面S2の位置と、凹状ヒータ22に挿入された他方の管体Pにおいて先端面P2の位置は変化せず、加熱手段2の本体23と一方の管体Sの開口端面S2との間隔、及び、加熱手段2の本体23と他方の管体Pの先端面P2との間隔は一定寸法となるように形成されるものを使用することが好ましい。つまり、管体Sに凸状ヒータ21が挿入されるとともに、凹状ヒータ22に管体Pが挿入された状態で、クランプ11,12の間隔は、管体S,Pのサイズ変更に関係なく加熱手段2を挟んで一定寸法に保たれるように管体S,Pを取り付け設定することが好ましい。
【0015】
加熱量調整手段3は、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量を設定している。
すなわち、加熱量調整手段3は、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い加熱手段2に対して突き当たる加熱量調整用スペーサ3a,3bを有している。
加熱量調整用スペーサ3a,3bは、クランプ11,12又は加熱手段2のいずれか一方か若しくはクランプ11,12及び加熱手段2の両方に配置される。
図1(a)(b)、図3及び図4に示される例では、加熱手段2の本体23に加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ背中合わせとなるように突出させて配置している。
加熱量調整用スペーサ3a,3bと対向するクランプ11,12のブロック14,15には、図5及び図6に示されるように、加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面がそれぞれ突き当たる当接部14a,15aを有している。さらに必要に応じて、加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面又は当接部14a,15aのいずれか一方か、若しくは加熱量調整用スペーサ3a,3bの先端面及び当接部14a,15aの両方に、例えば磁石などの磁性体(図示しない)を設けて、両者の突き当たり状態が保持されるようにすることも可能である。
また、管体S,Pのサイズ変更に対応して、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量と、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量の変化により、凸状ヒータ21が挿入された一方の管体Sにおいて開口端面S2の位置と、凹状ヒータ22に挿入された他方の管体Pにおいて先端面P2の位置が変化する場合には、加熱量調整用スペーサ3a,3bを、管体S,Pのサイズ変更に応じて調整自在に構成するか、又は交換可能に構成する必要がある。
【0016】
ところで、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22は、管体S,Pの寸法誤差などを考慮して、一方の管体Sの開口部S1や他方の管体Pの先端部P1に対し余裕をもった状態で形成される。そのため、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pとの加熱挿入量にバラツキが発生するおそれがある。
具体的に説明すれば、一方の管体Sの開口部S1に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量や、凹状ヒータ22に対する他方の管体Pの先端部P1の加熱挿入量が不足すると、融着不良となるおそれがある。これと逆に一方の管体Sの開口部S1に対して凸状ヒータ21が必要量以上に挿入されたり、凹状ヒータ22に対して他方の管体Pの先端部P1が必要量以上に挿入されると、管体S,Pの嵌合部位よりも広い領域が溶融され、この溶け過ぎた溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時において管体S,Pの内周面側にはみ出し、ビードと呼ばれる盛り上がり部が発生して、管体S,P内を通る流体の抵抗となるおそれがある。
【0017】
そこで、本発明では、図1(a)(b)に示されるように、加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bで設定する加熱手段2と管体S,Pとの加熱挿入量として、加熱手段2と管体S,Pとの間にクランプ11,12の移動方向へ所定寸法の隙間Cを形成している。
つまり、一方の管体Sの開口部S1に凸状ヒータ21を挿入した状態で、互いに対向する管体Sの開口端面S2と凸状ヒータ21の基部21aとの間に隙間Cを形成するとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1を挿入した状態で、互いに対向する管体Pの先端面P2と凹状ヒータ22の内底面22aとの間に、クランプ11,12の移動方向へ所定寸法の隙間Cが形成されるように、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pとの加熱挿入量を設定している。
【0018】
融着量調整手段4は、一方の管体Sの開口部S1に対する他方の管体Pの先端部P1の嵌入量を設定している。
すなわち、融着量調整手段4は、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴って互いに突き当たる融着量調整用スペーサ4aを有している。
融着量調整用スペーサ4aは、管体S,Pのサイズ変更に応じて調整移動自在に構成されるか、又は交換可能に構成されている。
融着量調整用スペーサ4aは、クランプ11,12のいずれか一方か若しくはクランプ11,12の両方に配置される。
図2(a)(b)、図5及び図6に示される例では、融着量調整用スペーサ4aとして、固定側クランプ11のブロック14に、移動側クランプ12のブロック15へ向けて突出する突起部4bを設け、突起部4bと対向する移動側クランプ12のブロック15に、調整部4cを配置している。さらに必要に応じて、融着量調整用スペーサ4aの突起部4b又は調整部4cのいずれか一方か、若しくは突起部4b及び調整部4cの両方に、例えば磁石などの磁性体(図示しない)を設けて、両者の突き当たり状態が保持されるようにすることも可能である。
【0019】
さらに、加熱手段2には、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電をON・OFF制御するための制御ユニット5を設けることが好ましい。
制御ユニット5は、図7に示されるように、加熱手段2と別体に配置されるか、又は加熱手段2と一体的に配置される。
制御ユニット5には、管体S,Pの各サイズに対応した凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22による加熱時間が予め設定されており、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い後述する加熱量調整手段3を介して加熱手段2と接触した際に、電気的に通電させるか若しくはスイッチ(図示しない)の作動により、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電を開始させると同時に、タイマーが作動して加熱時間がタイムアップするとブザーが鳴り、さらに必要に応じて凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電を停止させることが好ましい。
また、制御ユニット5には、管体S,Pの各サイズに対応した溶着保持時間が予め設定されており、スライド支持手段1によるクランプ11,12の相対移動に伴い融着量調整手段4を介してクランプ11,12同士が接触した際に、タイマーが作動して溶着保持時間がタイムアップすると、ブザーが鳴るように制御することも可能である。
またさらに、加熱手段2に例えば熱電対などの加熱温度測定センサー(図示しない)を設けて、制御ユニット5のヒータ温度表示部5aに測定温度を表示するように構成することも可能である。
【0020】
そして、本発明の実施形態に係る管融着装置Aを用いた管体S,Pの融着接合方法について説明する。
先ず、図7の実線に示されるように、スライド支持手段1のクランプ11,12が互いに離れた初期状態において、対応するサイズの管体S,Pをクランプ11,12にそれぞれセットし、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に離隔移動させた状態で、図7の二点鎖線に示されるように、クランプ11,12の間に加熱手段2が配置される。
【0021】
その後、図1(a)(b)に示されるように、クランプ11,12を相対的に接近移動させて、加熱手段2の凸状ヒータ21が一方の管体Sの開口部S1に規定位置まで挿入されるとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1が規定位置まで挿入される。
その際、制御ユニット5を配備した場合には、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電が開始されて、管体S,Pの嵌合部位を加熱して溶融が開始され、それから設定時間後に、管体S,Pの各サイズに対応した加熱時間がタイムアップすると、ブザーが鳴るか又は凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22への通電が停止される。
これに対応して速やかに、クランプ11,12を凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22から離し、移送路13の外に加熱手段2を外す。
【0022】
これに続いて、図2(a)(b)に示されるように、管体S,Pのサイズに対応するように融着量調整手段4の融着量調整用スペーサ4aを選択し、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pの嵌合部位同士が嵌入される。
その際、制御ユニット5に溶着保持時間を設定した場合には、管体S,Pの各サイズに対応した溶着保持時間のタイマーが作動しタイムアップすると、ブザーが鳴る。
これに対応して、融着連結した管体S,Pをクランプ11,12から取り外す。
【0023】
このような本発明の実施形態に係る管融着装置Aによると、図1(a)(b)に示されるように、クランプ11,12の間に加熱手段2が配置された状態で、クランプ11,12を移送路13に沿って管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させると、クランプ11,12と加熱手段2の間で加熱量調整手段3の加熱量調整用スペーサ3a,3bがそれぞれ突き当たって、加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と管体S,Pの加熱挿入量が設定され、加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と記管体S,Pとの間に隙間Cが形成されるため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ることがない。
それにより、簡単な構造でサイズ変更に応じて管体S,Pの加熱挿入量を大きなビードが発生しないように管理することができる。
【0024】
さらに、加熱手段2が、クランプ11,12の相対移動に伴い加熱量調整用スペーサ3a,3bを介して加熱手段2に対し突き当たることで加熱手段2への通電を開始するように構成される場合には、加熱手段2と管体S,Pの加熱挿入量を設定すると同時に加熱を開始することができる。
【0025】
その後、図2(a)(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などでクランプ11,12を移送路13に沿って管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させると、クランプ11,12の間で融着量調整手段4の融着量調整用スペーサ4aが突き当たって、管体S,P同士の嵌入量が設定される。
それにより、簡単な構造でありながらサイズ変更に応じて管体S,Pの融着量を管理することができる。
その結果、管側クランプ及びソケット側クランプの相対的位置を検出する位置検出センサーからの信号によりロック装置で両クランプ間の相対運動をロックして管及びソケットとの嵌入量を設定する従来のものに比べ、装置全体の構造が簡素化されてコンパクト化できるだけでなく、重量が軽くなって作業者一人でも運搬できる。天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
したがって、誰が管体の融着作業を行っても、融着部位の品質を一定にできる。
次に、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0026】
この実施例1は、図1〜図11に示すように、融着量調整用スペーサ4aとして、クランプ11,12のいずれか一方又は両方に、管体S,Pのサイズ毎にクランプ11,12の移動方向へ突出量が異なる複数の調整部4cを所定方向へ並設し、その並設方向へ調整移動自在に支持している。
【0027】
図示される例では、移動側クランプ12のブロック15に、複数の調整部4cが放射状に配置された星形プレートを回転自在に配置し、星形プレートの回転により調整部4cのいずれか一つが突起部4bと対向して位置合わせされるように構成している。
詳しくは、複数の調整部4cとして、星形プレートに形成された五つの放射状部の先端部位のみをそれぞれ突出量が異なる段差状に形成することにより、5種類のサイズの管体S,Pに対応してそれぞれの嵌入量を設定可能にしている。
また、その他の例として図示しないが、星形プレート以外の形状に形成された回転体に複数の調整部4cを形成したり、回転以外に往復動自在に配置したり、4種類以下又は6種類以上の管体S,Pにサイズ対応可能に構成することも可能である。
【0028】
さらに、図1に示される例では、一方の管体SとしてT型ソケットと、他方の管体Pとしてパイプを、それぞれ加熱手段2により溶融してから挿入嵌合することで一体的に連結している。一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1には、加熱手段2の凸状ヒータ21と対向して段部(図示しない)が形成される場合がある。
また、その他の例として図示しないが、一方の管体SとなるT型ソケットに代えてL型ソケットやパイプなどを、他方の管体Pとなるパイプと一体的に連結することも可能である。
【0029】
そして、クランプ11,12に管体S,Pを取り付けてセットする際には、管体S,Pのサイズ変更に関係なく、クランプ11に対して一方の管体S(T型ソケット)をその開口端面S2のセット位置が常に一定となるように取り付けると同時に、クランプ12に対して他方の管体P(パイプ)をその先端面P2のセット位置が常に一定となるように取り付けることにより、クランプ11,12をそれの間隔が一定寸法になるように離し、一方の管体S(T型ソケット)の開口端面S2と他方の管体P(パイプ)の先端面P2とが、管体S,Pの嵌合方向へほぼ同一平面状に配置されるようにセットしている。
その具体例として、一方の管体S(T型ソケット)は、その開口端面S2がクランプ11の基準面(図示しない)などに対し面一状となるように取り付けることで、常に定位置でセットすることが可能となる。他方の管体P(パイプ)は、その表面に標線ガイド(図示しない)などを用いて、クランプ12に対する位置決め用の目印(図示しない)を付け、この目印に基づいて他方の管体P(パイプ)を取り付けることにより、その先端面P2の取り付け位置がクランプ12から所定寸法だけ離れるようにセットされる。
また、その他の例として、図1〜図10に示されるように、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bから更に突出する凸部4dを設け、この凸部4dの先端面を、図8(a)(b)に示されるように、管体S,Pのサイズ変更に関係なく常に調整部4cのいずれか一つ、図示例では最も突出量の少ないプレートに突き当てることにより、他方の管体P(パイプ)を、その先端面P2の取り付け位置が常にクランプ12から所定寸法だけ離れるようにセットすることも可能である。
【0030】
このような本発明の実施例1に係る管融着装置Aによると、クランプ11,12に対する管体S,Pの取り付けセットに際し、標線ガイドなどで付けられた位置決め用の目印に基づいて他方の管体Pをクランプ12に対し取り付ける場合には、管体S,Pがクランプ11,12にそれぞれセットされた後の工程として、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に一定長さだけ接近移動させると、一方の管体Sの開口端面S2と他方の管体Pの先端面P2とが、ほぼ同一平面状に配置されて、両者の位置合わせが可能になる。
また、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bに凸部4dが突設される場合には、図8(a)(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pのサイズ変更に関係なく常に凸部4dを同じ調整部4cに突き当ててから、他方の管体P(パイプ)を、その先端面P2が一方の管体S(T型ソケット)の開口端面S2と同一平面状に配置されるように取り付けることでセットが完了すると同時に、両者の位置合わせも完了する。
それにより、この状態で管体S,Pに位置ズレがある場合には、クランプ11,12でセットし直すことができる。
【0031】
このような位置合わせが完了した後は、管体S,Pのサイズ変更に対応して融着量調整用スペーサ4aの調整部4cをその並設方向へ調整移動してから、クランプ11,12を管体S,Pの嵌合方向へ相対的に移動させることにより、クランプ11,12の間で対応する突出量の調整部4cに突き当たって、管体S,P同士の嵌入量が設定される。
この際、一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1に加熱手段2の凸状ヒータ21と対向する段部(図示しない)が形成される場合には、管体Sの開口端面S2と凸状ヒータ21の基部21aとの間に形成された隙間Cによって、開口部S1内の段部と凸状ヒータ21の先端面が接触しないように、一方の管体S(T型ソケット)に対する凸状ヒータ21の加熱挿入量を設定している。
このように調整すれば、位置合わせが完了した状態で、融着量調整用スペーサ4aの突起部4bと、それに対応する調整部4cとの間隔が、管体S,Pの嵌入量と一致する。
よって、調整部4cを調整移動して突起部4bと対向するように配置してから、ハンドル17の手動操作などでクランプ11,12を互いに接近する方向へ移動させると、クランプ11,12の間で突起部4bが、対応する突出量の調整部4cに突き当たって、管体S,P同士の融着が完了する。
それにより、簡単な調整でありながらサイズ変更に応じて管体S,Pの融着量を管理することができる。
【0032】
特に、一方の管体S(T型ソケット)の開口部S1に加熱手段2の凸状ヒータ21と対向する段部(図示しない)が形成される場合には、開口部S1内の段部と他方の管体P(パイプ)の先端面P2が、隙間Cにより加熱手段2の凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22と接触しないため、管体S,Pの嵌合部位のみが溶融されて、溶融樹脂が管体S,P同士の嵌入時に管体S,Pの内周面側にはみ出ることがない。
それにより、一方の管体S(T型ソケット)の段部と他方の管体P(パイプ)の先端面P2との突き当たりによるビードの発生を防止することができる。
【0033】
また、管体S,Pがサイズ変更された場合にも、図9及び図10(a)(b)に示されるように、前述したように繰り返せば、同様に管体S,Pが融着連結される。
なお、融着量調整用スペーサ4aの調整部4cは、図1〜図10に示された例に限定されず、図11に示すように、星形プレートにおける放射状部の全体をそれぞれ突出量が異なる段差状に形成することも可能である。
【実施例2】
【0034】
この実施例2は、図12(a)〜(c)に示すように、建築現場の天井付近において管体S,Pの溶着作業を行う場合の使用例であり、管融着装置Aの構成は図1〜図11に示した実施例1と同じものである。
【0035】
溶着作業を工程順に説明する。
先ずは、図12(a)に示されるように、天井Dに吊持された管体S,Pに対し、スライド支持手段1のクランプ11,12がそれぞれセットされ、これらクランプ11,12の間に加熱手段2が配置される。
その次に、図12(b)に示されるように、ハンドル17の手動操作などにより、加熱手段2の凸状ヒータ21が一方の管体Sの開口部S1に規定位置まで挿入されるとともに、凹状ヒータ22に他方の管体Pの先端部P1が規定位置まで挿入される。これに続いて、凸状ヒータ21及び凹状ヒータ22により管体S,Pの嵌合部位を加熱して溶融される。
そして最後に、移送路13の外に加熱手段2を外してから、図12(c)に示されるように、ハンドル17の手動操作などによりクランプ11,12を相対的に接近移動させて、管体S,Pの嵌合部位同士が嵌入され、両者が融着連結される。
【0036】
このような本発明の実施例2に係る管融着装置Aの使用例によると、管融着装置Aの構造がコンパクトで軽量なので、天井付近でも作業者が簡単に溶着作業できる。
【0037】
なお、前示実施例では、建築現場の天井付近において管体S,Pの溶着作業を行う場合の使用例のみを説明したが、これに限定されず、天井付近以外の建築現場でも使用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 スライド支持手段 11,12 クランプ
2 加熱手段 3 加熱量調整手段
3a,3b 加熱量調整用スペーサ 4 融着量調整手段
4a 融着量調整用スペーサ 4c 調整部
C 隙間 S,P 管体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合する管体を着脱自在に取り付ける一対のクランプがそれぞれ前記管体の嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段と、
前記クランプの間に出し入れ自在に設けられて挿入により前記管体の嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段と、
前記クランプと前記加熱手段の間に設けられて前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量を設定する加熱量調整手段と、
前記クランプの間に設けられて前記管体同士の嵌入量を設定する融着量調整手段とを備え、
前記加熱量調整手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱手段に対して突き当たる加熱量調整用スペーサを有し、前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量として、前記加熱手段と前記管体との間に前記クランプの移動方向へ所定寸法の隙間を形成したことを特徴とする管融着装置。
【請求項2】
前記融着量調整手段は、前記管体のサイズに応じて調整自在又は交換可能に構成され、前記クランプの相対移動に伴って互いに突き当たる融着量調整用スペーサを有していることを特徴とする請求項1記載の管融着装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱量調整用スペーサを介して前記加熱手段に対し突き当たることで前記加熱手段への通電を開始するように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の管融着装置。
【請求項4】
前記融着量調整用スペーサとして、前記クランプのいずれか一方又は両方に、前記管体のサイズ毎に前記クランプの移動方向へ突出量が異なる複数の調整部を所定方向へ並設し、その並設方向へ調整移動自在に支持したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の管融着装置。
【請求項1】
互いに嵌合する管体を着脱自在に取り付ける一対のクランプがそれぞれ前記管体の嵌合方向へ相対的に移動自在に支持されるスライド支持手段と、
前記クランプの間に出し入れ自在に設けられて挿入により前記管体の嵌合部位を加熱し溶融する加熱手段と、
前記クランプと前記加熱手段の間に設けられて前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量を設定する加熱量調整手段と、
前記クランプの間に設けられて前記管体同士の嵌入量を設定する融着量調整手段とを備え、
前記加熱量調整手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱手段に対して突き当たる加熱量調整用スペーサを有し、前記加熱手段と前記管体との加熱挿入量として、前記加熱手段と前記管体との間に前記クランプの移動方向へ所定寸法の隙間を形成したことを特徴とする管融着装置。
【請求項2】
前記融着量調整手段は、前記管体のサイズに応じて調整自在又は交換可能に構成され、前記クランプの相対移動に伴って互いに突き当たる融着量調整用スペーサを有していることを特徴とする請求項1記載の管融着装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、前記クランプの相対移動に伴い前記加熱量調整用スペーサを介して前記加熱手段に対し突き当たることで前記加熱手段への通電を開始するように構成されることを特徴とする請求項1又は2記載の管融着装置。
【請求項4】
前記融着量調整用スペーサとして、前記クランプのいずれか一方又は両方に、前記管体のサイズ毎に前記クランプの移動方向へ突出量が異なる複数の調整部を所定方向へ並設し、その並設方向へ調整移動自在に支持したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の管融着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−245651(P2012−245651A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117438(P2011−117438)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000134534)株式会社トヨックス (122)
【Fターム(参考)】
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