説明

粉体塗装装置

【課題】排気手段の消費電力を最適化することのできる粉体塗装装置を提供する。
【解決手段】被塗装物検知手段29によって検出された被塗装物19の大きさに基づいて、扉部4a,4b及び6a,6bそれぞれの分割扉部のうちの少なくとも一部が開く。塗装ブース2内に入った被塗装物19は、塗装ブース2内を移動する間に、塗装ガン10a,10bから粉体塗料が吹き付けられて塗装される。塗装ブース2内に流入する空気の速度が下限流入速度以上となり、かつ、塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度以下となり、かつ、流速センサーによる検出値が下限流通速度以上となる回転数で、排気ファンが塗装ブース2内の空気を吸引する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体塗装装置に係り、特に、塗装ブース内を被塗装物が通過する際に、被塗装物に粉体塗料を吹き付けることにより被塗装物への塗装が行われる粉体塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粉体塗装装置が、例えば特許文献1〜5に開示されている。このような従来の粉体塗装装置は、入口及び出口を有する塗装ブース内を、吊り下げられた被塗装物が通過する際に、塗装ブース内に設けられた静電塗装ガン等から粉体塗料を被塗装物に吹き付けることにより、被塗装物への塗装が行われる。塗装ブース内で被塗装物に吹き付けられた粉体塗料が全て被塗装物に付着するわけではないので、被塗装物に付着しなかった粉体塗料が塗装ブースから飛散しないように、また、塗装ブース内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度を上回ることがないように、排気ファンやブロワ等の排気手段によって、塗装されなかった粉体塗料を塗装ブースから排出させている。
【0003】
塗装ブースから粉体塗料が飛散しないようにするためには、排気ファンによる粉体塗料の排出に伴って塗装ブース内に流入する空気の速度がある程度大きくなくてはならず、また、塗装ブース内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度を上回ることがないようにするためには、適当な流量の空気を塗装ブースから排出させる必要がある。これらに基づいて、排気手段によって吸引する空気の流量が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−108563号公報
【特許文献2】特開昭63−151371号公報
【特許文献3】特開平10−180175号公報
【特許文献4】特開平11−262708号公報
【特許文献5】特開平11−333342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塗装ブース内に流入する空気の速度は、流入する空気の量だけではなく、塗装ブースの出入口の大きさにも依存する。被塗装物の大きさが一定でない場合には、塗装ブースの出入口の大きさは通常、最も大きい被塗装物が通過できるように設計されている。すると、被塗装物が小さい場合には、被塗装物に吹き付けられる粉体塗料の量が少ないため、本来ならば排気手段によって排出される空気量を低下することができるはずであるが、塗装ブース内に流入する空気の速度を規定以上の速度に保つためには、塗装ブースから排出する空気量を低下させることができず、排気手段の消費電力がかさんでしまう。特許文献1〜5に開示された粉体塗装装置は、塗装ブースの出入口の大きさを変更する手段が設けられていないため、排気手段の消費電力が無駄になるといった問題点があった。
【0006】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、排気手段の消費電力を最適化することのできる粉体塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る粉体塗装装置は、入口部及び出口部を有する塗装ブースと、該塗装ブース内に搬入された被塗装物に粉体塗料を吹き付ける塗装手段と、前記塗装ブース内の空気を排出させる排気手段とを備え、前記入口部及び前記出口部にはそれぞれ、開閉可能な扉が設けられており、前記入口部及び前記出口部に設けられた前記扉はそれぞれ、鉛直方向に複数の分割扉部に分割されてそれぞれが独立に開閉可能となっており、前記被塗装物の大きさに基づいて、各分割扉部の開閉が制御され、前記塗装ブース内に流入する空気の下限流入速度と、前記塗装ブース内の粉塵爆発下限濃度とが予め設定されており、前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となると共に前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御する。
各分割扉部の開閉状態から算出される前記入口部及び前記出口部の開口面積と、前記下限流入速度とから、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記塗装手段から吐出される前記粉体塗料の吐出量と、前記粉塵爆発下限濃度とから、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記塗装ブース内の粉塵濃度を検出する粉塵濃度検出手段を備え、前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となる条件で、前記粉塵濃度検出手段による検出値が前記粉塵爆発下限濃度以下となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記塗装ブースと前記排気手段とはダクトを介して連通されており、該ダクトを流通する空気の下限流通速度が予め設定されており、前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となり、かつ、前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となり、かつ、前記ダクトを流入する空気の速度が前記下限流通速度以上となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記ダクトの断面積と、前記下限流通速度とから、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記ダクトには流通速度検出手段が設けられ、前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となると共に前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となる条件で、前記流通速度検出手段による検出値が前記下限流通速度以上となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量を制御してもよい。
前記ダクトには流通速度検出手段が設けられ、該流通速度検出手段による検出値に基づいて、前記排気手段によって吸引する空気の流量をさらに調整してもよい。
開くように制御された分割扉部は、前記被塗装物の大きさに基づいて、その開度も制御されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、塗装ブース内に流入する空気の速度が下限流入速度以上となると共に塗装ブース内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度以下となるように、排気手段によって吸引する空気の流量を制御することにより、排気手段の排気能力が最適な状態になるので、排気手段の消費電力を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る粉体塗装装置の斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る粉体塗装装置の平面模式図である。
【図3】実施の形態1に係る粉体塗装装置の断面模式図である。
【図4】実施の形態2に係る粉体塗装装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る粉体塗装装置の斜視図を図1に示す。粉体塗装装置1は、略直方体形状の塗装ブース2を有している。塗装ブース2には、長手方向に関して対向する両側面に、入口部3及び出口部5が設けられている。入口部3及び出口部5のそれぞれは、扉4及び6によって開閉されるようになっている。扉4は、正面から見た時に左右に開閉する一対の扉部4a及び4bから構成されており、扉部4aは、鉛直方向に5つの分割扉部4a1,4a2,4a3,4a4,4a5に分割されると共に、扉部4bも、鉛直方向に5つの分割扉部4b1,4b2,4b3,4b4,4b5に分割されている。入口部3には、分割扉部4a1〜4a5及び4b1〜4b5をそれぞれ独立に開閉するための扉駆動装置7が設けられている。また、扉6も、正面から見た時に左右に開閉する一対の扉部6a及び6bから構成されており、図示しないが、扉部6a及び6bもそれぞれ、扉部4a及び4bと同様の大きさで、鉛直方向に5つの分割扉部に分割されている。出口部5にも、扉部6a及び6bの分割扉部を独立に開閉するための扉駆動装置8が設けられている。
【0011】
塗装ブース2の長手方向に垂直な方向に関して対向する両側面の一方の側面には、塗装用開口9が形成されている。塗装ブース2の外部に設けられた塗装手段固定部材14に固定されている塗装ガン10a及び10bが、塗装用開口9を介して、塗装ブース2内に挿入するように設けられている。図2に示されるように、反対側の側面にも、塗装ガン11a及び11bが、同様の塗装用開口(図示されていない)を介して、塗装ブース2内に挿入するように設けられている。ここで、塗装ガン10a,10b,11a,11bは、塗装手段を構成する。塗装ガン10a,10bはそれぞれ、配管12aを介して塗料供給装置13に接続されており、塗装ガン11a,11bはそれぞれ、配管12bを介して塗料供給装置13に接続されている。
【0012】
図1に示されるように、入口部3の手前には、被塗装物検知手段29が設けられている。被塗装物検知手段29は、鉛直方向に延びるように設けられた2本の平行な鉛直棒29a,29bと、鉛直棒29a,29bのそれぞれの上端に接続されて水平方向に延びるように設けられた水平棒29cと、鉛直棒29a,29bのそれぞれに取り付けられて互いに対向するセンサー部29a1,29b1と、水平棒29cに取り付けられたセンサー部29c1とから構成されている。
【0013】
塗装ブース2の上方には、コンベア部15が設けられている。コンベア部15は、塗装ブース2の上方をその長手方向に沿って延びるように設けられたレール部材16と、被塗装物19を吊り下げながらレール部材16に沿って移動可能な吊り下げ部17と、吊り下げ部17を移動させるコンベア駆動部18と、コンベア駆動部18の稼働状態を電気信号として発信するパルス発振器20とから構成されている。塗装ブース2、入口部3、出口部5のそれぞれの上面には、レール部材16の下方に位置するように、吊り下げ部17が通過可能な溝部28が形成されている。
【0014】
図3に示されるように、塗装ブース2の下部にはホッパー21が設けられている。ホッパー21には、ダクト22の一端が接続されており、ダクト22の他端には、集塵機であるバグフィルター23が接続されている。ダクト22には、ダクト22を流通する空気の流速を測定する流速センサー32(流通速度検出手段)が設けられている。バグフィルター23の上部には、ダクト22を介して塗装ブース2内の空気を吸引する排気ファン24(排気手段)が設けられている。バグフィルター23の下部には、空気から分離された粉体塗料からリサイクル可能な粉体塗料を選別する塗料精選機25と、塗料精選機25によって選別されたリサイクル可能な粉体塗料を循環させる循環器26とが設けられている。循環器26は、循環ホース27を介して塗料供給装置13と連通している。
【0015】
図2に示されるように、粉体塗装装置1は、粉体塗装装置1の動作を制御する制御装置30を備えている。制御装置30には、扉駆動装置7及び8と、塗料供給装置13と、被塗装物検知手段29と、パルス発振器20と、流速センサー32とが電気的に接続されている。排気ファン24には、排気ファンの回転数を調整するインバーター31が電気的に接続されており、インバーター31は、制御装置30にも電気的に接続されている。
【0016】
次に、この実施の形態1に係る粉体塗装装置の動作を、図1〜3に基づいて説明する。
被塗装物19を吊り下げ部17に取り付け、コンベア駆動部18によって、レール部材16に沿って吊り下げ部17、すなわち被塗装物19を移動させる。被塗装物19が被塗装物検知手段29を通り抜ける際、センサー部29a1及び29b1が被塗装物19の鉛直方向の長さを検出すると共に、センサー部29c1が被塗装物19の水平方向の長さを検出し、これらの長さは電気信号として制御装置30へ送信される。さらに、パルス発振器20によって吊り下げ部17の移動速度、すなわち被塗装物19の移動速度に関する電気信号が制御装置30に送信されているので、制御装置30は、被塗装物19の移動速度に関する電気信号と、センサー部29a1,29b1,29c1が被塗装物19を検出している時間とに基づいて、被塗装物19の移動方向の長さを算出する。これにより、制御装置30は、被塗装物19の鉛直方向の長さと、水平方向の長さと、移動方向の長さ、すなわち、被塗装物19の大きさ及び形状を認識し記憶する。
【0017】
制御装置30は、被塗装物19の大きさに基づいて、扉部4a,4b及び6a,6bのうちのどの分割扉部を開くかを決定すると共に、開く分割扉部の開度を決定する。また、制御装置30は、被塗装物19の移動速度も認識しているので、適当なタイミングで、扉駆動装置7及び8を駆動させて、開くべき分割扉部を適当な開度で開く。これにより、入口部3及び出口部5の開口はそれぞれ、被塗装物19が塗装ブース2に出入りできる条件で、できるだけ小さな面積となる。尚、どの分割扉部がどのような開度で開いているかに基づいて、制御装置30は、入口部3及び出口部5の開口面積S(m)を算出し記憶する。
【0018】
塗装ブース2内に入った被塗装物19は、塗装ブース2内を移動する間に、塗装ガン10a,10b,11a,11bから粉体塗料が吹き付けられる。制御装置30は、被塗装物19の大きさ及び形状を認識しているので、各塗装ガンから吐出される粉体塗料の吐出量(合計でM(g/sec)とする)を算出して記憶し、この吐出量で各塗装ガンが粉体塗料を吐出するように、塗料供給装置13を駆動させる。被塗装物19の塗装が終了すると、被塗装物19は、出口部5の開口を介して塗装ブース2から出る。
【0019】
塗装ブース2内における被塗装物19の塗装の際、吐出された粉体塗料の全てが被塗装物19に付着するわけではなく、付着しなかった粉体塗料は、塗装ブース2内に浮遊することになる。そこで、排気ファン24によって塗装ブース2内の空気を吸引することにより、入口部3及び出口部5等の開口から空気が塗装ブース2内に流入するので、浮遊する粉体塗料が塗装ブース2から外部へ排出されないようになる。また、塗装ブース2内の空気が吸引されることにより、浮遊する粉体塗料が空気に同伴されて塗装ブース2から排出されるので、塗装ブース2内の粉塵濃度が低く抑えられ、粉塵爆発の危険を回避することができる。
【0020】
排気ファン24によって吸引された空気及び粉体塗料は、ホッパー21を介して塗装ブース2から排出され、ダクト22を流通してバグフィルター23内に流入する。このとき、ダクト22内を流通する空気の速度がある程度大きくないと、空気に同伴されている粉体塗料がダクト22に堆積してしまい、ダクト22の閉塞を引き起こすおそれがある。バグフィルター23では、空気と粉体塗料との分離が行われ、粉体塗料は、塗料精選機25によって、リサイクル可能な粉体塗料と廃棄する粉体塗料とに選別される。リサイクル可能な粉体塗料は、循環器26によって、循環ホース27を介して塗料供給装置13に送られ、再び塗装に使用される。
【0021】
排気ファン24によって吸引される空気の量を適切に制御しないと、塗装ブース2から粉体塗料が漏れてしまったり、塗装ブース2内の粉塵濃度が上昇して粉塵爆発が生じてしまったり、ダクト22が粉体塗料で閉塞してしまったりする可能性がある。そこで、次に、排気ファン24によって吸引される空気の量を制御する動作について説明する。
【0022】
排気ファン24の回転数の制御は、前述した3つの可能性を回避するために、入口部3及び出口部5等の開口から流入する空気の速度と、塗装ブース2内の粉塵濃度と、ダクト22を流通する空気の速度とに基づいて行われる。そこで、制御装置30には、入口部3及び出口部5の開口から流入する空気の下限流入速度V(=0.5m/sec)と、塗装ブース2内の粉塵爆発下限濃度C(=10g/m)と、ダクト22を流通する空気の下限流通速度V(16m/sec)とが記憶されていることとする。
【0023】
前述したように、被塗装物検知手段29が被塗装物19の大きさ及び形状を認識することにより、制御装置30は、入口部3及び出口部5の開口面積S(m)を算出し記憶している。制御装置30は、下記(1)式
(m/sec)=V(m/sec)×2S(m)・・・(1)
により、入口部3及び出口部5の開口から流入する空気が下限流入速度Vとなる空気の流量Qを算出する。
【0024】
また、前述したように、被塗装物検知手段29が被塗装物19の大きさ及び形状を認識することにより、制御装置30は、各塗装ガンから吐出される粉体塗料の吐出量M(g/sec)を記憶している。制御装置30は、下記(2)式
(m/sec)=M(g/sec)/C(g/m)・・・(2)
により、塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度Cとなる空気の流量Qを算出する。尚、吐出される粉体塗料のうち、少なくとも一部は被塗装物19に付着されることを考慮すれば、(2)式から算出される空気の流量Qは過剰であるが、粉塵爆発を回避するためには粉塵濃度を低下する必要があり、流量Qが過剰であることは粉塵爆発の回避に有利に働くので、(2)式を用いて流量Qを算出することにする。
【0025】
さらに、制御装置30は、下記(3)式により、ダクト22を流通する空気の速度が下限流通速度Vとなる流量Qを算出する。尚、S(m)は、ダクト22の断面積である。
(m/sec)=V(m/sec)×S(m)・・・(3)
【0026】
制御装置30は、Q〜Qのうち最も大きい流量を、排気ファン24によって吸引する流量Qとして決定する。流量Qと排気ファン24の回転数とは一対一の関係で決定できるものなので、流量Qを達成できるように、制御装置30は、インバーター31によって排気ファン24の回転数を調整する。
【0027】
排気ファン24の回転数を調整後、流速センサー32が、ダクト22を流通する空気の速度を測定し、その測定結果を、電気信号として制御装置30に伝送する。制御装置30は、流量と排気ファン24の回転数との一対一の関係に基づいて、調整された排気ファン24の回転数によって流量Qが達成されているかどうかを判定する。流量Qが達成されていないと判定した場合には、制御装置30は、インバーター31によって排気ファン24の回転数をさらに調整することにより、流量Qが達成されるようにする。例えば、流量Qを達成するために排気ファン24の回転数を調整したにもかかわらず、流速センサー32の検出値が流量Qに相当する流速値よりも小さい場合には、制御装置30は、インバーター31によって排気ファン24の回転数を徐々に上昇させて、流速センサー32の検出値が流量Qに相当する流速値となるように調整する。これにより、排気ファン24によって吸引される空気の流量の調整の精度が高まる。
【0028】
このように、塗装ブース2内に流入する空気の速度が下限流入速度V以上となり、かつ、塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度C以下となり、かつ、流速センサー32による検出値が下限流通速度V以上となるように、排気ファン24の回転数を制御することにより、排気ファン24によって吸引される空気の流量が最適になるので、排気ファン24の消費電力を最適化することができる。
【0029】
実施の形態1では、流速センサー32を、排気ファン24の回転数とダクト22を流通する空気の速度とのずれを調整するために用いているが、この形態に限定するものではない。前述した(3)式を用いてダクト22を流通する空気の量が下限流通速度V以上となる空気の流量Qを算出するのではなく、塗装ブース2内に流入する空気の速度が下限流入速度V以上となると共に塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度C以下となる条件で、制御装置30が流速センサー32の検出値に基づいて排気ファン24の回転数を、下限流通速度V以上の範囲内で徐々に低下するようにしてもよい。
【0030】
実施の形態1では、前述した(2)式に基づいて、塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度C以下となる空気の流量Qを算出したが、この形態に限定するものではない。塗装ブース2に、塗装ブース2内の粉塵濃度を検出する粉塵濃度センサーを設け、塗装ブース2内に流入する空気の速度が下限流入速度V以上となると共にダクト22を流通する空気の速度が下限流通速度V以上となる条件で、制御装置30が粉塵濃度センサーの検出値に基づいて排気ファン24の回転数を、粉塵爆発下限濃度C以下の範囲内で徐々に低下するようにしてもよい。
【0031】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る粉体塗装装置を図4に基づいて説明する。尚、図4において、図1〜3の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る粉体塗装装置は、実施の形態1に対して、バグフィルター23が塗装ブース2に直接連通されるようにしたものである。
【0032】
図4に示されるように、粉体塗装装置50において、バグフィルター23は、塗装ブース2の長手方向に垂直な方向に関して対向する両側面の一方の側面に接するように設けられ、当該側面に設けられた連通開口部41と、バグフィルター23に設けられた連通開口部42とが直接接続されるようにして、バグフィルター23と塗装ブース2とが直接連通されている。塗装ブース2内には、実施の形態1のようなホッパー21(図3参照)が設けられていない。その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0033】
被塗装物19が塗装ブース2内に入り、塗装ブース2内で塗装されて、塗装ブース2から出る動作については、実施の形態1と同じである。排気ファン24によって、塗装ブース2内の空気が吸引されてバグフィルター23に流入するが、塗装ブース2とバグフィルター23との間にダクトがないので、制御装置30は、塗装ブース2内に流入する空気の速度が下限流入速度V以上となると共に塗装ブース2内の粉塵濃度が粉塵爆発下限濃度C以下となるように、実施の形態1と同様の動作で、排気ファン24によって吸引する流量Qを決定し(流量Qは、流量Q及びQのうちの大きい方となる)、当該流量Qを達成できるように、制御装置30はインバーター31によって排気ファン24の回転数を調整する。このような動作により、バグフィルター23が塗装ブース2に直接連通されるようにした粉体塗装装置50においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0034】
実施の形態1及び2では、開く分割扉部の開度も調整するようにしていたが、分割扉部を開閉のみするようにしてもよい。すなわち、分割扉部は、全開か全閉かのいずれかの状態になるようにしてもよい。また、各扉部は、5つの分割扉部に分割されていたが、5つに限定するものではなく、分割する個数は適宜変更可能であり、各分割扉部の大きさも適宜変更可能である。さらに、扉4及び6のそれぞれの分割扉部の個数及び大きさが同じになっていたが、それぞれ異なるようにしてもよい。
【0035】
実施の形態1及び2では、塗装ガンが両側面に2つずつ、合計4つ設けられていたが、4つに限定するものではなく、塗装ブース2及び被塗装物19の大きさや形状に基づいて適宜変更可能であり、複数の塗装ガンをどのように配置するかも適宜変更可能である。また、実施の形態1及び2において、4つの塗装ガンは、塗装手段固定部材14に固定されていたが、この形態に限定するものではない。塗装ガンを、公知のレシプロケータに揺動可能に取り付けた形態や、公知の昇降装置に昇降可能に取り付けた形態であってもよい。
【0036】
実施の形態1及び2では、排気手段は排気ファン24であったが、この形態に限定するものではない。排気手段としては、塗装ブース2内から空気を吸引できるものであればどのようなものでもよく、例えばブロワ等であってもよい。
【0037】
実施の形態1及び2では、被塗装物19が塗装ブース2内に入る前に、被塗装物検知手段29によって被塗装物19の大きさ及び形状を認識し、これに基づいて、扉4及び6の開閉と、各塗装ガンから吐出される粉体塗料の吐出量の算出とを行っているが、この形態に限定するものではない。複数の種類の被塗装物の大きさ及び形状に見合う扉4及び6の開閉条件や粉体塗料の吐出量を予め登録しておき、塗装ブース2に入る被塗装物の種類が変わる際に、その被塗装物を認識するフラッグ等を、先頭に位置するその被塗装物の吊り下げ部17等に付しておき、このフラッグ等を認識する装置(被塗装物検知手段29の代わりに設けたもの、あるいは、被塗装物検知手段29がこの装置の役目を果たしてもよい)が、被塗装物の種類が変わったことを認識したら、新たな被塗装物に見合うように、扉4及び6の開閉条件や粉体塗料の吐出量を変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1,50 粉体塗装装置、2 塗装ブース、3 入口部、4,6 扉、4a1〜4a5,4b1〜4b5 分割扉部、5 出口部、10a,10b,11a,11b 塗装ガン(塗装手段)、19 被塗装物、22 ダクト、24 排気ファン(排気手段)、32 流速センサー(流通速度検出手段)、C 粉塵爆発下限濃度、M 吐出量、Q、Q,Q 流量(塗装ブース内から排出する空気の流量)、S 開口面積、V 下限流入速度、V 下限流通速度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口部及び出口部を有する塗装ブースと、
該塗装ブース内に搬入された被塗装物に粉体塗料を吹き付ける塗装手段と、
前記塗装ブース内の空気を排出させる排気手段と
を備え、
前記入口部及び前記出口部にはそれぞれ、開閉可能な扉が設けられており、
前記入口部及び前記出口部に設けられた前記扉はそれぞれ、鉛直方向に複数の分割扉部に分割されてそれぞれが独立に開閉可能となっており、前記被塗装物の大きさに基づいて、各分割扉部の開閉が制御され、
前記塗装ブース内に流入する空気の下限流入速度と、前記塗装ブース内の粉塵爆発下限濃度とが予め設定されており、前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となると共に前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される粉体塗装装置。
【請求項2】
各分割扉部の開閉状態から算出される前記入口部及び前記出口部の開口面積と、
前記下限流入速度と
から、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項1に記載の粉体塗装装置。
【請求項3】
前記塗装手段から吐出される前記粉体塗料の吐出量と、
前記粉塵爆発下限濃度と
から、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項1または2に記載の粉体塗装装置。
【請求項4】
前記塗装ブース内の粉塵濃度を検出する粉塵濃度検出手段を備え、
前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となる条件で、前記粉塵濃度検出手段による検出値が前記粉塵爆発下限濃度以下となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項1または2に記載の粉体塗装装置。
【請求項5】
前記塗装ブースと前記排気手段とはダクトを介して連通されており、該ダクトを流入する空気の下限流通速度が予め設定されており、
前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となり、かつ、前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となり、かつ、前記ダクトを流通する空気の速度が前記下限流通速度以上となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉体塗装装置。
【請求項6】
前記ダクトの断面積と、
前記下限流通速度と
から、前記塗装ブース内から排出する空気の流量を算出し、この流量を達成するように前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項5に記載の粉体塗装装置。
【請求項7】
前記ダクトには流通速度検出手段が設けられ、
前記塗装ブース内に流入する空気の速度が前記下限流入速度以上となると共に前記塗装ブース内の粉塵濃度が前記粉塵爆発下限濃度以下となる条件で、前記流通速度検出手段による検出値が前記下限流通速度以上となるように、前記排気手段によって吸引する空気の流量が制御される、請求項5に記載の粉体塗装装置。
【請求項8】
前記ダクトには流通速度検出手段が設けられ、
該流通速度検出手段による検出値に基づいて、前記排気手段によって吸引する空気の流量をさらに調整する、請求項5または6に記載の粉体塗装装置。
【請求項9】
開くように制御された分割扉部は、前記被塗装物の大きさに基づいて、その開度も制御される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉体塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−156488(P2011−156488A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21018(P2010−21018)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】