説明

糸品質測定器及び糸巻取機

【課題】正確な糸欠点長さ評価及び周期ムラの検出が可能な糸品質測定器及び糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダを構成するワインダユニット10は、クリアラ(糸品質測定器)15を備えている。このクリアラ15は、速度を変化させながら走行する紡績糸20の太さムラを検出し、糸の太さムラの検出を行っている。このとき、糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させて検出信号のサンプリングを行っている。クリアラ15は、走行する糸の太さを検出する第1の糸ムラセンサ43と、CPU47と、を備える。CPU47は、外部の回転センサ42から得られる糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で第1の糸ムラセンサ43の信号のサンプリングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糸品質測定器に関するものであり、特に、糸ムラ信号をサンプリングすることにより糸欠陥の検出を行う糸品質測定器に関する。また、本発明は前記糸品質測定器を備えた糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績機や自動ワインダ等の繊維機械において、走行する糸の太さを監視するヤーンクリアラ(糸品質測定器)を備える構成が知られている。紡績機においては、一定の速度で紡出される糸の太さをヤーンクリアラで監視し、糸の太さが所定範囲から外れている部分(太さムラ)が所定の長さ以上にわたって現れると、糸欠陥であると判断してそれを除去するように構成している。一方、自動ワインダにおいては、太さムラが現れる長さの計算は、巻取パッケージに接触して回転駆動する巻取ドラムの回転パルス信号に基づいて行うようになっている。
【0003】
しかし、自動ワインダでコーン形状のパッケージを巻き取る場合、巻取ドラムの回転速度が一定であっても、厳密に言えば、パッケージの大径側と小径側で巻取速度が異なる。このため、糸がパッケージの大径側に巻き取られるときは糸速度が速いため、太さムラが現れる長さが実際よりも短くヤーンクリアラに認識されて、本来検出すべき糸欠陥を見逃してパッケージの品質を低下させてしまっていた。一方、糸がパッケージの小径側に巻き取られるときは糸速度が遅いため、太さムラの長さが実際よりも長くヤーンクリアラに認識されて、本来は許容すべき太さムラを糸欠陥としてカットしてしまい、糸の無駄及び生産性の低下につながっていた。特に、糸を大径側に巻き取る際の糸欠陥の検出漏れを防止するためには、ヤーンクリアラに対して太さムラの許容長さを必要以上に厳しく設定せざるを得ず、このために、小径側巻取時に、許容すべき太さムラを糸欠陥として検出することによる巻取の中断が頻発していた。
【0004】
一方、自動ワインダでチーズ形状のパッケージを巻き取る場合においても、綾振りのためにドラムに形成される溝の深さが一様でないため、実際には巻取速度は一定ではない。また、コーン巻及びチーズ巻を問わず、巻取途中でリボン巻の危険ワインド数を回避するためにドラムを加減速させてパッケージをドラムに対して滑らせる場合があり、これも巻取速度が一定でなくなる原因となっていた。以上のように、自動ワインダに備えられたヤーンクリアラにおいては糸欠陥の長さ評価が正しく行われていなかった。
【0005】
特許文献1も、駆動ローラの摩擦作用によって綾巻きボビンに回転運動を与える糸巻き機において、その駆動ローラのパルスの評価によって得られた糸欠陥長さは糸のクリーニングのために不正確であるという課題を指摘している。そして、この課題を解決するために、特許文献1は、糸を綾巻きボビンに巻き取る糸巻き機に、走行時間コレレータを有したクリアラを備える構成を開示する。この特許文献1の糸巻き機は、2つの測定点にそれぞれ糸センサを備えた構成となっている。2つの糸センサの測定値は走行時間コレレータを介して評価され、かつ糸速度が調べられる。綾巻きボビンは駆動ローラの摩擦作用によって回転運動するように構成され、この駆動ローラには極車が配置されている。極車の個々の極が角度センサを通過することで生じるパルスが、調節回路の正しい係止のための範囲提出のために、走行時間コレレータに供給される。特許文献1は、この構成により、糸欠陥長さ測定を正確にすることができるとする。
【特許文献1】特開2002−348043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、精紡機において紡出された糸には、僅かな太さムラが周期的に生じることがある。この周期ムラの原因としては、例えば精紡機でスライバを延伸するドラフトローラが心ズレしていること等が考えられる。この精紡工程の周期ムラは、後の製織工程において織布にモアレが生じる原因となることから、早い段階でそれを検出して修正することが必要とされる。
【0007】
上記のような糸の周期ムラを検出するために、一般的には、周波数分析を用いることが有効である。紡糸速度が一定である精紡機では、定速で走行する糸をヤーンクリアラで監視して得られる糸ムラ信号を高速フーリエ変換(FFT)演算することで周期ムラを検出することができる。また、糸ムラ試験機と呼ばれる装置でも、糸を一定の速度で走行させつつセンサにより監視し、その信号のスペクトル分析を行うことで周期ムラを検出することができる。これらは、何れも糸速度が一定である場合において周波数分析が有効なものである。
【0008】
周波数分析を行う場合は、一般的に周波数分解能を固定で且つ適切な有理数にするため、サンプリング周波数も限られた値とする必要があり、糸速度が一定の場合はこれでも十分に周期ムラを検出することができる。しかしながら、上述のように糸速度が変化する自動ワインダの場合は、周期ムラのスペクトルが現れる周波数も変動するため、サンプリング周期固定の周波数分析でこれを検出することは不可能である。このため、精紡工程で発生した周期ムラ等を、自動ワインダの巻返し工程で正確に検出することはできなかった。
【0009】
この点、特許文献1に記載された自動ワインダは、単に糸長さ(糸ムラの長さ)の測定が高精度となる効果を開示しているに過ぎず、糸の周期ムラの分析については何ら開示されていない。従って、従来のヤーンクリアラでは正確な周期ムラの検出は不可能であった。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであって、その主要な目的は、正確な糸欠点長さ評価と周期ムラの検出が可能な糸品質測定器及び糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、速度を変化させながら走行する糸の太さムラを検出し、検出信号のサンプリングを行う糸品質測定器であって、糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させて、糸の太さムラの検出を行う糸品質測定器が提供される。
【0013】
これにより、糸の速度にかかわらず一定の糸長さごとのサンプリング値を得ることができるため、糸欠陥の的確な検出を行うことができる。
【0014】
前記の糸品質測定器においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸品質測定器は、走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、信号処理部と、を備える。前記信号処理部は、外部装置から得られる糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出する。
【0015】
これにより、糸速度信号に基づいてサンプリング周波数を変化させることができるので、糸速度にかかわらず一定長さごとのサンプリング値を得ることができる。
【0016】
前記の糸品質測定器においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸品質測定器は、走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、糸走行経路において前記第1のセンサと所定の間隔を隔てて配置され、前記走行する糸の太さを検出する第2のセンサと、信号処理部と、を備える。前記信号処理部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサからの信号に基づいて糸速度を求め、当該糸速度に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出する。
【0017】
これにより、糸速度を測定し、当該糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させることができる。また、信号処理部は糸速度検出のためのサンプリングを行い、それと並行して糸品質の測定のためのサンプリングを行うことで、糸の品質を高精度で且つリアルタイムに測定することができる。更に、第1のセンサからの信号を糸速度検出及び糸品質測定の両方に用いるので、簡素な構成を実現できる。
【0018】
前記の糸品質測定器においては、前記信号処理部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサからの信号に基づいて前記糸速度を求める際に、外部装置から得られる糸速度信号を用いることが好ましい。
【0019】
これにより、糸品質測定器の外部からの情報を利用して糸速度を求めるので、糸速度検出を適切に行うことができるとともに、糸品質測定器の簡素化も実現できる。
【0020】
前記の糸品質測定器においては、前記信号処理部は、サンプリングされた第1のセンサの信号のFFT演算を行って、前記走行する糸の太さムラを検出することが好ましい。
【0021】
これにより、糸速度が変化する場合であっても周期ムラの確実かつ正確な検出が可能になる。
【0022】
前記の糸品質測定器においては、前記FFT演算の前に前記第1のセンサの信号がデジタルローパスフィルタによって処理されることが好ましい。
【0023】
これにより、エリアジング現象の影響を回避して、正確な周波数分析を実現できる。また、デジタルローパスフィルタを用いるので、カットオフ周波数をサンプリング周波数の変化に追従させて容易に変更することができる。
【0024】
前記の糸品質測定器においては、前記糸の太さムラの検出は、糸の周期的な太さムラの検出を少なくとも含むことが好ましい。
【0025】
即ち、本発明の糸品質測定器は糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させるので、サンプリング周波数固定の構成では検出できなかった糸の周期的な太さムラの検出が可能である。
【0026】
本発明の別の観点によれば、速度を変化させながら走行する糸の太さムラを検出し、検出信号のサンプリングを行う糸品質測定器を備え、糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させて、糸の太さムラの検出を行う糸巻取機が提供される。
【0027】
これにより、糸の速度にかかわらず一定の糸長さごとのサンプリング値を得ることができるため、糸欠陥の的確な検出を行うことができる。
【0028】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、糸が巻き取られるパッケージを回転駆動するためのパッケージ駆動部と、走行する糸の糸速度を検出する糸速度検出部と、を備える。また、前記糸品質測定器は、走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、信号処理部と、を備える。前記信号処理部は、前記糸速度検出部からの糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出する。
【0029】
これにより、糸速度信号に基づいてサンプリング周波数を変化させることができるので、糸速度にかかわらず一定長さごとのサンプリング値を得ることができる。
【0030】
前記の糸巻取機においては、前記パッケージ駆動部へ回転速度指令信号を出力する速度指令部を更に備えていることが好ましい。
【0031】
これにより、速度指令部からの信号を利用して糸速度検出を適切に行うことができる。
【0032】
前記の糸巻取機においては、前記糸速度検出部は、前記パッケージ駆動部の回転速度を検出する回転速度検出部を備えていることが好ましい。
【0033】
これにより、パッケージ駆動部の回転速度を検出する前記回転速度検出部からの情報を利用して糸速度を求めるので、糸速度検出を適切に行うことができる。
【0034】
前記の糸巻取機においては、前記糸速度検出部は、前記走行する糸の太さを検出して糸速度を検出する速度センサを更に備えていることが好ましい。
【0035】
これにより、糸速度を検出するための専用のセンサを設けたことにより、正確な糸速度の検出が可能になるので、糸速度とサンプリング周波数とを連動させて適切なサンプリング間隔を維持することができ、正確な糸速度検出が可能になる。
【0036】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸品質測定器は、糸走行経路において前記第1のセンサと所定の間隔を隔てて配置され、前記走行する糸の太さを検出する第2のセンサを更に備えている。前記信号処理部は、前記糸速度信号と、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサからの信号と、に応じたサンプリング周波数で、前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出する。
【0037】
これにより、信号処理部は糸速度検出のためのサンプリングを行い、それと並行して糸品質の測定のためのサンプリングを行うことで、糸の品質を高精度で且つリアルタイムに測定することができる。更に、第1のセンサからの信号を糸速度検出及び糸品質測定の両方に用いるので、簡素な構成を実現できる。
【0038】
前記の糸巻取機においては、前記信号処理部は、サンプリングされた前記第1のセンサの信号のFFT演算を行って、前記走行する糸の太さムラを検出することが好ましい。
【0039】
これにより、糸速度が変化する場合であっても正確な周期ムラ検出が可能になる。
【0040】
前記の糸巻取機においては、前記FFT演算の前に前記第1のセンサの信号がデジタルローパスフィルタによって処理されることが好ましい。
【0041】
これにより、エリアジング現象の影響を回避して、正確な周波数分析を実現できる。また、デジタルローパスフィルタを用いるので、カットオフ周波数をサンプリング周波数の変化に追従させて容易に変更することができる。
【0042】
前記の糸巻取機においては、前記糸の太さムラの検出は、糸の周期的な太さムラの検出を少なくとも含むことが好ましい。
【0043】
即ち、本発明の糸巻取機は糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させるので、サンプリング周波数固定の構成では検出できなかった糸の周期的な太さムラの検出が可能である。これにより、糸の品質検査がより厳密になり、製品の品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0045】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される紡績糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダ(糸巻取装置)は、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0046】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0047】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を把持可能に構成されたクレードル23と、紡績糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を駆動するための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって紡績糸20をトラバースさせるように構成している。
【0048】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0049】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(糸継部)14と、クリアラ(糸品質測定器)15が備えるクリアラヘッド49と、を配置した構成となっている。
【0050】
前記ワインダユニット10は、図1に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。このマガジン式供給装置60は、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0051】
このボビン収納装置62はマガジンカン63を備え、このマガジンカン63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンカン63は図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であり、この間欠駆動とマガジンカン63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部71へ導かれる。
【0052】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70を巻取ユニット本体16の下部に給糸ボビン21として適切に供給して、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。なお、図1に示すようなマガジン式供給装置60に代えて、自動ワインダ下部に設けられた図略の搬送コンベアにより給糸ボビン21を図略の給糸ボビン供給部から各ワインダユニット10の給糸ボビン保持部71に供給する形態であっても良い。
【0053】
バルーンコントローラ12は、芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0054】
テンション付与装置13は、走行する紡績糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置13には、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0055】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0056】
クリアラ15は、紡績糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されている。具体的には、前記クリアラヘッド49には2つの糸ムラセンサ43,44が設置されており、これらの糸ムラセンサ43,44からの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。
【0057】
前記クリアラ15は、紡績糸20の走行速度(糸速度)を検知するセンサ、及び、単に紡績糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。なお、このクリアラ15の詳細については後述する。前記クリアラヘッド49の近傍には、前記クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに紡績糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0058】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0059】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30から解舒される上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。そして、下糸と上糸の糸継ぎが、スプライサ装置14によって行われる。
【0060】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ(パッケージ駆動部)53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0061】
前記巻取ドラム24には回転センサ42が取り付けられており、この回転センサ42は、クリアラ15が備える前記アナライザ52に電気的に接続されている。この回転センサ42は例えばロータリエンコーダとして構成され、巻取ドラム24が所定角度回転するごとに回転パルス信号をアナライザ52に送信するように構成されている。アナライザ52は、時間あたりのパルス数を計測することで、巻取ドラム24(ドラム駆動モータ53)の回転速度を取得することができる。
【0062】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸ボビン保持部71に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された紡績糸20を前記巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0063】
次に、図3を参照して前記クリアラ15について説明する。図3はクリアラ15の糸欠陥検出機能に関するブロック図である。
【0064】
図3に示すように、前記クリアラヘッド49は、2つの糸ムラセンサ43,44と、2つのA/Dコンバータ45,46と、を備えている。また、前記アナライザ52は、制御部及び信号処理部としての中央演算処理装置(CPU)47を備えている。更に、前記アナライザ52には、巻取ドラム24の回転を検出する前記回転センサ42からのパルス信号が入力される。
【0065】
第1の糸ムラセンサ43と第2の糸ムラセンサ44は、糸走行方向に適宜の間隔を開けて並べられ、第1の糸ムラセンサ43が下流側、第2の糸ムラセンサ44が上流側に配置されている。
【0066】
第1のA/Dコンバータ45は、2つの糸ムラセンサ43,44からのアナログ信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。こうして得られたデジタル信号がCPU47に入力され、CPU47は入力されたデジタル信号を用いて糸速度の検出を行う。
【0067】
第2のA/Dコンバータ46は、第1のA/Dコンバータ45のサンプリングと並行して、第1の糸ムラセンサ43からのアナログ信号をサンプリングして、デジタル信号に変換する。こうして得られたデジタル信号がCPU47に入力され、CPU47は入力されたデジタル信号を用いて糸品質の測定を行う。
【0068】
次に図4を参照してクリアラ15による糸速度検出方法について説明する。
【0069】
まず、第1のA/Dコンバータ45において、糸ムラセンサ43,44によって測定されているアナログ波形のサンプリングが行われる。この時のサンプリング周波数fs1は、前記巻取ドラム24の回転速度に比例するように設定される。即ち、アナライザ52の前記CPU47は、回転センサ42から図略の受信部を介して受信した巻取ドラム24の回転検出信号に基づいて、巻取ドラム24の回転速度(ドラム回転速度)を計算して取得する。そして、得られたドラム回転速度に所定の係数を乗じることによりサンプリング周波数fs1を求め、これを第1のA/Dコンバータ45に設定する。
【0070】
このように、CPU47は、ドラム回転速度を糸速度のおよその目安として利用し、第1のA/Dコンバータ45のサンプリング周波数を前記ドラム回転速度に応じて変化させる。これによって、糸ムラセンサ43,44の信号波形を第1のA/Dコンバータ45によってサンプリングする際の糸の単位長さあたりのサンプル数を略一定に保つことができ、サンプリング周波数を固定する場合よりも正確な糸速度検出が可能になる。
【0071】
図4において糸ムラセンサ43,44の左側に示すグラフはそれぞれのセンサが検知する糸ムラ信号の例であり、横軸が時間、縦軸が信号の強さ(例えば電圧)を表す。また、各グラフの時間軸方向に並べて示される上向き矢印は、サンプリングのタイミングを表している。糸ムラ信号の波形48は、糸の太さを測定した連続的なアナログ波形であり、例えば、糸の太さが太ければ高い電圧が、細ければ低い電圧が出力される。ただし、具体的にどのような信号が出力されるかは、使用するセンサの種類によって異なる。
【0072】
2つの糸ムラセンサ43,44は同じ糸を測定しているので、同じ波形48が観測される。ただし、第1の糸ムラセンサ43は第2の糸ムラセンサ44よりも糸走行方向下流側に配置されているため、第1の糸ムラセンサ43が検出する波形は、第2の糸ムラセンサ44が検出する波形に対して遅れがある。
【0073】
次に、2つの糸ムラセンサ43,44からサンプリングされたデータの比較がCPU47によって行われる。具体的には、第1の糸ムラセンサ43の波形から現在時点における所定時間の分析フレーム81を取り出すとともに、第2の糸ムラセンサ44の波形においては、現在から少しずつ時間を遡りながら所定時間の分析フレーム80を次々と取り出して、両分析フレーム80,81の波形同士を比較する。そして、この比較の反復の結果、第2の糸ムラセンサ44の波形において現在からΔTだけ過去の時点の分析フレーム80が、第1の糸ムラセンサ43の波形の分析フレーム81に一致したとする。この場合、2つの糸ムラセンサ43,44間の距離をLとすると、糸速度VはV=L/ΔTで求められる。以上のように、CPU47は、2つの糸ムラセンサ43,44の波形同士のパターンマッチ処理を行うことにより、糸速度Vを正確に算出することができる。
【0074】
次に、図5を参照して糸欠陥検出のための糸ムラ信号のサンプリングについて説明する。図5は第2のA/Dコンバータ46が第1の糸ムラセンサ43からの糸ムラ信号をサンプリングする様子を示している。
【0075】
ここで、第2のA/Dコンバータ46のサンプリング周波数は、所定のサンプル間隔長さ、前記の処理で得られた糸速度V、及び、所定のオーバーサンプリング倍率によって決定される。
【0076】
サンプル間隔長さは、後述するFFT演算において検出しようとする周期ムラを検出するために十分短い間隔を設定する。即ち、公知のナイキストのサンプリング定理から、分析対象の周期ムラの周期長さに対して半分以下の長さ間隔に設定される。
【0077】
また、FFT分析の際に高周波の折返し(エリアジング現象)の影響を防ぐため、FFT演算の前に予めデジタルローパスフィルタによる処理を行う。前述のオーバーサンプリング倍率は、このデジタルフィルタのためのオーバーサンプリングの倍率を指定するものである。
【0078】
従って、第2のA/Dコンバータ46のサンプリング周波数fs2は、fs2=糸速度/(サンプル間隔長さ/オーバーサンプリング倍率)によって求められる。
【0079】
具体的な数値を挙げて説明すると、例えば、オーバーサンプリング倍率が16でサンプル間隔長さが16mmである場合を考える。この場合、第2のA/Dコンバータ46は、糸速度の大小にかかわらず、糸の長さ1mmごとにサンプリングを行う。
【0080】
図5の上側には糸速度が13m/sである場合の波形が示され、下側には糸速度が26m/sである場合の波形が示されている。図5の下側の方が糸速度が速いため、第1の糸ムラセンサ43で検出されるアナログ波形は図5の上側の場合と比べて時間軸方向に圧縮されることになる。しかし、本実施形態では、前述の波形遅れ解析により得られた正確な糸速度Vに比例するように第2のA/Dコンバータ46によるサンプリング周波数fs2が変化し、図5の上側の例ではサンプリング周波数は13kHzに設定され、下側の例では26kHzに設定される。このため、図5の上側、下側何れの例においてもサンプリングの糸長さ間隔は1mmで一定となり、同じパターンのデータを得ることができる。このように、正確な糸速度に比例してサンプリング周波数を決定することにより、糸速度の変化にかかわらず常に一定の糸長さごとにサンプリングすることができる。
【0081】
次に、前記エリアジング現象を防ぐため、所望の周波数以下に帯域制限を行う。本実施形態では、デジタルローパスフィルタによって、所定のカットオフ周波数以上の信号成分を減衰させている。デジタル方式のローパスフィルタを用いることにより、糸速度の変化によってサンプリング周波数が変化するのに追従させて、カットオフ周波数を容易に変更することができる。これにより、スペクトル分析をより正確に行うことができる。
【0082】
以上の処理の後、CPU47によって公知のFFT演算が行われ、周期ムラの検出が行われる。また、非周期的な糸欠陥の検出も行われる。ここで前述したように、糸ムラ信号のサンプリングは糸速度にかかわらず、常に一定の糸長さ間隔で行われる。これにより、周期ムラのスペクトルは常に同じ位置に現れることになり、正確な周期ムラの検出が可能になる。また、周期性のない単発的な糸欠陥であっても、糸ムラの長さ評価が正確に行えるため、検出精度が向上する。
【0083】
以上に示したように、本実施形態において、自動ワインダを構成するワインダユニット10はクリアラ15を備えている。そして、このクリアラ15は、速度を変化させながら走行する紡績糸20の太さムラを検出し、検出した糸ムラ信号のサンプリングを第2のA/Dコンバータ46によって行い、そのサンプリング周波数fs2を糸速度に応じて変化させている。
【0084】
これにより、糸の速度にかかわらず一定の糸長さごとのサンプリング値を得ることができるため、的確な糸欠陥の検出を行うことができる。
【0085】
また、前記クリアラ15は、走行する糸の太さを検出する第1の糸ムラセンサ43と、信号処理部としてのCPU47と、を備えている。CPU47は、クリアラ15に対する外部装置としての回転センサ42から得られる糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で第1の糸ムラセンサ43の信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出している。
【0086】
これにより、糸速度信号に基づいてサンプリング周波数を変化させることができるので、糸速度にかかわらず一定長さごとのサンプリング値を得ることができる。
【0087】
また、前記クリアラ15は、糸走行経路において第1の糸ムラセンサ43と所定の間隔を隔てて配置され、前記走行する糸の太さを検出する第2の糸ムラセンサ44を備えている。CPU47は、第1の糸ムラセンサ43と第2の糸ムラセンサ44からの糸ムラ信号に基づいて糸速度を求め、当該糸速度に応じたサンプリング周波数で第1の糸ムラセンサ43の糸ムラ信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出している。
【0088】
これにより、糸速度を測定し、当該糸速度に応じて第2のA/Dコンバータ46のサンプリング周波数を変化させることにより、第2のA/Dコンバータ46による糸品質の測定を的確に行うことができる。また、第1のA/Dコンバータ45によって糸速度検出のためのサンプリングを行い、それと並行して第2のA/Dコンバータ46によって糸品質の測定のためのサンプリングを行うことで、糸の品質を高精度で且つリアルタイムに測定することができる。更に、第1の糸ムラセンサ43からの信号を糸速度検出及び糸品質測定の両方に用いるので、クリアラヘッド49の構成を簡素化できる。
【0089】
また、前記クリアラ15において、前記CPU47は、前記第1の糸ムラセンサ43と第2の糸ムラセンサ44からの信号に基づいて前記糸速度を求める際に、外部装置としての回転センサ42から得られる糸速度信号を用いている。
【0090】
これにより、クリアラ15の外部からの情報を利用して糸速度を求めるので、糸速度検出を適切に行うことができるとともに、クリアラ15の簡素化を実現できる。
【0091】
また、前記クリアラ15において、前記CPU47は、サンプリングされた第1の糸ムラセンサ43の糸ムラ信号のFFT演算を行って、走行する紡績糸20の太さムラを検出している。
【0092】
これにより、糸速度が変化する場合であっても正確な周期ムラ検出が可能になる。
【0093】
また、前記クリアラ15においては、FFT演算の前に第1の糸ムラセンサ43の糸ムラ信号がデジタルローパスフィルタによって処理される。
【0094】
これにより、正確な周波数分析が可能になる。また、アナログフィルタを用いる場合と異なり、カットオフ周波数をサンプリング周波数の変化に容易に追従させて変更することができる。
【0095】
また、前記クリアラ15においては、前記糸の太さムラの検出は、糸の周期的な太さムラの検出を行なっている。
【0096】
即ち、クリアラ15において糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させるので、サンプリング周波数固定の構成では検出できなかった糸の周期的な太さムラの検出が可能である。
【0097】
また、本実施形態の自動ワインダを構成するワインダユニット10は、パッケージ30を回転駆動するためのドラム駆動モータ53と、走行する糸の糸速度を検出する糸速度検出部(回転センサ42)と、を備える。前記クリアラ15における信号処理部としてのCPU47は、回転センサ42からの糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で前記第1の糸ムラセンサ43の糸ムラ信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出している。
【0098】
これにより、糸速度検出時の第1のA/Dコンバータ45のサンプリング周期を巻取ドラム24の回転速度に連動させることができるため、適切なサンプリング間隔を維持することができ、正確な糸速度検出が可能になる。
【0099】
また、本実施形態において、前記ワインダユニット10は前記ドラム駆動モータ53の回転速度を検出する回転センサ42を備え、この回転センサ42が糸速度検出部として機能する。
【0100】
これにより、パッケージ駆動部の回転速度を糸速度信号として用いることができるため、適切なサンプリング間隔を維持することができる。なお、本実施形態においては糸速度検出部として回転センサ42を例に挙げて説明したが、走行する糸の糸速度を検出可能なセンサであれば、他のセンサを採用することも可能である。
【0101】
次に、図6を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態ではクリアラ15のクリアラヘッド65は糸ムラセンサ64を1つのみ有しており、糸速度の検出には専用の速度センサ51を用いる。また、この実施形態では糸ムラ信号のサンプリングのためのA/Dコンバータも1つで足りる。
【0102】
この速度センサ51は非接触式で、紡績糸20の糸速度を検出する装置である。速度センサ51は、糸に糸太さの変動があることを利用して、この糸太さの変動部位の移動速度を検出し、その検出値を出力するように構成されている。具体的には、この速度センサ51は、光学式の糸太さ検出部を糸走行方向に沿って複数備えており、糸走行方向で異なる位置にある糸太さ検出部の出力信号を元に、紡績糸20の走行速度を検出する。この光学式の糸太さ検出部は、受光素子と光源とを備えている。この糸太さ検出部の検出位置を通過する紡績糸20の太さに応じて、受光素子への受光量が変化して、糸太さに応じた電気信号が、この糸太さ検出部より出力される。
【0103】
この速度センサ51の設置箇所は特に限定されないが、クリアラ15に対して糸走行方向上流側であって糸速度検出に適した場所、例えば図6に示すようにクリアラ15とスプライサ装置14との間に設置される。また本実施形態の速度センサ51は、アナライザ52が回転センサ42からの回転速度信号に基づいてドラム回転速度を計算し、このドラム回転速度に比例して前記糸太さ検出部による検出周期を変化させている。これにより、第1の実施形態で糸速度を求めたときと同様に、正確な糸速度の検知が可能となる。
【0104】
速度センサ51からの糸速度検出値はアナライザ52に入力される。アナライザ52は、この糸速度検出値に比例させて糸ムラセンサ64のサンプリング周波数を変化させる。
【0105】
このように専用の速度センサ51によって紡績糸20の速度を検出し、検出された糸速度に比例させてサンプリング周波数を変化させることによっても、一定の糸長さごとのサンプリング値を得ることができる。そのため、前述の実施形態と同様、FFT演算によって正確な周期ムラの検出を行うことができる。また、糸ムラセンサが1つで良いため、既存の構成のクリアラを流用することができるというメリットもある。ただし、クリアラ15への組込みが容易であり、糸ムラ信号をそのまま糸速度検出にも利用できるという点では、図5の構成のように2つの糸ムラセンサからの糸ムラ信号の比較により糸速度検出を行う方法が優れている。
【0106】
以上に示すように、図6に示す実施形態において自動ワインダを構成するワインダユニット10は、前記走行する紡績糸20の太さを検出して糸速度を検出する速度センサ51を更に備えており、この速度センサ51が糸速度検出部として機能する。
【0107】
このように糸速度を検出するための専用の速度センサ51を設けたことにより、正確な糸速度の検出が可能になるので、糸速度とサンプリング周波数とを連動させて適切なサンプリング間隔を維持することができ、正確な糸速度検出が可能になる。
【0108】
次に、図7を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。この実施形態では、クリアラヘッド49は第1の実施形態と同様に2つの糸ムラセンサ43,44を備えている。また、ワインダユニット10はドラム駆動モータ53の回転速度を指示する速度指令部66を備えている。この速度指令部66はユニット制御部50から糸巻取条件情報(例えば、巻取速度と加速時間)を受信し、この情報に基づいて巻取ドラム24の回転速度を計算し、モータ制御部54へ回転速度指令信号を送信することによりドラム駆動モータ53の回転速度を指示している。
【0109】
また、前記回転速度指令信号はアナライザ52に入力され、アナライザ52はこの回転速度指令信号からドラム回転速度を計算して取得する。また、アナライザ52は、前記ドラム回転速度に所定の係数を乗じることにより第1のA/Dコンバータのサンプリング周波数を決定し、第1の実施形態と同様の方法により糸速度を取得する。これにより、巻取ドラム24の回転速度に比例したサンプリング周波数でサンプリングを行うことができ、正確な糸速度検出が可能である。そしてこの検出された正確な糸速度に比例させて糸ムラ信号のサンプリングを行うことにより、正確な周期的及び非周期的な糸ムラの検出を行うことができる。
【0110】
なおこの第3の実施形態に対しては、糸速度検出専用の速度センサを更に備える一方、クリアラヘッドに1つのみの糸ムラセンサを備えるように変更することができる。この構成では、アナライザ52が速度指令部66からの回転速度指令信号に基づいてドラム回転速度を計算して取得し、前記速度センサに送信し、前記速度センサはこのドラム回転速度に比例して糸太さ検出部による検出周期を変化させる。これにより、糸速度センサによる正確な糸速度の検知が可能となる。
【0111】
以上に示すように、図7に示す実施形態において自動ワインダを構成するワインダユニット10は、ドラム駆動モータ53へ回転速度指令信号を出力する速度指令部66を更に備えている。
【0112】
これにより、速度指令部66からの信号を利用して糸速度検出を適切に行うことができる。
【0113】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の構成は例えば以下のように変更できる。
【0114】
上記の実施形態では周期的な糸ムラの検出と非周期的な糸ムラの検出の両方を行っている。しかしながら、この構成に代えて、周期的な糸ムラの検出のみ、或いは非周期的な糸ムラの検出のみを行う構成に変更することができる。即ち、本発明では糸ムラ信号のサンプリング周波数を糸速度に応じて変化させているので、周期的な糸ムラであっても非周期的な糸ムラであっても正確に検知することができる。
【0115】
上記実施形態でアナライザ52に設置されている制御部及び信号処理部(CPU47)は、クリアラヘッド49に内蔵されていても、ワインダユニット10側に備えられていても良い。また、複数のCPUを備え、速度演算、FFT演算、ローパスフィルタ処理を別々のCPUで行っても良い。更に、A/Dコンバータ45,46をアナライザ52側に備える構成とすることもできる。
【0116】
上記実施形態では、第1のA/Dコンバータ45のサンプリング周波数を巻取ドラム24の回転速度に比例させて変化させているが、これは必ずしも必須ではなく、固定の周波数でサンプリングしても良い。ただし、上記実施形態のように巻取ドラム24の回転速度を糸速度のおよその目安としてサンプリング周期を変化させると、適切な波形を取得して前記パターンマッチ処理により正確な速度分析を行うことができる点で好ましい。また速度センサ51の糸太さ検出部による検出周期も、固定の周期としても良い。ただしこの場合も巻取ドラム24の回転速度を糸速度のおよその目安として用いることにより、正確な速度検出が可能である。
【0117】
また、上記実施形態の構成は、綾振溝27を備えた巻取ドラム(綾振ドラム)を用いずに、例えばパッケージ30の軸部(巻取ボビン22)にモータの出力軸を連結して当該パッケージ30を駆動し、トラバースガイドを往復駆動することで糸をトラバースさせる形式の自動ワインダにも適用することができる。この場合、パッケージ30の駆動モータの回転を検出する回転センサを設け、当該回転センサの信号(クリアラ15の外部からの信号)に基づいて、前記第1の糸ムラセンサ43と前記第2の糸ムラセンサ44からの糸ムラ信号をサンプリングするようにしても良い。
【0118】
速度センサは上記の構成に代えて、非接触式の別の速度検出方法、例えば、レーザードップラー等の方法によって糸速度を検出する方法に変更することができる。
【0119】
ローパスフィルタ処理は、第1の糸ムラセンサ43と第2のA/Dコンバータ46との間に設けたアナログフィルタにより行っても良い。ただし、上記実施形態のようにデジタルフィルタを用いると、そのカットオフ周波数を糸速度の変化に素早く応答して変更させることが容易であるため、好ましい。
【0120】
糸ムラセンサ43,44の種類は変更可能であり、例えば光学センサ、静電容量式センサ等を使用することができる。
【0121】
なお、上記実施形態は自動ワインダについて説明したが、本発明の適用範囲はこれに限られず、例えば紡績機など、他の糸巻取機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るワインダの側面図。
【図2】ワインダの概略的な構成を示す正面図。
【図3】クリアラのブロック図。
【図4】糸速度検出の様子を示す概念図。
【図5】糸速度に比例させてサンプリング周波数を変化させた場合のサンプリングの様子を示す説明図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るワインダの概略的な構成を示す正面図。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るワインダの概略的な構成を示す正面図。
【符号の説明】
【0123】
10 ワインダユニット(自動ワインダの巻取ユニット)
15 クリアラ(糸品質測定器)
42 回転センサ(回転速度検出部)
43 第1の糸ムラセンサ(第1のセンサ)
44 第2の糸ムラセンサ(第2のセンサ)
45 第1のA/Dコンバータ
46 第2のA/Dコンバータ
47 CPU(制御部、信号処理部)
48 波形
51 速度センサ
53 ドラム駆動モータ(パッケージ駆動部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度を変化させながら走行する糸の太さムラを検出し、検出信号のサンプリングを行う糸品質測定器であって、
糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させて、糸の太さムラの検出を行うことを特徴とする糸品質測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の糸品質測定器であって、
走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、
信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、外部装置から得られる糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出することを特徴とする糸品質測定器。
【請求項3】
請求項1に記載の糸品質測定器であって、
走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、
糸走行経路において前記第1のセンサと所定の間隔を隔てて配置され、前記走行する糸の太さを検出する第2のセンサと、
信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサからの信号に基づいて糸速度を求め、当該糸速度に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出することを特徴とする糸品質測定器。
【請求項4】
請求項3に記載の糸品質測定器であって、
前記信号処理部は、前記第1のセンサと前記第2のセンサからの信号に基づいて前記糸速度を求める際に、外部装置から得られる糸速度信号を用いることを特徴とする糸品質測定器。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の糸品質測定器であって、
前記信号処理部は、サンプリングされた前記第1のセンサの信号のFFT演算を行って、前記走行する糸の太さムラを検出することを特徴とする糸品質測定器。
【請求項6】
請求項5に記載の糸品質測定器であって、
前記FFT演算の前に前記第1のセンサの信号がデジタルローパスフィルタによって処理されることを特徴とする糸品質測定器。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸品質測定器であって、
前記糸の太さムラの検出は、糸の周期的な太さムラの検出を少なくとも含むことを特徴とする糸品質測定器。
【請求項8】
速度を変化させながら走行する糸の太さムラを検出し、検出信号のサンプリングを行う糸品質測定器を備え、
糸速度に応じてサンプリング周波数を変化させて、糸の太さムラの検出を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項8に記載の糸巻取機であって、
糸が巻き取られるパッケージを回転駆動するためのパッケージ駆動部と、
走行する糸の糸速度を検出する糸速度検出部と、
を備え、
前記糸品質測定器は、
走行する糸の太さを検出する第1のセンサと、
信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、前記糸速度検出部からの糸速度信号を受信し、当該糸速度信号に応じたサンプリング周波数で前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項9に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージ駆動部へ回転速度指令信号を出力する速度指令部を更に備えていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項9に記載の糸巻取機であって、
前記糸速度検出部は、前記パッケージ駆動部の回転速度を検出する回転速度検出部を備えていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項12】
請求項11に記載の糸巻取機であって、
前記糸速度検出部は、前記走行する糸の太さを検出して糸速度を検出する速度センサを更に備えていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項13】
請求項10又は11に記載の糸巻取機であって、
前記糸品質測定器は、糸走行経路において前記第1のセンサと所定の間隔を隔てて配置され、前記走行する糸の太さを検出する第2のセンサを更に備えており、
前記信号処理部は、前記糸速度信号と、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサからの信号と、に応じたサンプリング周波数で、前記第1のセンサの信号のサンプリングを行い、糸の太さムラを検出することを特徴とする糸巻取機。
【請求項14】
請求項9から13までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記信号処理部は、サンプリングされた前記第1のセンサの信号のFFT演算を行って、前記走行する糸の太さムラを検出することを特徴とする糸巻取機。
【請求項15】
請求項14に記載の糸巻取機であって、
前記FFT演算の前に前記第1のセンサの信号がデジタルローパスフィルタによって処理されることを特徴とする糸巻取機。
【請求項16】
請求項8から15までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記糸の太さムラの検出は、糸の周期的な太さムラの検出を少なくとも含むことを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190841(P2009−190841A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33845(P2008−33845)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】