説明

粉体の洗浄方法及び洗浄乾燥方法

【課題】粉体の洗浄を簡便にかつ生産性良好に行うことができる方法を提供すること。
【解決手段】処理槽28内にろ過多孔板36を備え、該ろ過多孔板36を加振する加振手段30と、送気手段24とを備えた振動流動処理装置Mを用いて粉体を洗浄する方法。1)粉体を洗浄液中に含有させた粉体含有液体の層Fをろ過多孔板36上に形成して、ろ過多孔板36の下方から送気するとともにろ過多孔板36を振動させて洗浄する第1ステップと、2)第1ステップの後、ろ過多孔板36を介して部分脱液する第2ステップと、3)再度、第1ステップを行う場合に、第2ステップ後の残液に洗浄液を補充する第3ステップとからなる洗浄工程を、必要回数繰り返す方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な粉体の洗浄方法及び洗浄乾燥方法に関し、特に、合成反応(重合)後の懸濁液中に分散している合成微粒子(例えば有機顔料や合成金属酸化物)に付着している不純物(未反応物質ばかりでなく、酸、アルカリ、溶剤等も含む。)除去するのに好適な微粉体の洗浄方法及び洗浄乾燥方法に係る発明である。
【0002】
本発明の被洗浄物(対象)となる粉体の粒径は、通常、約2mm未満のものとするが、本発明の効果を奏する範囲なら、2mm以上の粉体にも適用可能である。
【0003】
本発明の洗浄方法は、表面エネルギーが大きく、凝集し易い粒径小さな微粉体と称されている100メッシュ(147μm)以下のもの、特に、超微粉体と称される約200メッシュ(74μm)以下、更には、10μm以下のものに、効果を発揮するものである。
【0004】
ここでは、合成反応後における懸濁液中の合成微粉子(平均粒径1〜10μm)を洗浄・乾燥処理する場合を、主として例に採り説明する。本発明はこの場合に限られず、本発明の効果を奏する限り、あらゆる無機質(セラミック、金属酸化物、金属)、有機質(化合物、高分子)の各種粉体に、本発明は適用可能である。
【背景技術】
【0005】
従来、上記のような合成反応後の反応液(懸濁液:スラリー)中に分散している合成微粒子(例えば、有機顔料)は、合成したままでは、不純物(未反応物質(反応化合物、ワックス、顔料等)や界面滑性剤)が付着している。付着したまま乾燥したのでは、所要の性能を維持できない。このため、通常、懸濁液に分散含有されている合成微粒子は、図1に示すようなろ過コンベヤ装置12を用いて、下記の如く、洗浄・乾燥処理をしていた。
【0006】
該ろ過コンベヤ装置12は、エンドレスに配設された濾布(多孔板板)製のコンベヤベルト14における搬送ゾーンZの下面に連接して配された吸引室16を複数個備えるとともに、搬送ゾーンZの上方で中間位置に洗浄水供給用のシャワー18を備え、さらに、ベルト14の搬送ゾーンZにおける終端側のベルト14の反転開始位置にドクターナイフ20を備えている。
【0007】
そして、合成後の合成微粒子含有液(懸濁的、スラリー:被処理物)Sを、ベルト14上へ供給し、該コンベヤ14の原料供給側で、吸引室16を作動させて吸引ろ過を行う。こうして、該コンベヤ14上に形成されるろ滓(粉体層乃至粒子層)を、洗浄水をシャワー18して洗浄し、続いて、洗浄後、導出側で再度、吸引手段を用いて脱液する。こうして生成したろ滓(ケーキ)cを、コンベヤ14からドクターナイフ22等で掻き取り回収する。
【0008】
そして、該ケーキcを攪拌槽等へ洗浄水とともに投入し攪拌洗浄し、再び、上記ろ過コンベヤ装置12に供給して、スラリー供給ろ過、洗浄脱水を繰り返す。そして、粒子が綺麗に洗浄されたなら、上記ろ過コンベヤ装置12から排出されたケーキを、更に、適当な解砕・乾燥装置に投入して製品としていた。
【0009】
しかし、この洗浄方法の場合、洗浄効率が良好でなく、洗浄水を多量に必要とした。また、洗浄乃至洗浄・乾燥工数も嵩み、洗浄乃至洗浄乾燥の生産性が良好でなかった。
【0010】
本発明の特許性に影響を与えるものではないが、本発明に関連する先行技術文献(本願出願人と同一人の出願に係るもの)として、例えば、特許文献1・2が存在する。
【0011】
なお、特許文献1は、本発明で使用するのと同様な振動流動処理装置と同様な構成を備えたろ過乾燥装置を用いて、固液混合物をろ過・乾燥する方法が記載されているのみで、本発明の如く、洗浄処理を予定していない。
【0012】
また、特許文献2は、本発明で使用するのと同様な振動流動処理装置を用いて、ビーズ体(ミクロ体)を流動接触させる方法が記載されているが、本発明のような含液状態で振動流動させた場合に固まり易い粉体の洗浄を予定するものではない。
【特許文献1】特開2002−320803号公報
【特許文献2】特開2006−263468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記にかんがみて、粉体の洗浄乃至洗浄乾燥を簡便にかつ生産性良好に行うことができる方法を提供することを目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために、本願出願人が製造販売している振動流動処理装置を用いて、上記のような合成後の有機微粉体の洗浄を行えば、効率良く洗浄さらには乾燥が行えることを知見して、下記構成の微粉体の洗浄方法ないし洗浄乾燥方法に想到した。
【0015】
(1) 処理槽内にろ過多孔板を備え、該ろ過多孔板を加振する加振手段と、該ろ過多孔板の下方から送気可能な送気手段とを備えた振動流動処理装置を用いて粉体を洗浄する方法であって、
1)粉体を洗浄液中に含有させた粉体含有液体をろ過多孔板上に形成して、ろ過多孔板の下方から送気するとともにろ過多孔板を加振して粉体洗浄をする第1ステップと、2)第1ステップの後、ろ過多孔板を介して部分脱液する第2ステップと、3)再度第1ステップを行う場合に、第2ステップ後の残液(以下「脱液後残液」という。)に洗浄液を補充する第3ステップとからなる洗浄工程を、必要回数繰り返す方法であることを特徴とする。
【0016】
上記洗浄方法の場合、洗浄液(主として水)の使用量が少なくても綺麗に洗浄でき、しかも、綺麗に水洗浄するための工数(時間)も格段に削減できる。その理由は、下記の如くであると推定される。更には、送気による洗浄液(洗浄水)のバブリング(泡立ち)と加振による液流動化が発生する。バブリングと液流動化が相乗して、粉体粒子相互の拡散とともに、バブリングにより粉体と洗浄液との混合攪拌より強く行われる。この結果、粉体粒子の表面不純物(微粉流体よりさらに粒径が小さい)が剥離されて、脱液に際して、洗浄液とともに洗浄系外へ排出される。
【0017】
ここで、粉体含有液体とは、通常、スラリー(懸濁液)とするが、必ずしも、粉体が洗浄液中に均一分散されている必要はなく、粉体が沈降乃至浮遊して二層的ないし粉体濃度が重力方向に除変する傾斜分散液も含む。
【0018】
また、洗浄液としては、上記のように被洗浄物が有機質粉体の場合、通常、洗浄水(純水)を使用するが、純粋に界面活性剤等の洗浄補助剤を添加したり、アルコール等の親水性溶剤と混合させたりしたものであってもよい。さらには、被洗浄物が無機質の場合は、適宜、炭化水素等の有機溶剤も使用可能である。
【0019】
(2) 上記構成において、粉体の投入を、ろ過多孔板の下方から送気するとともにろ過多孔板を加振しながら行った後、該送気と加振を継続しながら洗浄液の投入を行ってもよい。
【0020】
通常、微粉体(1mm未満:μmオーダ)を洗浄液(洗浄水)とともに槽内に投入するだけでは、自然拡散し難い。特に、有機微粒子のような場合、通常、比重が1前後以下であり、浮遊して浮遊層が形成される。さらに、粉体が微粉体(特に10μm以下の超微粉)となると、凝集して固まり易くなる。これらの状態では、通常の攪拌羽根によっては微粒子相互が会合せずに均一に分散した懸濁液(均一分散系)を得難く、十分な洗浄困難であるため、前述の如く、強制的に粒子間隙間を洗浄液を通過させるシャワーろ過洗浄と、解砕が主目的である攪拌洗浄を繰り返し行っていたものと推定される。
【0021】
これに対して、上記本発明の方法では、ろ過多孔板に堆積した粉体層(乾燥状態)を、下面から送気(エアレーション)しながら、必要により、加振しながら粉体層を流動層化している状態で、洗浄液を投入することができる。このため、混合攪拌により均一分散化(懸濁化)が促進されやすい。
【0022】
(3) 本発明を合成反応後の合成反応後の合成微粉体を含む懸濁液中に含まれる合成微粉体の洗浄に適用する場合は、下記構成となる。
【0023】
処理槽内にろ過多孔板を備え、該ろ過多孔板を加振する加振手段と、該ろ過多孔板の下方から送気可能な送気手段とを備えた振動流動処理装置を用いて、粉体を洗浄する方法であって、
粉体が、合成反応後の合成微粉体を含む反応液中に含まれる合成微粉体であり、
反応液を処理槽内へ投入後、ろ過多孔板を介して部分脱液して、該部分脱液後の残液に洗浄液を補充して粉体含有液体の層を形成して、1)ろ過多孔板の下方から送気するとともにろ過多孔板を加振して洗浄する第1ステップと、2)第1ステップの後、ろ過多孔板を介して部分脱液する第2ステップと、3)再度、第1ステップを行う場合に、第2ステップ後の残液(以下「脱液後残液」という。)に洗浄液を補充して粉体含有液体の層を形成する第3ステップとからなる洗浄工程を、必要回数繰り返す方法であることを特徴とする。
【0024】
(4) 上記各構成において、第2ステップの部分脱液に際して、ろ過多孔板の下方から間欠的に送気をしてもよい。部分脱液に際して発生するろ過多孔板の目詰まりを防止できる。
【0025】
(5) 脱液後残液を、ろ過多孔板の振動により流動化可能な状態で、かつ、可及的に高濃度であるものとするとともに、洗浄液の補充を脱液後残液を流動化させながら行うことが好ましい。脱液後残液と洗浄液との均一混合化が容易となる。
【0026】
(6) 各構成において使用する振動流動処理装置は、ろ過多孔板の取り付け部位が処理槽本体から取り外し可能で、かつ、ろ過多孔板の上面より下方に下端が位置する排出口を備えた処理槽分割体とする構成が好ましい。
【0027】
当該構成により、ろ過多孔板の取り替えが容易となるとともに、排出口がろ過多孔板の上面より下方に下端が位置することにより、洗浄後(処理)粉体の全量排出が容易となる。なお、排出口からの洗浄後(処理済み)粉体を排出を容易にするために、ろ過多孔板の上に排出用攪拌機を配してもよい。
【0028】
(7) 上記各構成の各洗浄方法を経た洗浄済み品(スラリー)は、予備乾燥後又は脱液後、振動流動乾燥により最終乾燥を行う。特に限定されないが、予備乾燥は、例えば、気流乾燥機若しくは真空ドラムドライヤーで行ない、脱液は、例えば、遠心分離装置若しくはフィルタープレスで行う。また、最終乾燥には振動流動乾燥が低含水率の製品(粉体)を得ることができ好適であるが、低含水率の製品(粉体)を得ることができれば、振動流動乾燥に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明の粉体の洗浄方法乃至洗浄乾燥方法を、粉体が、有機顔料合成後の反応液(懸濁液)中に含まれる有機微粒子である場合を、主として例に採り、詳細に説明する。なお、以下の説明で「含水率」は、「乾量基準含水率」を意味する。また、「濃度」等を表示する「%」は、特に断らない限り、「質量(重量)%」を意味する。
【0030】
図2に、本発明の有機微粒子(粉体)の洗浄方法に使用する洗浄装置の流れ図の一例を示す。
【0031】
該洗浄乾燥装置Mは、基本的には、洗浄機22と、該洗浄機(振動流動処理装置)22と接続される送気(エアレーション)配管24と、排気配管26とを備えた構成である。
【0032】
洗浄機22は、密閉可能な(密閉系の)洗浄槽(処理槽)28と、洗浄槽28を加振する(振動させる)振動モータ(加振手段:発振器)30とを備えている。洗浄槽28は、架台(ベース)32上に圧縮コイルばね(弾性支持体)34を介して振動可能に支持されている。振動モータ30は、洗浄槽28の底部両側に取付けられ、洗浄槽28を加振可能とされている。
【0033】
洗浄槽28は、中間部に洗浄ゾーン(流動層)Fの底部を形成するろ過多孔板(整流板乃至分散板)36が設置されている。そして、洗浄槽28の天井側(ろ過多孔36の上方)には、被洗浄物(原料)/洗浄液(洗浄水)投入口38と、排気口39を備え、周壁のろ過多孔板36の直上位置に製品(洗浄済み粉体)取出し口30を備えている。また、洗浄槽底部側(ろ過多孔板36の下方)には、排液口42及び送気用のガス送入口43(ろ過多孔板36の直下位置に)及び、吸引配管(図示せず)と接続された吸引口45を備えている。なお、洗浄槽8の排液口42が形成された底部形状は、排液が容易なようにテーパ状に形成されている。
【0034】
ろ過多孔板36は、通常、金属製やセラミック製の多孔板(例えば、パンチングプレート)や金網とする。ろ過多孔板36は、ろ布を金網やグリット板(格子状枠板)で両面保持した複合ろ過多孔板や多孔質FRP等で形成されたプラスチック製ろ過多孔板であってもよい。
【0035】
なお、ろ過多孔板36の単位開口径・開口率は、粉体が通過せず洗浄液が通過可能なものとし、ガス抵抗が可及的に小さく、ろ過多孔板36上に形成される粉体含有液体中の粉体洗浄に寄与するバブリングを発生可能なエア(ガス)流量を得ることのできる径以上とする。例えば、粉体平均粒径が4μmの場合、粉体の特性・処理濃度等により異なるが、単位開口径5±5μmとする。
【0036】
ここでは、被洗浄物(原料)である粉体と洗浄水(洗浄液)との投入口38は兼用となっているが、別々に設けてもよい。
【0037】
また、排液口42は排液弁44を備えて、排液受け槽46に先端出口が臨む排液チューブ48が接続されている。
【0038】
さらに、製品取出し口40は、製品受け槽42に落下回収可能にシュート等を設けてもよい。
【0039】
なお、必然的ではないが、洗浄槽28の周壁は、温調ジャケット52で覆われている。そして、温調ジャケット52には、洗浄ゾーン(流動層)Fを温調可能に温調水(冷水〜熱水)を通過可能となっている。
【0040】
加振手段(発振装置)は、本実施形態では、不平衡おもりの回転を利用した発振装置である振動モータ30であるが、それに限られず、洗浄槽28が小型・軽量の場合は、電磁式発振装置であってもよい。
【0041】
そして、上記送気配管(ガス送入配管)24は、ガス(エア)取り入れ側にブロワ−(気体輸送機)48、中間に温調器(熱交換器)50を備えている。なお、温調器50は、1個で熱媒を冷水/熱水(又はスチーム)の切替方式であるが、加熱器と冷却器とを別々に設けてもよい。また、ガス取り入れ側は不活性ガスタンク(図示せず)と接続させておくこともできる。被処理物である粉体が空気酸化を受け易いものの場合有効である。
【0042】
また、排気配管26は、洗浄槽28の天井側(ろ過多孔板36の上方)に形成された排気口39と接続され、凝縮器(コンデンサー)54を介して真空ポンプ56で排気可能となっている。なお、凝縮器54は液回収タンク58が付設されている。なお、排気口39には、バッグフィルタ40が取付けられている。
【0043】
本実施形態では、必然的ではないが、ろ過多孔板36の取り付け部位が洗浄/乾燥槽本体28aから取り外し可能で、かつ、ろ過多孔板36の上面より下方に下端が位置する排出口40を備えた処理槽分割体(上下端がフランジ接続可能とされた短筒)28bとされている。なお、排出口40にはピストン式の製品取出バルブ60が取り付けられている。
【0044】
そして、洗浄槽28の排出口40は、本実施形態では、気流乾燥装置(予備乾燥機)62の原料投入口64に投入(供給)可能にスラリー配管66を介して接続されている。気流乾燥装置62の乾燥配管(螺旋巻き配管)68の入口には、元部に送風機70、中間に加熱装置72を備えた熱風配管74と接続されている。当然、該乾燥配管68の外側は、図示しないが、ジャケットや断熱材で囲繞されて保温されている。
【0045】
また、気流乾燥装置62の予備乾燥品出口76は、予備乾燥品配管78を介してサイクロン式の予備乾燥品回収装置80と接続されている。なお、82はサイクロン、84は回収タンクである。そして、予備乾燥品回収装置80のサイクロン82のガス出口側は、集塵装置86を介して先端に排風機88を備えた吸引配管90と接続されている。
【0046】
さらに、本実施形態では、図3に示すような、予備乾燥装置としての振動乾燥装置92を用意しておく。該振動乾燥装置92は、処理槽94内に熱風を送入可能に元部に送風機96を中間に加熱器98を備えた熱風配管100を備えるとともに、排気口101には先端に排風機102を、中間に液回収タンク104付きの凝縮器106を備えた吸引配管108を備えている。なお、振動乾燥装置92の排気口101には、バッグフィルタ112が取り付けられている。
【0047】
次に、上記洗浄装置、予備乾燥装置および乾燥装置からなる粉体の洗浄乾燥プラントを用いての有機微粒子合成後の懸濁液中に含まれる有機微粒子の洗浄方法及びそれに続く乾燥方法について説明する。
【0048】
A:洗浄工程
(1)まず、排液口42の排液弁(排液弁)44及び製品取出し口40を閉とした状態で、反応液(懸濁液:被処理物)を洗浄槽(処理槽)28内へ投入する。このとき、必然的ではないが、ろ過多孔板36の下方から送気するとともにろ過多孔板36を加振しながら(振動させながら)、上記反応液の投入を行ってもよい。この送気及び加振により、懸濁液の均一化が維持され易くなる。このときの、送気量及び加振振幅は、被処理物(懸濁液)の種類および投入量により異なるが、例えば、投入量が500Lの場合、50L/min、振幅:8mm以下、周波数(回転数):500〜2000min-1とする。以下、同様である。
【0049】
(2)次に、上記送気及び加振を止めて、ろ過多孔板36を介して部分脱液する。この脱液は、通常、差圧により行う。すなわち、吸引配管により吸引口45を介してろ過多孔板36の下面側室を減圧にすれば吸引脱液ができる。当然、洗浄槽(処理槽)28のろ過多孔板36の上側室(洗浄ゾーンF側)を加圧してもよい。なお、このとき、送気を間欠的に行ってもよい。差圧により懸濁液中の粉体が下方へ引張られてろ過多孔板36に目詰まりが発生し難くなる。
【0050】
そして、残液が、ろ過多孔板の加振(振動)により流動化可能な状態で、かつ、可及的に高濃度である状態になるまで部分脱液を行う。このときの固形分濃度は、粉体材料の種類(材質・粒径等)により異なるが、例えば、トナー(有機顔料)の場合、約5〜40%、望ましくは25〜30%とする。
【0051】
(3)次に、再度、送風及び加振しながら、洗浄槽28内へ洗浄水(洗浄液)を補充して粉体含有液体の層Fを形成する第3ステップを行う。洗浄水と残液とを均一混合させるためである。このとき、残液量に対する洗浄水の添加量は、粉体の種類により異なるが、通常、1〜4容量倍とする。
【0052】
(4)続いて、送風及び加振を継続して、第1ステップの流動洗浄を行う。このときの洗浄時間は、例えば、数分〜60minとする。
【0053】
(5)第1ステップの流動洗浄の後、再び、と同様に、第2ステップの部分脱液を行う。この(3)洗浄液補充(第3ステップ),(4)洗浄(第1ステップ),(5)部分脱液(第2ステップ)の各ステップを、所要回数(通常2〜5回)繰り返す。洗浄の完了を電気伝導度(未反応付着物等は通常電導性を有する)等により確認後、部分脱液をして洗浄済み粉体含有液体(スラリー)とする。この洗浄済みスラリーの固形分濃度も前述の同様、約5〜40%、望ましくは25〜30%とする。
【0054】
この洗浄済みスラリー(懸濁液)は、粉体の種類によっては、そのまま、薬剤乃至工業用材料更には製品として使用可能な場合もある。
【0055】
B:乾燥工程
この乾燥工程は、通常、予備乾燥(一次乾燥)を経て振動流動乾燥装置を用いた最終乾燥(二次乾燥)を行う。振動流動乾燥装置のみの一段で、所定含水率以下の目的乾燥品(最終乾燥品)を得ようとすると、水分が多いため振動流動により粉体相互間が密に充填されて解砕が困難な粘土状の固まりができてしまうためである。なお、振動流動乾燥に際して、振動凝縮による固まり(塊)が形成されない場合は、予備乾燥ステップは不要である。さらに、振動流動乾燥は低含水率の製品(乾燥品)ものを得たい場合に好適であり、低含水率の製品が要求されない場合は、予備乾燥に使用する汎用の乾燥装置を使用して最終乾燥品を得てもよい。
【0056】
(1)予備乾燥(一次乾燥):
該洗浄済み含有液体(スラリー)は、製品取出口40のバルブ60を開けて、予備乾燥装置62の投入口64に連続投入しながら熱風を送気口68に送入し、予備乾燥装置62内で含水状態の粉体を気流で巻き上げながら乾燥を行う。該気流で予備乾燥された予備乾燥品は、排風機88により吸引されて乾燥品搬送ダクト90内を搬送され予備乾燥品回収装置80のサイクロン82で捕集され予備乾燥品回収タンク84に回収される。このときの予備乾燥品の水分は、粉体の種類によって異なるが、トナー(有機顔料)の場合、約30%以下、望ましくは、約20%以下とする。
【0057】
(2)最終乾燥(二次乾燥):
該予備乾燥品(一次乾燥品)は、さらに、振動乾燥装置92を用いて最終乾燥を行う。この最終乾燥は、洗浄機22を用いて、その運転条件を変えて行ってもよい。
【0058】
振動乾燥装置92の処理槽94内に、予備乾燥品を投入した後、熱風配管100により熱風を送入するとともに、吸引配管108により処理槽94内を減圧状態として、予備乾燥品を投入する。このとき、熱風温度及び減圧度は、粉体の種類により異なるが、粉体に熱影響を与えず、且つ、要求乾燥度により異なり、例えば、30〜100℃、5〜50Paとする。
【0059】
こうして、所要時間(例えば、2〜4h)、振動乾燥装置92を運転することにより、含水率が約5%以下、好ましくは約0.5%以下になるまで行う。
【0060】
ここで、振動乾燥装置92のかわりに、洗浄装置として使用した振動流動処理装置Mを使用することもできる。
【0061】
さらに、粉体の種類(材質・径)によっては、予備乾燥をなくして、直接、最終乾燥したり、予備乾燥の代わりに脱水機(フィルタープレスや遠心分離機等)で脱水して得たケーキを、最終乾燥させてもよい。
【実施例】
【0062】
次に、本発明の効果を確認するために行った実施例について説明をする。なお、各実施例は実験機でパイロット的に行ったものであり、実機に適用する場合は、運転条件は変動する場合がある。
【0063】
<実施例1>
本実施例の被洗浄物(被処理物)は、平均粒径4μmの合成有機顔料含有液(固形分濃度約20%)のものを使用した。本実施例の洗浄目的は、主として合成有機顔料に付着している未反応物等の不純物の除去にある。
【0064】
使用した洗浄装置及び流動乾燥装置は、下記仕様の、中央化工機株式会社製振動流動装置「UVA型」を使用した。
【0065】
ろ過多孔板36:材質 焼結ステンレス製、厚み15mmt、単位孔径5μm、
通気量10L/(min・cm2)(200mmH2O)
洗浄槽28:内径210mmφ×ろ過多孔板上高さ600mm
振動モータ30:出力0.2kW×2基、送風機48:出力0.75kW、
排風機58:出力0.75 kW
1)上記被洗浄物(スラリー)2.5kgを、洗浄槽28内へ投入した。このとき、通常行う送気及び加振は、省略した。
【0066】
2)投入後、排液弁34を開とするとともに、排気口39を加圧口として、図示しないコンプレッサを用いて、98kPaの加圧力を60minかけて部分脱液(脱液量:1.2kg)を行った。このとき、通常、間欠的に行う送気も省略した。
【0067】
3)部分脱液後の残液に対して、約1.2kgの洗浄水(純水)を投入して、送気条件:常温、送風量50L/min、加振条件:振幅2mm、振動数1500min-1の条件で、60min(流動)洗浄を行った。そして、と同様の条件で上側処理室の加圧により部分脱液をした(脱液量1.2kg)。これを、3回繰り返した後、脱水して洗浄工程(処理)を終了して、洗浄済み品であるスラリー(含水率100%)を調製した。
【0068】
4)上記スラリーを下記仕様のドラムドライヤーに、上記スラリーを連続投入(0.5kg/h)して、ドラム温度40℃、真空度50torrの条件で、予備乾燥を行って、含水率約2%での予備乾燥品を得た。
【0069】
<真空ドラムドライヤー>
ドラム:円筒(200mmφ×200mmL)×2、本体電動機:0.4kW、真空ポンプ:0.75kW
5)上記予備乾燥品(含水率約2%)を洗浄に使用したの同一仕様の振動流動処理装置(「UVA型」)を用いて、送気:熱風温度40℃、熱風量240L/min、加振:振幅2mm、振動数1500min-1、槽加温:ジャケット温度40℃の条件で約60min乾燥を行った。その結果、約0.27%の最終乾燥品が得られた。
【0070】
<実施例2>
本実施例では、被処理物は、化学的合成により製造した金属酸化物(酸化銅、平均粒径4μm)とした。本実施例の洗浄目的は、主として合成金属酸化物に付着している酸の除去にある。
【0071】
実施例1の洗浄方法において、被処理物0.5kgに対して洗浄水2kgの混合物を、洗浄槽22に投入し、同様の条件で洗浄後、部分脱液、洗浄水補充の各ステップを繰り返し、スラリー(含水率97.5%)を得た。この投入に際し、実施例1と同様に、送気及び加振は省略した。
【0072】
こうして得たスラリーを、そのまま、予備乾燥工程を経ずに、当該洗浄槽(処理槽)28内で、送気:熱風温度130℃、熱風量50〜100L/min、加振:振幅2mm、振動数1500min-1、槽加温:ジャケット温度130℃の条件で約120min乾燥を行った。その結果、約5%の最終乾燥品が得られた。
【0073】
<実施例3>
本実施例の被洗浄物(被処理物)は、平均粒径5μmの合成有機顔料含有液(固形分濃度約20%)のものを使用した。本実施例の洗浄目的は、実施例1と同様、主として合成有機顔料に付着している未反応物等の不純物の除去にある。
【0074】
実施例1と同一の振動流動処理装置を用いて、同様の条件で洗浄処理を行い洗浄済み品(スラリー)を得た(含水率70%)を得た。
【0075】
該洗浄済み品を、気流乾燥機(配管径:160mmφ)の用いて、熱風温度:80℃、熱風量:192m3/min、ジャケット温度:80℃の条件で予備乾燥を行った。その結果、予備乾燥品の含水率10.18%であった。
【0076】
該予備乾燥品(処理開始時含水率:16.8%)を、実施例1と同一の振動流動処理装置を用いて、同様の条件で最終乾燥を230min行った。なお、予備乾燥品の処理開始時の含水率が高くなっているのは予備乾燥後、空気中放置のため吸水(吸湿)したためである。
【0077】
その結果を約0.23%の最終乾燥品が得られた。参考のために、最終乾燥処理における含水率/乾燥時間の関係を図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】有機顔料合成後の反応液(懸濁液)に含まれている粉体(有機顔料)の洗浄方法の従来のおける一例を示す流れ図である。
【図2】本発明の洗浄・乾燥方法に使用する洗浄装置及び予備乾燥装置の組み合わせた流れ図である。
【図3】本発明の洗浄・乾燥方法の二次乾燥に使用する振動流動乾燥装置の一例を示す概略図である。
【図4】実施例3の最終乾燥処理工程における含水率/乾燥時間の関係示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0079】
22 洗浄機(液処理機)
24 送気(エアレーション)配管
26 排気配管
28 洗浄槽(処理槽)
30 振動モータ(加振手段、発振機)
36 ろ過多孔板(分散板)
38 被洗浄物(原料)/洗浄液(洗浄水)投入口
M 洗浄装置(振動流動処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽内にろ過多孔板を備え、該ろ過多孔板を加振する加振手段と、該ろ過多孔板の下方から送気可能な送気手段とを備えた振動流動処理装置を用いて粉体を洗浄する方法であって、
1)前記粉体を洗浄液中に含有させた粉体含有液体の層をろ過多孔板上に形成して、前記ろ過多孔板の下方から送気するとともに前記ろ過多孔板を加振して粉体洗浄をする第1ステップと、2)第1ステップの後、前記ろ過多孔板を介して部分脱液する第2ステップと、3)再度、前記第1ステップを行う場合に、第2ステップ後の残液(以下「脱液後残液」という。)に洗浄液を補充して前記粉体含有液体を形成する第3ステップとからなる洗浄工程を、必要回数繰り返す方法であることを特徴とする粉体の洗浄方法。
【請求項2】
前記粉体の投入を、前記ろ過多孔板の下方から送気するとともに前記ろ過多孔板を加振しながら行った後、該送気と加振を継続しながら前記洗浄液の投入を行うことを特徴とする請求項1記載の粉体の洗浄方法。
【請求項3】
処理槽内にろ過多孔板を備え、該ろ過多孔板を加振する加振手段と、該ろ過多孔板の下方から送気可能な送気手段とを備えた振動流動処理装置を用いて、粉体を洗浄する方法であって、
前記粉体が、合成反応後の合成微粉体を含む反応液中に含まれる合成微粉体であり、
前記反応液を前記処理槽内へ投入後、前記ろ過多孔板を介して部分脱液して、該部分脱液後の残液に洗浄液を補充して粉体含有液体の層を形成して、1)前記ろ過多孔板の下方から送気するとともに前記ろ過多孔板を加振して洗浄する第1ステップと、2)第1ステップの後、前記ろ過多孔板を介して部分脱液する第2ステップと、3)再度、前記第1ステップを行う場合に、第2ステップ後の残液(以下「脱液後残液」という。)に洗浄液を補充して前記粉体含有液体の層を形成する第3ステップとからなる洗浄工程を、必要回数繰り返す方法であることを特徴とする粉体の洗浄方法。
【請求項4】
前記第2ステップの部分脱液に際して、前記ろ過多孔板の下方から間欠的に送気することを特徴とする請求項1、2又は3記載の粉体の洗浄方法。
【請求項5】
前記脱液後残液を、前記ろ過多孔板の加振により流動化可能な状態で、かつ、可及的に高濃度であるものとするとともに、前記第3ステップの洗浄液の補充を前記脱液後残液を流動化させながら行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体の洗浄方法。
【請求項6】
前記ろ過多孔板の取り付け部位が処理槽本体から取り外し可能で、かつ、前記ろ過多孔板の上面より下方に下端が位置する排出口を備えた処理槽分割体とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粉体の洗浄方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄方法で得られた洗浄済粉体含有液を予備乾燥後又は脱液後、流動乾燥処理により最終乾燥を行うことを特徴とする粉体の洗浄乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−142617(P2008−142617A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332132(P2006−332132)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(390008084)中央化工機株式会社 (16)
【Fターム(参考)】