説明

精神障害を治療するためのp38キナーゼ阻害剤の使用

1種以上の精神障害の治療または予防における、p38キナーゼ阻害剤として当技術分野で公知である6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p38キナーゼ阻害剤として当技術分野で公知である化合物の新しい医薬的使用に関する。より特定的には、本発明は、精神障害の治療または予防におけるニコチンアミド誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
p38は、炎症において中心的な役割を果たすセリンキナーゼであり(Schieven GL, 2005. Curr. Top. Med. Chem. 5: 921-928)、したがって、古典的炎症性疾患に対する分子標的になると考えられている(Kumar et al., 2003. Nat. Rev. Drug Disc. 2: 717-726, Saklatuala et al., 2004. Curr Opin. Pharmacol. 4: 372-377.)。疼痛、多発性骨髄腫、およびリウマチ様関節炎を治療する試みとして、小分子合成阻害剤がデザインされてきた(Peiffer et al., 2006. Curr. Top. Med. Chem. 6: 113-149)。しかしながら、その有用性は、とくに神経精神医学(鬱病、不安症、統合失調症、および睡眠障害では、炎症機序の証拠が明らかにされている)において、他の病態の診査に拡張可能である。
【0003】
IL-1、IL-6、およびTNF-のような炎症促進性サイトカインは、一般的には、鬱患者(Elenkov IJ et al., 2005. Neuroimmunomod. 12: 255-269, Hayley S et al., 2005. Neurosci. 135: 659-678, Raison CL et al., 2006. Trends in Immuno. 27: 24-31)ならびに鬱病相および躁病相の両方がある双極性患者(O'Brien SM. et al., 2006. J. Affective Disorders. 90: 263-267.)の血漿中で増加する。動物において、そのような炎症促進性サイトカインの全身注射を行うと、ヒトの鬱病で観測される症状のいくつかを模倣しうる挙動に似た病気が起こり、この挙動は、抗鬱剤により逆転可能である(Simen BB et al., 2006. Biol Psychiatry. 59: 775-785)。これらのサイトカインは、P38依存性機序を介して、抗鬱剤の公知の分子標的であるモノアミントランスポーターの活性を増大させることが可能である(Zhu et al., 2006. Neuropsychopharmacol. ahead of print, Prasad HC et al., 2005. PNAS. 102: 11545-11550)。炎症促進性メディエーターを減少させる能力を有するP38阻害剤または機序は、モノアミントランスポーター活性を安定化させることが可能であり、したがって、抗鬱剤になりうる。TNF-シグナリングを封鎖する可溶性TNF-レセプターであるエタネルセプトは、疲労に関して乾癬の臨床症状の軽減に奏効するとともにこの病態に関連付けられる鬱症状の軽減に奏効することが実証されている(Tyring S. et al., 2006. Lancet. 367: 29-35.)。ストレスを引き起こす病態のときに一般にみられる同様の鬱病、不安症はまた、免疫系および炎症促進性サイトカインによりレギュレートされる(Holden RJ & Pakula IS. 1999. Med Hypotheses. 52: 155-162, Pitsavos C et al., 2006. Atherosclerosis. 185: 320-326)。したがって、P38阻害剤は、炎症促進性サイトカインのシグナリングを阻止することにより、鬱病性障害および不安障害の複数の側面を治療する能力を有する。
【0004】
鬱病におけるP38阻害剤の効果は、初期に高い炎症促進性サイトカインレベルを有し、活力、喜び、興味の喪失が大きく、かつ精神運動遅滞を有する大鬱病性障害の患者において、臨床的に有効な活性対照と比較してランダム化二重盲検プラセボ対照試験により評価可能である。
【0005】
TNF-レベルはまた、統合失調症の動物モデルおよび統合失調症の患者において増加することが報告されている。この高レベルの炎症促進性サイトカインは、抗精神病剤により正常化させることが可能である(Paterson GJ et al., 2006. J. Psychopharmacol. ahead of print, Zhang XY et al., 2005. Neuropsychopharmacol. 30 : 1532-1538)。TNFと統合失調症との間に遺伝的関連がないにもかかわらず(Shirts BH et al., 2006. Schizophr. Res. 83: 7-13.)、疾患の病態生理において炎症性シグナリング経路が変化する場合、P38阻害剤は、依然としてこの精神障害に有用でありうる。
【0006】
TNF-およびIL-6はまた、断眠の正常被験者(Vgontzas AN et al. 2004 J Clin Endo Metab. 89: 2119-2126), 不眠症の被験者 (Vgontzas AN et al 2002 Metabolism 7: 887-892.)および睡眠時無呼吸の被験者(Hatipoglu U & Rubinstein I. 2003 Respiration 70: 665-671., Alberti A et al. 2003 J Sleep Res. 12: 305-311, Yokoe T et al. 2003. Circulation. 107: 1129-1134)において増大する。また、エタネルセプトを用いて睡眠時無呼吸を有する患者において眠気を減少させることが実証されているので(Vgontzas AN et al. 2004 J Clin Endocrinol Metab. 89: 4409-4413)、炎症促進性サイトカインを阻害する薬剤により睡眠構造を正常に戻しうることが示唆される。
【0007】
特許出願WO03/068747(スミスクライン・ビーチャム・コーポレーション(SmithKline Beecham Corporation)社)には、P38阻害剤として有用な一連のニコチンアミド誘導体が開示されている。特定的には、化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドがそこに記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/068747号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Schieven GL, 2005. Curr. Top. Med. Chem. 5: 921-928.
【非特許文献2】Kumar et al., 2003. Nat. Rev. Drug Disc. 2: 717-726.
【非特許文献3】Saklatuala et al., 2004. Curr Opin. Pharmacol. 4: 372-377.
【非特許文献4】Peiffer et al., 2006. Curr. Top. Med. Chem. 6: 113-149.
【非特許文献5】Elenkov IJ et al., 2005. Neuroimmunomod. 12: 255-269.
【非特許文献6】Hayley S et al., 2005. Neurosci. 135: 659-678.
【非特許文献7】Raison CL et al., 2006. Trends in Immuno. 27: 24-31.
【非特許文献8】O'Brien SM. et al., 2006. J. Affective Disorders. 90: 263-267.
【非特許文献9】Simen BB et al., 2006. Biol Psychiatry. 59: 775-785.
【非特許文献10】Zhu et al., 2006. Neuropsychopharmacol. ahead of print.
【非特許文献11】Prasad HC et al., 2005. PNAS. 102: 11545-11550.
【非特許文献12】Tyring S. et al., 2006. Lancet. 367: 29-35.
【非特許文献13】Holden RJ & Pakula IS. 1999. Med Hypotheses. 52: 155-162.
【非特許文献14】Pitsavos C et al., 2006. Atherosclerosis. 185: 320-326.
【非特許文献15】Paterson GJ et al., 2006. J. Psychopharmacol. ahead of print.
【非特許文献16】Zhang XY et al., 2005. Neuropsychopharmacol. 30 : 1532-1538.
【非特許文献17】Shirts BH et al., 2006. Schizophr. Res. 83: 7-13.
【非特許文献18】Vgontzas AN et al. 2004 J Clin Endo Metab. 89: 2119-2126.
【非特許文献19】Vgontzas AN et al 2002 Metabolism 7: 887-892.
【非特許文献20】Hatipoglu U & Rubinstein I. 2003 Respiration 70: 665-671.
【非特許文献21】Alberti A et al. 2003 J Sleep Res. 12: 305-311.
【非特許文献22】Yokoe T et al. 2003. Circulation. 107: 1129-1134.
【非特許文献23】Vgontzas AN et al. 2004 J Clin Endocrinol Metab. 89: 4409-4413.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、1種以上の精神障害の治療または予防に使用するための医薬の製造において化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミド
【化1】

【0011】
または製薬上許容される塩もしくは溶媒和物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る化合物の塩はまた、本発明の範囲内に包含され、たとえば、酸と、存在する塩基性窒素原子との反応により生じる酸付加塩を包含しうる。
【0013】
「製薬上許容される塩」という用語に包含される塩は、本発明に係る化合物の非毒性塩を意味する。代表的な塩としては、次の塩が挙げられる:酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、カルシウムエデテート塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストール酸塩、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、モノカリウムマレエート塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクトウロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド塩、トリメチルアンモニウム塩、および吉草酸塩。
【0014】
好ましくは、化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドは、遊離塩基の形態をとる。
【0015】
本明細書中で用いられる場合、「溶媒和物」という用語は、溶質(本発明では、化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物)と溶媒とにより形成される種々の化学量論組成の複合体を意味する。本発明の目的に合ったそのような溶媒は、溶質の生物学的活性を阻害しない。好適な溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、および酢酸が挙げられる。好ましくは、使用される溶媒は、製薬上許容される溶媒である。好適な製薬上許容される溶媒の例としては、水、エタノール、および酢酸が挙げられる。そのような溶媒和物はすべて、本発明の範囲内に包含される。
【0016】
化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、特許出願WO03/068747(実施例36として)に記載の手順に従って調製可能である。
【0017】
一実施形態では、精神障害は、鬱病(大鬱病エピソード、躁病エピソード、混合エピソード、および軽躁病エピソードを含む);鬱病性障害、たとえば、大鬱病性障害、気分変調性障害;特定不能の鬱病性障害;双極性障害、たとえば、双極性I型障害、双極性II型障害(軽躁病エピソードを伴う反復性大鬱病エピソード)、気分循環性障害、および特定不能の双極性障害;他の気分障害、たとえば、一般身体疾患による気分障害(鬱病的特徴を有する亜型、大鬱病様エピソードを有する亜型、躁病的特徴を有する亜型、および混合型特徴を有する亜型を包含する)、物質誘発性気分障害(鬱病的特徴を有する亜型、躁病的特徴を有する亜型、および混合型特徴を有する亜型を包含する)、ならびに特定不能の気分障害である。
【0018】
さらなる実施形態では、精神障害は、統合失調症性障害(亜型の妄想型、解体型、緊張型、鑑別不能型、および残遺型を包含する);統合失調症様障害;統合失調感情障害(亜型の双極型および鬱型を包含する);妄想性障害(亜型の色情型、誇大型、嫉妬型、被害型、身体型、混合型、および特定不能型を包含する);短期精神病性障害;共有精神病性障害;一般身体疾患による精神病性障害(妄想を伴う亜型および幻覚を伴う亜型を包含する);物質誘発性精神病性障害(妄想を伴う亜型および幻覚を伴う亜型を包含する);ならびに特定不能の精神病性障害である。
【0019】
さらなる実施形態では、精神障害は、パニック発作を含む不安障害;パニック障害、たとえば、広場恐怖を伴わないパニック障害および広場恐怖を伴うパニック障害;広場恐怖症;パニック障害の病歴のない広場恐怖症、特定恐怖症(以前の単純恐怖症)(亜型の動物型、自然環境型、血液・注射・外傷型、状況型、および他の型を包含する)、社会恐怖症(社会不安障害)、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、全般性不安障害、一般身体疾患による不安障害、物質誘発性不安障害、分離不安障害、不安を伴う適応障害、ならびに特定不能の不安障害である。
【0020】
さらなる実施形態では、精神障害は、睡眠障害、たとえば、原発性不眠症、原発性過眠症、ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠障害などの睡眠異常症および特定不能の睡眠異常症のような原発性睡眠障害;悪夢障害、睡眠時驚愕障害、睡眠時遊行障害などの睡眠時随伴症および特定不能の睡眠時随伴症のような原発性睡眠障害;他の精神障害に関連付けられる不眠症および他の精神障害に関連付けられる過眠症のような他の精神障害に関連付けられる睡眠障害;一般身体疾患による睡眠障害、特定的には、神経障害、神経障害性疼痛、下肢静止不能症候群、心臓疾患、および肺疾患のような疾患に関連付けられる睡眠障害;さらには物質誘発性睡眠障害(亜型の不眠型、過眠型、睡眠時随伴型、および混合型を包含する);睡眠時無呼吸症および時差症候群である。
【0021】
本発明は、さらなる態様では、1種以上の精神障害、たとえば、以上に記載したタイプの鬱病、統合失調症、不安症、および睡眠障害の治療または予防に使用するための6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を提供する。化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、新しい化学物質として投与可能であるが、典型的には、医薬組成物の形態で投与されるであろう。
【0022】
化合物は、任意の好適な方法で投与に供すべく製剤化可能である。たとえば、局所投与もしくは吸入による投与またはより好ましくは経口投与、経皮投与、もしくは非経口投与に供すべく製剤化可能である。医薬組成物は、制御放出を行えるような形態をとりうる。とくに好ましい投与方法(および対応する製剤)は、経口投与である。
【0023】
経口投与に供する場合、医薬組成物は、たとえば、錠剤(舌下錠剤を包含する)およびカプセル剤(それぞれ時限放出製剤および持続放出製剤を包含する)、丸剤、粉末剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、エマルジョン剤、溶液剤、シロップ剤、またはサスペンジョン剤の形態をとることが可能であり(許容される賦形剤を用いて従来の手段により調製される)、かつそのような剤形で投与することが可能である。
【0024】
たとえば、錠剤またはカプセル剤の形態で経口投与に供する場合、活性薬剤成分を経口用の非毒性の製薬上許容される不活性担体(たとえば、エタノール、グリセロール、水など)と組み合わせることが可能である。粉末剤は、化合物を好適な微細サイズに粉砕して同様に粉砕された医薬担体(たとえば、デンプンやマンニトールなどの可食性炭水化物)と混合することにより調製される。風味剤、保存剤、分散剤、および着色剤を存在させることも可能である。
【0025】
カプセル剤は、以上に記載したように粉末混合物を調製して成形ゼラチンシースに充填することより作製可能である。充填操作の前に、流動促進剤および滑沢剤(たとえば、コロイドシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固体ポリエチレングリコール)を粉末混合物に添加することが可能である。カプセルが摂取されたときの医薬のアベイラビリティを改善すべく、崩壊剤または可溶化剤(たとえば、寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウム)を添加することも可能である。
【0026】
さらに、所望または所要の場合、好適な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤を混合物に組み込むことも可能である。好適な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然の糖(たとえば、グルコースまたはβ-ラクトース)、コーン甘味料、天然および合成のガム(たとえば、アカシア、トラガカント、またはナトリウムアルギネート)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの投与製剤で用いられる滑沢剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。錠剤は、たとえば、粉末混合物を調製し、顆粒化またはスラッギングし、滑沢剤および崩壊剤を添加し、そして錠剤の形態にプレスすることにより、製剤化される。粉末混合物は、化合物(好適には粉砕されたもの)を、以上に記載したような希釈剤または基剤、ならびに場合により、結合剤(たとえば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、またはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤(たとえばパラフィン)、吸収促進剤(たとえば第四級塩)、および/または吸収剤(たとえば、ベントナイト、カオリン、またはリン酸二カルシウム)と、混合することにより調製される。粉末混合物は、シロップ、デンプン糊、アカシア粘液、またはセルロース系材料もしくは高分子材料の溶液のような結合剤で湿潤させてスクリーンに通して押圧することにより顆粒化可能である。顆粒化の代替手段として、粉末混合物を錠剤機に通して処理すると、その結果、顆粒の形態に破壊される不完全に成形されたスラッグが得られる。錠剤成形ダイへの付着を防止するために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク、または鉱油を添加することにより、顆粒を滑沢化させることが可能である。次に、滑沢化混合物を錠剤の形態に圧縮する。本発明に係る化合物を自由流動性不活性担体と組み合わせて、顆粒化工程やスラッギング工程に通すことなく錠剤の形態に直接圧縮することも可能である。シェラックのシーリングコート、糖材料または高分子材料のコーティング、およびワックスの光沢コーティングよりなる透明または不透明な保護コーティングを提供することも可能である。異なる単位用量を区別するために、これらのコーティングに色素を添加することが可能である。
【0027】
溶液剤、シロップ剤、およびエリキシル剤のような経口流体剤は、所与の量が所定量の化合物を含有するように単位投与剤形として調製可能である。シロップ剤は、好適に風味付けされた水溶液に化合物を溶解させることにより調製可能であり、一方、エリキシル剤は、非毒性アルコール性ビヒクルを用いて調製される。サスペンジョン剤は、非毒性ビヒクル中に化合物を分散させることにより製剤化可能である。可溶化剤および乳化剤(たとえば、エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、風味添加剤(たとえばペパーミント油)、またはサッカリンなどを添加することも可能である。
【0028】
適切であれば、経口投与に供される単位投与製剤をマイクロカプセル化することが可能である。放出を延長または持続させるために、たとえば、微粒子状材料をポリマー、ワックスなどでコーティングするかまたはその中に埋め込むことにより、製剤を調製することも可能である。
【0029】
本発明に係る化合物は、小さい単層ラメラ小胞、大きい単層ラメラ小胞、および多重層ラメラ小胞のようなリポソーム送達システムの形態で投与することも可能である。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのようなさまざまなホスホリピドから形成可能である。
【0030】
本発明に係る化合物は、小さい単層ラメラ小胞、大きい単層ラメラ小胞、および多重層ラメラ小胞のようなリポソームエマルジョン送達システムの形態で投与することも可能である。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンのようなさまざまなホスホリピドから形成可能である。
【0031】
本発明に係る化合物は、モノクロナール抗体を個々のキャリヤー(これに化合物分子がカップリングされる)として用いることにより送達することも可能である。本発明に係る化合物は、ターゲッティング可能な薬剤担体としての可溶性ポリマーと組み合わせることも可能である。そのようなポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンが挙げられうる。さらに、薬剤の制御放出を達成するのに有用なクラスの生分解性ポリマー、たとえば、ポリ乳酸、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋型または両親媒性のブロックコポリマーに、本発明に係る化合物を結合させることも可能である。
【0032】
本発明は、0.1〜99.5%、より特定的には0.5〜90%の式(I)で示される化合物を製薬上許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物を包含する。
【0033】
同様に、組成物は、経鼻、経眼、経耳、直腸内、局所、静脈内(ボーラスおよび注入の両方)、腹腔内、関節内、皮下または筋肉内、吸入または吹送の形態で投与することができ、いずれも製薬技術分野の当業者に周知の形態を用いる。
【0034】
経皮投与に供する場合、医薬組成物は、経皮イオン泳動貼付剤のような経皮貼付剤の形態で投与可能である。
【0035】
非経口投与に供する場合、医薬組成物は、注射剤または持続注入剤として投与可能である(たとえば、静脈内、血管内、または皮下に)。組成物は、油性もしくは水性のビヒクル中のサスペンジョン剤、溶液剤、またはエマルジョン剤のような形態をとりうる。また、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような製剤化剤を含有しうる。注射による投与に供する場合、これは、好ましくは保存剤を添加して、単位用量製剤または複数用量製剤の形態をとりうる。他の選択肢として、非経口投与に供する場合、活性成分は、好適なビヒクルを用いて再調製すべく粉末形態をとりうる。
【0036】
本発明に係る化合物はまた、デポ製剤として製剤化可能である。そのような長時間作用製剤は、埋植により(たとえば皮下もしくは筋肉内に)または筋肉内注射により投与可能である。したがって、たとえば、本発明に係る化合物は、好適な高分子材料もしくは疎水性材料を用いて(たとえば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂を用いてあるいは難溶性誘導体として(たとえば難溶性塩として)製剤化可能である。
【0037】
吸入による投与に供する場合、本発明に係る化合物は、便宜上、好適な噴射剤、たとえば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン、二酸化炭素、または他の好適なガスを用いて、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレー製剤の形態で送達可能である。加圧エアロゾルの場合、投与単位量は、計量量を送達するためのバルブを提供することにより決定可能である。吸入器または吹送器で使用するためのたとえばゼラチン製のカプセル剤およびカートリッジ剤は、本発明に係る化合物とラクトースやデンプンのような好適な粉末基剤とよりなる粉末混合物を収容して製剤化することが可能である。
【0038】
医薬組成物は、一般的には、特定の1種もしくは複数種の病態の治療または予防に有効な量で投与される。ヒトにおける初期投与は、症状(所定の病態の症状)の臨床モニタリングを伴う。一般的には、組成物は、活性薬剤の量が少なくとも約100μg/kg(体重)になるように投与される。ほとんどの場合、1日あたり約20mg/kg(体重)を超えない量の一回用量または複数回用量で投与されるであろう。好ましくは、ほとんどの場合、用量は、1日あたり約100μg/kg(体重)〜約5mg/kg(体重)である。とくに哺乳動物(特定的にはヒト)への投与に供する場合、活性薬剤の一日量レベルは、0.1mg/kg〜10mg/kg、典型的には約1mg/kgであろうと予想される。当然のことであろうが、最適投与量は、適応症、その重症度、投与経路、併発病態などを考慮に入れて、それぞれの治療技術および適応症に合った標準的方法により決定されるであろう。いずれにせよ、個人に最も好適でありかつ特定の個人の年齢、体重、および応答によって異なる実際の投与量は、医師により決定されるであろう。所定の実際の用量の有効性は、たとえば、所定の用量を投与した後の臨床症状または標準的抗炎症徴候を測定することにより、容易に測定可能である。以上の投与量は、平均的な場合の例である。当然ながら、より多量もしくはより少量の投与量範囲で効果が得られる個別の事例が存在しうる。そのような事例は、本発明の範囲内にある。本発明により治療されるような病態または疾患状態では、たとえば維持療法において、被験者の一日レベルを長期間にわたり一定に保つことがとくに有益でありうる。
【0039】
本発明はまた、1種以上の精神障害を治療する方法を提供する。この方法は、その必要のある患者に化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む。
【0040】
本発明は、治療上有効量の本発明に係る化合物を提供することにより、これらの病態を治療する。「治療上有効量」とは、症状を軽減させるかもしくは症状を低減させる化合物量、サイトカインを低減させる化合物量、サイトカインを阻害する化合物量、キナーゼをレギュレートする化合物量、および/またはキナーゼを阻害する化合物量を意味する。そのような量は、サイトカインレベルの測定または臨床症状軽減の観測のような標準的方法により、容易に決定可能である。
【0041】
本発明に係る化合物は、それを必要とする任意の哺乳動物に投与可能である。そのような哺乳動物としては、たとえば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、マウス、イヌ、ネコ、霊長動物(たとえば、チンパンジー、ゴリラ、アカゲザル、最も好ましくはヒト)が挙げられうる。
【0042】
当然のことであろうが、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドは、単独でまたは以上に述べた精神障害の治療に好適な他の治療剤との組合せで利用可能である。
【0043】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドおよび他の医薬活性薬剤(複数種可)は、一緒にまたは個別に投与可能であり、個別に投与する場合、これは、独立してまたは逐次的に任意の順序で実施可能である。6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドおよび他の医薬活性薬剤(複数種可)の量および投与の相対的タイミングは、所望の組合せ治療効果が達成されるように選択されるであろう。
【0044】
当業者には明らかなことであろうが、適切であれば、他の治療成分(複数種可)は、治療成分の活性および/または安定性および/または物理的特性(たとえば溶解性)を最適化するために、塩(たとえばアルカリ金属塩もしくはアミン塩としてまたは酸付加塩として)またはプロドラッグの形態であるいはエステル(たとえば低級アルキルエステル)としてあるいは溶媒和物(たとえば水和物)として使用可能である。同様に明らかなことであろうが、適切であれば、治療成分は、光学的純粋形で使用可能である。
【0045】
本発明は、さらなる態様では、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を抗炎症剤と共に含む組合せ製剤を提供する。
【0046】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物と組み合わせて使用される好適な抗炎症剤としては、COX-2阻害剤(たとえば、セレブレックス(Celebrex)(登録商標)、バイオックス(Vioxx)(登録商標)、もしくはプレクシージュ(Prexige)(登録商標))、非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)(たとえばナトリウムクロモグリケートもしくはネドクロミルナトリウム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害剤(たとえば、テオフィリン、PDE4阻害剤、もしくは混合型PDE3/PDE4阻害剤)、ロイコトリエンアンタゴニスト、ロイコトリエン合成阻害剤(たとえばモンテルカスト)、iNOS阻害剤、トリプターゼおよびエラスターゼの阻害剤、β2インテグリンアンタゴニスト、アデノシンレセプターのアゴニストもしくはアンタゴニスト(たとえばアデノシン2aアゴニスト)、サイトカインアンタゴニスト(たとえばCCR3アンタゴニストのようなケモカインアンタゴニスト)もしくはサイトカイン合成阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、またはコルチコステロイドが挙げられる。
【0047】
本発明は、さらなる態様では、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を、精神障害を治療または予防するための1種以上の次の薬剤:i)抗精神病剤;ii)抗鬱剤;iii)抗不安剤;およびiv)気分安定剤と共に含む、組合せ製剤を提供する。
【0048】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、鬱病および気分障害を治療または予防するための抗鬱剤および/または抗精神病剤と組み合わせて使用可能である。
【0049】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、双極性疾患を治療または予防するための1種以上の次の薬剤:i)気分安定剤;ii)抗精神病剤;およびiii)抗鬱剤と組み合わせて使用可能である。
【0050】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、不安障害を治療または予防するための抗不安剤および/または抗鬱剤と組み合わせて使用可能である。
【0051】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、統合失調症を治療または予防するための抗精神病剤および/または抗鬱剤と組み合わせて使用可能である。
【0052】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物は、睡眠障害を治療または予防するための1種以上の次の薬剤:i)ベンゾジアゼピン化合物(たとえば、テマゼパム、ロルメタゼパム、エスタゾラム、トリアゾラム);ii)非ベンゾジアゼピン催眠剤(たとえば、ゾルピデム、ゾピクロン、ザレプロン、インディプロン);iii)バルビツレート化合物(たとえば、アプロバルビタール、ブタバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール);iv)抗鬱剤;ならびにv)他の鎮静催眠剤(たとえば抱水クロラールおよびクロルメチアゾール)と組み合わせて使用可能である。
【0053】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物と組み合わせて使用される好適な抗精神病剤としては、定型抗精神病剤(たとえば、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオペラジン、チオチキシン、ハロペリドール、モリンドン、およびロキサピン);ならびに非定型抗精神病剤(たとえば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピラゾール、ジプラシドン、およびアミスルプリド)が挙げられる。
【0054】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物と組み合わせて使用される好適な抗鬱剤としては、セロトニン再取込み阻害剤(たとえば、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、ダポキセチン、およびセルトラリン);二重セロトニン/ノルアドレナリン再取込み阻害剤(たとえば、ベンラファキシン、デュロキセチン、およびミルナシプラン);ノルアドレナリン再取込み阻害剤(たとえばレボキセチン);三環系抗鬱剤(たとえば、アミトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリン、およびトリミプラミン);モノアミンオキシダーゼ阻害剤(たとえば、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェネルジン、およびトラニルシプロミン);ならびにその他(たとえば、ブプロピオン、ミアンセリン、ミルタザピン、ネファゾドン、およびトラゾドン)が挙げられる。
【0055】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物と組み合わせて使用される好適な気分安定剤としては、リチウム、ナトリウムバルプロエート/バルプロ酸/ジバルプロエクス、カルバマゼピン、ラモトリジン、ガバペンチン、トピラメート、およびチアガビンが挙げられる。
【0056】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物と組み合わせて使用される好適な抗不安剤としては、アルプラゾラムやロラゼパムのようなベンゾジアゼピン化合物が挙げられる。
【0057】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物はまた、精神障害を治療または予防するためのi)メラトニンレセプターモジュレーター;ii)オレキシンアンタゴニスト;iii)タキキニンレセプターアンタゴニスト;iv)CRFレセプターアンタゴニスト;(v)三重再取込み阻害剤;(vi)ナトリウムチャネルブロッカー;(vii)D1、D2、またはD3レセプターモジュレーター;(viii)セロトニンレセプターモジュレーター;(ix)バソプレシンレセプターモジュレーター;(x)グルタミン酸レセプターモジュレーター;および(xi)ニューロペプチドYレセプターモジュレーターのうちの1種以上と組み合わせて使用可能である。
【実施例】
【0058】
(生物学的評価)
試験1
ラットへのリポポリサッカリド(LPS)の投与は、強い度合いの病気の挙動(自発運動活性の低下、食品および水の両方の摂取量の減少、体重の減少、および社会的関心の低下)をもたらすだけでなく、大鬱病性障害で観察される症状および根源的病理のいくつかを模倣しうる末梢炎症促進性サイトカインおよびHPA軸マーカーの大きな増加をももたらすことが知られている(Dunn et al., (2005). Neurosci. Behav. Rev., 29, 891-909)。実際に、ヒトへのサイトカインの注射は、大鬱病性障害のない患者においてそのような神経精神医学的障害を引き起こす(Schiepers & Maes (2005). Prog. Neuro-psychopharmacol. & Biol. Psych., 29, 201-217)。
【0059】
LPSの投与(125μg/kg(腹腔内))の1時間前に6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドの投与(経口)を行い、次に、その2時間後に挙動の評価を行った。サテライト群の動物を同一の方法で処置し、バイオマーカー分析のために血液サンプルを採取した。6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドは、20mg/kg(経口)において、LPSにより誘発される病気の挙動を有意に逆転させるとともに、この活性用量において、LPSにより誘発されるTNF-a、IL-6、IL-10、およびACTHのレベルの増加を>80%低減させた。
【0060】
したがって、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドは、サイトカインレベルおよびHPA軸機能を正常化させることにより、病気様挙動を正常化させることが可能である。
【0061】
試験2
鬱病に使用するための6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドを評価する臨床試験は、典型的には、プラセボと対比して好適な許容用量の活性薬剤が投与されるランダム化二重盲検並行群であろう。
【0062】
より大きいサイトカインレベルの減少が望まれる場合および/または第1の投与で最小限の臨床徴候がみられない場合、第2のより高い投与量の活性薬剤試験を開始しうる。
【0063】
治療の継続時間は、0、1、2、4、および6週目に通院して約6週間である。患者集団は、活力および興味の喪失、疲労、精神運動遅滞の症状ならびにサイトカインレベルの増大に関するスクリーニングについて充実している。
【0064】
追跡調査通院: 最終投与の1週間後(7週目)
標本サイズ: 約30〜40名:20〜30名(活性薬剤:プラセボ)
試験の評価は、ベイズ法を用いて行う。
【0065】
1つの所望の主要な評価項目は、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドによる治療が大鬱病エピソードの患者においてサイトカインレベルを低下させるかを評価することである。所望の第2の評価項目は、鬱症状(HAM-D Bech、IDS-C、およびQIDS-SR);精神運動遅滞(数字記号検査、スケールに基づく項目分析);疲労(FACIT-F1)、ならびに睡眠パラメーター(スケールに基づくスコア+LSEQ)に関して、血漿中サイトカインレベル、効力エンドポイント、および薬剤への暴露の関係を評価することである。
【0066】
本明細書に引用されているすべての刊行物、たとえば、限定されるものではないが特許および特許出願は、あたかも個々の刊行物が具体的かつ個別的に表記されて完全に明記されたがごとく参照により本明細書に組み入れられるように、参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の精神障害の治療または予防に使用するための医薬の製造における、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物である化合物の使用。
【請求項2】
前記化合物が6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記精神障害が鬱病である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記精神障害が統合失調症である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記精神障害が不安症である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記精神障害が睡眠障害である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項7】
1種以上の精神障害の治療をその必要のある哺乳動物において行う方法であって、その必要のある患者に化合物6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を投与することを含む、上記方法。
【請求項8】
1種以上の精神障害の治療または予防に使用するための、6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物。
【請求項9】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を抗炎症剤と共に含む組合せ製剤。
【請求項10】
6-(5-シクロプロピルカルバモイル-3-フルオロ-2-メチル-フェニル)-N-(2,2-ジメチルプロピル)-ニコチンアミドまたは製薬上許容されるその塩もしくは溶媒和物を、精神障害を治療または予防するための1種以上の次の薬剤:i)抗精神病剤;ii)抗鬱剤;iii)抗不安剤;およびiv)気分安定剤と共に含む、組合せ製剤。

【公表番号】特表2010−528980(P2010−528980A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514798(P2009−514798)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055858
【国際公開番号】WO2007/144390
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】