説明

粘着テープ、及びその製造方法

【課題】特に粘着剤層が合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形した場合にも、優れた巻き戻し性を示し、粘着剤層表面の汚染を抑制した、粘着強度に優れる粘着テープを提供する。
【解決手段】基材層、当該基材層の片面に形成された背面処理層、及び当該基材層のもう一方の片面に形成された粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる粘着テープであって、前記背面処理層が、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物からなることを特徴とする粘着テープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、さらに詳細には、基材層と背面処理層と粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、樹脂フィルム、紙、織布、不織布、金属箔等からなる基材層の一面に感圧接着剤からなる粘着剤層を設けたものをロ−ル状に巻いた粘着テープは、多数知られており、各種物品の包装、接合、表面保護等の各種用途に広く用いられている。
【0003】
これらの粘着テープは、ロール状に捲回された際に、基材層の粘着剤層を設けた面の反対側の他面に粘着剤層が当接して粘着し、ロ−ルを巻き戻す際に大きな巻き戻し力を必要とすることがあり、さらには粘着したまま剥離せず、巻き戻すことが困難となることがある。これを防止し、巻き戻し力を適度にするために、粘着剤層と当接する基材層の他面に背面処理が施されている。
【0004】
これらの背面処理に用いられる代表的な剥離剤として、シリコーン系樹脂が公知である。しかし、シリコーン系樹脂からなる剥離剤を用いても、剥離剤が粘着剤層の表面に移行して粘着力が低下してしまうなどの粘着剤層表面の汚染に主に起因すると考えられている問題点や、テープ又はシートを重ねて貼ることができず、また、表面に油性インキ等によって筆記することができる性質(いわゆるマジックインキ筆記性)が悪くなること、及びスリップ性が大きくなりすぎてしまうなどのシリコーン系樹脂による背面処理層表面の問題点がある。
【0005】
これまでに、上述した問題点を改善する試みとして、粘着テープにおいて、基材層又は粘着剤層の少なくとも一方に脂肪酸アミド化合物を配合した粘着フィルム(たとえば、特許文献1参照)、基材層の背面を摩擦処理した粘着テープ等(たとえば、特許文献2及び3参照)が開示されている。
【0006】
しかし、これらの粘着剤層又は背面処理層を有する粘着テープ等では、粘着剤層がアクリル酸エステルを主成分とするものである場合には、優れた巻き戻し性の発現は図れるものの、天然、及び/又は合成ゴムを主成分とする粘着剤に対しては、良好な巻き戻し性の発現は図れてはいない。これは、一般に天然ゴム、及び/又は合成ゴムを主成分とする粘着剤は、アクリル系粘着剤に比べて被着体選択性が小さく、比較的何にでも良く接着することと関係していると推測されている。また、アクリル系粘着剤は、低温における初期粘着性が弱く、コストも高いため、使用するテープ又はシートが制限されるなどの問題がある。
【0007】
一方、天然、及び/又は合成ゴムを主成分とする粘着剤に対しての上記剥離剤の移行による粘着力の低下等を改善する試みとして、ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネートを使用した粘着テープも公知である(例えば、特許文献4参照)。しかし、かかる粘着テープでは、押出成形時に背面処理剤が熱劣化して低分子化合物が生成するため、粘着剤層の汚染の原因となることが判明した。
【0008】
上述のように、これらのいずれにおいても、天然、及び/又は合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形に対して、いまだ良好な巻き戻し性、粘着剤層表面の汚染の抑制、及び優れた粘着強度をバランスよく解決できうるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−136367号公報
【特許文献2】特開平2−252777号公報
【特許文献3】特開平4−226182号公報
【特許文献4】特開平11−43655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、従来の粘着テープにおける上記問題点を解消すべく、特に粘着剤層が合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形した場合にも、優れた巻き戻し性を示し、粘着剤層表面の汚染を抑制した、粘着強度に優れる粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の目的を達成するため、背面処理層の成分について鋭意検討した結果、背面処理層に、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物を用いることにより、合成ゴムを主成分とする粘着剤層を有するロール状に捲回された粘着テープにおいても、良好な巻き戻し性、粘着剤表面の汚染の抑制ができるとともに、テープ背面の重ね貼り性、マジックインキ筆記性、ノンスリップ性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の粘着テープは、基材層、当該基材層の片面に形成された背面処理層、及び当該基材層のもう一方の片面に形成された粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる粘着テープであって、前記背面処理層が、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物からなることを特徴とする。
【0013】
本発明の粘着テープによると、実施例の結果に示すように、前記背面処理層に、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物を用いることにより、粘着強度に優れるとともに、良好な巻き戻し性を有し、特に粘着剤層が合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形した場合にも、優れた巻き戻し性を有し、粘着剤層表面の汚染の抑制したものとなる。上記粘着テープが、かかる特性を発現する理由の詳細は明らかではないが、前記背面処理層に、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物を用いることにより、共押出成形時に背面処理剤が熱劣化して低分子化合物が生成することを抑制して粘着剤層の汚染を低減し、もって良好な巻き戻し性との並立を可能にしていると推測される。
【0014】
本発明における粘着テープとは、基材層、当該基材層の当該基材層の片面に形成された背面処理層、及び当該基材層のもう一方の片面に形成された粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる、少なくとも3層を有する多層構造のテープである。
【0015】
本発明における粘着テープにおいては、前記背面処理層が、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物からなることを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記背面処理剤が、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなることを特徴とする。前記反応生成物を用いた背面処理層を設けることにより、粘着強度に優れるとともに、良好な巻き戻し性を有する粘着シートを得ることができる。
【0017】
上記において用いる活性水酸基含有ポリビニル重合体としては、得られる背面処理剤の剥離性が良好なことから、ポリビニルアルコール、及び/又はエチレン/ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0018】
さらに本発明は、前記背面処理層に酸化防止剤を含むことを特徴とする。酸化防止剤を用いることにより、共押出成形時に背面処理剤が熱劣化して低分子化合物が生成することを抑制して粘着剤層の汚染を低減し、もって良好な巻き戻し性及び適度な粘着強度とともに、粘着剤層表面の汚染の抑制を並立した粘着シートを得ることができる。
【0019】
上記において用いる酸化防止剤としては、反応生成物の分解抑制の観点より、フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0020】
さらに、本発明においては、前記組成物にポリオレフィン樹脂を含むことができる。前記背面処理層にポリオレフィン樹脂を用いることにより、押出機による製膜がしやすくなる傾向がある。
【0021】
また、本発明における前記組成物が、前記組成物100重量部中、前記背面処理剤を0.5〜50重量部、及び前記酸化防止剤を0.1〜5.0重量部含有してなることが好ましく、前記背面処理剤を1〜20重量部、及び/又は前記酸化防止剤を0.2〜20重量部含有してなることがより好ましく、前記背面処理剤を2〜10重量部、及び/又は前記酸化防止剤を0.3〜1.0重量部含有してなることがさらに好ましい。前記背面処理剤の含有量が0.5重量部未満であると、剥離性を向上させることができず、十分な巻き戻し性が得られない場合があり、一方、含有量が50重量部を超えると、ロ−ル状に捲回する際の粘着力が経時的に低下してしまう場合がある。また、前記酸化防止剤の含有量が0.1重量部よりも少ない場合、共押出成形時に前記背面処理剤が熱劣化して低分子化合物が生成することを抑制することが十分にできない場合があり、一方、含有量が5.0重量部をより多くしても、それ以上の効果が得られない傾向があり、さらには粘着剤層の汚染の原因となる場合がある。
【0022】
また、本発明においては、粘着剤層が、オレフィン共重合体、及び/又は芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体、又はその水素添加物からなる合成ゴムを主成分とすることができる。本発明の粘着シートにおいては、上記背面処理層をもちいることにより、従来困難であった合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形した場合にも、良好な巻き戻し性と接着剤層表面の汚染の低減との並立を可能とすることができる。
【0023】
一方、本発明の粘着テープの製造方法においては、基材層と、当該基材層の片面に設ける活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤並びに酸化防止剤を含む組成物からなる背面処理層と、当該基材層のもう一方の片面に設ける粘着剤層とを、共押出成形により一体に形成する工程を有することを特徴とする。かかる工程を有する製造方法を用いることにより、共押出成形時に背面処理剤が熱劣化して低分子化合物が生成することを抑制して粘着剤層の汚染を低減することができ、もって良好な巻き戻し性及び適度なノンスリップ性とともに、良好なマジックインキ筆記性を有する粘着テープを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
本発明の粘着テープは、基材層、当該基材層の片面に形成された背面処理層、及び当該基材層のもう一方の片面に形成された粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる粘着テープであって、前記背面処理層が、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物からなることを特徴とする。
【0026】
本発明の粘着テープは、前記基材層、前記背面処理層、及び前記粘着層を共押出成形により積層することにより製造することができる。共押出成形としては、フィルムの製造等に一般に用いられる方法を採用することができ、特に限定されるものではない。具体的には、たとえば、インフレーション法、共押出T−ダイ法などを用いることができる。
【0027】
また、前記各層それぞれにおいて積層する層の数は特に限定されるものではなく、前記基材層、前記背面処理層、及び前記粘着層はそれぞれ単層であってもよいし、必要に応じて複数層の積層構造としてもよい。
【0028】
本発明の粘着テープの基材層は、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、耐熱性、及び耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。基材層が可とう性を有することにより、ロール状に巻き取ることができ、各種の加工を適宜おこなうことができる。
【0029】
前記基材層はたとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフルオロエチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどがあげられる。
【0030】
特に、前記基材層が2層以上の複数層から構成される場合には、各々の隣接する層は、その構成成分が、溶融共押出しによって相互に強固な接着を形成できるものであれば、いずれのものからなる層でもよい。
【0031】
本発明の粘着テープにおいては、前記基材層と前記背面処理層は、粘着テープとして要求される各種の特性を分担して受け持たせるように構成される。たとえば、基材層には加工時の伸び特性や引き裂き耐性を付与し、また、耐候安定剤を添加して耐候性を付与し、背面処理層には、離型性に加えて耐傷付性、基材との接着性、適度なスリップ性を発揮するように、各層の構成成分が選択される。
【0032】
本発明における前記基材層として、たとえば、粘着剤層に接する層が炭素原子数2〜12のα−オレフィンを含む重合体を主成分とするものがあげられる。炭素原子数2〜12のα−オレフィンを含む重合体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブテン−1等のα−オレフィンの重合体、及びこれらの共重合体があげられ、具体的には、各種のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の重合体、及びこれらのα−オレフィン系共重合体等を主成分とするものがあげられる。
【0033】
前記粘着剤層に接する層において、これらのα−オレフィンを含む重合体を、これらの重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。また、この粘着剤層に接する層は、前記重合体以外に、ブリードアウトして粘着剤層への汚染等の影響を与えるものでなければ、公知の樹脂を副成分として適宜用いることができる。
【0034】
なお、前記粘着剤層に接する層における前記重合体の含有量は、通常50〜100重量%程度であり、70〜100重量%程度であることが好ましい。
【0035】
また、粘着剤層と基材層間の密着性を向上させるため、基材層の表面にはコロナ処理などを適宜おこなってもよい。
【0036】
本発明において、上記基材層には、この種のテープの基材に一般に用いられる公知の各種添加剤を適宜含有していてもよい。たとえば、各種の充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤などがあげられる。
【0037】
前記基材層の厚みは、通常10〜300μm、好ましくは30〜200μm程度である。基材層が10μm未満では剥離時に基材が破れたり、裂けたりする場合があり、300μmを超える場合には基材のコシが大きくなり、貼付後に浮き等が発生しやすい。
【0038】
本発明の粘着テープにおいて、背面処理層は、基材層の片面に形成され、本発明の粘着テープをロール状に巻き取ったとき、粘着剤層に当接され、巻き戻し時に粘着剤層から適度な巻き戻し力で容易に剥離し、良好な巻き戻し性を維持する役割を有するものである。
【0039】
本発明における背面処理層の成分は特に限定されるものではなく、背面処理層に一般的に用いられる公知の成分を適宜用いることができる。なかでも、ポリオレフィン系樹脂又はポリ塩化ビニル系樹脂等を主成分とするものが好ましいものとしてあげられる。これらの成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン重合体、オレフィン共重合体、エチレン/オレフィン共重合体、及びエチレン/極性ビニル共重合体などがあげられる。これらの重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
エチレン/オレフィン共重合体としては、たとえば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/ブテン共重合体などがあげられる。
【0042】
エチレン/極性ビニル共重合体としては、たとえば、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体などがあげられる。
【0043】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニルと他の重合性単量体との共重合体などがあげられる。
【0044】
本発明における背面処理層は、背面処理剤及び酸化防止剤を含むものであり、背面処理層が複数の層からなる場合は、その最表面層に背面処理剤とフェノール系酸化防止剤を含むものである。
【0045】
本発明における背面処理剤は、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネートとの反応生成物からなるものである。前記反応生成物は、たとえば、前記活性水酸基含有ポリビニル重合体を、溶媒に溶解又は分散させた後、加熱条件下で長鎖アルキルイソシアネートと反応させて得ることができる。
【0046】
本発明における活性水酸基含有ポリビニル重合体としては、たとえば、ビニルアルコール重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体等があげられるが、なかでもエチレン/ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0047】
エチレン/ビニルアルコール共重合体としては、適度な表面移行性を示すが、当接する粘着剤層の影響が少ない点で、重合度が500〜3000であることが好ましく、800〜2500であることがより好ましい。また、エチレン構造単位の含有量は、背面処理層を構成する樹脂と良好な相溶性を示す点で、10〜90モル%の範囲のものが好ましく、20〜70モル%のものがより好ましい。
【0048】
本発明における長鎖アルキルイソシアネートとしては、たとえば、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート等の炭素数8以上のアルキル基とインソシアネート基を有する化合物があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0049】
本発明における酸化防止剤は、樹脂加工用に一般的に用いられている公知のものを適宜用いることができる。前記酸化防止剤としては、ラジカル連鎖停止剤、過酸化物分解剤、及び金属不活性剤などがあり、硫黄系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などが好ましいが、なかでもフェノール系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。これらの酸化防止剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
本発明におけるフェノール系酸化防止剤として、たとえば、2,6−ジ−o−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、商品名イルガノックス1010、イルガノックスHP2225(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)などがあげられる。これらのフェノール系酸化防止剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
本発明の背面処理層の厚みは、特に制限されないが1〜40μmが好ましく、1〜20μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。背面処理層の厚みを1μm以上とすることにより共押出し時に厚みムラを抑止し、背面処理層を有効に付設して加熱や加圧された環境下においてもブロッキングを防止することができる。なお、背面処理層が40μmを超える場合には、添加剤の総量が多いために、汚染や添加剤の転写による剥離不良が発生しやすくなる傾向がある。
【0052】
本発明における粘着剤層は、前記基材層の一方の面に形成され、前記粘着剤層の成分として、たとえば、合成ゴムを主成分とする粘着剤が好適なものとしてあげられる。
【0053】
前記合成ゴムを主成分とする粘着剤として、たとえば、オレフィン共重合体、及び/又は芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体、もしくはその水素添加物等を成分とするもの、及びこれらの混合物があげられる。
【0054】
オレフィン共重合体としては、炭素原子数2〜12のα−オレフィンから選ばれる少なくとも2種のα−オレフィンを主成分とするα−オレフィン共重合体があげられる。炭素原子数2〜12のα−オレフィンとしては.たとえば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、7−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどがあげられる。
【0055】
これらのα−オレフィンの組み合わせからなるα−オレフィン共重合体の中でも、プロピレン、1−ブテン、及び炭素原子数5〜12のα−オレフィンの3成分からなる共重合体を主成分とする粘着剤が好ましい。
【0056】
特に、プロピレン10〜85モル%、1−ブテン3〜60モル%、及び炭素原子数5〜12のα−オレフィン10〜85モル%の組成を有する共重合体を主成分とする粘着剤は、常温付近での粘着特性に優れる点で好ましく、また、プロピレン15〜70モル%、1−ブテン5〜50モル%、及びα−オレフィン15〜70モル%の割合で含む共重合体を主成分とする粘着剤が好ましい。前記共重合体として、たとえば、プロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテン共重合体があげられる。
【0057】
また、このプロピレン、1−ブテン、及び炭素原子数5〜12のα−オレフィンの3成分からなる共重合体を粘着剤の主成分とする場合、粘着剤中に占めるこの共重合体の含有割合は、通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上であることが好ましい。
【0058】
さらに、本発明の粘着剤層においては、前記粘着剤層の粘着性能を向上させるため、プロピレン、1−ブテン、及び炭素原子数5〜12のα−オレフィンの3成分からなる前記共重合体に加えて、他のα−オレフィン共重合体を適宜含有させた粘着剤層とすることができる。
【0059】
他のα−オレフィン共重合体として、たとえば、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンから選ばれる少なくとも2種からなる共重合体、並びにエチレンとα−オレフィンのコオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の共重合体などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
上記のエチレン、プロピレン、及び1−ブテンから選ばれる少なくとも2種からなる共重合体として、たとえば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、プロピレン/1−ブテン共重合体等があげられ、具体例として、たとえば、商品名タフマーXR、タフマーA、タフマーS、タフマーP(いずれも三井化学工業社製)などがあげられる。
【0061】
上記のエチレンとα−オレフィンのコオリゴマーとしては、たとえば、エチレンとα−オレフィンとの低分子量共重合体であって、常温で液体状のものがあげられる。
【0062】
前記α−オレフィンとしては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、7−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数3〜20のα−オレフィンがあげられる。これらの中でも、炭素数3〜14のα−オレフィンが好ましい。
【0063】
前記コオリゴマーとしては、下記式(1):
【化1】

【0064】
で表される構造単位を有するものがあげられる。前記式(1)中、RはC2n+1(nは正の整数という)で表される基であり、x、y、及びpは正の整数である。このコオリゴマーは、通常数平均分子量が100〜10000の範囲のものであり、数平均分子量が200〜5000であるものが好ましい。また、このコオリゴマー中のエチレン含有量は、通常30〜70モル%であり、40〜60モル%であるものが好ましい。
【0065】
本発明における粘着剤層において、副成分として前記コオリゴマーを用いる場合、前記コオリゴマーの粘着剤層に占める含有割合は、0〜20重量%であることが好ましく、0〜10重量%であることがより好ましい。
【0066】
本発明における芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体、又はその水素添加物として、たとえば、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、及びその水素添加物であるスチレン/エチレン/プロピレン/スチレンブロック共重合体などがあげられる。これらの重合体は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
前記スチレン/エチレン/ブチレン/スチレンブロック共重合体(以下、「SEBS」という)は、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体を水素により還元したものであり、かかるSEBSの具体例として、たとえば、商品名クレイトンG(シェル化学社製)、商品名タフテックH(旭化成社製)などがあげられる。
【0068】
本発明の粘着剤層の副成分として、前記SEBSを用いる場合、粘着剤層に占める前記SEBSの含有割合は、0〜50重量%であること好ましく、0〜45重量%であることがより好ましい。
【0069】
前記スチレン/イソプロピレン/スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」という)は、スチレン重合体ブロックとイソブレン重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり、かかるSISの具体例として、商品名クレイトンD(シェル化学社製)、商品名クインタック(日本ゼオン社製)などがあげられる。
【0070】
前記SISの水素添加物として、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(以下、「SEPS」という)があり、前記SEPSの具体例として、たとえば、商品名セプトン2063、セプトン2004(いずれもクラレ社製)などがあげられる。
【0071】
本発明の粘着剤層の副成分として、前記SIS又はその水素添加物であるSEPSを用いる場合、前記SIS又はSEPSの粘着剤層に占める含有割合は、0〜50重量%であることが好ましく、0〜30重量%であることがより好ましい。
【0072】
ただし、前記SEBSと、SIS又はSEPSを同時に用いる場合には、これらの合計量の粘着剤層に占める含有割合が、45重量%以下であるのが好ましい。
【0073】
本発明の粘着剤層の構成成分として、前記のプロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテンの3成分からなるα−オレフィン系共重合体と、エチレン、プロピレン、及び1−ブテンから選ばれる少なくとも2種からなる共重合体の組み合わせからなる混合樹脂を用いた場合、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整するとともに、低温粘着特性を改善できる点で好ましい。
【0074】
また、粘着剤層の構成成分として、前記のα−オレフィン系共重合体と前記コオリゴマーの組み合わせからなる混合樹脂を用いた場合、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整するとともに、低温粘着特性を改善できる点で好ましい。
【0075】
また、粘着剤層の構成成分として、前記α−オレフィン系共重合体と、SEBS、SIS、及び/又はSEPSの組み合わせからなる混合樹脂を用いた場合、ガラス転移温度が低下し、初期粘着強度を適正な範囲に調整するとともに、低温粘着特性を改善できる点で好ましい。
【0076】
さらに本発明の粘着テープの粘着剤層は、前記α−オレフィン系共重合体、又は他のα−オレフィン系共重合体、並びに特に好ましい副成分として前記に示したスチレン/ジエン系共重合体以外に、さらに各種の副成分を適宜含んでいてもよい。
【0077】
前記副成分として、たとえば、α−オレフィンと各種ビニル系化合物との共重合体、それらのグラフト変成物などの樹脂等に代表される熱可塑性エラストマー、液状ブチルゴムなどの可塑剤、ポリテルペンなどのタッキファイヤーなどがあげられる。
【0078】
本発明において、これらの副成分は、接着性の官能基、又は不飽和結合を有するものは、貼り付けた後での粘着強度の温度、湿度、紫外線暴露などによる経時変化による悪化を避けるために、その種類、及び配合量などを調整することが好ましい。
【0079】
さらに本発明の粘着テープに用いられる粘着剤層には、従来公知の各種の軟化剤、粘着付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、可塑剤、低分子ポリマー、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、着色剤、顔料などの粉体、粒子状、箔状物、耐熱安定剤などの従来公知の各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することが出来る。
【0080】
前記軟化剤の配合は通例、粘着力の向上に有効である。軟化剤としては、たとえば、低分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、及びこれらの片末端又は両末端にOH基、COOH基もしくはエポキシ基等の反応基を持った誘導体、エチレンプロピレンゴム、ひまし油、アマニ油、大豆油、プロセス油、ナフテン油、フタル酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤、液状脂肪族系石油樹脂などを適宜に選択して1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
前記軟化剤の配合量はベースポリマー100重量部に対して100重量部以下、好ましくは60重量部以下であり、特に40重量部以下が好ましい。
【0082】
前記粘着付与剤の配合も通例、粘着力の向上に有効であり、その配合量は凝集力の低下による糊残り問題の発生を回避した接着力の向上などの点よりベースポリマー100重量部に対して80重量部以下、好ましくは40重量部以下であり、特に20重量部以下が好ましい。
【0083】
粘着付与剤としては、例えば脂肪族系や芳香族系、脂肪族/芳香族共重合体系や脂環式系等の石油系樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、キシレン系樹脂、さらにはこれらの水素化物などの粘着剤で用いられている公知のものを1種又は2種以上適宜に選択して用いることができる。
【0084】
また、接着力上昇の抑制等を目的として粘着剤層にポリオレフィン系樹脂を添加してもよい。ポリオレフィン系樹脂は、基材層の形成に用いたものと同様のものを例示できる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。その配合量はベースポリマー100重量部に対して50重量部以下、好ましくは30重量部以下であり、特に20重量部以下が好ましい。
【0085】
本発明の粘着テープにおいて、粘着剤層の厚さは、通常1〜100μm程度であり、共押出によって本発明の粘着テープを製造する場合に、テープの層構成の制御のし易さ、また十分な機械的強度を有するテープを得ることができる点で、3〜50μm程度であることが好ましい。
【0086】
また、本発明の粘着テープの全体の厚さは、通常10〜300μm程度であり、30〜200μm程度であることが好ましい。
【0087】
本発明における粘着テープの製造方法としては、前記基材層、前記背面処理剤等を含む背面処理層、及び前記粘着剤層を構成する素材を、それぞれ溶融加熱して共押出し成形し、基材層の片面に背面処理層を、もう一方の片面に粘着剤層を一体に形成し、所定の厚さを有する3層構造のテープを製造する方法が、高効率かつ安価に本発明の粘着テープを製造できる点で好ましい。
【0088】
また、本発明の粘着テープの製造方法を用いることにより、前記背面処理層と前記粘着剤層が溶融加熱状態で接することがないため、前記背面処理剤の熱劣化による副生成物の生成、及び前記粘着剤層への移行がなく、優れた巻き戻し性を示し、粘着剤層表面の汚染を抑制した、粘着強度に優れる粘着テープを製造することができる。
【実施例】
【0089】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0090】
<初期粘着強度の測定>
JIS Z0237 2000に準拠して測定した。ただし、ステンレスSUS304の表面仕上げは、JIS G4305に規定されたBAの状態のまま行った(剥離角度:180°)。
【0091】
<巻き戻し力の測定>
粘着テープを10m/分の速度で巻き戻したときの抵抗力(N/25mm)を測定した。測定は23℃×50%RHの環境下で行った。
【0092】
<汚染性の評価>
上記の初期粘着強度の測定後のステンレス板上に、粘着剤に由来する汚染の発生の有無を目視にて観測評価した。評価基準は以下のとおりである。
汚染の発生が認められなかった場合:○
汚染の発生が認められた場合:×。
【0093】
<共押出成形条件>
各実施例、比較例において、下記の成形条件にしたがって、共押出T−ダイフィルム成形法によって成形した。
溶融温度:背面処理層;230℃
基材層 ;230℃
粘着剤層 ;180℃
共押出温度;230℃。
【0094】
〔実施例1〕
前記成形条件を用いた共押出T−ダイフィルム成形法によって、ポリプロピレンを主成分とする基材層(厚さ:35μm)、高密度ポリエチレンを主成分とし、エチレン/ビニルアルコール共重合体とステアリルイソシアネートの反応生成物(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)、及びフェノール系酸化防止剤A(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)を含有する背面処理層(厚さ:5μm)、並びにプロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテン共重合体(プロピレン:50モル%、1−ブテン:20モル%、4−メチル−1−ペンテン:30モル%)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水素添加物(クラレ社製、セプトン2063)、及びエチレン/プロピレン共重合体からなる粘着剤層(厚さ:15μm)とを、それぞれ表1に示す重量比組成で有する3層構造の粘着テープ(厚さ55μm)を得た。
【0095】
〔比較例1〕
上記背面処理層が上記フェノール系酸化防止剤Aを含有しない以外は、実施例1と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0096】
〔比較例2〕
上記背面処理層がエチレン/ビニルアルコール共重合体とステアリルイソシアネートの反応生成物とフェノール系酸化防止剤Aとを含有しないこと以外は、実施例1と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0097】
〔実施例2〕
上記粘着剤層を、表1に示すとおり、エチレン/α−オレフィンコオリゴマー(三井化学工業社製、ルーカントHC−20)を追加した組成物からなるものとしたこと、及び上記背面処理剤と上記フェノール系酸化防止剤Aの添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0098】
〔比較例3〕
上記背面処理層が上記フェノール系酸化防止剤Aを含有しないこと以外は、実施例2と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0099】
〔実施例3〕
上記基材層を、表1に示すとおり、直鎖状低密度ポリエチレンからなるものとしたこと、及び上記背面処理剤と上記フェノール系酸化防止剤Aの添加量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0100】
〔比較例4〕
上記背面処理層が上記フェノール系酸化防止剤Aを含有しないこと以外は、実施例3と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0101】
〔実施例4〕
上記背面処理層を、表1に示すとおり、ホモポリプロピレンを主成分とし、エチレン/ビニルアルコール共重合体とステアリルイソシアネートの反応生成物とフェノール系酸化防止剤Aを含む組成物からなるものとしたこと以外は、実施例2と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0102】
〔比較例5〕
上記背面処理層が上記フェノール系酸化防止剤Aを含有しないこと以外は、実施例4と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0103】
〔比較例6〕
上記背面処理層を、表1に示すとおり、ホモポリプロピレンからなり、エチレン/ビニルアルコール共重合体とステアリルイソシアネートの反応生成物とフェノール系酸化防止剤Aを含まないものとしたこと以外は、実施例4と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0104】
〔実施例5〕
上記背面処理剤、及び上記フェノール系酸化防止剤Aを、ポリビニルアルコールとステアリルイソシアネートの反応生成物(アシオ産業社製、アシオレジンRA−95HS)、及びフェノール系酸化防止剤B(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガノックスHP2225)に変更し、粘着剤層をスチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(旭化成社製、タフテックH1221)100重量%に変更し、背面処理層は低密度ポリエチレンを主成分としたこと以外は、実施例1と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0105】
〔比較例7〕
上記背面処理層が上記フェノール系酸化防止剤Bを含有しないこと以外は、実施例5と同様にして3層構造の粘着テープを得た。
【0106】
〔比較例8〕
上記背面処理層が、ポリビニルアルコールとステアリルイソシアネートの上記反応生成物と上記フェノール系酸化防止剤Bを含有しないこと以外は、実施例5と同様にして粘着剤を塗布した粘着テープを得た。
【0107】
【表1】

【0108】
なお、粘着テープの作製に使用した各原料の内容、サプライヤーは以下のとおりである。 a)HDPE:高密度ポリエチレン(密度:0.96g/cm、三井化学社製)
b)LDPE:低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、三井化学社製)
c)PP:ホモポリプロピレン(三井化学社製)
d)背面処理剤A:エチレン/ビニルアルコール共重合体とステアリルイソシアネートの反応生成物(一方社油脂工業社製、ピーロイル1010S)
e)背面処理剤B:ポリビニルアルコールとステアリルイソシアネートの反応生成物(アシオ産業社製、アシオレジンRA−95HS)
f)フェノール系酸化防止剤A:(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガノックス1010)
g)フェノール系酸化防止剤B:(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガノックスHP2225)
h)E/P共重合体A:エチレン/プロピレン共重合体(三井化学工業社製、タフマーA4085W)
i)LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.94g/cm、三井化学社製)
j)P/B/4−MP:プロピレン/1−ブテン/4−メチル−1−ペンテン共重合体(プロピレン:50モル%、1−ブテン:20モル%、4−メチル−1−ペンテン:30モル%、三井化学社製)
k)E/P共重合体B:エチレン/プロピレン共重合体(三井化学工業社製、タフマーA0280G)
l)E/α−オレフィンコオリゴマー:エチレン/α−オレフィンコオリゴマー(三井化学工業社製、ルーカントHC−20)
m)SEPS:スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体の水素添加物(クラレ社製、セプトン2063)
n)SEBS:スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(旭化成社製、タフテックH1221)。
【0109】
上記方法に従い、作製した粘着テープの初期粘着強度、ロールからの巻き戻し力、及び汚染性の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0110】
【表2】

【0111】
上記表2の結果より、本発明によって作製された粘着テープを用いた場合(実施例1〜5)、いずれの実施例においても、粘着強度に優れるとともに、良好な巻き戻し性、及び粘着剤層の汚染の抑制が並立されていることが明らかとなった。
【0112】
これに対して、背面処理剤のみを用い、前記酸化防止剤を用いていない比較例1、3〜5、及び7では、良好な巻き戻し性は有しているが、汚染の発生が認められる結果となった。また、背面処理剤、及び前記酸化防止剤をいずれも用いていない比較例2、6、及び8では、汚染の発生は認められないが、巻き戻し性が2N/25mm以上という悪い結果となった。したがって、比較例ではいずれも、粘着強度、良好な巻き戻し性、及び粘着剤層の汚染の抑制を両立することができない結果となり、粘着テープ用の粘着剤組成物には適さないことが明らかとなった。
【0113】
以上より、本発明の粘着テープは、特に粘着剤層が合成ゴムを主成分とする粘着剤を用いた共押出成形した場合にも、優れた巻き戻し性を示し、粘着剤層表面の汚染を抑制した、粘着強度に優れる粘着テープであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、当該基材層の片面に形成された背面処理層、及び当該基材層のもう一方の片面に形成された粘着剤層が共押出成形により一体に形成されてなる粘着テープであって、
前記背面処理層が、ポリオレフィン系樹脂と、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤及び酸化防止剤を含む組成物からなり、
前記酸化防止剤を、前記組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部含有することを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記活性水酸基含有ポリビニル重合体が、ポリビニルアルコール、及び/又はエチレン/ビニルアルコール共重合体である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤である請求項1〜2のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記組成物が、前記組成物100重量部中、前記背面処理剤を0.5〜50重量部含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層が、オレフィン共重合体、及び/又は芳香族基含有オレフィン/ジエン共重合体、又はその水素添加物からなる合成ゴムを主成分とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記長鎖アルキルイソシアネート化合物が、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ウンデシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、及び、ステアリルイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜5のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項7】
前記フェノール系酸化防止剤が、2,6−ジ−o−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル6−t−ブチルフェノール)、及び、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の粘着テープ。
【請求項8】
前記粘着剤層が、軟化剤を含有し、
前記合成ゴム100重量部に対して、前記軟化剤を100重量部以下含有する請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項9】
前記軟化剤が、低分子量のポリイソブチレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、及びこれらの片末端又は両末端にOH基、COOH基、及びエポキシ基のいずれかの反応基を持った誘導体、エチレンプロピレンゴム、ひまし油、アマニ油、大豆油、プロセス油、ナフテン油、フタル酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、及び、液状脂肪族系石油樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項8に記載の粘着テープ。
【請求項10】
前記粘着剤層が、粘着付与剤を含有し、
前記合成ゴム100重量部に対して、前記粘着付与剤を80重量部以下含有する請求項5に記載の粘着テープ。
【請求項11】
前記粘着付与剤が、脂肪族系の石油系樹脂、芳香族系の石油系樹脂、脂肪族/芳香族共重合体系の石油系樹脂、脂環式系の石油系樹脂、クマロンインデン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、重合ロジン系樹脂、キシレン系樹脂、及び、これらの水素化物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
基材層と、当該基材層の片面に設ける、ポリオレフィン系樹脂と、活性水酸基含有ポリビニル重合体と長鎖アルキルイソシアネート化合物との反応生成物からなる背面処理剤並びに酸化防止剤を含む組成物からなる背面処理層と、
当該基材層のもう一方の片面に設ける粘着剤層とを、共押出成形により一体に形成する工程を有し、
前記酸化防止剤を、前記組成物100重量部に対して、0.1〜50重量部含有する粘着テープの製造方法。

【公開番号】特開2011−74391(P2011−74391A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256870(P2010−256870)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【分割の表示】特願2004−217425(P2004−217425)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】