説明

粒体搬送容器

【課題】収容量を所定量確保でき、粒体収容時の重心が低重心である粒体搬送容器を提供する。
【解決手段】粒体収容部10は、底収容部102と、底収容部102の上方に連結されて設けた可撓性シート材で構成された袋状収容部103と、これらを支持する枠体101とで構成され、底収容部102は、下方に連通する開口部104を有し、開口部104下方には収納粒体を排出する排出機構11が設けられた粒体搬送容器1であり、底収容部底面10aは、前記開口部104に向けて漏斗状に成形されるとともに、底収容部102は枠体101に対し弾性部材12を介し支持されていて、底収容部102を振動させる振動手段13が設けてある粒体搬送容器による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場で収穫した穀類等の粒体を乾燥機などの他の処理手段まで搬送する粒体搬送容器に関するもので、搬送後、容器内の穀類等の粒体を排出する排出機能を有した粒体搬送容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の穀類等の粒体を搬送する粒体搬送容器の従来技術として、特開2005−29214号公報(従来技術1)の「穀粒ホッパ」が公開されている。また、実登3126233号公報(従来技術2)の「穀粒運搬車における穀粒袋の残留穀粒の排出装置」が公開されている。これらは、いずれも可撓性部材で構成された容器を内に変形させ残留穀粒体を排出部に移動させようとするものである。
【特許文献1】特開2005−29214号公報(従来技術1)
【特許文献2】実登3126233号公報(従来技術2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の穀物などの粒体搬送容器は、収容された粒体を排出するための粒体排出部を容器底部に設け、収容された粒体が粒体排出部に自然流動するように底部側に傾斜部を設けていた。このため、トラック荷台スペース内で容器の所定の容量を確保するためには、この傾斜部により発生する容器外側の空間スペース分を容器高さを高くすることで確保することになる。
【0004】
粒体搬送容器は、通常トラックやトレーラーに積み込まれ搬送されるが、このとき粒体搬送容器の高さが高いと重心も高くなり、不整地などの搬送途中における転倒事故の危険を伴うことになる。このためできるかぎり重心の低い粒体搬送容器が望まれていた。また、乾燥機などの置かれている建物の入口の高さによっては粒体搬送容器の上部が干渉し乾燥機が設置されている内部まで搬送できない問題が発生するため、高さの低い粒体搬送容器が望まれていた。
【0005】
従来技術1の「穀粒ホッパ」は、可撓性からなる略逆四角錐形状の収容容器の外側外周にロープを巻き付けて機体中心側へ絞り込み、収容容器内壁に穀粒体の安息角以上の傾斜面を形成し残留穀粒体を排出させるもので、ロープの絞り込み前の容器の下方部の形状は逆四角錐状に形成されていて、容量を増やすために斜面角度を緩くするとロープの絞り込み力を大きくする必要があり、可撓製の収容容器の強度やロープの太さ等の面から、実際にはある程度の傾斜が必要となり、収容容器下方部の空間部が発生する。
【0006】
従来技術2の「穀粒運搬車における穀粒袋の残留穀粒の排出装置」は、合成樹脂材のシート・布地等により成形せる穀粒袋の内面側を、ゴム紐やコイルスプリング等の伸縮材により内側に引っ張り込み自然流動しないで残留する穀粒体を排出口へ移動させる構成であるが、収容容器下方部にある程度の傾斜面がないと、残留穀粒体の量が多くなり伸縮材の引っ張り力を大きくする必要があり、反面、引っ張り力を大きくすると穀粒袋内に穀粒体を収容した時外側に膨らまない場合があり、実際にはある程度の傾斜が必要となる。このため、収容容器下方部に空間部が発生し容量を確保するためには、上方の寸法を高くすることになり、重心が高くなるなどの問題がある。
【0007】
このため本発明の目的は、収容量を所定量確保でき、粒体収容時の重心が低重心で、高さの低い粒体搬送容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、粒体収容部は、底収容部と、該底収容部の上方に連結されて一体に設けた可撓性シート材で構成された袋状収容部と、これらを支持する平面視略矩形状を呈する枠体とで構成され、前記底収容部は、下方に連通する開口部を有し、該開口部下方には収納粒体を排出する排出機構が設けられた粒体搬送容器において、前記底収容部底面は、底収容部底面内に設けた前記開口部に向けて開口部側が粒体収容部外側より低い傾斜を有して漏斗状に成形されるとともに、前記底収容部は前記枠体に対し弾性部材を介し支持されていて、収容された粒体の排出時に底収容部を振動させる振動手段が設けてあることを特徴とする粒体搬送容器を提案する。
【0009】
また、粒体収容部に収容された粒体の量が一定量以下になると底収容部の振動手段が作動可能となることを特徴とした0008欄記載の粒体搬送容器を提案する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、底収容部底面は、底収容部底面内に設けた前記開口部に向けて開口部側が粒体収容部外側より低い傾斜を有して漏斗状に成形されるとともに、底収容部は枠体に対し弾性部材を介し支持されていて、粒体収容部内に収容された粒体の排出時に底収容部を振動する振動手段が設けてあることで、従来のように粒体収容部の下方部に大きな傾斜面を設ける必要が無く、僅かの傾斜の底面を有する底収容部を振動させることで排出部である底面開口部に粒体を移動させ排出可能となり、従来に比較して粒体収容部下方の空間部が少なくなり有効にスペースを利用できるため、同じ収容量であれば高さ寸法をより低くすることができるとともに重心を低くすることができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、粒体収容部に収容された粒体の排出時に、粒体収容部に収容された粒体の量が一定量以下になると底収容部の振動手段が作動可能であることにより、粒体収容部に収容された粒体が少なくなった状態で底収容部を振動させるため、振動させるための動力が少なくてよく、大きい容量のモータを必要としないとともに、粒体が排出口に自然流動している時の無駄な振動を行わないため、無駄な動力を必要としない粒体搬送容器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の粒体搬送容器の排出ホース部を装着した状態の断面側面図、図2は本発明の粒体搬送容器の正面視の断面図、図3は本発明の粒体搬送容器をトラックに積載した状態の側面図、図4は従来の粒体搬送容器をトラックに積載した状態の側面図を示したものである。
【0013】
図4は従来の穀類などの粒体搬送容器の側面図を示したものである。トラックなどの運搬車の荷台に搭載されて使用されるため平面視略矩形を呈し、粒体搬送容器1bの可撓性シート材などで形成された粒体収容部10b下方略中央部には収容した粒体を排出するための排出機構11bが設けられていて、収容された粒体の排出時に粒体が排出機構部11bに自然流動するように粒体収容部10bの底面は排出機構部11bに向け大きく傾斜した漏斗状態となっている。このため漏斗状となった粒体収容部10bの底部分の外周に大きな空間部Fが形成され、所定の容量を確保しようとすると空間部の容量が無駄になりトラックの荷台寸法が決まっているため粒体収容部10bの高さを高くすることになる。このため粒体収容時の重心も高くなり、トラックなどの運搬車に積載し移動する場合に転倒事故等の危険がある。
【0014】
図1乃至図3において本発明の粒体搬送容器の説明をする。本発明の粒体搬送容器1は、従来の粒体収容部の底部の漏斗状となった外周部の空間を最小限にして容量の確保をするとともに粒体収容時の重心を下げた構成となっている。平面視略矩形の粒体収容部10は、下方の底収容部102と上方の袋状収容部103とこれらを支える枠体101で構成され、底収容部102には下方に連通する開口部104が設けられていて、該開口部104下方には収容された粒体を排出する排出機構11が設けられ構成されている。
【0015】
底収容部102は開口部104に向けた僅かな傾斜を有した漏斗状となっていて、鉄板等の金属材で構成されている。また、これの上方に連結して一体に設けた袋状収容部103は、可撓性シート材等で形成され、上端部を平面視略矩形に構成された枠体101に四方を支持され、下方端を底収容部102上端部に連結して粒体収容部10を構成している。
【0016】
底収容部102の開口部104下方には排出機構11が設けてあり、開口部104から落下させた穀物などの粒体を排出する。排出機構11の入口部には、水平方向にスライドするシャッター114が設けてあり、開口部104の開き量を調節し粒体収容部10からの粒体供給量を調整する。
【0017】
排出機構11には、供給された粒体を下方で受け止める接続ケース112が設けてあり、これに接続して粒体を離れた場所に搬送する排出ホース部2が接続可能となっていて、接続された排出ホース部2を駆動する排出用モータ110が接続ケース112に固着して備えられている。接続ケース112は枠体101に対しシャッター114下方部の回動部113により水平方向に回動自在となっていて、接続された排出ホース部2の水平方向が変更可能となっている。
【0018】
排出ホース部2が接続ケース112に挿入されると、その先端部が排出用モータ110の出力軸に設けたクラッチ部111と係合するとともに、排出ホース部2に設けたロック金具22が接続ケース112側と係合し抜け止めされ、排出用モータ110により排出ホース部2が駆動可能となる。
【0019】
排出ホース部2は、可撓性の搬送ホース20内に棒状材を螺旋に成形したコイル21が挿入されていて、コイル21を回転させることで粒体を搬送させるもので、搬送ホース20をある程度湾曲させて排出作業が可能である。排出ホース部2の接続ケース112側には粒体の受け皿が設けられ、他方端部には排出用のホース出口ケース23が設けてある。トラック等で搬送移動する場合は、排出ホース部2は接続ケース112部から外して使用する。
【0020】
底収容部102は、枠体101に対し弾性部材12を介して支持されていて、枠体101に対し可動できるように保持されている。底収容部102の下方外面には振動手段13が設けてあり、振動手段13は底収容部102に固着した取り付けベースに振動用モータ130を取り付け、振動用モータ130の出力軸には外周が出力軸芯より偏心した偏心オモリ131が固着されていて、振動用モータ130を回転させることにより振動が発生するように構成されている。このため、振動手段13を振動させることで底収容部102全体を振動させることができる。振動手段13は、既成品のバイブレータを使用しても可能である。
【0021】
前記のように底収容部102の底面10aは開口部104に向けた僅かな傾斜を有した漏斗状となっていて、振動手段13により底収容部102を振動させることにより、開口部104に自然流動できない粒体を流動させることができる。このため、粒体を自然流動させるための底収容部102の傾斜を大きくする必要がなく、従来のように漏斗状となった粒体収容部10の底部分の外周に大きな空間部が形成されることがないため、粒体収容時の重心を下げることができるとともに、容量が同じであれば粒体収容部10の高さを下げることができる。本例の弾性部材12はゴム部材を使用しているがコイルバネや板バネ等の弾性体であってもよい。
【0022】
粒体収容部10内の底収容部102には、センサースイッチ3が設けてあり、粒体収容部10内の粒体の量を感知するためのスイッチで、スイッチ面が斜め上方を向いていて粒体がスイッチ面を押しているか否かにより感知するものである。このセンサースイッチ3の信号により図示していない制御部は粒体収容部10の粒体の量を感知可能で、収納された粒体の量が一定量以下になると底収容部102の揺動が行われるように制御を構成できる。このような制御を行うことで粒体が自然流動で排出機構11へ供給されている間は、底収容部102の無駄な振動を行わず、自然流動が停滞する直前に振動手段13を自動的に駆動させることができる。
【0023】
図3は本発明の粒体搬送容器1を移動手段であるトラックAに積載した状態を示したもので、図4に示した従来の粒体搬送容器に比較して、粒体収容部10,10bの底部分の傾斜した空間部が有効に利用されて高さ寸法も少なくでき、重心が低くできるためトラックAでの走行時の安定性が改善され転倒事故などの危険が改善される。
【0024】
収容された粒体の排出作業は、粒体搬送容器1の電源コードを排出施設の電源に接続し、排出機構11の接続ケース112に排出ホース部2を差し込み、ロック金具22により接続ケース112からの抜け止めを行うと、排出ホース部2先端が排出用モータ110のクラッチ部111と係合し排出ホース部2が駆動可能となる。排出ホース部2の他方先端のホース出口ケース23を排出場所に設置し、図示していない排出スイッチを押すと排出ホース部2の搬送ホース20内のコイル21が排出用モータ110により回転される。次に底収容部102の開口部104の開閉量を調節するシャッター114を開き粒体を接続ケース112側に落下供給すると、回転するコイル21により搬送ホース20内を粒体が搬送されホース出口ケース23より排出される。排出が進行し粒体収容部10内の粒体が少なくなると粒体収容部10内のセンサースイッチ3が感知し、制御部は自動的に振動手段13の振動用モータ130を駆動させて底収容部102を振動させる。粒体収容部10内の底面10aの傾斜が緩いため自然流動できなくなった粒体を底収容部102を振動させることで開口部104に誘導し排出させる。排出終了後は、排出ホース部2を接続ケース112より外し次の搬送作業を行う。
【0025】
本発明の粒体搬送容器は、米や麦等の粒体を圃場での刈取り作業等によりトラック等の搬送車に積んだ粒体搬送容器内に収容し、乾燥機等の施設に搬送するための搬送容器や、その他粒体を移送して排出するための搬送容器に利用するとよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の粒体搬送容器の排出ホース部を装着した状態の断面側面図
【図2】本発明の粒体搬送容器の正面視の断面図
【図3】本発明の粒体搬送容器をトラックに積載した状態の側面図
【図4】従来の粒体搬送容器をトラックに積載した状態の側面図
【符号の説明】
【0027】
1 粒体搬送容器
10 粒体収容部
101 枠体
102 底収容部
103 袋状収容部
104 開口部
11 排出機構
110 排出用モータ
111 クラッチ部
112 接続ケース
113 回動部
114 シャッター
12 弾性部材
13 振動手段
130 振動用モータ
131 偏心オモリ
2 排出ホース部
20 搬送ホース
21 コイル
22 ロック金具
23 ホース出口ケース
3 センサースイッチ
A トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体収容部は、底収容部と、該底収容部の上方に連結されて一体に設けた可撓性シート材で構成された袋状収容部と、これらを支持する平面視略矩形状を呈する枠体とで構成され、前記底収容部は、下方に連通する開口部を有し、該開口部下方には収納粒体を排出する排出機構が設けられた粒体搬送容器において、前記底収容部底面は、底収容部底面内に設けた前記開口部に向けて開口部側が粒体収容部外側より低い傾斜を有して漏斗状に成形されるとともに、前記底収容部は前記枠体に対し弾性部材を介し支持されていて、収容された粒体の排出時に底収容部を振動させる振動手段が設けてあることを特徴とする粒体搬送容器。
【請求項2】
粒体収容部に収容された粒体の量が一定量以下になると底収容部の振動手段が作動可能となることを特徴とした請求項1記載の粒体搬送容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−102051(P2009−102051A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277431(P2007−277431)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】