説明

粘接着組成物及び粘接着シート

【課題】硬化前には適度な粘弾性を有し、弱い圧力で被着体に圧着させることができ、また、高温下で長時間反応させることなく高い凝集力を示す粘接着組成物及び粘接着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の粘接着組成物は、脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の硬化剤と、を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種は、エポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着組成物及び該粘接着組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形された被加飾品を加飾する方法として、例えば、塗装、クリアコート剤等の塗布、装飾フィルムの貼付等が行われてきた。しかしながら、塗装やクリアコート剤等の塗布による加飾方法では、溶剤を使用するため環境を汚染するおそれがあり、また、装飾フィルムの貼付による加飾方法では、被加飾品が複雑な形状を有する場合、加飾を部分的にしか行えないという問題があった。
【0003】
これまで、溶剤を使用せず、且つ貼付によらない加飾方法として、真空成形等による一体成形法が種々、提案されており、自動車内装品や家電製品等に用いられている。例えば、特許文献1には、熱可塑性の合成樹脂シートを加熱し、真空吸引により被加飾品に貼付する一体成形法が提案されている。また、特許文献2には、ホットメルト粘着剤層を設けてなる装飾フィルムを加熱し、射出成形金型内に装着させ、この射出成形金型内に被加飾品を押しつけることにより、装飾フィルムと被加飾品とを接合させる一体成形法が提案されている。
【0004】
しかしながら、上記のいずれの一体成形法も熱可塑性樹脂を接着剤として使用するため、接着剤が可塑状態となり、接着強度が低下する高温環境下で使用される製品が被加飾品の場合には適用することができなかった。また、熱可塑性樹脂は接着強度が低いため、被加飾品に対する密着性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2566744号公報
【特許文献2】特許2001−150534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記問題を有する熱可塑性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を接着剤として使用した場合には、高温下で長時間かけて硬化させる必要があるため、耐熱性が低い樹脂製品に接着させると、該樹脂製品が熱で変形するという問題がある。また、電離放射線硬化型樹脂を使用した場合には、貼付後に電離放射線を照射して硬化させる必要があるため、製品の材質を電離放射線が透過可能なものにしなければならない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、硬化前には適度な粘弾性を有し、弱い圧力で被着体に圧着させることができ、また、高温下で長時間反応させることなく、高い凝集力を示す粘接着組成物及び粘接着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねたところ、脂肪族ポリアミドと、特定の変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の特定の硬化剤とを含有する粘接着組成物によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の硬化剤と、を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種は、エポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物であることを特徴とする粘接着組成物。
【0010】
(2) 上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物は、カチオン重合開始剤である(1)に記載の粘接着組成物。
【0011】
(3) 厚さ15μmの粘接着剤層を形成した場合において、上記粘接着剤層のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、硬化前では2〜24N/25mmであり、且つ、硬化後では25N/25mm以上であって、上記硬化が120℃にて3分間行われる(1)又は(2)に記載の粘接着組成物。
【0012】
(4) (1)〜(3)いずれかに記載の粘接着組成物からなる粘接着剤層と、1層以上の剥離可能な保護フィルム層を有する粘接着シート。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘接着組成物は、硬化前には適度な粘弾性を有するので、弱い圧力で圧着させることができ、且つ、高温下で長時間反応させることなく高い凝集力を示すので、被着対象の材質を問わず適用することができる。また、シート適正にも優れる。
そして、このような本発明の粘接着組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シートは、適度な粘接着性と良好な密着性とを示す。また、成形性に優れ、特に真空形成による一体成形法に好適に使用することができる。更に、耐久性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0015】
[粘接着組成物]
本発明の粘接着組成物は、脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の硬化剤と、を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種が、エポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物であることを特徴とする。本発明の粘接着組成物では、構成成分として、脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、少なくともエポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物を含む異なる2種以上の硬化剤と、を選択することにより、粘接着組成物の物性を調整した点に特徴がある。本発明の粘接着組成物によれば、被着対象の材質を問わず適用することができる。また、シート適正にも優れる。更に、硬化前には適度な粘弾性を有するので、弱い圧力で圧着させることができ、且つ、硬化の際には高温下で長時間反応させることなく高い凝集力を示すので、特に、真空形成による一体成形法に好適に使用することができる。そして、本発明の粘接着組成物からなる粘接着剤層は、被着体に対して良好な接着性と密着性とを示し、また、耐久性に優れる。以下、本発明の粘接着組成物に含まれる各成分について、具体的に説明する。
【0016】
<脂肪族ポリアミド>
本発明の粘接着組成物は、熱可塑性樹脂である脂肪族ポリアミドを含有する。本発明の粘接着組成物によれば、脂肪族ポリアミドを含有するので、装飾フィルム等を加飾する製品に弱い圧力で圧着させることができる。本発明の粘接着組成物では、脂肪族ポリアミドは、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリアミノウンデカン酸(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンジアミノアジピン酸(ナイロン−66)、ポリヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−610)、ポリヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−612)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ナイロン−6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/アミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム(ナイロン−6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸(ナイロン−6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカン二酸(ナイロン−6/66/612)等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
上記脂肪族ポリアミドとしては、例えば、質量平均分子量が1000〜200,000の範囲内のものが好適であり、形成される粘接着剤層の接着力、耐久性等を向上させるためには、上記範囲内において高分子量のものを用いることが好ましい。脂肪族ポリアミドの質量平均分子量が1000未満であると、硬化後の粘接着剤層の凝集力が十分ではなく、耐久性が劣る場合がある。また、200,000を超えると、十分な初期粘着力が得られない場合がある。なお、上記質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算の値である。
【0018】
上記脂肪族ポリアミドの市販品としては、例えば、TPAE−826−4S(富士化成工業社製)、TAPE−826−5A(富士化成工業社製)、ニューマイド 515−ME(ハリマ化成社製)、ニューマイド 945(ハリマ化成社製)、ニューマイド 947(ハリマ化成社製)等が好適である。
【0019】
本発明の粘接着組成物における上記脂肪族ポリアミドの含有量(固形分換算)は、20〜80質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、20〜25質量%であることが最も好ましい。なお、脂肪族ポリアミドの含有量が20質量%未満であると、硬化前の粘接着剤層の凝集力が十分ではなく、シート化が困難な場合がある。また、80質量%を超えると、十分な初期粘着力が得られない場合がある。
【0020】
本発明の粘接着組成物は、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂を含有する。
【0021】
<ダイマー酸変性エポキシ樹脂>
ダイマー酸変性エポキシ樹脂とは、ダイマー酸で変性したエポキシ樹脂をいう。ダイマー酸変性エポキシ樹脂によれば、粘接着組成物の硬化物の可撓性及び被着体との密着性を向上させることができる。本発明の粘接着組成物では、ダイマー酸変性エポキシ樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノール型、エーテルエステル型、ノボラックエポキシ型、エステル型、脂肪族型、芳香族型等のエポキシ樹脂をダイマー酸で変性した公知のダイマー酸変性エポキシ樹脂を用いることができる。本発明の粘接着組成物では、短時間での硬化を実現するために、反応性が高く、且つ、エポキシ当量が低いダイマー酸変性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。例えば、エポキシ当量は、100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。また、ダイマー酸変性エポキシ樹脂の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは300〜2000の範囲内である。そして、形成される粘接着剤層の接着力、耐久性等を向上させるためには、上記範囲内において高分子量のものを用いることがより好ましい。なお、上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、jER871(三菱化学社製)、jER872(三菱化学社製)、YD−172(新日鐵化学製)等が好適である。
【0022】
本発明の粘接着組成物がダイマー酸変性エポキシ樹脂を含有する場合には、本発明の粘接着組成物におけるダイマー酸変性エポキシ樹脂の含有量(固形分換算)は、5〜60質量%であることが好ましく、5〜40質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更により好ましい。なお、ダイマー酸変性エポキシ樹脂の含有量が5質量%未満であると、十分な密着性を有する粘着剤層が得られない場合がある。また、60質量%を超えると、粘接着剤層の凝集力が低下し、硬化後の粘接着剤層と基材との間の接着性が低下するおそれがある。
【0023】
<NBR変性エポキシ樹脂>
本発明においてNBR変性エポキシ樹脂とは、ブタジエンとアクリロニトリルとの共重合体であるニトリルゴム(NBR)で変性したエポキシ樹脂又はNBRをエポキシ樹脂由来のグリシジル基(エポキシ基)で変性したものをいう。NBR変性エポキシ樹脂によれば、粘接着組成物の硬化物の可撓性、耐熱性、及び被着体との密着性を向上させることができる。また、ゴム相が硬化したエポキシ樹脂中では相溶性を示さないので、耐熱性を維持した状態で、可撓性及び被着体に対する接着性の付与が可能となる。本発明の粘接着組成物では、NBR変性エポキシ樹脂は、特に限定されるものではなく、例えば、ビスフェノール型、ノボラックエポキシ型、エーテルエステル型、エステル型、脂肪族型、芳香族型等のエポキシ樹脂をNBRで変性した公知のNBR変性エポキシ樹脂を用いることができるが、コスト、粘着物性及び反応性のバランスの観点からビスフェノールA型のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。なお、耐熱性の観点では、ノボラックエポキシ型、芳香族型のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、可撓性の観点では、エーテルエステル型、エステル型、脂肪族型のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
本発明の粘接着組成物では、短時間での硬化を実現するために、反応性が高く、且つ、エポキシ当量が低いNBR変性エポキシ樹脂を用いることが好ましい。例えば、エポキシ当量は、100〜800g/eq.の範囲内であることが好ましい。上記エポキシ当量は、JIS K7236に準拠した方法により測定した1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数である。また、NBR変性エポキシ樹脂の質量平均分子量は、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは300〜2000の範囲内である。そして、形成される粘接着剤層の接着性、耐久性等を向上させるためには、上記範囲内において高分子量のものを用いることがより好ましい。なお、上記NBR変性エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、EPR−4030(ADEKA社製)、EPR−4033(ADEKA社製)、EPB−13(日本曹達社製)等が挙げられる。
【0025】
本発明の粘接着組成物がNBR変性エポキシ樹脂を含有する場合には、本発明の粘接着組成物におけるNBR変性エポキシ樹脂の含有量(固形分換算)は、2〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。なお、NBR変性エポキシ樹脂の含有量が2質量%未満であると、被着体によっては十分な密着力が得られず、接着性が低下する場合がある。また、30質量%を超えると、粘接着剤層の凝集力が低下し、硬化後の粘接着剤層と基材との間の接着性が低下するおそれがある。
【0026】
<硬化剤>
本発明の粘接着組成物は、異なる2種以上の硬化剤を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種が、エポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物である。本発明の粘接着組成物では、上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び上記NBR変性エポキシ樹脂を硬化させるために、少なくともエポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物を含有する。
【0027】
エポキシ樹脂を硬化させる化合物としては、特に限定されるものでなく、例えば、イミダゾール、ポリアミン(脂肪族、芳香族等)、アミドイミド、ジシアンジアミド等の熱硬化剤やカチオン重合開始剤等を好適に用いることができるが、反応温度の制御が容易である点において、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。また、配合時に活性水素と反応しうる官能基を有する硬化剤と反応する可能性が低い点においても、カチオン重合開始剤を用いることが好ましい。ここで、カチオン重合開始剤とは、光照射及び/又は加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出するものをいう。カチオン重合開始剤としては、例えば、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物としては、従来公知のものを使用することができるが、市販品としては、例えば、サンエイド SI−60L(三新化学社製)、サンエイド SI−80L(三新化学社製)、サンエイド SI−100L(三新化学社製)、CI−2064(日本曹達社製)、イルガキュア 261(チバスペシャリティーケミカルズ社製)、アデカオプトマー SP−150(ADEKA社製)、アデカオプトマー SP−170(ADEKA社製)等のカチオン重合開始剤や、例えば、アミキュア MY−24(味の素ファインテクノ社製)、アミキュア PN−23(味の素ファインテクノ社製)、アデカハードナー EH−4338S(ADEKA社製)、アデカハードナー EH−4070S(ADEKA社製)、ノバキュア HX−3722(旭化成エポキシ社製)、ノバキュア HX−3748(旭化成エポキシ社製)、フジキュア FXE−1000(富士化成工業社製)、フジキュア FXR−1080(富士化成工業社製)、2M4MZ(四国化成工業社製)、2PZ(四国化成工業社製)等の熱硬化剤が挙げられる。
【0029】
本発明の粘接着組成物における上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物の含有量(固形分換算)は、0.5〜80質量%であることが好ましく、1.0〜50質量%であることがより好ましい。上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物の含有量を調整することで、本発明の粘接着組成物からなる粘接着剤層の硬化反応速度や、該粘接着剤層の硬化物の弾性率等の物性を好ましい範囲とすることができる。粘接着組成物における上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物の含有量が0.5質量%よりも少ないと硬化が不十分となり、所望の接着性が得られない場合がある。また、80質量%よりも多いと性能に対してコスト高になる場合がある。
【0030】
上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物としては、特に限定されるものでなく、本発明の粘接着組成物に含まれる上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び上記NBR変性エポキシ樹脂やその他の含まれうる各種樹脂に由来する水酸基、アミノ基等の活性水素と反応しうる官能基を有する公知の硬化剤を用いることができる。活性水素と反応しうる官能基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、カルボジイミド基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基等が挙げられる。上記官能基を有する硬化剤としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、金属キレート系硬化剤等が挙げられる。これらの中でも、反応性及び接着性の観点からイソシアネート系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が好ましい。イソシアネート系硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。また、カルボジイミド系硬化剤としては、ジシクロへキシルカルポジイミド、ジイソプロピルカルポジイミド等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の粘接着組成物では、活性水素と反応しうる官能基を有する化合物を含有することで、短時間の加熱により接着力が発現する凝集力が得られる。
【0031】
上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物の市販品としては、例えば、TD−75(綜研化学社製)、タケネート 500(三井化学社製)等のイソシアネート系硬化剤、カルボジライト V−05(日清紡ケミカル社製)等のカルボジイミド系硬化剤、アルミキレートA(川研ファインケミカル社製)等の金属キレート硬化剤が挙げられる。
【0032】
本発明の粘接着組成物における上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物の含有量(固形分換算)は、0.05〜50質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物の含有量を調整することで、本発明の粘接着組成物からなる粘接着剤層の初期粘着性(タック)や粘接着剤層の硬化物の弾性率等の物性を好ましいものとすることができる。粘接着組成物における上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物の含有量が0.05質量%よりも少ないと硬化が不十分となり、所望の接着性が得られない場合がある。また、50質量%よりも多いと性能に対してコスト高となる場合がある。
【0033】
<その他の成分>
本発明の粘接着組成物には、その他に本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、各種樹脂及び各種添加剤を配合してもよい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等のダイマー酸変性又はNBR変性していない芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルホルマール樹脂等の各種樹脂を被着体に対する接着性や耐久性の向上、粘接着剤層に対する可撓性の付与、硬化条件の調整等のために配合してもよい。また、本発明の粘接着組成物の硬化速度を調整するために硬化促進剤を配合してもよいし、被着体に対する接着性や密着性を向上させるためにカップリング剤を配合してもよい。更に、酸化防止剤、顔料、染料、帯電防止剤、界面活性剤等の各種添加剤も配合することができる。
【0034】
本発明の粘接着剤組成物は、厚さ15μmの粘接着剤層を形成した場合において、上記粘接着剤層のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、硬化前では2〜24N/25mmであり、且つ、120℃にて3分間加熱処理して硬化した後では25N/25mm以上であることが好ましい。そして、硬化前では、9〜17N/25mmであり、且つ、120℃にて3分間加熱処理して硬化した後では27N/25mm以上であることがより好ましい。硬化前の粘着力が2N/25mm未満であると、被着体によっては初期粘着性が劣る場合があり、24N/25mmを超えると、初期粘着力としては強いため、被着体によっては作業性や再剥離性が劣る場合がある。また、硬化後の粘着力が25N/25mm未満であると、高温での剥がれ等が生じる場合がある。
【0035】
上記粘接着組成物からなる粘接着剤層の厚みは、特に限定されるものではなく、用途に応じて、適宜選択することができる。通常、5〜500μmであり、好ましくは10〜50μmである。厚みが5μm未満であると、十分な接着強度が得られない場合があり、500μmを超えると、性能に対してコスト高となったり、また、加工条件によっては、十分な接着性を発現するための熱量や圧力が不足したりする可能性がある。なお、真空形成による一体成形法に適用する場合には、100μmを超えると十分な接着性が得られない可能性がある。
【0036】
[粘接着シート]
本発明の粘接着シートは、脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の硬化剤と、を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種がエポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物である上記粘接着剤組成物からなる粘接着剤層と、1層以上の剥離可能な保護フィルム層を有する。
【0037】
<保護フィルム層>
本発明の粘接着シートは、1層以上の剥離可能な保護フィルム層を有する。ここで、保護フィルム層とは、粘接着剤層の上に積層された剥離性を有する剥離部材からなり、粘接着剤層の表面を保護する機能を有する剥離シートを意味する。剥離部材は、必要な強度や柔軟性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、一般的には、シリコーン離型処理した合成樹脂フィルムが用いられる。合成フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂が好ましい。なお、保護フィルム層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは25〜100μmである。
【0038】
本発明の粘接着シートの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、上記脂肪族ポリアミドと、上記ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、上記エポキシ樹脂を硬化させる化合物と、上記活性水素と反応しうる官能基を有する化合物と、更に必要に応じて、上記各種樹脂と、上記各種添加剤と、を有機溶剤に溶解・分散させることにより、粘接着剤層形成用塗工液を得る。次いで、該塗工液を、剥離可能な保護フィルムの剥離処理面上にアプリケータ等により全面塗工し、粘接着剤層を形成する。その後、該粘接着剤層を乾燥させ、剥離可能な保護フィルムをラミネートすることにより、本発明の粘接着シートを形成することができる。有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、これらの混合溶液等を好適に使用することができる。上記塗工液を、剥離可能な保護フィルム層上に塗工する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ダイコート法、コンマコート法等が挙げられる。
【0039】
本発明の粘接着シートの厚みは、特に限定されるものではないが、5〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。上記範囲であれば、適度な柔軟性を有するので、取り扱いが容易となる。
【0040】
本発明の粘接着シートは、製品の材質を問わず適用することができる。また、本発明の粘接着シートを構成する粘接着剤層は、被着体に対して良好な接着性及び密着性を示し、耐久性にも優れるので、例えば、自動車、鉄道等の車両、航空機、及び船舶の内装材や外装材、窓枠や扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、机、テーブル、本棚等の家具、テレビや空調機等の家電製品の筐体や容器、パソコン等のOA機器や携帯電話、電子書籍等の小型電子モバイルの筐体等にも適用することができる。更に、本発明の粘接着シートは、粘接着剤層を構成する粘接着組成物の硬化前においては、被着体に弱い圧力で圧着させることができ、その後の低温且つ短時間での硬化により、良好な接着性と密着性とを実現させることができるので、特に、真空形成による一体成形法に好適に使用することができる。
【0041】
本発明の粘接着シートは、上記粘接着剤層の上に加飾印刷層を積層することで、加飾フィルムとして好適に使用することができる。加飾印刷層は、本発明の粘接着シートに意匠性を付与するために設けられる層であり、通常は、基材上に印刷インキで模様や文字がグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の方法により印刷されたものである。加飾印刷層の上には、表面保護層を更に形成してもよい。また、発明の粘接着シートは、上記粘接着剤層の上に強化フィルムを積層することで、保護フィルムとしても好適に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0043】
<実施例1>
脂肪族ポリアミド(商品名:TAPE−826−5A,重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体,アミノ基含有,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)20質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)15質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)10質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、ポリイミド樹脂(商品名:ネオプリム,三菱ガス化学社製)5質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製した。
【0044】
そして、剥離可能な保護フィルム層である剥離シート(商品名:SP−PET−03,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)の剥離処理面上に、乾燥後の膜厚が15μmとなるように上記粘接着剤層形成用塗工液をアプリケータにより全面塗工した後、乾燥オーブンにより80℃で3分間乾燥させた。次いで、剥離可能な保護フィルム層である剥離シート(商品名:SP−PET−01,片面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施されてなるポリエステルフィルム,膜厚:38μm,東セロ社製)とラミネートした後、40℃のオーブン中にて72時間エージングを行い、実施例1の粘接着シートを得た。
【0045】
<実施例2>
脂肪族ポリアミド(商品名:TAPE−826−5A,重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体,アミノ基含有,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)20質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)15質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)10質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、ポリビニルホルマール樹脂(商品名:ビニレックK,質量平均分子量:5万,チッソ社製)5質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2の粘接着シートを得た。
【0046】
<実施例3>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)15質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)10質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例3の粘接着シートを得た。
【0047】
<実施例4>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)25質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例4の粘接着シートを得た。
【0048】
<実施例5>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)25質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例5の粘接着シートを得た。
【0049】
<実施例6>
脂肪族ポリアミド(商品名:TAPE−826−5A,重合脂肪酸系ポリエーテルエステルアミドブロック共重合体,アミノ基含有,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)25質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:TD−75,キシリレンジイソシアネート,綜研化学社製)5質量部と、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部とを配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて実施例6の粘接着シートを得た。
【0050】
<比較例1>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)15質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)10質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER1001,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:480g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部を配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例1の粘接着シートを得た。
【0051】
<比較例2>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、NBR変性エポキシ樹脂(商品名:EPR−4030,エポキシ当量:380g/eq.,ADEKA社製)25質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部を配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例2の粘接着シートを得た。
【0052】
<比較例3>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)25質量部と、ダイマー酸変性エポキシ樹脂(商品名:jER872,エポキシ当量:650g/eq.,三菱化学社製)50質量部と、芳香族エポキシ樹脂(商品名:jER828,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:180g/eq.,三菱化学社製)25質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:サンエイド SI−80L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)2.25質量部を配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例3の粘接着シートを得た。
【0053】
<比較例4>
脂肪族ポリアミド(商品名:TPAE−826−4S,質量平均分子量:1万,富士化成工業社製)50質量部と、脂環式エポキシ樹脂(商品名:セロキサイド2021P,エポキシ当量:127g/eq.,ダイセル化学社製)40質量部と、希釈溶剤(商品名:KT−11,MEK:トルエン=1:1,DICグラフィックス社製)400質量部とを混合し、80℃に加熱しながらディスパーにて回転数1000rpmで100分間攪拌し、溶解させた後、室温にて放冷し、硬化剤(商品名:サンエイド SI−60L,芳香族スルホニウム塩,三新化学社製)1.5質量部を配合し、更にディスパーにて回転数1000rpmで20分間攪拌し、粘接着剤層形成用塗工液を調製する以外は、実施例1と同様の方法にて比較例4の粘接着シートを得た。
【0054】
[粘着性評価]
上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、基材シート(商品名:E5100,片面にコロナ処理が施されてなるPETフィルム,膜厚:38μm,東洋紡績社製)のコロナ処理面に貼付させた後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を、ステンレス板に2kgのローラーを用いてラミネートした。そして、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて、硬化前のステンレス板面に対する粘着力を測定(JIS Z0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)した。また、上記試験片を、ステンレス板に2kgのローラーを用いてラミネートし、乾燥オーブンにて120℃で3分間加熱した後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下に24時間放置した。そして、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて、硬化後のステンレス板面に対する粘着力を測定(JIS Z0237準拠,速度:300mm/min,剥離距離:150mm,剥離角:180°)し、粘接着性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:硬化前の粘着力が2〜24N/25mmであり、且つ、硬化後の粘着力が25N/25mm以上、×:硬化前の粘着力が2N/25mm未満、硬化前の粘着力が24N/25mm超、又は、硬化後の粘着力が25N/25mm未満。
【0055】
[シート適正評価]
上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を手で剥がし、剥がした時の状態を観察し、シート適正を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:剥離シートから問題なく剥離した、×:粘接着剤層の凝集力が弱く、シートを形成できなかった。
【0056】
[成形性評価]
動的弾性率を有する基材シート(商品名:ソフトシャインA1597,ポリエステルフィルム,膜厚:50μm,東洋紡社製)上に、アクリル系樹脂をバインダー樹脂とし、シリコーン系樹脂を離型性材料とする塗工液を塗工量4g/mでグラビア印刷を施し、剥離層を形成した。この剥離層上に、アクリル系印刷インキを用いて木目模様を、塗工量8g/mでグラビア印刷を施し、絵柄層を形成し、加飾シートを得た。そして、上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、上記加飾シートの基材シートに貼付させ、ラミネートした後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片の剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、ABS成型品に貼付させ、真空成型装置(布施真空社製)を用い、真空成形(120〜150℃,5分間)を行った。真空成形後の粘接着シートとABS成型品との接着の状態を観察し、成形性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:シートの浮きやシワがなく、真空成形可能、×:シートの浮きやシワがあり、真空成形不可能。
【0057】
[密着性評価]
動的弾性率を有する基材シート(商品名:ソフトシャインA1597,ポリエステルフィルム,膜厚:50μm,東洋紡社製)上に、アクリル系樹脂をバインダー樹脂とし、シリコーン系樹脂を離型性材料とする塗工液を塗工量4g/mでグラビア印刷を施し、剥離層を形成した。この剥離層上に、アクリル系印刷インキを用いて木目模様を、塗工量8g/mでグラビア印刷を施し、絵柄層を形成し、加飾シートを得た。そして、上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、上記加飾シートの基材シートに貼付させ、ラミネートした後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片の剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、ステンレス板に貼付させ、2kgのローラーを用いてラミネートし、乾燥オーブンにて120℃で3分間加熱した後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下に30分放置した。その後、上記加飾シートの絵柄層の面に、2kgのローラーを用いて、長さ50mmのセロテープ(登録商標,型番:CT−15,ニチバン社製)を貼り付け、引張り試験機(製品名:RTF−1150H,A&D社製)を用いて、絵柄層の面からセロテープを剥がし(速度:2000mm/min,剥離角:180°)、剥がした後の絵柄層の表面を観察し、密着性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:剥離無し、△:剥離割合が10%未満、×:剥離割合が10%以上。
【0058】
[耐久性評価]
上記実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた粘接着シートの剥離シート(SP−PET−01)を剥がし、上記加飾シートの基材シートに貼付させ、ラミネートした後、25mm×150mmに切断し、試験片を作成した。この試験片を、上記粘接着シートの剥離シート(SP−PET−03)を剥がし、ステンレス板に貼付させ、2kgのローラーを用いてラミネートし、乾燥オーブンにて120℃で3分間加熱した後、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下に30分放置した。その後、100℃の雰囲気下の乾燥オーブンに、12時間放置し、放置後の試験片を目視にて観察し、耐久性を評価した。なお、評価基準は次の通りである。○:膨れやクラックが認められない、×:膨れやクラックが認められる。
【0059】
【表1】

【0060】
脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、硬化剤としてエポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物と、を含有する粘接着組成物からなる粘接着剤層を有する粘接着シート(実施例1〜6)は、いずれも良好なシート適性、密着性及び耐久性を示した。
また、実施例1〜6の粘接着シートは、粘接着組成物の硬化前には、適度な粘着性を示し、接着対象物に対して弱い力で圧着させ得ることが確認された。
更に、実施例1〜6の粘接着シートの粘接着剤層を構成する粘接着組成物は、高温下で長時間硬化させることなく高い凝集力を示し、真空条件下で短時間硬化させた場合であっても、強い接着性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミドと、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及び/又はNBR変性エポキシ樹脂と、異なる2種以上の硬化剤と、を含有し、該異なる2種以上の硬化剤のうち少なくとも2種は、エポキシ樹脂を硬化させる化合物及び活性水素と反応しうる官能基を有する化合物であることを特徴とする粘接着組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂を硬化させる化合物は、カチオン重合開始剤である請求項1に記載の粘接着組成物。
【請求項3】
厚さ15μmの粘接着剤層を形成した場合において、
前記粘接着剤層のステンレス板に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237準拠)が、硬化前では2〜24N/25mmであり、且つ、硬化後では25N/25mm以上であって、
前記硬化が120℃にて3分間行われる請求項1又は2に記載の粘接着組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の粘接着組成物からなる粘接着剤層と、1層以上の剥離可能な保護フィルム層を有する粘接着シート。

【公開番号】特開2012−25839(P2012−25839A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165385(P2010−165385)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】