説明

粉体塗装方法

【課題】 ワーク61表面に厚肉の粉体塗料の熔融塗膜を形成することができ、しかも、オートバイのスポークの内面や、モータのコア等、隙間が狭い場合でも、熔融塗膜の詰まりがなく、ワーク全体に亘って均一な膜厚の熔融塗膜を形成することができる粉体塗装方法を提供する。
【解決手段】 ワーク61の被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料Aが存在する状態で、高周波電源7に接続された電磁誘導コイル11によって粉体塗料Aの融点以上の温度にワーク61を加熱し、ワーク61の被塗装面に粉体塗料Aの熔融塗膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に、厚膜塗装が必要な製品や、通常の塗装ガンによる吹き付けでは粉体塗料が入り込みにくい、細いパイプ状のワークの内面等を効率的に、かつ均一な膜厚で塗装を行うことができる粉体塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体塗装は、有機溶剤を含まず、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収して再使用することができるので、環境にやさしい塗装として、近年多くの製品に採用されている。
【0003】
当初はガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、冷蔵庫、エアコンの室外機等、家庭内で使用する製品にも多く採用されている。最近は、学校の椅子や机の塗装、ナンバープレートの塗装にも用いられている。
【0004】
一般に粉体塗装は、コロナガンや摩擦帯電ガンを使用し、粉体塗料を被塗装物であるワークに吹き付けることによって行っている。
【0005】
コロナガンによる粉体塗装は、ガン先のコロナ電極と被塗装物との間に電場を作り、そのコロナ放電により、ガンから吐出された粉体塗料をワークに付着させるという塗装方法である。
【0006】
また、摩擦帯電ガンによる塗装方法は、ガン内に、例えば、非導電性樹脂チューブを収容し、この非導電性樹脂チューブ内に粉体塗料を供給し、非導電性樹脂チューブ内を粉体塗料が通過する際の非導電性樹脂と粉体塗料との摩擦によって粉体塗料に電荷を与え、電荷を帯びた粉体塗料を静電気力でワークに付着させるという塗装方法である。
【0007】
ところで、粉体塗装には、上記のような静電塗装方法以外に、ワークを粉体塗料の溶融温度以上に予熱し、この予熱したワークに粉体塗料を熔融付着させるという方法も特許文献1に開示されている。
【0008】
また、電磁誘導加熱によって、ワークを予熱することも知られている。
【0009】
そして、このワークを予熱して粉体塗料の熔融被膜を形成するという方法は、例えば、水道のエルボ管のような鋳鉄管の内面に、厚膜の重防食塗装を行う場合に利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−233819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記の予熱熔融による粉体塗装方法では、予熱炉で予熱したワークの表面温度が160℃〜300℃位である間に、粉体塗料をワークに付着させる必要があり、物温が下がると、所定の厚みの塗膜が得られなかったり、塗膜の厚みが不均一になったりするという問題がある。
【0012】
また、ワークが筒状の場合、粉体塗料の入口部分で粉体塗料が熔融し、筒状のワークの内部が詰まって、ワークの全長に亘って塗膜を形成することができないという問題もあった。
【0013】
特に、オートバイのスポークの内面や、モータのコア等、隙間が狭いワークの内面を塗装するような場合には、内部の詰まりが発生し易く、上記のような、予熱熔融方法では塗装が行えなかった。
【0014】
そこで、この発明は、ワーク表面に厚肉の粉体塗料の熔融塗膜を形成することができ、しかも、オートバイのスポークの内面や、モータのコア等、隙間が狭い場合でも、熔融塗膜の詰まりがなく、ワーク全体に亘って均一な膜厚の熔融塗膜を形成することができる粉体塗装方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するために、この発明は、ワークの被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料が存在する状態で、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの被塗装面に粉体塗料の塗膜を形成するものである。
【0016】
また、ワークの被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を通過させながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの被塗装面に粉体塗料の塗膜を形成するものである。
【0017】
管状のワークの内面を塗装する場合には、管状のワークの内部に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を通過させながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの内面に粉体塗料の塗膜を形成する。
【0018】
また、管状のワークの上部から、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を吸引しながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの内面に粉体塗料の塗膜を形成するようにしてもよい。
【0019】
粉体塗料として、コロナ帯電又は摩擦帯電によって静電気を帯びている粉体塗料を使用すると、ワークの被塗装面に粉体塗料がより付着しやすくなるので好ましい。
【発明の効果】
【0020】
この発明の粉体塗装方法は、以上のように、ワークの被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料が存在する状態で、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを直接加熱するので、ワークを予熱する従来の粉体塗装方法に比し、ワークの加熱箇所、加熱温度の管理をきっちりと行える。
【0021】
したがって、粉体塗料の熔融温度に適合するように、ワークを加熱することができるので、ワークの被塗装面に、厚膜の熔融被膜を均一な膜厚で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】(a)は図1の実施形態のワークであるモータのステータの端面図、(b)は(a)のステータの内部にマスキング部材を挿入した状態の端面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図4】この発明の第3の実施形態を示す概略構成図である。
【図5】この発明の第4の実施形態を示す概略構成図である。
【図6】この発明の第5の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】図6の実施形態における電磁誘導コイルとワークであるスポークの配置状態を示す平面図である。
【図8】この発明の第6の実施形態を示す概略構成図である。
【図9】この発明の第7の実施形態を示す概略構成図である。
【図10】この発明の第8の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の第一の実施形態を示す概略図であり、塗装対象物であるワークは、風力発電用のモータ部品のステータ1である。
【0024】
ステータ1は、図2の端面図に示すように、筒状で、内径面に、軸方向に延びる巻線を形成する凹部2が多数設けられており、第一の実施形態は、この凹部2の内面に、絶縁被膜を粉体塗装Aにより形成しようとするものである。
【0025】
上記ステータ1の大きさは、例えば、外径80mm×内径53mm×高さ65mm程度であり、凹部2の隙間は、約7mmと非常に狭い。
【0026】
しかも、凹部2の内面に施される絶縁被膜の要望膜厚は、200μm以上の厚膜であるため、通常の粉体塗装ガンでは塗装が行えない。
【0027】
図1の塗装装置は、粉体塗料Aが流動状態で収容されている流動槽3の上面に、ステータ1の端面の凹部2形状に合わせた粉体塗料Aの出口4を設け、この出口4を塞ぐように、ステータ1の端面の凹部2と出口4を合せてステータ1を設置する。
【0028】
流動槽3の上面に設置したステータ1の上方には、吸引フード5が設置され、流動槽3内の粉体塗料Aを、集塵機6によって吸引し、ステータ1の凹部2を通過させている。
【0029】
流動槽3は、槽内の下部に多孔板からなる流動パッド8が設置され、流動パッド8の下方に供給されるコンプレッサーエアー9により、流動槽3内に収容した粉体塗料Aを流動状態にしている。そして、流動槽3内の粉体塗料Aは、下部が流動状態で、その上部が霧化状態になる。
【0030】
図1の実施形態では、ステータ1の内径面は、絶縁被膜の形成が不要であるため、図2(b)に示すように、ステータ1の内径面に、シリコンゴム製のマスキング部材13を挿入し、ステータ1の内径面に粉体塗料Aが付着しないようにしている。
【0031】
流動槽3の下部には、コロナ電極10が設置され、流動槽3内の粉体塗料Aに静電気を付与するようにしている。
【0032】
上記ステータ1の周囲には、高周波電源7に接続された電磁誘導コイル11が設置され、電磁誘導コイル11によってステータ1を誘導加熱するようにしている。
【0033】
電磁誘導コイル11は、例えば、2.4KWの出力のものを使用すると、高周波電源7をONすると、数秒で、電磁誘導コイル11によってステータ1が、粉体塗料Aが熔融する100〜130℃に昇温加熱される。
【0034】
電磁誘導コイル11内には、冷却水が循環するようになっており、ステータ1が加熱されても、電磁誘導コイル11自身の温度は、40℃位に保つことができる。
【0035】
図1の実施形態では、ステータ1の凹部2内を通過する粉体塗料Aの流れ方向と逆方向、即ち、粉体塗料Aの出口から入口側に向かって、図1では上方から下方に向かって電磁誘導コイル11を移動させている。
【0036】
このように、電磁誘導コイル11を上方から下方に向かって移動させると、ステータ1の上部から昇温され、上方部分から粉体塗料が熔融付着し、徐々に下方側が昇温され、凹部2の全体に粉体塗料が熔融付着する。
【0037】
このように、電磁誘導コイル11を上方から下方に移動させながら、凹部2内に、粉体塗料Aを熔融付着させると、凹部2の下方の粉体塗料の入口側から上方の出口側まで、粉体塗料Aが均一に熔融付着した。
【0038】
この後、熔融付着した粉体塗料Aを硬化せるために、電磁誘導コイル11による再加熱により、焼き付けを行い、塗膜を完成させた。
【0039】
このようにして、粉体塗料Aを熔融付着させた凹部2の内面の膜厚を、下方の入口側部分と、中間部分の2か所と、上方の出口側部分の4箇所で測定したところ、全体の膜厚が均一で、中間部分で、210〜230μmの厚膜が得られた。
【0040】
また、凹部2の対向する右側面と左側面と奥の面の3面での膜厚も測定したが、凹部2の全面で均一な厚膜塗装が行えた。
【0041】
その実験結果を示すと、表1の通りである。単位は、μmである。
【0042】
【表1】

【0043】
比較例として、コロナ電極10が設置された流動槽3内に、ステータ1を浸漬する静電流動浸漬方法により、ステータ1の凹部2内に粉体塗装を行った場合の膜厚を示すと、表2の通りであり、中間部分1、2と、凹部2の奥側の面で十分な膜厚が得られなかった。
【0044】
【表2】

【0045】
また、比較例として、200℃に予熱を行ったステータ1に、粉体塗料Aを通過させて、ステータ1の凹部2に粉体塗料Aをステータ1の予熱で熔融付着させる予熱熔融方法により、ステータ1の凹部2内に粉体塗装Aを行った場合の膜厚を示すと、表3の通りであった。
【0046】
この予熱熔融方法では、再度予熱を行い、2回目は出口と入口を逆向きにして粉体塗料を通過させた。
【0047】
この予熱熔融方法では、出口と入口部分の膜厚が、600μmを超え、一部が閉塞状態になり、中間部分1、2では、目標とする200μmの膜厚が得られなかった。表3中の※印は、閉塞状態が生じている。
【0048】
【表3】

【0049】
図1の実施形態では、ステータ1の凹部2を通過させる粉体塗料Aは、流動槽3の上部の霧化状態の部分の粉体塗料を吸引している。
【0050】
流動槽3の下部の流動状態の部分の粉体塗料Aを直接吸引すると、ステータ1の凹部2の隙間が狭いので、凹部2内で粉体塗料の閉塞状態が起こる可能性があるためである。
【0051】
図3の実施形態は、被塗装物であるワークが、比較的径の大きいパイプ21であるため、被塗装面であるパイプ21の内部に粉体塗料Aの閉塞が起きにくいので、この実施形態では、流動槽3の下部の流動状態の部分の粉体塗料Aを直接吸引するようにしている。
【0052】
また、被塗装面であるパイプ21の内部に粉体塗料Aの閉塞が起きにくい場合には、図4の実施形態のように、ワークであるパイプ21に、塗料タンク14からインジェクター15によって直接粉体塗料を流すようにしてもよい。
【0053】
また、図5の実施形態のように、流動槽3内の霧化状態の粉体塗料を多くするために、流動槽3内に粉体塗装ガン16によって粉体塗料Aを吐出するようにしてもよい。
【0054】
図6は、内径3mm、全長約500mmの2輪車のタイヤフレームのスポーク31を、被塗装物のワークとした実施形態を示している。
【0055】
この実施形態は、細いスポーク31の内面が被塗装面であるため、内部に粉体塗料Aの閉塞を起こさないように、流動槽3内の霧化状態の粉体塗料Aを吸引するために、スポークの上部に吸引フード17を設け、吸引ブロワ18によって吸引フード17から流動槽3内の霧化状態の粉体塗料Aを吸引している。
好ましい吸引状態は、架台19に設置した6本のスポーク31の上部からあたかも粉体塗料Aが煙のように立ち上がる程度である。
【0056】
また、流動槽3には、粉体塗装ガン16からエポキシ系粉体塗料を吐出し、流動槽3内に粉体塗料Aの霧化領域を形成するようにしている。粉体塗装ガン16には、粉体塗料タンク14からインジェクター15によって粉体塗料Aが搬送される。
【0057】
6本のスポーク31は、図7に示すように、電磁誘導コイル11内に設置されている。
【0058】
電磁誘導コイル11は、スポーク31の全長を加熱するように設置し、電磁誘導コイル11の高周波電源7をONにしてスポーク31を100〜120℃になるように加熱した。
【0059】
この加熱により、スポーク31の内壁面にエポキシ系粉体塗料が付着し、塗膜が形成される。
【0060】
膜厚は、平均40〜90μmになるようにした。
【0061】
スポーク31は、全長を一度に加熱してもよいが、図1の実施形態と同様に、電磁誘導コイル11を移動させることにより、加熱部分を移動させてもよい。
【0062】
粉体塗装ガン16から流動槽3に供給する粉体塗料Aは、静電気を帯電させておく必要は必ずしもないが、コロナ放電あるいは摩擦帯電によって帯電させることにより、付着性をより向上させることができる。
【0063】
上記のようにして、スポーク31の内面に塗装を行った場合、塗膜が半硬化状態であるから、塗装後に、180℃の熱風循環炉にて15分間、焼付けを行う。
【0064】
流動槽3内の残粉は、流動槽3の下部のピンチバルブ22を開いて、スポーク31の上方に引き出された粉体塗料Aとともに、塗料タンク14に戻され、再使用される。
【0065】
図8は、自動車のスプラインシャフト、ステアリングシャフト、リバースシャフト等の駆動系部品41を、被塗装物のワークとした実施形態を示している。
【0066】
このような駆動系部品41は、先端から約70mm程度を、摩擦係数を低下させ、摩擦面のかじりや焼付防止のために、ナイロンコーティングを施している。
【0067】
従来、このようなナイロンコーティングは、下塗りプライマー塗装をスプレーガンによって行った後、常温で乾燥させ、その後、ナイロンパウダー(ナイロン11)にて、ナイロンコーティングを300μmの厚みで行い、その後に、切削にて150μmの膜厚にしている。
【0068】
このような従来の方法は、スプレーガンによって塗膜を形成した後、切削によって膜厚を調整する必要があるため、塗装作業に手間がかかるという問題がある。
【0069】
また、従来、誘導加熱によって200mm程度の駆動系部品41の全体を加熱した後に、ナイロンパウダーが収容された流動層に浸漬し、この浸漬を3回繰り返すことにより、300μmの塗膜を形成した後、必要な先端の70mm程度の塗膜を残して不必要な塗膜を取り除くという方法もあるが、この方法も塗装後に塗膜を取り除く必要があり、手間であると共に、均一な膜厚も形成し難いという問題がある。
【0070】
このため、図8の実施形態は、駆動系部品41の先端の必要な部分のみに、均一な厚みの塗膜が形成することができるようにしたものである。
【0071】
この図8の実施形態では、流動槽3内に電磁誘導コイル11を設置し、駆動系部品41の先端を電磁誘導コイル11内に差し入れて、駆動系部品41の塗装が必要な先端部分のみを電磁誘導コイル11によって350℃程度に加熱することにより、駆動系部品41の塗装が必要な先端部分のみに、ナイロンの熔融被膜を形成するようにしたのである。
【0072】
流動槽3内に電磁誘導コイル11を設置しても、電磁誘導コイル11内には冷却水が循環しているため、電磁誘導コイル11は、40℃位しか昇温しないので、電磁誘導コイル11の外面に熔融被膜が付着するということはない。
【0073】
図9は、機械部品51を、被塗装物のワークとし、この機械部品51にフッ素樹脂塗装を行う実施形態を示している。
【0074】
この実施形態では、フッ素樹脂の粉体塗料Aとしては、旭化成のフルオンETFEを使用した。
【0075】
従来、機械部品51にフッ素樹脂塗装を行う場合、塗装後に、切削加工を行って150μm以上の塗膜にしているため、当初の塗膜としては、250μmの塗装が必要である。この塗装を、一般的な静電塗装ガンにて行なうと、膜厚の均一性は良いが、厚膜塗装ができず、また、オーバースプレー粉の回収、再使用の設備が大掛かりとなる。
【0076】
また、従来、機械部品51を240〜350℃以上に熱し、フッ素樹脂の入った流動槽3に浸漬して塗装を行う方法もある。ところが、フッ素樹脂のメルト温度は230℃付近からである。この場合、機械部品51を予熱してから、浸漬するまでの時間、その周辺の雰囲気によって、塗膜の厚みが左右される。特に、図9に示すような形状の機械部品51の場合、中心部の形状が膨れており、そのために、膜厚の均一性の管理幅が大きく左右されるという問題があった。
【0077】
そこで、図9の実施形態では、機械部品51をあらかじめ予熱するのではなく、フッ素樹脂の入った流動槽3内に、機械部品51を浸漬し、同時に流動槽3内に設置した電磁誘導コイル11によって塗装範囲aのみを昇温しながら、塗装を行なうものである。
【0078】
流動槽3の下部には、キャンパスを3重にした流動パッド8が設置してあるが、多孔樹脂板でも良い。
【0079】
流動パッド8の下からは、コンプレッサーエアー9が入り、流動パッド8上のフッ素樹脂粉末を流動化させている。電磁誘導コイル11は、流動状態の粉体塗料Aの上部位置すれすれに設置している。
【0080】
図9の実施形態の被塗装物である機械部品51は、両端の約50mmと100mmは未塗装でもよい。
【0081】
即ち、機械部品51のうち、図9のaの範囲が塗装範囲である。このため、機械部品51を、電磁誘導コイル11を通過させながら、50mm後付近から電磁誘導コイル11の高周波電源7をONにして、機械部品51を250℃に昇温しながら機械部品51を流動槽3内に下降させる。そして、上方の端部の100mm付近で、高周波電源7をOFFにし、その後、機械部品51を引き上げる。同時に、電磁誘導コイル11も上に移動し、機械部品51を電磁誘導コイル11の引き抜き時に、再度350℃に昇温し、塗膜を完全に溶融させて、製品とする。
【0082】
なお、電磁誘導コイル11には、粉体塗料Aは固着しない。その理由は、電磁誘導コイル11には冷却水が循環している。このため、電磁誘導コイル11の表面温度は40〜50℃以上には上昇しない。
【0083】
この実施形態では、一般の地下水を流し掛けで使用したが、水を冷却しながら循環しても良い。
【0084】
機械部品51は、中央部が膨らんでいるため、機械部品51の全長の加熱温度が一定になるように、機械部品51の移動スピードを調整する。
【0085】
また、例えば、スピードを一定にして、誘導加熱のエネルギーを変更してもよい。
【0086】
機械部品51の膜厚は250μm付近に達した。この実施形態では、機械部品51を上下したが、図10の実施形態のように、電磁誘導コイル11を流動槽3内で上下に移動させるようにしてもよい。
【0087】
図10の実施形態では、ワーク61の周囲の電磁誘導コイル11を流動槽3内で上下させ、ワーク61の全長を加熱している。
【符号の説明】
【0088】
1 ステータ
2 凹部
3 流動槽
4 出口
5 吸引フード
6 集塵機
7 高周波電源
8 流動パッド
9 コンプレッサーエアー
10 コロナ電極
11 電磁誘導コイル
14 粉体塗料タンク
15 インジェクター
16 粉体塗装ガン
17 吸引フード
18 吸引ブロワ
21 パイプ
22 ピンチバルブ
31 スポーク
41 駆動系部品
51 機械部品
61 ワーク
A 粉体塗料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料が存在する状態で、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの被塗装面に粉体塗料の塗膜を形成することを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項2】
ワークの被塗装面に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を通過させながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの被塗装面に粉体塗料の塗膜を形成することを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項3】
管状のワークの内部に、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を通過させながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの内面に粉体塗料の塗膜を形成することを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項4】
管状のワークの上部から、エアーによって流動又は霧化された粉体塗料を吸引しながら、高周波電源に接続された電磁誘導コイルによって粉体塗料の融点以上の温度にワークを加熱し、ワークの内面に粉体塗料の塗膜を形成することを特徴とする粉体塗装方法。
【請求項5】
コロナ帯電又は摩擦帯電によって静電気を帯びている粉体塗料を使用する請求項1〜4のいずれかの項に記載の粉体塗装方法。
【請求項6】
電磁誘導コイルをワークに対して移動させる請求項1〜5のいずれかの項に記載の粉体塗装方法。
【請求項7】
電磁誘導コイルに対してワークを移動させる請求項1〜5のいずれかの項に記載の粉体塗装方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−45474(P2012−45474A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189032(P2010−189032)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】