説明

糖尿病治療の組成物と方法

【課題】生体膜を通したインスリンの輸送を促進させるキメラペプチド類と組成物、該キメラペプチド類の調製法および糖尿病患者を治療する方法の提供。
【解決手段】第1のドメインと第2のドメインを有するキメラペプチドを提供する。第1ドメインは、生体膜を越えた能動輸送を促進するトランスロケーション配列であり、第2ドメインは、インスリンペプチドの少なくとも一部である。また、キメラペプチドは、原形質膜、ミトコンドリア膜、または核膜などの生体膜をトランスロケーションさせることができる。他に、キメラペプチドは、胃腸関門、血液脳関門、皮膚関門、気道上皮関門、経膜関門、鼻内関門および眼関門などの生理学的関門をトランスロケーションする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に糖尿病治療の組成物と方法に関し、より具体的には、血中インスリン濃度を増加させる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、1600万人近いアメリカ人が患っている疾病である。I型糖尿病、もしくは若年性糖尿病は、インスリンの絶対的不足と生命維持のための外因性インスリンへの依存により特徴づけられる。おおよそ80万人〜160万人の人々がI型糖尿病と診断されている。II型糖尿病は、身体が自己の産生したインスリンを適切に使用しない代謝障害から生じる。おおよそ1500万人の人々がII型糖尿病を有している。費用の合計(間接的および直接的)は980億ドルを超えている。
【0003】
現在、I型糖尿病の長期治療は、主に外因性インスリンを皮下注射することに頼っている。しかし、この治療法は、通常、食事、運動などに関連して生じるインスリン分布の分刻みの微妙な調節を模することができないため、至適な代謝コントロールを提供していない。バイオテクノロジーの出現により、多くの異なったタイプのインスリンが生産され、それらの発現、ピーク、および作用継続時間を変えられるようになっても、1日を通して適切にブドウ糖濃度をコントロールするのは依然として難しい。糖尿病患者がインスリン注射を行うと、末梢組織が高濃度のインスリンに晒されるため、これらの患者において肝臓の代謝を適切に調節することはより困難となる。1日に複数回(2〜4回)の注射を用いることにより、正常に近い血糖を有する良好な代謝コントロールが立証されたとしても、このような多数回注射による不便さによって、この療法の広範な使用が妨げられる。
【0004】
最も便利で快適、受容可能でかつ容易な送達経路は経口であると考えられる。投与部位として胃腸(GI)粘膜は、他の粘膜より大きな利点を幾つか与える。これらの利点としては、以下のものが挙げられる:(1)多くの人々にとって、経口投与は馴染み深く便利で受容できる投与手段である;(2)GI上皮は吸収にとって広い表面積を提供する;(3)GI上皮は多量の血液供給に密接な関連性を提供する。インスリンのようなホルモンは、上部胃腸管の苛酷な環境を通過することができないため皮下経路によって投与される。皮下注射とは異なり、インスリンの経口送達は、健康な非糖尿病者に見られる膵臓から肝門循環への生理的インスリン輸送を模することができると考えられる。しかしながら、インスリンを完全に経口送達することは実際上不可能であると考えられる。経口投与されたインスリンの吸収は、最良の実験条件下でも0.5%以下である。たとえ少量のインスリンが奇跡的に上部胃腸管を通過できたとしても、このホルモンは相当大型で親水性であるため、腸関門を通過することが不可能となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血清インスリン濃度の増加と血清ブドウ糖濃度の減少に有用なキメラインスリンペプチド類に関する。また、本発明により、糖尿病、すなわちタイプIまたはタイプIIの糖尿病を患っている患者を治療する方法が提供される。
【0006】
本発明の組成物は、ディアトス(Diatos)ペプチドベクター(DPV)類が、通常は生理学的関門、より具体的には腸上皮関門を越えて輸送されることのできない分子の輸送を可能にするという発見に一部基いている。例えば、インスリンなどの高分子類を本明細書に記載されているDPV類を用い、腸上皮関門を越えて輸送することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の態様において、本発明はキメラペプチドを提供する。キメラペプチドは、原形質膜、ミトコンドリア膜、または核膜などの生体膜をトランスロケーションさせることができる。他に、キメラペプチドは、胃腸関門、血液脳関門、皮膚関門、気道上皮関門、経膜関門、鼻内関門および眼関門などの生理学的関門をトランスロケーションする。
【0008】
一態様において、本発明は、第1のドメインと第2のドメインを有するキメラペプチドを提供する。第1ドメインは、生体膜を越えた能動輸送を促進するトランスロケーション配列であり、第2ドメインは、インスリンペプチドの少なくとも一部である。
【0009】
トランスロケーション配列はリポ蛋白の一部である。また、トランスロケーション配列は、少なくとも4個の塩基性アミノ酸、例えば、リジンまたはアルギニンである。トランスロケーション配列は、ヘパリン、または硫酸コンドロイチンなどのアミノグリカンに結合していることが好ましい。
【0010】
第1ドメインは、(a)(XBBBXXBX)n;(b)(XBBXBX)n;(c)
(BBXmBBXo)n;(d)(XBBXXBX)n;および(e)(BXBB)n(式中、Bは塩基性アミノ酸であり;Xは非塩基性アミノ酸であり;mの各々は独立してゼロから5までの整数であり;nの各々は独立して1から10の間の整数であり;oの各々は独立してゼロから5の間の整数である)よりなる群から選択されるアミノ酸配列である。ある一定の実施形態において、nは2または3であり得、Xは疎水性アミノ酸であり得る。
【0011】
第1ドメインのアミノ酸配列は、100個未満のアミノ酸長であり;50個未満のアミノ酸長であり;25個未満のアミノ酸長である。第1ドメインのアミノ酸配列は、GKRKKKGKLGKKRDP(配列番号:30、DPV7)またはSSRRARRSPRHLGSG(配列番号:35、DPV10)であることが好ましい。
【0012】
前記キメラペプチドは、(a)ヒト抗DNA抗体のCDR3領域;(b)ヒト抗DNA抗体のCDR2領域;(c)マウス抗DNA抗体のCDR3領域;および(d)マウス抗DNA抗体のCDR2領域などの抗体断片のアミノ酸配列をさらに含んでなってもよい。
【0013】
他の態様において、本発明は、第1ドメイン、第2ドメインおよび第3ドメインを有するキメラペプチドを提供する。第1ドメインと第2ドメインは、(a)(XBBBXXBX)n;(b)(XBBXBX)n;(c)(BBXmBBXo)n;(d)(XBBXXBX)n;(e)(BXBB)nまたはf)(抗体断片)n(式中、Bは塩基性アミノ酸であり;Xは非塩基性アミノ酸であり;mの各々は独立してゼロから5までの整数であり;nの各々は独立して1から10の間の整数であり;oの各々は独立してゼロから5の間の整数である)のアミノ酸配列を含んでなる。第1ドメインは第2ドメインとは異なる。第3ドメインは、インスリンポリペプチドの少なくとも一部である。前記キメラペプチドは、生体膜または生理学的関門を越えてトランスロケーションする。
【0014】
さらに、他の態様で、本発明は、(a)抗DNA抗体のCDR3領域の少なくとも一部;(b)抗DNA抗体のCDR2領域の少なくとも一部;および(c)インスリンポリペプチドの少なくとも一部を含んでなり、ペプチドが生体膜にトランスロケーションするキメラペプチドを提供する。
【0015】
本発明はまた、前記キメラペプチドと担体との組成物を提供する。前記組成物は経口投与に好適である。
【0016】
他の態様において、本発明は、本発明の組成物を含んでなるキットを提供する。
【0017】
本発明はまた、細胞と本発明の組成物とを接触させることによって、細胞内のブドウ糖濃度を減少またはインスリン濃度を増加させる方法を提供する。他に、血清中ブドウ糖濃度の減少とインスリン濃度の増加を必要とする患者に本発明の組成物を投与させることにより、患者の血清中ブドウ糖濃度を減少させ、インスリン濃度を増加させる。
【0018】
他に定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有している。本明細書中に記載されているものと同様の、または等価の方法と材料が本発明の実践または試験において使用できるが、好適な方法と材料が以下に記載されている。本明細書中に挙げられた全ての出版物、特許出願、特許および他の文献は、その内容全体が本明細書に援用されている。矛盾する場合は、定義を含む本明細書が規制することになる。なお、材料、方法および例は、ただ例示のためであって限定する意図はない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、血清インスリン濃度の増加と血清ブドウ糖濃度の減少に有用なキメラインスリンペプチド類を含有する組成物を提供する。キメラペプチド類は、患者におけるインスリンの生物学的利用能を調節するために使用できる。本発明のキメラペプチド類、または、これらのキメラペプチド類をコードする核酸類は、薬剤組成物中に組み込まれ、糖尿病、すなわち、タイプIまたはタイプII糖尿病の治療のために、患者に投与することができる。
【0020】
種々の態様において、本発明は、インスリンポリペプチドの少なくとも一部を含有する第2ドメインと操作可能に結合したトランスロケーション配列を含有する第1ドメインを含むキメラペプチドを提供する。第1ドメインと第2ドメインは前記ペプチド中いずれの順序においても生成でき、また、前記ペプチドは各ドメインの1個以上を含むことができる。
【0021】
本明細書中で用いられる「キメラ蛋白質」または「キメラペプチド」は、非インスリンポリペプチドに操作可能に結合したインスリンポリペプチドの少なくとも一部を含む。「インスリンポリペプチド」とは、インスリンポリペプチドのアミノ酸配列またはインスリンポリペプチドの少なくとも一部に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチド、またはインスリンポリペプチドのアミノ酸配列またはインスリンポリペプチドの少なくとも一部に相当するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸を言い、一方、「非インスリンポリペプチド」とは、インスリンと実質的に相同ではない蛋白質、例えば、インスリンポリペプチドまたは断片とは異なり、同一または異なる生物に由来する蛋白質に対応するアミノ酸を有するポリペプチドを言う。インスリンキメラペプチド内で、インスリンポリペプチドはインスリンポリペプチドの全体、または一部に対応し得る。
【0022】
用語の「操作可能に結合した」は、第1ドメインと第2ドメインが、インスリンポリペプチドと少なくとも1つの機能との関連を可能にするような様式で、化学的に結合している(最も典型的には、ペプチド結合などの共有結合により)ことを示すことが意図されている。キメラペプチドをコードする核酸を言うために用いられる場合は、操作可能に連結したと言う用語は、第1ドメインをコードする核酸とインスリンポリペプチドとが互いにフレーム内で融合していることを意味する。第1ドメインはインスリンポリペプチドのN−末端またはC−末端に融合し得る。
【0023】
「トランスロケーション配列」とは、それが存在するペプチドに所望の細胞目的地を指令するいずれかのアミノ酸配列を言う。したがって、トランスロケーション配列は、生体膜、例えば、リン脂質膜、ミトコンドリア膜、または核膜を越えてペプチドが浸透することを指令または促進することができる。例えば、トランスロケーション配列は、ペプチドを細胞の外側から、原形質膜を通し、また、細胞質内へ、または細胞内の所望の場所、例えば、核、リボソーム、ミトコンドリア、ER、リソソーム、またはペルオキシソームへと指令する。他に、またはそれに追加して、トランスロケーション配列は、血液脳関門、経膜関門、または血液脳血管関門、血液腎関門、胃腸関門、肺関門などの生理学的関門を越えて、ペプチドを指令することができる。
【0024】
トランスロケーション、すなわち生体膜または生理学的関門を越えた浸透は、種々の方法、例えば、培養細胞の存在下、キメラペプチドの第1の温置ステップに続く固定化ステップ、およびそれらの細胞の透過性増加、次に細胞内キメラペプチドの存在の明示を行う細胞浸透試験によって測定できる。前記明示ステップは、キメラペプチドに対して標識化され指令された抗体の存在下、もう一度温置してから、細胞質中、または細胞核の直近、またはさらに細胞核中で前記配列と標識化抗体との間の免疫反応を検出することによって行われる。明示はまた、本発明におけるアミノ酸配列を標識化し、細胞分画中のこの標識の存在を検出することによっても行われる。細胞貫通試験は上記の国際公開第97/02840号に記載された。
【0025】
トランスロケーション配列は、エネルギーを要する、すなわち能動輸送であり得る。あるいは、トランスロケーションは、エネルギーを要しない、すなわち受動輸送である。
【0026】
トランスロケーション配列は、いかなる長さでもよい。例えば、トランスロケーション配列は、600個未満のアミノ酸長、例えば、500、250、150、100、50、25または10個以下のアミノ酸長である。トランスロケーション配列は、少なくとも4個の塩基性アミノ酸からなる。
【0027】
トランスロケーション配列は、公知の配列から誘導される。例えば、トランスロケーション配列は、ヒトリポ蛋白B、ヒトリポ蛋白Eなどのリポ蛋白;CDR2領域またはCDR3領域などの免疫グロブリン分子;アグリン(agrine);FGF;またはPGFの配列を含み得る。
【0028】
トランスロケーションは、さらに、ヘパリン、硫酸コンドロイチン、およびそれらの誘導体と反応する能力によって特徴づけることが好ましい。グリコサミノグリカン類(GAG)、より一般的にはアミノグリカン類、特にヘパリン、硫酸ヘパリンおよび硫酸コンドロイチンと結合しているペプチド類は、上記のペプチド類のように元々天然物であることも、あるいは人工物であることもある。それらは、天然の形態またはポリマー(ダイマー、トリマーなど)の形態で使用できる。「ヘパリンまたは硫酸コンドロイチン誘導体」または「ヘパリン様アミノグリカン類または硫酸コンドロイチン」とは、参照に引用した刊行物(カージンおよびウェイントラウブ(Cardin & Weintraub)、Arteriosclerosis 9:21頁(1989);マートンら(Merton et al.)、Annu.Rev.Cell Biol.8:365頁(1992);デイビッド(David)、FASEB J.7:1023頁(1993))に記載されているような生成物または副生成物を意味すると解される。
【0029】
トランスロケーション配列の例としては、以下の式:
(a)(XBBBXXBX)n;(b)(XBBXBX)n;(c)(BBXmBBXo)n;(d)(XBBXXBX)n;(e)(BXBB)nまたは(f)(抗体断片)n(式中、Bは塩基性アミノ酸であり;Xは非塩基性、好ましくはアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、バリンまたはチロシンなどの疎水性アミノ酸であり;mはゼロから5の間の整数であり;nは1から10の間、好ましくは1から3の間の整数であり;oはゼロから5の間の整数である)のうちの1つを有するアミノ酸配列を含むペプチドが挙げられる。
【0030】
抗体断片は、完全長免疫グロブリンポリペプチドより小さい、例えば、H鎖、L鎖、Fab、Fab、FvまたはFcを含むことを意味する。前記抗体は、例えばヒトまたはマウスであり得る。前記抗体は、抗−DNA抗体であることが好ましい。前記抗体フラグメントは、ある抗体のCDR2領域の全部または部分を含有することが好ましい。あるいは、前記抗体は、ある抗体のCDR3領域の全部または部分を含有する。より具体的には、前記抗体断片はRTT79、NE−1およびRT72などの、抗−DNAヒト抗体のCDR3領域の少なくとも1つを含有する。
【0031】
「全部または部分」により、ベクターが細胞内部へ進入する能力を維持する条件で、抗体断片が対象CDR領域の全体またはその部分のみのいずれかを含有し得る(機能的相同体)ことが解される。「CDR領域の部分」により、1個以上の末端アミノ酸から誘導されたCDR領域が解される。それはまた、1個以上の内部残基が欠失した、または他のアミノ酸、好ましくは同じ性質のアミノ酸(例えば、塩基性アミノ酸)に置換されたCDR領域でもあり得る。
【0032】
トランスロケーション可能な配列の例としては、配列番号:1〜48が挙げられる。トランスロケーション可能な好ましいアミノ酸配列は、GKRKKKGKLGKKRDP(配列番号:30)およびSSRRARRSPRHLGSG(配列番号:35)である。一般的に、第1ドメインのアミノ酸配列は100個未満のアミノ酸長;50個未満のアミノ酸長;または25個未満のアミノ酸長である。第1ドメインは6個から25個のアミノ酸であることが好ましい。
【0033】
本明細書中に用いられる用語の「インスリン」は、生物学的に活性なインスリン類似体、天然抽出インスリン、または組換えにより生産されたインスリンを包含すると解される。生物学的に活性とは、該分子が糖尿病の疾患症状を抑制または予防する、例えば、血清ブドウ糖を減少させる能力を有することを意味する。生物学的に活性なインスリンとしては、プレプロインスリン、プロインスリン、インスリンのアルファ鎖、インスリンのベータ鎖、および成熟インスリン、例えば、アルファ鎖、ベータ鎖が挙げられる。インスリンは、ヒト、ウシ、ブタ、ウマ、イヌまたはマウスなどの任意の種から誘導し得る。
【0034】
用語は、実質的に精製された形態における、通常、糖尿病の治療に用いられるポリペプチドを包含することが意図されるが、さらに商品として入手できる賦形剤を含む薬剤形態における用語の使用を包含する。本発明において使用するインスリンは、ノボ・ラボラトリーズ社(Novo Laboratories)(コネチカット州ダンベリー)、米国ノルディスク社(Nordisk−USA)(メリーランド州ロックビレ)およびイーライ・リリー社(Eli Lilly)(インディアナ州インディアナポリス)などの多数の商業的供給元から入手可能である。
【0035】
本発明の方法を実施する場合には、ブタ由来インスリン、ヒト半合成インスリン(米国ノルディスク)およびクローン化組換えインスリン(イーライ・リリー)が使用可能である。前記インスリンは、組換え生産されることが好ましく、また、加水分解されているか、溶液中であり得る。
【0036】
用語の「インスリン類似体」などは、本明細書中では、交換可能に用いられ、ポリペプチド鎖内の1個以上のアミノ酸が替わりのアミノ酸で置換されている、および/または1個以上のアミノ酸が欠失している、またはさらに1個以上の追加のアミノ酸がポリペプチド鎖またはアミノ酸配列に付加されている、上記に定義した「インスリン」の任意の形態であって、天然インスリンの、例えば、血中ブドウ糖濃度を低下させるなどの少なくとも1つの機能を依然として有しているものを包含することが意図されている。一般に、本発明の用語の「インスリン類似体」は、米国特許第5,547,929号に開示され、その内容全体が本明細書に援用されている「インスリンリスプロ(lispro)類似体」;LysProインスリンおよびヒトインスリンを含むインスリン類似体、および他の「スーパーインスリン類似体」を含み、前記インスリン類似体の血清ブドウ糖濃度に作用する能力は、従来のインスリンならびに脂肪組織におけるよりも肝臓においてより活性である肝選択的インスリン類似体に比較して、実質的に増大している。好ましい類似体は、インスリンリスプロ、すなわち、血中ブドウ糖濃度を低下させるために投与される化合物などの、インスリンと同じ一般的目的のために使用されるインスリン様化合物である単量体インスリン類似体である。
【0037】
新規のインスリンA鎖変異体もまた、本発明に有用である。ヒトインスリンA鎖類似体は、CysA6残基とCysA11残基との間の本来の分子内ジスルフィド結合を保存し、7位と30位の2つのセリンが、天然インスリンのB鎖によって形成された2つの鎖間ジスルフィドブリッジに含まれるシステインに取って代わられている。
【0038】
インスリンポリペプチド、および/またはインスリンポリペプチドをコードする核酸は、当業界に知られているインスリンをコードする配列を利用して構成可能である。インスリンポリペプチド、およびインスリンポリペプチドをコードする核酸の供給元としては、ジーンバンク受け入れ番号600165A;550085A;AAH05255;AAA59179が挙げられ、それらの内容全体が本明細書に援用されている。
【0039】
インスリン分子の例としては、限定はしないが、GIVEQCCTSICSLYQLENYCNFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号:52、ヒトインスリン);
GIVEQCCTSICSLYQLENYCNFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(配列番号:53、ヒトリスプロインスリン);
GIVEQCSTSICSLYQLENYSNFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号:54、ヒト「ミニインスリン」);
GIVEQCCASVCSLYQLENYCNFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKA(配列番号:55、ウシインスリン);および
GIVEQCCTSICSLYQLENYCNFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKA(配列番号:56、ブタインスリン)が挙げられる。
【0040】
所望の場合、1個以上のアミノ酸が、トランスロケーション配列を含んでなる第1のペプチド部分と、インスリンを含んでなる第2のポリペプチド部分との間に挿入可能である。幾つかの実施形態において、第1のドメインまたは第2のドメインは、トランスロケーション配列とインスリンとの会合を促進する配列を含む。
【0041】
一実施形態において、キメラペプチドは、インスリンポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性部分を含んでなる。他の実施形態において、キメラペプチドは、インスリンポリペプチドの少なくとも2つの生物学的活性部分を含んでなる。さらに他の実施形態において、キメラペプチドは、インスリンポリペプチドの少なくとも3つの生物学的活性部分を含んでなる。
【0042】
トランスロケーション配列とインスリン配列とは、当業界に知られたいずれかの好適な方法で、化学的カップリングにより結合可能である。多くの知られた化学的架橋法は非特異的である。すなわち、それらはカップリングの位置をトランスロケーション配列上、またはインスリン上の特定の部位に指令しない。その結果、非特異的架橋剤の使用によって機能的部位または立体的ブロック活性部位が攻撃され、共役蛋白質は生物学的に不活性となり得る。
【0043】
カップリングの特異性を高める1つの方法は、架橋されるポリペプチドの1つまたは両方において、わずか1度か2〜3度見出される官能基に直接化学的カップリングを行うことである。例えば、多くの蛋白質において、チオ基を含有する唯一の蛋白質アミノ酸であるシステインは、2〜3度しか見出されない。また、例えばポリペプチドがリジン残基を含有しない場合、第一級アミンに特異的な架橋剤は、そのポリペプチドのアミノ末端に選択的となる。カップリング特異性を高めるために、この方法を首尾良く利用するには、ポリペプチドが分子の生物学的活性を失うことなく変更し得るその分子領域にほどよく希少で反応性の残基を有することが必要である。
【0044】
システイン残基が、ポリペプチド配列の部分に見出される場合は置換し得るが、そうでない場合は、架橋反応におけるそれらの関与により、生物学的活性が妨害され易いと考えられる。システイン残基が置換される場合は、その結果生じるポリペプチドの折りたたみにおける変化を最少にすることが典型的に望ましい。ポリペプチドの折りたたみにおける変化は、前記置換が化学的および立体的にシステインと同様である場合に最小化される。これらの理由で、システインの置換としては、セリンが好ましい。下記の例で説明されるように、システイン残基は架橋を目的としてポリペプチドのアミノ酸配列中へ導入し得る。システイン残基を導入する場合は、アミノ末端またはカルボキシ末端、またはその近辺への導入が好ましい。関心対象のポリペプチドの生産が化学合成によるものとしても、組換えDNAの発現によるにしても、このようなアミノ酸配列の修飾には慣例的方法が利用できる。
【0045】
2つの構成要素のカップリングは、カップリング剤または共役化剤によって達成可能である。利用可能ないくつかの分子間架橋試薬がある。例えば、ミーンズおよびフィーニー(Means and Feeney)、「CHEMICAL MODIFICATION OF PROTEINS」、ホールデン・デイ(Holden−Day)、1974年、39〜43頁を参照されたい。それらの試薬の中では、例えば、プロピオン酸J−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)(SPDP)またはN,N’−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド(双方ともスルフヒドリル基に対して特異性が高く、非可逆的結合を形成する);N,N’−エチレン−ビス−(ヨードアセトアミド)または6個から11個の炭素メチレンブリッジを有する他のそのような試薬(スルフヒドリル基に対して、比較的特異性がある);および1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(アミノ基およびチロシン基と非可逆的結合を形成する)がある。この目的のために有用な他の架橋試薬としては、P,P’−ジフルオロ−m,m’−ジニトロジフェニルスルホン(アミノ基およびフェノール基と非可逆的架橋を形成する);ジメチルアジピミデート(アミノ基に対して特異的);フェノール−1,4−ジスルホニルクロリド(主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアナートまたはジイソチオシアナート、またはアゾフェニル−p−ジイソシアナート(主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(いくつかの異なった側鎖と反応する)およびジスジアゾベンジジン(主にチロシンおよびヒスチジンと反応する)が挙げられる。
【0046】
架橋試薬はホモ二官能性であり得る。すなわち、同じ反応を受ける2つの官能基を有し得る。好ましいホモ二官能性架橋試薬は、ビスマレイミドヘキサン(「BMH」)である。BMHは緩和条件(pH6.5〜7.7)下で、スルフヒドリル含有化合物と特異的に反応する2つのマレイミド官能基を含有する。この2つのマレイミド基は炭化水素鎖によって連結している。したがって、BMHは、システイン残基を含有するポリペプチドの非可逆的架橋にとって有用である。
【0047】
架橋試薬はヘテロ二官能性でもあり得る。ヘテロ二官能性架橋試薬は、2つの異なる官能基、例えば、それぞれ遊離アミン類とチオール類を有する2つの蛋白質を架橋するアミン反応性基とチオール反応性基とを有する。ヘテロ二官能性架橋試薬の例として、4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボン酸スクシンイミジル(「SMCC」)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(「MBS」)および、MBSの伸長鎖類似体である4−(p−マレイミドフェニル)酪酸スクシンイミド(「SMPB」)がある。これらの架橋剤のスクシンイミジル基は、第一級アミンと反応し、チオール反応性のマレイミドは、システイン残基のチオールと共有結合を形成する。
【0048】
架橋試薬は水に低溶解性であることが多い。その水溶性を改善するために、スルホン酸エステル基などの親水性部分を架橋試薬に添加し得る。スルホ−MBSおよびスルホ−SMCCは、水溶性に関して修飾された架橋試薬の例である。
【0049】
多くの架橋試薬は、細胞条件下で本質的に非開裂的な共役体を生成する。しかし、細胞条件下で開裂可能なジスルフィドなどの共有結合を含有する架橋試薬もいくつかある。例えば、トラウト(Traut)の試薬、ジチオビス(プロピオン酸スクシンイミジル)(「DSP」)および3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル(「SPDP」)は周知の開裂可能な架橋剤である。開裂可能な架橋剤の使用により、標的細胞内への送達後にインスリンをトランスロケーション配列から分離することが可能になる。直接ジスルフィド結合もまた、有用であり得る。
【0050】
上記で検討したものを含む多数の架橋試薬が商品として入手可能である。それらの使用に関する詳細な説明は商品供給者から容易に入手可能である。蛋白質架橋剤および蛋白質共役剤についての一般的参考文献は、ウォング(Wong)、「CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS−LINKING」、CRCプレス(Press)(1991)である。
【0051】
化学的架橋は、スペーサアームの使用を含む。スペーサアームは、分子内柔軟性を提供するか、または、共役部分間の分子内距離を調整し、それによって、生物学的活性の保持を補助し得る。スペーサアームは、スペーサアミノ酸、例えば、プロリンを含むポリペプチド部分の形態であり得る。他にスペーサアームは、「長鎖SPDP」(イリノイ州ロックフォードのピアス・ケム社(Pierce Chem.Co.)、カタログ番号21651H)内など、架橋試薬の部分であり得る。
【0052】
キメラペプチドは、1つ以上の追加部分に結合し得る。例えば、キメラペプチドはGST(すなわち、グルタチオンS−トランスフェラーゼ)蛋白質に結合し得るが、ここでキメラペプチドはGST配列のC末端に融合している。このような融合蛋白質はキメラペプチドの精製を促進し得る。
【0053】
他にキメラペプチドは、公知の好適な宿主細胞内に簡便に発現し得るトランスロケーション配列とインスリン配列とを含む融合ペプチドとして生産し得る。本明細書中に記載された融合ペプチドは、標準的な組換えDNA法と類似した、またはそれから容易に適合し得る方法で形成し、使用し得る。
【0054】
一般に、本発明のアミノ酸配列(配列番号:1〜48)は、例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジンにおける場合のように、塩基性アミノ酸を多数含む。「多数」とは、少なくとも3に等しいと解すべきである。
【0055】
1つの特に興味深いアミノ酸配列は、以下の点で配列番号:1の配列である。(1)少なくとも二量体の状態で、それは所望の性質を有する。(2)モノマー、またはポリマーの状態で、それがカップリングしている他のアミノ酸配列に前記性質を与えるか、またはそのアミノ酸配列がすでにそれらの性質を有している場合は、それらを大幅に増強する。同様に、DPV3、(DPV3)、DPV6、DPV7、DPV10およびDPV13と称されるペプチド類はこの増強能力を有している。
【0056】
本発明はまた、血清インスリン濃度を増加させるか、または血清または細胞内ブドウ糖濃度を減少させる方法を提供する。必要としている患者において、血清ブドウ糖濃度を減少させるか、またはインスリン濃度を増加させる。本発明のキメラペプチドを含有する組成物を投与することによって、血清または細胞内のインスリン濃度を増加させること、または血清または細胞内のブドウ糖濃度を減少させること。患者は当業界で公知の方法により、血清ブドウ糖濃度または血清インスリン濃度を測定することにより同定される。前記患者のインスリン濃度またはブドウ糖濃度が正常範囲にない場合、前記患者は血清インスリン濃度の増加または血清ブドウ糖濃度の減少を必要としている。正常なブドウ糖濃度は、60〜120mg/dlである。正常なインスリン濃度は、7mU/mL±3mUである。例えば、患者の血清ブドウ糖濃度が120mg/dlを超える場合、その患者は、血清ブドウ糖濃度を減少させる必要がある。対照的に、ブドウ糖濃度が60〜120mg/dlの間にある患者は血清ブドウ糖濃度を低下させる必要はない。投与後、患者の血清ブドウ糖は、少なくとも60〜120mg/dlの間にあることが好ましい。例えば、血清インスリン濃度が4mU/mL未満である場合、患者はインスリン濃度を増加させる必要がある。投与後、血清インスリン濃度は、7mU/mL±3mUであることが好ましい。
【0057】
さらに、本発明は、そのような治療または予防が望まれる患者に、患者における糖尿病を治療または予防する十分な量で、本発明のキメラペプチドを含有する組成物を投与することにより、糖尿病を治療または予防する方法を提供する。治療の有効性は、糖尿病を診断または治療するいずれかの公知の方法と関連して決定される。糖尿病は、例えば、過度の排尿、強い口渇と空腹、強度の疲労、皮膚の乾燥、または原因不明の体重減少により診断される。
【0058】
前記患者は、例えばいずれかの哺乳類、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタであり得る。
【0059】
本発明のキメラペプチドまたはこれらのキメラペプチドをコードする核酸分子(本明細書では、「治療剤」または「活性化合物」とも称される)、およびそれらの誘導体、断片、類似体および相同体を投与に好適な薬剤組成物内へ組み入れることが可能である。このような組成物は、典型的に核酸分子、蛋白質、または抗体および薬剤的に許容し得る担体を含んでなる。本明細書で用いられる「薬剤的に許容できる担体」は、薬剤としての投与に適合する任意の、および全ての溶媒、分散媒体、被覆物、抗菌剤および抗真菌剤、等張性の吸着遅延化剤などを含むことが意図されている。好適な担体は、この分野の標準的な参考文献であるレミントン(Remington)の「Pharmaceutical Sciences」の最新版に記載されており、本明細書に援用されている。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、限定はしないが、水、塩類液、フィンガー溶液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。リポソームや不揮発性油などの非水性担体もまた使用し得る。薬剤活性物質に対するそのような担体および試剤の使用は当業界に周知である。従来の任意の媒体または試剤は活性物質と不相溶性でない限り、組成物におけるそれらの使用が考慮される。補足的な活性化合物もまた、該組成物に組み入れ可能である。
【0060】
本明細書中に開示された活性試剤は、リポソーム類としても製剤化し得る。リポソーム類は、エプスタインら(Epstein et al.)Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:3688頁(1985);ワングら(Hwang et al.)、Proc.Natl Acad.Sci.USA,77:4030頁(1980);および米国特許第4,485,045号および米国特許第4,544,545号に記載されているような当業界に公知の方法によって調製される。循環時間を延長化したリポソーム類は、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0061】
特に有用なリポソーム類は、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含んでなる脂質組成物による逆相蒸発法により生成し得る。リポソーム類は、細孔サイズのフィルタを通して押出され、所望の直径のリポソーム類が得られる。
【0062】
本発明の薬剤組成物は、意図された投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口的、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(すなわち、局所)、経膜および直腸投与が挙げられる。非経口的、経皮または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は以下の成分を含み得る:注射用水などの滅菌希釈剤、塩類溶液、非揮発性油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン類などの抗菌剤;アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝剤および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性調製剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整し得る。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル類、使い捨て注射器類、または複数回投与容器に封入し得る。
【0063】
注射使用に好適な薬剤組成物としては、滅菌水性溶液(水溶性)または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即席調製用滅菌粉体が挙げられる。静脈内投与に好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、クレモフォルEL(Cremophor EL(商標))(ニュージャージー州パルシッパニーのBASF)またはリン酸塩緩衝塩類(PBS)が挙げられる。全ての場合に、前記組成物は滅菌されていなければならず、また、容易な注射可能性が存在する程度に流動性である必要がある。それは、製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、また、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液状ポリエチレングリコールなど)およびそれらの好適な混合物を含有する溶媒、または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆物の使用により、分散液の場合は要求される粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持される。微生物作用の防止は、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌剤および抗真菌剤によって達成し得る。多くの場合、組成物中に糖類、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール類、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましいであろう。注射用組成物の吸収延長化は、前記組成物に吸収を遅延化する試剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンを含めることによって達成し得る。
【0064】
滅菌注射用溶液は、要求される量の活性化合物(例えば、グリコプロテインIbα融合蛋白質)を、適切な溶媒中必要ならば、上に挙げた成分の1種または組合わせとと共に組み入れ、引き続き、ろ過滅菌を行うことによって調製し得る。一般に、分散液は、塩基性分散媒体と他の上に挙げた成分のうちの必要とされる成分を含有する滅菌担体中へ活性化合物を組入れることによって調製される。滅菌注射用溶液調製用の滅菌粉体の場合、調製法は活性成分の粉体プラス先に滅菌ろ過されたその溶液の所望の追加成分を与える真空乾燥および凍結乾燥である。
【0065】
経口組成物は一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤へと圧縮され得る。経口治療投与を目的とした前記活性化合物は、賦形剤と共に組入れられ、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用し得る。経口組成物はまた、嗽薬としての使用のため、流動性担体を用いて調製可能であり、ここで流動性担体中の化合物は、経口的に適用され、うがいして吐き出されるか、または飲み込まれる。薬剤として適合可能な結合剤および/または補助剤物質を組成物の部分として含み得る。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含有し得る:微晶質セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギニン酸、プリモゲル(Primogel)またはトウモロコシデンプンなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes)などの潤滑剤;コロイド二酸化ケイ素などの滑剤;スクロースまたはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料などの香味料。
【0066】
吸入による投与のためには、前記化合物は好適な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器またはディスペンサからのエアゾールスプレーまたはネブライザの形態で送達される。
【0067】
全身投与はまた、経膜または経皮手段であり得る。経膜または経皮投与のために、浸透すべき関門に適切な浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は一般に当業界で公知であり、例えば、経膜投与のために、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経膜投与は、鼻用スプレー剤、または坐薬の使用によって達成し得る。経皮投与のために、前記活性化合物は当業界に公知の軟膏、軟膏剤、ゲル剤またはクリーム剤に製剤化できる。
【0068】
前記化合物はまた、直腸送達のために坐薬(例えば、ココアバターおよび他のグリセリド類などの慣例的な坐薬基剤と共に)、または停留浣腸の形態で調製し得る。
【0069】
一実施形態において、前記活性化合物は、移植およびミクロカプセル化送達システムを含む放出制御剤など、前記化合物を身体からの急速な排出から防ぐ担体と共に調製される。酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類およびポリ酢酸などの生物分解性、生体適合性ポリマー類を使用し得る。このような製剤の調製法は、当業者には明らかであろう。前記物質はまた、アルザ社(Alza Corporation)およびノバ・ファーマシューティカルズ社(Nova Pharmaceuticals Inc.)から商品として入手し得る。リポソーム懸濁液(ウィルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞に標的化されたリポソーム類を含む)もまた、薬剤的に許容できる担体として使用し得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように当業界に公知の方法に従って調製し得る。
【0070】
幾つかの実施形態において、経口または非経口組成物は、投与の容易さと用量の均一性のため、用量単位形態で製剤化される。本明細書中で用いられる用量単位形態とは、治療を受ける患者にとって単一用量として適した物理的に個別の単位であって、各単位が必要とされる薬剤担体と関連して、所望の治療効果を生み出すように計算された活性化合物の予め決められた量を含有する単位を言う。本発明の用量単位形態の明細は、前記活性化合物の独自の特徴や達成すべき特定の治療効果および個人の治療用に、このような活性化合物を調合する技術固有の限界により規定され、また直接依存する。
【0071】
本発明の核酸分子をベクター類の中へ挿入し、遺伝子療法ベクター類として使用し得る。遺伝子療法ベクター類は、例えば、静脈内注射、局所投与(例えば、米国特許第5,328,470号を参照)または定位注射(例えば、チェンら(Chen et al.)、1994年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:3054〜3057頁を参照)により患者に送達し得る。遺伝子療法ベクター類の薬剤調製物は、許容できる希釈剤中に遺伝子療法ベクター類を含み得るか、または遺伝子送達媒体が埋め込まれている徐放マトリックスを含んでなる。他に、完全遺伝子送達ベクターが組換え細胞、例えば、レトロウィルスベクターからそのまま生産し得る場合、薬剤調製物は遺伝子送達システムを生産する1種以上の細胞を含み得る。
【0072】
所望の場合、徐放性製剤を調製できる。徐放性製剤の好適な例としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの成形品、例えば、薄膜またはミクロカプセルの形態の半透過性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル類、ヒドロゲル類(例えば、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド類(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とL−グルタミン酸γ−エチルとのコポリマー、非分解性酢酸エチレン−ビニル、ルプロン・デポー(LUPRON DEPOT(商標))(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)からなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー類およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。酢酸エチレン−ビニルや乳酸−グリコール酸などのポリマー類は、100日間を超える期間、分子の放出を可能にするが、あるヒドロゲル酸の蛋白質放出期間はより短い。
【0073】
例えば、本発明のキメラペプチドの経口用量は、示された効果を目的として使用される場合、経口経路で約0.05mg/日から1000mg/日の間となり、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0および1,000.0mgの有効成分を含有する錠剤の形態にすることが好ましい。少なくとも1種の関心対象物質を入れたベクター類または輸送体の有効血漿濃度は、体重1キログラム、1日につき、0.002mgから50mgの範囲となる。
【0074】
本発明のキメラペプチド類、またはこれらのキメラペプチドをコードする核酸は、1日用量の形態で投与され得るか、または合計1日用量を1日2回、3回または4回投与にして投与できる。
【0075】
前記薬剤組成物は、投与説明書と共に容器、キット、箱またはディスペンサに包含できる。
【0076】
1つの特定の適用において、本発明は、本発明による少なくとも1種のキメラペプチドおよび/または1種の細胞からなる、またはそれらを含有するin vitro使用のための診断用試剤に関する。このような診断用試剤は、in vivoにおいても使用できる。
【0077】
したがって、本発明の課題はまた、診断用試剤を含む診断用キットでもある。より具体的には、前記診断用キットは、1つ以上の容器内に、本発明における組成物の予め決められた量を含む。
【0078】
他の実施形態において、本発明は、関心対象物質を真核細胞の生体膜を通してトランスロケーションする方法を提供し、前記方法は、本発明のキメラペプチドを準備すること、および前記キメラペプチドの存在下、細胞培養液に接触させることを含んでなる。一実施
形態において、真核細胞の活性代謝を促進する条件下で細胞培養液を前記キメラペプチドと接触させる。
【0079】
本発明はまた、真核細胞の活性代謝を促進する条件下で、前記細胞を本発明のキメラペプチドと接触させることにより、前記真核細胞内の細胞内インスリン濃度を増加させる、または細胞内ブドウ糖濃度を減少させる方法を提供する。
【0080】
他の実施態様において、本発明は、発現制御配列に操作可能に結合したペプチドをコードする核酸分子を含んでなるベクターを有する産生細胞を移入すること、前記ペプチドの産生を可能にする条件下で前記産生細胞を培養すること、および前記ペプチドを単離することを含んでなる、本発明のペプチドの生産方法を提供する。
【0081】
本発明は、上記のキメラペプチドのペプチドベクターとしての使用を含む。本明細書中に用いられる用語の「キメラペプチド」、「ベクター」および「ペプチドベクター」は交換可能に使用し得る。これらのベクター類は、それらと共有的に、または非共有的に結合しているインスリンを細胞内に輸送する能力があり、したがって、インスリンの細胞内輸送にとって効果的なベクター類である。
【0082】
この目的を達成するために、ベクターが比較的大量の分子を細胞内に輸送する能力を有すること、またそのために、ヒトの免疫系によって外来抗原として認識されないことが必要である。
【0083】
これらのキメラペプチドは、インスリンを細胞内へ内部化するための試剤としてin vivo、in vitro双方において使用できることが判明した。
【0084】
変法として、前記ベクターは、一方でアミノグリカン類と反応するアミノ酸配列のカップリングに基き、他方ではヒト抗DNA抗体の可変部分から誘導された新規ペプチド類のカップリングに基いている。「カップリング」とは、インスリンポリペプチドとディアトス(diatos)ペプチドベクターとの間の物理的会合を可能にする任意のタイプの相互作用を意味すると解される。それは、生物学的媒体および/または本発明のペプチド類により輸送される関心対象物質によって開裂性または非開裂性であり得るか、または、活性物質にカップリングしたベクターを投与した生物に適用された物理的手段によって開裂性であり得る。このように、前記物質の生物学的効果発現のためには、それがベクターから放出されることが必要の場合もある。
【0085】
1種または同一分子内のヒト抗DNA抗体の種々の部分から誘導されたアミノグリカン類およびペプチド類と反応するアミノ酸配列のカップリングにより、インスリンのトランスロケーションおよび細胞内転移において、とりわけ、アミノグリカンと反応するアミノ酸配列がヒト由来である場合には、特に効果的なペプチドベクターの調製をもたらす。
【0086】
この組合わせは、また、特にヒトの使用に適合したトランスロケーションベクターおよび転移ベクターを生み出す。実際、上記のように国際公開第97/02840号から公知のマウス由来のペプチドベクターは胚系によりコードされ、変異を伴わないので、その結果、抗原の点では、ヒトに見られるものに近いはずであり、それらをヒトに注射することにより、免疫反応を誘発する可能性がある。本発明によるDPVから形成されたペプチドベクター、および抗DNA抗体より誘導されたペプチド類から形成されたペプチドベクターは、双方ともヒト由来であり、胚系によりコードされ、変異を伴わないためこの問題を防ぐ。
【0087】
ヒト抗DNA抗体から誘導されたこれらのペプチドの一般的特徴は、国際公開第99/07414号に記載されているマウス由来のペプチドの特徴に近いが、それらを後者と区別するさらなる性質を有している。すなわち:
(1)細胞内部へ浸透する能力、それらは活性細胞代謝を有する必要がある(培養温度は
25℃から39℃まで、好ましくは37℃までの間)が、一方、マウスのペプチドは明らかに依存性が低い;
(2)それらは、マウスのベクターよりもはるかにDNAとの反応性が弱い;
(3)それらの浸透能力は、それらが細胞内部へ輸送しようとする分子によって著しく影響される;
(4)それらは、ヒト由来の細胞内部へ、他のものに由来する細胞内部よりも、より良好に浸透する。
【0088】
本発明は、ヘパリン結合ペプチドおよび1種以上の好ましくは多反応性である抗体断片、より具体的には、抗体の高頻度可変領域由来の1種以上の断片からなるディアトス(diatos)ペプチドベクターを提供する。本発明の課題であるベクターは、抗体のH鎖の断片を含有することにより特徴づけられていることが好ましい。
【0089】
上記の国際公開第99/07414号では、サイズが小型で分子量の低いモノマーの免疫グロブリンであるモノクローナルIgGの断片のみが使用された。本発明は、非常に高分子量を有する五量体の免疫グロブリンであるIgM由来の断片を使用することも可能であることを示している。
【0090】
上記に示したように、本発明のベクターは、インスリンの細胞内および核内輸送および転移のために、特によく適合している。
【0091】
関心対象物質の細胞内への内部化における他の方法とは異なり、本発明の方法はエネルギーに依存する。ペプチドの浸透は、細胞を4℃で培養することにより完全に阻害される。それはまた、アジ化ナトリウム(ATPアーゼの阻害剤)やゲニステイン(チロシンキナーゼおよびATPへの結合阻害剤)のような細胞代謝阻害剤によって部分的に阻害される。したがって、本発明のペプチドおよびペプチドにカップリングしている関心対象物質の内部化機構はエンルギーに依存する。それゆえ、本発明のペプチドを用いたベクター化は、細胞表面の結合部位を介してなされる。したがって、本発明のアミノ酸配列は、細胞膜上に位置する結合部位にそれらが固定される能力、および細胞膜を通過する能力によって特徴づけられている。このように、本発明のアミノ酸配列は活性機構によって細胞膜を通過する能力、次に細胞質および/または細胞核の中に留まる能力によって特徴づけられている。したがって、それらは、受動的方法で細胞膜を通過することのできた先行技術におけるペプチド輸送体とは区別される。
【0092】
このように、ベクターが細胞内へ通過する際、その使用が輸送されている物質のサイズに限定されないベクターを有することが可能である。実際、本発明のベクター類は、小さな化学分子(低分子量)から蛋白質またはプラスミド型核酸類(高分子量)の範囲の薬物を輸送することができる。浸透に関する本発明のベクター類のこの特殊な能力は、好ましい方法で「薬物」を細胞内へと標的化することを可能にし、したがって、薬物毒性の潜在的低下および有効性指標の潜在的増大に寄与する。
【0093】
したがって、本発明は、細胞内へ、および/または細胞の核内へ組入れ可能な関心対象物質を天然、または非天然に含有するという事実によって特徴づけられる、上述したベクターなどのベクターを供給することを目的としている。
【0094】
より具体的には、本発明の課題は、その浸透能力がカップリングしている関心対象物質の性質から全く独立しているベクターである。マウスのベクター類に比べて、これらのヒトのベクター類に特有なこの特徴が、これらベクター類の企図された使用法における主要な関心事である。しかし、本発明は、ベクターにカップリングしている関心対象物質に適合したベクター類もまた、関心対象としている。
【0095】
しかし、ベクターが細胞浸透前または浸透中に解離しないように相互作用は十分に確実でなければならない。このために本発明におけるカップリングは、非共有カップリングもあり得るが、好ましいカップリングは共有カップリングである。前記インスリンポリペプチドはそれらの末端のうちのいずれか一方、または側鎖上にあるペプチドに直接、またはアミノ酸の1つにカップリングが可能である。前記インスリンポリペプチドはまた、前記ペプチドの末端のいずれか一方に、またはアミノ酸の1つの側鎖にアームを結合させることによって間接的にカップリング可能である。
【0096】
本発明のベクターは、in vitroで細胞のトランスフェクションを可能にすることもまた示された。
【0097】
本発明の一実施形態において、前記ベクターは、インスリンポリペプチドに対して元々
強力な親和性を有する少なくとも1種の分子(「アンカリング分子」と称される)により、インスリンポリペプチドにカップリングしている。インスリンポリペプチドに対するアンカリング分子の生来の親和性は、輸送体とインスリンポリペプチドとの非共有的相互作用を可能にし、そのため、インスリンポリペプチドの細胞内移動が行われる。
【0098】
このタイプの輸送体の特に興味のある他の利点は、インスリンポリペプチドに対するアンカリング分子の生来の親和性により、この2つの要素が、化学的または生化学的相互作用なしに全く自然的方法でカップリングするという事実からなる。
【0099】
関心対象物質がその大きさにより、および/またはその構造により、前記アミノ酸配列に直接カップリングすることが難しい場合、このタイプの輸送体は特に興味深い。また、関心対象物質があまり安定でない場合、また、それとカップリングするための化学的相互作用がいずれもそれを分解させる、またはその活性を変化させる恐れがある場合、このタイプの輸送体は特に有用であり得る。
【0100】
本発明の他の態様は、キメラペプチド、またはその誘導体、断片、類似体または相同体をコードする核酸を含有するベクター類、好ましくは発現ベクター類に関する。本明細書中に用いられる用語の「ベクター」は、結合した他の核酸を輸送する能力のある核酸分子を言う。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、追加のDNAセグメントを内に結合することのできる線状または環状の二本鎖DNAループである。ベクターの他のタイプは、追加のDNAセグメントがウィルスのゲノム内に結合可能なウィルスベクターである。ある一定のベクター類は、それらが導入された宿主細胞内で自動複製する能力がある(例えば、細菌の複製源を有する細菌ベクター類およびエピソーム性哺乳動物ベクター類)。他のベクター類(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター類)は、宿主細胞内へ導入される際に宿主細胞のゲノム内へ組入れられることによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある一定のベクター類は、それらが操作可能に結合している遺伝子の発現を指令する能力がある。このようなベクター類は、本明細書中で「発現ベクター」と称される。一般に、組換えDNA法において利用される発現ベクター類は、プラスミドの形態であることが多い。本明細書中において、プラスミドが最も一般的に用いられるベクターの形態であることから、「プラスミド」と「ベクター」とは交換可能に使用し得る。しかしながら、本発明は、等しい機能を働かせるウィルスベクター類(例えば、複製を欠くレトロウィルス類、アデノウィルス類およびアデノ関連ウィルス類)などの他の形態の発現ベクター類を含むように意図されている。さらに、幾つかのウィルスベクター類は、特異的にまたは非特異的に、特定の細胞タイプを標的にする能力がある。
【0101】
本発明の組換え発現ベクター類は、宿主細胞内における核酸の発現に好適な形態にある本発明の核酸を含んでなるが、このことは、前記組換え発現ベクター類が、発現に用いられる宿主細胞に基いて選択された1つ以上の調節配列を含み、この調節配列が発現されるべき核酸配列に操作可能に結合していることを意味する。組替え発現ベクター内部に、「操作可能に結合している」とは、関心対象の核酸配列が、この核酸配列の発現が可能になる様式で(例えば、in vitro転写/翻訳システム内に、またはベクターが宿主細胞内に導入される場合は宿主細胞内に)、調節配列(単一または複数)に結合していることを意味するように意図されている。用語の「調節配列」は、プロモーター類、エンハンサー類、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル類)を含むことが意図されている。このような調節配列は、例えば、ゲッデル(Goeddel);「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、カリフォルニア州サンディエゴのアカデミック・プレス(Academic Press)(1990)に記載されている。調節配列は、宿主細胞の多くのタイプにおいてヌクレオチド配列の構成的発現を指令するもの、およびある一定の宿主細胞においてのみ、ヌクレオチド配列の発現を指令するもの(例えば、組織特異的調節配列)を含む。発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、所望の蛋白質レベルなどの因子に依存し得る。本発明の発現ベクター類は宿主細胞内へ導入可能であり、それによって、本明細書中に記載された核酸によってコードされた融合蛋白質類またはペプチド類を含む蛋白質類またはペプチド類を生産する。
【0102】
本発明の組換え発現ベクターは、原核細胞または真核細胞中のキメラペプチドの発現用にデザインできる。例えば、キメラペプチドを、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを用いて)、酵母細胞または哺乳動物細胞中に発現できる。好適な宿主細胞は、さらにゲッデル(Goeddel)、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、アカデミック・プレス(Academic Press)カリフォルニア州サンディエゴ(1990)に検討されている。他に、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを用いて、in vitroで転写および翻訳し得る。
【0103】
原核細胞における蛋白質の発現は、融合蛋白質または非融合蛋白質のいずれかの発現を指令する構成的または誘導的プロモーター類を含有するベクター類により大腸菌において最もよく実施される。融合ベクター類は、多くのアミノ酸類をその中にコードされる蛋白質、通常、組換え蛋白質のアミノ末端に付加する。このような融合ベクター類は、典型的に以下の3つの目的に役立つ:(1)組換え蛋白質の発現を増すこと;(2)組換え蛋白質の溶解性を増加すること;および(3)親和性精製においてリガンドとして作用させることにより組換え蛋白質の精製を補助すること。しばしば、融合発現ベクター類において、蛋白分解開裂部位は、組換え部分の融合部分からの分離に続いて融合蛋白質の精製を可能にするために、融合部分と組換え蛋白質との接合部に導入される。このような酵素およびそれらの共役認識配列としては、因子Xa、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。典型的な融合発現ベクター類としては、pGEX(ファルマシア・バイオテック社(Pharmacia Biotech Inc);スミスおよびジョンソン(Smith and Johnson)(1988)Gene67:31〜40頁)、pMAL(マサチューセッツ州ビバリーのニューイングランド・バイオラブス(New England Biolabs))およびpRIT5(ニュージャージー州ピスキャタウェイのファルマシア(Pharmacia))が挙げられ、それぞれ、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合蛋白質、または蛋白質Aを標的組換え蛋白質に融合する。
【0104】
好適な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc(アムランら(Amrann et al.)、(1988)Gene69:301〜315頁)およびpET1ld(スタディアら(Studier et al.)、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、カリフォルニア州サンディエゴのアカデミック・プレス(Academic Press)、(1990)60〜89頁)が挙げられる。
【0105】
大腸菌において組換え蛋白質発現を最大にする方策は、組換え蛋白質を蛋白分解する能力を欠いている宿主細菌において蛋白質を発現することである。ゴッテスマン(Gottesman)、「GENE EXPRESSION TECHNOLOGY: METHODS IN ENZYMOLOGY 185」、カリフォルニア州サンディエゴのアカデミック・プレス(Academic Press)、(1990)119〜128頁を参照されたい。他の方策は、発現ベクターに挿入するために、核酸の核酸配列を変更し、その結果、各アミノ酸の個々のコドンを、優先的に大腸菌において利用されるものにすることである(ワダら(Wada et al.)、(1992)Nucleic Acids Res.20:2111〜2118頁)。本発明の核酸配列のこのような変更は、標準的DNA合成法により実施できる。
【0106】
他の実施形態において、キメラペプチド発現ベクターは酵母発現ベクターである。酵母エス−セレビシエ(S.cerevisiae)における発現用ベクターの例としては、pYepSecl(バルダリら(Baldari et al.)、(1987)EMBO J6:229〜234頁)、pMFa(クルジャンおよびヘルスコビッツ(Kurjan and Herskowitz)、(1982)Cell30:933〜943頁)、pJRY88(シュルツら(Schultz et al.)、(1987)Gene54:113〜123頁)、pYES2(カリフォルニア州サンディエゴのインビトロゲン社(Invitrogen Corporation)、およびpicZ(カリフォルニア州サンディエゴのインビトロゲン社(Invitrogen Corporation))が挙げられる。
【0107】
他に、キメラペプチドを、バキュロウイルス(baculovirus)発現ベクター類を用いて昆虫細胞に発現できる。培養昆虫細胞(e.g.、SF9細胞)中の蛋白質の発現に利用できるバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(スミスら(Smith et al.)、(1983)Mol Cell Biol 3:2156〜2165頁)およびpVLシリーズ(ラックロウおよびサマーズ(Lucklow and Summers)(1989)Virology170:31〜39頁)が挙げられる。
【0108】
さらに他の実施形態において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを用いて、哺乳動物細胞に発現される。哺乳動物発現ベクター類の例としては、pCDM8(シード(Seed)(1987)Nature329:840頁)およびpMT2PC(カウフマンら(Kaufman et al.)(1987)EMBO J6:187〜195頁)が挙げられる。哺乳動物細胞中で用いられる場合、発現ベクターの制御機能は、ウィルス調節要素により提供されることが多い。例えば、通常使用されるプロモーター類は、ポリオーマ、アデノウィルス2、サイトメガロウイルスおよびシミアンウイルス40から誘導される。原核細胞および真核細胞の双方に好適な他の発現系に関しては、例えば、サンブルックら(Sambrook et al.)、「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーのコールドスプリングハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年、16章および17章を参照されたい。
【0109】
他の実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指令できる(例えば、組織特異的調節要素が、核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節要素は当業界に知られている。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例としては、アルブミンプロモーター(肝特異的;ピンカートら(Pinkert et al.)(1987)Genes Dev 1:268〜277頁)、リンパ球特異的プロモーター類(キャラメおよびイートン(Calame and Eaton)(1988)Adv Immunol43:235〜275)、特にT細胞受容体のプロモーター類(ウィンノートおよびボルチモア(Winoto and Baltimore)(1989)EMBOJ8:729〜733頁)および免疫グロブリン類(バネルジら(Banerji et al.)(1983)Cell33:729〜740頁;クイーンおよびボルチモア(Queen and Baltimore)(1983)Cell33:741〜748頁)、神経特異的プロモーター類(例えば、神経細線維プロモーター;バイルンおよびラッドル(Byrne and Ruddle)(1989)PNAS86:5473〜5477頁)、膵臓特異的プロモーター類(エドルンドら(Edlund et al.)(1985)Science 230:912〜916頁)、および乳腺特異的プロモーター類(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号およびヨーロッパ特許出願公報第264,166号)が挙げられる。また、発生調節プロモーター類、例えば、マウスホックスプロモーター類(ケッセルおよびグルス(Kessel and Gruss)(1990)Science249:374〜379頁)およびα−フェトプロテインプロモーター(キャンペスおよびチルグマン(Campes and Tilghman)(1989)Genes Dev 3:537〜546頁)も含まれる。
【0110】
本発明の他の態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。用語の「宿主細胞」および「組換え宿主細胞」は、本明細書中で交換可能に用いられる。このような用語は、特定の対象細胞のみならず、このような細胞の後代または可能性のある後代を言う。変異または環境影響のいずれかのため、ある一定の変更が後続世代に生じ得ることから、このような後代は、実際、親細胞と一致しない可能性もあるが、本明細書中で使用される用語の範囲内にやはり含まれる。さらに、宿主細胞は、一旦キメラペプチドを発現すると変調を受ける可能性があり、元の特性を維持することも、またはゆるめることもある。
【0111】
宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、キメラペプチドは、大腸菌などの細菌細胞、昆虫細胞、酵母または哺乳類細胞(チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞またはCOS細胞など)において発現できる。他に、宿主細胞は、未熟哺乳動物細胞、すなわち、多分化能性幹細胞であり得る。宿主細胞はまた、他のヒト組織から誘導できる。他の好適な宿主細胞は、当業者に知られている。
【0112】
ベクターDNAは、従来のトランスフォーメーション法、トランスダクション法、感染法、トランスフェクション法により原核細胞または真核細胞に導入できる。本明細書中に用いられる用語の「トランスフォーメーション」、「トランスダクション」、「感染」および「トランスフェクション」は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクションまたはエレクトロポレーションなど、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞内に導入するための種々の当業界で認められた方法を言うことを意図している。さらにトランスフェクションは、トランスフェクション剤により媒介できる。「トランスフェクション剤」とは、宿主細胞、例えばリポソーム内へのDNAの組み込みを媒介する任意の化合物を含むことを意味する。宿主細胞をトランスフォームするかまたはトランスフェクションするのに好適な方法は、サンブルックら(Sambrook et al.)、(「MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL」、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーのコールドスプリングハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバー・ラボラトリー・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、1989年)および他の実験室マニュアルに見ることができる。
【0113】
トランスフェクションは、「安定」(すなわち、外来DNAの宿主ゲノムへの組込み)
または「一過性」(すなわち、DNAは宿主細胞内でエピソーム的に発現される)であり得る。
【0114】
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションに関しては、発現ベクターおよび用いられるトランスフェクション法に依存して、細胞の小さなフラクションだけが、外来DNAをゲノムに組み込むことができ、残りのDNAはエピソームに留まることが知られている。これらの組込み体を同定および選択するために、選択性マーカ(例えば、抗生物質耐性)をコードする遺伝子を、一般に関心対象の遺伝子と共に宿主細胞に導入する。種々の選択性マーカ類には、G418、ヒグロマイシンおよびメトトレキサートなどの薬剤耐性を与えるものが含まれる。選択性マーカをコードする核酸を、コードするベクターと同一のベクターにおいて宿主細胞に導入できるか、または別のベクターにおいて導入できる。導入された核酸により安定にトランスフェクトされた細胞は、薬剤選択により同定できる(例えば、選択性マーカ遺伝子を導入した細胞は生存するが、その他の細胞は死滅する)。他の実施形態において、キメラペプチドまたはトランスフェクトされた細胞により変調された細胞は、内因性レポーター遺伝子発現の誘導により同定される。ある特定の実施形態において、プロモーターは、緑色蛍光蛋白質(GFP)の発現を駆動するインスリンプロモーターである。
【0115】
本発明の他の利点と特性は、以下の実施形態の実施例から明らかとなり、また添付の図面を参照とする。
【実施例】
【0116】
本発明を、以下の非限定的実施例においてさらに説明する。
【0117】
実施例1:キメラペプチド類およびディアトス(DIATOS)ペプチドベクター(DPV)類の合成
化学合成: ペプチド合成は、当業者に知られた方法によりなされる(オルターゲンおよびネオシステム(Altergen and Neosystem))。それらは、Fmoc樹脂上の固相中で用いられる。開裂は、トリフルオロ酢酸(TFA)によりなされ、ペプチド類は、半分取HPLC−CRC5カラム上で精製し、0.1%TFA溶液で希釈し、TFA中アセトニトリル勾配(10%〜70%)を用いた。凍結乾燥ペプチド類をNaCl0.15Mに溶解した。
【0118】
本発明のペプチド類を含有する蛋白質の調製を可能にする分子構築
分子生物学法により、一旦適切な細胞に導入し、ベクター化高分子合成を可能にするプラスミド類を構築することができる。
【0119】
組換え蛋白質発現のためのベクター類の構築
図1は、本発明のペプチド配列を含有する組替え蛋白質の発現を可能にするベクター類の調製を示す。原核細胞ベクターpQE30(キアゲン(Qiagen))は、配列6XHisを有する融合蛋白質(または組換え蛋白質)の形態で遺伝子発現を可能にする。このベクターは、標識6XHisをコードする配列の3’に、複製CoIE1の源、IPTGにより誘導可能なファージT5の強力プロモーター、アンピシリン耐性を供与するβ−ラクターゼの遺伝子、および複数クローン化部位を運び、6XHis配列の相内で相補的DNAのクローン化を可能にする。
【0120】
63−merの相補的オリゴヌクレオチド類:
PAV1U:(配列番号:49)
5’gatccgtaaaacgaggactaaaactacgacacgtacgaccacgagtaacacgaatggacgtaa3’
PAV1L:(配列番号:50)
5’gatcttacgtccattcgtgttactcgtggtcgtacgtgtcgtagttttagtcctcgttttacg−3’をハイブリッド形成する。得られたDNAセグメントは、5’にBamHI部位、および3’にBglII部位を有する。それは、ペプチド配列PAV1:VKRGLKLRHVRPRVTRMDV(配列番号:51)をコードする。この断片をベクターpQE30のBamHI部位にクローン化する。エプスタイン−バール(Epstein−Barr)ウィルス(EBV)のゼブラ(Zebra)ウィルス蛋白質(BZLF1)または核局在部位(nls)から35個のアミノ酸が欠失したゼブラ蛋白質をコードする相補的DNA(DNAc)が、PCRにより得られた。それらを、ベクターHis−PAV1またはpQE30のBamHI部位にクローン化した。生じたプラスミド類は、大腸菌のトランスフォーメーション後、組換え蛋白質His−ゼブラ−PAV1、His−ゼブラΔnls−PAV1、His−ゼブラおよびHis−ゼブラΔnlsの発現を可能にする。
【0121】
組換え蛋白質の誘導、抽出および精製
組換えペプチドの生成は、40μg/mlのアンピシリンで補足されたルリア・ベルタニ(Luria Bertani)媒体中の指数増殖期における細菌培養液に1mMのIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を添加することにより37℃で誘導される。IPTG添加12時間後、細菌を4℃で5700g、15分間遠心分離する。細菌残渣を5容量の変性溶菌緩衝液(20mMトリス−HClpH7.8;0.5MNaCI;10%グリセロール;6Mグアニジン−HCl)中に入れる。緩やかに攪拌しながら周囲温度で20分温置後、溶解産物を、4℃で15000g、30分間遠心分離することにより澄明にする。組換え蛋白質を含有する上澄液を−80℃で保存する。
【0122】
6XHis組換え蛋白質を、変性溶菌緩衝液で予め較正した「タロン(TALON)」樹脂カラム(クロンテック(CLONTECH))上のアフィニティクロマトグラフィにより精製する。10mMイミダゾールを含有する10容量の変性溶菌緩衝液で樹脂を3回連続洗浄後、カラムに結合した組換え蛋白質を20mMトリス−HClpH7.8;0.5MNaCI;10%グリセロール;0.5mMPMSFの緩衝液中の6Mから0Mのグアニジン−HClの勾配により再変性させる。組換え蛋白質を、pH8.0、イミダゾールの20mMから1Mの勾配で溶出させる。種々の溶出液を12%SDS−アクリルアミド変性ゲル上で分析する。精製蛋白質を含有するフラクションを集め、20mMHEPESpH7.5、150mMNaCI緩衝液に対して4℃で2時間透析する。該蛋白質を濃縮し、分割し、液体窒素中迅速凍結し、−80℃で保存する。
【0123】
使用ペプチド類
非官能性ペプチド類
配列番号:1。ヒトリポ蛋白Bのアミノ酸配列(3358−3372)由来のヘパリンと反応するペプチド、カージンら(Cardin et al.)、Biochem.Biophys.Res.Com.154:741頁(1988)、DPV1とも称される。
配列番号:2。配列番号:1のヘパリン二量体と反応するペプチド、(DPV1)とも称される。
配列番号:3。配列番号:1のヘパリン三量体と反応するペプチド、(DPV1)とも称される。
配列番号:4。抗DNAモノクローナルマウス抗体F4.1の高頻度可変領域CD3に相当するペプチド(アブラミアスら(Avrameas et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.95:5601頁(1998))。
配列番号:5。配列番号:1および配列番号:4を含有するペプチド。
配列番号:6。モノクローナルマウス抗体のF4.1のCDR2およびCDR3領域の一部を含有するペプチド(アブラミアスら(Avrameas et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.95:5601頁(1998))。
配列番号:7。配列番号:1および配列番号:6を含有するペプチド。
配列番号:8。ヒト抗DNAモノクローナル抗体RTT79の高頻度可変CD3領域に相当するペプチド(スティーブンソンら(Stevenson et al.)、J.Autoimmunity6:809頁(1993))。
配列番号:9。配列番号:1および配列番号:8を含有するペプチド。
配列番号:10。ヘパリンと反応し、配列番号:1およびヒト抗DNAモノクローナル抗体NE−1の高頻度可変領域CDR3に相当するペプチド配列を含有するペプチド(ヒラバヤシら(Hirabayashi et al.)、Scand.J.Immunol.37:533頁(1993))、1047番とも称される。
配列番号:11。配列番号:1およびヒト抗DNAモノクローナル抗体RT72の高頻度可変領域CDR3に相当するペプチド配列を含有するペプチド(カルシら(Kalsi et al.)、Lupus4:375頁(1995))。
配列番号:12。細胞3T3および配列番号:6のNLS(核局在シグナル)配列を含有するペプチド。
配列番号:13。配列番号:1および抗DNAヒトモノクローナル抗体NE−1のCDR2およびCDR3領域の配列を含有するペプチド。
配列番号:14。マウスモノクローナル抗体F4.1のCDR3領域の一部および配列番号:6を含有するペプチド。
配列番号:15。抗DNAヒトモノクローナル抗体NE−1の高頻度可変CDR3領域に相当するペプチド配列を2倍含有するペプチド。
配列番号:16。配列番号:15中の13〜19位に配列番号:1を含有することから生じるペプチド。
配列番号:17。ヘパリンと反応し、ヒトリポ蛋白Eのアミ酸配列から誘導されるペプチド(カージンら(Cardin et al.)、Biochem.Biosphys.Res.Com.154:741頁(1988))、DPV4とも称される。
配列番号:18。ヘパリンと反応し、アルギニンのアミノ酸配列から誘導されるペプチド(キャンパネリら(Campanelli et al.)、Development122:1663〜1672頁(1996))、神経筋接合部の分化を調節する細胞外マトリックスの蛋白質。
配列番号:19。配列番号:18の二量体。
配列番号:20。ヘパリンと反応し、インスリン成長因子結合蛋白質のアミノ酸配列から誘導されるペプチド、DPV2とも称される(フォールケスら(Fowlkes et al.)、Endocrinol.138:2280〜2285頁(1997))。
配列番号:21。ヘパリンと反応し、血小板成長因子のA鎖のC末端部のアミノ酸配列から誘導されるペプチド(マーヘルら(Maher et al.)、Mol.Cell.Biol.9:2251〜2253頁(1989))、DPV6とも称される。
配列番号:22。12個のリジン(K)および配列番号:6を含有するペプチド。
配列番号:23。12個のリジン(K)および配列番号:5を含有するペプチド。
配列番号:24。抗菌活性を有するペプチド(ジャバドプアら(Javadpour et al.)、J.Med.Chem.39:3107〜3113頁(1996))。
配列番号:25。ヘパリンと反応し、インスリン様成長因子結合蛋白質の配列に相当するペプチド(フォールケスら(Fowlkes et al.)、Endocrinol.138:2280〜2285頁(1997))。
配列番号:26。ヘパリンと反応し、ヒトジスムターゼスーパーオキシド配列のC末端部から誘導されるペプチドの二量体のペプチド(イノウエら(Inoue et al.)、FEBS269:89〜92頁(1990))、(DPV3)とも称される。
配列番号:27。ヘパリンと反応し、アミノ酸が立体配置Dにある配列番号:26の配列に相当するペプチド。
配列番号:28。ヘパリンと反応し、配列が配列番号:26から誘導され、αvインテグリン類(21)を選択的に結合するモチーフRGDを含有するペプチド。
配列番号:29。ヘパリンと反応し、配列番号:1および配列番号:17のペプチドよりなるペプチド、DPV1〜DPV4とも称される。
配列番号:30。ヘパリンと反応し、上皮細胞成長因子(EGF)の配列のC末端部から誘導されるペプチド(アーコナックら(Arkonac et al.)、J.Biol.Chem.273:4400〜4405頁(1998))、DPV7とも呼ばれる。
配列番号:31。ヘパリンと反応し、アミノ酸がフロント−バック位にある配列が配列番号:12であるペプチドに相当するペプチド。
配列番号:32。ヘパリンと反応し、アミノ酸が立体配置Dにある配列番号:30に相当するペプチド。
配列番号:33。ヘパリンと反応し、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)の配列の一部を含有するペプチド(フロムら(Fromm et al.)、Arch.Biochem.Bioph.343:92頁(1997))、DPV8とも称される。
配列番号:34。ヘパリンと反応し、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)の配列の一部を含有するペプチド、DPV9とも称される(ヤヨンら(Yayon et al.)、Cell64:841〜848頁(1991))。
配列番号:35。ヘパリンと反応し、マウス腸管配列のC末端部に相当するペプチド(ゴ
ングキアオ(Gongqiao et al.)、Glyconjug J.13:81〜90頁(1996))、DPV10とも称される。
配列番号:36:ヘパリンと反応し、ヒトγインターフェロンのC末端配列の一部を含有するペプチド(ロルタ・ジャコブおよびグリマウド(Lortat−Jacob & Grimaud)、FEBS280:152〜154頁(1991))、DPV11とも称される。
配列番号:37:ヘパリンと反応し、ヒトインターロイキン12のサブユニットp40配列の一部を含有するペプチド(ハサンら(Hasan et al.)、 J.Immunol.162:1064〜1070頁(1999))、DPV12とも称される。
配列番号:38:ヘパリンと反応し、間質細胞から誘導される因子1α配列の一部を含有するペプチド(アマラら(Amara et al.)、J.Biol.Chem.272:200〜204頁(1999))、DPV13とも称される。
配列番号:39:ヘパリンと反応し、「ヘパリン結合蛋白質」(CAP37)の配列の一部を含有するペプチド(ポ−ルら(Pohl et al.)、FEBS272:200〜204(1990))、DPV15とも称される。
配列番号:40:ヘパリンと反応し、配列番号:10(1047)の配列内のペプチドに加えて13個のN末端リジンに相当するペプチド。
配列番号:41:ヘパリンと反応し、配列番号:28((DPV3))の配列内のペプチドに加えて13個のN末端リジンに相当するペプチド。
配列番号:42:ヘパリンと反応し、配列番号:39(DPV10)の配列内のペプチドに加えて13個のN末端リジンに相当するペプチド。
配列番号:43:配列番号:10(1047)および配列番号:24の配列内のペプチドを含有する、抗菌活性を有するペプチド。
配列番号:44:配列番号:24および配列番号:30(DPV7)の配列内のペプチドを含有する、抗菌活性を有するペプチド。
配列番号:45:配列番号:24および配列番号:38(DPV13)の配列内のペプチドを含有する、抗菌活性を有するペプチド。
配列番号:46:配列番号:26(DPV3)の配列内のペプチドに加えてN末端におけるグリシン−フタロシルを含有するペプチド。
配列番号:47:配列番号:21(DPV6)の配列内のペプチドに加えてN末端におけるサリシリルモチーフを含有するペプチド。
配列番号:48:配列番号:21(DPV6)の配列内のペプチドに加えてC末端におけるサリシリルモチーフを含有するペプチド。
【0124】
官能基化ペプチド類
これらのペプチド類は、上記の配列番号:1から48に相当するが、N末端側に、関心対象の幾つかの物質に共役カップリンングを可能にするシステイン、またはペプチド類と、ストレプトアビジンまたはペルオキシダーゼと共役したアビジンとの非共有的組合わせを可能にするビオチンのいずれかを運搬する。
【0125】
実施例2:カコ(Caco)−2関門モデルの完全性
カコ−2細胞を、血清のない合成培地(基礎合成培地、BDM)中に、ウシ皮膚コラーゲンで前もって被覆した、テレフタル酸ポリエチレン製ミクロ多孔性膜上に160000個の細胞/cmの密度で接種した。前記培養培地を週に3回変えて、細胞を、5%COの雰囲気下、37℃で18日間維持した。カコ−2関門モデルの完全性をチェックするための陰性対照として、10dpm/mlD−[14C]−マンニトールを用いた。陽性対照として、L−[H]−プロリンを用いた:能動輸送−10dpm/ml、最終濃度として10μM。その他の対照としては、D−[14C]−マンニトール/L−[H]−プロリン+DPV7 30μg/mlおよびD−[14C]−マンニトール/L−[H]−プロリン+DPV10 30μg/mlが挙げられた。
【0126】
経上皮輸送実験を実施した。カコ−2細胞単層の完全性をチェックするために経上皮電気抵抗(TEER)を測定した。細胞単層を、ハンクス液(HBSS、5mMグルコース、10mMHepesで補足)中、37℃で8時間、予め温置した。1時間、2時間、4時間および8時間の時点で、100μlの培地を低区画部から集め、新鮮なHBSSにより置き換えた。実験終末時に(8時間)、細胞単層をPBSで3回洗浄し、TEERを測定した。次に、細胞を400μlのトリスHCl0.1MpH8.0、0.5%トリトンX100中に集め、超音波により粉砕した。100μlの細胞ホモジネートに含まれた放射活性を測定した。放射活性物質量は、2mlのアクアルマ(Aqualuma)カクテル(オランダ国シェスバーグのルマック(Lumac)/3Mbv)中で光分散後、パッカード(Packard)トリカーブ(Tri−carb)1600CA装置(米国コネチカット州メリデンのパッカード・インスツルメント社(Packard Instrument company)を用いて液体シンチレーション分光測定法により分析した。
【0127】
図2は、D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]−プロリンの輸送を示す。
この結果は、D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]−プロリンの経上皮輸送が最初の4時間は実験時間に比例することを示す。L−[H]−プロリンの輸送(陽性対照)が、D−[14C]−マンニトール(陰性対照)の輸送よりも高く、カコ−2腸管関門モデルが、DPVインスリン化合物の輸送を推定するために使用できることを示した。温置の4時間から8時間の間は、L−[H]−プロリンの輸送は遅速し、D−[14C]−マンニトールの輸送は有意に増加した。この観察は、HBSSにおける長い温置による細胞単層の変化によるものである。輸送実験の終末時(HBSS中に温置8時間後)に測定されたTEER値の急激な減少は、これらの観察と相関性がある(表1)。
【0128】
30μg/mlのDPV7またはDPV10の存在は、D−[14C]−マンニトールまたはL−[H]−プロリンの輸送に影響を与えず(図3)、実験の終末時に細胞と会合しているD−[14C]−マンニトールおよびL−[H]−プロリンの量にも影響を与えなかった(図4)。
【0129】
【表1】

【0130】
実施例3:インスリンおよびDPV−インスリン共役体の経上皮輸送
DPV−インスリン共役体を合成した。手短に説明すると、インスリンを10モル過剰のヘテロ二官能性架橋剤、SMCCにより活性化した。数回の洗浄ステップ後、DPV7またはDPV10を5倍モル過剰で加えた。サンプルを再度洗浄して、未結合物質を除去し、共役体をSDSページ電気泳動分析によりチェックした。インスリン、DPV7−インスリンおよびDPV10−インスリンをNaCl0.15Mで希釈し、最終濃度の0.65mg/mlを得た。各分子の30μgをカコ−2細胞単層上で温置した。
【0131】
経上皮輸送実験を実施した。カコ−2細胞単層の完全性をチェックするために経上皮電気抵抗(TEER)を測定した。細胞単層を、ハンクス液(HBSS、5mMグルコース、10mMHepesで補足)中、37℃で30分間、予め温置した。インスリン化合物を、細胞の先端側に面して、挿入物の上部区画に0.5mlのHBSS培地中、60μg/mlの濃度で加えた。上部および下部区画は、それぞれ、0.5mlおよび1.25mlのHBSSを含んでいた。該細胞単層をインスリン化合物と共に37℃で1時間、4時間または8時間温置した。上部および下部区画の培地を集めた。細胞単層をPBSで3回洗浄し、TEERを測定した。細胞を400μlのトリスHCl0.1MpH8.0、0.5%トリトンX100中に集めた。各条件で、3つの挿入体を用いた(三重体)。
【0132】
表2は、化合物との温置前後に測定されたTEER値を示している。この結果は、DPV7−インスリンが、温置1時間および4時間後にTEERの有意な減少を誘導したことを示し、カコ−2細胞単層の完全性がこれら2つの時点でDPV7−インスリンにより影響を受けたことを示した。TEERの崩壊と細胞形態における変化は、インスリンとDPV10−インスリンでは観察されなかった。この結果はまた、3種の化合物との温置8時間後におけるTEERの有意な減少を示した。これは、実施例1の結果と一致し、HBSS中、4時間より長い温置時間は、カコ−2細胞関門を変化させることを示している。
【0133】
【表2】

【0134】
実施例4:インスリン組成物の検出および定量
遊離インスリン濃度を、デイコ(Dako)(引用文献K6219)からのELISAキットにより測定した。DPV−インスリン共役体を自己製造アッセイにより検出した。手短に説明すると、DPV−インスリン共役体を、96ウェルのミクロ滴定プレートのヘパリン被覆ウェル上に吸収させた。DPV−インスリン共役体の濃度を、マウス抗インスリンモノクローナル抗体およびペルオキシダーゼ−結合副次抗体を用いてELISA誘導アッセイにより定量された。
【0135】
カコ−2細胞と共に温置後集めたサンプルを、BSA被覆ミクロ管に移し、インスリン濃度を測定するまで−20℃に保存した。この実験全体を通して、遊離インスリン濃度は頂点媒体中、安定に留まった。対照として、DPV−インスリン共役体の頂点濃度は、時間の関数として減少した。8時間において、DPV7−インスリンおよびDPV10−インスリンの濃度は、それぞれ、最初の充填の25%と35%に相当した(図5)。DPV−インスリン共役体の濃度における有意な減少は、1時間と4時間の時点でも観察された(図5)。これら2つの時点において、DPV−インスリン共役体の濃度は、両共役体に関して1時間の時点で最初の充填の70%であり、4時間の時点でDPV7−インスリンおよびDPV10−インスリンに関して、それぞれ、最初の充填の54%と64%であった。
【0136】
少量の遊離インスリンを、基底外側培地中に検出した(充填物の0.2%)。可能性としてDPV−インスリン共役体の有意な量は、基底外側培地中に検出されなかったが、これは恐らくDPV−インスリン共役体検出のためのアッセイは、遊離インスリン検出のためのデイコ(Dako)アッセイよりも1000倍感度が低いためと思われる。この感度の差を考慮すると、このような少量のDPV−インスリン共役体を検出するのは困難であったと思われる。
【0137】
極少量の遊離インスリンが、細胞溶解産物中に見出された(最初の充填の0.004%)。対照として、輸送の1時間後、細胞溶解産物中に検出されたDPV7−インスリンおよびDPV10−インスリンの量は、それぞれ、最初の充填の1%と4%に達した(図6)。これらの濃度は、実験全体を通して安定であり、化合物が細胞内に蓄積されず、カコ−2細胞から出ていったことを示唆した。
【0138】
カコ−2細胞を増殖させたフィルタもまた、インスリンおよびDPV−インスリン共役体の存在下で分析した。遊離およびDPV−インスリン共役体を、同一の定量アッセイを用いてフィルタ上で検出し、フィルタ上に残存した化合物量の直接比較を可能にした。
【0139】
結果は、少量の遊離インスリンだけがフィルタ上に残存していたことを示した。対照的に、DPV10またはDPV7とカップリングしている場合、インスリン共役体は、明らかに細胞培養挿入体上に捕捉されて滞留した。
【0140】
実施例5:DPV−インスリン共役体のin vitro定量
DPV−インスリン共役体を、実施例2に記載されたとおり合成した。共役体濃度の測定を検定するために、幾つかの試験を実施する。インスリン−DPV共役体の認識は、RIA試験を用いて確認されている。共役体が抗インスリン抗体によって認識されることを確認し、また共役体がRIA試験を用いて正確な感度で定量できるかどうかを確かめるために、遊離インスリンと平行して、各共役体に関しin vitroで標準濃度曲線を確立する。
【0141】
実施例6:DPV−インスリン共役体のin vivo定量
DPV−インスリン共役体を、実施例2に記載されたとおり合成した。高血糖ラットへの適切な濃度の共役体の皮下注射後、DPV−インスリン共役体の活性を、in vivo評価する。対照は、遊離インスリンまたはNaClのいずれかを注射する。血液サンプルを、予め決められた時点で採取し、インスリン濃度およびブドウ糖濃度の双方をそれぞれ、ELISAおよびブドウ糖酸化酵素法を用いて分析した。血中インスリン濃度の増加、およびその後の血糖濃度の減少により、DPV−インスリン共役体が生物学的に活性であることが示される。
【0142】
実施例7:経口投与後のDPV−インスリン共役体のin vivo評価
DPV−インスリン共役体による腸管関門の通過を評価するために、化合物を高血糖ラットの回腸管腔に挿入する。処理ラットの血中インスリン通過の評価前に、対照に遊離インスリンまたはNaClを投与する。
【0143】
投与後少なくとも3時間の間15分ごとに、次いで、次の12時間は1時間ごとに全動物について糖血を管理する。血液サンプルは、予め決められた時点で採取し、ブドウ糖酸化酵素法を用いてブドウ糖濃度を分析した。血糖濃度の減少は、インスリンの腸管関門通過を示す。
【0144】
in vivo試験で、インスリンの生物学的活性を示さない動物に関しても、in vitro定量が、RIA試験を用いて可能であり、皮下注射後、1時点で全ラットから血液を採取し、インスリン共役体の濃度を、各血液サンプル中のRIAにより測定する。インスリンのこの直接検出により、共役体が腸管関門を通過したかどうかの決定が可能となる。
【0145】
実施例8:形態学的および免疫細胞化学試験
密着結合の完全性を立証するために、DPV−インスリン共役体と接触させた高血糖ラットの小腸回腸組織を採取する。インスリンの経細胞輸送を証明するために、免疫細胞化学試験を、単一時点(30分または60分)後に実施する。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明のペプチド類を含有する組換え蛋白質発現のためのベクター類調製の図式的説明を示す図である。
【図2】D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]プロリン輸送の動力学を示す線グラフである。
【図3A】30μg/mlのDVP7−インスリンの存在下、D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]プロリン輸送の動力学を示す線グラフである。
【図3B】30μg/mlのDVP10−インスリンの存在下、D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]プロリン輸送の動力学を示す線グラフである。
【図4】D−[14C]−マンニトールおよびL−[H]プロリンを単独で(対照)、または30μg/mlのDVP7またはDVP10の存在下、温置した場合の温置8時間後、細胞と会合したD−[14C]−マンニトールおよびL−[H]プロリンを示す棒グラフである。
【図5】頂点培地におけるインスリンおよびDPV−インスリン共役体の濃度を示す棒グラフである。
【図6】細胞溶解産物中のDPV−インスリン共役体濃度を時間の関数として示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ドメインおよび第2ドメインを含んでなるキメラペプチドであって、第1ドメインが、生体膜を通って能動輸送を促進するトランスロケーション配列を含んでなり、第2ドメインが、インスリンポリペプチドの少なくとも一部分を含んでなるキメラペプチド。
【請求項2】
トランスロケーション配列がアミノグリカンと結合する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
アミノグリカンがヘパリンまたは硫酸コンドロイチンである、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
第1ドメインが、
(a)(XBBBXXBX)n;
(b)(XBBXBX)n;
(c)(BBXmBBXo)n;
(d)(XBBXXBX)n;および
(e)(BXBB)n
(式中、Bは塩基性アミノ酸であり;
Xは非塩基性アミノ酸であり;
mの各々は独立してゼロから5までの整数であり;
nの各々は独立して1から10の間の整数であり;
oの各々は独立してゼロから5の間の整数である)、よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項5】
キメラ蛋白質が生理学的関門をトランスロケーションする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項6】
生理学的関門が胃腸関門または血液脳関門である、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
トランスロケーション配列がリポ蛋白の一部分である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
トランスロケーション配列が少なくとも4個の塩基アミノ酸を含んでなる、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
nが2である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項10】
nが3である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項11】
Xが疎水性アミノ酸である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項12】
第1ドメインのアミノ酸配列がXBBBXXBXである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項13】
第1ドメインのアミノ酸配列がXBBXBXである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項14】
第1ドメインのアミノ酸配列がBBXmBBXoである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項15】
第1ドメインのアミノ酸配列がXBBXXBXである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項16】
第1ドメインのアミノ酸配列がBXBBである、請求項4に記載のペプチド。
【請求項17】
第1ドメインのアミノ酸配列が配列番号:30または配列番号:35を含んでなる、請求項4に記載のペプチド。
【請求項18】
第1ドメインのアミノ酸配列が100個未満のアミノ酸長である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項19】
第1ドメインのアミノ酸配列が50個未満のアミノ酸長である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項20】
第1ドメインのアミノ酸配列が25個未満のアミノ酸長である、請求項4に記載のペプチド。
【請求項21】
(a)ヒト抗DNA抗体のCDR3領域;
(b)ヒト抗DNA抗体のCDR2領域;
(c)マウス抗DNA抗体のCDR3領域;および
(d)マウス抗DNA抗体のCDR2領域、
よりなる群から選択される第3ドメインをさらに含んでなる、請求項4に記載のペプチド。
【請求項22】
第1ドメイン、第2ドメインおよび第3ドメインを含んでなるペプチドであって;第1ドメインおよび第2ドメインが、
(a)(XBBBXXBX)n;
(b)(XBBXBX)n;
(c)(BBXmBBXo)n;
(d)(XBBXXBX)n;および
(e)(BXBB)n;
(f)抗体断片、
(式中、Bは塩基性アミノ酸であり;
Xは非塩基性アミノ酸であり;
mの各々は独立してゼロから5までの整数であり;
nの各々は独立して1から10の間の整数であり;
oの各々は独立してゼロから5の間の整数である)、よりなる群から選択されるアミノ酸配列を含んでなり、第1ドメインが第2ドメインとは異なり、第3ドメインがインスリンポリペプチドの少なくとも一部分を含んでなり、キメラペプチドが生体膜をトランスロケーションするペプチド。
【請求項23】
ペプチドがさらに生理学的関門をトランスロケーションする、請求項22に記載のペプチド。
【請求項24】
生理学的関門が胃腸関門または血液脳関門よりなる群から選択される、請求項23に記載のペプチド。
【請求項25】
第1ドメインおよび第2ドメインを含んでなるキメラペプチドであって、第1ドメインが配列番号:30のアミノ酸配列を含んでなり、第2ドメインがインスリンポリペプチドの少なくとも一部分を含んでなるキメラペプチド。
【請求項26】
第1ドメインおよび第2ドメインを含んでなるキメラペプチドであって、第1ドメインが配列番号:35のアミノ酸配列を含んでなり、第2ドメインがインスリンポリペプチドの少なくとも一部分を含んでなるキメラペプチド。
【請求項27】
(a)抗DNA抗体のCDR3領域の少なくとも一部;
(b)抗DNA抗体のCDR2領域の少なくとも一部;および
(c)インスリンポリペプチドの少なくとも一部を含んでなり、ペプチドが生体膜にトランスロケーションするキメラペプチド。
【請求項28】
ペプチドがさらに生理学的関門をトランスロケーションする、請求項27に記載のペプチド。
【請求項29】
生理学的関門が胃腸関門または血液脳関門である、請求項28に記載のペプチド。
【請求項30】
請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載のペプチドおよび薬剤的に許容できる希釈剤、担体またはアジュバントを含んでなる組成物。
【請求項31】
経口投与に好適な製剤における、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
1個以上の容器に請求項30に記載の組成物を含んでなるキット。
【請求項33】
請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項34】
請求項33に記載の核酸を含んでなるベクター。
【請求項35】
請求項34に記載のベクターを含んでなる細胞。
【請求項36】
請求項33に記載の核酸および担体を含んでなる組成物。
【請求項37】
請求項30または36に記載の組成物を患者に投与することを含んでなる、患者の糖尿病を治療する方法。
【請求項38】
ペプチドを調製する方法であって、
(a)本発明のペプチド発現を準備する条件下で請求項33に記載の核酸を含有する細胞を培養すること;および
(b)発現したペプチドを回収すること、
を含んでなる方法。
【請求項39】
真核細胞中の細胞内インスリン濃度を増加させる方法であって、
(a)請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載のペプチドを準備すること;および
(b)真核細胞の活性代謝を促進させる条件下で、該細胞と該ペプチドとを接触させること、
を含んでなる方法。
【請求項40】
真核細胞中の細胞内ブドウ糖濃度を減少させる方法であって、
(a)請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載のペプチドを準備すること;および
(b)真核細胞の活性代謝を促進させる条件下で、該細胞と該ペプチドとを接触させること、
を含んでなる方法。
【請求項41】
請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載の任意のペプチドを患者に投与することを含んでなる、患者の血清インスリン濃度を増加させる方法。
【請求項42】
請求項1、4、21、22または25〜27のいずれか一項に記載の任意のペプチドを患者に投与することを含んでなる、患者の血清ブドウ糖濃度を減少させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−271970(P2008−271970A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111075(P2008−111075)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【分割の表示】特願2003−523495(P2003−523495)の分割
【原出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(501046785)ディアトス (ソシエテ アノニム) (5)
【Fターム(参考)】