説明

納豆容器製造用積層発泡シートとその製造方法及び納豆容器

【課題】剥がす方向によってフィルムが剥離途中で破れることのない納豆容器と該容器を製造するために好適な積層発泡シートの提供。
【解決手段】熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層2の一方又は両方の面に、接着剤層4を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層3としてなり前記基材層2の発泡倍数が8〜30倍の範囲内であり、前記基材層2から前記表面皮膜層3を剥離する際、前記基材層2のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内である納豆容器製造用積層発泡シート。該シートを熱成形して得られた納豆容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂シートからなる基材層に積層されているフィルムを容易に剥がすことが可能であり、容器の回収時に汚れのついたフィルムを取り除くことにより無洗浄で回収できる納豆容器、該容器を製造するための積層発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡樹脂シートからなる基材層に積層されているフィルムを容易に剥がすことが可能な容器や積層シートに関して、例えば、特許文献1〜4に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、複数の層が積層されたシートLを、真空および/または圧空成形、あるいは熱板成形することにより得られる容器であって、シートLの、隣接する2つの層間の剥離強度が最小である層間を境に、容器の内側となる部分をフィルム部Fとし、容器の外側となる部分をシート部Sとしたときに、フィルム部Fは単層フィルムあるいは2つ以上の層からなる多層フィルムであり、シート部Sは単層シートあるいは2つ以上の層からなる多層シートであって、剥離強度が最小となる2つの層のうち、フィルム部に属するものを層FSとし、シート部に属するものを層SFとしたときに、層FSおよび層SFのいずれか一方の層が、(A)成分(ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンのうちのいずれか1種の樹脂)を50〜99重量%および下記(B)成分(溶解性パラメータ(SP)が8.40〜8.70である、1種または2種以上のポリマーで上記(A)成分を含まない)1〜50重量%を含有する樹脂組成物からなる層(層P)であり、他方の層が、樹脂として下記(B)成分を含まず、また下記(A)成分のうち層Pに用いられる樹脂も含まない層(層Q)とすることにより、フィルム部Fをシート部Sから剥離する際の剥離強度が2〜45g/15mm幅であることを特徴とする易リサイクル性容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、少なくとも、プラスチックフィルム、ポリウレタン樹脂を含有する中間層、該中間層と接するポリスチレン系発泡シートからなり、熱ラミネート加工により積層された積層物であって、前記ポリスチレン系発泡シートと中間層との間の剥離強度が、他の層間の剥離強度より小さく、かつ前記プラスチックフィルムの破断強度よりも小さくなるように調整されてなることを特徴とする可剥離性積層物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、表面における気泡の短径方向の径の大きさが0.005〜0.5mm且つ表面平滑性Rmaxが5〜200μmの熱可塑性樹脂発泡シ−トと、熱可塑性樹脂フィルムとが積層され、前記熱可塑性樹脂発泡シ−トと前記フィルムの剥離強度が5〜400g/25mm幅であることを特徴とする剥離可能な熱可塑性樹脂積層発泡シ−トが開示されている。
【0006】
特許文献4には、ポリスチレン系樹脂よりなる基材層の表面に、オレフィン系フィルムまたはポリエステル系フィルムをホットメルトタイプのオレフィン系接着剤層を介して積層して剥離可能な表面被膜層とし、この表面被膜層を内側にして成形してなる食品容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−225662号公報
【特許文献2】特開2003−251763号公報
【特許文献3】特開平7−96572号公報
【特許文献4】実開平6−37138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、コスト削減のため、また環境に与える悪影響の観点から、熱可塑性樹脂発泡シートを用いた食品容器の分野においては、樹脂の使用量の低減が進められている。基材層に積層されているフィルムを容易に剥がすことが可能な容器についても、基材層の樹脂使用量の低減及びフィルムの厚み低減が強く要望されている。
しかしながら、前記フィルムを薄くすれば、フィルムの引っ張り強度や引き裂き強度が低下してしまい、低強度のフィルムを積層した場合には、フィルム剥離時に破れ易くなってしまう。
特許文献1〜4の従来技術にあっては、フィルムを剥がす方向が特定されておらず、剥離強度に方向性がある場合、剥がす方向によってはフィルムが剥離途中で破れてしまい、フィルムが基材層に残ってしまうおそれがある。
特に、特許文献1、4では、容器本体とフィルムとが異なる樹脂で構成されているため、フィルムが残されたまま回収された容器をリサイクルする場合に、異種樹脂が混合された状態となり回収樹脂の品質が低下してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、剥がす方向によってフィルムが剥離途中で破れることのない納豆容器と該容器を製造するために好適な納豆容器製造用積層発泡シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を達成するため、本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートであって、前記基材層の発泡倍数が8〜30倍の範囲内であり、前記基材層から前記表面皮膜層を剥離する際、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であることを特徴とする納豆容器製造用積層発泡シートを提供する。
【0011】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートにおいて、前記表面皮膜層がポリスチレン系樹脂フィルムからなることが好ましい。
【0012】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートにおいて、前記表面皮膜層がポリ乳酸系樹脂フィルムからなる構成としてもよい。
【0013】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートにおいて、前記接着剤層がEVA系接着剤からなることが好ましい。
【0014】
また本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを得る製造方法であって、前記基材層の発泡倍数が8〜30倍の範囲内であり、前記基材層から前記表面皮膜層を剥離する際、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であることを特徴とする納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法において、前記表面皮膜層がポリスチレン系樹脂フィルムからなることが好ましい。
【0016】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法において、前記表面皮膜層がポリ乳酸系樹脂フィルムからなる構成としてもよい。
【0017】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法において、前記接着剤層がEVA系接着剤からなることが好ましい。
【0018】
また本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを熱成形して得られた納豆容器であって、この納豆容器を平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(A)と、前記第1の方向と直交する第2の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.90〜1.10の範囲内であることを特徴とする納豆容器を提供する。
【0019】
また本発明は、熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを熱成形して得られた納豆容器であって、この納豆容器の基材層のMD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層のTD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.90〜1.10の範囲内であることを特徴とする納豆容器を提供する。
【0020】
本発明の納豆容器において、前記剥離強度A,B,C及びDが30〜200g/25mmの範囲内であることが好ましい。
【0021】
本発明の納豆容器において、前記納豆容器製造用積層発泡シートが、本発明に係る前記納豆容器製造用積層発泡シートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の納豆容器製造用積層発泡シートは、熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層としてなり、前記基材層から前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度が、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であり、これを熱成形して得られる納豆容器は、表面皮膜層を剥離する方向による剥離強度のバラツキが殆ど無くなり、剥がす方向によって表面皮膜層が破けてしまうことが無く、基材層から確実に表面皮膜層を剥がすことができる。
【0023】
本発明の納豆容器は、前記納豆容器製造用積層発泡シートを熱成形して得られ、この納豆容器を平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(A)と、前記第1の方向と直交する第2の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.90〜1.10の範囲内である、又はこの納豆容器の基材層のMD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層のTD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.90〜1.10の範囲内であるものなので、表面皮膜層を剥離する方向による剥離強度のバラツキが殆ど無くなり、剥がす方向によって表面皮膜層が破けてしまうことが無く、基材層から確実に表面皮膜層を剥がすことができる。そして、基材層から確実に表面皮膜層を剥がすことができるので、容器をリサイクルする場合に、表面皮膜層を剥離して基材層だけを回収でき、高品質の回収樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の納豆容器製造用積層発泡シートの実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明の納豆容器の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の納豆容器における表面皮膜層の剥離状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の納豆容器の第2実施形態を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態の納豆容器における表面皮膜層の剥離状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
なお、以下の実施形態では、納豆容器製造用積層発泡シート(以下、積層発泡シートと略記する場合がある)の基材層としてポリスチレン系樹脂発泡シートを用いた場合を例示しているが、基材層の樹脂材料は本例示にのみ限定されるものではなく、他の熱可塑性樹脂発泡シート、例えば、ポリエチレン系樹脂発泡シート、ポリプロピレン系樹脂発泡シートなどであってもよい。
また、以下の実施形態では、積層発泡シートの基材層の一方の面のみに表面皮膜層を積層しているが、基材層の両方の面に表面皮膜層を積層してもよい。
【0026】
図1は、本発明の積層発泡シートの実施形態を示す断面図である。
この積層発泡シート1は、ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる基材層2の一方の面に、接着剤層4を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層3としてなり、基材層2から表面皮膜層を剥離する際の剥離強度が、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であることを特徴としている。ここで、基材層のMD方向とは、押出発泡法によって製造されるポリスチレン系樹脂発泡シートの押出方向のことであり、またTD方向とは、シート面において前記MD方向と直交する方向のことである。
【0027】
前記基材層2は、押出機などの樹脂供給手段にポリスチレン系樹脂、及び発泡核剤などの添加剤を入れて加熱溶融し、さらに発泡剤を添加して混練し、発泡剤含有樹脂を樹脂供給手段の先端に取り付けたダイのスリットから押し出し、発泡させた後に冷却する押出発泡法によって製造される。
【0028】
前記基材層2は、発泡倍数が8〜30倍の範囲内である。発泡倍数が前記範囲内であれば、軽量で十分な強度を持った納豆容器を製造することができる。基材層2の発泡倍数は、10〜25倍の範囲内であることが好ましく、12〜20倍の範囲内であることがより好ましい。なお、基材層2の発泡倍数とは、下記<発泡倍数>に記した方法で算出された値を言う。
【0029】
<発泡倍数>
使用したポリスチレン系樹脂の密度(1.05〔g/cm〕とする)にシート厚み〔mm〕を乗じ、さらにシート坪量〔g/m〕で除し、さらに10を乗じた値を、発泡シートの発泡倍数〔倍〕とした。
【0030】
前記基材層2の製造に用いるポリスチレン系樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられ、スチレンを50質量%以上含有するポリスチレン系樹脂が好ましく、ポリスチレンがより好ましい。また、前記ポリスチレン系樹脂としては、前記スチレンモノマーを主成分とする、前記スチレン系モノマーとこのスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよく、このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性モノマーなどが挙げられる。
【0031】
また、ポリスチレン系樹脂が主成分であれば、他の樹脂を添加してもよく、添加する樹脂としては、例えば、該積層発泡シートを用いて作製される納豆容器の耐衝撃性を向上させるために、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体などのジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性ポリスチレン系樹脂、いわゆるハイインパクトポリスチレンが挙げられる。あるいは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。また、原料となるポリスチレン系樹脂としては、市販されている通常のポリスチレン系樹脂、懸濁重合法などの方法で新たに作製したポリスチレン系樹脂などの、リサイクル原料でないポリスチレン系樹脂を使用できる他、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたリサイクル原料を使用することができる。このリサイクル原料としては、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体、例えば、魚箱、家電緩衝材、食品包装用トレーなどを回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したリサイクル原料を用いることができる。また、使用することができるリサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体を再生処理して得られたもの以外にも、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンターなど)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレットしたものを用いることができる。
【0032】
前記基材層2の製造に用いる発泡剤としては、二酸化窒素、炭酸ガス、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、及びこれらの2種以上混合して使用され、これらの中でも、n−ブタン、i−ブタンが好ましい。ブタン等の炭化水素発泡剤を用いる場合、その添加量はポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜10質量部の範囲内とすることが好ましく、2〜8質量部の範囲内とすることがより好ましい。
【0033】
前記基材層2の製造に用いる前記発泡核剤としては、タルク、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸カルシウム、クレー、クエン酸等が挙げられ、これらの中でもタルクがより好ましい。前記発泡核剤の添加量は、ポリスチレン系樹脂100質量部に対して1〜8質量部の範囲内とすることが好ましく、2〜6質量部の範囲内とすることがより好ましい。
【0034】
なお、前記基材層2には、物性や表面皮膜層の接着性に影響を及ぼさない程度で添加剤、例えば着色剤、難燃剤、滑剤(炭化水素、脂肪酸系、脂肪酸アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸、シリコーン油、低分子ポリエチレン等のワックス等)、展着剤(流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ポリブテン等)、分散剤等が添加されてもよい。
【0035】
前記基材層2は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内である。この加熱収縮比(TD/MD)は、1.10〜1.40の範囲であることが好ましく、1.10〜1.20の範囲であることがさらに好ましい。
なお、加熱収縮比とは、下記の<加熱収縮比の測定方法>に記した方法により測定し、算出した値である。
【0036】
<加熱収縮比の測定方法>
加熱収縮比については、得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの両端50mmを除いて均等間隔で5箇所を10mm角の切片に切り取る。
TD方向とMD方向にあらかじめそれぞれ100mmの線分を引き、その長さを加熱前のTD方向長さ、MD方向長さとした。
そして加熱オーブン(ヤマト科学社製、ファインオーブンDH−41)を用い、あらかじめ125℃に設定したオーブン内にすばやく試験片を入れ、150秒後にすばやく取り出し、あらかじめひかれた線分の長さを表裏で測定し、その長さを加熱後のTD方向長さ、MD方向長さとした。加熱収縮比(TD/MD)は以下の式で求める。
加熱収縮比(TD/MD)=加熱後のTD方向長さ[mm]/加熱後のMD方向長さ[mm]
【0037】
この加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内である基材層2を用いることで、その基材層2の表面に接着剤層4を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して積層し、剥離可能な表面皮膜層3を形成した場合に、基材層2のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内の積層発泡シート1が得られる。加熱収縮比(TD/MD)が前記範囲を外れると、MD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の囲内の積層発泡シート1を得ることが困難になる。
ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの加熱収縮比を前記範囲に入るように調整するには、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造時、押出直後に吹き付けるエアーの温度と量を適宜調整する方法、発泡シートを製造する金型の口径を変え、ブローアップ比(プラグ口径/金型口径)を調製する方法、等がある。
【0038】
前記基材層2に積層される表面皮膜層3の材料となる熱可塑性樹脂フィルムとしては、基材層2の樹脂材料と同種の樹脂フィルムでもよいし、基材層2の樹脂材料と異なる材料の樹脂フィルムでもよい。
本発明において好ましい熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリスチレン系樹脂フィルム、ポリエチレン系樹脂フィルム、ポリプロピレン系樹脂フィルム、EVA系樹脂フィルム、ポリ乳酸系樹脂フィルムなどが挙げられる。また前記ポリエチレン系樹脂フィルムの材料としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンなどが挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂フィルムは、非発泡であり、殆ど延伸されていないフィルムが好ましく、無延伸樹脂フィルムがより好ましい。
【0039】
前記表面皮膜層3が基材層2と同種の樹脂、例えば、ポリスチレン系樹脂発泡シートからなる基材層2と、ポリスチレン系樹脂フィルムからなる表面皮膜層3とから構成すれば、表面皮膜層3が一部基材層2に残存していても、回収樹脂に異種樹脂が混入することによる回収樹脂の品質低下を防止でき、高品質の回収樹脂を得ることができる。
【0040】
前記ポリ乳酸系樹脂フィルムとしては、ポリ乳酸単独か、或いはポリ乳酸と別な樹脂とのブレンドポリマーなどが挙げられ、その中でもポリ乳酸単独の樹脂フィルムが好ましい。本発明に好適に使用し得るポリ乳酸系樹脂フィルムとしては、例えば、ユニチカ社製の商品名テラマック、東セロ社製の商品名パルグリーンLCなどが挙げられる。
前記表面皮膜層3をポリ乳酸系樹脂フィルムによって形成することで、該積層発泡シート1を成形して得られた納豆容器を使用する際、納豆が付着した表面皮膜層3を基材層2から剥離し、これをコンポスト製造用資材として利用することが可能となる。
【0041】
前記表面皮膜層3の厚みは限定されないが、10〜100μmであるのが好ましい。厚みが10μm未満では、容器の形状に成形する際の伸び量が不足して、成形時に破断するおそれがある。または剥離する際に破れやすくなって、分別回収の作業性が低下するおそれもある。一方、厚みがこの範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないため、コスト上昇や重量増を招くことになる。この表面皮膜層3の厚みは、前記範囲内でもとくに15〜40μm程度であるのが好ましく、20〜35μm程度がより好ましい。
【0042】
前記表面皮膜層3を形成するための熱可塑性樹脂フィルムは、接着剤層4を介して基材層2に接着されている。この接着剤としては、例えばエチレン酢酸ビニル(EVA)系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤などのいわゆるホットメルト系接着剤などが好ましく、損赤でもEVA系接着剤が好ましい。また、主に天然化合物からなる生分解性粘着剤を使用することもできる。生分解性粘着剤としては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム等の生分解性を有するゴム成分をベース剤として、そこにロジン系、もしくはテルペン系などの天然系の粘着付与剤を添加したものが挙げられる。ロジン系の粘着付与剤としてはロジン、およびその誘導体(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、ロジンエステルなど)が挙げられる。またテルペン系の粘着付与剤としてはテルペン、およびその誘導体(α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、およびこれらの水添物など)が挙げられる。
【0043】
この接着剤は、適当な溶媒に溶解した塗布液を熱可塑性樹脂フィルムの片面にバーコーター、ナイフコーター、ロールコーター等を用いて塗布したのち、溶媒を乾燥、除去することで接着剤層4とする。熱可塑性樹脂フィルムに形成される接着剤層の厚みは限定されないが、基材層2と表面皮膜層3とを均一に、むらなく接着することを考慮すると、1〜20μmであるのが好ましい。
【0044】
前記積層発泡シート1は、色や柄等を施すために印刷層や着色層(コーティング、スプレー等による)を設けてもよい。色や柄等を施すには、表面皮膜層3を形成する熱可塑性樹脂フィルムに印刷を施したり、接着剤層4や基材層2に顔料を配合するか、もしくは基材層2の表面に着色層を設けるなどして着色を施素ことによって行うことができる。さらに基材層2に印刷を行うとともに、表面皮膜層3を形成する熱可塑性樹脂フィルムに別の図柄等を印刷して複雑な模様を形成してもよい。
【0045】
前記積層発泡シート1を製造するには、基材層2となるポリスチレン系樹脂発泡シートと、片面に接着剤層4を設けた熱可塑性樹脂フィルムを用意し、この熱可塑性樹脂フィルムの接着剤層4側を基材層2の表面に重ね合わせ、これを熱ロールにかけて加熱押圧する。これによって基材層2と熱可塑性樹脂フィルムとが接着され、基材層2の表面に、接着剤層4を介して剥離可能な表面皮膜層3が積層された積層発泡シート1が製造される。
【0046】
本発明の積層発泡シート1は、基材層2から表面皮膜層3を剥離する際、基材層2のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、かつこれらの剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内である。この強度比TD/MDは、1.4〜3.5の範囲内が好ましく、1.6〜3.0の範囲内がより好ましい。
なお、剥離強度(MD、TD)の測定方法は、サンプル巾25mmとし、テンシロンRTM−500にて200mm/minのスピ−ドで180度剥離した時の測定値を剥離強度とした。その測定方法の詳細については、後述する実施例中に記す。
【0047】
前記強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲を外れると、その積層発泡シート1を熱成形して得sられる納豆容器は、剥離方向によって剥離強度にバラツキを生じ易くなり、剥離強度が高くて剥離し難い方向に沿って表面皮膜層3を剥離する場合に、表面皮膜層3が途中で破れてしまい、表面皮膜層3の全てを基材層2から剥離できなくなる問題がある。
またこれらの剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であれば、この積層発泡シート1を熱成形して得られる納豆容器における表面皮膜層3の剥離強度が30〜200g/20mmの範囲になり、成形時に剥離が生じ難く、剥離時にはスムーズに表面皮膜層3を剥離できる優れた納豆容器を得ることができる。
【0048】
次に、本発明に係る納豆容器の実施形態を説明する。
図2及び図3は、本発明に係る納豆容器の第1実施形態を示す図であり、図2は納豆容器10の斜視図、図3は同じ納豆容器10の一つの角部の表面皮膜層3を剥離した状態を示す斜視図である。
【0049】
本実施形態の納豆容器10は、前述した積層発泡シート1を熱成形して得られ、本実施形態では、底面部14とその周縁から立設された側壁部13とからなる平面視四角形の容器本体部11と、該容器本体11の一辺にヒンジ部分17を介して連設された平面視四角形の蓋12とからなっている。表面皮膜層3は、容器本体11の内側と蓋12の内面側の表面に存在している。
前記側壁部13の先端部分は外方に向けて張り出してフランジが形成されている。この納豆容器の包装時、このフランジは、折り曲げた蓋12の周縁と接し、該蓋部12に形成された突起部15が容器本体11の開口に嵌入するようになっている。
前記ヒンジ部分17には、容器本体11から蓋12を切り離すための1本又は2本以上のミシン目16が形成されている。
【0050】
この納豆容器10は、平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向Aに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(A)と、前記第1の線と直交する第2の線に沿う方向Bに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.80〜1.20の範囲内になっていることを特徴としている。
【0051】
さらに、この納豆容器10は、基材層2のMD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層2のTD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.80〜1.20の範囲内になっている。
なお、図2に示す例示では、前記第1の線に沿う方向Aが基材層2のMD方向と一致し、第2の線に沿う方向Bが基材層2のTD方向と一致している場合を示しているが、第1の線に沿う方向AとMD方向、第2の線に沿う方向BとTD方向とは、異なっていてもよい。
【0052】
この納豆容器10においては、前記剥離強度A,B,C及びDが、30〜200g/25mmの範囲内であることが好ましく、40〜180g/25mmの範囲内であることがより好ましい。
前記剥離強度A,B,C及びDが前記範囲内であれば、通常使用時には基材層2から表面皮膜層3が剥がれることなく、納豆容器10の製造工程及び納豆容器10に納豆を充填して製品化する製造工程、及び消費者がその納豆を購入し内容物を食する際に問題が起こらず、使用後には指で表面皮膜層3を摘んで基材層2から剥がし取ることが容易にでき、納豆が付着していない基材層2を簡単に回収品として分けることができる。前記剥離強度A,B,C及びDが前記範囲未満であると、表面皮膜層3が剥離し易くなる。一方、前記剥離強度A,B,C及びDが前記範囲を超えると、表面皮膜層3の剥離が難しくなる。
【0053】
この納豆容器は、ポリスチレン系樹脂発泡シートから食品トレーなどの成形品を製造する分野において従来より周知の熱成形方法によって製造することができる。すなわち、前述した積層発泡シート1を加熱軟化させ、これを成形型に入れ、押圧及び切断することによって製造し得る。
【0054】
この納豆容器10は、前記積層発泡シート1を熱成形して得られ、この納豆容器10を平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向Aに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(A)と、第1の線と直交する第2の線に沿う方向Bに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.80〜1.20の範囲内である、又は基材層2のMD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層2のTD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.80〜1.20の範囲内であるものなので、表面皮膜層3を剥離する方向による剥離強度のバラツキが殆ど無くなり、剥がす方向によって表面皮膜層3が破けてしまうことが無く、基材層2から確実に表面皮膜層3を剥がすことができる。そして、基材層2から確実に表面皮膜層を剥がすことができるので、容器をリサイクルする場合に、表面皮膜層3を剥離して納豆が付着していない基材層2だけを回収でき、高品質の回収樹脂を得ることができる。
【0055】
図4及び図5は、本発明に係る納豆容器の第2実施形態を示す図であり、図4は納豆容器20の斜視図、図5は同じ納豆容器20の一つの角部の表面皮膜層3を剥離した状態を示す斜視図である。
本実施形態の納豆容器20は、納豆や付属物(タレやからしなどを入れた小袋)を容器内に収容し、図示していない透明フィルム等で開口をシールして包装するタイプのものである。
【0056】
本実施形態の納豆容器20は、前述した積層発泡シート1を熱成形して得られ、本実施形態では、底面部21とその周縁から立設された側壁部22とからなり、平面視略四角形をなしている。側壁部22の先端部分は、外方に向けて張り出してフランジ23が形成されている。表面皮膜層3は、該納豆容器20の内側表面に存在している。
【0057】
本実施形態の納豆容器20は、前記第1実施形態の納豆容器10と同じく、平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向Aに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(A)と、前記第1の線と直交する第2の線に沿う方向Bに表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.80〜1.20の範囲内になっている。
さらに、この納豆容器20は、基材層2のMD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層2のTD方向に沿う方向に表面皮膜層3を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.80〜1.20の範囲内になっている。
なお、図4に示す例示では、前記第1の線に沿う方向Aが基材層2のMD方向と一致し、第2の線に沿う方向Bが基材層2のTD方向と一致している場合を示しているが、第1の線に沿う方向AとMD方向、第2の線に沿う方向BとTD方向とは、異なっていてもよい。
【0058】
本実施形態の納豆容器20は、前記第1実施形態の納豆容器10と同じく、表面皮膜層3を剥離する方向による剥離強度のバラツキが殆ど無くなり、剥がす方向によって表面皮膜層3が破けてしまうことが無く、基材層2から確実に表面皮膜層3を剥がすことができる。そして、基材層2から確実に表面皮膜層を剥がすことができるので、容器をリサイクルする場合に、表面皮膜層3を剥離して納豆が付着していない基材層2だけを回収でき、高品質の回収樹脂を得ることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例によって本発明の効果を実証するが、以下の実施例は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
(ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造)
ポリスチレン樹脂(製品名:HRM26(東洋スチレン社製))100質量部に、発泡剤としてブタンガス(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)4.3質量部、気泡調整剤として粉末タルク0.7質量部相当のマスターバッチ品(電化スチロール社製DSM−1401A)を使用して、これを最高温度260℃に設定された押出機に投入し、押出機内で溶融混練させ、その後樹脂温度150℃に冷却調整して、押出機先端に取り付けた口径170mmのサーキュラーダイのスリット(クリアランス0.24mm)より円筒状に押出した。
押出直後に35℃のエアーを内側で0.1m/m、外側で0.16m/mの割合で吹き付けて冷却しつつ、直径が670mmのプラグ上に沿わせて冷却成形し、冷却された円筒状発泡体を2枚のシートに切り開いて、厚み2.0mm、シート坪量140g/m、発泡倍数15倍のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの加熱変形度合について、以下の<加熱変形、加熱収縮比の測定方法>により試験し、加熱収縮比を算出した。
【0061】
<加熱変形、加熱収縮比の測定方法>
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの両端50mmを除いて均等間隔で5箇所を10mm角の切片に切り取る。
TD方向とMD方向にあらかじめそれぞれ100mmの線分を引き、その長さを加熱前のTD方向長さ、MD方向長さとした。
そして加熱オーブン(ヤマト科学社製、ファインオーブンDH−41)を用い、あらかじめ125℃に設定したオーブン内にすばやく試験片を入れ、150秒後にすばやく取り出し、あらかじめひかれた線分の長さを表裏で測定し、その平均を加熱後のTD方向長さ、MD方向長さとした。
TD比、MD比、及び加熱収縮比(TD/MD)は以下の式で求める。
TD比=加熱後のTD方向長さ[mm]/加熱前のTD方向長さ[mm]
MD比=加熱後のMD方向長さ[mm]/加熱前のMD方向長さ[mm]
加熱収縮比(TD/MD)=加熱後のTD方向長さ[mm]/加熱後のMD方向長さ[mm]
【0062】
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの加熱変形についてはTD方向1.10、MD方向0.93であった。また加熱収縮比(TD/MD)は1.18であった。
【0063】
(積層発泡シートの製造)
このポリスチレン系樹脂発泡シートに、接着剤層としてEVA樹脂を塗工したポリスチレン樹脂フィルム(東和化工社製、厚さ25μm)を重ね合わせ、熱ロ−ル110℃、スピ−ド22m/minで熱ラミネート加工し、図1に示す通りポリスチレン系樹脂発泡シートからなる基材層2の一方の面に接着剤層4を介してポリスチレン樹脂フィルムからなる剥離可能な表面皮膜層3が積層された積層発泡シート1を得た。
【0064】
得られた積層発泡シートについて、以下の<剥離強度の測定方法>に従ってMD方向とTD方向の剥離強度を測定し、MD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDを算出した。その結果を表1に記す。
【0065】
<剥離強度の測定方法>
剥離強度についてはサンプル巾25mmとし、テンシロンRTM−500にて200mm/minのスピ−ドで180度剥離した時の測定値を剥離強度とした。
得られた積層発泡シートの発泡シートとフィルムとの剥離強度を発泡シートのMD方向、TD方向についてそれぞれ測定を行った。その結果、MD方向の剥離強度(MD)は33g/25mm、TD方向の剥離強度(TD)は115g/25mmであり、強度比(TD/MD)は3.5であった。
【0066】
(納豆容器の製造)
得られた積層発泡シートを単発成形機(FM−6AS(東成産業社製))で成形した。成形条件は積層発泡シートのMD方向が納豆容器の長辺方向となるように積層発泡シートをセットし、オーブンヒーター温度230℃で加熱した後、表面皮膜層が成形品の内側になるようにして、図2に示す形状で容器本体が85×85×28mmのサイズの納豆容器を成形した。この成形中に表面皮膜層が剥離することも無く、外観が良好な成形品が得られた。
得られた納豆容器について、以下の<納豆容器の剥離強度の測定>、<剥離性評価>及び<納豆容器外観の評価>に記したように測定・評価した。結果を表1に記す。
【0067】
<納豆容器の剥離強度の測定>
成形した納豆容器から、巾25mmの試験片を納豆容器の長辺長さ方向A、及びそれに直交する短辺長さ方向Bの2方向で切り出し、テンシロンRTM−500にて200mm/minのスピ−ドで180度剥離した時の測定値を剥離強度とした。
その結果、長辺方向Aの剥離強度(A)は90g/25mm 、短辺方向Bの剥離強度(B)は92g/25mm、A/B比は0.98、AとBの平均値は91g/25mmであった。
この納豆容器から表面皮膜層であるフィルムを手で掴んで剥離したところ、フィルムが途中で破れることなく基材層からきれいにフィルムを剥離することが出来た。
【0068】
<剥離性評価>
成形品の表面皮膜層を手で掴んで基材層から表面皮膜層であるフィルムを剥離して、以下の判断基準によって剥離性を評価した。
良好(○):剥離したときにフィルムが破れずに発泡シートからフィルムを剥離することが出来る。
不良(×):剥離したときにフィルムが破れ、フィルムの一部が発泡シートに残る。
【0069】
<成形品外観の評価>
成形品の外観を目視で調べ、以下の判断基準によって外観を評価した。
良好(○):表面皮膜層のフィルムに浮きがなく、外観に優れている。
不良(×):表面皮膜層のフィルムに浮きがなく、外観に優れている。
【0070】
[実施例2]
ポリスチレン系樹脂発泡シートに、ポリスチレン樹脂フィルムを熱ラミネート加工する時の熱ロール温度を120℃としたこと以外は、実施例と同様にして積層発泡シート及び成形品を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、成形品の剥離強度、剥離性評価及び成形品外観の測定・評価結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
(ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造)
ポリスチレン樹脂(製品名:HRM26(東洋スチレン社製)100質量部に、発泡剤としてブタンガス(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)4.0質量部、気泡調整剤として粉末タルク0.7質量部相当のマスターバッチ品(東洋スチレン社製DSM−1401A)を使用して、これを最高温度260℃に設定された押出機に投入し、押出機内で溶融混練させ、その後樹脂温度150℃に冷却調整して、押出機先端に取り付けた口径170mmのサーキュラーダイのスリット(クリアランス0.2mm)より円筒状に押出した。
押出直後に35℃のエアーを内側で0.08m/m、外側で0.15m/mの割合で吹き付けて冷却しつつ、直径が670mmのプラグ上に沿わせて冷却成形し、冷却された円筒状発泡体を2枚のシートに切り開いて、厚み1.4mm、シート坪量110g/m、発泡倍数13.4倍のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。
【0072】
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの加熱変形についてはTD方向1.01、MD方向0.91であった。また加熱収縮比(TD/MD)は1.11であった。
【0073】
(積層発泡シートの製造)
このポリスチレン発泡樹脂シートに、接着剤層としてEVA樹脂を塗工したポリスチレン樹脂フィルム(東和化工社製、厚さ25μm)を重ね合わせ、熱ロ−ル110℃、スピ−ド22m/minで熱ラミネート加工し、積層発泡シートを得た。
【0074】
前記の通り製造した積層発泡シートを用い、それ以外は実施例1と同様にして納豆容器を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、納豆容器の剥離強度、剥離性評価及び納豆容器外観の測定・評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例4]
実施例1において表面皮膜層形成用に用いたポリスチレン樹脂フィルムに代えて、ポリ乳酸樹脂フィルム(商品名「テラマック」、ユニチカ(株)社製、厚さ25μm)を用い、それ以外は実施例1と同様に行って、積層発泡シート及び納豆容器を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、納豆容器の剥離強度、剥離性評価及び納豆容器外観の測定・評価結果を表1に示す。
【0076】
[比較例1]
(ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造)
ポリスチレン樹脂(製品名:HRM26(東洋スチレン社製)100質量部に、発泡剤としてブタンガス(イソブタン/ノルマルブタン=30/70)4.3質量部、気泡調整剤として粉末タルク0.7質量部相当のマスターバッチ品(電化スチロール社製DSM−1401A)を使用して、これを最高温度260℃に設定された押出機に投入し、押出機内で溶融混練させ、その後樹脂温度150℃に冷却調整して、押出機先端に取り付けた口径170mmのサーキュラーダイのスリット(クリアランス0.22mm)より円筒状に押出した。
押出直後に35℃のエアーを内側で0.1m/m、外側で0.16m/mの割合で吹き付けて冷却しつつ、直径が670mmのプラグ上に沿わせて冷却成形し、冷却された円筒状発泡体を2枚のシートに切り開いて、厚み2.0mm、シート坪量140g/m、発泡倍数15倍のポリスチレン系樹脂発泡シートを得た。
【0077】
得られたポリスチレン系樹脂発泡シートの加熱変形についてはTD方向1.01、MD方向0.98であった。また加熱収縮比(TD/MD)は1.03であった。
【0078】
前記の通り製造したポリスチレン系樹脂発泡シートを用い、それ以外は実施例1と同様にして積層発泡シート及び納豆容器を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、納豆容器の剥離強度、剥離性評価及び納豆容器外観の測定・評価結果を表1に示す。
この比較例1で製造した納豆容器は、基材層から表面皮膜層であるフィルムを手で掴んで剥離したところ、剥離途中でフィルムが破れてしまった。
【0079】
[比較例2]
ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリスチレン樹脂フィルムを熱ラミネート加工する時の熱ロール温度を100℃としたこと以外は、実施例1と同様に行って、積層発泡シート及び納豆容器を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、納豆容器の剥離強度、剥離性評価及び納豆容器外観の測定・評価結果を表1に示す。
得られた納豆容器は、容器成形時にフィルムの剥離が発生しており、基材層と表面皮膜層との間に浮きが部分的に発生していた。
【0080】
[比較例3]
ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリスチレン樹脂フィルムを熱ラミネート加工する時の熱ロール温度を130℃、スピ−ド12m/minとしたこと以外は、実施例1と同様に行って、積層発泡シート及び納豆容器を製造した。
得られた積層発泡シートの剥離強度、納豆容器の剥離強度、剥離性評価及び納豆容器外観の測定・評価結果を表1に示す。
得られた納豆容器は、基材層から表面皮膜層のフィルムを手で掴んで剥離したところ、剥離途中でフィルムが破れてしまった。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果より、本発明に係る実施例1〜4で製造した積層発泡シートは、MD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、かつこれらの剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であった。
そして、この積層発泡シートを用いて得られた納豆容器は、方向Aの剥離強度(A)と、方向Bの剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.80〜1.20の範囲内であり、表面皮膜層の剥離性が良好であった。
【0083】
一方、比較例1では、ポリスチレン系樹脂発泡シートの加熱収縮比が実施例1の場合よりも小さく、該シートを用いて得られた納豆容器は、A方向とB方向とで剥離強度にバラツキが大きくなり、剥離途中でフィルムが破れてしまい、剥離性が不良となった。
また、比較例2の積層発泡シートは、剥離強度(MD及びTD)が実施例1よりも小さくなり、該シートを用いて得られた納豆容器は、表面皮膜層の剥離強度が低くなって成形時にフィルム剥離を生じ、外観不良となった。
また、比較例3の積層発泡シートは、剥離強度(MD及びTD)が実施例1よりも大きくなり、該シートを用いて得られた納豆容器は、表面皮膜層の剥離が困難となり、剥離途中でフィルムが破れてしまい、剥離性が不良となった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、発泡樹脂シートからなる基材層に積層されているフィルムを容易に剥がすことが可能であり、容器の回収時に汚れのついたフィルムを取り除くことにより無洗浄で回収できる納豆容器、該容器を製造するための積層発泡シートに関する。
【符号の説明】
【0085】
1…納豆容器製造用積層発泡シート、2…基材層、3…表面皮膜層、10…納豆容器、11…容器本体、12…蓋、13…側壁部、14…底面部、15…突起部、16…ミシン目、17…ヒンジ部分、20…納豆容器、21…底面部、22…側壁部、23…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートであって、
前記基材層の発泡倍数が8〜30倍の範囲内であり、前記基材層から前記表面皮膜層を剥離する際、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であることを特徴とする納豆容器製造用積層発泡シート。
【請求項2】
前記表面皮膜層がポリスチレン系樹脂フィルムからなる請求項1に記載の納豆容器製造用積層発泡シート。
【請求項3】
前記表面皮膜層がポリ乳酸系樹脂フィルムからなる請求項1に記載の納豆容器製造用積層発泡シート。
【請求項4】
前記接着剤層がEVA系接着剤からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の納豆容器製造用積層発泡シート。
【請求項5】
熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを得る製造方法であって、
前記基材層の発泡倍数が8〜30倍の範囲内であり、前記基材層から前記表面皮膜層を剥離する際、前記基材層のMD方向の剥離強度(MD)とTD方向の剥離強度(TD)との強度比TD/MDが1.2〜4.0の範囲内であり、剥離強度(MD及びTD)が30〜150g/25mmの範囲内であり、前記基材層は、MD方向とTD方向との加熱収縮比(TD/MD)が1.05〜1.50の範囲内であることを特徴とする納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法。
【請求項6】
前記表面皮膜層がポリスチレン系樹脂フィルムからなる請求項5に記載の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法。
【請求項7】
前記表面皮膜層がポリ乳酸系樹脂フィルムからなる請求項5に記載の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法。
【請求項8】
前記接着剤層がEVA系接着剤からなる請求項5〜7のいずれか1項に記載の納豆容器製造用積層発泡シートの製造方法。
【請求項9】
熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを熱成形して得られた納豆容器であって、
この納豆容器を平面視した際に該容器を半分割する第1の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(A)と、前記第1の方向と直交する第2の線に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(B)との強度比(B/A)が0.90〜1.10の範囲内であることを特徴とする納豆容器。
【請求項10】
熱可塑性樹脂発泡シートよりなる基材層の一方又は両方の面に、接着剤層を介して熱可塑性樹脂フィルムを積層して剥離可能な表面皮膜層とした納豆容器製造用積層発泡シートを熱成形して得られた納豆容器であって、
この納豆容器の基材層のMD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(C)と、基材層のTD方向に沿う方向に前記表面皮膜層を剥離する際の剥離強度(D)との強度比(D/C)が0.90〜1.10の範囲内であることを特徴とする納豆容器。
【請求項11】
前記剥離強度A,B,C及びDが30〜200g/25mmの範囲内である請求項9又は10に記載の納豆容器。
【請求項12】
前記納豆容器製造用積層発泡シートが、請求項1〜4のいずれか1項に記載の納豆容器製造用積層発泡シートである請求項9〜11のいずれか1項に記載の納豆容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−131552(P2012−131552A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286639(P2010−286639)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(592222444)株式会社積水化成品栃木 (11)
【Fターム(参考)】