説明

糸巻取装置用の回路基板及び糸巻取装置

【課題】巻取部の異常振動を正確に検出する。
【解決手段】糸巻取ユニット1用の回路基板105は、回路基板本体105aと、回路基板本体105aに設けられた振動検出チップ109とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板及び回路基板を備えた糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダ等の糸巻取装置は、クレードル、巻取ドラム、糸継装置、糸案内装置等を支持する箱状のユニットフレームを有している。糸巻取装置において、パッケージの生産性向上の観点から、糸を巻取ボビンに巻き取る巻取速度のさらなる高速化が望まれている。
しかし、糸巻取装置において、パッケージが高速で回転して巻き取られるので、ユニットフレームに振動が発生しやすい。振動のレベルが大きくなりすぎると、ユニットフレーム内に設けられている電子部品が衝撃を受け、その結果、電子部品の寿命が短くなる。また、プリント基板に取り付けられている電子部品の脚が折れて、そのため電子部品がプリント基板から外れてしまうこともあり、その場合は糸巻取装置は正常に動作しなくなる。すなわち、糸巻取装置の巻取動作が停止してしまい、作業者が復旧作業を行うまで、糸機巻取装置は巻取動作を再開できない。また、プリント基板の取り付け作業は煩わしく、作業時間も要する。
【0003】
上述の問題を考慮し、従来の自動ワインダにおいて、巻始めは巻取速度を低めに設定しておき(いわゆるタッチ巻き)、ある程度巻き太るとタッチ巻きを解除して前記上限速度まで増速処理を行う制御を採用することがある。
【0004】
しかし、巻取ボビン又は糸巻取装置本体には個体差があるので、許容範囲を超える振動が発生する巻取速度はそれぞれの糸巻取装置で異なる。この点、従来の制御では、複数設置された糸巻取装置に対して一律のタッチ巻速度又は上限速度を用いていた。そのため、タッチ巻速度及び上限速度としては、どの糸巻取装置においても振動が発生しないように大きなマージンを見込んで低い巻取速度を設定せざるを得ない。そのため、自動ワインダ全体として糸巻取装置の能力を有効に活用することができず、パッケージの生産効率を上げることが困難であった。
【0005】
この点に関し、特許文献1は、クレードルに設けた異常振動検知器(振動検出センサ)によって振動を検知し、異常とみなせる振動が発生した場合はパッケージの巻取りを停止する構成を開示する。また特許文献2は、クレードルに設けた加速度センサ(振動検出センサ)によって、クレードルの異常を診断する構成を開示する。
【0006】
特許文献3に開示の糸巻取装置は、クレードルに歪みゲージ(振動検出センサ)を取り付けており、歪みゲージによりクレードルの振動の強度を検出している。この糸巻取装置は、歪みゲージからの出力に基づいて、パッケージの回転数を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−43876号公報
【特許文献2】特開平6−127833号公報
【特許文献3】特開2009−208880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1から特許文献3に記載された糸巻取装置では、振動検出センサがクレードルに設けられているので、振動検出センサがクレードルの異常振動に耐えられないことがあった。具体的には下記の通りである。
【0009】
ユニットフレームの内部には、巻取動作を制御するための制御基板が設けられている。さらに、クレードルに設けられた振動検出センサと制御基板とは、信号線によって接続されている。
【0010】
このような構造の糸巻取装置において、パッケージは高速回転しているので、クレードルに振動検出センサが設けられている構成では、振動検出センサがクレードルから直接大きな振動を受けるため、振動検出センサ自体が壊れることがあり得る。また、振動検出センサの検出結果であるアナログ値にノイズが入りやすいので、その対策としてノイズフィルタを設ける必要もある。
【0011】
また、従来の糸巻取装置では、振動検出センサと制御基板とを結ぶ信号線が長くなっているので、制御基板による異常検出の信号処理にタイムラグが生じることがあった。その場合、クレードルの異常振動の検出結果に応じた処理を適切なタイミングで実施できなかった。
【0012】
本発明の課題は、糸巻取装置において巻取部の異常振動を素早く検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0014】
本発明の一見地に係る糸巻取装置用の回路基板は、回路基板本体と、回路基板本体に設けられた振動検出チップとを備えている。
この回路基板では、回路基板本体上に振動検出チップを設けることにより、糸巻取装置の振動を直ちに検出することができる。その結果、振動が発生している場合は、必要に応じて巻取速度を遅くすること又は巻取動作を中断することができる。これにより、糸巻取装置の電子部品が振動により損傷を受けて、回路基板本体から外れてしまうことを回避できる。
また、新たに振動検出専用のボードを配置する必要がないので、部品点数削減が実現される。
【0015】
回路基板は、信号処理部をさらに備えていてもよい。信号処理部は、回路基板本体に設けられ、振動検出チップからの検出結果を処理する。
この回路基板では、振動検出チップが糸巻取装置において発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出チップと信号処理部が回路基板本体上に設けられているので、信号の劣化が生じにくいからである。
【0016】
本発明の他の見地に係る糸巻取装置は、給糸部と、巻取部と、フレームと、振動検出部とを備えている。給糸部は、紡績糸を供給する。巻取部は、給糸部から供給された紡績糸を巻き取る。フレームは、巻取部を支持する。振動検出部は、フレーム内に設けられている。
上記の糸巻取装置では、振動検出部は巻取部に発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出部がフレーム内に設けられているので、巻取部で発生した振動はフレームを介して伝達されており、そのため振動検出部が巻取部で発生した振動の直接的な影響を受けないからである。
【0017】
糸巻取装置は、回路基板本体をさらに備えていてもよい。回路基板本体は、フレームに支持され、振動検出部が設けられている。
上記の糸巻取装置では、振動検出部は巻取部に発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出部がフレーム内の回路基板本体に設けられているので、巻取部で発生した振動はフレームを介して伝達されており、そのため振動検出部が巻取部で発生した振動の直接的な影響を受けないからである。
【0018】
糸巻取装置は、巻取制御部をさらに備えていてもよい。巻取制御部は、回路基板本体に設けられ巻取部の巻取動作の制御を行う。巻取制御部は、振動検出部からの検出結果に基づいて、巻取部の巻取動作を制御する。
上記の糸巻取装置では、巻取部は振動検出部の検出結果に応じて直ちに巻取動作を行うことができる。その理由は、振動検出部と巻取制御部が回路基板本体に設けられているので、巻取制御部が振動検出部の検出結果を速やかに取得できるからである。
【0019】
糸巻取装置は、操作パネルと、操作制御部とをさらに備えていてもよい。操作パネルは、フレームの表面に設けられている。操作制御部は、回路基板本体に設けられ、操作パネルからの操作内容を処理する。回路基板本体は、操作パネルの近傍に配置されている。
上記の糸巻取装置では、振動検出部は巻取部からフレームに伝わる振動を速やかに検出できる。その理由は、振動検出部が設けられた回路基板本体が操作パネルの近傍に設けられているからである。
【0020】
糸巻取装置は、フレームの内側の表面に設けられた支持部材をさらに備えていてもよい。回路基板本体は、支持部材を介してフレームに支持されている。
上記の糸巻取装置では、支持部材により、回路基板本体を安定した姿勢でフレームに対して支持することができる。その結果、振動検出部は、巻取部からフレームを介して伝わる振動をより正確に検出することができる。
【0021】
糸巻取装置は、糸欠点検出部と、切断部と、糸継部と、上糸案内部と、下糸案内部とを、さらに備えていてもよい。糸欠点検出部は、巻取部により巻き取られる紡績糸の糸欠点を検出する。切断部は、糸欠点検出部により糸欠点が検出された場合に、紡績糸を切断する。糸継部は、巻取部側の糸端と給糸部側の糸端とを継ぐ。上糸案内部は、巻取部側の糸端を糸継装置へ案内する。下糸案内部は、給糸部側の糸端を糸継装置へ案内する。糸欠点検出部と、切断部と、糸継部と、上糸案内部と、下糸案内部とは、フレームの外側にて支持されている。
上記の糸巻取装置では、紡績糸の糸欠点を除去しながら紡績糸を巻き取る糸巻取装置において発生する振動を、振動検出部により検出することができる。その結果、糸巻取装置は、異常な振動を抑制して巻取部によりパッケージを巻き取ることができるので、品質の高いパッケージを効率良く巻き取ることができる
【0022】
給糸部は、ドラフト部と、空気紡績部とを有していてもよい。ドラフト部は、スライバをドラフトする。空気紡績部は、ドラフト部によりドラフトされたスライバに空気により撚りを掛ける。ドラフト部と空気紡績部とは、フレームの外側にて支持されている。
上記のスライバから紡績糸を形成して紡績糸を巻き取る糸巻取装置において発生する振動を振動検出部により検出することができる。その結果、糸巻取装置は、異常な振動を抑制して巻取部によりパッケージを巻き取ることができるので、品質の高いパッケージを効率良く巻き取ることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る回路基板及び巻取装置では、巻取部の異常振動を正確に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダに備えられた糸巻取ユニットの概略図。
【図2】ユニットフレームの上部の斜視図。
【図3】糸巻取ユニットの制御構成を示すブロック図。
【図4】回路基板のブロック図。
【図5】ユニットフレームに回路基板が取り付けられた状態を示す概略斜視図。
【図6】糸巻取ユニットにおける糸巻取速度制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(1)糸巻取ユニット全体
図1を用いて、自動ワインダを構成する糸巻取ユニットを説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダに備えられた糸巻取ユニットの概略図である。自動ワインダは、例えば、複数の糸巻取ユニット1と、多数の糸巻取ユニット1の巻取条件などを設定するための機台制御装置(図示せず)と、自動玉揚装置(図示せず)とから構成されている。自動玉揚装置は、玉揚要求信号を発信した糸巻取ユニット1へと移動して、パッケージ205を回収して、その糸巻取ユニット1に新たな巻取ボビン203を装着して所定の糸掛け作業を行う。巻取ボビン203は、パッケージ205の芯となる部材であり、紙製又はプラスチック製である。
【0026】
糸巻取ユニット1は、糸巻取本体5と、ユニットフレーム7とを有している。糸巻取本体5は、給糸ボビン201の糸207をトラバースさせながら所定形状のパッケージ205として巻き返す作業である巻取作業を行う。
【0027】
ユニットフレーム7は、糸巻取本体5を支持する。ユニットフレーム7の内部には、糸巻取本体5の運転を制御するためのユニット制御部101(後述)が設けられている。
【0028】
(2)糸巻取本体
糸巻取ユニット1は、給糸ボビン201から解舒される糸207をトラバースさせながら巻取ボビン203に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ205とする装置である。糸巻取本体5は、給糸部11と、糸処理実行部13と、巻取部15とを有している。
【0029】
給糸部11は、給糸ボビン201から糸207を解舒し供給するための装置である。給糸部11は、ボビントレータイプであり、給紙ボビン201はトレーに固定された状態で各糸巻取ユニット1の給糸部11に順次供給される。給糸部11は、解舒補助装置19を有している。解舒補助装置19は規制部材20を有している。
糸処理実行部13は、給糸部11から供給された糸207に対して処理を行うための装置である。糸処理実行部13は、ゲート式張力付与装置21と、スプライサ23と、ヤーンクリアラ25とを有している。
【0030】
巻取部15は、糸処理実行部13によって処理された糸207をパッケージ205として巻き取るための装置である。巻取部15は、巻取ボビン203を把持するクレードル29と、糸207をトラバースさせる綾振ドラム31を有している。
【0031】
図1に示すように、給糸部11、糸処理実行部13、巻取部15は、糸走行方向の上流側から下流側へ向かってこの順に配置される。そのため、給糸ボビン201と綾振ドラム31との間の糸走行経路中には、糸走行方向の上流側(給糸ボビン201側)から順に、以下の装置が配置されている。解舒補助装置19、ゲート式張力付与装置21、スプライサ23、ヤーンクリアラ25、である。
【0032】
クレードル29は、巻取ボビン203を回転可能に挟持できるように構成されている。クレードル29は、綾振ドラム31に対して回動自在に構成されており、パッケージ205の巻取作業の進行に伴ってパッケージ205の径が増加することによって回動する。このクレードル29の構造によって、パッケージ205と綾振ドラム31との好適な接触が維持される。
【0033】
綾振ドラム31の周面には螺旋状の綾振溝31aが形成されており、この綾振溝31aによって糸207はトラバースされる。綾振ドラム31には、綾振ドラム31を回転させるためのドラム駆動モータ97及びモータ制御部99(後述)が接続されている。
【0034】
また、巻取作業の進捗を検出するセンサとしてのドラム回転センサ71(例えば、エンコーダ)がドラム駆動モータ97の回転軸に設けられている。ユニット制御部101は、ドラム回転センサ71から送られてくる回転パルス数をカウントすることで、綾振ドラム31の回転速度を取得できる。
【0035】
解舒補助装置19は、芯管に被さる規制部材20を給糸ボビン201からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン201からの糸の解舒を補助する装置である。規制部材20は、給糸ボビン201から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン201上部に形成されたバルーンに対して接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。
【0036】
解舒補助装置19を駆動するために、第1駆動部75が設けられている。第1駆動部75は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて解舒補助装置19を昇降する。
【0037】
ゲート式張力付与装置21は、走行する糸207に所定のテンションを付与する装置である。ゲート式張力付与装置21は、固定の櫛歯と、可動の櫛歯とから構成されている。ゲート式張力付与装置21の可動の櫛歯を駆動するために、第2駆動部77が設けられている。第2駆動部77は、例えばロータリ式のソレノイドであり、櫛歯同士が噛み合わせられた状態と解放された状態とを切り替えることができる。
【0038】
スプライサ23は、糸切断時又は糸切れ時などに、給糸ボビン201側の糸207と、パッケージ205側の糸207と、を糸継する装置である。スプライサ23は、図示しない糸寄せレバーなどの複数のレバーを備え、複数のレバーの一連の動作はカム式で駆動する。スプライサ23の複数のレバーを動作させるため、第3駆動部79が設けられている。第3駆動部79は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、スプライサ23の複数のレバーを駆動する。
【0039】
ヤーンクリアラ25は、糸207の欠陥を検出するための装置である。ヤーンクリアラ25からの糸207の太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠陥が検出される。また、ヤーンクリアラ25には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター(図示せず)が付設される。また、ヤーンクリアラ25における糸207の走行を検出するために、糸走行センサ81(図3)が設けられている。糸走行センサ81は、糸207の走行を検出できないとき、ユニット制御部101へ糸切れ信号を送信する。
【0040】
スプライサ23の下側には給糸ボビン201側の糸207を吸引捕捉してスプライサ23へ案内する下糸案内パイプ35が設けられ、上側にはパッケージ205側の糸207を吸引捕捉してスプライサ23へ案内する上糸案内パイプ37が設けられている。
【0041】
下糸案内パイプ35は、ユニットフレーム7に対して軸35aを中心に回動可能に装着されており、先端には吸引口36が設けられている。上糸案内パイプ37は、ユニットフレーム7に対して軸37aを中心に回動可能に装着されており、先端にはサクションマウス38が設けられている。下糸案内パイプ35及び上糸案内パイプ37には負圧源が接続されており、それにより吸引口36及びサクションマウス38に吸引流を発生させることができる。
【0042】
下糸案内パイプ35を駆動するため、ステッピング式の第4駆動部85が設けられている。第4駆動部85は、下糸案内パイプ35を軸35aを中心として旋回するように駆動することができる。第4駆動部85は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、下糸案内パイプ35を旋回する。また、下糸案内パイプ35には、ユニット制御部101に接続される下糸案内パイプセンサ87が設けられている。下糸案内パイプセンサ87は、例えば光学式に構成され、パイプ内に吸い込まれた糸207を検出すれば、ユニット制御部101へ糸検出信号を送信する。
【0043】
同様に、上糸案内パイプ37を駆動するため、ステッピング式の第5駆動部91が設けられている。第5駆動部91は上糸案内パイプ37を軸37aを中心として旋回するように駆動することができる。第5駆動部91は、ユニット制御部101からの駆動信号に基づいて、上糸案内パイプ37を旋回できる。また、上糸案内パイプ37には、上糸案内パイプセンサ93が設けられている。上糸案内パイプセンサ93は、例えば光学式に構成され、パイプ内に吸い込まれた糸207を検出すれば、ユニット制御部101へ糸検出信号を送信する。
【0044】
この構成で、糸切断時又は糸切れ時においては、下糸案内パイプ35が図1に示す位置で給糸ボビン201側の糸207を吸引捕捉し、軸35aを中心として下から上へと旋回してスプライサ23に糸207を案内する。同時に、上糸案内パイプ37が図1に示す位置から軸37aを中心として下から上へと旋回し、逆転するパッケージ205から糸207を吸引捕捉し、さらに軸37aを中心として上から下へと旋回し、スプライサ23に糸207を案内する。そして、スプライサ23は、このように案内された2本の糸207を所定の糸継動作によって糸継ぎするようになっている。
【0045】
(3)ユニットフレーム
次に、図2を用いて、ユニットフレーム7について説明する。図2は、ユニットフレームの上部の斜視図である。
【0046】
ユニットフレーム7は、前述したように糸巻取本体5を支持する構造であって、図2に示すように、糸巻取ユニット1の並べられている方向に対して直交する一対の側面41と、正面43と、側面41及び正面43を湾曲状に接続する湾曲面45とを有する。そして、ユニットフレーム7の上部には、正面43と湾曲面45に跨るように形成される操作パネル47が設けられている。なお、ユニットフレーム7に湾曲面45は形成されていなくてもよい。
【0047】
操作パネル47は、上記の正面43に相当する正面部47aと、上記の湾曲面45に相当する一対の湾曲部47bと、を備えている。正面部47aには、上から下へ向かって順に、表示部49と、十字型にレイアウトされた操作ボタンユニット51と、動作スイッチ53と、が設けられている。表示部49は、ユニット制御部101が備えるRAM(Random Access Memory)に記憶されている文字又は数字3つを横に並べて表示する装置である。操作ボタンユニット51は、複数のボタンから構成されている。各ボタンはコントローラ107に電気的に接続されており、各ボタンは、押下されるとコントローラ107へ信号を送信するようになっている。動作スイッチ53は、糸巻取本体5の動作を運転と停止とに切り替えるためのスイッチである。
【0048】
(4)ユニット制御部
図3を用いて、ユニット制御部101について説明する。図3は、糸巻取ユニットの制御構成を示すブロック図である。ユニット制御部101は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行する制御プログラム及び制御プログラムに使用されるデータが記憶されているROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時記憶するためのRAMと、を備えている。そして、ROMに記憶された上記制御プログラムがCPUに読み込まれCPU上で実行されることで、制御プログラムは、CPUなどのハードウェアを用いて、制御を実現するようになっている。
【0049】
ユニット制御部101の物理的構成及び配置について説明する。ユニット制御部101は、回路基板105を有している。回路基板105は、回路基板本体105aと、CPUからなるコントローラ107と、振動検出チップ109(振動検出部)と、信号処理部111と、を有している。コントローラ107と、振動検出チップ109と、信号処理部11とは、回路基板本体105a上に配置されている。図4には、回路基板105のブロック構成を示しており、具体的には、回路基板本体105a上に、振動検出チップ109と信号処理部111とが図示されている。
【0050】
コントローラ107は、前述のように、複数の入出力装置に接続されており、各種制御動作を実行する。コントローラ107は、巻取部15の巻取動作の制御を行う巻取制御機能を有しており、振動検出チップ109からの検出結果に基づいて、巻取部15の巻取動作を制御する。コントローラ107は、さらに、操作パネル47からの操作内容を処理する操作制御機能を有している。
【0051】
振動検出チップ109は、振動検出部として機能する衝撃センサであり、この実施形態では回路基板105に設けられたワンチップである。信号処理部111は、例えば、振動検出チップ109からの検出信号(振動強さ信号)を増幅器によって増幅してから、コントローラ107に送信する。コントローラ107は、振動強さ信号と基準値との比較を行う。
【0052】
上記のように回路基板本体105aの上に振動検出チップ109と信号処理部111とコントローラ107が設けられている。したがって、振動検出チップ109から信号処理部111への信号伝送時間が短くなっている。その結果、振動検出チップ109が振動を検出してから信号処理部111が検出結果を処理するまでの時間が短縮される。さらに、コントローラ107が振動検出チップ109の検出結果を正確に取得できる。その結果、コントローラ107が巻取部15を正確に制御することができる。また、巻取部15は振動検出チップ109の検出結果に応じて直ちに巻取動作を行うことができる。従来であれば振動検出部から制御部への信号線が長くなっていたので、制御部による振動検出の信号処理にタイムラグが生じることがあり、その場合はクレードルの異常振動の検出結果に応じた処理を適切なタイミングで行えないことがあった。
【0053】
回路基板105はユニットフレーム7内に設けられており、回路基板本体105aはユニットフレーム7に支持されている。図5を用いて、回路基板105が実際にユニットフレーム7に装着されている構造を説明する。図5に示すように、ユニットフレーム7は、平板なフレーム部材61を有している。フレーム部材61の内側の平面には、複数のスタッド63が設けられている。スタッド63は、フレーム部材61に対して別体又は一体であり、フレーム部材61の平面から垂直に伸びている。スタッド63の先端にはねじ穴(図示せず)が形成されている。回路基板105は、複数のスタッド63に支持されており、さらに図示しないねじが回路基板105を貫通してスタッド63のねじ穴に螺合することで、回路基板本体105aはスタッド63に固定されている。
このように、回路基板105は糸巻取ユニット1の巻取部15から離れて設けられるので、振動検出チップ109が巻取部15における振動の直接的な影響を受けない。そのため、振動検出チップ109が糸巻取ユニット1において発生する振動を正確に検出できる。また、スタッド63により、回路基板本体105aが安定した姿勢でユニットフレーム7に対して支持されるので、振動検出チップ109は、巻取部15からユニットフレーム7を介して伝わる振動をより正確に検出ができる。
【0054】
回路基板105は、操作パネル47の近傍に配置されている。図2を用いて、回路基板105の具体的な設置場所について説明する。回路基板105は、操作パネル47の下方における第1部分211に設置される。他の実施例として、回路基板105は、操作パネル47の上部である表示部49の後ろ側の第2部分213に設置される。
振動検出チップ109を備えた回路基板105がユニットフレーム7の表面の近傍に設けられているので、振動検出チップ109は巻取部15からユニットフレーム7に伝わる振動を速やかに検出できる。
【0055】
(5)モータ制御部
モータ制御部99は、綾振ドラム31を所望の回転数で回転できるようになっている。モータ制御部99は、例えばCPU、RAM及びROM等からなるハードウェアと、ROMに記憶されたプログラムとによって構成されている。モータ制御部99は、ユニット制御部101からの信号に基づいて、ドラム駆動モータ97の回転又は停止を制御する。
【0056】
モータ制御部99は、ドラム駆動モータ97に増速信号を送信する増速部99aと、ドラム駆動モータ97に減速信号を送信する減速部99bと、を備える。モータ制御部99は、コントローラ107からの比較結果に基づいて、増速部99aによりドラム駆動モータ97を増速制御し、又は減速部99bによりドラム駆動モータ97を減速制御する。
【0057】
(6)糸巻取速度制御
次に、図6を参照して糸巻取速度制御の流れについて説明する。図6は、糸巻取ユニットにおける糸巻取速度制御のフローチャートである。なお、以下の動作は、主にコントローラ107による制御動作である。
まず、クレードル29に新しい巻取ボビン203がセットされると、巻取ボビン203に対して図示しない糸掛け装置により糸が掛けられ、巻取が開始される。
【0058】
巻取開始後、ユニット制御部101のコントローラ107はモータ制御部99に信号を送り、通常より低い所定の速度(タッチ巻設定速度)に到達するまで巻取速度を増加させる(ステップS1)。
【0059】
巻取速度がタッチ巻設定速度に達すれば、タッチ巻制御が開始される。具体的には、最初に、コントローラ107が信号処理部111からの信号処理された振動強さ信号と所定値との比較を行う(ステップS2)。そして、振動強さ信号が所定値以下だった場合は、巻取速度を上げる余地があると判断して増速処理を行う(ステップS3〜ステップS5)。振動強さ信号が所定値よりも大きかった場合は、振動の強さを所定値以下に収めるために減速処理を行う(ステップS6〜ステップS8)。
【0060】
なお、このステップS2の判断で比較に用いられる所定値が大き過ぎると、クレードル29の振動が大きくなり、回路基板105に設けられた電子部品等が振動により損傷を受けてしまう。また、逆に所定値が小さ過ぎると、あまり巻取速度を上げることができないため、糸巻取ユニット1の生産性が低下する。従って、所定値としては、以上の事情を考慮して適切な値が予め設定されている。
【0061】
ステップS3からステップS5までは、巻取速度の増速処理であって、増速部99aの機能に相当する。すなわち、ステップS2の判断で振動強さ信号が所定値以下であった場合は、振動強さ信号が所定値より大となるまで、ドラム駆動モータ97の巻取速度を所定の速度だけ増大させる処理を繰り返す(ステップS3、ステップS4)。そして、振動強さ信号が所定値より大となると、ドラム駆動モータ97の回転速度を直前の回転速度(すなわち、振動強さ信号が所定値以下と判定されていた回転速度)まで減速し(ステップS5)、増速処理を終了する。
【0062】
ステップS6からステップS8までは、巻取速度の減速処理であって、減速部99bの機能に相当する。すなわち、ステップS2の判断で振動強さ信号が所定値より大であった場合は、振動強さ信号が所定値以下となるまで、ドラム駆動モータ97の回転速度を所定の速度だけ減少させる処理を繰り返す(ステップS6、ステップS7)。そして、振動強さ信号が所定値以下となると、ドラム駆動モータ97の回転速度をそのままの速度で維持し(ステップS8)、減速処理を終了する。
【0063】
増速処理及び減速処理のいずれを行った場合でも、処理が終了すると巻取作業の終了判定が行われる(ステップS9)。この処理では、空の巻取ボビン203に糸を巻き始めた当初からの巻取長さが所定長に到達しているか否かを調べる。巻取長さが所定長以上である場合は、パッケージ205の完成を意味するので、巻取終了処理を行い、フローを終了する。巻取長さが所定長未満である場合は、ステップS2へ戻り、巻取作業を続行する。
【0064】
ステップS2に戻ると、コントローラ107は再び振動の強さを調べて所定の強さと比較し、その比較結果に応じて増速処理又は減速処理を行う。ここで、パッケージ205は一般的に、糸が巻かれて巻き太るに従い徐々に回転が安定するようになる。従って、以前は振動の強さが所定値を上回るために実現できなかった巻取速度であっても、パッケージ径が大きくなった後に再び巻取速度へ増速した場合は振動の強さが所定値以下にとどまることが多い。この結果、ステップS2からステップS9までの処理を繰り返すことによって、上述のタッチ巻設定速度から、パッケージ205の巻太りに伴って徐々に巻取速度を上げていくことができる。
なお、ステップS2〜ステップS9のループは、巻取初期のいわゆるタッチ巻期間だけでなく、通常の巻取速度に到達した後でも継続して実行することができる。なお、通常の巻取速度とは、巻取開始時に、オペレータが図略の入力装置を操作することにより入力される目標の巻取速度である。
【0065】
(7)特徴
上記実施形態は、下記のように表現可能である
【0066】
(A)糸巻取ユニット1用の回路基板105は、回路基板本体105aと、回路基板本体105aに設けられた振動検出チップ109とを備えている。
この回路基板105では、回路基板本体105a上に振動検出チップ109を設けることにより、糸巻取ユニット1の振動を直ちに検出することができる。その結果、振動が発生している場合は、必要に応じて巻取速度を遅くすること又は巻取動作を中断することができる。これにより、糸巻取ユニット1の電子部品が振動により損傷を受けて、回路基板本体105aから外れてしまうことを回避できる。また、新たに振動検出専用のボードを配置する必要がないので、部品点数削減が実現される。
【0067】
(B)糸巻取ユニット1は、信号処理部111をさらに備えている。信号処理部111は、回路基板本体105aに設けられ、振動検出チップ109からの検出結果を処理する。
この回路基板105では、振動検出チップ109が糸巻取ユニット1において発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出チップ109と信号処理部111が回路基板本体105a上に設けられており、信号の劣化が生じにくいからである。
【0068】
(C)糸巻取ユニット1は、給糸部11と、巻取部15と、ユニットフレーム7(フレーム)と、振動検出チップ109とを備えている。給糸部11は、糸207を供給する。巻取部15は、給糸部11から供給された糸207を巻き取る。ユニットフレーム7は、巻取部15を支持する。振動検出チップ109は、ユニットフレーム7内に設けられている。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、振動検出チップ109は巻取部15に発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出チップ109がユニットフレーム7内に設けられているからである。つまり、巻取部15で発生した振動はユニットフレーム7を介して伝達されており、そのため振動検出チップ109が巻取部15で発生した振動の直接的な影響を受けないからである。
【0069】
糸巻取ユニット1は、回路基板本体105aをさらに備えている。回路基板本体105aは、ユニットフレーム7に支持され、振動検出チップ109が設けられている。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、振動検出チップ109は巻取部15に発生する振動を正確に検出できる。その理由は、振動検出チップ109がユニットフレーム7内の回路基板本体105aに設けられているからである。つまり、巻取部15で発生した振動はユニットフレーム7を介して伝達されており、そのため振動検出チップ109が巻取部15で発生した振動の直接的な影響を受けないからである。
【0070】
(D)回路基板105のコントローラ107は、巻取部15の巻取動作の制御を行う巻取制御機能をさらに有している。コントローラ107は、振動検出チップ109からの検出結果に基づいて、巻取部15の巻取動作を制御している。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、コントローラ107は巻取部15を速やかに制御でき、つまり、巻取部15は振動検出チップ109の検出結果に応じて直ちに巻取動作を行うことができる。その理由は、振動検出チップ109とコントローラ107が回路基板本体105aに設けられているので、コントローラ107が振動検出チップ109の検出結果を速やかに取得できるからである。
【0071】
(E)糸巻取ユニット1は、ユニットフレーム7の表面に設けられた操作パネル47をさらに備えている。コントローラ107は、回路基板本体105aに設けられ、操作パネル47からの操作内容を処理する機能を有している。回路基板105は、操作パネル47の近傍に配置されている。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、振動検出チップ109は巻取部15からユニットフレーム7に伝わる振動を速やかに検出できる。その理由は、振動検出チップ109が設けられた回路基板本体105aがユニットフレーム7の表面の近傍に設けられているからである。
【0072】
(F)糸巻取ユニット1は、ユニットフレーム7の内側の表面に設けられたスタッド63をさらに備えている。回路基板本体105aは、スタッド63を介してユニットフレーム7に支持されている。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、スタッド63により、回路基板本体105aを安定した姿勢でユニットフレーム7に対して支持することができる。その結果、振動検出チップ109は、巻取部15からユニットフレーム7を介して伝わる振動をより正確に検出することができる。
【0073】
(G)糸巻取ユニット1は、ヤーンクリアラ25と、スプライサ23と、上糸案内パイプ37と、下糸案内パイプ35とを、さらに備えている。ヤーンクリアラ25は、巻取部15により巻き取られる糸207の糸欠点を検出し、さらに、糸欠点が検出された場合に、糸207を切断する。スプライサ23は、巻取部15側の糸端と給糸部11側の糸端とを継ぐ。上糸案内パイプ37は、巻取部15側の糸端をスプライサ23へ案内する。下糸案内パイプ35は、給糸部11側の糸端をスプライサ23へ案内する。ヤーンクリアラ25と、スプライサ23と、上糸案内パイプ37と、下糸案内パイプ35とは、ユニットフレーム7の外側にて支持されている。
本実施形態の糸巻取ユニット1では、紡績糸の糸欠点を除去しながら紡績糸を巻き取る糸巻取装置において発生する振動を、振動検出チップ109により検出することができる。その結果、糸巻取ユニット1は、異常な振動を抑制して巻取部15によりパッケージ20を巻き取ることができるので、品質の高いパッケージを効率良く巻き取ることができる
【0074】
(8)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0075】
(a)前記実施形態では振動検出チップは回路基板に設けられていたが、振動検出チップがユニットフレーム内に設けられていればよいので、本発明は上記実施形態に限定されない。振動検出チップがユニットフレーム内に設けられてさえいれば、巻取部で発生した振動はユニットフレームを介して振動検出チップに伝達され、振動検出チップが巻取部で発生した振動の直接的な影響を受けずに振動を検出することができる。
【0076】
(b)前記実施形態では振動検出センサがワンチップであると説明したが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、衝撃センサと、増幅器と、周辺回路がワンチップ化されていてもよい。
【0077】
(c)前記実施形態ではヤーンクリアラと綾振りドラムの間には何も配置されていなかったが、両者の間に糸貯留部及び/又はワキシング装置を設けてもよい。
【0078】
(d)前記実施形態において、パッケージに対して糸を綾振る装置として、綾振ドラムを採用しているが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、先端に糸ガイドを有し、糸ガイドで糸を把持しながら高速で揺動するアームを備えたアーム式トラバース装置であってもよい。さらには、歯付ベルトと、この歯付ベルトに嵌設される糸ガイドと、歯付ベルトを往復走行させるモータと、から成るベルト式トラバース装置であってもよい。
【0079】
(e)振動の強さが所定値以下であるか否か(許容範囲であるか否か)の検出は、単に振動の強さを所定値と比較する構成に代えて、例えば振動強さ信号の周波数分析を行い、特定の周波数成分と所定強さとを比較する構成に変更することができる。
【0080】
(f)振動の強さが所定値を上回る場合は減速処理を実行する一方で、所定値以下の場合は増速処理を実行しない構成に変更することもできる。この場合、振動を増大させる方向の制御(増速制御)が行われないので、回路基板に設けられた電子部品の長寿命化を追求する場合に好適である。
【0081】
(g)上記の増速処理と減速処理のそれぞれを実行するか否か、あるいはタッチ巻終了後に減速処理を実行するか否かは、オペレータによって適宜設定可能とすることができる。この構成は、状況に応じて適切な巻取速度制御を行うことができる点で有利である。
【0082】
(h)前記振動の設定強さ及びタッチ巻終了条件は、オペレータによって適宜設定可能とすることができる。この構成は、自動ワインダの設置状況等に応じて条件を柔軟に変更できる点で有利である。
【0083】
(i)コントローラによる設定強さとの比較は、振動検出部で検知された振動強さが設定強さを一瞬でも超えていた場合に設定強さを上回ったと判定してもよい。あるいは、振動強さが設定強さを超えている状態が所定時間継続した場合に設定強さを上回ったと判定してもよい。
【0084】
(j)前記実施形態では、ユニット制御部は、タッチ巻設定速度に到達するまでは、クレードルの振動に応じた増速制御及び減速制御は実施していないが、この期間であっても、増速制御及び/又は減速制御を実行するようにしてもよい。また、このとき増速制御及び減速制御を行う期間は、適宜選択可能とすることができる。
【0085】
(k)前記実施形態では、通常の巻取速度に到達した後であっても、増速制御を継続して実行することができることとしている。しかし、通常の巻取速度に到達した後は、クレードルの振動の強さに応じた増速制御及び減速制御を実施せずに、目標の巻取速度を維持して巻取動作を継続するようにしてもよい。あるいは、自動ワインダ最大の巻取速度を予め設定しておき、通常の巻取速度に到達した後であっても、この最大巻取可能速度以下に巻取速度が収まる範囲で、クレードルの振動の強さに応じた巻取速度の増速制御を行うようにしてもよい。
【0086】
(l)上記実施形態の構成は、自動ワインダに限らず、例えば精紡機などの他の糸巻取装置に適用することができる。この場合、給糸部11は、ドラフト部と、空気紡績部とを有していてもよい。ドラフト部は、スライバをドラフトする。空気紡績部は、ドラフト部によりドラフトされたスライバに空気により撚りを掛ける。ドラフト部と空気紡績部とは、ユニットフレーム7の外側にて支持されている。
上記のスライバから紡績糸を形成して紡績糸を巻き取る糸巻取ユニット1において発生する振動を、振動検出チップ109により検出することができる。その結果、糸巻取ユニット1は、異常な振動を抑制して巻取部15によりパッケージ20を巻き取ることができるので、品質の高いパッケージを効率良く巻き取ることができる。
【0087】
(m)上記実施形態ではゲート式張力付与装置が用いられているが、本発明はそのような実施形態に限定されない。例えば、ディスク式張力付与装置を用いてもよい。ディスク色調力付与装置は、一対のディスク部材を備え、ディスク部材を回転させながらその間に糸を挟みこむことで、走行する糸に所定の張力を付与する。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、回路基板及び回路基板を備えた糸巻取装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0089】
1 糸巻取ユニット(糸巻取装置)
5 糸巻取本体
7 ユニットフレーム(フレーム)
11 給糸部
13 糸処理実行部
15 巻取部
19 解舒補助装置
21 ディスク式張力付与装置
21a ディスク部材
23 スプライサ
25 ヤーンクリアラ
25a カッター
29 クレードル
31 綾振ドラム
35 下糸案内パイプ
37 上糸案内パイプ
41 側面
43 正面
45 湾曲面
47 操作パネル
47a 正面部
47b 湾曲部
51 操作ボタンユニット
53 動作スイッチ
61 フレーム部材(支持部材)
63 スタッド
71 ドラム回転センサ
75 第1駆動部
77 第2駆動部
79 第3駆動部
81 糸走行センサ
85 第4駆動部
87 下糸案内パイプセンサ
91 第5駆動部
93 上糸案内パイプセンサ
97 ドラム駆動モータ
99 モータ制御部
99a 増速部
99b 減速部
101 ユニット制御部
105 回路基板
105a 回路基板本体
107 コントローラ(巻取制御部、操作制御部)
109 振動検出チップ(振動検出部)
111 信号処理部
201 給糸ボビン
203 巻取ボビン
205 パッケージ
207 糸
211 第1部分
213 第2部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板本体と、前記回路基板本体に設けられた振動検出チップとを備えていることを特徴とする、糸巻取装置用の回路基板。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取装置用の回路基板であって、
前記回路基板本体に設けられ、前記振動検出チップからの検出結果を処理する信号処理部をさらに備えていることを特徴とする、糸巻取装置用の回路基板。
【請求項3】
紡績糸を供給する給糸部と、
前記給糸部から供給された前記紡績糸を巻き取るための巻取部と、
前記巻取部を支持するフレームと、
前記フレーム内に設けられた振動検出部と、
を備えていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取装置であって、
前記フレームに支持され、前記振動検出部が設けられた回路基板本体をさらに備えていることを特徴とする、糸巻取装置。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取装置であって、
前記回路基板本体に設けられ、前記巻取部の巻取動作の制御を行う巻取制御部をさらに備えており、
前記巻取制御部は、前記振動検出部からの検出結果に基づいて、前記巻取部の巻取動作を制御することを特徴とする、糸巻取装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の糸巻取装置であって、
前記フレームの表面に設けられた操作パネルと、
前記回路基板本体に設けられ、前記操作パネルからの操作内容を処理する操作制御部とをさらに備えており、
前記回路基板本体は、前記操作パネルの近傍に配置されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の糸巻取装置であって、
前記フレームの内側の表面に設けられた支持部材をさらに備えており、
前記回路基板本体は、前記支持部材を介して前記フレームに支持されていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれかに記載の糸巻取装置であって、
前記巻取部により巻き取られる前記紡績糸の糸欠点を検出する糸欠点検出部と、
前記糸欠点検出部により糸欠点が検出された場合に、前記紡績糸を切断する切断部と、
前記巻取部側の糸端と前記給糸部側の糸端とを継ぐ糸継部と、
前記巻取部側の糸端を前記糸継装置へ案内する上糸案内部と、
前記給糸部側の糸端を前記糸継装置へ案内する下糸案内部とを、さらに備え、
前記糸欠点検出部と、前記切断部と、前記糸継部と、前記上糸案内部と、前記下糸案内部とは、前記フレームの外側にて支持されていることを特徴とする、糸巻取装置。
【請求項9】
請求項3〜8のいずれかに記載の糸巻取装置であって、
前記給糸部は、
スライバをドラフトするドラフト部と、
前記ドラフト部によりドラフトされたスライバに空気により撚りを掛ける空気紡績部と、を有しており、
前記ドラフト部と前記空気紡績部とは、前記フレームの外側にて支持されていることを特徴とする、糸巻取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−76884(P2012−76884A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223815(P2010−223815)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】