説明

粒子の製造方法、トナーの製造方法、粒子、トナー、現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、画像形成方法、及び、粒子製造装置

【課題】PGSS法によって造粒すると、得られる粒子の粒径が数百μm〜数mmと大きくなるばかりでなく、合着や繊維状物により、粒度分布が広く不均一となり、例えば、電子写真用トナーのような挟分布を必要とする用途においては、分級処理を必要とし、歩留まりが悪くなるという問題があった。
【解決手段】本発明の製造方法によると、圧縮性流体と、圧可塑性材料とを接触させて溶融体を作製し、この溶融体を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状態を経て粒状化させる。これにより、微小な粒状の溶融体から粒子を形成できるので、狭い粒径範囲に制御された粒子を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮性流体を用いた粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等の樹脂をそれぞれの物性に基づいて加工することにより各種の粒子状の製品が製造されている。例えば、画像形成装置に用いられるトナーは、熱可塑性樹脂を含む原料を、この熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上に加熱し可塑化させ、或は、融点以上に加熱し溶融させて、粒子状に加工することにより製造される。
【0003】
より具体的には、熱可塑性樹脂を含む原料を溶融して混練させた混練物を冷却して固化させた後、粉砕することにより粒子状のトナーを製造することが知られている(特許文献1参照)。ところが、粉砕によりトナーを製造する場合、粒径を制御することが困難であり、微粉の除去が不充分であると、帯電性、定着性、耐熱保存性(経時変化)等のトナーの基本特性が低下する問題があった。
【0004】
トナーの粒子形状を制御するために、熱可塑性樹脂を含む原料を混練して粉砕させたものを親水性無機微粒子の存在下で水系溶媒に分散させ、これを加熱することによって溶媒を除去して粒子状のトナーを製造することが知られている(特許文献2参照)。ところが、この方法によると、溶媒を用いるため、この溶媒を乾燥させる工程を必要としたり、廃液を発生させたりする問題があった。また、混練や粉砕の工程では高温、且つ高剪断で熱可塑性樹脂を加工することから、変色を生じさせたり、樹脂が劣化して上記の基本特性を低下させたりする問題があった。
【0005】
近年、熱可塑性樹脂を溶融させるとともに、この樹脂に圧縮性流体を接触させた後、スタティックミキサーにより混合して得られた混合物を減圧膨張させてトナーを製造する方法(PGSS(Particles from Gas Saturated Solutions)法)が提案された(特許文献3参照)。この方法によると圧縮性流体を用いることにより、熱可塑性樹脂を粉砕させる必要がないばかりでなく、溶媒を用いずにトナーを製造することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この提案の方法(PGSS法)によると、得られる粒子の粒径が数百μm〜数mmと大きくなるばかりでなく、合着や繊維状物により、粒度分布が広く不均一となり、例えば、電子写真用トナーのような挟分布を必要とする用途においては、分級処理を必要とし、歩留まりが悪くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、圧縮性流体と、圧可塑性材料とを接触させて、前記圧可塑性材料の溶融体を作製する溶融工程と、前記溶融体を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状態を経て粒状化させる造粒工程と、を有することを特徴とする粒子の製造方法である。
【0008】
請求項2に係る発明は、圧縮性流体と、圧可塑性材料を含むトナー材料とを接触させて、前記圧可塑性材料を溶融体として含むトナー材料を作製する溶融工程と、前記圧可塑性材料を溶融体として含むトナー材料を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状体を経て粒状化させる造粒工程と、を有することを特徴とするトナーの製造方法である。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記圧可塑性材料が、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載のトナーの製造方法である。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記圧縮性流体が、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のトナーの製造方法である。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1に記載の粒子の製造方法により製造されたことを特徴とする粒子である。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項2乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法により製造されたことを特徴とするトナーである。
【0013】
請求項7に係る発明は、有機溶媒を実質的に含有しないことを特徴とする請求項6に記載のトナーである。
【0014】
請求項8に係る発明は、請求項6又は7に記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤である。
【0015】
請求項9に係る発明は、該静電潜像担持体上に請求項6又は7に記載のトナーを用いて静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段とを有し、画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジである。
【0016】
請求項10に係る発明は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を請求項6又は7に記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程と、を有することを特徴とする画像形成方法である。
【0017】
請求項11に係る発明は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を請求項6又は7に記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0018】
請求項12に係る発明は、圧縮性流体と圧可塑性材料とを接触させて作製された前記圧可塑性材料の溶融体を吐出するための吐出手段と、前記吐出手段から吐出した前記溶融体が粒状化するための空間を有する粒状体形成部と、を備え、前記吐出手段は、前記溶融体を貯留するための貯留部、該貯留部を構成する壁の一部に形成された1以上の貫通孔、及び該貫通孔に振動を付与するために前記貯留部に接するように配置された振動手段、を少なくとも有し、前記粒状体形成部は、前記貫通孔から吐出した前記溶融体が、柱状から括れ状態を経て粒状化するように前記空間と前記貯留部内の圧力差を制御するための圧力制御手段をさらに備える、ことを特徴とする粒子製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法によると、圧縮性流体と、圧可塑性材料とを接触させて溶融体を作製し、この溶融体を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状態を経て粒状化させる。これにより、微小な粒状の溶融体から粒子を形成できるので、狭い粒径範囲に制御された粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ポリスチレンのガラス転移温度と、圧縮性流体である二酸化炭素の存在下での圧力の関係を示す図である。
【図2】温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図である。
【図3】本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。
【図4】本実施形態の粒子の製造方法に用いられる粒子製造装置の一例を示す模式図である。
【図5】吐出装置及び粒状体形成部の一例を示す模式図である。
【図6】液滴化現象を説明するための説明図である。
【図7】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略説明図である。
【図8】本実施形態の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至8を用いて、本発明の実施形態の一例について説明する。
【0022】
<<<粒子の製造方法>>>
本実施形態の粒子の製造方法は、少なくとも、溶融工程と造粒工程とを含み、さらに、必要に応じて適宜選択されるその他の工程を含む。本実施形態の製造方法で製造される粒子としては、その形状、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択され、例えば、トナー粒子等が挙げられる。
【0023】
<<原料>>
先ず、本実施形態の粒子の製造方法で製造される粒子の原料となる圧可塑性材料等の材料について説明する。
【0024】
<圧可塑性材料>
本実施形態において、圧可塑性材料とは、圧力を加えることによりガラス転移温度(Tg)が低下する性質を有する材料であり、より具体的には、熱を加えなくても圧力を加えることにより可塑化する材料を意味する。圧可塑性材料は、例えば、圧縮性流体と接触させることによって圧力を加えると、この圧可塑性材料の大気圧でのガラス転移温度より低い温度で可塑化される。
【0025】
圧可塑性材料について図を用いてより詳細に説明する。図1は、ポリスチレンのガラス転移温度(縦軸)と、圧縮性流体である二酸化炭素の存在下での圧力(横軸)の関係を示す図である。図1に示すように、ポリスチレンのガラス転移温度と、圧力とは、相関関係(例えば、線形)があり、その傾きは負である。他の材料についても同様にしてガラス転移温度と圧力との関係を示すグラフを作成することができ、この傾きが負である場合に、この材料が圧可塑性材料と言うことができる。この傾きは、圧可塑性材料の種類、組成、分子量などによって異なる。例えば、圧可塑性材料がポリスチレン樹脂の場合、この傾きは−9℃/MPaであり、スチレン−アクリル樹脂の場合は−9℃/MPa、非晶質性ポリエステル樹脂の場合は−8℃/MPa、結晶性ポリエステルの場合−2℃/MPa、ポリオール樹脂の場合は−8℃/MPa、ポリウレタン樹脂の場合は−7℃/MPa、ポリアリレート樹脂の場合は−11℃/MPa、ポリカーボネート樹脂の場合、−10℃/MPaであった。この傾きとしては、−1℃/MPa以下であることが好ましく、−5℃/MPa以下であることがより好ましく、この傾きの下限に制限はない。また、この傾きが−1℃/MPaより大きい場合には、圧力を付加しても圧可塑性材料の可塑化が不充分となり、低粘度化できないため、造粒できないといった不具合が発生することがある。
【0026】
このような圧可塑性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオール樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ロジン、変性ロジン、テルベン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレン、ポリプロピレン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ビニル樹脂が好ましい。
【0027】
上記のポリオール樹脂としては、エポキシ骨格を有するポリエーテルポリオール樹脂が用いられ、(i)エポキシ樹脂、(ii)2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物もしくはそのグリシジルエーテル、(iii)エポキシ基と反応する活性水素を有する化合物を反応させ得られるポリオール樹脂等が好適に用いられる。上記のポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、変性ポリエステル、未変性ポリエステル、非晶質性ポリエステル、結晶性ポリエステル、などが挙げられる。
【0028】
上記のビニル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、ブタジエン等の単量体の重量体、又は、これらの単量体の2種類以上からなる共重合体、或いはそれらの混合物などが挙げられる。上記のウレタン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
本実施形態によって製造される粒子がトナーである場合、上記の圧可塑性材料の他、着色剤、圧縮性流体中で機能する界面活性剤、分散剤、離型剤、帯電制御剤、圧可塑性材料でない結晶性ポリエステル等のトナー材料用いても良い。以下、各種のトナー材料について順に説明する。
【0030】
<着色剤>
着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記の染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.SOLVENT YELLOW(6,9,17,31,35,100,102,103,105)、C.I.SOLVENT ORANGE(2,7,13,14,66)、C.I.SOLVENT RED(5,16,17,18,19,22,23,143.145,146,149,150,151,157,158)、C.I.SOLVENT VIOLET(31,32,33,37)、C.I.SOLVENT BLUE(22,63,78,83〜86,191,194,195,104)、C.I.SOLVENT GREEN(24,25)、C.I.SOLVENT BROWN(3,9)などが挙げられる。また、市販の染料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、保土ケ谷化学社製の愛染SOT染料Yellow−1,3,4、Orange−1,2,3、Scarlet−1、Red−1,2,3、Brown−2、Blue−1,2、Violet−1、Green−1,2,3、Black−1,4,6,8;BASF社製のSudan染料Yellow−146,150、Orange−220、Red−290,380,460、Blue−670;三菱化成社製のダイアレジンYellow−3G,F,H2G,HG,HC,HL、Orange−HS,G、Red−GG,S,HS,A,K,H5B、Violet−D、Blue−J,G,N,K,P,H3G,4G、Green−C、Brown−A;オリエント化学工業社製のオイルカラーYEllow−3G,GG−S,#105、Orange−PS,PR,#201、Scarlet−#308,Red−5B,Brown−GR,#416、Green−BG、#502、Blue−BOS、IIN、Black−HBB,#803,EB,EX;住友化学工業社製のスミプラストブルーGP,OR、レッドFB,3B、イエローFL7G,GC;日本化薬社製のカヤロンポリエステルブラックEX−SF300、カヤセットRed−B、ブルーA−2R、等を使用することができる。
【0032】
これらの着色剤の添加量は、特に制限はなく、着色度に応じて適宜選択することができるが、圧可塑性材料100質量部に対し1質量部〜50質量部が好ましい。
【0033】
<界面活性剤>
上記の界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、PEG系界面活性剤等が挙げられる。これらはパーフルオロアルキル基(Rf基)やポリジメチルシロキサン基(PDMS基)、ポリエチレングリコール基(PEG基)などを主鎖あるいは側鎖に含有する化合物であり、オリゴマーや高分子の形態をとることもある。
【0034】
具体的には、Rf基含有ビニルモノマーやPDMS基含有ビニルモノマー、PEG基含有ビニルモノマー等を重合したホモポリマー、あるいは上記のビニルモノマーと他のビニルモノマーとの共重合体などを挙げることができる。ビニルモノマーとしては、スチレンモノマーやアクリレートモノマー、メタクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0035】
また、Rf基やPDMS基、PEG基がオリゴマーもしくはポリマーの主鎖となり、側鎖にCOOH基やOH基、アミノ基、ピロリドン骨格などが導入されたものなどが例としてあげられるが、これらだけに限られるものではない。上記のビニルモノマーに関しては多数市販されているので、目的に応じて適宜使用することができる。
【0036】
ここで、上記のフッ素系界面活性剤の一例を(1)式に示す。
【0037】
【化1】

【0038】
但し、Rとしては、水素原子、メチル基の他にも炭素数が2〜4の低級アルキル基(例えばエチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基など)が用いられる。Rとしては、メチレン基、エチレン基の他にも置換又は無置換のアルキレン基(例えば、プロピレン基、イソプレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、ブチレン基、2−ヒドロキシブチレン基など)が用いられる。Rfとしては、炭素数が7〜10のパーフルオロアルキル基の他にも、炭素数1〜6や炭素数11〜20であるパーフルオロアルキル基等を用いることができる。これらのなかでも、Rが水素原子もしくはメチル基であり、Rがメチレン基もしくはエチレン基であり、Rfの炭素数が7〜10であるパーフルオロアルキル基であるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0039】
これらのフッ素基含有界面活性剤の製造方法としては、HCFC225などのフッ素系溶媒中でフッ素系ビニルモノマーを重合することによって合成される。また、上記のHCFC225の代わりに、超臨界二酸化炭素を反応溶媒として使用して合成した場合には、環境負荷を低減できる点でさらに望ましい。より詳細には、フッ素樹脂ハンドブック(里川孝臣編集 日刊工業新聞社発行)のP.730〜P.732にかけて記載がされている方法を用いることができる。
【0040】
<分散剤>
上記の分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機微粒子、無機微粒子などを挙げることができる。これらの中でも、アクリル変性された無機微粒子、シリコーン変性された無機微粒子、フッ素変性された無機微粒子、含フッ素系有機微粒子、シリコーン系有機微粒子等が好ましく、アクリル変性された無機微粒子がより好ましい。これらの分散剤は、圧縮性流体に溶融するものであることが好ましい。
【0041】
上記の有機微粒子としては、例えば、超臨界流体中で不溶なアクリル系微粒子のシリコーン変性体、フッ素変性体を挙げることができる。上記の無機微粒子としては、例えば、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化チタン、ベントナイト、アルミナ等の無機酸化物が挙げられる。これらの中でも、シリカが好ましい。
【0042】
上記のアクリル変性された無機微粒子としては、例えば、無機微粒子表面に存在する残OH基を、フッ素原子を含有するシランカップリング剤などで、表面を改質したものを挙げることができる。次の反応式は、3−(Trimethoxysilyl)propyl methacrylateを用いて、シリカの表面改質する場合の例を示す。尚、目的が同じであれば、この反応式による方法を用いずに他の方法によって表面改質を行っても良い。
【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
これらの方法で得られるアクリル変性された無機微粒子は、シリカ(Si)側で超臨界二酸化炭素側への親和性が高く、アクリレート側でトナー組成物に対する親和性が高くなる。
次に、フッ素原子を含有するシランカップリング剤の具体例を以下に示す。
【0046】
【化4】

【0047】
これらの分散剤のトナー組成物中における含有量は、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.2質量%〜20質量%がより好ましい。また、分散剤は、単独で使用するのが好ましいが、トナー粒径の制御やトナー帯電性能を考えて他の界面活性剤を併用してもよい。
【0048】
<離型剤>
上記の離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類等が好適に挙げられる。上記のワックス類としては、例えば、低分子量ポリオレフィンワックス、合成炭化水素系ワックス、天然ワックス類、石油ワックス類、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸アミド、これらの各種変性ワックスなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記の低分子量ポリオレフィンワックスとしては、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス等が挙げられる。上記の合成炭化水素ワックスとしては、例えば、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。上記の天然ワックス類としては、例えば、蜜ろう、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等が挙げられる。上記の石油ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。上記の高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられる。
【0050】
これらの離型剤の融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜120℃がより好ましく、60℃〜90℃が特に好ましい。この融点が、40℃未満であると、耐熱保存性に悪影響を与えることがあり、160℃を超えると、低温での定着時にコールドオフセット(熱ローラ定着方式において、トナーと用紙との界面付近が充分溶かされない場合、定着ローラとの接着力や静電吸着力により、トナー画像の一部が用紙から取り去られること。低温オフセットとも言う。)を起こし易いことがある他、定着機への紙の巻き付きなどが発生することがある。
【0051】
これらの離型剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記の圧可塑性材料100質量部に対し1質量部〜20質量部が好ましく、3質量部〜15質量部がより好ましい。
【0052】
<帯電制御剤>
上記の帯電制御剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、有色材料を用いると色調が変化することがあるため、無色乃至白色に近い材料が好ましい。このような帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体又はその化合物、タングステンの単体又はその化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸の金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。これらの中でも、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。金属塩に用いられる金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、ストロンチウム、ホウ素、ケイ素、ニッケル、鉄、クロム、ジルコニウム、などが挙げられる。
【0053】
上記の帯電制御剤は、市販品を使用しても良い。この市販品としては、例えば、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415、サリチル酸金属錯体のTN−105(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物、などが挙げられる。
【0054】
これらの帯電制御剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上記の圧可塑性材料100質量部に対し0.5質量部〜5質量部が好ましく、1質量部〜3質量部がより好ましい。添加量が、0.5質量部未満であると、トナーの帯電特性の悪化が見られることがあり、5質量部を超えると、トナーの帯電性が大きくなりすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させて、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や画像濃度の低下を招くことがある。
【0055】
<結晶性ポリエステル>
上記の結晶性ポリエステルとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができるが、低温定着性に優れるという点で、分子量分布がシャープであり、且つ、低分子量のものが好ましく、o−ジクロロベンゼンの可溶分のGPCによる分子量Mの分布で、横軸をlog(M)、縦軸を重量%で表した分子量分布図のピーク位置が3.5〜4.0の範囲にあり、ピークの半値幅が1.5以下であり、重量平均分子量(Mw)で1,000〜30,000、数平均分子量(Mn)で500〜6,000、Mw/Mnが2〜8であるものがより好ましい。
【0056】
結晶性ポリエステルの融解温度及びF1/2温度としては、耐熱保存性が悪化しない範囲で低いことが好ましく、DSC吸熱ピーク温度が50℃〜150℃であることがより好ましい。ここで、F1/2温度は、高架式フローテスターCFT−500(島津製作所製)を用い、ダイス径1mm、加圧10kg/cm、昇温速度3℃/minの条件下で1cmの試料を溶融流出させた時の流出開始点から流出終了点までの1/2に相当する温度により測定される。融解温度及びF1/2温度が50℃未満であると、耐熱保存性が悪化し、現像装置内部の温度でブロッキングが発生しやすくなり、150℃を超えると、定着下限温度が高くなるため低温定着性が得られなくなる。
【0057】
この結晶性ポリエステルの酸価としては、紙と樹脂との親和性及び低温定着性の点で、5mgKOH/g以上が好ましく、10mgKOH/g以上がより好ましい。また、この結晶性ポリエステルの酸価としては、ホットオフセット性の点で、45mgKOH/g以下が好ましい。この結晶性ポリエステルの水酸基価としては、低温定着性及び帯電特性の点で、0mgKOH/g〜50mgKOH/gが好ましく、5mgKOH/g〜50mgKOH/gがより好ましい。
【0058】
結晶性ポリエステルの添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、圧可塑性材料100質量部に対し、0質量部〜900質量部が好ましく、0.5質量部〜500質量部がより好ましく、1質量部〜100質量部が特に好ましい。添加量が、1質量部未満であると、低温定着性が発揮できないことがあり、900質量部を超えると、ホットオフセット性が悪化することがある。
【0059】
<その他の成分>
上記の圧可塑性材料とともに用いても良いその他の成分としては、流動性向上剤、クリーニング性向上剤等が挙げられる。上記の流動性向上剤とは、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものを意味し、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが挙げられる。
【0060】
上記のクリーニング性向上剤とは、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためにトナー組成物に添加されるものを意味し、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子、などが挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm〜1μmのものが好適である。
【0061】
本実施形態においては、トナー材料が実質的に有機溶媒を含有しないことが好ましい。本実施形態によると、圧縮性流体を用いることにより、トナー材料が有機溶媒を含有しなくてもトナーの製造が可能である。これにより、実質的に有機溶媒を含まないトナーが得られる。尚、有機溶媒を実質的に含有しないとは、以下の測定方法により測定されるトナー中の有機溶媒の含有量が検出限界以下であることを言う。
【0062】
(残留溶媒の測定方法)
トナーの残留溶媒量は、以下の測定方法により測定される。測定対象となるトナー1質量部に2−プロパノール2質量部を加え、超音波で30分間分散させた後、冷蔵庫(5℃)にて1日以上保存し、トナー中の溶媒を抽出する。上澄み液をガスクロマトグラフィ(GC−14A,島津製作所製)で分析し、トナー中の溶媒および残留モノマーを定量することにより溶媒濃度を測定する。かかる分析時の測定条件は、以下の通りである。
装置 :島津GC−14A
カラム :CBP20−M 50−0.25
検出器 :FID
注入量 :1〜5μl
キャリアガス :He 2.5kg/cm
水素流量 :0.6kg/cm
空気流量 :0.5kg/cm
チャートスピード:5mm/min
感度 :Range101×Atten20
カラム温度 :40℃
Injection Temp :150℃
【0063】
<<圧縮性流体>>
次に、図2及び図3を用いて本実施形態の粒子の製造方法で用いられる圧縮性流体について説明する。図2は、温度と圧力に対する物質の状態を示す一般的な相図である。図3は、本実施形態において圧縮性流体の範囲を定義するための相図である。本実施形態において、圧縮性流体とは、物質が、図2で表される相図の中で、図3に示す(1)、(2)、(3)の何れかの領域に存在するときの状態を意味する。このような領域においては、物質はその密度が非常に高い状態となり、常温常圧時とは異なる挙動を示すことが知られている。なお、物質が(1)の領域に存在する場合には超臨界流体となる。超臨界流体とは、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上かつ臨界圧力(Pc)以上の状態にある流体のことである。また、物質が(2)の領域に存在する場合には液体となるが、本実施形態においては、常温(25℃)、常圧(1気圧)において気体状態である物質を圧縮して得られた液化ガスを表す。また、物質が(3)の領域に存在する場合には気体状態であるが、本実施形態においては、圧力が1/2Pc以上の高圧ガスを表す。尚、圧縮性流体が二酸化炭素の場合には、3.7MPa以上の圧力が必要であり、5MPa以上が好ましく、より好ましくは臨界圧力の7.4MPa以上である。
【0064】
圧縮性流体としては、圧力を付与した状態で流体となるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、超臨界流体、亜臨界流体、液化流体等が挙げられる。具体的には、超臨界二酸化炭素、液化二酸化炭素、メタンガス、超臨界メタン、エタンガス、超臨界エタン、超臨界プロパン、液化プロパン、プロパンガス、超臨界ブタン、液化ブタン、ブタンガスなどを例に挙げることができる。中でも、二酸化炭素を含むもの、例えば、超臨界二酸化炭素、亜臨界二酸化炭素、液化二酸化炭素、などが好ましい。また、これら群から選ばれる1種以上のものを混合した高圧ガス、超臨界流体であってもよい。
【0065】
本実施形態において、超臨界流体とは、気体と液体の中間的な性質を持ち、物質移動や熱移動が早く、粘度が低いなどの性質を有すると共に、温度、圧力を変化させことによって、その密度、誘電率、溶解度パラメータ、自由体積などを連続的に大きく変化させることができる流体を意味する。この超臨界流体は、有機溶媒と比べて極めて界面張力が小さいため、微少な起伏(表面)であっても追随し、超臨界流体で濡らすことができる。
【0066】
この超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度及び圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体が好ましい。また、超臨界流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度、臨界圧力が低いものが好ましい。また、上記の亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において高圧液体や高圧ガスとして存在する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0067】
このような超臨界流体又は亜臨界流体としては、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化二窒素、アンモニア、窒素、メタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソブタン、クロロトリフロロメタン、などが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃と容易に超臨界状態をつくり出せると共に、不燃性で安全性が高く、後述するトナーの製造方法において、非水系溶媒なので疎水性表面のトナーが得られ、また常圧に戻すだけでガス化するため回収再利用も容易であり、得られた粒子について乾燥が不要であり、廃液も発生せず、残留モノマーも含有しない点から好ましい。
【0068】
このような超臨界流体又は亜臨界流体としては、1種単独で単体として使用してもよいし、2種以上を併用して混合物として使用してもよい。また、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の有機溶媒をエントレーナー(助溶剤)として添加して用いてもよい。
【0069】
上記の液化流体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液化二酸化炭素、液化メタン、液化エタン、液化プロパン、液化ブタンなどが挙げられる。これらの中でも、液化二酸化炭素が、不燃性で安全性が高い点から好ましい。この液化流体は、1種単独で単体として使用しても良いし、2種以上を併用して混合物として使用しても良い。
【0070】
これらの圧縮性流体は、目的生成物との分離も容易であり、回収再利用ができることから、圧縮性流体を用いることにより、従来の水や有機溶媒を使用しない低環境負荷の画期的な粒子(例えば、トナー)の製造方法を実現できる。
【0071】
本実施形態の製造方法により製造される粒子がトナーである場合、圧縮性流体中には、界面活性剤を含むことが好ましい。この界面活性剤としては、圧縮性流体に対する親和性を有する部分と上記のトナー組成物に対する親和性を有する部分とを同一分子内に有している限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このような界面活性剤としては、圧縮性流体が超臨界二酸化炭素の場合であれば、フッ素基、ケイ素基、カルボニル基、短い炭化水素基、プロピレンオキサイド等の嵩高い基等の親二酸化炭素基を有する化合物が好ましく、これらの中でも、フッ素含有化合物、ケイ素含有化合物、カルボニル基含有化合物、ポリエチレングリコール(PEG)基含有化合物がより好ましい。
【0072】
上記のフッ素含有化合物は、炭素数が1〜30のパーフルオロアルキル基を有する化合物であれば特に制限はなく、低分子化合物であっても、高分子化合物であって構わない。これらの中でも、高分子化合物は、界面活性能と、トナーにした場合の帯電性能、耐久性能の観点から好適である。
【0073】
このようなフッ素含有高分子化合物としては、例えば、下記構造式(A)及び構造式(B)で表される構造単位を含む化合物が挙げられる。なお、これらは、上記のトナー組成物との親和性も考慮して、ホモポリマー、ブロック共重合体、ランダム共重合体などの化合物であってもよい。
【0074】
【化5】

【0075】
但し、構造式(A)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、aは0〜4の整数を示し、Rfは、炭素数が1〜30のパーフルオロアルキル基、又はパーフルオロアルケニル基を示す。
【0076】
【化6】

【0077】
但し、構造式(B)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、Rfは、炭素数が1〜30のパーフルオロアルキル基、又はパーフルオロアルケニル基を示す。
【0078】
これらのパーフルオロアルキル基を有する化合物に類似する構造の原料が多数市販されており(例えば、アヅマックス社カタログ参照)、それらを使用しても、各種フッ素含有化合物を得ることができる。
【0079】
上記のケイ素含有化合物としては、シロキサン結合を有する化合物であれば、特に制限はなく、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。これらの中でも、構造式(C)で示されるポリジメチルシロキサン(PDMS)を含有する化合物が好適である。尚、これらは、上記のトナー組成物との親和性も考慮して、ホモポリマー、ブロック共重合体、ランダム共重合体などの化合物であってもよい。
【0080】
【化7】

【0081】
但し、構造式(C)中、Rは、水素原子、炭素数1〜4の低級アルキル基を示し、nは繰り返し数を示し、Rは、水素原子、水酸基、炭素数が1〜10のアルキル基を示す。
【0082】
これらのポリジメチルシロキサンに類似する構造の原料が多数市販されており(例えば、アヅマックス社カタログ参照)、それらを使用しても、各種界面活性剤を得ることができる。特に、ケイ素含有化合物(商品名:MONASIL−PCA、クローダ社製)は良好な造粒性を示す。
【0083】
これらのフッ素含有化合物、及びケイ素含有化合物は、その原料となるビニル重合性モノマーを重合することで得ることができ、従来の溶媒以外に超臨界流体(特に超臨界二酸化炭素が好適)を用いて重合することができる。
【0084】
上記のカルボニル基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脂肪族系ポリエステル、ポリアクリレート、アクリル酸樹脂などが挙げられる。
【0085】
上記のPEG基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、PEG基含有ポリアクリレート、ポリエチレングリコール樹脂などが挙げられる。
【0086】
界面活性剤の上記のトナー組成物中における含有量は、0.01質量%〜30質量%が好ましく、0.1質量%〜20質量%がより好ましい。
【0087】
また、本実施形態の製造方法により製造される粒子がトナーである場合、圧縮性流体に加え、他の流体を併用することもできる。他の流体としては、トナー組成物の溶解度をコントロールしやすいものが好ましい。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン等が挙げられる。
【0088】
<<粒子製造装置>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法に用いられる粒子製造装置について説明する。図4は、本実施形態の粒子の製造方法に用いられる粒子製造装置1の一例を示す模式図である。粒子製造装置1は、圧縮性流体と圧可塑性材料とを接触させて作製された圧可塑性材料の溶融体を供給するための溶融体供給手段16と、この溶融体を吐出するための吐出装置31と、吐出装置31から吐出した溶融体が粒状化するための空間を有する粒状体形成部331と、を備える。溶融体供給手段16には、超高圧管等によって接続されて第1の経路を構成するボンベ11、ポンプ12a、12b、バルブ13a、温度調節器付き高圧セル14、及び背圧弁15が設けられている。また、粒状体形成部331には、超高圧管等によって接続されて第2の経路を構成する圧力制御手段26(ボンベ21、ポンプ22、バルブ23、供給部24)が設けられている。また、吐出装置31には、信号発生装置320、貫通孔317が設けられている。
【0089】
次に、溶融体供給手段16について説明する。第1の経路上に設置された、ボンベ11は温度調節器付き高圧セル14(以後、「高圧セル14」という。)内で圧縮性流体となる物質(二酸化炭素等)を貯蔵し供給するための耐圧容器である。尚、貯蔵される物質は、高圧セル14内で温調されて圧縮性流体となるものであれば気体や液体等の状態であっても良い。また、ボンベ11に貯蔵される物質としては、コスト、安全性の理由により、空気、窒素、二酸化炭素が好ましく、二酸化炭素がより好ましい。ポンプ12aは、ボンベ11に貯蔵された物質に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ13aは、ポンプ12aと高圧セル14との間の経路を開閉して流量を調整したり遮断したりするための装置である。
【0090】
高圧セル14は、バルブ13aを介して供給された物質を加熱して圧縮性流体に変えたり、この圧縮性流体と別途供給された圧可塑性材料とを接触させて、圧可塑性材料の溶融体を作製するための装置である。高圧セル14には背圧弁15が取り付けられており、これを開閉することにより高圧セル14内の圧力を調整することができる。また、高圧セル14には攪拌装置が取り付けられていても良く、これにより圧縮性流体と可塑化された圧可塑性材料とを攪拌して混合することができる。
【0091】
ポンプ12bは、高圧セル14内の溶融体に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ13bは、ポンプ12bと吐出装置31との間の経路を開閉して溶融体の流量を調整したり遮断したりするための装置である。貫通孔317は第1の経路から送り込まれた溶融体を吐出するための貫通した空間である。
【0092】
粒子製造装置1の第2の経路上に設置された、ボンベ21は気体、液体等の第2の圧縮性流体を貯蔵し供給するための耐圧容器である。ボンベ21に貯蔵される圧縮性流体としては、コスト、安全性の理由により、空気、窒素、二酸化炭素が好ましく、二酸化炭素がより好ましい。ポンプ22は、ボンベ21に貯蔵された圧縮性流体に圧力を加えて送り出す装置である。バルブ23は、ポンプ22と吐出装置37との間の圧縮性流体の経路を開閉して流量を調整したり遮断したりするための装置である。尚、第2の経路から供給される圧縮性流体は、ジュール・トムソン効果により吐出装置31内で冷却されることになることから、ヒータ等により充分に加熱されて超臨界流体の状態となっていることが好ましい。
【0093】
次に、図5を用いて吐出装置31及び粒状体形成部331について説明する。図5は、吐出装置31及び粒状体形成部331の一例を示す模式図である。尚、ここでは、粒子の一例としてのトナーを吐出する吐出装置31について説明するが、粒子を吐出可能な装置であれば、特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。吐出装置31は、少なくとも溶融体を含むトナー材料を貯留するための貯留部311と、貯留部311を構成する壁の一部に形成された1以上の貫通孔317と、貫通孔317に振動を付与するために貯留部311に接するように配置された振動手段312と、振動手段312と導電線321で接続された信号発生装置320と、振動手段312を保持する支持手段313と、を有する。これにより、吐出装置31は、図4に示すバルブ13bを介して貯留部311へ定量的に供給された溶融体を含むトナー材料が、所定の貫通孔より粒状体形成部331に定量的に吐出する。また、吐出装置31には、1つの振動手段312に対して、貫通孔317が1以上配置されている。振動手段312は、貫通孔317に振動を付与するために貯留部311に接するように配置されている。このような装置構成にすることで、振動手段312を常圧環境下に設置したままで、外部から貯留部311、貫通孔317を励振することができる。即ち、特別な振動手段を用いることなく高圧流体を粒状体に分裂させることができる。
【0094】
好ましい吐出装置31としては、例えば、図5に示すように、貫通孔311より吐出される溶融体を含むトナー材料を貯留部311へ定量的に供給するための溶融体供給手段16を有する装置が挙げられる。以下、各部手段についてさらに詳述する。
【0095】
(貯留部)
貯留部311や貯留部311に接続する配管は、溶融体を高圧に加圧された状態において保持する必要があるため、SUS(ステンレス鋼)などの金属部材からなり、耐圧性が少なくとも30MPa程度であることが望ましい。貯留部311は、溶融体を供給する配管318で接続され、貫通孔317を有する板を保持する機構319を設けた構造が望ましい。また、貯留部311全体を振動させる振動手段312が、貯留部311には接している。振動手段312には信号発生装置320と導電線321によって接続され、信号発生装置320が発生させた信号により振動が制御される形態が望ましい。内部の圧力を調整するため、貯留部311には開放弁322が設けられていることが柱状の溶融体(柱状体)の安定形成を行う上で好ましい。
【0096】
(振動手段)
振動付与の均一性の点から、貫通孔317を含む貯留部311の全体は一つの振動手段312により、励振されることが好ましい。貯留部311に振動を与える振動手段312としては、確実な振動を、好ましくは一定の振動数(周波数とも言う)で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。振動手段312としては、上述の観点から好ましくは、伸縮によって貫通孔を一定の周波数で振動させるため、圧電体が好ましい。
【0097】
この圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧を印加することにより、伸縮し、この伸縮により、貫通孔を振動させることができる。圧電体の種類としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスが挙げられるが、一般に変位量が小さい為、積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO、等の単結晶、等が挙げられる。
【0098】
圧電体に与える信号の周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20kHz乃至10MHzが好ましく、極めて均一な粒子径を有する微小の溶融体粒子(「粒状体」という)を発生させる観点から、50kHz乃至1MHzがより好ましい。20KHz以下では生産性が低下する傾向があり、1MHz以上では粒径制御性が低下する傾向がある。
【0099】
振動手段312は、貯留部311と接し、この貯留部311には貫通孔317を有する板が保持されている。振動手段312と貫通孔317が形成された貯留部311の構成壁とは、貫通孔317から吐出される柱状体に振動を均一に与える観点から、平行に配置されていることが最も好ましく、振動の過程における変形が起こっても、その関係は傾きが10°以内に保たれることが望ましい。また、更なる生産性の向上の観点から、振動手段312を有する貯留部311も複数設けることが、より好ましい。
【0100】
支持手段313は、吐出装置31に貯留部311及び振動手段312を固定するために設けられており、材質に限定は特に無いが、金属などの剛体であればよい。必要によっては余分な共振による貯留部の振動の乱れを発生させないために、振動緩和材としてのゴム材、樹脂材などが一部に設けられていても良い。
【0101】
(貫通孔)
貫通孔317は第1の経路から送り込まれた溶融体を柱状に吐出するための貫通した空間である。貫通孔317の形成される部材の材質としては、特に制限はないが、ステンレス(SUS)、ニッケル、銅、アルミニウム、鉄、チタン等が挙げられ、特に耐腐食性の点において、ステンレス(SUS)及びニッケルが好ましい。貫通孔317の形成される部材の厚みとしては、特に制限はないが、5μm以上100μm以下が例示される。この厚みが100μmよりも大きいと上記部材を加工して貫通孔317を形成することが困難な場合があり、5μmよりも小さいと貯留部311と粒状体形成部331との圧力差により上記部材が破断する場合がある。但し、上記部材の材質に応じ、貫通孔317の加工が可能で十分な耐久性が得られれば、厚みは上記の範囲に限定されない。
【0102】
貫通孔317の開口径としては、吐出時の圧力を一定に維持できれば、特に制限はない。一方、貫通孔の径が小さすぎる場合には、溶融体が貫通孔317で詰まり易くなり、狙いとする微粒子を得ることが困難になる可能性がある。よって、貫通孔の径には上限がなく、下限として、2μm以上であることが好ましく、より好ましくは、5μm以上であり、8μm以上であれば特に好ましい。これにより、トナー材料に含まれる1μm以下の微粒子分散物を閉塞させることなく、かつ設定した周波数で極めて均一な粒子径を有する微小な粒状体を発生させることを両立させることができる。これは、以下に説明するに安定的に粒状物を得ることが可能な周波数領域が、実質上貫通孔の直径が大きくなるにつれて減少するためである。なお、開口径は、貫通孔314が真円であれば直径を意味し、楕円であればその短径を意味する。貫通孔317は、1個のみ設けても粒子の製造は可能であるが、極めて均一な粒子径を有する粒子を効率よく発生させる観点から、複数個設けられていることが好ましい。また、一個の振動手段312により振動させる一個の貯留部311に付随する貫通孔317の個数としては、生産性と制御性の観点から、10乃至10,000であるのが好ましく、極めて均一な粒子径を有する微小な粒状体をより確実に発生させるために、10乃至1,000であることがより好ましい。この場合、トナー粒子の生産性は、単位時間あたりに発生する溶体粒状物の個数(周波数)と、振動手段の数と、1つの振動手段312により作用する貫通孔の数の積で決定される。尚、操作性の観点から、可能な限り1つの振動手段312により作用する貫通孔317の数、つまり1つの貯留部312の有する貫通孔317の数が多ければよいが、無制限に多いと、粒子径の均一性を保てない場合がある。
【0103】
ここで、吐出される溶融体が振動によって粒子化する現象について図6を用いて説明する。図6は、粒子化現象を説明するための説明図である。溶融体を貫通孔から比較的小さな圧力差を用いて、吐出すれば、吐出直後は溶体が柱状に吐出し、それが分裂し溶融体の粒状物になる。しかしながら、このような方法では、粒状物の大きさはランダムとなるため、一般的に幅広い粒度分布を有してしまう。そこで本実施形態では、均一な粒子を得るために、柱状体に適当な一定周期の振動λを付与する。これにより柱状体に周期的なくびれが発生し、溶融体はくびれ状態を経て粒状化される。
【0104】
液柱の均一液滴化現象としてはレイリー分裂が知られている。レイリー分裂では、液柱の最も不安定になる波長条件λが、液滴直径dを用いて次の(1)式で表される。
λ=4.5d・・・(1)
ここで、発生する擾乱現象の周波数fは、液柱の速度をvとした場合、次の(2)式で表される。
f=v/λ ・・・(2)
また、実験的に均一粒子を形成する条件も知られており、下記式(3)の条件において安定的に均一粒子を形成することが可能である、としている。
3.5<λ/d(jet)<7.0・・・(3)
(1)式から(3)式の条件は、本実施形態の粒子の製造方法における柱状体の均一粒状化においても全て成立することが確認されており。目的の粒子を得る条件を推定するためにも極めて有効である。
【0105】
(粒状体形成部)
粒状体形成部331は、貫通孔317から吐出した溶融体に所定の圧力を加えるための空間を有し、溶融体を柱状から括れ状態を経て粒状化させる部材である。このため、粒状体形成部331は、貫通孔317から吐出した溶融体が、柱状から括れ状態を経て粒状化するように上記の空間と貯留部311内の圧力差を制御するための圧力制御手段26をさらに備える。溶融体を貫通孔317から吐出するためには、貯留部311内圧力が貫通孔吐出部近傍の圧力より高く、その圧力差により貫通孔から溶体が吐出する必要がある。しかしながら、溶融体は柱状から一定振動により括れ状態を経て粒状に分裂しなければならないことから、粒状化するまでの間、柱状を維持しなければならない。したがって、貫通孔317の外側付近(貫通孔317付近の粒状体形成部331)の圧力は、貯留部311内部と大きな差があってはならない。この差が大きいと、溶融体は貫通孔から吐出し圧力が開放されると同時に、急激に圧縮性流体が蒸発し括れを形成する前に固化してしまい目的の粒状体にならない。更に圧力差が大きくなると、圧力差により貫通孔317が破断してしまうといった問題が生じる。
【0106】
従って、適切な圧力差を、貯留部311と、貫通孔317の吐出部の近傍即ち粒状体形成部331との間で生じさせる構成であれば、吐出装置31の構成は特に限定されない。このような吐出装置31の構成例としては、貯留部311全体を粒状物形成部で完全に覆い、二重管とする構成などが挙げられる。一方、耐圧を考慮し、SUS(ステンレス鋼)で肉厚にせざるを得ない場合は、軽量化の為に、図5に示すように貯留部311の先に同径の粒状体形成部331を設け、そこに第2の圧縮性流体を、供給部24を通じて導入する構成がより望ましい。ところで、支持手段313により、例えば天板に取り付けられた吐出装置31は振動手段312により、貯留部311、貫通孔317、粒状体形成部331、溶融体を含むトナー材料を同時に縦方向に励振させる。従って、第1の経路の供給部318、第2の経路の供給部24も、振動手段312からの振動を阻害しないように、ある程度自由に可動できるように配管を行う。貯留部311内に過剰に供給された溶融体を含むトナー材料は、開放弁322を通して還流させることができ、同時にバルブを設けて圧力調整を行うこともできる。また、供給量と吐出量が同じ場合は開放弁322のバルブを閉じる。
【0107】
<<溶融工程>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法における溶融工程について説明する。ここでは、図1の粒子製造装置1を用いた一例について説明する。本実施形態の粒子の製造方法における溶融工程は、第1の圧縮性流体を圧可塑性材料に溶融させて圧可塑性材料の溶融体を作製する工程である。なお、本実施形態において「圧可塑性材料の溶融体」とは、圧可塑性材料が圧縮性流体と接触することで、膨潤しつつ可塑化、液状化した状態を意味する。ところで、急速膨張法のなかでもRESS(Rapid Expansion of Supercritical Solutions)法として知られる方法で用いられる吐出対象は、圧縮性流体中に溶質となる材料を溶解させたもので、当該流体と材料は均一状態で相溶している。これに対し、本実施形態の急速膨張法(PGSS法)における吐出対象である溶融体は、上記のとおり、圧縮性流体を圧可塑性材料内に接触、湿潤させることで、当該材料の粘度を低下させて得られるものなので、当該流体と溶融体との間には界面が存在する状態となる。つまり、前者の吐出対象は、圧縮性流体−固体平衡状態の相であるのに対し、後者は、いわば気体−液体平衡状態の相ということになり、同じ急速膨張法であっても吐出対象の膨張前の相状態は異なる。
【0108】
この溶融工程では、先ず、圧可塑性材料や、製造される粒子がトナーである場合には着色剤等の原料が高圧セル14内に入れられる。この場合、粒子の原料が複数の材料を含むときには、これらの材料を予めミキサー等で混合し、ロールミル等で溶融混練させておいても良い。次に、高圧セル14を密閉し、攪拌機によって原料を攪拌すると共に、ボンベ11から供給された圧縮性流体(第1の圧縮性流体。例えば、二酸化炭素等)を、ポンプ12aにより加圧させてバルブ13aを介して高圧セル14内に供給する。高圧セル14内の温度は温度調節器によって所定の温度に調整され、圧力はポンプ12a、背圧弁15等を調整することにより所定の圧力に調整される。これにより、圧縮性流体と圧可塑性材料を含む原料とを接触させることができる。この場合、圧縮性流体が圧可塑性材料に溶融することにより、圧可塑性材料が低粘度化される。上記の攪拌は、溶融体の溶融液粘度が一定になるまで実行される。溶融体又はこれを含むトナー材料の粘度は、貫通孔317によって吐出することのできる粘度であれば特に限定されないが、低ければ低いほど吐出時の微粒子化が容易であることから、20mPa・s以下であることが好ましい。溶融体の粘度が20mPa・sより大きい場合には、粒子化が困難になったり、粗大粒子、繊維状物、発泡、合着などが発生したりする可能性がある。また、生成物がトナーである場合には必要とされる4〜8μmサイズの均一な微粒子を作製することが困難になる場合がある。
【0109】
本実施形態の粒子の製造方法の溶融工程において、圧縮性流体に付与される圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1MPa以上が好ましく、2MPa以上200MPa以下がより好ましく、5MPa以上100MPa以下が特に好ましい。圧縮性流体に付与される圧力が、1MPaより小さいと、樹脂が流動化しても造粒できる程の可塑化効果が得られないことがある。圧力はいくら高くても問題はないが、高圧になるほど装置が重厚になり設備コストは高くなる。
【0110】
本実施形態の粒子の製造方法の溶融工程において、圧可塑性材料を可塑化させる際の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大気圧下での圧可塑性材料の熱分解温度以下であることが好ましく、融点温度以下がより好ましい。ここで、熱分解温度は、熱分析装置(TGA:Thermo Gravimetry Analyzer)の測定において試料の熱分解に伴う重量減少が開始する温度を意味する。
【0111】
圧可塑性材料を可塑化させる際の温度がこの圧可塑性材料の大気圧での熱分解温度を超えると、圧可塑性材料が劣化して耐久性が低下したり、圧可塑性材料の分子鎖が切断されて分子量が低下したり、圧可塑性材料の酸化により変色又は透明性の低下が生じたり、圧可塑性材料を含むトナーの定着特性が低下したり、圧可塑性材料を含むトナーの耐熱保存性が低下したり、圧可塑性材料を含むトナーの帯電性能が低下したり、加熱処理によるエネルギーの消費が大きくなることがある。
【0112】
<<造粒工程>>
続いて、本実施形態の粒子の製造方法における造粒工程について説明する。この造粒工程は、溶融工程で作製された溶融体を、振動させた貫通孔から吐出させて粒状とする工程である。
【0113】
まず、ボンベ21から供給された圧縮性流体(第2の圧縮性流体。例えば、二酸化炭素等)を、ポンプ22により加圧してバルブ23、供給部24等を介して供給し開口部332から吐出する。このとき、ヒータにより圧縮性流体を加熱して、この圧縮性流体が一定の温度、圧力を維持するように運転条件を調整する。次に、高圧セル14内で混合されて得られた圧縮性流体を圧可塑性材料に溶融させた溶融体をポンプ12bで送液し、バルブ13bを介して貫通孔317から圧力差を利用して吐出する。このとき、高圧セル14内の温度及び圧力が一定に維持されるよう、ポンプ12a、背圧弁15、温度調節器等が制御される。この場合、高圧セル内の圧力は、特に限定されないが、第2の経路から供給される圧縮性流体の圧力と等圧とすることができる。
【0114】
上記のように、貯留部311の溶融体は、貫通孔317から吐出された直後の溶融体が柱状体を充分に形成しうる状態に圧力が保持された粒状体形成部331の空間に吐出される。その後、貯留部311を介した振動により柱状体に括れが生じ、この括れ部から柱状体がレイリー分裂することにより、粒状体33となる。
【0115】
粒状体形成部331の空間の圧力は、吐出される溶融体の粘度や吐出圧力等を考慮して適宜決定すればよく、一義的には溶融体が貫通孔317より吐出できる条件でさえあれば、特に限定はされないが、例えば、溶融体の粘度が3mPa・sの場合、貯留部311が65MPa程度となることから、粒状体形成部331の圧力は65MPa未満となる。また、吐出速度を考慮すると、貯留部311内の圧力と溶融体の粒状体形成部331上部の圧力差は500Kpa以下であり、好ましくは200KPa以下である。貯留部311内の圧力と粒状体形成部331近傍の圧力差を、この差圧に保持するには、第1の経路から供給される溶融体の圧力と、第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を各々制御することにより達成できる。この条件は、粒状体形成部331の全長と、吐出装置31の底部に設けた開口部332の開口径によっても大きく異なる。例えば、第1の経路から供給される溶融体の圧力と、第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を等しくした場合でも、粒状形成部内の圧力は開口部332を通して大気圧に開放されるために圧力が下がり、貯留部311内の圧力より低下することになる。従って、装置構成によって極端にこれらに圧力差が生じる場合は、むしろ第2の経路から供給された第2の圧縮性流体の圧力を、第1の経路から供給される溶融体の圧力より上げることにより、最適な差圧が得られるように圧力制御を行う。経時による圧力変動は殆どないことから、一定の圧力条件で運転を継続することができる。また、液滴形成部の圧力をモニターし、これをフィードバック制御する方法も装置保全の点において有効である。粒状体形成部331で形成された粒状体は、急激な圧力低下により、粒状形成部底部あるいは大気開放後には完全に固化し、粒子同士が合体することを防止できる。更に、開口部332から圧力差により急速に吐出され、自由空間に開放されることで完全なトナー粒子を形成する。柱状物からのレイリー分裂により粒径制御性と単一性に優れ、急速な固化により溶融体粒状物の合体を効果的に防止することによって、極めてシャープな粒径分布を有するトナーを得ることが可能になる。
【0116】
<<<トナー>>>
本実施形態のトナーは本実施形態の粒子の製造方法により製造される。本実施形態のトナーは、その形状、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、以下のような、画像濃度、平均円形度、質量平均粒径、質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)等を有していることが好ましい。
【0117】
上記の画像濃度は、分光計(X−ライト社製、938 スペクトロデンシトメータ)を用いて測定した濃度値が、1.90以上が好ましく、2.00以上がより好ましく、2.10以上が特に好ましい。画像濃度が、1.90未満であると画像濃度が低く、高画質が得られないことがある。ここで、画像濃度は、例えば、imagio Neo 450(株式会社リコー製)を用いて、複写紙(TYPE6000<70W>、株式会社リコー製)に現像剤の付着量が1.00±0.05mg/cmのベタ画像を定着ローラの表面温度が160±2℃で形成し、得られたベタ画像における任意の6箇所の画像濃度を、上記分光計を用いて測定し、その平均値を算出することにより、測定することができる。
【0118】
上記の平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、例えば、0.900〜0.980が好ましく、0.950〜0.975がより好ましい。尚、平均円形度が0.94未満の粒子が15%以下であるものが好ましい。平均円形度が0.900未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがある。また、平均円形度が0.980を超えると、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルト等でクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。
【0119】
ここで、平均円形度は、フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)、例えば東亜医用電子社(株)製フロー式粒子像分析装置FPIA−2000を用いて測定することができる。この場合、フィルターに通して微細なごみを取り除き、その結果として10−3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上、159.21μm未満)の粒子数が20個以下に調整された水を用意する。次に、この水10ml中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬株式会社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器(SMT社製、UH−50)で20kHz,50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、更に、合計5分間の分散処理を行う。分散処理によって得られる測定試料の粒子濃度が4,000個/10−3cm〜8,000個/10−3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上、159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒度分布を測定する。
【0120】
平均円形度の測定は、試料分散液をフラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させることにより行われる。ここでフローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射される。その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径が円相当径として算出される。
【0121】
これにより約1分間で、1,200個以上の粒子の円相当径が測定され、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)が算出される。結果(頻度%及び累積%)は、0.06μm〜400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上、159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
【0122】
上記のトナーの質量平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm〜10μmが好ましく、3μm〜8μmがより好ましい。質量平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがある。また、質量平均粒径が10μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0123】
上記のトナーにおける質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00〜1.25が好ましく、1.00〜1.10がより好ましく、1.00〜1.06が更に好ましい。質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)が、1.25を超えると、二成分現像剤では、現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、質量平均粒径と個数平均粒径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)が、1.25を超えると、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーが薄層化し、ブレード等の部材へのトナー融着が発生し易くなることがあり、また、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0124】
質量平均粒径、及び、前記質量平均粒径と個数平均粒子径との比(質量平均粒径/個数平均粒径)は、例えば、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器「コールターカウンターTAII」などを用いて測定することができる。
【0125】
<<<現像剤>>>
本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを少なくとも含有してなり、適宜キャリア等の選択された成分を含有してなる。このような現像剤としては、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0126】
本実施形態の現像剤が一成分現像剤の場合、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着がなく、現像装置の長期の使用(撹拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。また、本実施形態の現像剤が二成分現像剤の場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、現像剤中のトナー径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性が得られる。
【0127】
<キャリア>
上記のキャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0128】
上記の芯材の材料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、50emu/g〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料等が好適に用いられる。特に、画像濃度を確保するための、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75emu/g〜120emu/g)等の高磁化材料が好適に用いられる。また、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30emu/g〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0129】
この芯材の粒径としては、体積平均粒径で、10μm〜150μmが好ましく、40μm〜100μmがより好ましい。平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがある。ここで、D50は、メジアン径とも言い、粒子をある粒径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径を意味する。平均粒径(体積平均粒径(D50))が、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0130】
上記の樹脂層の材料としては、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アミノ系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、シリコーン樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0131】
上記のアミノ系樹脂としては、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。上記のポリビニル系樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。上記のポリスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等が挙げられる。上記のハロゲン化オレフィン樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル等が挙げられる。上記のポリエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0132】
この樹脂層には、必要に応じて導電粉等を含有させてもよく、この導電粉としては、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛、などが挙げられる。これらの導電粉の平均粒子径としては、1μm以下が好ましい。この平均粒子径が1μmを超えると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
【0133】
この樹脂層は、例えば、シリコーン樹脂等の樹脂層の原料を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、この塗布溶液を芯材の表面に公知の塗布方法により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行うことにより形成することができる。この塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、などが挙げられる。ここで溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、セルソルブ、ブチルアセテート、などが挙げられる。また、焼付としては、特に制限はなく、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0134】
上記の樹脂層のキャリアにおける量としては、0.01質量%〜5.0質量%が好ましい。この量が0.01質量%未満であると、芯材の表面に均一な樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎてキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0135】
現像剤が二成分現像剤である場合、キャリアの二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、90質量%〜98質量%が好ましく、93質量%〜97質量%がより好ましい。
【0136】
本実施形態の現像剤は、本実施形態のトナーを含有しているので、画像形成時において、帯電性能に優れ、高画質な画像を安定に形成することができる。
本実施形態の現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0137】
<<<プロセスカートリッジ>>>
本実施形態のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、本実施形態のトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを有してなり、更に必要に応じて適宜選択されるその他の手段を有してなる。
【0138】
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置本体に着脱可能であり、利便性に優れたものである。上記の現像手段としては、本実施形態のトナー又は現像剤を収容する現像剤収容器と、この現像剤収容器内に収容されたトナー又は現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを有してなり、更に、担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。
【0139】
ここで、本実施形態のプロセスカートリッジについて図7を用いてより詳細に説明する。図7は、本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略説明図である。図7によって示されるプロセスカートリッジは、静電潜像担持体101を内蔵し、帯電手段102、現像手段104、転写手段108、クリーニング手段107を含み、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。図7中、103は露光手段による露光、105は記録媒体をそれぞれ示す。
【0140】
次に、図7によって示されるプロセスカートリッジによる画像形成プロセスについて説明する。静電潜像担持体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(不図示)による露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像手段104で現像され、得られた可視像は転写手段108により、記録媒体105に転写される。次いで、像転写後の静電潜像担持体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、更に除電手段(不図示)により除電されて、再び、以上の操作を繰り返すものである。
【0141】
<<<画像形成方法及び画像形成装置>>>
本実施形態の画像形成方法は、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、定着工程とを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程等を含む。
【0142】
本実施形態の画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば、除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段等を有してなる。
【0143】
<静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段>
上記の静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。この静電潜像担持体(以下、「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0144】
ここで、静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成手段により行うことができる。この静電潜像形成手段は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0145】
上記の帯電器は静電潜像担持体の表面に電圧を印加することに静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる。このような帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0146】
露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する。このような露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。なお、本発明においては、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0147】
<現像工程及び現像手段>
上記の現像工程は、静電潜像を、本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。この可視像の形成は、例えば、静電潜像を本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像することにより行うことができ、上記の現像手段により行うことができる。
【0148】
この現像手段は、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を用いて現像することができる限り、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を収容し、静電潜像にこのトナー又は現像剤を接触又は非接触的に付与可能な現像器を少なくとも有するものが好適に挙げられ、トナー入り容器を備えた現像器等がより好ましい。
【0149】
この現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。このような現像器としては、例えば、本実施形態のトナー又は現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌機と、回転可能なマグネットローラとを有してなるもの等が好適に挙げられる。
【0150】
この現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。このマグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面に該トナーによる可視像が形成される。
【0151】
この現像器に収容させる現像剤は、本実施形態のトナーを含む現像剤であるが、現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。
【0152】
<転写工程及び転写手段>
上記の転写工程は、可視像を記録媒体に転写する工程であるが、中間転写体を用いこの中間転写体上に可視像を一次転写した後、可視像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。また、トナーとして二色以上、好ましくはフルカラートナーを用い、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。
【0153】
この転写は、例えば、可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写手段により行うことができる。この転写手段としては、可視像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写手段と、この複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写手段とを有する態様が好ましい。尚、この中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0154】
上記の転写手段(第一次転写手段、第二次転写手段)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成された可視像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有するのが好ましい。この転写手段は、1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。この転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
【0155】
尚、記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0156】
<定着工程及び定着手段>
上記の定着工程は、記録媒体に転写された可視像を定着装置によって定着させる工程であり、各色のトナーに対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色のトナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。この定着装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧手段が好適である。この加熱加圧手段としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。この加熱加圧手段における加熱は、通常、80℃〜200℃が好ましい。尚、本実施形態においては、目的に応じて、定着工程及び定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0157】
<除電工程及び除電手段>
上記の除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。この除電手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0158】
<クリーニング工程及びクリーニング手段>
上記のクリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。このクリーニング手段としては、特に制限はなく、静電潜像担持体上に残留する電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。このようなクリーニング手段としては、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0159】
<リサイクル工程及びリサイクル手段>
上記のリサイクル工程は、クリーニング工程により除去されたトナーを現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。このリサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0160】
<制御工程及び制御手段>
上記の制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。この制御手段としては、上記の各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0161】
次に、本実施形態の画像形成装置により画像を形成する方法の一例について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態の画像形成方法に用いられる画像形成装置の一例を示す概略説明図である。図8によって示される画像形成装置100は、静電潜像担持体としての感光体ドラム10(感光体10)と、帯電手段としての帯電ローラ20と、露光手段としての露光装置30と、現像手段としての現像装置40と、中間転写体50と、クリーニングブレードを有するクリーニング手段としてのクリーニング装置60と、除電手段としての除電ランプ70とを備える。
【0162】
中間転写体50は無端ベルトであり、その内側に配置されこれを張架する3個のローラ51によって、図中矢印方向に移動可能に設計されている。3個のローラ51の一部は、中間転写体50へ所定の転写バイアス(一次転写バイアス)を印加可能な転写バイアスローラとしても機能する。中間転写体50には、その近傍に中間転写体用クリーニングブレード90が配置されており、また、記録媒体95に可視像(トナー像)を転写(二次転写)するための転写バイアスを印加可能な前記転写手段としての転写ローラ80が対向して配置されている。中間転写体50の周囲には、この中間転写体50上の可視像に電荷を付与するためのコロナ帯電器58が、中間転写体50の回転方向において、静電潜像担持体10と中間転写体50との接触部と、中間転写体50と記録媒体95との接触部との間に配置されている。
【0163】
現像装置40は、現像剤担持体としての現像ベルト41と、この現像ベルト41の周囲に併設したブラック現像ユニット45K、イエロー現像ユニット45Y、マゼンタ現像ユニット45M、及びシアン現像ユニット45Cとから構成されている。なお、ブラック現像ユニット45Kは、現像剤収容部42Kと現像剤供給ローラ43Kと現像ローラ44Kとを備えている。イエロー現像ユニット45Yは、現像剤収容部42Yと現像剤供給ローラ43Yと現像ローラ44Yとを備えている。マゼンタ現像ユニット45Mは、現像剤収容部42Mと現像剤供給ローラ43Mと現像ローラ44Mとを備えている。シアン現像ユニット45Cは、現像剤収容部42Cと現像剤供給ローラ43Cと現像ローラ44Cとを備えている。また、現像ベルト41は、無端ベルトであり、複数のベルトローラにより回転可能に張架され、一部が静電潜像担持体10と接触している。
【0164】
図8によって示される画像形成装置100において、例えば、帯電ローラ20が感光体ドラム10を一様に帯電させる。露光装置30が感光ドラム10上に像様に露光を行い、静電潜像を形成する。静電潜像担持体10上に形成された静電潜像を、現像装置40からトナーを供給して現像して可視像(トナー像)を形成する。この可視像(トナー像)が、ローラ51から印加された電圧により中間転写体50上に転写(一次転写)され、更に転写紙95上に転写(二次転写)される。その結果、転写紙95上には転写像が形成される。なお、静電潜像担持体10上の残存トナーは、クリーニング装置60により除去され、静電潜像担持体10における帯電は除電ランプ70により一旦、除去される。
【0165】
本実施形態の画像形成方法及び画像形成装置では、シャープな粒度分布を有し、帯電性、環境性、経時安定性などのトナー特性が良好である本実施形態のトナーを用いているので、高画質画像を形成することができる。
【0166】
<<実施形態の補足>>
上記実施形態では、粒子の製造方法に用いられる製造装置が図1に示される粒子製造装置1である場合について説明したが、これに限るものではない。この場合、PGSS(Particles from Gas Saturated Solutions)法で用いられる一般的な吐出装置を使用することができる。
【実施例】
【0167】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施
例に制限されるものではない。なお、実施例中、部はすべて質量部を表す。
【0168】
−ポリエステル樹脂(圧可塑性樹脂)の合成−
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧で230℃で8時間反応させた。さらに10〜15mmHgの減圧で5時聞反応させた後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させてポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25、圧力とガラス転移温度との関係を示すグラフにおける傾きが−10℃/MPaであった。
【0169】
−結晶性ポリエステルの合成−
窒素導入管、脱水管、攪拌機及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに1,4−ブタンジオール25モル、フマル酸23.75モル、無水トリメリット酸1.65モル、ハイドロキノン5.3gを入れ、160℃で5時間反応させた後、200℃に昇温して1時間反応させた。さらに8.3KPaにて1時間反応させ[結晶性ポリエステル樹脂1]を得た。得られた[結晶性ポリエステル樹脂1]は、融点119℃、Mn710、Mw2100、酸価24、水酸基価28であった。
【0170】
−実施例1−
トナー原材料
ポリエステル樹脂1 95部
着色剤(銅フタロシアニンブルー) 5部
パラフィンワックス(融点79℃) 5部
上記原材料をミキサーで混合後、2本ロールミルで溶融混練し、混練物を圧延冷却した。この混練物を図4及び図5で示される粒子製造装置1の高圧セル14に投入し、超臨界流体として二酸化炭素を130℃、65MPaになるように導入し、1時間攪拌を行った。このときの得られた溶融体(トナー溶融物)の粘度は、3mPa・sであった。尚、溶融体の粘度の測定には、ケンブリッジ・ビスコシティー社製粘度測定装置(VISCOlab PVT)を使用した。測定は測定部にサンプルをセットし、温度、圧力を制御し、粘度が一定になったところをその温度、圧力における粘度とした。次にバルブ23を開き、ポンプ22と不図示のヒータとを使用し、65MPa、135℃を維持するようにし、吐出装置31の粒状体形成部331に導入した。この状態でバルブ13bを開き、ポンプ12bを作動させ、溶融体を含む上記トナー原材料を、吐出装置31の貯留部311に導入した。更に、信号発生装置320により交流周波数320KHzの正弦波を、積層PZTで構成された振動手段312に与え、吐出装置31を励振することにより、粒状体を形成し、これを大気圧に戻し固化させることで目的のトナー1を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを下記に示す顕微ストロボ法により確認した。貫通孔317は厚さ50μmのSUS(ステンレス鋼)に直径8.0μmで、千鳥格子状に100個設けたものを使用した。このとき、ポンプ12aと背圧弁15を調整することにより高圧セル14内は、温度130℃、圧力65MPaを一定に維持するようにした。また、開放弁322のバルブを調整し、貯留部311内の圧力と粒状体形成部331上部の圧力差は80±50Kpaに制御した。得られたトナー粒子は、体積平均粒径(Dv)5.02μm、個数平均粒径(Dn)4.91μm、Dv/Dnは1.02であった。尚、本実施例において体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)は、コールターエレクトロニクス社製の粒度測定器(コールターカウンターTAII)を用いて測定した。
【0171】
(顕微ストロボ法による溶融体形状変化の観察)
溶融体の形状の変化は、いわゆる顕微ストロボ法により観察される。この方法によると、貫通孔317近傍を側面から観察できるように、直径1cmの円形の耐圧石英ガラスを粒状体形成部の壁319の側面に設け、貫通孔317を通過した直後の溶融体の形状変化を観察する。また、石英ガラスの正面から30度の照射角になるよう、貫通孔317近傍を照射できる位置にLED(Light Emitting Diode)ライトを設置する。このLEDライトは、溶融体に振動を与える信号発生装置320と同期し点滅する。更に、ガラス正面に、高感度のCCDカメラを設置し、これにより形状変化を撮影する。この場合、溶融体の形状変化がLEDの点滅周期に同期しているときは、その形状が鮮明に写し出されるが、同期しないときはぼやけて写し出される。従って、一定の振動により、柱状体が形成され、括れ状態を経て、粒状体を周期的に形成する場合は、図6のような変化がカメラ観察で確認できるが、柱状体を形成せずランダムな形状変化をする場合は、ぼやけて柱状体や粒状体は確認されないことになる。
【0172】
−実施例2〜8−
実施例1において、貫通孔317の直径、周波数、吐出時の高圧セル14内の処理温度、処理圧力を表1で示される値に変更する以外は、実施例1と同様に操作して、トナー2〜8を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを顕微ストロボ法により確認した。トナー2〜8の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)の測定結果を表1に示す。
【0173】
−実施例9−
実施例1において、トナー原材料に結晶性ポリエステル1を5部、追加して使用する以外は、実施例1と同様に操作して、トナー9を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを顕微ストロボ法により確認した。トナー9の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dn)の測定結果を表1に示す。
【0174】
−比較例1−
信号発生装置320の電源を切り、振動を一切与えないでトナーを作製した以外は、実施例1と同様に操作して、比較トナー1を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを顕微ストロボ法により確認できなかった。得られたトナー粒子は、粒度分布が広くなり、体積平均粒径(Dv)7.83μm、個数平均粒径(Dn)4.32μm、Dv/Dnは1.81であった。
【0175】
−比較例2−
バルブ23を閉じ、吐出装置31の粒状物形成部331には圧縮性流体(二酸化炭素)を導入しないで大気圧のままトナーを作製した以外は、実施例1と同様に操作した。この場合、バルブ13bを開き、ポンプ12bを作動させ、溶融体を含む上記のトナー原材料を導入した瞬間に、貫通孔317を形成する金属板が破断した。これにより、貯留部311の圧力を維持することができなくなり、トナーを得ることができなかった。
【0176】
−比較例3−
バルブ322を調整し、貯留部内圧力と溶融体の粒状物形成部上部の圧力差を750±100Kpaに制御した以外は、実施例1と同様に操作して、比較トナー3を得た。この場合、吐出された溶融体が柱状から括れ状態を経て粒状化されることを顕微ストロボ法により確認できなかった。得られたトナー粒子は、粒度分布が広くなり、体積平均粒径(Dv)6.32μm、個数平均粒径(Dn)4.64μm、Dv/Dnは1.66であった。
【0177】
【表1】

【0178】
このようにして得られた100質量部のトナー(トナーNo.1〜8、9、比較トナー1,3)に疎水性シリカ0.7質量部と、疎水化酸化チタン0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて周速8m/sの条件にて5分間混合した。混合後の粉体を目開き100μmのメッシュに通過させ、粗大粉を取り除いた。次に、この外添剤処理を施したトナー5質量%とシリコーン樹脂を被覆した平均粒子径が40μmの銅−亜鉛フェライトキャリア95質量%とを容器が転動して攪拌される型式のターブラーミキサーを用いて均一混合し帯電させて、2成分現像剤1〜8,9,比較現像剤1,3を調製した。尚、現像剤1〜8,9,比較現像剤1,3に使用されているトナーは、上記のトナー1〜8,9,比較トナー1,3に順次、対応している。
【0179】
また、100質量部のトナー(トナーNo.1〜8、9、比較トナー1,3)に疎水性シリカ0.7重量部と、疎水化酸化チタン0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて周速8m/sの条件にて5分間混合した1成分現像剤10〜17,18,比較現像剤4,6を調製した。尚、現像剤10〜17,18,比較現像剤4,6に使用されているトナーは、上記のトナー1〜8,9,比較トナー1,3に順次、対応している。
【0180】
得られた現像剤1〜8、9、10〜17、18と比較現像剤1,3、4,6について、画像形成装置(2成分現像剤の評価には、株式会社リコー製、IPSio Color 8100を使用、1成分現像剤の評価には、株式会社リコー製、imagio Neo C200を使用)に装填し、画像を出力して、以下のようにして評価した。結果を表2に示す。
【0181】
<画像濃度>
普通紙の転写紙(株式会社リコー製、タイプ6200)に低付着量となる0.3±0.1mg/cmの付着量におけるベタ画像出力後、画像濃度を濃度計X−Rite(X−Rite社製)により測定し、画像濃度1.4以上を◎、1.35以上1.4未満を○、1.3以上1.35未満を△、1.3未満を×とした。
【0182】
<クリーニング性>
画像面積率95%チャートを1000枚出力後の清掃工程を通過した感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で採取して白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ブランクとの差が0.005未満である。
○:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
△:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
×:ブランクとの差が0.02を超える。
【0183】
<トナー飛散>
温度40℃、湿度90%RHの環境下、画像形成装置(株式会社リコー製、IPSiO Color8100)をオイルレス定着方式に改造してチューニングした評価機を用いて、各トナーを用いて画像面積率5%チャート連続100000枚出力耐久試験を実施後の複写機内のトナー汚染状態を目視にて、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:トナー汚れがまったく観察されず良好な状態である。
○:わずかに汚れが観察される程度であり問題とならない。
△:少し汚れが観察される程度である。
×:許容範囲外で非常に汚れがあり問題となる。
【0184】
<転写性>
画像面積率20%チャートを感光体から紙に転写後、クリーニングの直前における感光体上の転写残トナーをスコッチテープ(住友スリーエム株式会社製)で白紙に移し、それをマクベス反射濃度計RD514型で測定し、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
◎:ブランクとの差が0.005未満である。
○:ブランクとの差が0.005〜0.010である。
△:ブランクとの差が0.011〜0.02である。
×:ブランクとの差が0.02を超える。
【0185】
<帯電安定性>
各トナーを用いて、画像面積率12%の文字画像パターンを用いて、連続10万枚出力耐久試験を実施し、そのときの帯電量の変化を評価した。スリーブ上から現像剤を少量採取し、ブローオフ法により帯電量変化を求め、下記基準により評価した。
〔評価基準〕
○:帯電量の変化が5μc/g未満である。
△:帯電量の変化が5μc/g以上10μc/g以下である。
×:帯電量の変化が10μc/gを超える。
【0186】
<フィルミング性>
画像面積率100%、75%、及び50%の帯チャートを1000枚出力後の現像ローラ、及び感光体上のフィルミングを観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
◎:まったくフィルミングが発生していない。
○:うっすらとフィルミングの発生を確認できる。
△:スジ状にフィルミングが発生している。
×:全面にフィルミングが発生している。
【0187】
<総合評価>
各評価項目の評価結果の◎を1点、○を0点、△を−1点、×を−2点とし、合計点により総合評価を行った。
〔評価基準〕
◎:合計点が4〜5点
○:合計点が0〜3点
△:合計点が−3〜−1点
×:合計点が−4点以下
【0188】
【表2】

【符号の説明】
【0189】
1 粒子製造装置
11,21 ボンベ
12a,12b,22 ポンプ
13a,13b,23 バルブ
14 温度調節器付き高圧セル
15 背圧弁
16 溶融体供給部
26 圧力制御手段
31 吐出装置(吐出手段の一例)
311 貯留部
312 振動手段
313 支持手段
317 貫通孔
318 供給部
320 信号発生装置
321 導電線
322 開放弁
24 供給部
331 粒状体形成部
332 開口部
21 ボンベ
31 溶融体
32 粒子
33 粒状体
101 静電潜像担持体
102 帯電手段
103 露光手段による露光
104 現像手段
105 記録媒体
107 クリーニング手段
108 転写手段
10 感光体
20 帯電ローラ
30 露光装置
40 現像装置
41 現像ベルト
42 現像剤収容部
43 現像剤供給ローラ
44 現像ローラ
45 現像ユニット
50 中間転写体
51 ローラ
58 コロナ帯電器
60 クリーニング装置
70 除電ランプ
80 転写ローラ
90 中間転写体用クリーニングブレード
95 記録媒体
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0190】
【特許文献1】特許第2677685号公報
【特許文献2】特開平9−34167号公報
【特許文献3】特許第4113452号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮性流体と、圧可塑性材料とを接触させて、前記圧可塑性材料の溶融体を作製する溶融工程と、
前記溶融体を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状態を経て粒状化させる造粒工程と、
を有することを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
圧縮性流体と、圧可塑性材料を含むトナー材料とを接触させて、前記圧可塑性材料を溶融体として含むトナー材料を作製する溶融工程と、
前記圧可塑性材料を溶融体として含むトナー材料を、振動させた貫通孔から圧力差により吐出させることで、柱状から括れ状体を経て粒状化させる造粒工程と、
を有することを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項3】
前記圧可塑性材料が、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことを特徴とする請求項2に記載のトナーの製造方法。
【請求項4】
前記圧縮性流体が、超臨界二酸化炭素又は液化二酸化炭素を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のトナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子の製造方法により製造されたことを特徴とする粒子。
【請求項6】
請求項2乃至4のいずれか一項に記載のトナーの製造方法により製造されたことを特徴とするトナー。
【請求項7】
有機溶媒を実質的に含有しないことを特徴とする請求項6に記載のトナー。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のトナーを含むことを特徴とする現像剤。
【請求項9】
静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体上に請求項6又は7に記載のトナーを用いて静電潜像を現像して可視像を形成する現像手段とを有し、
画像形成装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
【請求項10】
静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を請求項6又は7に記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着する定着工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
静電潜像担持体と、
該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記静電潜像を請求項6又は7に記載のトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
圧縮性流体と圧可塑性材料とを接触させて作製された前記圧可塑性材料の溶融体を吐出するための吐出手段と、
前記吐出手段から吐出した前記溶融体が粒状化するための空間を有する粒状体形成部と、
を備え、
前記吐出手段は、前記溶融体を貯留するための貯留部、該貯留部を構成する壁の一部に形成された1以上の貫通孔、及び該貫通孔に振動を付与するために前記貯留部に接するように配置された振動手段、を少なくとも有し、
前記粒状体形成部は、前記貫通孔から吐出した前記溶融体が、柱状から括れ状態を経て粒状化するように前記空間と前記貯留部内の圧力差を制御するための圧力制御手段をさらに備える、
ことを特徴とする粒子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115766(P2012−115766A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267703(P2010−267703)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】