説明

粉体供給装置、粉体供給方法、粉体供給充填装置および粉体供給充填方法

【課題】 本発明は、簡単な構成で自動的に所望量の粉体を確実に供給することが可能な粉体供給装置および粉体供給充填装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の粉体供給装置においては、供給手段として粉体供給筒を用い、当該粉体供給筒は、一端が開口し他端が底面となる円筒の形状を有し、円筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有し、円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置され、中心軸を中心に所定速度で回転して円筒内の粉体を開口から供給するよう構成されており、この粉体供給装置が粉体充填装置と組み合わされて粉体供給充填装置が構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体製造全般、具体的には、医薬品、農薬、食品、化学薬品等の製造分野において用いられる、粉体を自動的に供給する粉体供給装置と粉体供給方法、および粉体の供給と充填を自動的に行う粉体供給充填装置と粉体供給充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体容器、例えばバイアル瓶に対する粉体の供給において、医薬品、特に注射用製剤を粉体容器に供給する場合、薬剤が人体等に非経口的(例えば皮下、筋肉、静脈内等)に投与するものであるため、その充填量は正確であることは勿論、異物の混入は絶対避けなければいけない必須の条件である。
粉体である薬剤を粉体容器に充填する場合には、一般的に粉体充填装置が用いられている。このような従来の粉体充填装置においては、粉体を収納する粉体ホッパーに攪拌羽根を設けて、粉体を攪拌し、粉体の圧密状態を緩和させて、一定量の粉体を粉体容器に充填していた。
【0003】
このような粉体充填装置においては、粉体ホッパーに対して薬剤である粉体を一定時間毎に供給する必要がある。このような粉体供給が必要な場合、人手により供給を行ったり、薬剤が収納された、一端が狭くその一端にバルブ又はコック等を設けた袋体であるボトルバッグを粉体充填装置の粉体ホッパーの上部に吊り下げて薬剤の自然落下を利用して供給していた。
【特許文献1】特開昭59−115201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医薬品製造においては、異物の混入防止が厳しく要求されており、異物混入防止のために製造過程においては厳格な規定が決められている。例えば注射用製剤の製造における無菌空間においてクラス100以下のクリーンな垂直流のラミナーフローが形成された状態でバイアル瓶などの粉体容器に薬剤を充填するよう規定されている。ここで、クラス100とは、0.5μm以上の浮遊微粒子数が100個/CF(cubic feet)以下または3530個/m以下のことである。このように、薬剤充填処理が厳しく規定されているにもかかわらず、粉体充填装置に対する従来の粉体供給方法としては、容器(ジョッキ型容器)に入れた薬剤を人手により粉体充填装置の供給ホッパーに投入したり、粉体充填装置の直上に人手により薬剤が収納されたボトルバッグを吊り下げて、供給ホッパーに供給していた。上記のように、無菌空間においてクリーンな垂直流のラミナーフローの状態が粉体充填装置の周りに形成されて、異物混入の防止が図られているにもかかわらず、粉体充填装置への粉体供給においては、前述のように粉体充填装置に人が近づいて手で持った容器により薬剤の投入を行ったり、または粉体充填装置の直上に人手によりボトルバッグを吊り下げて供給動作が行われていた。この結果、粉体充填装置の周りの気流が乱れて、粉体ホッパーに異物が混入するおそれがあり、問題のある粉体供給方法であった。
また、他の粉体供給方法としては、粉体充填装置のホッパー上部にダンパー付きシュートと供給ホッパーを設けて、粉体を供給する方法がある。しかし、この粉体供給方法を使用する場合、装置の構成部品点数が多く、部品の洗浄や組み付けが複雑であり、滅菌保証が困難であるという問題がある。さらにこの粉体供給方法においては、ホッパーの上部に大空間を必要とし、ホッパー上部に一方向の流路を確保することが困難であり、かつ流路間にある各部品への粉体の付着残量が多くなるという問題がある。
【0005】
また、ボトルバッグを用いて粉体である薬剤の供給を行う場合、ボトルバッグに収納された粉体が狭くなっているバルブにおいて滞り、ボトルバッグ内の全ての薬剤が粉体ホッパーに供給されないという問題を有していた。また、ボトルバッグ内でバルブ等に付着した薬剤は、かき出すことが不可能であるため、特に高価な薬剤の場合には製造コストに大きな影響を与えていた。
【0006】
さらに、従来の供給方法では、粉体充填装置の供給ホッパー内の薬剤の収納量が供給時において急激に増加したり、供給直前の状態と供給直後の状態では収納量が大きく異なっていた。このように、供給ホッパー内の薬剤の収納量(収納レベル)が一定でない場合、粉体充填装置は粉体容器、例えば各バイアル瓶への充填量において、大きなばらつきが生じることが、発明者の実験により確認されている。この実験は、後述する実施の形態において用いた粉体充填装置により行った。発明者の実験によれば、供給ホッパー内の薬剤の収納量(収納レベル)が特定の範囲内にあればバイアル瓶への充填量が略一定(規定範囲内)となることが確かめられている。
【0007】
本発明は、従来の粉体供給における各種問題を解決し、簡単な構成で自動的に所望量の粉体を確実に供給することが可能な粉体供給装置を提供することを課題としている。また、本発明においては、粉体充填装置における各粉体容器への充填量を一定とするために、粉体充填装置の供給ホッパー内の薬剤の収納レベルを常時一定に保持することができる粉体供給装置および粉体供給充填装置の提供を課題としている。
さらに、本発明は所望量の粉体を確実に供給することができる粉体供給方法および粉体供給充填方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る粉体供給装置は、
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有し、前記円筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有し、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置され、前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記円筒内の粉体を前記開口から供給する脱着可能な粉体供給筒、
前記粉体供給筒を回転駆動する供給筒駆動部、
前記粉体供給筒の前記中心軸を水平面に対して所定角度に調整する角度調整部、および
前記供給筒駆動部を制御する制御部、を具備する。
【0009】
本発明に係る粉体供給方法は、
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有する粉体供給筒を、その中心軸が実質的に鉛直線上となるよう粉体供給装置に装着する装着工程、
前記粉体供給筒を前記中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置する配置工程、および
前記粉体供給筒の前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記粉体供給筒内に収納された粉体を前記開口から供給する供給工程、を有する。
【0010】
本発明に係る粉体供給充填装置は、
粉体容器に粉体を充填する粉体充填装置と前記粉体充填装置に前記粉体を供給する粉体供給装置とを具備する粉体供給充填装置であって、
前記粉体供給装置は、
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有し、前記円筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有し、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置され、前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記円筒内の粉体を前記開口から前記充填装置に供給する粉体供給筒、
前記粉体供給筒を回転駆動する供給筒駆動部、
前記粉体供給筒の前記中心軸を水平面に対して所定角度に調整する角度調整部、
前記粉体供給筒が脱着可能に構成され、装着された前記粉体供給筒を昇降可能に保持する昇降部、
前記供給筒駆動部と前記昇降部を制御する制御部、および
少なくとも前記粉体供給筒が装着された前記昇降部を保持して移動可能に構成された搬送部、を有し、
前記粉体充填装置は、
前記粉体供給筒内の粉体が前記開口から供給される粉体ホッパー、
前記粉体ホッパー内の収納レベルを検知し、当該検知に基づく指令を前記制御部に出力するレベルセンサー、
前記粉体ホッパー内の粉体を充填位置の前記粉体容器に所定量を充填する充填機構、および
前記粉体容器を順次充填位置に搬送する搬送機構、を有する。
【0011】
本発明に係る粉体供給充填方法は、
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有する粉体供給筒を、その中心軸が実質的に鉛直線上となるよう粉体供給装置に装着する装着工程、
前記粉体供給筒を所定位置に搬送する搬送工程、
制御部により、前記粉体供給筒を前記中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置する配置工程、
前記粉体供給筒の前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記粉体供給筒内に収納された粉体を前記開口から充填装置の粉体ホッパーに供給する供給工程、
前記粉体ホッパーに設けられたレベルセンサーにより前記粉体ホッパー内の粉体収納レベルを検知し、当該検知に基づく指令を前記制御部に出力する検知工程、および
粉体容器を順次充填位置に搬送し、前記粉体ホッパー内の粉体を前記充填位置の粉体容器に所定量を充填する充填工程、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る粉体供給装置および粉体供給方法によれば、簡単な構成である粉体供給筒を所定角度に傾けて回転させることにより、粉体供給筒内の粉体を粉体供給領域内に確実に供給することができる。また、本発明によれば、搬送、保管に用いられる容器をそのまま粉体供給容器として用いることができ、粉体供給容器の取り付け、組み付けを容易に行うことができ、しかも洗浄および滅菌が容易になるという優れた効果を有する。
本発明に係る粉体供給充填装置および粉体供給充填方法によれば、簡単な構成の粉体供給装置を用いることにより粉体充填装置の粉体ホッパー内の粉体の収納レベルを常に一定に保つことができ、各粉体容器の充填量を一定とすることができる。
本発明に係る粉体供給充填装置および粉体供給充填方法によれば、粉体充填装置の供給ホッパーに人が近づくことなく、供給ホッパーに対して粉体を自動的に供給できるため、クリーンな垂直流のラミナーフローを乱すことが無く、無菌製剤に対して異物混入の防止を図ることができる。
【0013】
本発明に係る粉体供給充填装置および粉体供給充填方法によれば、粉体充填装置の粉体ホッパーに供給すべき粉体の全てが自動的に確実に所望の供給率で供給されるため、効率の高い粉体供給が可能となる。
本発明に係る粉体供給充填装置および粉体供給充填方法によれば、供給ホッパー内の粉体、例えば薬剤の収納レベルを特定の範囲内とすることが可能となり、粉体容器、例えばバイアル瓶へ一定量の薬剤を確実に充填することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る粉体供給装置および粉体供給充填装置の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。なお、粉体供給充填装置は、粉体を粉体容器に充填する粉体充填装置と、この粉体充填装置に粉体を供給する粉体供給装置とにより構成されている。
【0015】
図1は本発明に係る好適な実施の形態である粉体供給充填装置の構成を示す側面図である。図1においては、本実施の形態の粉体供給充填装置の説明を容易なものとするため、各構成部分の形状、大きさおよび間隔は実際の装置と異なっている。本実施の形態の粉体供給充填装置において、粉体供給装置1が粉体充填装置19に粉体を供給し、粉体充填装置19が粉体容器25に粉体を充填している。本実施の形態において、粉体容器25はバイアル瓶であり、粉体は粉状の薬剤である。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の粉体供給充填装置において、第1の無菌空間である充填ブース30に粉体充填装置19が配設されており、第2の無菌空間である供給エリア31に粉体供給装置1が配置されている。粉体供給装置1は、移動可能に構成されており、粉体供給時において図1に示すように第2の無菌空間に配置される。したがって、本実施の形態の粉体供給充填装置は、粉体供給時において、2つの無菌空間内に跨って配置された状態となる。
【0017】
充填ブース30および供給エリア31のそれぞれの無菌空間においては、ラミナーフロー(充填ブースラミナーフロー26,供給エリアラミナーフロー27)が上方から下方に向けて設定されており、塵などの混入が防止されている。
【0018】
粉体充填装置19が設けられている充填ブース30には、充填対象である粉体容器のバイアル瓶25が搬送コンベア32により順次搬送され、容器位置制御板24により各バイアル瓶25が充填位置で確実に保持されている。粉体供給装置1が配置されている供給エリア31と充填ブース30とを仕切る仕切り壁29には、貫通した挿入孔34が形成されており、この挿入孔34に粉体供給装置1の粉体供給部分となる粉体供給筒10が挿入される。粉体供給筒10の内部には充填対象の粉体である薬剤が収納されており、この薬剤が粉体供給筒10から粉体充填装置19の粉体ホッパー16に供給される。
【0019】
[粉体充填装置19]
まず初めに、本実施の形態の粉体供給充填装置における粉体供給装置1により薬剤が供給される粉体充填装置19の構成について説明する。
図1において、搬送コンベア32により順次搬送されている複数のバイアル瓶25に対して粉体である薬剤を充填する粉体充填装置19は、充填位置のバイアル瓶25の上方に配設されている。搬送コンベヤ32により搬送されてくるバイアル瓶25は、容器位置制御板24により後述する充填ドラム18の下方となる充填位置に確実に配置される。粉体充填装置19は、その上部から粉体ホッパー16、粉体供給部17、および充填ドラム18等を有して構成されている。粉体ホッパー16に供給された薬剤が攪拌羽根である水平インペラ21および粉体供給部17の垂直インペラ22を介して充填ドラム18の各シリンダ18aに供給され、順次吸引保持される。シリンダ18aは充填ドラム18の内部において等間隔を有して放射状に形成されており、充填ドラム18の円周上に各シリンダ18aにつながる開口部分が形成されている。本実施の形態においては8個のシリンダ18aが充填ドラム18の内部に等間隔を有して放射状に形成されている。各シリンダ18aの奥側(充填ドラム18の中心側)には先端にフィルタ(図示なし)を取り付けた軸体が設けられている。この軸体はシリンダ18a内をその軸方向に移動可能に構成されており、シリンダ18aの粉体保持量をフィルタ位置の移動により調整できる構成である。ここで用いられているフィルタは、空気を通して保持対象である粉体を通さないPETフィルタ(ポリエチレンテレフタレートフィルタ)が用いられている。
【0020】
充填ドラム18は間欠動作を行って回転しており、頂部位置にあるシリンダ18aに対して粉体供給部17の垂直インペラ22により移送された薬剤が供給される。薬剤が供給された頂部のシリンダ18aが回転することにより、充填ドラム18の頂部近傍に近接(非接触)して設けられたドクターブレード23により当該シリンダ18aの開口部分の面上の薬剤がすり切られ、当該シリンダ18aには所定の量の薬剤が確実に保持される。充填ドラム18における頂部のシリンダ18aに対しては、その奥側から真空引きされており、供給された薬剤が吸引保持されるよう構成されている。薬剤が吸引保持された状態で当該シリンダ18aは充填ドラム18の間欠動作により移動(図1における反時計方向に回動)していき、充填ドラム18の下端部の位置である充填位置に到達する。この充填位置に到達したシリンダ18aには、その奥側から圧縮空気が吹き付けられ、保持していた薬剤を真下に吐出して、充填位置のバイアル瓶25に対して薬剤を充填する。薬剤吐出後のシリンダ18aに対しては、フィルタを含むシリンダ内の清掃のための圧縮空気が吹き付けられる。そして、充填ドラム18が回動し、頂部に到達したシリンダ18aには粉体供給部17により薬剤が再び供給される。
【0021】
上記のように、粉体供給装置1から供給された薬剤は粉体ホッパー16に受け取られ、粉体ホッパー16の水平インペラ21および粉体供給部17の垂直インペラ22を介して充填ドラム18の各シリンダ18aに供給され、そして充填位置の粉体容器であるバイアル瓶25に対して充填動作が行われる。このようにバイアル瓶25に充填される充填量は各シリンダ18aの保持量に依存するが、この各シリンダ18aの保持量は、そのときの粉体ホッパー16が収納している薬剤の収納レベルに大きく影響されることが、発明者の実験により確認されている。本実施の形態の粉体充填装置19においては、粉体ホッパー16にその収納レベルを検知するためのレベルセンサー20が設けられている。本実施の形態で用いたレベルセンサー20は静電容量レベルセンサーである。静電容量レベルセンサーは被測定物である薬剤に検知部である電極が埋没することにより静電容量が変化することを利用するものである。
粉体ホッパー16の薬剤収納レベルを検出するために設けられたレベルセンサー20からの信号は、後述するように粉体供給装置1に入力されて、粉体供給筒10の回転動作を制御している。
【0022】
[粉体供給装置1]
本実施の形態の粉体供給充填装置における粉体供給装置は、上記のように構成された粉体充填装置19の粉体ホッパー16に対して薬剤を供給しており、薬剤が供給された粉体充填装置19により各バイアル瓶25に所定量の薬剤が確実に充填される。本実施の形態の粉体供給装置は、粉体充填装置19の粉体ホッパー16に薬剤を供給するとき、粉体ホッパー16内の薬剤収納レベルが略一定となるように薬剤供給量を制御している。前述のように、粉体ホッパー16にはレベルセンサー20が設けられて、粉体ホッパー16に収納された薬剤が予め設定した所定レベルより低くなったとき、検知信号を出力する構成である。なお、レベルセンサー20は粉体ホッパー16内の薬剤が所定レベルより低いか否かを検知できる構成であればよく、薬剤が所定レベルより低くなったとき検知信号を出力する構成以外に、薬剤が所定レベルより低くなったとき反対に信号を遮断する構成等でも対応可能である。
【0023】
以下、本実施の形態の粉体供給装置1の構成について詳しく説明する。
図1に示すように、本実施の形態の粉体供給装置1には、薬剤を所定量収納し、当該薬剤を粉体充填装置19の粉体ホッパー16に供給する粉体供給筒10が設けられている。また、本実施の形態の粉体供給装置1は、粉体供給筒10をその中心軸を中心に回転駆動する供給筒駆動部2と、粉体供給筒10の中心軸を鉛直方向から水平方向となる位置まで回動できる角度調整部3と、粉体供給筒10を昇降動作させる昇降部4と、粉体供給筒10を搬送するための搬送部5と、粉体供給筒10等の駆動制御を行う制御部6とを有して構成されている。
【0024】
粉体供給筒10はその内面が有底の円筒状に形成されている。粉体供給筒10の一端は開口10aしており収納された薬剤の供給口となっている。粉体供給筒10の他端にはカップリング機構8が設けられており、このカップリング機構8により供給筒駆動部2の回転軸体に対して脱着可能に構成されている。
図2は粉体供給筒10を示す側面図である。図2に示すように、粉体供給筒10の底部にはその中心に位置決めピン10dと2つのツイストロック用突起10bが設けられている。位置決めピン10dはカップリング機構8に形成された有底穴に嵌合し、ツイストロック用突起10bはカップリング機構8に形成された係合孔に挿入されて捻ることにより係合して、粉体供給筒10とカップリング機構8が確実に所定位置で固着されるよう構成されている。また、粉体供給筒10の側面における底部近傍には2つのハンドル10c,10cが対向する位置に設けられている。このハンドル10cはカップリング機構8から粉体供給筒10を捻って外すときに用いられるとともに、粉体供給筒10を持ち運ぶときに用いられる取っ手である。
なお、粉体供給筒10は、脱着可能であり、粉体供給筒10自身を容易に滅菌することが可能である。したがって、無菌性の保証が必要な注射用製剤を供給する場合、先ず始めに粉体供給筒10を滅菌処理し、その粉体供給筒10に注射用製剤を収納して、供給動作を行うよう構成することが可能となる。
【0025】
本実施の形態においては、粉体供給筒10の内面における側面(内側面)の対向部分が、その中心軸と並行に構成され、当該内側面と閉塞面である底面との接続領域が曲面で構成されている。このため、粉体供給筒10において薬剤を収納する内面は全て曲面で形成されており、収納された薬剤が粉体供給筒10の移動に伴い内面を滞ることなく移動する。本実施の形態の粉体供給筒10の内面は、電解研磨が施されて滑らかな面に形成されている。本実施の形態の粉体供給装置1において用いた粉体供給筒10は、内径が240mmで長さが800mmであり、材質はステンレス鋼SUS316Lを用いて形成した。
【0026】
粉体供給筒10が装着されたカップリング機構8と反対側に設けられた供給筒駆動部2には、粉体供給筒10を所定回転数(例えば、1rpm)で回転させるギアモータ9および軸受け等が設けられている。粉体供給筒10は供給筒駆動部2に対してカップリング機構8を介して装着されており、角度調整部3により粉体供給筒10の中心軸が鉛直方向から水平方向となる位置まで回動可能に構成されている。この回動動作においては粉体供給筒10と供給筒駆動部2は一体的に回動する。角度調整部3は減速器と角度調整機構と手動ハンドルとにより構成されている。
本実施の形態においては、供給筒駆動部2の重心の位置が粉体供給筒10の回転中心軸上に配置されており、角度調整部3による角度調整のための駆動軸は供給筒駆動部2と粉体供給筒10との間に設けられている。本実施の形態においては、粉体供給筒10と供給筒駆動部2により構成された回転体の重心の位置近傍に角度調整の駆動軸を接続している。
【0027】
粉体供給筒10、供給筒駆動部2および角度調整部3は、昇降部4の支持アーム7上に設けられており、支持アーム7の上昇動作および下降動作により、所望の高さに移動できるよう構成されている。昇降部4は、鉛直方向に延設された昇降シリンダ33とこの昇降シリンダ33に沿って移動する支持アーム7を有して構成されている。昇降シリンダ33には支持アーム7の上限位置を規定する上限リミットスイッチと、下限位置を規定する下限リミットスイッチが設けられている。また、本実施の形態においては、上限リミットスイッチの補助的スイッチとしてオーバーランスイッチがそれぞれ設けられている。なお、昇降部4における下降動作は、油圧シリンダ内の油を下降バルブ「開」として抜くことにより、昇降部4の自重により降下する。
【0028】
また、本実施の形態の粉体供給装置1は、昇降部4および制御部6が固着された搬送部5が設けられている。搬送部5にはその前後に車輪(前輪13,後輪14)が設けられており、前後方向の一方向のみ移動可能に構成されている。供給エリア31に配置された粉体供給装置1が所定位置に確実に配置されるように、供給エリア31の床面にはガイドレール11およびストッパー12が設けられている。また、供給エリア31には接触スイッチで構成された位置決めセンサー(図示なし)が設けられている。粉体供給装置1が供給エリア31内の所定の供給位置に配置されたとき、この位置決めセンサーが接触して制御部6に位置信号を出力するよう構成されている。制御部6は、位置決めセンサーからの位置信号が入力されたときのみ粉体供給動作を始動できるよう構成されている。
【0029】
なお、本実施の形態の粉体供給装置1においては、制御部6の上部に設けたハンドル35を作業者が握って粉体供給装置1の全体を前後に移動させるよう構成されているが、粉体供給装置1の移動ための駆動源としては電動モータ等を用いて構成しても良いことは言うまでもない。
また、供給対象の粉体である薬剤の種類、特性に応じて、制御部6は、供給筒駆動部2により粉体供給筒10の回転速度を変更すると共に、角度調整部3により粉体供給筒10の中心軸を水平面に対して所望の角度に調整できるよう構成しても良い。この場合には、角度調整部3は電動により角度調整が行われる。
【0030】
[粉体供給充填動作]
次に、上記のように構成された粉体供給装置1と粉体充填装置19とを所定の位置に配置して一体的に構成した粉体供給充填装置による粉体供給充填動作について説明する。図1に示すように、本実施の形態の粉体供給装置1が供給エリア31の所定位置に配置されているとき、粉体供給筒10は充填ブース30と供給エリア31とを仕切る仕切り壁29の挿入孔34に挿入され、粉体供給筒10の中心軸は水平面に対して約+5度(図1において符号Aにて示す下向きの角度)の傾きを有して開口10aが下向きに配置されている。この状態において、粉体供給筒10がその中心軸を中心に回転(例えば、1rpm)して、粉体供給筒10の内部の薬剤が徐々に落下して粉体充填装置19の粉体ホッパー16に供給される。このとき、粉体ホッパー16に取り付けられているレベルセンサー20の検知部である電極には、落下してくる薬剤が降りかからないよう配置されている。
【0031】
粉体ホッパー16において、予め設定された収納レベルまで薬剤が供給されたとき、レベルセンサー20は検知信号を制御部6に出力する。粉体供給筒10の回転の停止は、ディレイタイマー(遅延タイマー)で制御する。このディレイタイマーは0秒から600秒までの間で制御することができ、例えば0秒で設定した場合、検知信号が入力された制御部6は粉体供給筒10の回転を瞬時に停止し、粉体供給筒10による薬剤の供給動作を停止する。この後、レベルセンサー20が検知信号の出力を停止したとき粉体供給筒10の回転を始動させて薬剤供給を再び行う。さらに、検知信号が出力されたとき粉体供給筒10の回転が停止される。このように、レベルセンサー20からの検知信号に基づき、粉体供給充填装置1の粉体供給筒10が駆動されて、粉体充填装置19の粉体ホッパー16に対して所望量の薬剤が供給され、粉体ホッパー16は常に一定レベルの薬剤が収納された状態となる。
上記のように粉体ホッパー16内に一定レベルの薬剤が収納された状態において、粉体ホッパー16の水平インペラ21の回転により攪拌されて凝集が防止されて薬剤が粉体供給部17に導入され、垂直インペラ22の回転により充填ドラム18の各シリンダ18aに順次充填される。
【0032】
図3は上記のように粉体供給充填動作を行った実験結果を示すグラフである。図3において、縦軸は各バイアル瓶の充填量平均値[mg]と粉体ホッパー16の収納量(推定値)[g]であり、横軸は充填時間を[分」を示している。充填量平均値は、充填ドラム18の各シリンダ18aにより充填されたバイアル瓶を3個づつ抜き取り、それぞれのシリンダ18aにより充填された3個のバイアル瓶内の薬剤充填量の平均値である。図3において、グラフの上段のマーク■で示す値は粉体ホッパー16内の収納量を示している。図3のグラフの中段の折れ線グラフが充填量平均値である。図3に示す実験において使用した充填ドラム18のシリンダ18aの数は8本であるため、8個のシリンダ18aのそれぞれにより充填されたバイアル瓶内の薬剤充填量に関する8本の折れ線グラフが記載されている。図3に示したように、粉体ホッパー16の収納量は約3400g近傍で略一定であり、各バイアル瓶に充填された薬剤の量は時間が経過しても所望の範囲、すなわち目標値に対して±2.5%の範囲内であった。
【0033】
本実施の形態の粉体供給装置において、粉体供給筒10の内側面における対向する部分が並行である円筒状に構成された例で説明するが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば、粉体供給筒10の開口10aが底面に比して広い形状となるよう、粉体供給筒10の内面における側面が中心軸に対して傾斜した面で構成された円筒状でもよい。本発明においては、円筒とは内側面における対向する部分が並行に構成された形状だけでなく内側面における対向部分が斜行したものも含む。このように構成された円筒状の粉体供給筒10により供給動作を行う場合、粉体供給筒10の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置されて、粉体供給筒10の中心軸を中心に所定速度で回転して粉体供給筒10内の薬剤を開口10aから粉体ホッパー16aに供給する。なお、このように構成された場合においても、粉体供給筒10の内側面と底面との接続領域が曲面で構成した方が好ましい。
また、本実施の形態において、粉体供給筒10はSUS316Lを用いて、その内面仕上げはバフ研磨の後に電解研磨を行って形成した例で説明したが、その他一般的に用いられている金属研磨を用いても適用可能である。
【0034】
なお、本実施の形態の粉体供給装置による粉体供給動作において、粉体供給筒10は水平面に対してその中心軸若しくは粉体供給筒10の内周面における最下端側の母線が約+5度の傾きを有して下向きに配置されている場合について説明したが、発明者の実験によれば、対象となる粉体によりその角度は変更することが好ましく、例えば+1度から+10度の範囲内の角度に傾けて配置すれば粉体の特性に応じて好ましい結果が得られる。但し、粉体供給筒10は+5度の角度に固定していても各種薬剤に対して好ましい結果が得られた。
また、粉体供給筒10の中心軸を中心とした回転動作においても、対象となる粉体において変更すべきであり、回転速度としては0.1rpm以上10rpm以下の間が好ましく、特に好ましくは1rpm以上3rpm以下の間である。但し、回転速度が10rpmを超えた場合には粉塵飛散が多く好ましいものではなかった。また、0.1rpmより遅い場合には、粉体の供給がなめらかに行われず、粉体の供給に長時間を要し、好ましい供給動作とはならなかった。なお、粉体供給筒10からの粉体供給時間は、粉体供給筒10の内径、長さおよび粉体特性に依存する。
【0035】
[粉体供給装置1の搬送動作]
上記のように第2の無菌空間の供給エリア31に配置された粉体供給装置1による供給動作において、粉体供給筒10には一定量(例えば、5kg)の粉体である薬剤しか収納されていないため、粉体供給筒10による供給動作は一定時間(例えば、20分)経過後に薬剤を収納した他の粉体供給筒10に交換する必要がある。したがって、供給動作を終了した粉体供給筒10は、その中心軸が水平になるよう移動させた後、仕切り壁29の挿入孔34から引き抜かれる。このとき、粉体供給装置1は車輪13,14がガイドレール11に沿って移動し所定の交換位置に移動させる。この交換位置において、粉体供給筒10はその中心軸が鉛直方向となる位置に回動され、カップリング機構8から外される。図2に示したように、ハンドル10cを持って捻ることにより、粉体供給筒10の底部に形成された2つのツイストロック用突起10bがカップリング機構8の係合孔から外される。
【0036】
図4は新しい薬剤が収納された粉体供給筒10を示す側面図であり、蓋36が装着された状態を示している。図4に示すように、蓋36は、両端にフック37a,37aが設けられた弾性を有する紐状の固定バンド37により、粉体供給筒10に固着されている。本実施の形態の粉体供給装置1において、蓋36はPTFE(ポリ4フッ化エチレン樹脂)により形成されている。固定バンド37の両端にあるフック37a,37aが粉体供給筒10のハンドル10cに引っかけられ、蓋36が粉体供給筒10に押し付けられて固着されている。
【0037】
図5は薬剤が収納された粉体供給筒10が粉体供給装置1に装着された状態を示す側面図である。図5に示すように、粉体供給筒10はその中心軸が鉛直方向となるよう粉体供給装置1に保持されており、この状態から粉体供給筒10をその中心軸が水平方向に対して−2.5度の角度(図6において符号Bで示す上向きの角度)、すなわち粉体供給筒10の開口10aが少し上向きとなるよう回動させる。図6は、粉体供給筒10が水平方向に対して−2.5度の角度を有する位置にある状態を示す側面図である、図7は図6の状態を示す平面図である。
【0038】
図6および図7に示す状態において、昇降部4を上昇動作させることにより、支持アーム7を持ち上げて粉体供給筒10を所定の高さに配置する。このように粉体供給筒10を所定の高さに持ち上げた状態とし、粉体供給装置1が所定位置にガイドレール11に沿って移動される。粉体供給装置1が第2の無菌空間である供給エリア31の所定位置(供給位置)に達したとき、ガイドレール11の端部に設けられたストッパー12が前輪13に当接し、リミットセンサー(図示なし)がオン状態となり供給動作可能な状態となる。このとき、粉体供給装置1は固定ピンを搬送部5に挿入するなどの固定手段により供給位置に確実に固定される。
【0039】
上記のように粉体供給装置1が供給エリア31の供給位置にあるとき、粉体供給筒10は第1の無菌空間である充填ブース30との仕切りである仕切り壁29の挿入孔34の内部に挿入されている。仕切り壁29の挿入孔34に挿入された粉体供給筒10の先端である開口10aは、粉体充填装置19の粉体ホッパー16の上方に配置されている。なお、蓋36は、粉体供給筒10を仕切り壁29の挿入孔34への挿入直前に取り外す。
【0040】
このように、粉体供給筒10の開口10aが粉体充填装置19の粉体ホッパー16の上方に配置された状態において、回転調整部3の角度調整ハンドル38を回動させて、粉体供給筒10の中心軸を水平方向に対して+5度の角度に傾ける。すなわち、粉体供給筒10の開口10aが下向きとなるよう配置される。このときの粉体供給筒10は、開口10aから供給される薬剤がレベルセンサー20の検知部上に落下しない位置に配置される。
上記のように、粉体供給装置1が第2の無菌空間である供給エリア31の供給位置に配置され、粉体供給筒10の中心軸が水平方向に対して+5度の角度に傾けたとき、粉体供給装置1は供給動作が可能な状態となる。この状態において、作業者が制御部6により供給動作開始を指令すると、供給筒駆動部2が起動し粉体供給筒10の回転動作が始動する。この結果、粉体供給筒10の内面において薬剤が開口10aの方へ徐々に移動し、開口10aから粉体ホッパー16内へ落下する。そして、粉体ホッパー16の内部における所定の収納レベルまで薬剤が供給されたとき、レベルセンサー20が検知信号を出力し、供給筒駆動部2による粉体供給筒10の回転動作が停止する。以下、レベルセンサー20からの検知信号に基づき、供給と停止が繰り返されて、粉体ホッパー16の内部には所定レベルの薬剤が常に保持された状態となる。その後の粉体充填装置19による粉体容器であるバイアル瓶25への充填動作は前述の通りである。
【0041】
本実施の形態の粉体供給装置においては、粉体として、薬剤A(粒径:10.1μm、比表面積:1.70m/g、安息角:69.5°)、薬剤B(粒径:10.9μm、比表面積:1.61m/g、安息角:54.3°)、薬剤C(粒径:16.4μm、比表面積:1.73m/g、安息角:58.1°)、および薬剤D(粒径:21.0μm、比表面積:1.74m/g、安息角:57.0°)を用いて供給の実験を行った結果、いずれの薬剤においても好ましい結果が得られた。さらに、発明者が実験を行った結果、供給対象の粉体の粒径は10μm以上である場合が好ましい結果が得られた。
【0042】
なお、本実施の形態の粉体供給装置1においては、粉体供給筒10の回転動作により粉体ホッパー16の内部に薬剤が順次供給され、粉体供給筒10の内部にある薬剤の全てが供給される。これは、粉体供給筒10の内面は全て曲面で形成され、その内部には収納された薬剤の移動を規制するような障害となるものがないためである。
本実施の形態の粉体供給装置1においては、もし粉体供給筒10の内部に薬剤が一部残った場合にも対処可能なように、この粉体供給筒10に振動を与えて落下させる電磁ノッカー15(図7参照)が補助的に設けられている。この電磁ノッカー15は電磁力を振動に変換するものであり、微少な振動を粉体供給筒10に加えて粉体供給筒10の内部の薬剤を開口10aの方向へ移動させ落下させるよう構成されている。
【0043】
本実施の形態の粉体供給装置において、高速回転する摺動部分、例えばギアモータ9やベアリングを有する供給筒駆動部2、減速器を有する角度調整部3等にはカバーを設け密閉状態として、塵の飛散を完全に防止している。
【0044】
[粉体供給筒10への移し替え作業]
上記のように、薬剤が収納された粉体供給筒10が粉体供給装置1に装着されて、第2の無菌空間である供給エリア31に搬送され供給動作が行われるが、この前段階である、粉体供給筒10に対して充填対象の薬剤、例えば無菌製剤が密封収納された四角い樹脂製の袋体であるスクエアバッグから当該無菌製剤を移し替える移し替え作業について以下に説明する。
スクエアバッグから粉体供給筒10に薬剤を移し替える移し替え作業は、第3の無菌空間である移し替えブース28において行われる。この移し替えブース28は前述の第1の無菌空間である充填ブースと同じグレードの無菌状態であり、作業者が出入りできない空間である。したがって、移し替えブース内における作業は、移し替えブース外側の作業者が移し替えブース28構成する壁に設けられた2つの開口部から手を挿入して行われる。移し替えブース内は常に無菌状態が保持されている。なお、第3の無菌空間である移し替えブース28は、透明部材により壁材が構成されているため、移し替えブース内部の様子は外部空間から目視により確認できる状態である。
例えば、無菌製剤である薬剤は樹脂製の袋であるスクエアバッグ内に所定量(例えば、5kg)が密封状態で収納されている。このスクエアバッグを移し替えブース内で開封し、滅菌処理された粉体供給筒10に対して薬剤の移し替え作業が行われる。
【0045】
図8は移し替えブース内で行われる移し替え作業を示す説明図であり、(a)から(e)までの作業により移し替えが行われる。
図8の(a)に示すように、まず初めに、スクエアバッグ39が移し替えブース内で開封され、収納台40の固定台40b上に載置される。移し替えブース内の収納台40は一方向流確保のために、格子状に形成され複数の開口を有している。当該収納台40は、スイング台40aと固定台40bに分かれており、スイング台40aは固定台40bの一端に垂れ下がるように回動するよう構成されている。また、粉体供給筒10は収納台40のスイング台40a上に載置され、開封されたスクエアバッグ39の開封部分39aが粉体供給筒10の開口10aの外周面を覆うように配置される。このとき、スクエアバッグ39の開封部分39aが粉体供給筒10の開口10aの部分に密着するように、開封部分39aの一部が丸められる。
【0046】
図8の(b)に示す状態は、スクエアバッグ39は開封部分39aが丸められて粉体供給筒10の開口10aと隙間無く密着した状態である。このとき、スクエアバッグ39の丸めた部分は、粉体供給筒10の外周面の一部(図8の(b)においては上部)に配置される。
図8の(c)に示すように、粉体供給筒10の開口10aの外周面とスクエアバッグ39の開封部分39aが密着した状態において、移し替えリング41がその密着部分に装着される。図9の(a)は図8に示す移し替え作業において用いられる移し替えリング41を示す正面図である。図9の(b)は図9の(a)のA−A’線による断面図である。図9の(a)に示すように、この移し替えリング41は2つの円弧体41a,41bが組み合わされて環状になるよう構成されており、2つの円弧体41a,41bが接続される一方の接続位置にはそれぞれを屈曲可能に接続するヒンジ42が設けられており、他方の接続位置には引っ掛け手段であるキャッチロック、いわゆる引っ掛けパッチン錠43が設けられている。移し替えリング41は、ヒンジ42を中心に回転可能であり、引っ掛けパッチン錠43の設けられている接続部分が開放可能に構成されている。また、移し替えリング41の内面の一部には凹部41cが形成されている。移し替えリング41が粉体供給筒10の開口10aに装着された状態において、凹部41cにはスクエアバッグ39の丸めた部分が配置される。本実施の形態において、移し替えリング41はPTFE(ポリ4フッカエチレン樹脂)を成型して構成した。
【0047】
図8の(d)に示すように、収納台40における粉体供給筒10が載置されたスイング台40aが固定台40bから所定の角度を有して垂れ下がり、粉体供給筒10は開口10aが上向き状態となる。この状態においてスクエアバッグ39を持ち上げて、スクエアバッグ39内の全ての薬剤を粉体供給筒10の内部へ落下させる。このとき、移し替えリング41の凹部41cの位置が上方となるよう、粉体供給筒10は配置される。なお、本実施の形態においては、粉体供給筒保持台となるスイング台40aがバック支持台となる固定台40bから垂れ下がった角度は、水平面に対して約60度であったが、40度から70度の範囲内であれば薬剤が飛散することなく確実に移し替えることが可能である。
移し替えが終了した後、図8の(e)に示すように、スイング台41aを水平に戻し、前述の蓋36を粉体供給筒10の開口10aにかぶせることにより移し替え作業は終了する。この移し替え作業終了時において、前述の図4に示した固定バンド37が粉体供給筒10に装着され、蓋36は確実に粉体供給筒10の開口10aに固定される。
【0048】
上記のように、上記の移し替え作業においては移し替えリング41を用いることにより、移し替え作業を容易で、確実なものとしている。図9の(b)に示すように、移し替えリング41にはフランジ部41dが形成されているため、スクエアバッグ39の接続位置である開口部分は粉体供給筒10の開口10aより狭い開口となる。この結果、移し替え作業において、スクエアバッグ39内の薬剤は粉体供給筒10の開口10aで滞ることなく、スムーズに粉体供給筒10の内部に確実に収納させることが可能となる。
図9の(b)に示すように、粉体供給筒10の開口10aにはリング状の凸部10eが形成されており、移し替えリング41の内面において凸部10eと対応する位置に溝41eが形成されている。これにより、移し替えリング41がスクエアバッグ39の開口部分を介して粉体供給筒に装着されたとき、粉体供給筒10の開口10aに形成された凸部10eが溝41e内に収納され、移し替えリング41は粉体供給筒10の開口10aに確実に嵌め込まれる。
【0049】
以上のように、上記の実施の形態における移し替え作業においては、スクエアバッグ39内の薬剤のすべてを、粉体供給筒10に確実に移し替えることが可能となる。また、この移し替え作業は、無菌空間である移し替えブース内部において行われるため、無菌製剤の安全性が確実に保証される。
なお、上記の実施の形態において用いた第1の無菌空間である充填ブース30および第3の無菌空間である移し替えブース28は、透明部材を用いて壁材が構成されており、また第2の無菌空間である供給エリア31は、透明部材を用いてカーテンが構成されているため、それぞれの室内は外部空間から目視により確認できるよう構成されている。
【0050】
本発明によれば、上記の実施の形態において詳細に説明したように、医薬品製造において、絶対的な安全性を担保しつつ薬剤の供給および充填を行うことが可能な装置を提供することができる。本発明の粉体供給装置は、無菌・無塵である環境状態を確実に確保しつつ粉体である薬剤を粉体充填装置に供給することが可能であり、信頼性の高い優れた装置となる。
本発明においては、粉体供給装置における薬剤を供給する部分が、内面に何も設けられていない単純な形状の円筒形状で構成された粉体供給筒であるため、粉体供給手段において塵の発生源が無く、使用後の洗浄が容易な構成となる。また、粉体供給筒である容器の脱着も容易である。さらに、本発明の粉体供給装置は、構成が非常に簡単であり、容易に移動可能であるため、汎用性が高く各種粉体製造や搬送、特に医薬品、農薬、食品、化学薬品等の製造における供給装置として使用可能である。
本発明の粉体供給充填装置においては、簡単な構成の粉体供給装置を用いることにより粉体充填装置の粉体ホッパー内の粉体の収納レベルを常に一定に保つことができ、各粉体容器の充填量を所定量に維持することが確実な装置となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、粉体を供給する粉体供給機構の粉体製造の分野、特に医薬品、農薬、食品、化学薬品等の分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る本実施の形態の粉体供給装置の構成を示す説明図
【図2】本実施の形態の粉体供給装置における粉体供給筒を示す側面図
【図3】本実施の形態の粉体供給装置を用いて粉体供給充填動作を行った実験結果を示すグラフ
【図4】本実施の形態の粉体供給装置における粉体供給筒において、供給対象である薬剤が収納された状態を示す側面図
【図5】本実施の形態の粉体供給装置において、薬剤が収納された粉体供給筒が粉体供給装置に装着された状態を示す側面図
【図6】本実施の形態の粉体供給装置において、粉体供給筒が水平方向に対して所望の角度を有する位置にある状態を示す側面図
【図7】図6に示す粉体供給装置を示す平面図
【図8】本実施の形態において、移し替えブース内で行われる移し替え作業を示す説明図
【図9】本実施の形態における移し替え作業で用いられる移し替えリングを示す正面図
【符号の説明】
【0053】
1 粉体供給装置
2 供給筒駆動部
3 角度調整部
4 昇降部
5 搬送部
6 制御部
7 支持アーム
8 カップリング機構
9 ギアモータ
10 粉体供給筒
11 ガイドレール
12 ストッパー
13 車輪(前輪)
14 車輪(後輪)
15 電磁ノッカー
16 粉体ホッパー
17 粉体供給部
18 充填ドラム
19 粉体充填装置
20 レベルセンサー
21 水平インペラ
22 垂直インペラ
23 ドクターブレード
24 容器位置制御板
25 バイアル瓶
26 ラミナーフロー(充填ブース)
27 ラミナーフロー(供給エリア)
28 移し替えブース
29 仕切り壁
30 充填ブース
31 供給エリア
32 搬送コンベア
33 昇降シリンダ
34 挿入孔
35 ハンドル
36 蓋
37 固定バンド
38 角度調整ハンドル
39 スクエアバッグ
40 収納台
41 移し替えリング
42 ヒンジ
43 パッチン錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有し、前記円筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有し、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置され、前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記円筒内の粉体を前記開口から供給する脱着可能な粉体供給筒、
前記粉体供給筒を回転駆動する供給筒駆動部、
前記粉体供給筒の前記中心軸を水平面に対して所定角度に調整する角度調整部、および
前記供給筒駆動部を制御する制御部、
を具備する粉体供給装置。
【請求項2】
少なくとも粉体供給筒が移動可能に構成された搬送部をさらに具備する請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項3】
粉体供給筒を昇降可能に保持する昇降部をさらに具備する請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項4】
粉体供給筒の内面における側面の対向する部分が中心軸と並行に構成され、前記側面と閉塞面との接続領域が曲面で構成された請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項5】
制御部は、粉体が供給された被供給装置からの指令を受けて、粉体供給筒の回転を制御するよう構成された請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項6】
搬送部は、実質的に直線方向に往復移動する車輪を有する請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項7】
供給筒駆動部は、供給対象の粉体に応じて、粉体供給筒の回転速度を変更するよう構成された請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項8】
制御部は、供給対象の粉体に応じて、供給筒駆動部により粉体供給筒の回転速度を変更し、角度調整部により前記粉体供給筒の中心軸を水平面に対して所定角度に調整するよう構成された請求項1に記載の粉体供給装置。
【請求項9】
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有する粉体供給筒を、その中心軸が実質的に鉛直線上となるよう粉体供給装置に装着する装着工程、
前記粉体供給筒を前記中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置する配置工程、および
前記粉体供給筒の前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記粉体供給筒内に収納された粉体を前記開口から供給する供給工程、
を有する粉体供給方法。
【請求項10】
粉体供給筒を粉体供給装置により所定位置に搬送する搬送工程をさらに有する請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項11】
配置工程において、粉体供給筒の内周面における最下端側にある母線が水平面に対して+1度から+10度の範囲内に設定された請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項12】
搬送工程において、粉体供給筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記粉体供給筒の内面における最下端側にある母線が開口に向かって上向きとなるように設定された請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項13】
搬送工程において、粉体供給筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記粉体供給筒の内面における最下端側にある母線が開口に向かって上向きとなるよう水平面に対して−0.5度から−10度の範囲内に設定された請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項14】
粉体が供給された被供給装置からの指令を受けて、粉体供給筒の回転を制御する工程を有する請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項15】
供給対象の粉体に応じて、粉体供給筒の回転速度を変更する工程を有する請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項16】
供給対象の粉体に応じて、粉体供給筒の回転速度を変更し、前記粉体供給筒の中心軸を水平面に対して所定角度に調整する工程を有する請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項17】
搬送工程が、前記粉体供給筒を所定の高さに移送する工程を含む請求項9に記載の粉体供給方法。
【請求項18】
粉体容器に粉体を充填する粉体充填装置と前記粉体充填装置に前記粉体を供給する粉体供給装置とを具備する粉体供給充填装置であって、
前記粉体供給装置は、
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有し、前記円筒の中心軸が水平面に対して所定角度を有し、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置され、前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記円筒内の粉体を前記開口から前記充填装置に供給する粉体供給筒、
前記粉体供給筒を回転駆動する供給筒駆動部、
前記粉体供給筒の前記中心軸を水平面に対して所定角度に調整する角度調整部、
前記粉体供給筒が脱着可能に構成され、装着された前記粉体供給筒を昇降可能に保持する昇降部、
前記供給筒駆動部と前記昇降部を制御する制御部、および
少なくとも前記粉体供給筒が装着された前記昇降部を保持して移動可能に構成された搬送部、を有し、
前記粉体充填装置は、
前記粉体供給筒内の粉体が前記開口から供給される粉体ホッパー、
前記粉体ホッパー内の収納レベルを検知し、当該検知に基づく指令を前記制御部に出力するレベルセンサー、
前記粉体ホッパー内の粉体を充填位置の前記粉体容器に所定量を充填する充填機構、および
前記粉体容器を順次充填位置に搬送する搬送機構、を有する粉体供給充填装置。
【請求項19】
粉体充填装置が第1の無菌空間に配置され、粉体供給装置が第2の無菌空間に配置され、前記粉体供給筒が前記第1の無菌空間と前記第2の無菌空間との仕切り壁を貫通して配置された請求項18に記載の粉体供給充填装置。
【請求項20】
一端が開口し他端が閉塞面となる円筒の形状を有する粉体供給筒を、その中心軸が実質的に鉛直線上となるよう粉体供給装置に装着する装着工程、
前記粉体供給筒を所定位置に搬送する搬送工程、
制御部により、前記粉体供給筒を前記中心軸が水平面に対して所定角度を有するよう回動させ、前記円筒の内周面における最下端側にある母線が開口に向かって下向きとなるよう配置する配置工程、
前記粉体供給筒の前記中心軸を中心に所定速度で回転して前記粉体供給筒内に収納された粉体を前記開口から充填装置の粉体ホッパーに供給する供給工程、
前記粉体ホッパーに設けられたレベルセンサーにより前記粉体ホッパー内の粉体収納レベルを検知し、当該検知に基づく指令を前記制御部に出力する検知工程、および
粉体容器を順次充填位置に搬送し、前記粉体ホッパー内の粉体を前記充填位置の粉体容器に所定量を充填する充填工程、
を有する粉体供給充填方法。
【請求項21】
配置工程において粉体供給筒が第1の無菌空間と第2の無菌空間との仕切り壁を貫通して配置された請求項20に記載の粉体供給充填方法。
【請求項22】
請求項1に記載の粉体供給装置における粉体供給筒に装着され、袋体が収納する粉体を前記粉体供給筒へ移し替えるための移し替えリングであって、
ヒンジ部により接続された円弧状の少なくとも2つの部材と、
前記部材を互いに固定して環状に形成する引っ掛け手段と、を具備し、
前記引っ掛け手段により固定された前記部材は、前記粉体供給筒の開口に前記袋体を介して装着され、前記部材により形成された環状の直径が前記開口の直径より小さくなるよう構成された移し替えリング。
【請求項23】
少なくとも1つの部材の内面の一部に凹部が形成された請求項22に記載の移し替えリング。
【請求項24】
部材において粉体供給筒の開口に対応する部分に溝が形成されており、前記部材が前記粉体供給筒の開口に袋体を介して装着されたとき、前記粉体供給筒の開口に形成された凸部が前記溝内に収納されるよう構成された請求項22または請求項23に記載の移し替えリング。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−69915(P2007−69915A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−256112(P2005−256112)
【出願日】平成17年9月5日(2005.9.5)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】